説明

電気二重層キャパシタ電源を用いた搬送装置

【課題】簡素な構成によりコストの増大を抑制しながら、エネルギ損失を少なくして回生電力を有効に活用することができる、電気二重層キャパシタ電源を用いた搬送装置を提供する。
【解決手段】移動体1に電動機6及びその駆動制御装置5を備えるとともに、電動機5の駆動用電源としての電気二重層キャパシタ3を備え、電気二重層キャパシタ3に充電した電力を駆動制御装置5へ供給して電動機6を駆動することにより移動体1を移動させる搬送装置であって、電気二重層キャパシタ3及び駆動制御装置5の間に接続され、電気二重層キャパシタ3側から駆動制御装置5側へ向かってのみ動作する片方向DC−DCコンバータ4と、片方向DC−DCコンバータ4及び駆動制御装置5の間に接続された第2の電気二重層キャパシタ7とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気二重層キャパシタに充電した電力を駆動制御装置へ供給して電動機を駆動することにより移動体を移動させる、電気二重層キャパシタ電源を用いた搬送装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
移動体である自動搬送車に駆動輪を駆動する電動機及びその駆動制御装置を備えるとともに、前記電動機の駆動用電源としての電気二重層キャパシタを備え、工場内の適宜位置に設置した充電ステーションの充電用電源から前記電気二重層キャパシタに充電した電力を前記駆動制御装置へ供給して前記電動機を駆動することにより前記移動体を移動させる、電気二重層キャパシタ電源を用いた搬送装置がある(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
特許文献1のような搬送装置は、電動機の駆動用電源として、非常に大きな静電容量を有し急速充放電特性に優れた電気二重層キャパシタを使用しているため、軽量化することができるとともに、荷物の積み降ろし等の作業時における自動搬送車の停止時間を利用して短時間で充電を完了することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−163016号公報(図1、図4)
【特許文献2】特開平9−322314号公報(図1、図4)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の電気二重層キャパシタ電源を用いた搬送装置において、電気二重層キャパシタ及び駆動制御装置の間に、駆動制御装置側へ向かってのみ動作する片方向(単方向)DC−DCコンバータを接続した一般的な構成では、回生運転の際に電動機から駆動制御装置側に戻る回生電力が前記コンバータによりブロックされることから、駆動制御装置の入力端子の電圧が上昇するため、駆動制御装置や前記コンバータを構成する素子が破損するという問題がある。
【0006】
そこで、回生抵抗ユニットを付加して回生電力を熱エネルギに変換して放散する方式や、片方向DC−DCコンバータを双方向DC−DCコンバータに変更して回生電力を電気二重層キャパシタに蓄電する方式(例えば、特許文献2の図4参照。)が採用される。
【0007】
また、回生時検出手段としての電流検出回路、一端が電気二重層キャパシタ及び片方向コンバータに入力側に接続された回生運転の際に使用される回生電力専用配線、並びに、力行運転の際及び回生運転の際に接続を切り換える切換手段としての切換リレー等を備え、回生電力を回生電力専用配線により電気二重層キャパシタに直接蓄電する方式もある(例えば、特許文献2の図1参照。)。
【0008】
しかしながら、回生電力を熱エネルギに変換する方式は、回生電力を利用せずに無駄にしていることから、省エネルギ及び地球温暖化防止対策等の観点から問題がある。
【0009】
また、双方向DC−DCコンバータにより回生電力を電気二重層キャパシタに蓄電する方式は、DC−DCコンバータが二台分必要になるとともに制御部の構成が複雑になるためコストが嵩むとともに、回生電力を電気二重層キャパシタに蓄電する際に、変換効率が例えば80%程度であるコンバータを通過するためエネルギ損失が大きくなるという問題がある。
【0010】
さらに、回生電力を回生電力専用配線により電気二重層キャパシタに直接蓄電する方式は、回生時検出手段、回生電力専用配線及び切換手段が必要になるためコストが嵩むという問題がある。
【0011】
その上、従来の回生電力を利用する方式では、電気二重層キャパシタに蓄電した回生電力を駆動制御装置に供給する際に必ずコンバータを通過する構成であることから、エネルギ損失が大きくなるという問題がある。
【0012】
