説明

電気コネクタ

【課題】コンタクト端子の微摺動を抑制して、相手方コンタクト端子との接触抵抗の増大及び接触不良をなくした耐振構造の電気コネクタを提供する。
【解決手段】一端に電線Cが接続されたコンタクト端子と、このコンタクト端子が収容される端子収容孔及び端子収容孔に連通されて電線Cを露出させて配設させる電線収容部を有する電気絶縁性のコネクタハウジング3と、電線収容部を覆って電線Cを所定位置に保持するリヤホルダ13とを備え、リヤホルダ13は、電線収容部を覆う対向面に電線を挟んで保持する複数本の挟持歯14、14が並設され、コネクタハウジング3は、電線収容部に挟持歯が電線Cを挟持して挟持歯を固定する固定手段が設けられ、コネクタハウジング3にコンタクト端子が装着されて電線収容部がリヤホルダ13で覆われたときに、電線収容部から露出された電線Cが挟持歯の間に挟まれて挟持歯14、14が固定手段10で固定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、相手方コネクタに着脱自在に結合される電気コネタクに係り、詳しくはコンタクト端子に接続された電線に外力(振動)が掛かっても、この外力がコネクタハウジングに装着されたコンタクト端子に伝動されるのを抑制して、相手方コネクタとの電気的接続を良好に維持できるようにした耐振構造の電気コネクタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車には、多数の電気、電子機器などが搭載されて、これらの電気、電子機器がマイクロコンピュータによって制御されるようになっている。これらの電子、電子機器は、ワイヤーハーネスやフラットケーブル等などの接続線で接続されている。これらの接続線は、部品の組立てやメンテナンスなどを考慮して、接続が簡単でしかも取外しが自在な一対の雌雄コネクタを介して行われている。
【0003】
例えば、下記特許文献1には、一対のコネクタの結合をロックするロック機構及びコンタクト端子がハウジングから抜け出すのを防止する抜け止め機構を備えたコネクタが開示されている。
【0004】
以下、図11、図12を参照して、この特許文献1に開示されているコネクタを説明する。なお、図11はソケットコネクタとベースコネクタとを分離した状態の概略斜視図、図12は図11のコネクタを連結した状態の縦断面図である。
【0005】
このコネクタ30は、基板面に固定されるベースコネクタ31と、このコネクタに結合されるソケットコネクタ32とからなり、両コネクタに両コネクタの結合をロックするロック機構及びソケットコネクタにコンタクト端子の抜け止め機構が設けられている。
【0006】
ベースコネクタ31は、合成樹脂製のベースハウジング33と、このベースハウジング33を貫通する状態で横並びに配置された、複数のコンタクト端子34とを備えている。ソケットコネクタ32は、合成樹脂製のソケットハウジング35と、このハウジング35を縦方向に貫通する横並びの複数の収容孔36にそれぞれ収容保持され、各ケーブル37の端部を固定したソケット型のコンタクト端子38とを備えている。ベースコネクタ31及びソケットコネクタ32は、両コネクタのコネクタハウジングの外壁面にロック機構44が設けられている。
【0007】
ソケットコネクタ32に収容されるこのコンタクト端子38は、先端からソケット型のコンタクト39、ケーブル37の芯線を圧着するワイヤーバレル40、及びケーブル37の被覆部を固定するインシュレーションバレル41を備えている。42はハウジングランスに係合する係合片である。ソケットハウジング35の外壁面43には、ロック機構44よりも装着方向A側の位置に、複数の弾性係止片45がU字形形状の溝により区画形成されている。これらの弾性係止片45は幅方向に並んでいる。各弾性係止片45は、収容孔36内に挿入された端子38の係合片42に弾性的に係合して抜け止めする、いわゆるハウジングランスを構成している。
【0008】
また、下記特許文献2には、コンタクト端子に接続された電線を保持して耐振構造のコネクタが開示されている。このコネクタは、ハウジング本体と、このハウジング本体の上下壁にヒンジを介して回動自在に連結され、上下壁面のそれぞれの後端側に形成された開口部を閉鎖可能にするリヤホルダとを備えている。リヤホルダは、端子収容室を覆い、圧接端子を保護するとともに、圧接端子に接続された電線をハウジング本体からの抜け出しを阻止するものとなっている。すなわち、このリヤホルダは、その内側表面に、各端子収容室に対応した位置で内側表面から突出して、リヤホルダが閉じられたとき、端子収容室内の圧接端子と係止して、圧接端子の浮き上がりなどを阻止する係止突起体が設けられている。また、リヤホルダには、係止突起が左右端端部に設けられ、リヤホルダを閉じたとき、ハウジング本体の係止溝に係合してリヤホルダの閉塞状態を維持するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2000−164294号公報(段落〔0017〕〜〔0022〕、図1、図2)
