説明

電気めっきされた外観が銀白色の金属とその製造方法

外観が銀白色の金属とその製造方法を提供する。本金属は、金属コアと、第1の層と、第2の層とを含む複合材であり、該第1の層は該金属コアの外側表面を覆い、銅イオンを含む第1めっき浴から銅または銅合金を電気めっきすることで生成される。該第2の層は該第1の層を覆い、銅イオンとスズイオンを含む第2めっき浴から白色青銅を電気めっきすることで生成される。あるいは、本複合材は、金属コアと白色青銅の第1の層とだけを含んでもよい。製造される複合材は、銀白色の外観を持ち、ニッケルが露出していないのでニッケルにアレルギーのある人に影響をあたえない。標準処理方法により、本複合材を硬貨、トークン、メダル、鍵、非入れ子式物品等の完成品に成形できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外観が銀白色の金属とその製造方法、特に電気めっき処理によって製造された外観が銀白色の金属に関する。
【背景技術】
【0002】
ニッケルは様々な硬貨、トークン(token)、及びメダルに使用される。より具体的には、硬貨、トークン、及びメダルはしばしばキュプロニッケル、ニッケル真鍮、またはニッケルめっきされた鋼から作られる。キュプロニッケルは、銅合金C713としても知られ、ニッケルを23.5〜26.5重量%含んでおり、組成の残りは銅から成る。ニッケルの1つの特徴は、その銀白色の外観であり、その銀白色の外観によりニッケル系の硬貨、トークン、及びメダルは、他の硬貨、トークン、及びメダルから区別可能である。
【0003】
多くの人がニッケルめっきに対してアレルギーを持っている。ニッケルに対するアレルギー反応はニッケル系の物品にふれる消費者だけでなく、レジ係、出納係等の多量の硬貨を扱う人、及びこのような物品の製造に携わる人にとっても問題となる。従って、接触した時に、そのような人々をニッケル金属に曝さない硬貨、トークン、及びメダルを提供することが望まれている。硬貨、トークン、及びメダルをニッケル金属との接触がなくなるように改良することが望まれる場合でも、識別と区別のために銀白色の外観を保持することが望ましい。例えば、「ニッケル」とも呼ばれる米国の5セント硬貨の代用品は、現在の「ニッケル」とほぼ同じ外観を持つべきである。
【0004】
銀白色の硬貨、トークン、及びメダルを製造するために使用される現在の技術は、(1)腐食耐性の白色金属合金(ステンレス鋼、ニッケル合金、キュプロニッケル等)と、(2)ベース金属コアに結合された腐食耐性の白色金属合金により構成されるクラッド材と、(3)ベース金属コア(通常は、鋼)上に電気めっきされたニッケル(しばしばそのニッケルの下に1つ以上のめっき層を有する)とを含む。腐食を防ぐために鋼上の総めっき厚みは通常、最小25μmと規定される。めっき後、ニッケルめっきされたブランク(未刻印の材料片)はめっき内の応力を除去するためにベークされなければならない。さもないとこの応力は、刻印の工程においてひび割れを引き起す。このベーク工程において形成された酸化物は、該ブランクを磨くことで除去される。上記3つの工程のそれぞれにおいて、処理されたブランクは、もし表面がニッケルを含んでいれば、ニッケルに敏感ないかなる人にも接触皮膚炎を引き起す可能性がある。
【0005】
外観の維持に加えて、硬貨、トークン、及びメダルに要求される幾つかの他の特徴、性質が存在する。長期の使用に亘って、硬貨、トークン、及びメダルは、その色を維持し、曇り耐性があり、耐久性があり、きれいでなければならない。硬貨、トークン、及びメダルは、その意図された使用と取扱いによる磨耗に耐えなければならない。また、特に自動機で使用される場合には、硬貨、トークン、又はメダルの重さも関心事である。例えば、硬貨を受付ける自動販売機は、地下鉄トークンを受付ける機械と同様にしばしば重さに敏感である。
【0006】
