説明

電気光学装置、および電子機器

【課題】フレキシブル性と実用強度と放熱性とを兼ね備えた表示装置を提供すること。
【解決手段】表示装置100は、薄型の有機ELパネルである表示パネル18を2枚の樹脂フィルム25a,25bによりラミネートした構造を備えている。ここで、ラミネート構造体25の裏面には、平面的に表示パネル18を覆う補強部材30が取り付けられている。補強部材30は、薄板状の表示パネル18を補強するとともに、当該パネルが放つ熱を放熱するための部材であり、引っ張り強度、および熱伝導率に優れた炭素繊維を含む材料から構成されている。このような構成により、表示装置100は、フレキシブル性と実用強度と放熱性とを兼ね備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気光学装置、および当該電気光学装置を備えた電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
薄型テレビや、携帯電話に用いられるフラットパネルディスプレイには、薄型かつ軽量であることが求められている。また、昨今、新たな用途開拓に向けて柔軟性を持たせたフラットパネルディスプレイが提案されている。
例えば、特許文献1には、100μm以下にまで薄型化した2枚のガラス基板間に有機EL(Electro Luminescence)層を挟持した有機EL表示装置が提案されている。また、当該文献では、薄型化に伴う強度不足を補うために、表裏のガラス基板の外側にそれぞれ樹脂性の補強層を設けることも記載されている。
【0003】
また、特許文献2には、図13に示すように、一対の薄型ガラス基板からなる液晶パネル90を表面および裏面から2枚の透明な樹脂フィルム95a,95bで包み込んでラミネートした構造の表示装置300が提案されている。また、液晶パネル90の表面には、補強層を兼ねた偏光板91が配置されており、裏面には、樹脂性の補強板92が配置されていた。つまり、液晶パネル90は、表裏面に樹脂性の補強板が貼り付けられた状態で、2枚の樹脂フィルム95a,95bによってラミネートされていた。
これらの補強板や、樹脂フィルムのラミネートによる補強構造は、圧縮応力には比較的強いものの、引張り応力に非常に弱いというガラス基板の特性を補うためのものと考察される。また、当該文献には、当該補強構造を有機ELパネルにも適用可能であるとの記載もある。
【0004】
ここで、当該補強構造を自発光デバイスである有機ELパネル(表示パネル)に適用する場合、表示パネルの劣化を防ぐために、表示の際に発生する熱を放熱する必要がある。当該補強構造では放熱についてなんら考慮されていないが、例えば、表示装置300の裏面側の補強板92を熱伝導性に優れたアルミニウム製とすることが考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−19082号公報
【特許文献2】特許第4131639号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、表示装置の裏面側の補強板92をアルミニウム製とする構成では、十分な放熱性を得ることが難しいという課題があった。詳しくは、アルミニウム製の補強板92が樹脂フィルム95bによって覆われているため、熱がラミネート構造体内に籠もってしまうからである。
また、補強板92をアルミニウム製とする構成では、表示装置が反ってしまうという課題もあった。詳しくは、表示パネルに用いられるガラス基板の線膨張係数が約4ppm/℃であるのに対し、アルミニウムの線膨張係数は約24ppm/℃と、約5倍であるため、アルミニウムの熱伸縮に伴って薄い表示パネルが反ってしまう。なお、樹脂フィルムや樹脂製補強板の線膨張係数もガラス基板よりも大きいが、これらを表裏面において対称構成とすることで反り応力は相殺されていた。
【0007】
また、樹脂性の補強板や、樹脂フィルムのラミネートによる従来の補強構造では、十分な実用強度(強靭さ)を得ることが難しいという課題があった。これは、ガラス基板に貼付けられた樹脂性の補強板や、樹脂フィルムは、曲げ応力が加わるとガラス基板に追従して曲がってしまうからである。換言すれば、補強板や樹脂フィルムは、ガラス基板と一緒にガラス基板の限界点(限界半径)まで容易に曲がってしまうため、ガラス基板に亀裂が生じて割れてしまうことがあった。なお、裏面側の補強板をアルミニウム製とした場合も同様であった。
さらに、従来の補強構造では、水分浸入に対する十分なバリア性を得ることが難しいという課題もあった。これは、従来の補強構造では、表裏面に補強板が貼り付けられた状態の表示パネルを2枚の樹脂フィルム95a,95bによってラミネートする構成であるため、表示パネルが厚くなってしまい、ラミネートする際に、表示パネル(有機ELパネル)の周縁部に隙間Gが生じてしまうからである。隙間Gが形成されると、当該隙間Gに水分が浸入する恐れがあるため、水分による有機EL層の劣化を招いてしまう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の適用例又は形態として実現することが可能である。
【0009】
(適用例)
一対のガラス基板間に電気光学層を挟持した表示パネルと、表示パネルの表示領域側の第1の面と、第1の面と対向する第2の面と、を覆うようにラミネートする樹脂フィルムと、を備え、少なくとも第2の面を覆う樹脂フィルム上には、補強部材が設けられており、補強部材は、平面的に第1方向に延在する複数本の炭素繊維を含む第1炭素繊維層と、第1方向と交差する第2方向に延在する複数本の炭素繊維を含む第2炭素繊維層とによる積層構造を含むことを特徴とする電気光学装置。
【0010】
この電気光学装置によれば、その裏面には、補強部材が設けられている。また、補強部材は、第1炭素繊維層と第2炭素繊維層とによる積層構造を含んで構成されている。
ここで、炭素繊維は、PAN(ポリアクリロニトリル)やピッチ等を原料とする長繊維を、1000℃以上の高温で高純度に炭化させたもので、高引張り強度、低い熱変形率(低線膨張係数)、高熱伝導性などを有している。
つまり、樹脂よりも熱伝導率の高い炭素繊維を含む補強部材が樹脂フィルムの外面(最外面)に設けられているため、ラミネート構造体内にアルミニウム製の補強板が配置されていた従来の表示装置よりも表示パネルの発熱を効率良く外部に放熱することができる。
さらに、交差する方向に積層された2層の炭素繊維層を含む積層構造からなる補強部材の線膨張係数は、約1ppm/℃であるため、熱伸縮が激しかった従来のアルミニウムと異なり、電気光学装置の裏面に貼り付けても、反りの発生を防止することができる。
従って、十分な放熱性を有するとともに、反りの発生を防止した電気光学装置を提供することができる。
【0011】
また、炭素繊維の引っ張り強度は、従来の樹脂製の補強板や、アルミニウムに比べて高いため、補強部材が貼り付けられた状態で、炭素繊維の延在方向に曲げ応力が加わったとしても、ガラス基板が限界点(限界半径)まで曲がることを抑制することができる。
さらに、補強部材は、第1方向に延在する複数本の炭素繊維を含む第1炭素繊維層と、第1方向と交差する第2方向に延在する複数本の炭素繊維を含む第2炭素繊維層とによる積層構造を含んでいるため、両者によって平面的にあらゆる方向からの引っ張り強度が高まり、いずれの方向から曲げ応力が加わったとしても、ガラス基板が限界点(限界半径)まで曲がることを抑制することができる。
従って、適用例に係る電気光学装置によれば、十分な実用強度を得ることができる。
【0012】
さらに、補強部材がラミネート構造体の外面に設けられる構造であるため、表示パネルの表裏面に補強板が貼り付けられていた従来の表示装置よりも、表示パネルを薄くすることができる。よって、ラミネートする際に表示パネルの周縁部に発生する隙間を小さくすることが可能となり、水分浸入に対する十分なバリア性を得ることができる。
【0013】
また、補強部材には、グラファイト層が含まれていることが好ましい。
また、グラファイト層は、第2の面を覆う樹脂フィルムと、第1炭素繊維層との間に配置されていることが好ましい。
また、グラファイト層は、第1炭素繊維層と、第2炭素繊維層との間に配置されていることが好ましい。
また、グラファイト層には、平面的に複数の穴が形成されていることが好ましい。
また、第1炭素繊維層、および第2炭素繊維層は、炭素繊維に樹脂を含浸させたプリプレグで形成され、補強部材は、第1炭素繊維層と、第2炭素繊維層とを3層以上積層、および硬化させた積層体であることが好ましい。
【0014】
また、補強部材を第1の補強部材としたときに、第1の面を覆う樹脂フィルムの上に設けられた第2の補強部材を、さらに備え、第2の補強部材は、表示パネルに開口部を有するように形成されていることが好ましい。
また、第2の補強部材の開口形状は、表示領域と同じ形状で設けられるとともに、第2の補強部材は、平面的に表示パネルの端部までを覆う大きさであることが好ましい。
また、第2の補強部材は、第1炭素繊維層と第2炭素繊維層との積層構造またはインバーから構成されていることが好ましい。
また、ガラス基板の厚さは、それぞれ100μm以下であることが好ましい。
【0015】
また、樹脂フィルムは、ポリエチレン系共重合材料であることが好ましい。