【特許文献2】特開2002−15809号公報(段落〔0017〕〜〔0021〕、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
この種のコネクタは、広い範囲の用途に使用されて来ているが、自動車などに使用されると、コネクタ及びこのコネクタから導出された電線に外力(振動)が加わる。特にコネクタから導出された電線は、長尺でしかも車両内に引き回されるので、広範囲で外力が掛かり、さらにこの外力が増幅されてコネクタハウジング内に装着されたコンタクト端子に伝動される。振動による外力が電線の長手方向のものであると、上記特許文献1、2のコネクタは、いずれも抜け止め機構を備えているので、この抜け止め機構により電線に接続されたコンタクト端子はハウジングから抜け出すことがない。
【0011】
しかしながら、振動による外力が電線の長手方向と直交する方向であると、電線には直交する方向の左右及び上下の反復移動運動となって加わり、電線がそれらの方向へ上下及び横振れなどして微摺動する。電線が微摺動すると、この微摺動が電線に接続されたコンタクト端子へ伝動されて、このコンタクト端子とこのコンタクト端子に電気的に接触接続された相手方コンタクト端子との間に伝動される。そして、この微摺動が大きくなると、両コンタクト端子の結合状態に影響を与えて接触抵抗の増大及び接触不良などの接触トラブルの原因となる。
【0012】
そこで、本発明は、このような課題を解決するためになされたもので、本発明の目的は、
コンタクト端子に接続された電線に外力(振動)が加わっても、コネクタハウジング内でのコンタクト端子の微摺動を抑制して、相手方コンタクト端子との接触抵抗の増大及び接触不良を抑制した耐振構造の電気コネクタを提供することにある。
【0013】
本発明の他の目的は、上記目的に加え、コンタクト端子の抜け止め機構を設けた耐振構造の電気コネクタを提供することにある。
【0014】
本発明のまた他の目的は、電線を保持するリヤホルダをコネクタハウジングと一体成型品にして、部品点数を少なくし、しかも金型構造を簡単にした耐振構造の電気コネクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するために、本発明の請求項1に係る電気コネクタは、一端に電線が接続された良導電性のコンタクト端子と、前記コンタクト端子が収容される端子収容孔及び前記端子収容孔に連通されて前記電線を露出させた状態で配設させる電線収容部を有する電気絶縁性のコネクタハウジングと、前記電線収容部を覆って前記電線を所定位置に保持するリヤホルダとを備えた電気コネクタにおいて、
前記リヤホルダは、前記電線収容部を覆う対向面に前記電線を間に挟んで保持する複数本の挟持歯が並設され、前記コネクタハウジングは、前記電線収容部に前記挟持歯が前記電線を挟持した状態で該挟持歯を固定する固定手段が設けられ、
前記コネクタハウジングに前記コンタクト端子が装着されて前記電線収容部が前記リヤホルダで覆われたときに、前記電線収容部から露出された前記電線が前記挟持歯の間に挟まれて該挟持歯が前記固定手段で固定されることを特徴とする。
【0016】
また、本発明の請求項2に係る発明は、請求項1に記載の電気コネクタにおいて、前記リヤホルダには、前記電線の個々の電線を挟む一対の挟持歯からなる挟持歯セットが所定の間隔をあけて前記電線の本数に対応したセット数並設されていることを特徴とする。
【0017】
また、本発明の請求項3に係る発明は、請求項1又は2に記載の電気コネクタにおいて、記固定手段は、前記挟持歯の先端が嵌り込む深さの凹み溝、又は噛み合う噛合歯であることを特徴とする。
【0018】
また、本発明の請求項4に係る発明は、請求項2又は3に記載の電気コネクタにおいて、前記挟持歯は、先端部に前記凹み溝、又は噛合歯との接触壁部分に所定角度のテーパーが設けられ、弾性片で形成されていることを特徴とする。
【0019】
