説明

電気コネクタ

【課題】一対のコネクタの嵌合過程で両コネクタの嵌合状態を検知できる嵌合検知部材を備えた電気コネクタを提供すること。
【解決手段】第1コネクタ14ハウジングの外壁面に第1係止突起16を備え、第2コネクタ2は、内側ハウジング4とその外周囲を覆う外側ハウジング5とを有し、両ハウジングの間に隙間Sをあけると共に、嵌合検知部材8が挿入される収容穴Sを設け、該収容穴内に一対の第1ストッパー突起5と第2ストッパー突起5と一端を内側ハウジング4に固定し先端部を自由端とした弾性変形可能なロックアーム7とを設け、ロックアーム7は、先端部7の両端にそれぞれ押圧部7及び第1ストッパーを備え、嵌合検知部材8は、平行に対向する一対の弾性変形可能な第1、第2指片を有し、これらはそれぞれの対向面に作動部及びストッパー係合部を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、雄型コネクタと雌型コネクタとからなる電気コネクタに係り、特に、両コネクタの嵌合状態を検知できる検知手段を備えた電気コネクタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
雄型コネクタと雌型コネクタとからなる電気コネクタは、通常、両コネクタを結合した状態で不意に外れないようにロック手段が設けられている。ところが、両コネクタの嵌合の途中、例えば半嵌合状態でも両コネクタのコンタクト端子が互いに電気的に接続されることがあり、このような場合、ロックされない状態で結合されるので、使用中に両コネクタの結合が不意に外れてしまうことがある。そこで、このような半嵌合状態の結合を防止するために、嵌合状態を検知できる嵌合検知手段を設けた電気コネクタが知られている。
【0003】
例えば、下記特許文献1(米国特許第5,720,623号明細書)に開示された電気コネクタ25は、図10に示すように、互いに嵌合接続される一対の第1、第2コネクタ26、27を備え、一方の第2コネクタ27は、そのコネクタボディー28とカバー29との間に所定大きさの空洞穴30が形成され、この空洞穴30は、長手方向に貫通しており、この空洞穴内にロックアーム31及び嵌合検知部材32(Connector Position Assurance、以下、CPAという)が装着された構成となっている。
【0004】
ロックアーム31は、所定の幅及び長さを有する長方形状の弾性アームからなり、この弾性アームは、後端がハウジングの後方に固定され先端部が差込口まで延設されて、コネクタボディー28及びカバー29との間に所定の隙間が設けられて、この隙間内で上下方向に弾性変形されるようになっている。この弾性ロックアーム31は、所定幅及び長さの細溝31aが長手方向に形成されている。この細溝31aには、CPA32の先端突起33が挿入される。また、カバー29は、その長手方向の両側壁面に第1、第2係止穴29、29が形成されている。
【0005】
また、CPA32は、先端突起33及びロック突起34、34を有する一対のサイドアーム35、35と、このサイドアームに連結されたL字状の操作タブ36と、を有し、この操作タブ36のL字状の端部にそれぞれのサイドアームが連結された構成となっている。CPA32の一対のロック突起34、34は、カバー29の第1、第2係止穴29、29に係合される。
【0006】
このCPA32を用いた嵌合状態の検知は、予め第2コネクタ27の空洞穴30にCPA32が装着される。CPA32が空洞穴30内に装着されるとCPA32の先端突起33がロックアームの細溝31aの端部に突き当り係止され、一方ロック突起34が第1係止穴29、29に係合される。この状態で第1コネクタ26が第2コネクタ27に差込まれると、第1コネクタの係止突起26aが先ずロックアーム31先端の下方に当接されて、さらに第1コネクタが差込まれると、係止突起26aがロックアーム31の細溝31aに到達してこの溝内に入り込み、CPA32の先端突起33を押し上げて、ロックアーム31の細溝31aの端部と先端突起33との係止が外れる。この先端突起33の係止が外れると、CPA32の押し込みが可能になり、このCPAを押し込む。この押し込みにより、CPA32のロック突起がカバーの第2係止穴に係合されて、第1、第2コネクタが正規の状態で結合されたことが検知できる。また、下記特許文献2(欧州特許出願公開第EP0840398A1号明細書)には、コネクタハウジングの上面に弾性を有するストップウイング(stop wing)を設けた係止部材を一体に設け、この係止部材にCPAをスライド移動自在に装着して、一対のコネクタの結合状態を検知できるようにした電気コネクタが開示されている。