また、第2の補強部材の開口部には、表示領域を覆う光学フィルムが設けられており、樹脂フィルムは、表示パネルと第2の補強部材および光学フィルムとを張り合わせる接着剤として機能することが好ましい。
【0016】
また、表示パネルは、一対のガラス基板のうち、いずれか一方のガラス基板の一辺が他方のガラス基板よりも張出した張出し領域が形成されており、張出し領域には、フレキシブルプリント回路基板の一端が接続され、フレキシブルプリント回路基板の一端は、樹脂フィルムによって覆われるとともに、フレキシブルプリント回路基板の他端は、樹脂フィルムの端部から外部に露出していることが好ましい。
また、電気光学層は、有機発光層を含む有機EL層であることが好ましい。
【0017】
上記記載の電気光学装置を表示部として備えたことを特徴とする電子機器。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施形態1に係る表示装置の一態様を示す斜視図。
【図2】図1のf−f断面における表示装置の側断面図。
【図3】図2におけるd部の拡大図。
【図4】CFRPの積層構造を示す模式図。
【図5】表示装置の製造方法の流れを示すフローチャート図。
【図6】(a)、(b)各工程における製造態様を示す図。
【図7】(a)実施形態2に係る表示装置の断面図、(b)、(c)補強部材の一態様を示す斜視図。
【図8】実施形態3に係る表示装置の断面図。
【図9】(a)実施形態4に係る表示装置の断面図、(b)補強部材の一態様を示す斜視図。
【図10】(a)実施形態5に係る表示装置の断面図、(b)補強部材の一態様を示す斜視図。
【図11】(a)、(b)電子機器としての電子書籍を示す斜視図。
【図12】変形例3に係る表示パネルの断面図。
【図13】従来の表示装置の側断面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下の各図においては、各層や各部位を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各層や各部位の縮尺を実際とは異ならしめてある。
【0020】
(実施形態1)
「表示装置の概要」
図1は、本実施形態に係る表示装置の一態様を示す斜視図である。図2は、図1のf−f断面における表示装置の側断面図である。
まず、本発明の実施形態1に係る電気光学装置としての表示装置100の概要について説明する。
【0021】
表示装置100は、薄型の有機ELパネルである表示パネル18を2枚の樹脂フィルム25a,25bによりラミネートした構造を備えたフレキシブルな有機EL表示装置である。なお、以下の説明において、当該ラミネート構造、またはラミネートした状態の表示パネル18のことをラミネート構造体25ともいう。
表示パネル18は、マトリックス状に配置された複数の画素からなる表示領域Vを備えている。また、柔軟性を確保するために表示パネル18を構成する一対の基板の厚さは、それぞれ100μm以下に設定されている。表示領域Vには、赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の各色画素が周期的に配置されており、各画素が出射する表示光によりフルカラーの画像が表示される。なお、カラー表示を行う表示パネルに限定するものではなく、モノクロ表示を行う表示パネルであっても良い。表示領域Vは、横長の長方形をなしており、図1を含む各図においては、当該横方向をX軸方向とし、横方向よりも短い縦方向をY軸方向と定義している。また、表示パネル18の厚さ方向をZ軸方向としている。また、表示領域V側の面を第1の面としての表面、その反対側の面を第2の面としての裏面という。
【0022】
ここで、ラミネート構造体25の背面には、その全面に第1の補強部材としての補強部材30が取り付けられている。また、平面的な補強部材30のサイズは、ラミネート構造体25と略同じサイズに形成されている。補強部材30は、薄板状の表示パネル18を補強するとともに、表示の際に表示パネル18が発する熱を放熱するための部材であり、優れた熱伝導率と引っ張り強度とを兼ね備えるとともに、ガラス基板に近似した線膨張係数を有する炭素繊維を含む材料から構成されている。なお、補強部材30のことを放熱部材30と読み替えても良い。このような構成により、表示装置100は、発熱による表示パネル18の劣化を防止可能な放熱性と、十分な実用強度とを両立するとともに、反りの発生も防止することができる。なお、実用強度とは、図1において点線で示したように、曲げることが可能なフレキシブル性と、曲げても表示パネル18が割れない強靭さとを兼ね備えていることである。
なお、図2に示すように、表示パネル18は、素子基板1と、CF(カラーフィルター)基板16とから構成されており、その一端には、素子基板1の一辺がCF基板16から張出した張出し領域が形成されている。張出し領域には、フレキシブル基板20が接続されている。なお、フレキシブル基板とは、フレキシブルプリント回路の略称である。また、フレキシブル基板20には、駆動用IC(Integrated Circuit)21が実装され、その端部には外部機器と接続するための複数の端子が形成されている。
【0023】
「表示パネルの詳細な構成」
図3は、図2の表示パネル18におけるd部の拡大図である。
続いて、表示パネル18の詳細な構成について説明する。
表示パネル18は、素子基板1、素子層2、平坦化層4、画素電極6、隔壁7、電気光学層としての有機EL層8、共通電極9、電極保護層10、緩衝層11、ガスバリア層12、充填剤13、CF層14、CF基板16などから構成されている。また、素子基板1とCF基板16とに挟持された部位のことを機能層17という。換言すれば、素子層2からCF層14までの積層構造を機能層17という。
素子基板1は、透明な無機ガラスから構成されている。本実施形態では、好適例として、無アルカリガラスを用いている。
素子層2には、各画素をアクティブ駆動するための画素回路が形成されている。画素回路には、TFT(Thin Film Transistor)からなる画素を選択するための選択トランジスターや、有機EL層8に電流を流すための駆動トランジスター3などが含まれており、画素ごとに対応して形成されている。
【0024】
素子層2の上層(Z軸(−)方向)には、例えば、アクリル樹脂などからなる絶縁層である平坦化層4が形成されている。
平坦化層4の上層には、画素ごとに区画されて、反射層5と、画素電極6とがこの順番で積層されている。反射層5は、例えば、アルミニウムなどからなる反射層であり、有機EL層8から素子基板1側に向かう光を反射して、表示に寄与する光にする。
画素電極6は、ITO(Indium Tin Oxide)や、ZnOなどの透明電極から構成されており、画素ごとに素子層2の駆動トランジスター3のドレイン端子と平坦化層4を貫通するコンタクトホールにより接続されている。
隔壁7は、光硬化性の黒色樹脂などから構成され、平面的に各画素を格子状に区画している。なお、素子層2における駆動トランジスター3を含む画素回路は、光による誤動作を防止するために、平面的に隔壁と重なるように配置されている。
【0025】
有機EL層8は、画素電極6、および隔壁7を覆って形成されている。また、図3においては一層の構成となっているが、実際は、それぞれが有機物の薄膜からなる正孔輸送層、発光層、電子注入層などから構成されており、画素電極6上にこの順番に積層されている。正孔輸送層は、芳香族ジアミン(TPAB2Me−TPD,α−NPD)などの昇華性の材料から構成されている。発光層は、赤、緑、青の3色を組み合わせて形成される白色光を放射する多層からなる有機発光材料薄膜から構成されている。電子注入層は、LiF(フッ化リチウム)などから構成されている。
共通電極9は、MgAgなどの金属を、光を透過するようにごく薄く成膜した金属薄膜層である。さらに、抵抗を下げるため、ZnOなどの金属酸化物やTiNなどの金属窒化物層など透明導電膜を積層しても良い。
【0026】
電極保護層10は、SiO2や、Si34、SiOxNyなどの透明で、かつ、高密度により水分を遮断する機能を有する材質から構成されている。
緩衝層11は、熱硬化性のエポキシ樹脂などの透明な有機緩衝層である。
ガスバリア層12は、SiO2や、Si34、SiOxNyなどの透明で、かつ、高密度により水分を遮断する機能を有する封止層であり、有機EL層8への水分の浸入を防止する機能を担う。
充填剤13は、例えば、熱硬化性のエポキシ樹脂などからなる透明な接着層であり、ガスバリア層12とCF層14との間の凹凸面に充填されるとともに、両者を接着する。また、外部から、有機EL層8への水分の浸入を防ぐ機能も果たす。
【0027】
CF基板16は、素子基板1と同様な無機ガラスから構成されており、有機EL層8側(Z軸(+)側)には、CF層14が形成されている。
CF層14には、赤色カラーフィルター14r、緑色カラーフィルター14g、青色カラーフィルター14bが画素配置と同様に配置されている。詳しくは、各色のカラーフィルターは、それぞれが対応する画素電極6と重なるように配置されており、各カラーフィルター間には、ハッチングで示した遮光部が形成されている。遮光部は、平面的に隔壁7と重なるように格子状に形成されており、光学的には、ブラックマトリックスの機能を果たす。
そして、CF基板16と素子基板1とは、CF基板16の周縁部に形成されたシール剤15によって接着および封止されている。シール剤15としては、エポキシ系の接着剤や、紫外線硬化樹脂などを用いる。