いかなるニッケル金属にも取扱い者を曝さない硬貨、トークン、又はメダルは、現在の硬貨、トークン、又はメダルの材料及び製造のコスト以下の材料及び製造プロセスで製造されるのが望まれる。完成品の外観が変化してはならないので、このような硬貨、トークン、及びメダルは、標準の製造技法を使ってブランクから完成品を作製できることが必要である。言い換えると、そのブランクは完成品に成形可能で、打刻又は鋳造されて完成品となるように十分な延性を有していなければならない。
【0007】
また、少なくとも部分的に安価な金属から成る硬貨、トークン、及びメダルを開発することが望まれる。特に硬貨の場合、硬貨の金属のコストと製造のコストは、一般に当該硬貨の額面より低いことが望まれる。硬貨の製造コストがより安ければ、より大きな貨幣鋳造利差が鋳造プロセスにより得られる。また、硬貨の金属の価値が硬貨の額面を超える場合は、多分、発行機関は硬貨の金属の価値を下げるためにその硬貨のサイズ又は組成を変更させられることになる。これにより人々が当該硬貨をその金属の値段で売ることはない。例えば、特許文献1に開示された銀の外観を有するが銀コアまたは銀被覆層を使用していない硬貨を考える。代りに、アルミニウムと亜鉛が銀の外観を有する硬貨を製造するために使用される。アルミニウムと亜鉛は両方とも銀よりかなり低価格である。
【0008】
硬貨、トークン、又はメダルを代替の材料から作る様々な努力が過去に行われた。例えば、特許文献2の発明は、ニッケルが電気めっきされ、次に電気めっき銅層と最後の電気めっきニッケル層が積層されたブランクから作られた硬貨を開示する。特許文献2の発明は、硬貨のコアとしてニッケルを使用することを要求していないが、ニッケル金属が露出した硬貨である。従って、このような硬貨はニッケルアレルギーの問題に対処していない。また、特許文献2の硬貨の製造方法は、ニッケル硬貨を作るのに3つの電気めっきプロセスを含み、製造コストは高い。
【0009】
幾つかの方法が金色の硬貨を製造するために開発されてきた。例えば、特許文献3には黄色の青銅を使用することで金色の外観を有する硬貨を製造することが記載されている。特許文献3の黄色の青銅は8重量%〜16重量%のスズを含み、残りは銅から成る。同様に特許文献4には金色の外観を有する硬貨を製造することが開示されている。その硬貨は2つの被覆層を含む。その第1の被覆層は6%〜12%のマンガンと6%〜25%の亜鉛とを含み、その第2の被覆層は7%〜10%のマンガンと10%〜15%の亜鉛とを含む。また、特許文献4には該被覆層はニッケルと、微量のスズ等の他の金属とを含んでもよいことが記載されている。これらの特許文献は、ニッケル使用の結果としての銀白色の外観ではなく金色の外観を有する硬貨の製造方法を当業者に示している。
【0010】
金属コアを含み銀白色の外観が望まれる他の物品も、新しい仕上げの対象である。そのような物品は、鍵と他の小さな非入れ子式部品とを含む。従って、上述した欠点を回避する材料と方法とを使用してこれらの物品を製造することが望まれている。
【特許文献1】米国特許第6,383,657号明細書
【特許文献2】米国特許第5,151,167号明細書
【特許文献3】米国特許第4,579,761号明細書
【特許文献4】米国特許第6,432,556号明細書
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、銀白色の外観を有する金属とその製造方法とを提供する。一実施形態では、本発明の複合材は、金属コアと、該金属コアに付着され、これを覆う第1の層と、該第1の層に付着され、これを覆う第2の層とを含む。該金属コアは、亜鉛、ニッケル、鉄(鋼)、銅、アルミニウム、又はそれらの任意の合金から成る。銅合金の金属コアは真鍮または青銅の金属コアを含む。該第1の層は銅または銅合金からなり、銅イオンを含む第1めっき浴から電気めっきすることで生成される。該第2の層は白色青銅からなり、銅イオンとスズイオンを含む第2めっき浴から電気めっきすることで生成される。作られる複合材は、従来のニッケル及びその合金の外観のような銀白色の外観を有する。しかし、本複合材は該第2の層にニッケルを含んでいないので、ニッケルにアレルギーのある人が本複合材を取扱う時に影響を与えない。また、製造される製品はその色を維持し、曇り耐性と耐久性がありきれいである。