【特許文献1】米国特許第5,720,623号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第EP0840398A1号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1及び特許文献2に開示された電気コネクタは、いずれも第1、第2コネクタの一方のコネクタハウジングに予めCPAを装着しておき、両第1、第2コネクタの嵌合結合時にCPAの押し込みを試み、この押し込みでCPAが所定位置まで差し込まれたときは両コネクタが正規の嵌合状態であることが検知され、途中で係止されたときは正規の嵌合位置になく不完全結合状態であることが検知できる。しかしながらこれらの電気コネクタは、第1、第2コネクタの嵌合過程において両コネクタの嵌合状態を検知できず、CPAの押し込みによって半嵌合状態と分かったときに再度両コネクタの嵌合操作とCPAの装着との両方の作業が必要となる。この操作はときに作業者に不安感を与えることがある。
【0008】
そして、電気コネクタの使用態様によっては、第1、第2コネクタの嵌合度合いとCPAの押し込み操作の度合いとの協働で両コネクタを嵌合した方が嵌合状況をより確実にできる場合がある。例えば、第1、第2コネクタの嵌合操作とCPAの操作とを幾つかのステップに分けて、これらのステップを経て結合する方が、作業者に不安感を与えずに結合できる場合がある。
【0009】
また、上記特許文献1及び特許文献2に開示された電気コネクタは、CPAが装着されるコネクタは、いずれもCPAが長手方向と直交する方向へ弾性変形されるので、コネクタハウジングが背高になる。さらに、上記特許文献2に開示された電気コネクタは、CPAがコネクタハウジングに装着された状態で露出されるので、このCPAに物などが衝突して破損等することがある。
【0010】
本発明は、このような従来技術が抱える課題を解決するためになされたもので、本発明の目的は、一対のコネクタの嵌合過程で両コネクタの嵌合状態を検知できる嵌合検知部材を備えた電気コネクタを提供することにある。
【0011】
また、本発明の他の目的は、嵌合検知部材を一部品で形成してコストの低減を図るとともにコネクタハウジングへの装着を容易にした電気コネクタを提供することにある。
【0012】
本発明のさらに他の目的は、小型化を図った電気コネクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、本願の第1の態様にかかる電気コネクタの発明は、第1コンタクト端子が装着された第1コネクタと、該第1コンタクト端子と電気的に接続される第2コンタクト端子が装着された第2コネクタと、該第1、第2コネクタを嵌合し該嵌合状態を検知する嵌合検知部材と、を備えた電気コネクタにおいて、前記第1コネクタは、前記第1コンタクト端子を装着したハウジングの外壁面に第1係止突起を備え、前記第2コネクタは、前記第2コンタクト端子を装着した内側ハウジングと、前記第1コネクタの差込み口となる部分を除く該内側ハウジングの外周囲を覆う外側ハウジングとを有し、該内側ハウジングと外側ハウジングとの間には前記第1コネクタが差込まれる隙間をあけると共に、該隙間に連通して前記嵌合検知部材が挿入される収容穴を設け、該収容穴内に、一対の第1ストッパー突起と第2ストッパー突起と一端を前記内側ハウジングに固定し先端部を自由端とした弾性変形可能なロックアームとを設け、該ロックアームには、前記第1コネクタの第1係止突起と係合される係合溝を設けると共に、前記先端部の両端にそれぞれ押圧部及び第1ストッパーを備え、前記嵌合検知部材は、平行に対向する一対の弾性変形可能な第1、第2指片を有し、該第1、第2指片はそれぞれの対向面に前記ロックアームの押圧部が押し当たる作動部及び前記第1ストッパーに係合されるストッパー係合部を設け、前記嵌合検知部材を前記第2コネクタの収容穴内の前記ロックアームと前記外側ハウジング間の隙間にスライド移動自在に装着して、前記第1、第2コネクタのいずれか一方のコネクタを他のコネクタに差し込んで前記第1係止突起により前記ロックアームを押し上げるコネクタ第1差込み操作、該嵌合検知部材を該収容穴へ押し込む検知部材第1押し込み操作、さらに該コネクタを差し込んで前記ロックアームの押し上げを解除するコネクタ第2差込み操作、該嵌合検知部材をさらに押し込む検知部材第2押し込み操作を順に実行して該第1、第2コネクタを嵌合接続することを特徴とする。
【0014】