【0028】
このように構成された各画素からは、カラーフィルターの色調に対応した表示光が出射される。例えば、赤色画素の場合、有機EL層8で放射された白色光は、赤色カラーフィルター14rによって赤色光が選択されて、赤色の表示光としてCF基板16から出射される。また、緑色、青色の画素においても同様である。
これにより、表示領域Vでは、CF基板16から出射される複数のカラー画素からの表示光によりフルカラーの画像が表示されることになる。
また、反射層5を無くせば、表示領域Vの裏面においても表示を行うことができる。換言すれば、表示パネル18の表裏両面において表示を行うことができる。
なお、表示パネル18の構成は、トップエミッション型に限定するものではなく、2枚のガラス基板間に、電気光学層を挟持した構成であれば良い。例えば、有機EL層8が発する光を素子基板1側から出射するボトムエミッション型の有機EL表示装置であっても良い。また、無機ELを光源として備えた無機EL表示装置であっても良い。
【0029】
また、素子基板1の一辺がCF基板16から張出した張出し領域には、フレキシブル基板20が接続されている。フレキシブル基板20は、例えば、ポリイミドフィルムの基材に銅箔の配線やドライバーIC等が実装された柔軟性を有する基板であり、素子基板1に形成された透明電極との間で、異方性導電接着フィルムなどにより、電気的な接続が取られている。
ここで、異方性導電接着フィルムによる接続だけでは、機械的強度が不足しているため、従来は、フレキシブル基板20の接続部を覆ってシリコン樹脂(接着剤)などでモールドし、補強していたが、剥離し易いという問題があった。
本実施形態では、この補強構造の替わりに、樹脂フィルム25aを接着剤(充填剤)として機能させることによって、十分な実用強度と柔軟性とを確保している。なお、樹脂フィルムの接着方法(ラミネート方法)については、後述する。
【0030】
「ラミネート構造体、および補強部材の材質」
図2に戻る。
続いて、ラミネート構造体25を構成する樹脂フィルム25a,25b、および補強部材30の材質について説明する。
表示領域Vから表示パネル18の周縁部までを含む表示パネル18全面を平面的に表裏面から覆うように、ラミネートする樹脂フィルム25a,25bには、ガラス基板および補強部材30との接着性、柔軟性、透明性(光取り出し性)、フレキシブル基板20のモールド性(絶縁性と耐熱性)、および内部への水分侵入を防ぐ耐水性などの機能が必要となる。
これらの機能を満たすため、樹脂フィルム25a,25bの材料としては、耐水性(低吸水率)や絶縁性、柔軟性、透明性、低温溶着性を有するポリエチレンをベースとした樹脂が好ましい。また、接着性を向上させるため一部極性基を持たせた共重合体であることがより好ましい。
【0031】
具体的には、ポリエチレン系共重合体として、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体(EMMA)、エチレン−メタクリル酸ヒドロキシアルキル共重合体、エチレン−メタクリル酸アルコキシエチル共重合体、エチレン−メタクリル酸アミノエチル共重合体、エチレン−メタクリル酸ヒドロキシグリシジル共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)、エチレン−アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン−メタクリル酸共重合体(EMAA)、エチレン−アクリル酸アルキル共重合のうち、いずれかを用いることが好ましい。または、これらを2つ以上組み合わせた共重合体(例えば、エチレン−酢酸ビニル−ビニルアルコール共重合体などはガラスとCFRP双方の接着性に優れた共重合体である)、または混合物を用いることであっても良い。
【0032】
また、耐熱性を高めるためにエポキシ化合物やイソシアネート化合物、ポリエチレンイミンなどのアミン化合物などの硬化成分を架橋剤として含んでいても良い。なお、エチレン共重合体の中でも、エチレン−アクリル酸共重合体(EAA)やエチレン−メタクリル酸共重合体(EMAA)などエステル化されていないカルボキシル基を有する材料を用いる場合には、低温溶着性や接着性に優れるもののフレキシブル基板20の銅配線などを腐食する可能性があるため、エポキシ系硬化剤などの架橋成分と組み合わせて熱により架橋させ、アクリル酸が残留しないようにすることが好ましい。
【0033】
補強部材30には、クラックの入りやすいガラス基板端部の補強と、表示パネル18が発する熱を放熱するための放熱性、線膨脹係数が異なる材質の多層構造によるパネルの反り防止、およびガラス基板が限界点(限界半径)まで曲がってしまうことを抑制するための強靭性(耐引張り性)などの機能が必要となる。
これらの機能を満たすためには、高ヤング率(10GPa以上)で、高熱伝導率(10W/m・k以上)、かつ、低線膨脹係数(10ppm/℃以下)の材料が好ましい。
本実施形態では好適例として、優れた引張り強度と、放熱性とを兼ね備えたCFRP(Carbon Fiber Reinforced Plastics)を補強部材30の材料に用いている。CFRPは、低密度(1.5〜2.0g/cm3)で、高引張り強度(1000MPa以上)であるため、薄膜化しても高強度な補強が可能であり、また、軽量なので補強部材30の材料として好適である。
そして、CFRPの主成分である炭素繊維の熱伝導は20〜60W/m・kであり、ガラス(1W/m・k)やエンプラ樹脂(約0.5w/m・k)に比べて高いため、補強部材30は放熱板として十分な機能を有している。
【0034】
図4は、CFRPの積層構造を示す模式図である。
CFRPは、炭素繊維と樹脂による複合材料であり、1方向に並行に揃えられた炭素繊維にエポキシ樹脂やフェノール樹脂などの熱硬化性樹脂、またはポリエステルなどの熱可塑性を含浸させたプリプレグと呼ばれる前駆体(炭素繊維層)を異なる方向に2層以上積層し硬化した複合材料である。
具体的には、図4に示すように、X軸方向に延在する複数本の炭素繊維を含む前駆体を炭素繊維層h(第1炭素繊維層)、Y軸方向に延在する複数本の炭素繊維を含む前駆体を炭素繊維層i(第2炭素繊維層)としたときに、炭素繊維層hと炭素繊維層iとを交互に4層積層した後に、加圧および加熱(例えば、120〜180℃)して、板状に硬化させたCFRPを補強部材30に用いている。なお、図4において、ストライプ状に示された線分は、炭素繊維の延在方向を示している。また、構成を明確にするために各層を離して描いているが、実際は接着(密着)されて一体となった積層体となっている。
また、炭素繊維としては、PAN(ポリアクリロニトリル)系炭素繊維、またはピッチ(石油樹脂)系炭素繊維を用いることが好ましい。
【0035】
また、本実施形態では、好適例として4層構成のCFRPを採用したが、炭素繊維の延在方向が異なる炭素繊維層を2層以上積層した積層構造を含んでいれば良い。換言すれば、各々の炭素繊維の延在方向が交差するように重ね合わせた2枚の炭素繊維層からなる積層構造を含んでいれば良い。
また、X軸方向を約0度としたときに、炭素繊維の延在方向が約0度、約90度、約90度、約0度となるような表裏対称の積層順が基本構造となるが、これに限定されるものではなく、例えば、約0度、約90度、約0度、約90度といった積層順や、約0度、約0度、約90度、約90度といった積層順であっても良い。
また、3層の場合は、0度、90度、0度という積層順や、6層の場合は0度、90度、0度、0度、90度、0度のような表裏対称構造の積層順が基本となるが、これらも上記のように限定されるものではない。
これらの構成であっても、補強部材30としての所期の機能を確保することができる。詳しくは、引張り強度については、平面的な略全方位において1000MPa以上を確保することができる。
また、放熱性については、高純度炭素からなる炭素繊維は高純度炭素であるため熱伝導が20〜60W/m・kと、ガラス(1W/m・k)や汎用プラスチック(約0.5w/m・k)に比べて高いため、十分な放熱性を得ることができる。さらに、CFRPの最表面には、大気中への放熱をより高めるため、表面に凹凸形状を設けて表面積を広げるような加工をおこなっても良い。
【0036】
「各部の厚さについて」
図3に戻る。
ここでは、表示装置100がフレキシブル性と、実用強度(強靭さ)とを両立させるために必要な各部の最適な厚さについて説明する。
まず、表示パネル18の厚さについて説明する。表示パネル18は、フレキシブル性に耐えられる接着強度を得るため、基板間に中空構造を持たない全固体物質で充填されている。
図3では、各構成部位の積層関係を明確にするために、特に、機能層17における縮尺を他の部位よりも拡大しているが、実際は、機能層17の部分が最も薄く構成されることになる。機能層17の厚さは、数μm〜20μm程度の厚さである。このうち、緩衝層11が半分以上の厚さを占めている。ちなみに、厚さがnmオーダーの複数の薄膜からなる有機EL層8の厚さは1μmに満たない。
【0037】