【0012】
本発明の方法の一実施形態によると、金属コアと、第1めっき浴と、第2めっき浴とが提供される。該金属コアは該第1めっき浴を使用して電気めっきされ、該金属コアに付着されこれを覆う第1の層が生成される。該金属コアと該第1の層との複合体は該第2めっき浴を使用して電気めっきされ、該第1の層に付着されこれを覆う第2の層が生成される。該第1の層は銅または銅合金から成る。該第2の層は白色青銅から成る。
【0013】
一実施形態では、該第1の層は約60重量%〜約100重量%の銅を含む。該第2の層は約70重量%〜約10重量%の銅と残りの約30重量%〜約90重量%のスズとを含む。該第1の層の厚みは、約4μm〜約18μmであるが、25μm以上でもよい。該第2の層の厚みは、約4μm〜約25μmである。
【0014】
本発明の方法は、後続のステップのために汚染物質と考えられる物質を除去するステップを更に含んでもよい。例えば、本発明の方法は、金属コア上の汚れ又はオイルを除去するために、又は金属コアから他の汚染物質を除去するために、又は電気めっきに備えるために、前記第1の層の電気めっきステップより前に、酸に浸す、亜鉛酸塩浸漬堆積、又は清浄及び洗浄を含んでもよい。本発明の方法は、第1めっき浴からの残留物を除去するために洗浄または清浄するステップを更に含んでもよい。また、前記第2の層の電気めっきステップの後に、前記第2の層の電気めっきステップからの残留めっき溶液を除去するために洗浄または清浄するステップを更に含んでもよい。請求項において使用されている用語「汚染物質」は次のステップにとって好ましくない任意の物質(液体または固体)を指し、従って、汚れと、オイルと、汚染物質の除去より前に実行されたステップからの残留物及び付着性電気めっき堆積物を受取る準備をするステップからの残留物とを含む。
【0015】
本発明の方法は、金属コア上に該第1の層を電気めっきするステップより前に「ストライク」のステップを含んでもよい。そのようなストライクは該金属コアの表面を擦り、通常、銅又はニッケル等の金属の薄い保護層を生成し、該第1の電気めっき層の付着性を保証する。一般に、この薄い保護層は約0.1μm〜約1.0μm厚である。
【0016】
該第2の層が電気めっきされた後、ブランク(該金属コアとそれに付着された該第1、第2の層との複合材)を従来の技法を使用して所望の完成品に成形することができることを更に保証するために、めっき後ステップが実行されてもよい。このめっき後ステップは、周知のように応力除去を含んでもよい。また、輝く銀白色仕上げを望むのであればブランクを磨いてもよい。従って、本発明のブランクは、通常、ニッケル系仕上げで実現されるのと同様の銀白色仕上げの硬貨、トークン、及びメダルに成形するのに適切である。
【0017】
本発明の他の実施形態は、金属コアと単一の白色青銅層から成る。この白色青銅層は銅イオンとスズイオンとを含むめっき浴から電気めっきされる。この実施形態では、銅又は銅合金の層は必要ない。
【0018】
本発明によって、外面にニッケルが露出していないブランクが製造される。従って、該ブランクは、消費者、ユーザ、レジ係、出納係、及び製造プロセスに携わる人々をアレルギーがあるかも知れないニッケルとの接触に曝すことのない硬貨、トークン、及びメダルの製造に適している。様々なサイズと種類の金属コアが使用されてよい。人々をニッケルに曝す硬貨、トークン、及びメダルに代わるものを製造できるように、また本発明により新しい種類の硬貨、トークン、及びメダルを製造できるように、該金属コア、第1の層、及び第2の層の厚みは、広い範囲に亘って変更が可能である。また、本発明の硬貨、トークン、及びメダルの重量は、重量に敏感な機械、例えば、自動販売機及び地下鉄トークン受け付け機械が受けつけるように制御可能である。