上記発明によれば、第1、第2コネクタの結合は、一方のコネクタを他のコネクタに差し込むコネクタの第1差込み操作後に、嵌合検知部材を第2コネクタの収容穴へ押し込む検知部材の第1押し込み操作を行い、この第1押し込み操作後にコネクタをさらに差し込むコネクタの第2差込み操作後に、嵌合検知部材をさらに押し込む検知部材の第2押し込み操作を順に経て行う。すなわち、第1、第2コネクタの結合は、コネクタの第1差込み操作、嵌合検知部材の第1押し込み操作、コネクタの第2差込み操作、嵌合検知部材の第2押し込み操作を経て嵌合結合するので、両コネクタの結合は、それぞれのコネクタの差込み度合いに応じて嵌合検知部材の押し込みが可能になり、コネクタと嵌合検知部材との連係操作により第1、第2コネクタの結合を確実に行うことができる。換言すると、第1、第2コネクタの結合は、両コネクタの差込み操作と嵌合検知部材の押し込み操作との交互の連続した操作となり、この一連の操作で両コネクタと嵌合検知部材の連係を確認しながら嵌合できるので第1、第2コネクタの結合が確実になる。
【0015】
また、上記発明において、前記第1、第2ストッパー突起は、前記収容穴内の前記外側ハウジングの内壁面から所定の間隔をあけて突出させた所定高さの支柱突起で形成し、該ロックアームが前記第1コネクタの第1係止突起で押上げられたときに、該ロックアームの先端部が前記支柱突起に衝突しないように該支柱突起と前記ロックアームの先端部との間に隙間を設けたことを特徴とする。
【0016】
上記発明によれば、第1、第2ストッパー突起を収容穴内の外側ハウジングの内壁面から所定の間隔をあけて突出させた所定高さの支柱突起にすることにより突起の形成が簡単になる。また、ロックアームが第1コネクタの第1係止突起で押上げられたときにこのロックアームの先端部が支柱突起に衝突しないように支柱突起とロックアームの先端部との間に隙間を設けることにより、収容穴の背高を低くでき、第2コネクタの小型化が可能になる。
【0017】
また、上記発明において、前記嵌合検知部材は、前記第1、第2指片の一端を連結部で連結し、他端を自由端としたU字型に形成し、該連結部を押し込み操作部としたことを特徴とする。
【0018】
上記発明によれば、嵌合検知部材をU字型にすることにより背低にした収容穴に収容できるので、第2コネクタハウジングの小型化が可能になる。また、連結部を押し込み操作部にすることにより収容穴への挿入操作が容易になる。
【0019】
また、上記発明において、前記第1、第2指片の各ストッパー係合部は、前記第2コネクタのストッパー突起が入り込む大きさの凹部で形成し、該凹部の内部側壁面に前記第1ストッパーが突き当るようにしたことを特徴とする。
【0020】
上記発明によれば、第1、第2指片のストッパー係合部を第2コネクタのストッパー突起が入り込む大きさの凹部とすることにより、このストッパー係合部を簡単に形成できる。
【0021】
また、上記発明において、前記ロックアームの押圧部及び前記嵌合検知部材の作動部は、それぞれ所定角度の傾斜面で形成したことを特徴とする。
【0022】
上記発明によれば、ロックアームの押圧部及び嵌合検知部材の作動部をそれぞれ所定角度の傾斜面で形成することにより、この傾斜面を利用して嵌合検知部材をスムーズに押し広げることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、図面を参照して本発明の最良の実施形態を説明する。但し、以下に示す実施形態は、本発明の技術思想を具体化するための電気コネクタを例示するものであって、本発明をこの電気コネクタに特定することを意図するものではなく、特許請求の範囲に含まれるその他の実施形態のものも等しく適応し得るものである。なお、図1は本発明の一実施形態に係る電気コネクタの斜視図、図2Aは図1の雌型コネクタハウジングの一部外壁を切除した斜視図、図2Bは図2Aの切除したハウジング内部の斜視図、図3は図1の雌型コネクタを分解した分解斜視図である。
【0024】
電気コネクタ1は、図1及び図3に示すように、複数本の雌型コンタクト端子12が収容される雌型コネクタハウジング(以下、雌型ハウジングという)3を有する雌型コネクタ2(第2コネクタ)と、これらの雌型コンタクト端子12(第2コンタクト端子)に接続される雄型コンタクト端子19(第1コンタクト端子)が収容される雄型コネクタハウジング(以下、雄型ハウジングという)15を有する雄型コネクタ14(第1コネクタ)と、を備え、雌型コネクタ2は、雌型ハウジング3内に雄型コネクタ14との嵌合状態を検知する嵌合検知部材(以下、CPAという)8が装着される構成を有している。以下、この電気コネクタ1を構成する雌型コネクタ2、CPA8及び雄型コネクタ14を順次図面を参照して説明する。