本実施形態では、好適例として、素子基板1およびCF基板16の厚さをそれぞれ約40μmとしている。また、表示パネル18の総厚は、好適例として約90μmとしている。発明者等の実験結果によれば、有機ELパネルの信頼性を確保するためには、ガスバリア層12などの封止構造に加えて、素子基板1およびCF基板16の厚さが約10μm以上必要であることが解っている。換言すれば、素子基板1およびCF基板16の厚さを各々約10μm以上に設定することによって、フレキシブル性に耐えられるだけの衝撃強度と、十分な防湿性を確保することが可能となる。
他方、素子基板1、およびCF基板16の厚さが約100μm以上となると、柔軟性が損なわれて来ることも解っている。
このため、素子基板1、およびCF基板16の厚さは、10〜100μmの範囲内に設定することが好ましい。また、強度と柔軟性とのバランスを考慮すると、20〜80μmの範囲内とすることがより好ましい。
さらに、素子基板1とCF基板16とを重ね合せた表示パネル18の総厚は、強度と柔軟性とのバランスを考慮して、50〜120μmの範囲内に設定することが好ましい。
【0038】
なお、素子基板1、およびCF基板16は、それぞれが初期段階で0.3〜0.7mm程度の厚さであったものを研磨、またはエッチングして薄くしたものである。好適には、表裏のガラス基板が厚い状態の表示パネルを製造した後、フッ酸(フッ化水素酸)を溶解したエッチング溶液(水溶液)として用いたエッチングにより、所期の厚さの表示パネル18を製造する。なお、この方法に限定するものではなく、所期の厚さの表示パネル18を形成可能な方法であれば良く、例えば、機械的研磨法を用いることであっても良い。
【0039】
図2に戻る。
次に、ラミネート構造体25を構成する樹脂フィルム25a,25bの厚さについて説明する。
本実施形態では、好適例として、厚さが約50μmのEVAフィルムを樹脂フィルム25a,25bに用いている。発明者等の実験結果によれば、表示パネル18の周縁部における隙間を含む段差の被覆性(充填性)を満たすためには、約20μm以上の厚さが必要となることが解っている。
この被覆性と、表示装置100としての総厚とのバランスを考慮すると20〜100μmの範囲内であることが好ましい。また、樹脂フィルムのコストや、ラミネートのし易さ(作業性)を加味すると、40〜80μmの範囲内であることが好ましい。
【0040】
次に、補強部材30の厚さについて説明する。
本実施形態では、好適例として、4層構造で厚さが約100μmのCFRPを補強部材30に用いている。
CFRPは、約25μm以上の厚さであれば形成可能であるが、上述したような厚さに設定されたラミネート構造体25(表示パネル18を含む)に貼り付けた状態で、フレキシブル性と実用強度(強靭さ)とを確保するためには、50〜200μmの範囲内の厚さに設定する必要がある。
そして、これらの部材を積層して形成された表示装置100の総厚は、最も厚い部分で、約260μmとなる。なお、表示パネル18と補強部材30とが重なる表示パネル18の周縁部が最も厚い部分となる。
なお、上記好適例の寸法は、発明者等が実験結果や、物性データなどから創意工夫の末に導出した好適事例の一つであり、これに限定するものではなく、上述した各部の推奨寸法範囲内において、用途に応じた寸法設定をすることができる。
【0041】
「表示装置の製造方法」
図5は、表示装置の製造方法の流れを示すフローチャートである。図6(a)、(b)は、各工程における製造態様を示す図である。
ここでは、表示装置100の製造方法について、図5のフローチャートに沿って詳細に説明する。
【0042】
ステップS1では、図6(a)に示すように、各部材を重ね合わせた状態(準備体)とし、ラミネート装置にセットする。詳しくは、補強部材30上に、樹脂フィルム25bと、表示パネル18と、樹脂フィルム25aとを、この順番で重ね合わせる。なお、図6(a)では省略しているが、各部材の重ね合わせは専用の案内板を用いて行われ、平面的な位置合わせもなされている。この工程は、好適例としては、通常環境下で行うが、後述の減圧環境下で行っても良い。
そして、準備体をラミネート装置にセットする。なお、図6(a)では、ラミネート装置の加圧ローラー81,82のみを図示している。
【0043】
ステップS2では、ラミネート装置および準備体が設置された環境を減圧し、減圧環境とする。なお、ラミネート装置は、内部環境を所望の気圧環境に設定可能なチャンバー装置(室)内に設置してある。この工程によって、準備体内部の空気(気泡)が除去(脱泡)される。
また、平行して、加圧ローラー81,82の加熱が行われ、伝熱性のあるエラストマーから構成されたローラー面が80〜120℃の温度に熱せられる。
ステップS3では、図6(a)の矢印で示すように、準備体におけるフレキシブル基板20の反対側の一辺から、一対の加圧ローラー81,82の間に準備体が挿入されて、ラミネートが行われる。加圧ローラー81,82に挟持された部分では、ローラーの熱によって樹脂フィルム25a,25bが溶解し、さらに加圧されて相互に接着される。また、溶解した樹脂フィルムは、接着剤(充填剤)として機能し、表示パネル18、フレキシブル基板20、および補強部材30も接着する。
また、準備体の一辺から他端に向かってラミネートが行われるため、各部材に気泡(空気)が残っていたとしても、気泡は、ラミネート順に沿って他端側に押し出されることになる。そして、図6(b)に示すように、ラミネートされた表示装置100が加圧ローラー81,82間から押し出されてラミネートが完了する。
【0044】
ステップS4では、ラミネートされた表示装置100における残留応力を取り除くためにアニーリング処理を行う。アニーリング処理は、引き続き減圧環境で行っても良いし、通常環境下で行っても良い。特に、樹脂フィルム25a,25bが架橋成分を含む場合には、約100℃でアニーリング処理し、架橋を完全なものとすることが好ましい。
なお、ラミネート装置は、一対の加圧ローラー81,82を備えたロールラミネート方式に限定するものではなく、準備体を表示装置100の完成状態にラミネート可能な装置であれば良い。例えば、1枚の板状加熱板(ホットプレート)上に準備体をセットし、変形するゴムシートを気圧差により当該準備体に押し当てて、加熱および加圧するダイアフラム方式(ダイヤフラム方式)による真空ラミネート装置を用いても良い。
【0045】
図2に戻る。
このようにして、図2(図1)に示すような、フレキシブル性を有しながらも、実用強度(強靭さ)と十分な放熱性とを兼ね備えた表示装置100が形成される。
なお、平面的な補強部材30のサイズは、ラミネート構造体25と略同じサイズであることに限定するものではない。例えば、放熱性という観点では、最も発熱量が大きい表示領域Vを覆うサイズが確保されていれば良い。また、強度という観点では、屈曲時にクラックが生じ易い表示パネル18の周縁部を覆うサイズが確保されていれば良い。
つまり、表示装置100に求められる要求仕様に応じて、表示領域Vを覆うサイズからラミネート構造体25と略同じサイズまでの範囲内で、平面的な補強部材30のサイズを決めれば良い。
【0046】
上述した通り、本実施形態に係る表示装置100、および製造方法によれば、以下の効果を得ることができる。
表示装置100によれば、その裏面には、平面的に表示パネル18の外形を覆う補強部材30が設けられている。また、補強部材30は、炭素繊維の延在方向が異なる炭素繊維層を2層以上積層した積層構造を含んで構成されている。
前述したように、炭素繊維は、PAN(ポリアクリロニトリル)やピッチ等を原料とする長繊維を、1000℃以上の高温で高純度に炭化させたもので、高引張り強度、低い熱変形率(低線膨張係数)、高熱伝導性などを有している。
つまり、樹脂よりも熱伝導率の高い炭素繊維を含む補強部材30が樹脂フィルム25bの外面(最外面)に設けられているため、ラミネート構造体内にアルミニウム製の補強板が配置されていた従来の表示装置よりも表示パネルの発熱を効率良く外部に放熱することができる。
特に、補強部材30が表示の際に最も発熱する表示領域Vを含む表示パネル18の外形、換言すれば、表示パネル18の周縁部を含む全体を覆って設けられているため、効果的に放熱することができる。
さらに、補強部材30の線膨張係数は、約1ppm/℃であるため、熱伸縮が激しかった従来のアルミニウムと異なり、表示装置100の裏面全面に貼り付けても、反りの発生を防止することができる。
従って、十分な放熱性を有するとともに、反りの発生を防止した表示装置100を提供することができる。
【0047】
また、炭素繊維の引っ張り強度は、従来の樹脂製の補強板や、アルミニウムに比べて高いため、補強部材30が貼り付けられた状態で、炭素繊維の延在方向に曲げ応力が加わったとしても、ガラス基板が限界点(限界半径)まで曲がることを抑制することができる。
特に、補強部材30が曲げ応力により最も亀裂が生じやすい表示パネル18の周縁部を覆っているため、クラックの発生を確実に防止することができる。
さらに、補強部材30は、第1方向に延在する複数本の炭素繊維を含む第1炭素繊維層と、第1方向と交差する第2方向に延在する複数本の炭素繊維を含む第2炭素繊維層とによる積層構造を含んでいるため、両者によって平面的にあらゆる方向からの引っ張り強度が高まり、いずれの方向から曲げ応力が加わったとしても、ガラス基板が限界点(限界半径)まで曲がることを抑制することができる。また、補強部材30は、ばねのように元の形に復元させる変形拘束性と復元性の機能も有している。
従って、表示装置100によれば、十分な実用強度を得ることができる。