【0019】
本発明の方法は、少数のステップしか含まず、硬貨、トークン、及びメダル用のブランクの製造者にとって既知の技術を使用する。また、このようなブランクを作製するための材料とプロセスは高価ではない。本発明の硬貨、トークン、及びメダルは、含まれる金属の価値をその硬貨、トークン、及びメダルの価値より低く抑えて製造することができる。額面を持たない鍵及び他の非入れ子式部品の場合、該鍵及び他の非入れ子式部品に含まれる金属の価値は、商業上妥当な範囲内に保たれる。また、本発明のブランクを、金型を使った圧断等の従来の技法を使用して完成品に成形することができるので、これらのブランクから硬貨、トークン、又はメダルを製造する貨幣製造者又は他の製造者は、プロセスを変更したり追加の投資をしたりする必要がない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
図1と図2は、本発明のコインブランクの一実施形態の断面図と斜視図をそれぞれ示す。この実施形態において、コインブランク10は、コア12と、第1電気めっき層14と、第2電気めっき層16とから成る。コア12は、銅及び銅合金が電気めっきされる金属又は金属合金から成る。この金属又は金属合金の候補は、亜鉛、ニッケル、鉄、銅、アルミニウム、及びそれらの任意の合金と、硬貨、トークン、メダル等で使用される他の任意の金属又は合金とを含む。第1電気めっき層14は、銅イオンを含むめっき浴から後述のように生成され、一例では第1電気めっき層14は約60重量%〜100重量%の銅を含む。第2電気めっき層16は、白色青銅を含む。この白色青銅層16は銅イオンとスズイオンとを含むめっき浴から生成される。一例では白色青銅層16は約70重量%〜約10重量%の銅と残りの約30重量%〜約90重量%のスズとを含む。
【0021】
図1と図2に関連して示した組成のコインブランクは、銀白色の外観を有することは当業者によって理解されるであろう。また、コインブランク10はトークンまたはメダルを製造するのに使用されるブランクを構成してもよいことは理解されるであろう。コインブランク10は円い板として例示されているが、コインブランク10は円くなくてもよい。楕円、三角形、長方形、正方形、五角以上の多角形、又は不整形を含む他の形状も本発明の範囲内にあると思慮される。更に、コインブランク10のコア12は、額面を超える価値を有する物品(硬貨、トークン、又はメダル)とならないように妥当なコストの非貴金属から成ることは理解されるであろう。
【0022】
本発明の硬貨、トークン、又はメダルの製造方法の一実施形態を考える。本発明の製造方法は、硬貨、トークン、又はメダルのための金属ブランク(地板)を作製/形成するステップと、該地板に銅の層を電気めっきするステップと、該銅層に銅とスズの合金である白色青銅の層を電気めっきするステップとを含む。該銅層と白色青銅層とを電気めっきされたブランクは、最終の形(硬貨、トークン、メダル、又は類似の物品)に金型又は他の周知の方法を用いて成形される。
【0023】
本発明によると、出発原料又は基板は、製造する硬貨、トークン、又はメダルに近い形状とサイズの金属地板から成る。一実施形態では該金属地板は、約500μm〜約4,000μmの厚みの板によって構成される。多数の該地板が、めっきバレルに入れられるか又はめっきラックに載せられ、該地板上に存在する可能性のある汚れ、オイル等のいかなる汚染物質も除去可能な一連のクリーナとリンス(洗浄剤)によって処理される。該地板(コア)から汚染物質を除去するために、又は該地板に電気めっき堆積物を付着させる準備として、出発原料として選択された金属に依って、酸に浸す、又はアルミニウムの場合は亜鉛酸塩浸漬堆積等の追加の処理ステップが必要となる又は望まれる場合があることが理解されるであろう。
【0024】