【0025】
先ず、図2〜図4を参照して雌型コネクタの構成を説明する。
雌型コネクタ2は、図3に示すように、複数本の雌型コンタクト端子12と、これらの雌型コンタクト端子12が収容される雌型ハウジング3と、この雌型ハウジング3内に装着されるCPA8と、雌型ハウジング3内に雌型コンタクト端子12が正確に装着されたか否かを検知する端子検知部材10(以下、TPAという)と、雌型ハウジング3の後方端部に装着されるカバー部材11と、雌型コンタクト端子12が挿入されてその外周囲をシールして水などの浸入を阻止するシール部材9と、雄型コネクタ14との結合時に水などの浸入を阻止するシール部材13と、を有している。
【0026】
雌型ハウジング3は、図2に示すように、雌型コンタクト端子12が装着される内側ハウジング4と、この内側ハウジング4の前後を除く外周側壁面を覆う外側ハウジング5とを有し、内側ハウジング4と外側ハウジング5とは、そのハウジング間に所定の隙間をあけて、両ハウジング4、5の後方部で結合されている。この雌型ハウジング3は、電気絶縁性合成樹脂材からなる成型体で形成されている。
【0027】
内側ハウジング4は、所定の横幅、高さ及び奥行きを有する直方体形状をなしており、
その後方部には、カバー部材11が装着される突出部4が形成されている。この内側ハウジング4には、長手方向の前方から後方の突出部4方向へ向かって、複数本の雌型コンタクト端子12が装着される複数本の貫通穴として装着穴4が形成されている。
複数本の雌型コンタクト端子12は、突出部4側のそれぞれの装着穴4から挿着される。また、この突出部4の側壁面には、カバー部材11が係止される係止突起4A1が形成されている。内側ハウジング4の側壁には、TPA10が挿入される装着穴6が形成されている(図2参照)。
【0028】
外側ハウジング5は、図2及び図3に示すように、内側ハウジング4の外周壁面を覆う外周壁5〜5で覆い、前方に雄型コネクタ14の雄型ハウジング15が差込まれる差込口が形成され、後方が内側ハウジング4の後方壁4に繋がれている。外周壁5〜5は、上壁5、底壁5及び両側壁5、5で形成されている。内側及び外側ハウジング4、5間には、雄型ハウジング15が差込まれる差込隙間S及びCPA8が挿入される収容穴Sが形成されている。外側ハウジング5の上壁5は、CPA8の把持部が挿入されるように、後方部5A'の一部が切除されて、収容穴Sの内部が露出されている(図1参照)。
【0029】
収容穴Sは、図2に示すように、内側ハウジング4の上壁面と外側ハウジング5の上壁5との間に、CPA8の他に後述するロックアーム7が設けられる大きさになっている。この収容穴Sは、隙間H及び幅長Wを有している。このうち、隙間Hは、ロックアーム7の裏面と内側ハウジング4の上壁面4との間の隙間Hと、ロックアーム7の上面と外側ハウジング5の上壁5の裏面間の隙間Hに板厚Dが加わった高さとなっている。また、この収容穴Sの幅長Wは、CPA8の幅長より若干幅広に形成されてCPA8の挿入ができるようになっている。この上壁5の裏面は、収容穴S内にあって内側ハウジング4の上壁面4に対して上方に位置した天井壁面5A0となっている。
【0030】
ロックアーム7は、所定の肉厚D、横幅及び長さを有する舌片状の弾性板状体で形成されている。このロックアーム7は、図2Bに示すように、基部7が内側ハウジング4の後方壁に形成されて、この基部7から前方へ延設されたものとなっている。肉厚Dは、弾性変形する厚さを有するとともに、水平の延びた状態では各第1天井突起5、5(第1ストッパー突起)に接触しないようになっている。横幅は収容穴Sの幅長Wより短くなっている。
【0031】
このロックアーム7は、略中央部に雄型ハウジング15の係止突起16が係合される係合溝7が形成されている。この係合溝7は、両側辺7、7及び前方の先端部7で囲まれている。先端部7は、その両側の側壁面に後述するCPA8の指片の傾斜面と当接してこの指片を押し広げる働きをする傾斜面7が形成されている(図2B参照)。なお、図2Bでは、一側壁の傾斜面7を図示しているが、先端部の他端側にもこの傾斜面が形成されている。これらの傾斜面7は後述するCPA8の第1、第2指片8、8を押し広げる押圧部となっている。また、先端部7の後方には顎部7が形成されている(図7B参照)。この顎部7はこのCPA8の押し込みを一時的に係止させるいわゆるストッパーとなっている。
【0032】