【0048】
さらに、補強部材30がラミネート構造体25の外面に設けられる構造であるため、表示パネル18の表裏面に補強板が貼り付けられていた従来の表示装置よりも、表示パネル18を薄くすることができる。これにより、ラミネート時における樹脂フィルムの形状追従性が良くなるため、表示パネル18の周縁部への隙間の発生を低減(防止)することができる。よって、ラミネートする際に表示パネル18の周縁部に発生する隙間を小さくすることが可能となり、水分浸入に対する十分なバリア性を得ることができる。
特に、発明者等の実験結果によれば、表示パネル18の厚さが約90μmで、樹脂フィルム25a,25bの厚さが約50μmに設定された好適例においては、表示パネル18の周縁部に隙間の発生は認められなかった。
従って、信頼性に優れた表示装置100を提供することができる。
【0049】
また、フレキシブル基板20の接続部を覆ってシリコン樹脂(接着剤)などでモールドし、補強していた従来の補強構成と異なり、樹脂フィルム25a,25bによるラミネートによって、当該補強構成を兼ねているため、製造効率が良い。また、当該接続部、および表示パネル18を含めて同一の樹脂によって接着(充填)されるため、柔軟性を損なわずに、十分な実用強度(強靭さ)を確保することができる。
さらに、樹脂フィルム25a,25bに用いられるポリエチレン系接着層は、絶縁性、耐水性、耐熱性に優れるため、十分な電気的信頼性を確保することができる。
【0050】
また、製造方法においては、ポリエチレン系接着層は、アクリル系粘着層に見られるような室温での初期粘着性がほとんど無いため、気泡が抜けやすいだけでなく、あらかじめ積み重ねた準備体の状態での位置合わせも容易にできる。そのため、減圧雰囲気において、1回の熱ラミネートで多層構造が形成できるため製造効率が良い。また、量産性に優れている。
さらに、ポリエチレン系接着層は室温での初期粘着がほとんど無いため、異物の貼りつきが少なく、また、異物が付いても除去が容易である。また、異物があった場合でも、加熱により軟化した際に、小さな異物であれば接着層内に埋め込まれるため、一般に用いられるアクリル系粘着層よりも異物混入による不良を抑えることができる。また、ポリエチレン系樹脂は汎用樹脂であるため、部材コストを抑えることができる。
【0051】
(実施形態2)
図7(a)は、実施形態2に係る表示装置の断面図であり、図2に対応している。図7(b)、(c)は、実施形態2に係る補強部材の一態様を示す斜視図である。
以下、本発明の実施形態2に係る表示装置110について説明する。なお、実施形態1と同一の構成部位については、同一の番号を附し、重複する説明は省略する。
本実施形態の表示装置110は、実施形態1における補強部材30とは、異なる構成の補強部材32を備えている。詳しくは、補強部材30よりも放熱特性を向上させた補強部材32を備えている。それ以外は、実施形態1での説明と略同様である。
【0052】
表示装置110におけるラミネート構造体25の背面には、その全面に補強部材32が取り付けられている。また、平面的な補強部材32のサイズは、ラミネート構造体25と略同じサイズに形成されている。
図7(b)に示すように、補強部材32は、4層構成のCFRPからなる補強体30の上に、グラファイト層31を積層して一体化したものである。なお、補強体30は、実施形態1における補強部材30と同一構成であるが、本実施形態においては、補強部材32の一構成部位となるため、補強体30と称する。
グラファイト(黒鉛)層31は、図7(b)上部の拡大図(丸で囲った部分)に示すように、炭素原子からなる平面的な六方晶構造層が厚さ方向(Z軸方向)に積み重なった構成を有している。
グラファイト層31は、平面方向の熱伝導率が600〜1500W/m・kと優れているため、当該層をラミネート構造体25と補強体30との間に配置することにより、放熱性を向上させることができる。詳しくは、表示パネル18が発する熱を短時間でグラファイト層31全体に放射状に分散させるとともに、最外面の補強体30へ熱伝達させるため、放熱性を向上させることができる。グラファイト層の製造方法は、ポリイミドフィルムを出発原料にして、1000℃以上に焼成することで結晶化させる合成グラファイトや、鉱山等で産出されるグラファイト粒子を圧延してフィルム状にした天然グラファイトでも良く、どちらも六方晶構造を有するため、熱伝導率600W/m・k以上を得ることができる。また、グラファイト層31の線膨脹係数は、約5ppm/℃であり、ガラス基板と略同等である。
【0053】
また、CFRPからなる補強体30とグラファイト層31とを積層した積層体のことをCFGRP(Carbon fiber graphite reinforced plastics)ともいう。
補強部材32(CFGRP)は、例えば、炭素繊維をエポキシ中間体で含浸したプリプレグフィルム(層)と、グラファイトフィルム(層)とを重ね合わせ、減圧雰囲気下で加熱プレス加工することによって形成することができる。なお、加熱温度は、120〜150℃の範囲内の温度であることが好ましい。
また、本実施形態では、好適例として4層構成のCFRPを採用したが、炭素繊維の延在方向が異なる炭素繊維層を2層以上積層した積層構造を含んでいれば良いことは、実施形態1での説明と同様である。
【0054】
ここで、平面的なグラファイト層31のサイズは、補強体30よりも小さく形成されている。換言すれば、グラファイト層31の周縁部が補強体30内に収まる大きさになっている。好適には、グラファイト層31のサイズが表示パネル18の表示領域Vよりも大きく、表示パネル18の外形サイズよりも小さいことが好ましい。
これは、グラファイト層31の優れた熱伝導率を生かすとともに、当該層の耐磨耗性、および脆さを補うためであり、発熱が多い部分を覆いながらも、ラミネート加工時などに大きな曲げ応力が掛からないようにする工夫である。
【0055】
本実施形態では、好適例として、5層構造で厚さが約140μmのCFGRPを補強部材32に用いている。詳しくは、4層構造で厚さが約100μmのCFRPと、厚さが約40μmのグラファイト層31とを積層したCFGRPを用いている。
なお、この厚さに限定するものではなく、補強部材32の厚さは、約50〜200μmの範囲内の厚さであれば良い。この厚さであれば、表示装置110の自立性と強度、適度なフレキシブル性とを確保することができる。
また、グラファイト層31の厚さは、厚さ方向の熱伝導性を損なわないために、50μm以下とすることが好ましい。
【0056】
また、補強部材32の構成は、上述した図7(b)の態様に限定するものではない。例えば、図7(c)に示す構成であっても良い。
図7(c)の補強部材32では、補強体30における最上層の炭素繊維層iに、グラファイト層31をはめ込むための開口部(穴)が形成されている。換言すれば、最上層の炭素繊維層iは、グラファイト層31が納まる開口部を備えた額縁状に形成されている。
つまり、補強部材32は、当該開口部にグラファイト層31をはめ込んだ構成となっている。また、製造方法は、上述した加熱プレス加工を用いることができる。
この構成の場合、熱伝達性を確保するために、グラファイト層31の上面が炭素繊維層iの上面と同じ高さか、または炭素繊維層iの上面から突出するように、グラファイト層31の厚さを設定する。好適例としては、例えば、グラファイト層31の厚さを炭素繊維層iと同じ、約25μmに設定する。
この構成によれば、図7(b)の補強部材を用いた場合に比べて、放熱性など略同等の効果を備えながらも、表示装置110の総厚を薄くすることができる。
【0057】
上述した通り、本実施形態によれば、実施形態1における効果に加えて、以下の効果を得ることができる。
表示装置110によれば、ラミネート構造体25の背面に、CFRPからなる補強体30と、グラファイト層31とを積層して一体化した補強部材32が取り付けられている。
特に、優れた熱伝導率を有するグラファイト層31が、ラミネート構造体25と補強体30との間に配置されているため、表示パネル18が発する熱を短時間でグラファイト層31全体に放射状に分散させるとともに、最外面の補強体30へ熱伝達させることができる。そして、最外面の補強体30から外気中に放熱することができる。
さらに、グラファイト層31の線膨脹係数は、約4ppm/℃であり、ガラス基板と略同等であるため、CFRPからなる補強体30と積層した補強部材32をラミネート構造体25に貼り付けても、反りの発生要因とはならない。
従って、十分な放熱性を有するとともに、反りの発生を防止した表示装置110を提供することができる。
【0058】
また、グラファイト層31の厚さを50μm以下と薄く設定するとともに、周縁部が露出しないように補強体30および樹脂フィルム25bで包み込む構成としているため、厚さ方向の熱伝導性を損なうことなく、当該層の耐磨耗性、および脆さを補い、十分な実用強度を確保することができる。
従って、表示装置110によれば、フレキシブル性を備えながらも、十分な実用強度を得ることができる。
【0059】
(実施形態3)
図8は、実施形態3に係る表示装置の断面図であり、図7(a)に対応している。
以下、本発明の実施形態3に係る表示装置120について説明する。なお、実施形態1および2と同一の構成部位については、同一の番号を附し、重複する説明は省略する。