該地板から汚染物質を除去した後、次のステップは、金属表面を水素泡で擦り、同時に、後述するように該第1電気めっき層の付着性を保証するために、金属(通常は銅)の薄い保護層(0.1〜1.0μm)を堆積させる「ストライク」ステップである。また、幾つかの用途において、他の金属ストライク、主にニッケルが、めっきが困難な出発金属への付着性を保証するために使用される場合がある。
【0025】
該ストライクが該地板に実施された後、該バレルまたはラックは銅めっき浴に入れられる。アルカリ性シアン化銅ストライクを使用する場合、該バレルまたはラックは直接、アルカリ性シアン化銅めっき浴に入れられてもよい。しかし、該ストライク浴の組成と該めっき浴の組成が化学的に相いれない(例えば、シアン化銅ストライクの次に酸性銅めっきが続く)場合、該地板が銅めっき浴に入れられる前に完全な洗浄が行われなければならない。
【0026】
銅めっき浴に入った後、該地板は所望のめっき厚みになるまで、即ち、第1電気めっき層が所望の厚みになるまで電気めっきされる。一般に、そのような所望の厚みは約4μm〜約18μmである。出発金属と第1電気めっき層とからなるユニットが、硬貨、トークン、又はメダルの所望の製造のための金型に適合しないほど大きくなることがなければ、例えば25μmまで及びそれを超える厚みも可能である。
【0027】
第1層は、銅又は銅合金から成る。銅合金の例は、黄色の青銅又は真鍮を含む。黄色青銅第1層の例は、約75重量%〜約99重量%の銅と約25重量%〜約1重量%のスズとを含む。真鍮第1層の例は、約60重量%〜約99重量%の銅と約40重量%〜約1重量%の亜鉛とを含む。
【0028】
銅又は銅合金から成る第1層を生成するために、第1めっき浴は銅イオンを含む。一実施形態では、該第1めっき浴は、第2の金属イオン又は第3の金属イオンを含んでもよい。更に、周知のように、該第1めっき浴は該金属イオンのための錯化剤と、該金属イオンの十分な堆積を達成するのに必要な他の添加剤とを含んでもよい。第1めっき浴の一例は、次の成分を含む。
【0029】

【0030】
第1めっき浴を使用する時、広範囲のめっき厚を達成するために、めっき条件は、バレルプロセスの使用と、温度120〜180°Fと、電流密度3〜10A/ftとを含む。
【0031】
銅めっきサイクルが完了した後、即ち、第1電気めっき層を地板に電気めっきした後、該バレルまたはラックは一連のリンスによって処理され、残留銅めっき溶液を除去する。次に該バレルまたはラックは白色青銅(スペキュラム)めっき浴に入れられる。この白色青銅めっき浴は、銅とスズの二元合金を第1電気めっき層上に堆積させ、白色青銅の第2電気めっき層を形成する。本発明の一実施形態によれば、白色青銅の第2電気めっき層の組成は、約70重量%〜約10重量%の銅と残りの約30重量%〜約90重量%のスズとを含む。
【0032】
第2電気めっき層の実際の組成は、周知のように、該めっき浴の銅、スズ、シアン化物、及び水酸化物の相対濃度を維持することで制御される。一般に、陰極溶解及び/又は化学物質の添加によって、銅とスズが該めっき浴に供給される。周知のように、該めっき浴の平衡が維持されるのを保証するために不活性の陰極と多数の調整剤が使用されてもよい。
【0033】
従って、白色青銅合金からなる第2電気めっき層を作製するために、該第2めっき浴は銅イオンとスズイオンとを含む。一実施形態では、該第2めっき浴は銅イオンとスズイオンとに加えて他の金属イオンを含んでもよい。更に、周知のように、第2めっき浴は該金属イオンのための錯化剤と、該金属イオンの十分な堆積を達成するのに必要な他の添加剤とを含んでもよい。第2めっき浴の一例は、次の成分を含む。
【0034】

【0035】
上記の濃度は、広範囲に亘って可変である。多分、自由シアン化物イオンと自由ヒドロキシルイオンの比は最も重要な制御パラメータである。該第2めっき浴を使用する時に、広範囲のめっき厚を達成するために、めっき条件は、バレルプロセスの使用と、温度140〜160°Fと、電流密度3〜10A/ftと、銅と炭素(独立調整剤)から成る陰極と、スズ源であるスズ酸カリウムとを含む。