このロックアーム7は、その基部7が内側ハウジング4の後壁に形成されて先端部7が自由端となって、基部7を基点にして上方へ弾性変形可能になっている。この構成により、雄型コネクタ14との結合時に、雄型ハウジング15が差込まれるとその係止突起16が先端部7に当接し、この当接によりロックアーム7は基部7を基点にして上方へ押上げられる。この押上げにより先端部7の突出した両側壁面の各傾斜面7、7がCPA8の傾斜面8、8に当接して、CPA8の第1、第2指片8、8間の隙間を押し広げる。さらに雄型ハウジング15が押し込まれると、係止突起16が先端部7を摺接しながら先端部7の裏面7を摺接しながら通過して係合溝7に入り込む。係止突起16が係合溝7に入り込むと、ロックアーム7は、自身の弾性復元力により降下して係止突起16に係合され、雄型ハウジング15が雌型ハウジング3に係止される。
【0033】
収容穴S内には、図2Bに示すように、天井壁面5A0にその壁面から下方へ向けて突出した3個の天井突起5、5、5が形成されている。一対の第1天井突起5、5は、柱状突起からなり、収容穴Sの前方に位置して後述するCPA8の押し込みを規制する働きをする。第2天井突起5(第2ストッパー突起)は、収容穴Sの後方、すなわち雌型コンタクト端子12接続側に位置してCPA8の細溝と対峙する。これらの第1、第2天井突起5、5は、ロックアーム7の移動の障害にならない箇所に設けられ、その高さもロックアーム7に接触しない高さになっている。
【0034】
次に、図4を参照してCPA8の構成を説明する。なお、図4は、図3のCPAを拡大した斜視図である。
【0035】
CPA8は、間に所定の隙間8をあけて平行に対向する一対の弾性変形可能な第1、第2指片8、8とこれらの指片の一端を繋ぐ連結部8とを有し、各指片8、8端部が開放し全体形状がU字型をなし、電気絶縁性の合成樹脂成形体で形成されている。このCPA8は、長手方向の長さL、幅長Wを有し、所定の肉厚を有する板状体で形成されている。また、連結部8は、指先で把持し易い大きさの把持部となっている。この把持部を設けることにより、雌型ハウジング3の収容穴Sへの挿入が容易になる。隙間8は、U字状の入口が広い隙間8G1と奥部が幅狭の細溝8G2とで形成されている。入口の隙間8G1は、入口から距離L引っ込んだ箇所に形成されている。なお、この距離Lは長さLの略半分になっている。
【0036】
間隔Wは、一対の天井突起5、5間の間隔Wより若干狭く形成されている(図2参照)。すなわち、この隙間Wは天井突起5、5間の隙間Wより狭く(W<W)形成されるが、各指片8、8が外方へ拡張されたときにこの隙間Wが隙間Wより大きく(W>W)なるように設定されている。これらの隙間W、Wを上記のように設定すると、CPA8を収容穴Sに挿入したときには、CPA8の各先端部8、8が各天井突起5、5に衝突してそれ以上の挿入が係止されて、またこの各指片8、8が拡張することにより、この係止状態が解除される。また、隙間8G2を設けることにより各指片8、8の弾性変形が容易になる。また、収容穴SにCPA8が挿入されたときにこの隙間8G2に天井突起5が入り込み位置決めの働きをする。
【0037】
ここで一対の第1、第2指片8、8は同じ形状を有しているので、以下には一方の指片8について説明する。
【0038】
指片8は、連結部8から前方へ延設され、途中から内側壁面が所定の形状に加工されている。すなわち、この指片8は、所定の形状を有する先端部8と、この先端部から若干引っ込んだ箇所の内壁面に設けた凹部8とを有している。先端部8は、平坦面からなる端部8と、内側壁面から下方へ向けて鋭角に傾斜させて設けた傾斜面8とを有している。この傾斜面8は、雄型コネクタ14との結合時に雌型ハウジング3のロックアーム7の傾斜面7が当接されて、この指片8を外方向へ弾性変形させる働きをするいわゆる作動部となっている。凹部8は、天井突起5が入り込む大きさを有し、いわゆるストッパー係合部としてこの天井突起5が嵌まり込み係合されるようになっている。この凹部8の一方の側壁面、すなわち連結部8に近い側の側壁面8は、ロックアーム7の顎部7(図6参照)と衝突して、CPA8の挿入を阻止するストッパーとなっている。この凹部8は、天井突起との係合及びロックアーム7の顎部7に突き当って、一時押し込みを阻止するストッパーの機能を有したストッパー係合部となっている。
【0039】
図1及び図3を参照して、雌型コンタクト端子、TPA、カバー部材及びシール部材を説明する。