本実施形態の表示装置120は、実施形態2の表示装置110の構成に加えて、表面側に第2の補強部材としての額縁状の補強部材38と、光学フィルム35とを備えている。それ以外の構成は、実施形態2の表示装置110と同様である。なお、第1の補強部材、および第2の補強部材という呼称は、両者を区分けするためのものであるため、補強部材30を第1の補強部材とし、補強部材38を第2の補強部材と呼称しても良い。以降の各実施形態、および変形例においても同様である。
【0060】
表示装置120におけるラミネート構造体25の表示領域V側には、平面的に表示領域Vを囲う額縁状の補強部材38が取り付けられている。額縁状とは、表示領域Vに開口部を有するように表示パネル18を覆う構成である。さらに、補強部材38の開口部の形状は表示領域Vの輪郭に沿った形状で設けられており、補強部材38の端部は表示パネル18の端部までを覆う構成が好ましい。
補強部材38は、4層構成のCFRPからなる補強体36の上に、グラファイト層37を積層して一体化したものである。なお、補強体36は実施形態2の補強体30と同一材料であり、また、グラファイト層37も、実施形態2のグラファイト層31と同一材料であるが、平面形状が開口部(穴)を有する額縁状となっている。また、平面的なグラファイト層37のサイズは、補強体36よりも小さく形成されており、周縁部が補強体36内に収まる大きさになっている。また、平面的に補強部材38の開口部における4隅には、角R(図11(a)参照)が形成されている。角Rは、例えば、半径1mm程度で形成されている。
また、補強部材38の厚さや、製造方法は、補強部材32での説明と同様である。
なお、補強部材38は、図7(c)の構成と同様に、補強体36の最上層の炭素繊維層に形成された開口部にグラファイト層37をはめ込んだ構成であっても良い。
【0061】
また、表面の補強部材38の開口部(穴)には、表示領域Vを覆う光学フィルム35が取り付けられている。なお、作業性を向上するために、光学フィルム35を開口部よりも一回り大きくして、当該フィルムの周縁部の上に補強部材38を重ねる構成であっても良い(図10参照)。
光学フィルム35は、強度補強や、表示面の保護、表示視認性の向上などを図るために設けられている。
本実施形態では、好適例として、優れた透明性を有するPET(ポリエチレンテレフタレート)を光学フィルム35に用いている。また、その表面には、屈折率の異なる無機酸化物の多層構造からなる反射防止層(AR)が形成されており、表示視認性の向上を図っている。
【0062】
また、光学フィルム35の材質は、PETに限定するものではなく、透明性を有する材料であれば良い。例えば、PEN(ポリエチレンナフタレート)、TAC(トリアセチルセルロース)、COP(環状オレフィンポリマー)などを用いる。
また、光学フィルム35の表面処理についても、反射防止処理に限定するものではなく、様々な処理を施すことができる。例えば、PMMAなどのハードコート層を形成して耐摩耗性を向上させるハードコート処理や、低屈折率のフッ素樹脂からなる低反射防止層(LR)を形成する反射防止処理、表面に凹凸を設けるアンチグレア処理、帯電防止層を形成して埃付着を防ぐ帯電防止処理、皮脂が付着しにくい撥油層を形成する撥油処理などの表面処理を行うことであっても良い。
【0063】
また、光学フィルム35の厚さは、好適例として、約20〜50μmとしている。これは、PETを含む一般的な透明樹脂は線膨張係数が大きく(20〜80ppm/℃)、ラミネート時の加熱により伸びてしまい、室温に戻ると収縮するためラミネート後のパネルが反ってしまうからである。そのため、光学フィルム35を少しでも薄くすることにより、CFRPを主体とする補強部材38,32の形状保持力が勝るようになるため、室温に戻しても光学フィルムが収縮しにくくなり、パネルの反りを防ぐ効果がある。
他方、20μm以下の厚さとした場合には、ハードコート層や反射防止層などの表面コーティング加工が難しくなるため、20〜50μmを好適としている。なお、この厚さは補強部材38,32の厚さに依存し、補強部材よりも光学フィルムを薄くする必要がある。例えば、各補強部材の厚さが200μmであれば、光学フィルム35の厚さを20〜100μmの範囲内とすることも可能である。
また、表示装置120の製造方法については、基本的に、図5のフローチャートでの説明と同様であるが、ステップS1で準備する準備体の態様が実施形態1と異なる。
詳しくは、補強部材32の上に、樹脂フィルム25bと、表示パネル18と、樹脂フィルム25aと、光学フィルム35および補強部材38とを、この順番で重ね合わせる。
そして、ステップS3では、この準備体をラミネートする。換言すれば、表示装置120の全ての構成部位を重ねた状態で、一括(回)でラミネートする。
【0064】
なお、上記説明では、補強部材32、および補強部材38の厚さを共に、炭素繊維層4層構成の約100μmとして説明したが、この厚さに限定するものではない。
表示装置120は、表裏に補強部材を配置する構成であるため、各々の厚さを若干薄くしても、十分な実用強度を確保することができる。よって、例えば、補強部材32、および補強部材38の厚さを共に、炭素繊維層3層構成の約75μmとしても良い。また、この場合、ラミネート後のパネルの反りを防ぐため、光学フィルム35の厚さは、約20〜50μmとすることが好ましい。
また、炭素繊維の延在方向が異なる炭素繊維層を2層以上積層した積層構造を含んでいれば、補強部材32,38の厚さを50μmよりもさらに薄くしても良い。また、補強部材32の厚さと補強部材38の厚さとを異なる厚さに設定しても良い。
【0065】
上述した通り、本実施形態によれば、実施形態2における効果に加えて、以下の効果を得ることができる。
表示装置120によれば、ラミネート構造体25裏面の補強部材32に加えて、額縁状の補強部材38をラミネート構造体25の表面にも備えている。
よって、いずれの方向から曲げ応力が加わったとしても、ガラス基板が限界点(限界半径)まで曲がることを抑制することができる。特に、2枚の補強部材によって、最も亀裂が生じ易い表示パネル18の周縁部を表裏面から包み込む構成であるため、より確実に表示パネル18の割れを防止することができる。
また、補強部材38の開口部の4隅には角Rが形成されているため、4隅がエッジとなっている場合に比べて、曲げ応力が加わった場合の亀裂の発生を抑制することができる。
従って、フレキシブル性と、実用強度(強靭さ)とを兼ね備えた表示装置120を提供することができる。
【0066】
さらに、表示パネル18が発する熱を表裏面の2枚の補強部材によって、効率良く放熱することができる。特に、表面側においても、グラファイト層37が、ラミネート構造体25と補強体36との間に配置されているため、表示パネル18の表面側に発生した熱も効率良く放熱することができる。
従って、フレキシブル性と、実用強度(強靭さ)と、放熱性とを兼ね備えた表示装置120を提供することができる。
また、表示装置120によれば、表面には、表示領域Vを覆う光学フィルム35が取り付けられている。
よって、表示面を保護するとともに、強靭さを向上させることができる。また、表示視認性を向上させることができる。
【0067】
(実施形態4)
図9(a)は、実施形態4に係る表示装置の断面図であり、図8に対応している。図9(b)は、実施形態4に係る補強部材の一態様を示す斜視図であり、図7(b)に対応している。
以下、本発明の実施形態4に係る表示装置130について説明する。なお、実施形態3と同一の構成部位については、同一の番号を附し、重複する説明は省略する。
本実施形態の表示装置130は、実施形態3の表示装置120と同様に表裏面にそれぞれ補強部材を備えているが、補強部材の積層構造が実施形態3と異なる。それ以外の構成は、実施形態3の表示装置120と同様である。
【0068】
表示装置130は、ラミネート構造体25の表面に額縁状の補強部材39と、裏面に板状の補強部材33とを備えている。また、表面には、表示領域Vを覆う光学フィルム35が取り付けられている。
補強部材33,39は、その平面的形状、および厚さは、実施形態3における補強部材32,38と同様であるが、異なる積層構造を有している。
図9(b)に示すように、補強部材33は、4層構成のCFRPからなる補強体30と、グラファイト層31とを積層して一体化したものである。詳しくは、CFRPの4層構成における下から2層目の炭素繊維層iと、3層目の炭素繊維層hとの間に、グラファイト層31を挟み込んだ構成となっている。換言すれば、炭素繊維の延在方向が異なる炭素繊維層を2層の積層した積層構造によって、グラファイト層31を表裏面から包み込んだ構成となっている。
【0069】
なお、この積層構造に限定するものではなく、複数層の炭素繊維層において、いずれかの炭素繊維層間にグラファイト層31を挟持する構成であれば良い。また、実施形態1での説明と同様に、補強体30は、炭素繊維の延在方向が異なる炭素繊維層を2層以上積層した積層構造を含んでいれば良い。
また、補強部材33,39の製造方法、および表示装置130の製造方法については、上記実施形態における説明と同様である。
【0070】
上述した通り、本実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