【0036】
白色青銅層を下地の該銅層の厚み以下の厚みに堆積させるのが望まれる場合がある。しかし、出発金属、第1電気めっき層及び第2電気めっき層の厚みの規定は、硬貨、トークン、又はメダルを適切な厚みを有する完成品に成形できるような規定であるべきである。また、該白色青銅層の厚みは、該白色青銅層が当該製品の通常の磨耗によってなくならないように、少なくとも4μm程度であるべきである。
【0037】
硬貨用に鋼ブランクを使用する場合、通常、そのコアに堆積される層の総厚みは25μmとなるように処理されてきた。従って、硬貨用途の場合、該第1層と第2層の総厚みが25μm以上であることが望まれる場合がある。また、いずれかの層又は該第1層と第2層とを合わせた厚みの上限は、完成品の所望の厚みによって変わる。
【0038】
白色青銅めっきサイクルが完了した後、周知のように、該バレルまたはラックは一連のリンスによって処理され、残留めっき溶液を除去する。また、周知のように、汚れ防止剤が該白色青銅層に塗布されてもよい。次に、第1及び第2電気めっき層が積層された該地板は、引続くプロセスのために乾燥され集められる。
【0039】
該白色青銅合金めっき層と該基板材の性質に依って、良い成形性を保証するために、即ち、めっきされた該ブランクが所望の完成品に成形されうることを保証するために、めっき後応力除去プロセスが必要となるか又は望まれる場合がある。通常、該ブランクは、輝く銀白色仕上げとなるように磨かれる。幾つかの例では、めっきのままの輝きで十分である場合がある。最後に、周知のように、従来の成形金型とプレスを使用して該ブランクは仕上げの外観へと成形される。
【0040】
白色青銅めっきの場合、応力を除去するために鋼基板をベークする必要はない。研磨プロセスは、もし必要な場合、除去するべき酸化物がないので強くなくてよい。出発材料として亜鉛が使用される場合、硬貨、トークン、又はメダルのめっきの総厚みは約8μm程度でもよい。このため、必要なめっき時間がかなり削減され、成形金型の寿命がかなり延びる。該基板金属の種類にかかわらず、白色青銅仕上げは、非アレルゲン性の表面を提供する。このことは、多量のコインを取扱う仕事をする人々にとって特に重要である。
【0041】
再び、図1と図2を参照すると、本発明の別の実施形態によれば、コインブランクは、コア12と第2層16だけを含めばよく、第1層14はまったく必要でなくまた好ましくもないことがある。現在、一般にスズは銅より高価である。従って、現在の経済性は、白色青銅の第2めっき層と、その下の銅又は銅合金の第1めっき層との両方の使用を示唆する。しかし、2つの電気めっき層を有する硬貨、トークン、又はメダルの製造コストは、単一の電気めっき層を有する硬貨、トークン、又はメダルより高い。従って、銅又は銅合金の第1層と白色青銅の第2層との両方か、又は白色青銅の層だけを使用するかを考える時は、コインブランクの成形性とともに、材料と製造の総コストを考慮しなければならない。
【0042】
例えば、亜鉛又は亜鉛合金のコアが使用される場合、出願人の経験では、総めっき厚み8μmは米国ペニー等の硬貨にとって十分である。外側めっき層が銅より硬い場合、良い成形性を達成するために、銅めっきからなる第1層が必要であるかもしれない。従って、約65%の銅と約35%のスズとを含む白色青銅等の銅より硬い白色青銅合金の場合は、約4μm以上の厚みの銅めっきの第1層の上に該第1層の厚み以下の厚みの白色青銅の第2層を積層するのが望ましい。しかし、約20%の銅と約80%のスズとを含む白色青銅等の幾つかの白色青銅合金は、銅より軟らかい。銅より軟らかい白色青銅合金が使用される場合、銅又は銅合金の第1層は必要でない。
【0043】
