説明

電気光学装置及び電子機器

【課題】電気光学装置の熱を効率的に放散する。
【解決手段】電気光学装置(1)は、電気光学動作を行う電気光学パネル(100)と、電気光学パネルと電気的に接続されており且つ電気光学パネルの熱を放散する第1放熱配線(202)を含む第1配線層、及び電気光学パネルと電気的に接続されており且つ電気光学パネルの熱を放散する第2放熱配線(203)を含む第2配線層を有する配線基板(200)とを備える。前記第1放熱配線と前記第2放熱配線とはスルーホール(204)を介して相互に接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば液晶装置等の電気光学装置、及びこれを備えた、例えば液晶プロジェクタ等の電子機器に関し、特に、電気光学装置の熱を放熱する放熱部材の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の電気光学装置では、例えば熱による表示画像の品質の劣化防止が図られる。このため、例えば特許文献1には、表示パネルを収容する金属製のケースの表面にフィンを形成することによって、放熱性を向上する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−15104号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、電気光学装置の小型化に伴いケースが小さくなると、仮に、上述の背景技術のようにケース表面にフィンを形成しても、電気光学装置の熱が十分には放散されない可能性があるという技術的問題点がある。
【0005】
本発明は、例えば上記問題点に鑑みてなされたものであり、熱を効率的に放散することができる電気光学装置、及びこれを備える電子機器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の電気光学装置は、上記課題を解決するために、電気光学動作を行う電気光学パネルと、前記電気光学パネルと電気的に接続されており且つ前記電気光学パネルの熱を放散する第1放熱配線を含む第1配線層、及び前記電気光学パネルと電気的に接続されており且つ前記電気光学パネルの熱を放散する第2放熱配線を含む第2配線層を有する配線基板とを備え、前記第1放熱配線と前記第2放熱配線とはスルーホールを介して相互に接続されている。
【0007】
本発明の電気光学装置によれば、例えば液晶パネル等である電気光学パネルは、例えば電気光学パネル上の画素領域における表示動作等の電気光学動作を行う。ここに、「画素領域」とは、個々の画素の領域を意味するのではなく、複数の画素が平面配列された領域全体を意味し、典型的には、「画像表示領域」或いは「表示領域」に相当する。
【0008】
例えば多層フレキシブル基板である配線基板は、第1放熱配線を含む第1配線層と、第2放熱配線を含む第2配線層とを有する。第1及び第2放熱配線は、電気光学パネルと電気的に接続されている。第1及び第2放熱配線は、単純には、放熱部材として機能すればよいが、例えばグランド配線や電源配線等の機能を兼ねていてもよい。第1及び第2放熱配線は、例えばポリイミド等の絶縁層間膜に形成されたスルーホールを介して相互に接続されている。ここに「スルーホール」とは、層間絶縁膜に貫通孔が開けられ、その内部に第1配線層又は第2配線層の延在部分で満たされているか、別途、導電性の金属でプラグをされたものを意味し、コンタクトホールと同義である。
【0009】
配線基板は、典型的には、第1及び第2配線層とは別層から構成された、又は第1及び第2配線層の少なくとも一層から構成された信号配線を含んでいる。信号配線には、例えば画素領域に表示される画像に係る画像信号が入力される。
【0010】
本願発明者の研究によれば、一般に、電気光学装置は、電気光学パネルを収容する収容ケースを備えており、該収容ケースを金属等の熱伝導率の高い材料で構成することによって、放熱部材として利用している。他方、電気光学装置の小型化に伴い収容ケースが小さくなると、収容ケースの表面積が小さくなり、放熱用のフィン等を設けたとしても電気光学パネルの熱が十分には放散されない可能性があることが判明している。
【0011】