また、本発明の請求項5に係る発明は、請求項1に記載の電気コネクタにおいて、前記リヤホルダは、前記電線収容部を覆う蓋体からなり、前記蓋体は一端部が前記コネクタハウジングにヒンジにより回動自在に連結され、前記蓋体と前記コネクタハウジングとが係止及び係止解除自在な係止手段で係止されていることを特徴とする。
【0020】
また、本発明の請求項6に係る発明は、請求項5に記載の電気コネクタにおいて、前記リヤホルダと前記コネクタハウジングとは、前記ヒンジを介して一体成型されていることを特徴とする。
【0021】
また、本発明の請求項7に係る発明は、請求項5又は6に記載の電気コネクタにおいて、前記リヤホルダの前記電線収容部に対向する面には、前記電線収容部に当接して圧縮されるバネ体が形成されていることを特徴とする。
【0022】
また、本発明の請求項8に係る発明は、請求項5に記載の電気コネクタにおいて、前記リヤホルダは、前記コネクタハウジングに対して略180度回動可能に前記ヒンジにより連結されていることを特徴とする。
【0023】
また、本発明の請求項9に係る発明は、請求項1に記載の電気コネクタにおいて、前記コネクタハウジングは、前記端子収容孔内に前記コンタクト端子の抜け止めをする第1のコンタクト係止部が形成されていることを特徴とする。
【0024】
また、本発明の請求項10に係る発明は、請求項1又は9に記載の電気コネクタにおいて、前記リヤホルダは、前記電線収容部との対向面に前記コンタクト端子の抜け止めをする第2のコンタクト係止部が形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
本発明の電気コネクタは下記のような効果を奏する。すなわち、請求項1にかかる電気コネクタの発明によれば、コネクタから導出された電線に外力(振動など)が掛かっても、コンタクト端子に接続された電線がリヤホルダの挟持歯で保持固定されるので、コネクタハウジング内での電線の微摺動が抑制される。その結果、電線に接続されたコンタクト端子への外力(振動)の伝達が阻止されて、このコンタクト端子に接触接続された相手方コネクタとの間の接触抵抗の増大及び接触不良などに起因した接触トラブルを防止できる。
【0026】
また、請求項2の発明にかかる電気コネクタの発明によれば、リヤホルダには、前記電線を間に挟んで保持する一対の挟持歯が電線の本数に対応したセット数並設されているので、所定本数の電線を保持固定して、各電線の微摺動を抑制することができる。
【0027】
また、請求項3の発明にかかる電気コネクタの発明によれば、固定手段を凹み溝、又は噛合歯にすることにより、挟持歯に挟まれた電線を強固に保持できる。
【0028】
また、請求項4の発明にかかる電気コネクタの発明によれば、挟持歯片は、鋭角なテーパーが設けられているので、凹み溝との嵌め込み、又は噛合歯との噛み合いがスムーズになるとともに、このテーパーを利用して、対向する一対の挟持歯の間隔が狭まり、電線の挟持力が強まり電線がより強固に保持固定される。
【0029】
また、請求項5の発明にかかる電気コネクタの発明によれば、リヤホルダは蓋体からなり、この蓋体がコネクタハウジングにヒンジで連結されていので、蓋体がバラバラにならず管理が簡単になる。また、この蓋体とコネクタハウジングとが係止及び係止解除自在な係止手段で係止されるので、電線が接続されたコンタクト端子のコネクタハウジングへの装着及び取外しが簡単になる。
【0030】
また、請求項6の発明にかかる電気コネクタの発明によれば、リヤホルダとコネクタハウジングとは、ヒンジを介して一体成型されるので、部品点数を少なくし、価格の低減が可能になる。
【0031】
また、請求項7の発明にかかる電気コネクタの発明によれば、リヤホルダにバネ体を設けることにより、相手方コネクタのハウジングに嵌合されたときに、このハウジングの内壁とリヤホルダが当接してコネクタのガタを無くし、より振動の強いコネクタになる。
【0032】
また、請求項8の発明にかかる電気コネクタの発明によれば、リヤホルダとコネクタハウジングとは、略180度回動可能にヒンジにより連結されるので、挟持歯を設けたリヤホルダ及び電線収容部など設けたコネクタハウジング成型体を複雑な金型を用いることなく簡単に作製できる。
【0033】
また、請求項9の発明にかかる電気コネクタの発明によれば、第1のコンタクト係止部により、端子収容孔からコンタクト端子の抜けを防止できる。
【0034】