別の例として、鋼コアから成るブランクを考える。鋼コア上に積層された全ての白色青銅合金は良い成形性を有し、従って、銅又は銅合金の第1層は必要でない。一般に、鋼コアを有するブランクを硬貨に使用する場合、総めっき厚みは腐食耐性のために約25μm以上であることが望ましい。従って、白色青銅層だけが該鋼コアに積層される場合、その白色青銅層は約25μm以上の厚みであることが望ましい。上述したように、現在の経済性の点では、25μm以上の厚みの白色青銅の単一層を製造するより、約13μm〜約18μmの厚みの銅又は銅合金の第1層と約8μm〜約13μmの厚みの白色青銅の第2層とを有するコインを製造する方がより効果的であるかも知れない。
【0044】
金属コアと白色青銅の単一層から成るブランクを作製するために、本発明の方法の一実施形態は、(a)金属コアから汚染物質を除去するステップと、(b)該金属コアを「ストライク」するステップと、(c)該ストライクの組成と白色青銅めっき浴の組成が相いれない場合、該金属コアを洗浄するステップと、(d)白色青銅めっき浴を用いて白色青銅層を電気めっきするステップと、(e)該白色青銅層で覆われた該金属コアを洗浄するステップとを含む。
【0045】
本発明により新しい製品、即ち、様々な基板をベースとしニッケルを全く含まず成形プロセスに耐える白色の硬貨、トークン、及びメダルが提供されることは当業者によって理解されるであろう。特に、これにより腐食・磨耗耐性白色仕上げの亜鉛系コインの製造が可能となる。亜鉛は入手の容易さと妥当なコストのために基板材料として望ましい。従来は、亜鉛系硬貨、トークン、又はメダルの唯一の可能な仕上げは銅と黄色青銅であった。また、本発明において、ニッケルを基板または出発材料として使用することが可能である。ニッケル基板を有する本発明の硬貨、トークン、又はメダルは、ニッケルを含むが、第1電気めっき層によって覆われた後は、このような物品の取扱い者は、下地の該ニッケルに曝されることはない。
【0046】
また、本発明は所望の重量の硬貨、トークン、及びメダルの開発を可能にすることは当業者によって理解されるであろう。重量が変えられるのは、異なる基板材料を使用でき、また第1と第2電気めっき層の厚みを変えられるからである。
【0047】
更にまた、本発明の被覆されたブランクを硬貨、トークン、及びメダルを製造するために現在使用されているプロセスを用いて成形してもよいことは理解されるであろう。当該物品は完成品に仕上げられ、打刻される又は成形されるのに十分な延性を有する。従って、その点で、製造に対する追加の投資は必要でない。更にまた、第1と第2電気めっき層を作製するための電気めっきプロセスは業界標準であり、従って、製造業者によく知られていることは理解されるであろう。
【0048】
図3と図4は、本発明の鍵の一実施形態の断面図と斜視図とをそれぞれ示す。この実施形態では、鍵20はコア22と、第1電気めっき層24と、第2電気めっき層16とを含む。コア22は、銅又は銅合金が電気めっきされる金属又は金属合金から成る。この金属又は金属合金の候補は、亜鉛、ニッケル、鉄、銅、アルミニウム、及びそれらの任意の合金と、鍵等で使用される他の任意の金属又は合金とを含む。図3と図4の実施形態において、コア22は更に開口28を備える。鍵20の第1電気めっき層24は銅又は銅合金から成る。第2電気めっき層26は白色青銅から成る。
【0049】
図3と図4の鍵20は、図1と図2のコインブランク10に関して上述した方法によって製造されてもよい。また、本発明の別の実施形態によれば、鍵はコア22と第2電気めっき層26だけを含み、第1電気めっき層24は必要でない。硬貨に関して上述したコア及び電気めっき層の組成の様々な変形例が鍵20及び他の小さな非入れ子式部品に適用可能であることは当業者によって理解されるであろう。また、硬貨、トークン、及びメダルに関して上述した利点も同様に、鍵及び他の小さな非入れ子式部品にあてはまる。
【0050】