しかるに本発明では、配線基板が、第1放熱配線を含む第1配線層と第2放熱配線を含む第2配線層とを有し、第1及び第2放熱配線がスルーホールを介して接続されている。このため、収容ケース、並びに第1及び第2放熱配線によって電気光学パネルの熱を放散することができる。
【0012】
そして、例えば第2放熱配線をベタ状に形成すれば、放熱に係る表面積を増加することができる。更に、スルーホールを配線基板の電動光学パネル側に多く形成すれば、第1及び第2放熱配線間における熱の移動が起こり易くなり、効率的に熱の放散をすることができる。加えて、製造コスト等の増加を抑制することができ、実用上非常に有利である。
【0013】
本発明の電気光学装置の一態様では、前記配線基板は、前記電気光学パネルと電気的に接続され、前記第1配線層及び前記第2配線層とは別層から構成され、前記電気光学パネルの信号入出力用の信号配線を更に有する。
【0014】
この態様によれば、配線基板は、第1及び第2配線層とは別層から構成され、電気光学パネルの信号入出力用の信号配線を有している。この態様では特に、第1及び第2放熱配線と信号配線とが別層に配置されているため、第1及び第2放熱配線によって、信号配線のレイアウト等の自由度が低下することを回避することができ、実用上非常に有利である。
【0015】
本発明の電気光学装置の他の態様では、前記配線基板は、前記第1配線層又は前記第2配線層の少なくも一方から構成され、前記電気光学パネルの信号入出力用の信号配線を更に有する。
【0016】
この態様によれば、配線基板は、第1及び第2配線層の少なくとも一方から構成され、電気光学パネルの信号入出力用の信号配線を有している。この態様では特に、第1及び第2配線層の少なくとも一方に信号配線が配置されているため、導体層が増加することによって、例えば多層フレキシブル基板等である配線基板の可撓性が低下することを回避することができ、実用上非常に有利である。
【0017】
本発明の電気光学装置の他の態様では、前記スルーホールは、前記配線基板の前記電気光学パネル側において第1割合で形成されている。
【0018】
この態様によれば、第1及び第2放熱配線間における熱伝導を向上することができる。ここに「配線基板の電気光学パネル側」とは、配線基板における、その延在する方向についての中央よりも、電気光学パネルに近い側或いは領域を意味し、典型的には、電気光学パネルに近接する領域を意味する。本発明に係る「割合」は、スルーホールの密度(即ち、単位面積あたりの個数)、或いは、単位面積に占めるスルーホールの面積を意味する。「第1割合」は、例えば、第1及び第2放熱配線間において、速やかな熱の移動が可能な割合として設定すればよい。
【0019】
この態様では、前記スルーホールは、前記配線基板の前記電気光学パネル側とは反対側において、前記第1割合より小さい第2割合で形成されていてよい。
【0020】
このように構成すれば、第1及び第2放熱配線が、例えばグランド配線等を兼ねる場合に、第1及び第2放熱配線の電位を安定させることができ、実用上非常に有利である。ここに「電気光学パネル側とは反対側」とは、配線基板における、その延在する方向についての中央よりも、電気光学パネルから遠い側或いは領域を意味する。「第2割合」は、例えば、第1及び第2放熱配線を相互に接続することによって、第1及び第2放熱配線の電位が安定する割合として設定すればよい。
【0021】
本発明の電気光学装置の他の態様では、前記配線基板は、可撓性の基材を有し、前記第1配線層は、前記基材の一方の表面側に形成され、前記第2配線層は、前記基材の他方の表面側に形成される。
【0022】
この態様によれば、配線基板は、例えばポリイミド等を含んで構成される可撓性の基材を有している。第1配線層は、基材の一方の表面側に形成され、第2配線層は、前記基材の他方の表面側に形成されている。配線基板が可撓性を有する基材を備えて構成されているため、当該電気光学装置を、電子機器等に実装する際に、電子機器における当該電気光学装置の配置の自由度を向上することができ、実用上非常に有利である。
【0023】
本発明の電気光学装置の他の態様では、前記第2放熱配線は、ベタ状に形成されている。
【0024】