また、請求項10にかかる電気コネクタの発明によれば、第2のコンタクト係止部により、コネクタハウジングからコンタクト端子の抜けを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】図1は本発明の実施形態に係る電気コネクタの斜視図である。
【図2】図2は図1の電気コネクタのコネクタハウジングの斜視図である。
【図3】図3は図2のコネクタハウジングを示し、図3(a)は一側面図、図3(b)は上面図、図3(c)は底面図。図3(d)は正面図、図3(e)は背面図である。
【図4】図4はコネクタハウジングの断面を示し、図4Aは図3(e)のIVA−IVA線の断面図、図4Bは図3(d)のIVB−IVB線の断面図である。
【図5】図5はコネクタハウジングの断面を示し、図5Aは図3(d)のVA−VA線の断面図、図5Bは図3(d)のVB−VB線の断面図である。
【図6】図6はリヤホルダを示し、図3(b)のVI−VI線方向からみた側面図である。
【図7】図7は図1の電気コネクタを示し、図7Aは一側面図、図7Bは背面図である。
【図8】図8は図7の電気コネクタの断面を示し、図8Aは図7AのVIIIA−VIIIA線の断面図、図8Bは図7AのVIIIB−VIIIB線の断面図、図8Aは図7BのVIIIC−VIIIC線の断面図である。
【図9】図9は図8Bの一部を拡大した拡大断面図である。
【図10】図10は図1の電気コネクタの変形例を示した側面図である。
【図11】図11は従来技術の電気コネクタであって、ソケットコネクタとベースコネクタとを分離した状態の概略斜視図である。
【図12】図12は図11のコネクタを連結した状態の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。但し、以下に示す実施形態は、本発明の技術思想を具体化するための電気コネクタを例示するものであって、本発明をこれに特定することを意図するものではなく、特許請求の範囲に含まれるその他の実施形態のものにも等しく適応し得るものである。
【0037】
[実施形態]
図1〜図6を参照して、本発明の実施形態に係る電気コネクタを説明する。なお、図1は本発明の実施形態に係る電気コネクタの斜視図、図2は図1の電気コネクタのコネクタハウジングの斜視図、図3は図2のコネクタハウジングを示し、図3(a)は一側面図、図3(b)は上面図、図3(c)は底面図。図3(d)は正面図、図3(e)は背面図、図4はコネクタハウジングの断面を示し、図4Aは図3(e)のIVA−IVA線の断面図、図4Bは図3(d)のIVB−IVB線の断面図、図5はコネクタハウジングの断面を示し、図5Aは図3(d)のVA−VA線の断面図、図5Bは図3(d)のVB―VB線の断面図である。図6はリヤホルダを示し、図3(b)のVI―VI線方向からみた側面図である。
【0038】
図1〜図3に示すように、本発明の実施形態に係る電気コネクタ1は、複数本、例えば4本のコンタクト端子2(図8C参照)と、これらのコンタクト端子2が電線Cに接続された状態で収容される複数本の端子収容孔及びこれらの端子収容孔に連通しコンタクト端子に接続された電線Cの一部を露出させて収容する電線収容部9dを有するコネクタハウジング(以下、ハウジングという)3と、この電線収容部9dを覆い電線を所定位置に保持するリヤホルダ13と、を備えている。リヤホルダ13は、ヒンジ12を介してハウジング3に連結されて該ハウジング3と一体となった成型体で形成されている。このリヤホルダ13は、電線収容部9dを覆う蓋体となっている。なお、リヤホルダは、別名リテーナとも言われている。以下、これらの部品の構造を詳述する。
【0039】
4本のコンタクト端子2は、同じ構成となっている。そのうちの1本が図8Cに示されている。このコンタクト端子2は、図8Cに示すように、一端に相手方コネクタのオス型コンタクト(図示省略)が差込まれるメス型コンタクト2aと、このメス型コンタクト2aから後方へ延設されて電線Cの芯線が圧着接続される芯線圧着部2bと、この芯線圧着部2bの後方へさらに延設されて電線の外被を加締する電線加締部2cとを有し、良導電性の金属板を打ち抜き折曲加工することによって作成されている。電線Cは、複数本の細線を拠り合わせた芯と、この芯線の周囲を覆った絶縁被覆とからなり、所定太さ及び長さを有している。なお、この電線に代えてケーブルを使用してもよい。
【0040】
ハウジング3は、図1、図2に示すように、内部に4本のコンタクト端子2が電線Cに接続された状態で収容される4本の端子収容孔9(図3、図5参照)を設けた端子収容部3Aと、この端子収容部3Aの下方に位置して図示を省略した機器などに取付けるコネクタ取付け部3Bとからなり、電気絶縁性の樹脂成型体で形成されている。端子収容部3Aには、端子収容孔9に連通しコンタクト端子2に接続された電線Cを露出させた状態で収容する電線収容部9dが設けられている。