図3と図4は、本発明に従って作製され、形が不整で開口を有する物品を示す。本発明の方法は、異なる形と厚みを有する様々な異なる種類の物品を作製するのに有用である。本発明は、バレルめっき及び大量仕上げ(例えば、振動ボウル・デバリング又は遠心力ディスク磨き)等の大量処理に適した小さな非入れ子式部品に有用である。そのような物品の具体例は、鍵とロック部品、ねじ留め金具(ねじ、ボルト、ナット等)、及び他の小さな金属物(ノブ、ハンドル、ブラケット等)を含む。
【0051】
請求項において使用されている用語「コイン」は硬貨、トークン、メダル、及び金属又は金属合金から成り、その表面に金属成形プロセスによって1つ以上のしるし、図案等が形成された他の製品を指す。
【0052】
本明細書及び請求項において使用されている用語「非入れ子式」部品は、浴内において入れ子にならない部品を意味する。
【0053】
請求項において使用されている用語「物品」は鍵及び他の非入れ子式部品を指すが、上記で定義された「コイン」を含まない。このような鍵及び他の非入れ子式部品は、通常、金属又は金属合金から成り、バレルめっき及び大量仕上げ(例えば、振動ボウル・デバリング又は遠心力ディスク磨き)等の大量処理に適している。該他の非入れ子式部品の例は、鍵とロック部品、ねじ留め金具(ねじ、ボルト、ナット等)、及び他の小さな金属物(ノブ、ハンドル、ブラケット等)を含む。
【0054】
本発明は、本開示の思想と範囲内で更に変更が可能である。従って、この出願は、本発明の基本原理を使用する任意の変更、使用、又は改造を含むよう意図されている。また、この出願は、本技術分野における既知または通例の実施範囲に入り、また添付の請求項に定義された範囲に入るような、本開示から逸脱するものも含むよう意図されている。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明のコインブランクの一実施形態の断面図である。
【図2】図1の実施形態のコインブランクの斜視図である。
【図3】本発明の鍵の一実施形態の断面図である。
【図4】図3の実施形態の鍵の斜視図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外側表面を有する金属コアと、
該金属コアの該外側表面に付着され、これを覆う第1電気めっき層であって、約4μm〜約25μmの厚みを有し約60重量%〜約100重量%の銅を含む第1電気めっき層と、
該第1電気めっき層に付着され、これを覆う第2電気めっき層であって、約4μm〜約25μmの厚みを有し約70重量%〜約10重量%の銅と残りの約30重量%〜約90重量%のスズとを含む第2電気めっき層と、
を備えたコイン。
【請求項2】
前記金属コアが、亜鉛または亜鉛合金の一方を含む請求項1に記載のコイン。
【請求項3】
前記金属コアが、ニッケルまたはニッケル合金の一方を含む請求項1に記載のコイン。
【請求項4】
前記金属コアが、鉄または鉄合金の一方を含む請求項1に記載のコイン。
【請求項5】
前記金属コアが、銅または銅合金の一方を含む請求項1に記載のコイン。
【請求項6】
前記金属コアが、アルミニウムまたはアルミニウム合金の一方を含む請求項1に記載のコイン。
【請求項7】
前記金属コアが地板を含む請求項1に記載のコイン。
【請求項8】
前記地板の厚みが約500μm〜約4,000μmである請求項7に記載のコイン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2008−515050(P2008−515050A)
【公表日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−533509(P2007−533509)
【出願日】平成17年9月6日(2005.9.6)
【国際出願番号】PCT/US2005/031735
【国際公開番号】WO2006/036479
【国際公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【出願人】(506390395)ジャーデン ジンク プロダクツ,インコーポレイテッド (2)
【Fターム(参考)】