この態様によれば、より効率的に電気光学パネルの熱を放散することができる。加えて、第2放熱配線がグランド配線を兼ねる場合には、第2放熱配線の電位を安定させることができ、EMI(Electro−Magnetic Interference)ノイズの発生を抑制することができる、実用上非常に有利である。
【0025】
本発明の電気光学装置の他の態様では、前記電気光学パネルは、画素領域の周囲に位置する周辺領域の少なくとも一部に形成され、少なくとも前記第1放熱配線と接続された周辺配線を含む。
【0026】
この態様によれば、周辺配線は、画素領域の周囲に位置する周辺領域の少なくとも一部に、例えば画素領域を囲むように「コの字」型に形成され、少なくとも第1放熱配線と接続されている。これにより、画素領域の熱を比較的容易に第1放熱配線に伝えることができ、画素領域の熱を効率良く放散することができる。
【0027】
尚、周辺配線は、電気光学パネルの表面に形成されてもよいし、内部に形成されてもよい。また、周辺配線が、例えばグランド配線等を兼ねてもよい。
【0028】
本発明の電気光学装置の他の態様では、前記第1及び第2放熱配線は、所定電位とされる。
【0029】
この態様によれば、第1及び第2放熱配線の電位変動が、例えば信号配線に入力される信号等に対して、電磁ノイズとして悪影響を及ぼすことを回避することができる。
【0030】
ここに、本発明に係る「所定電位」とは、例えば画像信号等の信号の内容によらずに少なくとも所定期間ずつ固定された電位を意味する。例えば、接地電位或いはグランド電位の如く、時間軸に対して完全に一定電位に固定された固定電位であってもよい。或いは、共通電位或いは対向電極電位の如く、例えば画像信号に係る奇数フィールド期間で第1の固定電位に固定されると共に偶数フィールド期間で第2の固定電位に固定されるというように、時間軸に対して一定期間ずつ一定電位に固定された固定電位であってもよい。
【0031】
本発明の電気光学装置の他の態様では、前記第1放熱配線は、前記信号配線より太い。
【0032】
この態様によれば、第1放熱配線は、その太さが、配線基板上で平面的に見て、例えば1〜2mmであり信号配線よりも太くなるように形成されている。これにより、放熱に係る面積を増加することができる。加えて、比較的容易にしてスルーホールを形成することができ、実用上非常に有利である。尚、第1放熱配線は、配線基板上で平面的に見た場合に太いことに代えて又は加えて、配線基板の深さ方向に太くてもよい。
【0033】
本発明の電子機器は上記課題を解決するために、上述した本発明の電気光学装置(但し、その各種態様を含む)を備える。
【0034】
本発明の電子機器によれば、上述した本発明の電気光学装置を備えてなるので、電気光学装置の熱を効率的に放散することができる。このため、高品質な画像を表示可能な、投射型表示装置、携帯電話、電子手帳、ワードプロセッサ、ビューファインダ型又はモニタ直視型のビデオテープレコーダ、ワークステーション、テレビ電話、POS端末、タッチパネルなどの各種電子機器を実現できる。
【0035】
本発明の作用及び他の利得は次に説明する実施するための最良の形態から明らかにさよう。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】第1実施形態に係る液晶装置を対向基板の側からみた平面図である。
【図2】図1のA−A´線断面図である。
【図3】第1実施形態に係る液晶パネルの全体構成を示す平面図である。
【図4】図3のH−H´線断面図である。
【図5】第1実施形態に係る液晶パネルの右下隅を拡大して示す拡大平面図である。
【図6】図5のB−B´線断面図である。
【図7】第1実施形態の第1変形例に係る液晶パネルの右下隅を拡大して示す拡大平面図である。
【図8】第1実施形態の第2変形例に係る液晶パネルの右下隅を拡大して示す拡大平面図である。
【図9】第2実施形態に係る液晶装置を対向基板の側からみた平面図である。
【図10】第2実施形態に係る液晶パネルの右下隅を拡大して示す拡大平面図である。
【図11】図10のC−C´線断面図である。
【図12】第2実施形態の変形例に係る液晶パネルのC−C´線断面図である。
【図13】第3実施形態に係るフレキシブル基板の断面図である。