【0041】
端子収容部3Aは、図2〜図4に示すように、矩形状の底部4と、この底部の周囲から上方へ所定高さ立設した前壁部5及び左右側壁部6A、7Bと、前壁部5及び左右側壁部6A、7Bの頂部にあって底部4と対向した矩形状の上壁部8とで囲まれた直方体ブロックで構成されている。4本の端子収容孔9は、前壁部5から後方に向かって直方体ブロックを貫通した貫通孔で形成されている。これらの端子収容孔9は、隣接する貫通孔間が所定肉厚の隔壁9で仕切られている。また、底部4には、各端子収容孔9内にコンタクト端子2を抜け止めするコンタクト係止部11が形成されている。これらの端子収容孔9は、図4、図5に示すように、前壁部5側にあってメス型コンタクト2aが収容されるコンタクト収容部9aと、このコンタクト収容部9aの後方にあって芯線圧着部2bが収容される圧着部収容部9bと、この圧着部収容部9bの後方にあって電線加締部2dが収容される加締部収容部9cと、この加締部収容部9cの後方にあって電線加締部2dから延びた電線が収容される電線収容部9dとなっている。
【0042】
左右の側壁部6A、7Bは、図1、図2に示すように、上壁部8との角部にヒンジ12が設けられると共にリヤホルダ13の一部が当接される切欠き6a、7aが形成されている。ヒンジ12と切欠き6a、7aとの段差壁に凹み穴6a1、7a1が形成されている。これらの凹み穴6a1、7a1には、リヤホルダ13の係止突起14bが嵌め込まれる。また、これらの側壁部6A、7Bには、前壁部5から後方に向かって凹み溝6A'、7A'及び係止突起6b、7bが形成されている。これらの凹み溝6A'、7A'は、図示を省略した機器に設けたガイド突起に嵌合される。なお符号7A'は、図示を省略したが、側壁部7Aの側壁部7Bに対応した位置に形成されている。
【0043】
端子収容部3Aの左右側壁部6A、7Bは、図示の状態で下方へ所定長さ延設されてコネクタ取付け部3Bの左右側壁部6A、7Bと一体化されている。なお、底、左右及び上の表現は、図示の状態で表したもので、コネクタの使用形態により、例えば、上下が逆になると、これらの表現が変わることになる。
【0044】
コンタクト収容部9aは、前壁部5から後方に向かって、コンタクト端子2のメス型コンタクト2aが収容される大きさの貫通孔となっている。この貫通孔は、前壁部5、左右側壁部6A、7A及び上壁部8の一部で囲まれた部分に形成されている。前壁部5には、図3(d)、図4に示すように、相手方コネクタのオス型コンタクトが差込まれる差込口5a及び端子収容孔9に収容されたメス型コンタクト2aを外部へ離脱させる工具挿入口5bが形成されて、これらの差込口5a及び工具挿入口5bは、コンタクト収容部9aに連通している。圧着部収容部9bは、コンタクト収容部9aの後方にあって、上壁部8の一部が所定長さに亘って切除されて、端子収容孔9に収容されたコンタクト端子2の芯線圧着部2bが露出される開口8bがあいている。この開口幅は、リヤホルダ13の係止部16が押し込まれる大きさになっている。加締部収容部9cは、圧着部収容部9bの後方にあって、コンタクト端子の電線加締部2cが収容される短長の貫通孔となっている。この部分の上壁部8は切除されずに上壁部が残っている。この部分には、リヤホルダ13の開口13aが嵌め込まれる。
【0045】
電線収容部9dは、図2、図4Aに示すように、電線加締部2cから導出された電線Cの一部を露出させるために、加締部収容部9cの後方角部が略L字型に切除された形状になっている。この切除形状は、ハウジング3の上壁部8が無く、しかも隔壁9もL字型、すなわち、加締部収容部9cの部分の隔壁を切除した垂直辺9L1と、この垂直辺の底部から水平に延びる水平辺9L2とを有する形状となっている。この形状により、頂部が水平辺9L2となった隔壁は、その高さが背低となり、底部4から突起されたものとなる。これらの背低隔壁10〜10は、一方の側壁部6Aから他方の側壁部7Aへ向かって並設されて、各端子収容孔9を区画して、対向する一対の背低隔壁間には、後述するリヤホルダの一対の挟持歯先端が押し込まれ、噛み合わされる噛合歯となっている。すなわち、これらの隔壁10〜10は、挟持歯が噛み合わされる噛合歯となることで、挟持歯を固定する固定部10となっている。この固定部10は、特許請求の範囲で固定手段と表現されている。