そこで本発明が前述の状況に鑑み、解決しようとするところは、簡素な構成によりコストの増大を抑制しながら、エネルギ損失を少なくして回生電力を有効に活用することができる、電気二重層キャパシタ電源を用いた搬送装置を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係る電気二重層キャパシタ電源を用いた搬送装置は、前記課題解決のために、移動体に電動機及びその駆動制御装置を備えるとともに、前記電動機の駆動用電源としての電気二重層キャパシタを備え、該電気二重層キャパシタに充電した電力を前記駆動制御装置へ供給して前記電動機を駆動することにより前記移動体を移動させる、電気二重層キャパシタ電源を用いた搬送装置であって、前記電気二重層キャパシタ及び前記駆動制御装置の間に接続され、前記電気二重層キャパシタ側から前記駆動制御装置側へ向かってのみ動作する片方向DC−DCコンバータと、該片方向DC−DCコンバータ及び前記駆動制御装置の間に接続された第2の電気二重層キャパシタとを備えたものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る電気二重層キャパシタ電源を用いた搬送装置によれば、移動体に電動機及びその駆動制御装置を備えるとともに、前記電動機の駆動用電源としての電気二重層キャパシタを備え、該電気二重層キャパシタに充電した電力を前記駆動制御装置へ供給して前記電動機を駆動することにより前記移動体を移動させる、電気二重層キャパシタ電源を用いた搬送装置であって、前記電気二重層キャパシタ及び前記駆動制御装置の間に接続され、前記電気二重層キャパシタ側から前記駆動制御装置側へ向かってのみ動作する片方向DC−DCコンバータと、該片方向DC−DCコンバータ及び前記駆動制御装置の間に接続された第2の電気二重層キャパシタとを備えたので、片方向DC−DCコンバータの下流側(二次側)で駆動制御装置の上流側(一次側)に位置する第2の電気二重層キャパシタにより回生電力が蓄電されることから、このような回生電力の蓄電の際にコンバータを通過しないため、エネルギ損失を低減することができる。
【0015】
また、回生電力を蓄電した後の力行運転の際には、先ず第2の電気二重層キャパシタに蓄電された電力が使用され、該電力がなくなってから、片方向DC−DCコンバータの上流側(一次側)の電気二重層キャパシタに蓄電された電力が使用され、このように第2の電気二重層キャパシタに蓄電された回生電力が使用される際にコンバータを通過しないため、第2の電気二重層キャパシタに蓄電した回生電力を有効に活用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施の形態に係る電気二重層キャパシタ電源を用いた搬送装置の全体構成の一例を示す概略平面図である。
【図2】充電ステーションに停止した自動搬送車に対して充電を行っている状態を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に本発明の実施の形態を添付図面に基づき詳細に説明するが、本発明は、添付図面に示された形態に限定されず特許請求の範囲に記載の要件を満たす実施形態の全てを含むものである。
【0018】
図1に示す本発明の実施の形態に係る電気二重層キャパシタ電源を用いた搬送装置は、例えば磁気ガイドテープにより形成された工場内の所定経路Rに沿って、前記ガイドテープの位置を検出しながら自走して荷物を運搬する移動体である無人の自動搬送車1,…、所定経路Rの途中に設けられた、充電端子13及び充電用電源10等からなる充電ステーション2A,2B、充電ステーション2A,2Bの位置に設置された、荷物の積み降ろしを行う図示しない積込テーブルリフタ又は降しテーブルリフタ、並びに、各機器の動作を制御するとともに定電流電源である充電用電源10を制御する制御装置11等により構成される。
【0019】
充電ステーション2A,2Bの設置位置には積込テーブルリフタ又は降しテーブルリフタがあり、これらの位置に自動搬送車1が来ると、自動搬送車1は停止して位置決めされ、積込テーブルリフタ又は降しテーブルリフタにより荷物の積み降ろし作業が行われ、この作業時間に相当する自動搬送車1の停止時間を利用して、充電用電源10により駆動用電源である後述する電気二重層キャパシタ3(図2参照。)への充電が行われる。
【0020】
図2に示すように、移動体である自動搬送車1は、その基体に、駆動輪8,8及び従動輪9,9、駆動輪8,8を駆動する電動機6及びその駆動制御装置5、電動機6の駆動用電源としての電気二重層キャパシタ3、電気二重層キャパシタ3に接続された、前記充電端子13と接触結合する受電端子14、電気二重層キャパシタ3及び駆動制御装置5の間に接続され、電気二重層キャパシタ3側から駆動制御装置5側へ向かってのみ動作する片方向DC−DCコンバータ4、並びに、片方向DC−DCコンバータ4及び駆動制御装置5の間に接続された第2の電気二重層キャパシタ7等を備えている。
【0021】
また、充電用電源10に接続される充電端子13は、自動搬送車1側の受電端子14と接触結合を行うことができるとともに、この結合を解除することができるように、制御装置11により制御されるシリンダ12により、受電端子14に近づく方向及び離れる方向へ移動することができる。なお、接触結合する充電端子13及び受電端子14は、電気的に接続される一対のコネクタ等であってもよい。