雌型コンタクト端子12は、雌型コンタクト12及びこの雌型コンタクト12に接続されたリード線12とで構成されている。カバー部材11は、内側ハウジング4の突出部4に嵌入される大きさの箱型をなし、電気絶縁性の樹脂成形体で形成されている。このカバー部材11は、底壁11に装着穴4に連通する挿通穴11が形成されている。この底壁11から延びて外周壁には、複数本の細溝及び対向する側壁に係合溝11が形成されている。外周壁に複数本の細溝を形成することにより、弾性変形が容易になり、突出部への装着が簡単になる。シール部材9は、内部に雌型コンタクト端子を挿通する挿通穴9を有し、所定の肉厚を有する弾性材、例えばゴム材で形成されている。シール部材13は、内側ハウジング4の外周囲に圧入されて、雄型コネクタ14との間でシールするもので、内部に内側ハウジング4を挿通する開孔13を有し、所定の肉厚を有する弾性材、例えばゴム材で形成されている。
【0040】
次に、図1乃至図4を参照して、雌型コネクタ2の組立てを説明する。
先ず、カバー部材11及びシール部材9の各挿通孔9にそれぞれ雌型コンタクト端子12を挿通して、シール部材9を内側ハウジング4の突出部4に当接し、この突出部4にカバー部材11を係止して、雌型コンタクト端子12を雌型ハウジング3内に挿入する。
次いで、外側ハウジング5の切欠き溝5D1からTPA10を差し込んで、各コンタクト端子12を雌型ハウジング3内に位置決め固定する。その後、雌型ハウジング3の後方から、CPA8の第1、第2指片8、8を収容穴Sに差込む。この差込により、CPA8の先端部8、8が天井突起5、5に突き当りブロックされる。これにより、雌型コネクタ2の組立てが完了する。
【0041】
図5を参照して雄型コネクタを説明する。なお、図5は雄型コネクタを分解した分解斜視図である。
【0042】
雄型コネクタ14は、図5に示すように、複数本の雄型コンタクト端子19と、これらの雄型コンタクト端子19が収容される雄型ハウジング15と、この雄型ハウジング15内に雄型コンタクト端子19が正確に装着されたか否かを検知する端子検知部材20(以下、TPAという)と、雄型ハウジング15の後方、すなわち雄型コンタクト端子19接続側の端部に装着されるカバー部材18と、雄型コンタクト端子19が挿入されてその外周囲をシールして水等の浸入を防止するシール部材17と、を有している。
【0043】
雄型ハウジング15は、外周壁15〜15を有し、雌型ハウジング3の内側ハウジング4と外側ハウジング5との隙間に挿入することができる大きさの筒状体からなり、電気絶縁性の合成樹脂で形成されている。この雄型ハウジング15には上側の外周壁15に1個の係止突起16が設けられている。
【0044】
雄型コネクタ14の組立ては、先ず、カバー部材18及びシール部材17の各挿通孔にそれぞれ雌型コンタクト端子12を挿通して、シール部材17を雄型ハウジング15内に挿入し、カバー部材18を係止して、雄型コンタクト端子19を雄型ハウジング15内に挿入する。次いで、雄型ハウジング15の前方から端子検知部材20を装着部材21と共に装着して雄型コネクタ14の組立てが完了する。
【0045】
次に、主に図6〜図9を参照して、雌型コネクタと雄型コネクタとの接続及びCPA8の作用を説明する。なお、図6〜図9は雌型コネクタと雄型コネクタとの接続過程を説明する説明図であって、図6は雌型コネクタに雄型コネクタを差込んだ最初の結合状態を示した断面図、図7Aは図6の状態からさらに雄型コネクタを差込んだ結合状態を示した断面図、図7Bは図7AのX部分の拡大図、図8は図7の状態からさらにCPAを差込んだ結合状態を示した断面図、図9Aは図8の状態からさらに雄型コネクタを差込んだ結合状態を示した断面図、図9Bは最終の結合状態を示した断面図である。
【0046】
図1及び図2に示すように、雌型コネクタ2には、予め、雌型ハウジング3の収容穴SにCPA8を装着しておく。このCPA8の装着は、収容穴Sへの差込みにより行われる。雌型ハウジング3の収容穴SにCPA8を差込むと、図2、図6に示すように、CPA8のそれぞれの先端部8、8が収容穴S内の各天井突起5、5に突き当り、この状態でCPA8が収容穴S内に装着される。CPA8が装着された雌型ハウジング3に、雄型コネクタ14の雄型ハウジング15を差込む。この最初の差込みで、図6に示すように、雄型ハウジング15の係止突起16が雌型ハウジング3に設けたロックアーム7の先端部7の裏面7に当接される。また、この段階ではCPA8の凹部8の側壁面8と収容穴S内のロックアーム7の顎部7との間にギャップGAがあいている。なお、CPA8及びロックアーム7にはそれぞれ対をなした凹部8及び顎部7が形成されているが、図6〜図9ではコネクタを長手方向で切断した断面を図示しているので、以下これらの対をなす部材、例えば凹部8及び顎部7など対になっている部材はその一方を図示して説明する。