【0046】
また、これらの噛合歯10〜10は、挟持歯の挿入(噛合)を容易にし、且つ一対の挟持歯間の隙間を狭めて電線Cを強く挟持するために、頂部の稜線部、すなわち、水平辺9L2の長手方向の頂部がその稜線から両側面側に向かって鋭角に傾斜したテーパー部10が形成されている(図9参照)。なお、固定部10は、背低隔壁を利用して噛合歯で構成したが、底部を若干厚くして、挟持歯の先端部が挿入される形状の溝、例えば凹み溝にしたものでもよい。
【0047】
図4に示すように、4本の端子収容孔9は、個々の収容孔の底部4にコンタクト端子2の抜け止めをするコンタクト係止部11が形成されている。このコンタクト係止部11は、差込口5aと反対方向にあって、底部4に一体に結合された固定部11aと、この固定部11aから差込口5a側へ所定長さ延設された弾性片からなる腕片部11bと、この腕片部11bの先端に設けてコンタクト端子2のメス型コンタクト2aに係止される係止部11cと、最先端に位置して係止部11cの係止を解く取外し部11dとを有し、この取外し部11dは工具挿入口5bに対向している。この係止部11cは、特許請求の範囲では、第1のコンタクト係止部と表現されている。
【0048】
端子収容部3Aには、図2に示すように、リヤホルダ13がヒンジ12を介して連結されている。このリヤホルダ13は、端子収容部3Aに一体に連結された成型体からなり、電線収容部9dなどを覆う蓋体となっている。このリヤホルダ13は、端子収容部3Aの圧着部収容部9bから電線収容部9dの範囲を覆う大きさの板状体14に、電線Cを保持する電線保持部15及びコンタクト端子2の抜け止めをする端子係止部16を設けたものとなっている。板状体14は、圧着部収容部9bから電線収容部9dの範囲を覆う大きさの所定肉厚の矩形状をなし、一端に電線保持部15及び他端に端子係止部16が設けられて、端子係止部16側の他端の両端が一対のヒンジ12を介して、端子収容部3Aの上壁部8の両端部に連結されている。ヒンジ12は、可撓性を有する一対の帯状片からなり、これらの帯状片はその一端が上壁部8の前方(前壁部5側)に結合され、他端が板状体14の端部に連結されている。このヒンジ12により、板状体14が端子収容部3Aに対して略180°折曲できるようになっている。板状体14には、電線保持部15と端子係止部16との間に開口14a及び端子係止部16の近傍に係止突起14bが形成されている。ハウジング3は、これらのヒンジ12、リヤホルダ13を含めて、全体が金型成型によって形成されている。
【0049】
電線保持部15は、図2に示すように、板状体14を端子収容部3Aに対して略180°に折曲した状態で、この板状体14の両端から所定高さで立設した左右の側板部14A、14Bと、両側板部間にあって板状体14面から所定高さで立設した複数本の挟持歯14、14とで形成されている。左右側板部14A、14Bは、所定の肉厚を有し、その高さ及び幅長は端子収容部3Aの電線収容部9dを覆う大きさになっている。また、左右側板部14A、14Bには、係止孔14A、14Bがそれぞれ形成されている。複数本の挟持歯14、14は、図6に示すように、板状体14の面から所定の間隔をあけて突出した複数の基台14と、この基台から上方へ突出した1本乃至2本の挟持歯14、14とで構成されている。これらの挟持歯14、14は、左右側板部14A、14Bの高さより若干低く且つ電線Cを間に挟持して保持できる長さにしてある。これらの挟持歯14、14は、弾性片で形成されている。これらの基台14のうち、両側を除き位置する基台は、該基台14の頂部から2本の挟持歯14、14が所定の隙間Gをあけて突出されている。
【0050】
両側の基台14からは、側板部から所定の隙間をあけて1本の挟持歯が突出されている。隣接する基台14及びこの基台14から突出した一対の挟持歯14、14間の隙間Gは、電線Cの太さと略同じ幅長に設定されて、この隙間Gに電線Cが挟持されるようになっている。すなわち、隣接する基台間にあって対向する一対の挟持歯14、14がセットになって、この挟持歯セット14によって、電線Cが挟持され保持される。この実施形態では、左右側板部14A、14B間に4個の挟持歯セット14が並設されている。なお、基台14から突出した2本の挟持歯14、14の隙間は、挟持歯が基台14から傾動できる隙間であって、任意の寸法でよい。挟持歯セット14を構成する一対の挟持歯14、14は、その先端に噛合歯のテーパー部に当接する部分に鋭角なテーパー部14が形成されている。挟持歯14、14及び噛合歯(隔壁10〜10)に、それぞれテーパー部14を設けたことにより、これらの歯の噛合により、対向する一対の挟持歯14、14の両端部が接近する方向へ弾性変形し、その結果、対向する挟持歯4、14間の隙間が狭められて電線Cがより強く挟持されて保持される。この保持により、電線Cに掛かった外力(振動)は、この挟持歯及び噛合歯の噛合の保持により、コンタクトへ伝動が阻止される。この実施形態では、基台に挟持歯を設けたが、基台を不要にして板状体から直接立設させてもよい。また、挟持歯セットにしたが、複数本の挟持歯を電線の太さの間隔をあけて並べたもの、例えば櫛歯状にしたものでもよい。