【図14】電気光学装置を適用した電子機器の一例たるプロジェクタの構成を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明の電気光学装置に係る実施形態を図面に基づいて説明する。尚、以下の実施形態では、本発明の電気光学装置の一例として、駆動回路内蔵型のTFT(Thin Film Transistor)アクティブマトリックス駆動方式の液晶装置を例に挙げる。
【0038】
<第1実施形態>
本発明の電気光学装置に係る第1実施形態を、図1乃至図6を参照して説明する。尚、以下の図では、各層・各部材を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、該各層・各部材ごとに縮尺を異ならしめてある。
【0039】
先ず、本実施形態に係る液晶装置の全体構成について、図1及び図2を参照して説明する。ここに、図1は、本実施形態に係る液晶装置を対向基板の側からみた平面図であり、図2は、図1のA−A´線断面図である。
【0040】
図1及び図2において、液晶装置1は、液晶パネル100と、該液晶パネル100と電気的に接続された信号配線201、液晶パネル100の熱を放散する放熱配線202、及びベタ状に形成され液晶パネル100の熱を放散する放熱配線203を含むフレキシブル基板200とを備えて構成されている。放熱配線202と放熱配線203とはスルーホール204を介して相互に接続されている。ここに、本実施形態に係る「液晶パネル100」、「フレキシブル基板200」、「放熱配線202」及び「放熱配線203」は、夫々、本発明に係る「電気光学パネル」、「配線基板」、「第1放熱配線」及び「第2放熱配線」の一例である。
【0041】
本実施形態では、放熱配線202及び203は、グランド配線を兼ねている。即ち、放熱配線202及び203の電位が、夫々グランド電位とされている。図1に示すように、スルーホール204は、フレキシブル基板200の液晶パネル100側において、放熱配線202及び203間で熱が速やかに移動するように、比較的高い個数密度で形成されている。一方、スルーホール204は、液晶パネル100側とは反対側(図1中の下側)において、少なくとも放熱配線202及び203の電位が安定するように、比較的低い個数密度で形成されている。
【0042】
次に、液晶パネル100について、図3及び図4を参照して説明を加える。ここに図3は、TFTアレイ基板をその上に形成された各構成要素と共に対向基板の側から見た平面図であり、図4は、図3のH−H´線断面図である。
【0043】
図3及び図4において、本実施形態の液晶パネル100では、TFTアレイ基板10及び対向基板20が対向配置されている。TFTアレイ基板10は、例えば、石英基板、ガラス基板、シリコン基板等の基板からなり、対向基板20は、例えば、石英基板、ガラス基板等の基板からなる。TFTアレイ基板10と対向基板20との間に液晶層50が封入されており、TFTアレイ基板10と対向基板20とは、複数の画素が設けられた領域に対応する、本発明に係る「画素領域」の一例としての画像表示領域10aの周囲に位置するシール領域に設けられたシール材52により相互に接着されている。
【0044】
シール材52は、両基板を貼り合わせるための、例えば紫外線硬化樹脂や熱硬化樹脂、又は紫外線・熱併用型硬化樹脂等からなり、製造工程においてTFTアレイ基板10上に塗布された後、紫外線照射、加熱等により硬化させられたものである。シール材52中には、TFTアレイ基板10と対向基板20との間隔(即ち、ギャップ)を所定値とするためのグラスファイバ或いはガラスビーズ等のギャップ材が散布されている。尚、ギャップ材を、シール材52に混入されるものに加えて若しくは代えて、画像表示領域10a又は画像表示領域10aの周辺に位置する周辺領域に、配置するようにしてもよい。
【0045】
図3において、シール材52が配置されたシール領域の内側に並行して、画像表示領域10aの額縁領域を規定する遮光性の額縁遮光膜53が、対向基板20側に設けられている。但し、このような額縁遮光膜53の一部又は全部は、TFTアレイ基板10側に内蔵遮光膜として設けられてもよい。
【0046】