【0047】
先ず、雄型ハウジング15を雌型ハウジング3へ押し込むコネクタの第1差込み操作を行う。この差込み操作により、雄型ハウジング15の係止突起16は、図7に示すように、雌型ハウジング3に設けたロックアーム7の先端部7の裏面7を押し上げる。この押上げにより、ロックアーム7は基部7を基点にして上方へ弾性変形される。このロックアーム7の上方への弾性変形により、先端部7の両側壁面の傾斜面7がCPA8の傾斜面8に当接してCPA8の指片8を外方へ押し広げる。この指片8が押し広げられると、これまで指片8の先端部8が天井突起5に突き当りCPA8の押し込み移動が係止されていたのが、この指片8の押し広げにより先端部8が天井突起5による係止状態から外れてCPA8の押し込みが可能になる。そこで、CPA8を収容穴S内へ押し込むCPAの第1押し込み操作を行う。
【0048】
この押し込み操作により、図8に示すように、凹部8の側壁面8がロックアーム7の顎部7に突き当り、この押し込みが一時的に係止される。この押し込み量はギャップGA分となり、一方CPA8の先端部8が天井突起5の外側面とこのギャップGAと同じギャップGA'分で接触した状態となる。このCPAの第1押し込み操作後に、雄型ハウジング15を押し込むコネクタの第2差込み操作を行う。
【0049】
この差込み操作により、雄型ハウジング15の係止突起16は、図9Aに示すように、係止突起16の先端部がロックアーム7の裏面7を摺接しながら通過して係合溝7に入り込む。係止突起16が係合溝7に入り込むと、ロックアーム7は自身の弾性復元力により降下して係止突起16と係合される。同時に、CPA8の凹部8の側壁面8がロックアーム7の顎部7に突き当っていたのが解除されてCPA8の押し込みが可能になる。そこで、CPA8を収容穴S内へさらに押し込むCPAの第2押し込み操作を行う。
【0050】
この第2押し込み操作により、図9Bに示すように、CPA8の凹部8が天井突起5に入り込みCPA8が係止される。これにより、雄型ハウジング15が雌型ハウジング3内に正確に結合され、雄型コネクタ14と雌型コネクタ2との接続が完了し接続がロックされる。なお、雄型コネクタ14の取外しは、雌型ハウジング3の収容穴S内に工具を差込み、CPA8のロックを外して雄型コネクタ14を引き抜き取外すことにより行う。
【0051】
以上説明したように、雌型コネクタ2と雄型コネクタ14とは、一方のコネクタを他のコネクタに差し込んで第1係止突起によりロックアームを押し上げるコネクタ第1差込み操作、嵌合検知部材を第2コネクタの収容穴へ押し込む検知部材第1押し込み操作、さらに該コネクタを差し込んで前記ロックアームの押し上げを解除するコネクタ第2差込み操作、嵌合検知部材をさらに押し込む検知部材第2押し込み操作の各操作を順に実行して嵌合接続を行う。
【0052】
以上より、雌型コネクタ2と雄型コネクタ14とは、コネクタの第1差込み操作、嵌合検知部材の第1押し込み操作、コネクタの第2差込み操作、嵌合検知部材の第2押し込み操作を経て嵌合するので、第1、第2コネクタの結合は、両コネクタの差込み度合いに応じて嵌合検知部材の押し込みが可能になり、両コネクタと嵌合検知部材との連係操作により第1、第2コネクタの結合を確実に行うことができる。換言すると、雌型コネクタ2と雄型コネクタ14との結合は、両コネクタの差込み操作と嵌合検知部材の押し込み操作との交互の連続した操作となり、この一連の操作で両コネクタと嵌合検知部材の連係を確認しながら嵌合するので両コネクタの結合が作業者に不安感を与えることなく確実にできる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の一実施形態に係る電気コネクタの斜視図である。
【図2】図2Aは図1の電気コネクタを雌型コネクタハウジングの一部外壁を切除して示した斜視図、図2Bは図2Aの切除したハウジング内部の斜視図である。
【図3】雌型コネクタを分解した分解斜視図である。
【図4】図3のCPAを拡大した斜視図である。
【図5】雄型コネクタを分解した分解斜視図である。
【図6】雌型コネクタに雄型コネクタを差込んだ最初の結合状態を示した断面図である。
【図7】図7Aは図6の状態からさらに雄型コネクタを差込んだ状態を示した断面図、図7Bは図7AのX部分の拡大図である。
【図8】図7の状態からさらにCPAを押し込んだ状態を示した断面図である。