【0051】
端子係止部16は、圧着部収容部9bに嵌め込まれてコンタクト端子2のメス型コンタクト2aの後方部に当接して抜け止めする係止突起で形成されている。この係止突起は、上壁部8の一部が切除された部分8bから圧着部収容部9bに嵌め込まれる。この端子係止部16は、特許請求の範囲では、第2のコンタクト係止部と表現されている。
【0052】
コネクタ取付け部3Bは、図1、図2に示すように、端子収容部3Aの下方に位置している。このコネクタ取付け部3Bは、端子収容部3Aの左右側壁部6A、7Aが下方へ所定長さ延設された所定肉厚の延設左右側壁部6B、7Bと、これらの側壁部6B、7B間に設けた機器取付け部17とを有し、この取付け部17は、端子収容部3Aの底部4の背面に形成されている。この機器取付け部17は、底部4に一体に結合された固定部17aと、この固定部17aから反対側へ所定長さ延設された弾性片からなる腕片部17bと、この腕片部17bの先端に設けて機器に係止される係止部17cと、最先端に位置して係止部の係止を解く取外し部17dとで形成されている。
【0053】
図7〜図9を参照して、ハウジング3へのコンタクト端子2の組込み及びこのコンタクト端子に接続された電線Cの保持固定を説明する。なお、図7は図1の電気コネクタを示し、図7Aは一側面図、図7Bは背面図、図8は図7の電気コネクタの断面を示し、図8Aは図7AのVIIIA−VIIIA線の断面図、図8Bは図7AのVIIIB−VIIIB線の断面図、図8Aは図7BのVIIIC−VIIIC線の断面図、図9は図8Bの一部を拡大した拡大断面図である。
【0054】
予め所定長さの電線Cを接続した4本のコンタクト端子2を用意して、これらのコンタクト端子2をハウジング3のそれぞれの端子収容孔9に挿入する。端子収容孔9への挿入は、リヤホルダ13をハウジング3に対して略180°に折曲した状態にして、ハウジング3の後方から各端子収容孔9へ押し込む。それぞれの端子収容孔9へ挿入されたコンタクト端子2は、各端子収容孔9内の第1のコンタクト係止部11に係止される。ハウジング3の電線収容部9dからは、各コンタクト端子2に接続されたそれぞれの電線Cの一部が露出される。次いで、リヤホルダ13を略180°回転させて電線収容部9dに強く押し付ける。この押し付けにより、最初の押し付けで電線保持部15の各挟持歯セット14を構成する一対の挟持歯14、14の先端が各電線Cの間に入り込み各電線Cを挟む。さらに、押し込むと、一対の挟持歯14、14のテーパー部14が各噛合歯10〜10のテーパー部10に接触して、対向する一対の挟持歯14、14間の隙間が狭められて、電線Cを挟持し保持する。そして、リヤホルダ13の係止突起14bが左右側壁部6A、7Aの凹み穴6a1、7a1に嵌め込まれ、左右側壁部6A、7Aの係止突起6b、7bが左右側板部14A、14Bの係止孔14A、14Bに係止されることで、リヤホルダ13は、ハウジング3に係合し、この状態が維持される。
【0055】
この実施形態の電気コネクタによれば、コネクタから導出された電線に外力(振動など)が掛かっても、コンタクト端子に接続された電線がリヤホルダの挟持歯で保持固定されるので、コネクタハウジング内での電線の微摺動が抑制される。その結果、電線に接続されたコンタクト端子への外力の伝達が阻止されて、このコンタクト端子に接触接続された相手方コネクタとの間の接触抵抗の増大及び接触不良などに起因した接触トラブルを防止できる。また、挟持歯片は、鋭角なテーパーが設けられているので、凹み溝との嵌め込み、又は噛合歯との噛み合いがスムーズになるとともに、このテーパーを利用して、対向する一対の挟持歯の間隔が狭まり、電線の挟持力が強まり電線がより強固に保持固定される。
【0056】