補強部材33,39は、CFRPからなる積層構造の中に優れた熱伝導率を有するグラファイト層31,37を含んでいる。よって、CFRPのみから構成された補強部材よりも、高い放熱性を有している。特に、発明者らの実験結果によれば、実施形態3の補強部材32,38と略同等な放熱性を有することが確認されている。
従って、実施形態3における効果と同様な効果を得ることができることから、フレキシブル性と、実用強度(強靭さ)と、放熱性とを兼ね備えた表示装置130を提供することができる。
【0071】
(実施形態5)
図10(a)は、実施形態5に係る表示装置の断面図であり、図9に対応している。図10(b)は、実施形態5に係る補強部材の一態様を示す斜視図であり、図9(b)に対応している。
以下、本発明の実施形態5に係る表示装置140について説明する。なお、実施形態4と同一の構成部位については、同一の番号を附し、重複する説明は省略する。
本実施形態の表示装置140は、実施形態4の表示装置130と同様に表裏面にそれぞれ補強部材を備えているが、補強部材の構造が実施形態4と異なる。詳しくは、表面の補強部材44はグラファイト層を含んでいない。また、裏面の補強部材43には、複数の穴が形成されたグラファイト層41が用いられている。それ以外の構成は、実施形態4の表示装置130と同様である。
【0072】
表示装置140は、ラミネート構造体25の表面に額縁状の補強部材44と、裏面に板状の補強部材43とを備えている。また、表面には、表示領域Vを覆う光学フィルム35が取り付けられている。
まず、補強部材44は、実施形態4の補強部材39の構成からグラファイト層を削除したものである。換言すれば、図4の補強部材30を額縁状にプレス加工したCFRPである。
補強部材43は、その平面的形状、および厚さ、積層順(構造)は、実施形態4の補強部材33と同様であるが、異なる形態のグラファイト層41を用いている。
詳しくは、グラファイト層41は、平面的に補強部材43と略同じサイズのグラファイト層に複数の穴を形成したものである。本実施形態では、好適例として、グラファイト層41一面に直径約φ5mmの穴を約10mmのピッチで配置している。なお、この数値に限定するものではなく、穴径および配置ピッチは、表示装置140のサイズに応じて適宜定めれば良い。
また、このようなグラファイト層41は、例えば、大判のグラファイトシートから、プレス型や、トムソン型を用いて簡便に形成することができる。
【0073】
補強部材43の製造方法、および表示装置140の製造方法については、上記実施形態における説明と同様である。
ここで、加熱プレス加工を用いて補強部材43を形成すると、補強部材43の裏面(最外面)には、図10(a)に示すように、グラファイト層41の穴部を覆う部分が凹形状となり、それ以外の部分が凸形状となる凹凸形状が形成される。これは、穴部を覆う部分においては、2層目の炭素繊維層iと3層目の炭素繊維層hとが、例えば、熱硬化型のエポキシ樹脂によって直接接着されるからである。
【0074】
上述した通り、本実施形態によれば、実施形態4における効果に加えて、以下の効果を得ることができる。
表示装置140によれば、複数の穴が形成されたグラファイト層41を表裏面から炭素繊維層で挟んだ構成の補強部材43を備えている。これにより、穴部を覆う部分においては、表裏の炭素繊維層が直接接着されることになるため、グラファイト層41の層間強度を補い、補強部材43の実用強度(強靭さ)を高めることができる。さらに、補強部材43の裏面(最外面)に凹凸形状が形成されるため、放熱面となる裏面の表面積か大きくなり、放熱性が向上する。
また、グラファイト層41は平面的に補強部材43と略同じサイズであるため、大判の炭素繊維層と大判のグラファイト層とを積層して大判の補強部材を形成して、当該大判の補強部材から、単品の補強部材43を切り出す製造方法を採用できる。換言すれば、複数の補強部材が面付けされた大判の補強部材から、単品の補強部材43をブレス加工などを用いて切り分ける製造方法を採用できる。よって、製造効率を高めることができる。また、製造コストも抑制することができる。
従って、フレキシブル性と、実用強度(強靭さ)と、放熱性とを兼ね備えた表示装置140を提供することができる。
【0075】
(電子機器)
図11は、上述の表示装置を搭載した電子書籍を示す斜視図であり、(a)はページを構成する表示装置の斜視図であり、(b)は電子書籍の斜視図である。
上述した表示装置140は、例えば、電子機器としての電子書籍150に搭載して用いることができる。なお、表示装置140を各実施形態、および変形例における表示装置と置き換えても良い。
【0076】
図11(a)は、表示装置140を表示領域Vが縦長になるように配置したものである。また、電子書籍に綴じ込むために、補強部材30のフレキシブル基板20側の両端に、綴じ込み用の穴h1,h2が形成されている。
図11(b)に示すように、電子書籍150は、本体50、ヒンジ部51、リング52,53、回路部54、操作部55などから構成されている。
本体50は、ファイル(バインダー)であり、開閉自在に形成された表裏の台紙部分を備えている。
ヒンジ部51は、表裏の台紙部分の接合部に配置されており、リング52,53を備えている。また、ヒンジ部51は、開閉可能に形成されており、当該開閉に同期してリング52,53も開閉する構成となっている。
【0077】
ヒンジ部51を開くと、リング52,53も開くため、この状態で綴じ込み用の穴h1,h2に当該リングを通し、表示装置140を電子書籍150に綴じ込む。また、この際に、3枚のフレキシブル基板20をヒンジ部51の内部に形成されているコネクターに差し込む。なお、コネクターは回路部54と接続されている。そして、ヒンジ部51を閉じる。図11(b)は、このようにして表示装置140を電子書籍150に綴じ込んだ状態を示している。また、表示装置140は複数枚綴じ込むことができる。
また、表の台紙部分には、タッチパネルからなる操作部55が設けられており、操作部55を操作用ペン57や、指で触ることにより、所望の画像を表示装置140に表示することができる。
ヒンジ部51の内部に配置された回路部54には、リチウムイオン電池などの充電型の電源部や、表示装置140に供給する画像データを生成する画像処理部、電子書籍150による様々な表示態様を規定したプログラムやデータを記憶した記憶部、当該プログラムやデータ、または操作部55への操作内容に応じて各部を制御する制御部、外部機器と接続して画像信号などを受信するインターフェイス部などが含まれている。
【0078】
例えば、操作部55で動作設定をすることにより、ページをめくって本を読むときのように、表示装置140をめくると、順次開かれている表示装置140に連続したページ画像を表示させることもできる。また、この表示モードにおいては、閉じ(重ね)られている表示装置140は、オフ状態となり消費電力を抑制している。
電子書籍150の各ページには、フレキシブル性を有する表示装置140が用いられているため、本のようにページをめくりながら、画像や文章をスムーズに楽しむことができる。また、表示装置140は十分な実用強度(強靭さ)を有しているため、通常の本と同様に取り扱うことができる。
従って、通常の本と同様に取り扱うことが可能な電子書籍150を提供することができる。
【0079】
また、電子機器は、電子書籍150に限定するものではなく、表示部を備えた電子機器であれば良い。例えば、携帯電話であっても良い。詳しくは、一体型の携帯電話や、折畳み式の携帯電話、またはスライド式の携帯電話であっても良い。または、カーナビゲーションシステム用の表示装置や、PDA(Personal Digital Assistants)、モバイルコンピューター、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、車載機器、オーディオ機器などの各種電子機器にも用いることができる。
【0080】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されず、上述した実施形態に種々の変更や改良などを加えることが可能である。変形例を以下に述べる。
【0081】
(変形例1)
図3を用いて説明する。
上記各実施形態では、表示パネル18は、全画素共通で白色光を出射し、表示面側に白色光からRGBの各色光を選択的に透過するカラーフィルターを設けた構成であるものとして説明したが、これに限定するものではない。色画素ごとに、RGBの色光が出射可能な構成であれば良い。
例えば、有機EL層8においてRGBの色画素ごとに、RGBの各色の発光層を形成した、いわゆる3色塗り分け方式による構成の表示パネルであっても良い。
また、上記各実施形態では、表示装置100は、アクティブマトリックス型であるものとして説明したが、パッシブ(単純)マトリックス型であっても良い。
この場合、素子層2は不要となり、有機EL層8を走査電極とデータ電極とで挟持する構成となる。例えば、走査電極は素子基板1側に形成し、データ電極はCF基板16側に形成する。なお、走査電極とデータ電極とは、平面視において格子状になるように、交差する方向にそれぞれ延在して形成される。
これらの構成であっても、上記各実施形態と同様な作用効果を得ることができる。
【0082】
(変形例2)
図10を用いて説明する。