【図9】図9Aは図8の状態からさらに雄型コネクタを差込んだ状態を示した断面図、図9Bは図9Aの状態からさらにCPAを押し込んだ最終の結合状態を示した断面図である。
【図10】従来技術の電気コネクタの外観斜視図である。
【符号の説明】
【0054】
1 電気コネクタ
2 雌型コネクタ(第2コネクタ)
3 雌型(コネクタ)ハウジング
4 内側ハウジング
5 外側ハウジング
、5 第1、第2天井突起(第1、第2ストッパー突起)
収容穴
7 ロックアーム
係合溝
傾斜面(押圧部)
顎部(第1ストッパー)
先端部
8 嵌合検知部材(CPA)
、8 第1、第2指片
連結部(操作部)
凹部(ストッパー係合部)
先端部
傾斜面(作動部)
10 端子検知部材(TPA)
12 雌型コンタクト端子(第2コンタクト端子)
14 雄型コネクタ(第1コネクタ)
15 雄型(コネクタ)ハウジング
16 係止突起
19 第1コンタクト端子
隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1コンタクト端子が装着された第1コネクタと、該第1コンタクト端子と電気的に接続される第2コンタクト端子が装着された第2コネクタと、該第1、第2コネクタを嵌合し該嵌合状態を検知する嵌合検知部材と、を備えた電気コネクタにおいて、
前記第1コネクタは、
前記第1コンタクト端子を装着したハウジングの外壁面に第1係止突起を備え、
前記第2コネクタは、
前記第2コンタクト端子を装着した内側ハウジングと、前記第1コネクタの差込み口となる部分を除く該内側ハウジングの外周囲を覆う外側ハウジングとを有し、該内側ハウジングと外側ハウジングとの間には前記第1コネクタが差込まれる隙間をあけると共に、該隙間に連通して前記嵌合検知部材が挿入される収容穴を設け、該収容穴内に、一対の第1ストッパー突起と第2ストッパー突起と一端を前記内側ハウジングに固定し先端部を自由端とした弾性変形可能なロックアームとを設け、該ロックアームには、前記第1コネクタの第1係止突起と係合される係合溝を設けると共に、前記先端部の両端にそれぞれ押圧部及び第1ストッパーを備え、
前記嵌合検知部材は、
平行に対向する一対の弾性変形可能な第1、第2指片を有し、該第1、第2指片はそれぞれの対向面に前記ロックアームの押圧部が押し当たる作動部及び前記第1ストッパーに係合されるストッパー係合部を設け、
前記嵌合検知部材を前記第2コネクタの収容穴内の前記ロックアームと前記外側ハウジング間の隙間にスライド移動自在に装着して、前記第1、第2コネクタのいずれか一方のコネクタを他のコネクタに差し込んで前記第1係止突起により前記ロックアームを押し上げるコネクタ第1差込み操作、該嵌合検知部材を該収容穴へ押し込む検知部材第1押し込み操作、さらに該コネクタを差し込んで前記ロックアームの押し上げを解除するコネクタ第2差込み操作、該嵌合検知部材をさらに押し込む検知部材第2押し込み操作を順に実行して該第1、第2コネクタを嵌合接続することを特徴とする電気コネクタ。
【請求項2】
前記第1、第2ストッパー突起は、前記収容穴内の前記外側ハウジングの内壁面から所定の間隔をあけて突出させた所定高さの支柱突起で形成し、該ロックアームが前記第1コネクタの第1係止突起で押上げられたときに、該ロックアームの先端部が前記支柱突起に衝突しないように該支柱突起と前記ロックアームの先端部との間に隙間を設けたことを特徴とする請求項1に記載の電気コネクタ。
【請求項3】
前記嵌合検知部材は、前記第1、第2指片の一端を連結部で連結し、他端を自由端としたU字型に形成し、該連結部を押し込み操作部としたことを特徴とする請求項1に記載の電気コネクタ。
【請求項4】
前記第1、第2指片の各ストッパー係合部は、前記第2コネクタのストッパー突起が入り込む大きさの凹部で形成し、該凹部の内部側壁面に前記第1ストッパーが突き当るようにしたことを特徴とする請求項3に記載の電気コネクタ。
【請求項5】
前記ロックアームの押圧部及び前記嵌合検知部材の作動部は、それぞれ所定角度の傾斜面で形成したことを特徴とする請求項1に記載の電気コネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−301775(P2009−301775A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−152645(P2008−152645)
【出願日】平成20年6月11日(2008.6.11)
【出願人】(506110586)エムイーエィ テクノロジーズ プライベート リミテッド (19)
【Fターム(参考)】