図10を参照して電気コネクタ1の変形例を説明する。なお、図10は変形例の電気コネクタ1Aを示した側面図である。この電気コネクタ1Aは、ハウジング3のリヤホルダ13Aの板状体14に電線収容部9dに対向する面に、この面に当接して圧縮される樹脂バネ部14cが設けられている。この樹脂バネ部14cは、ハウジングと一体成型により形成されている。リヤホルダ13Aに樹脂バネ部14cを設けることにより、不図示の相手方コネクタのハウジングに嵌合されたときに、このハウジングの内壁とリヤホルダ13Aが当接してコネクタ1Aのガタを無くし、より振動の強いコネクタになる。
【符号の説明】
【0057】
1、1A 電気コネクタ
2 コンタクト端子
2a メス型コンタクト
3 コネクタハウジング
4 底部
5 前壁部
6、7 側壁部
8 上壁部
9 端子収容孔
9a コンタクト収容部
9b 圧着部収容部
9d 電線収容部
10 固定部(固定手段)
10〜10 噛合歯(隔壁)
10 テーパー部
11 コンタクト係止部
11c 係止部(第1のコンタクト係止部)
12 ヒンジ
13 リヤホルダ
14 板状体
14、14 噛合歯
14 噛合歯セット
14c バネ部
15 電線保持部
16 端子係止部(第2のコンタクト係止部)
17 機器取付け部
C 電線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端に電線が接続された良導電性のコンタクト端子と、前記コンタクト端子が収容される端子収容孔及び前記端子収容孔に連通されて前記電線を露出させた状態で配設させる電線収容部を有する電気絶縁性のコネクタハウジングと、前記電線収容部を覆って前記電線を所定位置に保持するリヤホルダとを備えた電気コネクタにおいて、
前記リヤホルダは、前記電線収容部を覆う対向面に前記電線を間に挟んで保持する複数本の挟持歯が並設され、前記コネクタハウジングは、前記電線収容部に前記挟持歯が前記電線を挟持した状態で該挟持歯を固定する固定手段が設けられ、
前記コネクタハウジングに前記コンタクト端子が装着されて前記電線収容部が前記リヤホルダで覆われたときに、前記電線収容部から露出された前記電線が前記挟持歯の間に挟まれて該挟持歯が前記固定手段で固定されることを特徴とする電気コネクタ。
【請求項2】
前記リヤホルダには、前記電線の個々の電線を挟む一対の挟持歯からなる挟持歯セットが所定の間隔をあけて前記電線の本数に対応したセット数並設されていることを特徴とする請求項1に記載の電気コネクタ。
【請求項3】
前記固定手段は、前記挟持歯の先端が嵌り込む深さの凹み溝、又は噛み合う噛合歯であることを特徴とする請求項1又は2に記載の電気コネクタ。
【請求項4】
前記挟持歯は、先端部に前記凹み溝、又は噛合歯との接触壁部分に所定角度のテーパーが設けられ、弾性片で形成されていることを特徴とする請求項2又は3に記載の電気コネクタ。
【請求項5】
前記リヤホルダは、前記電線収容部を覆う蓋体からなり、前記蓋体は一端部が前記コネクタハウジングにヒンジにより回動自在に連結され、前記蓋体と前記コネクタハウジングとが係止及び係止解除自在な係止手段で係止されていることを特徴とする請求項1に記載の電気コネクタ。
【請求項6】
前記リヤホルダと前記コネクタハウジングとは、前記ヒンジを介して一体成型されていることを特徴とする請求項5に記載の電気コネクタ。
【請求項7】
前記リヤホルダの前記電線収容部に対向する面には、前記電線収容部に当接して圧縮されるバネ体が形成されていることを特徴とする請求項5又は6に記載の電気コネクタ。
【請求項8】
前記リヤホルダは、前記コネクタハウジングに対して略180度回動可能に前記ヒンジにより連結されていることを特徴とする請求項5に記載の電気コネクタ。
【請求項9】
前記コネクタハウジングは、前記端子収容孔内に前記コンタクト端子の抜け止めをする第1のコンタクト係止部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の電気コネクタ。
【請求項10】
前記リヤホルダは、前記電線収容部との対向面に前記コンタクト端子の抜け止めをする第2のコンタクト係止部が形成されていることを特徴とする請求項1又は9に記載の電気コネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−222157(P2011−222157A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−87054(P2010−87054)
【出願日】平成22年4月5日(2010.4.5)
【出願人】(390033318)日本圧着端子製造株式会社 (457)
【Fターム(参考)】