上記実施形態5では、補強部材44として、炭素繊維を含むCFRPを用いることとして説明したが、これに限定するものではない。同様の物性を有する材料であれば良い。また、実施形態1の補強部材30についても同様である。
例えば、CFRPに近い物性を有するインバー(Ni含有率30〜50%の鉄合金)や、チタン、チタン合金などを用いて補強部材44を構成することであっても良い。
特に、加工性に優れたインバーを表面の額縁状の補強部材44に用いることにより、開口部の4隅の角R(図11(a)参照)や、開口端面をなめらかに仕上げることができるため、補強部材44に表示領域Vを区画するとともに際立たせる、見切り板としての機能を付加することができる。また、これらの構成であっても、上記各実施形態と同様な作用効果を得ることができる。
【0083】
(変形例3)
図12は、変形例3に係る表示パネルの断面図であり、図3に対応している。
上記各実施形態では、表示パネル18は、有機ELパネルであるものとして説明したが、これに限定するものではない。一対の基板間に、電気光学層を挟持した薄型の表示パネルであれば良い。例えば、電気光学層として、電気泳動層を備えた電気泳動パネルであっても良い。
以下、変形例3に係る表示パネル68について説明する。なお、図3と同一の構成部位については、同一の番号を附し、重複する説明は省略する。
本実施形態の表示パネル68は、電気光学層として電気泳動層67を備えた反射型の電気泳動パネルである。
【0084】
表示パネル68は、素子基板1と対向基板65との間に電気泳動層67を挟持した構成となっている。また、素子基板1から画素電極6までの積層構造は、図3の構成と同一である。
対向基板65は、例えばガラスやプラスチック等からなる透明な基板である。対向基板65における素子基板1側には、対向電極64が複数の画素電極6と対向して全面(ベタ状)に形成されている。対向電極64は、ITO等の透明導電材料から形成されている。
電気泳動層67は、複数のマイクロカプセル70、複数のマイクロカプセル70を保持するバインダー62、および接着層61などから構成されている。なお、表示パネル68は、電気泳動層67が予め対向基板65側にバインダー62によって固定されてなる電気泳動シートと、当該シートとは別途製造され、画素電極6などが形成された素子基板1とを、接着層61により接着することによって形成されている。
【0085】
マイクロカプセル70は、画素電極6、および対向電極64間に挟持され、1つの画素内に(言い換えれば、1つの画素電極6に対して)1つ又は複数配置されている。
図12の右上の拡大図に示すように、マイクロカプセル70は、被膜75の内部に分散媒71と、複数の白色粒子72と、複数の黒色粒子73とを封入した構成となっている。マイクロカプセル70は、例えば、50μm程度の粒径を有する球状に形成されている。
被膜75は、アクリル樹脂、ユリア樹脂、アラビアガム、ゼラチン等の透光性を有する高分子樹脂から形成されている。
分散媒71は、白色粒子72及び黒色粒子73をマイクロカプセル70内(言い換えれば、被膜75内)に分散させる媒質である。
【0086】
白色粒子72は、例えば、二酸化チタン、亜鉛華(酸化亜鉛)、三酸化アンチモン等の白色顔料からなる粒子(高分子或いはコロイド)であり、例えば負に帯電されている。
黒色粒子73は、例えば、アニリンブラック、カーボンブラック等の黒色顔料からなる粒子(高分子或いはコロイド)であり、例えば正に帯電されている。
これにより、白色粒子72および黒色粒子73は、画素電極6と対向電極64との間の電位差によって発生する電場(電位差)によって分散媒71中を移動するため、対向電極64側に集まった粒子の色調が表示されることになる。
なお、白色粒子72、黒色粒子73に用いる顔料を、例えば赤色、緑色、青色等の顔料に代えることによって、赤色、緑色、青色などのカラー表示をすることもできる。
また、上述したマイクロカプセル方式に限定するものではなく、帯電性を有する電子粉流体を画素内に入れ、プラス・マイナスを切り替えることで表示の切り替え・オンオフを制御する電子粉流体方式の電気泳動パネルであっても良い。または、コレステリック液晶を用いた電気泳動パネルであっても良い。
これらの構成であっても、上記各実施形態と同様な作用効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0087】
1…ガラス基板としての素子基板、8…電気光学層としての有機EL層、16…ガラス基板としてのCF基板、18…表示パネル、20…フレキシブル基板、25a,25b…樹脂フィルム、30,32,33,43…第1補強部材としての補強部材、31,41…グラファイト層、35…光学フィルム、38,39,44…第2補強部材としての補強部材、100,110,120,130,140…電気光学装置としての表示装置、150…電子機器としての電子書籍、h…第1炭素繊維層としての炭素繊維層、i…第2炭素繊維層としての炭素繊維層、V…表示領域。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対のガラス基板間に電気光学層を挟持した表示パネルと、
前記表示パネルの表示領域側の第1の面と、前記第1の面と対向する第2の面と、を覆うようにラミネートする樹脂フィルムと、を備え、
少なくとも前記第2の面を覆う前記樹脂フィルム上には、補強部材が設けられており、
前記補強部材は、平面的に第1方向に延在する複数本の炭素繊維を含む第1炭素繊維層と、前記第1方向と交差する第2方向に延在する複数本の炭素繊維を含む第2炭素繊維層とによる積層構造を含むことを特徴とする電気光学装置。
【請求項2】
前記補強部材には、グラファイト層が含まれていることを特徴とする請求項1に記載の電気光学装置。
【請求項3】
前記グラファイト層は、前記第2の面を覆う前記樹脂フィルムと、前記第1炭素繊維層との間に配置されていることを特徴とする請求項2に記載の電気光学装置。
【請求項4】
前記グラファイト層は、前記第1炭素繊維層と、前記第2炭素繊維層との間に配置されていることを特徴とする請求項2に記載の電気光学装置。
【請求項5】
前記グラファイト層には、平面的に複数の穴が形成されていることを特徴とする請求項2乃至4のいずれか一項に記載の電気光学装置。
【請求項6】
前記第1炭素繊維層、および前記第2炭素繊維層は、炭素繊維に樹脂を含浸させたプリプレグで形成され、
前記補強部材は、前記第1炭素繊維層と、前記第2炭素繊維層とを3層以上積層、および硬化させた積層体であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の電気光学装置。
【請求項7】
前記補強部材を第1の補強部材としたときに、
前記第1の面を覆う前記樹脂フィルムの上に設けられた第2の補強部材を、さらに備え、
前記第2の補強部材は、前記表示パネルに開口部を有するように形成されていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の電気光学装置。
【請求項8】
前記第2の補強部材の開口形状は、前記表示領域と同じ形状で設けられるとともに、
前記第2の補強部材は、平面的に前記表示パネルの端部までを覆う大きさであることを特徴とする請求項7に記載の電気光学装置。
【請求項9】
前記第2の補強部材は、前記第1炭素繊維層と前記第2炭素繊維層との積層構造またはインバーから構成されていることを特徴とする請求項7または8に記載の電気光学装置。
【請求項10】
前記ガラス基板の厚さは、それぞれ100μm以下であることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか一項に記載の電気光学装置。
【請求項11】
前記樹脂フィルムは、ポリエチレン系共重合材料であることを特徴とする請求項1乃至10のいずれか一項に記載の電気光学装置。
【請求項12】
前記第2の補強部材の開口部には、前記表示領域を覆う光学フィルムが設けられており、
前記樹脂フィルムは、前記表示パネルと前記第2の補強部材および前記光学フィルムとを張り合わせる接着剤として機能することを特徴とする請求項7乃至11のいずれか一項に記載の電気光学装置。
【請求項13】
前記表示パネルは、前記一対のガラス基板のうち、いずれか一方の前記ガラス基板の一辺が他方のガラス基板よりも張出した張出し領域が形成されており、
前記張出し領域には、フレキシブルプリント回路基板の一端が接続され、
前記フレキシブルプリント回路基板の一端は、前記樹脂フィルムによって覆われるとともに、前記フレキシブルプリント回路基板の他端は、前記樹脂フィルムの端部から外部に露出していることを特徴とする請求項1乃至12のいずれか一項に記載の電気光学装置。
【請求項14】
前記電気光学層は、有機発光層を含む有機EL層であることを特徴とする請求項1乃至13のいずれか一項に記載の電気光学装置。
【請求項15】
請求項1乃至14のいずれか一項に記載の電気光学装置を表示部として備えたことを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−7986(P2011−7986A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−150708(P2009−150708)
【出願日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】