周辺領域のうち、シール材52が配置されたシール領域の外側に位置する領域には、外部回路接続端子102がTFTアレイ基板10の一辺に沿って設けられている。この一辺に沿って、データ線駆動回路101より内側にサンプリング回路7が額縁遮光膜53に覆われるようにして設けられている。走査線駆動回路104は、この一辺に隣接する2辺に沿った額縁領域に、額縁遮光膜53に覆われるようにして設けられている。
【0047】
TFTアレイ基板10上には、対向基板20の4つのコーナー部に対向する領域に、両基板間を上下導通材107で接続するための上下導通端子106が配置されている。これらにより、TFTアレイ基板10と対向基板20との間で電気的な導通をとることができる。更に、外部回路接続端子102と、走査線駆動回路104、上下導通端子106等とを電気的に接続するための引回配線90が形成されている。
【0048】
図4において、TFTアレイ基板10上には、駆動素子である画素スイッチング用のTFTや走査線、データ線等の配線が作り込まれた積層構造が形成される。この積層構造の詳細な構成については図4では図示を省略してあるが、この積層構造の上に、ITO(Indium Tin Oxide)等の透明材料からなる画素電極9aが、画素毎に所定のパターンで島状に形成されている。
【0049】
画素電極9aは、後述する対向電極21に対向するように、TFTアレイ基板10上の画像表示領域10aに形成されている。TFTアレイ基板10における液晶層50の面する側の表面、即ち画素電極9a上には、配向膜16が画素電極9aを覆うように形成されている。
【0050】
対向基板20におけるTFTアレイ基板10との対向面上に、遮光膜23が形成されている。遮光膜23は、例えば対向基板20における対向面上に平面的に見て、格子状に形成されている。対向基板20において、遮光膜23によって非開口領域が規定され、遮光膜23によって区切られた領域が、例えばプロジェクタ用のランプや直視用のバックライトから出射された光を透過させる開口領域となる。尚、遮光膜23をストライプ状に形成し、該遮光膜23と、TFTアレイ基板10側に設けられたデータ線等の各種構成要素とによって、非開口領域を規定するようにしてもよい。
【0051】
遮光膜23上に、ITO等の透明材料からなる対向電極21が複数の画素電極9aと対向して形成されている。遮光膜23上に、画像表示領域10aにおいてカラー表示を行うために、開口領域及び非開口領域の一部を含む領域に、図4には図示しないカラーフィルタが形成されるようにしてもよい。対向基板20の対向面上における、対向電極21上には、配向膜22が形成されている。
【0052】
液晶層50を構成する液晶は、印加される電圧レベルにより分子集合の配向や秩序が変化することにより、光を変調し、階調表示を可能とする。ノーマリーホワイトモードであれば、各画素の単位で印加された電圧に応じて入射光に対する透過率が減少し、ノーマリーブラックモードであれば、各画素の単位で印加された電圧に応じて入射光に対する透過率が増加され、全体として液晶装置からは画像信号に応じたコントラストをもつ光が出射される。
【0053】
図4に示すように、TFTアレイ基板10の下層側及び対向基板20の上層側には、防塵基板121及び122が夫々配置されている。
【0054】
尚、図3及び図4に示したTFTアレイ基板10上には、これらの走査線駆動回路104、サンプリング回路7等に加えて、複数のデータ線に所定電圧レベルのプリチャージ信号を画像信号に先行して各々供給するプリチャージ回路、製造途中や出荷時の当該液晶装置の品質、欠陥等を検査するための検査回路等を形成してもよい。
【0055】
次に、フレキシブル基板200について、図5及び図6を参照して説明を加える。ここに、図5は、図1に示した液晶装置1における液晶パネル100の右下隅を拡大して示す拡大平面図であり、図6は、図5のB−B´線断面図である。尚、以降の図においては、図3及び図4で示した、液晶パネル100の詳細な部材については適宜省略し、直接関連のある部材のみを示す。
【0056】
図5に示すように、信号配線201及び放熱配線202は、外部回路接続端子102に、電気的及び機械的に、夫々接続されている。また、放熱配線202の太さは、信号配線201の太さより太く、例えば1〜2mmである。このため、比較的容易にして放熱配線202及び203を相互に接続するスルーホール204を形成することができ、実用上非常に有利である。