【0022】
自動搬送車1が充電ステーション2A又は2Bに停止して、図2のように充電端子13が受電端子14と接触結合した状態で、制御装置11により充電用電源10への指令値が演算され、この指令値が充電用電源10へ与えられ、充電電流が充電用電源10から充電端子13及び受電端子14を経由して電気二重層キャパシタ3へ供給される。
【0023】
電気二重層キャパシタ3への充電が完了した自動搬送車1は、制御装置11によりシリンダ12を制御して充電端子13及び受電端子14の接触結合を解除した後、電気二重層キャパシタ3からの放電電力を片方向DC−DCコンバータ4を経由して駆動制御装置5へ供給することにより、電動機6を駆動しながら所定経路Rに沿って移動する。
【0024】
また、電動機6を回生運転する際には、電動機6が発電機となって回生電力が発生するが、この回生電力は、片方向DC−DCコンバータ4の下流側(二次側)で駆動制御装置5の上流側(一次側)にある第2の電気二重層キャパシタ7に蓄電されるため、このような回生電力の蓄電の際に、変換効率が例えば80%程度であるコンバータを通過しないため、エネルギ損失を低減することができる。
【0025】
なお、第2の電気二重層キャパシタ7に回生電力を蓄電して行くと、第2の電気二重層キャパシタ7が接続された母線の線間電圧が徐々に上昇し、この電圧上昇が大きくなると素子が破壊される場合があるため、搬送装置の回生エネルギ量に応じて、前記電圧上昇が設定値以下になるように、第2の電気二重層キャパシタ7の静電容量等の仕様を決定する必要がある。
【0026】
さらに、回生電力を蓄電した後の力行運転の際には、先ず第2の電気二重層キャパシタ7に蓄電された電力が使用され、片方向DC−DCコンバータの出力電圧値まで低下すると、片方向DC−DCコンバータの上流側(一次側)の電気二重層キャパシタ3に蓄電された電力が使用され、このように第2の電気二重層キャパシタ7に蓄電された回生電力が使用される際に、変換効率が例えば80%程度であるコンバータを通過しないため、第2の電気二重層キャパシタ7に蓄電した回生電力を有効に活用することができる。
【0027】
さらにまた、回生電力を蓄電する第2の電気二重層キャパシタ7は、その定格電圧は電気二重層キャパシタ3よりも小さく、その蓄電エネルギは回生電力を蓄えるだけの静電容量があればよいため、コストの増大を抑制することができる。
【0028】
以上の説明においては、電気二重層キャパシタ電源を用いた搬送装置が、ガイドテープに沿って移動体である自動搬送車1,…を移動させる構成である場合を示したが、電気二重層キャパシタ電源を用いた搬送装置は、移動体をガイドレールに沿って昇降させる昇降装置等であってもよい。すなわち、電気二重層キャパシタ電源を用いた搬送装置は、移動体に電動機及びその駆動制御装置を備えるとともに、前記電動機の駆動用電源としての電気二重層キャパシタを備え、該電気二重層キャパシタに充電した電力を前記駆動制御装置へ供給して前記電動機を駆動することにより前記移動体を移動させるものであればよい。
【符号の説明】
【0029】
R 所定経路
1 自動搬送車(移動体)
2A 積込テーブルリフタ(充電ステーション)
2B 降しテーブルリフタ(充電ステーション)
3 電気二重層キャパシタ
4 片方向DC−DCコンバータ
5 駆動制御装置
6 電動機
7 第2の電気二重層キャパシタ
8 駆動輪
9 従動輪
10 充電用電源
11 制御装置
12 シリンダ
13 充電端子
14 受電端子


【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体に電動機及びその駆動制御装置を備えるとともに、前記電動機の駆動用電源としての電気二重層キャパシタを備え、該電気二重層キャパシタに充電した電力を前記駆動制御装置へ供給して前記電動機を駆動することにより前記移動体を移動させる、電気二重層キャパシタ電源を用いた搬送装置であって、
前記電気二重層キャパシタ及び前記駆動制御装置の間に接続され、前記電気二重層キャパシタ側から前記駆動制御装置側へ向かってのみ動作する片方向DC−DCコンバータと、
該片方向DC−DCコンバータ及び前記駆動制御装置の間に接続された第2の電気二重層キャパシタと、
を備えたことを特徴とする、電気二重層キャパシタ電源を用いた搬送装置。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−213534(P2010−213534A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−59463(P2009−59463)
【出願日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【出願人】(000211695)中西金属工業株式会社 (222)
【Fターム(参考)】