【0057】
図6に示すように、信号配線201及び放熱配線202を含む層は、例えばポリイミド等の層間絶縁膜211及び212間に配置され、放熱配線203を含む層は、層間絶縁膜212及び213間に配置されている。ここに、本実施形態に係る「信号配線201及び放熱配線202を含む層」及び「放熱配線203を含む層」は、夫々、本発明に係る「第1配線層」及び「第2配線層」の一例である。
【0058】
図6に示すように、グランド配線を兼ねる放熱配線202及び203がスルーホール204を介して、相互に電気的に接続されることにより、グランド配線の電位を安定させることができ、EMIノイズの発生を抑制することができる。
【0059】
尚、図6では、信号配線201及び放熱配線202が、層間絶縁膜211によって覆われているが、信号配線201及び放熱配線202と外部回路接続端子102との接点では、層間絶縁膜211が取り除かれ信号配線201及び放熱配線202が露出している。
【0060】
本実施形態では特に、図示しない液晶パネル100を収容する収容ケースと合わせて、信号配線201より太く形成された放熱配線202、及びベタ状に形成された放熱配線203を利用して、液晶パネル100の熱を放散している。従って、液晶パネル100を収容する収容ケースのみで液晶パネル100の熱を放散する場合に比べ、放熱に係る表面積を飛躍的に増加することができ、効率的に液晶パネル100の熱を放散することができる。
【0061】
(第1変形例)
次に、第1実施形態に係る液晶装置の第1変形例を、図7を参照して説明する。ここに、図7は、図5と同趣旨の、図1に示した液晶装置1における液晶パネル100の右下隅を拡大して示す拡大平面図である。
【0062】
図7に示すように、本変形例では、複数の外部回路接続端子102のうち放熱配線202が接続される外部回路接続端子102aが、放熱配線202の太さに応じて幅広に形成されている。これにより、液晶パネル及び放熱配線202間における熱の移動を向上することができ、より効率的に液晶パネル100の熱を放散することができる。
【0063】
(第2変形例)
次に、第1実施形態に係る液晶装置の第2変形例を、図8を参照して説明する。ここに、図8は、図5と同趣旨の、図1に示した液晶装置1における液晶パネル100の右下隅を拡大して示す拡大平面図である。
【0064】
図8に示すように、本変形例では、フレキシブル基板200の液晶パネル100側において、複数のスルーホールに代えて、比較的大きな面積を有するスルーホール205が形成されている。尚、スルーホール205の面積は、放熱配線202及び203間において、熱が速やかに移動可能な面積として設定されている。
【0065】
<第2実施形態>
次に、本発明の電気光学装置に係る第2実施形態を、図9乃至図11を参照して説明する。第2実施形態では、液晶パネル100の画像表示領域10aの周囲に、本発明に係る「周辺配線」の一例としての放熱配線が形成されている以外は、第1実施形態と同様である。よって、第2実施形態について、第1実施形態と重複する説明を省略すると共に、図面上における共通箇所には同一符号を付して示し、基本的に異なる点についてのみ、図9乃至図11を参照して説明する。ここに、図9は、図1と同趣旨の、本実施形態に係る液晶装置を対向基板の側からみた平面図であり、図10は、本実施形態に係る液晶パネルの右下隅を拡大して示す拡大平面図であり、図11は、図10のC−C´線断面図である。
【0066】
図9に示すように、液晶装置2における液晶パネル100の画像表示領域10aの周囲には、放熱配線300が形成されている。図10に示すように、フレキシブル基板200の放熱配線202は、放熱配線300に電気的及び機械的に接続されている。
【0067】
図11に示すように、TFTアレイ基板10上には3つの導体層が形成されている。即ち、層間絶縁膜43の上に形成された放熱配線300を含む層、層間絶縁膜42の上に形成された配線71を含む層、及び層間絶縁膜41の上に形成された配線72を含む層の3つの導体層がTFTアレイ基板10上に存在する。放熱配線300、並びに配線71及び72は、例えばアルミニウム等の金属を含んで構成されている。
【0068】
層間絶縁膜41、42及び43は、例えばSiO2等の無機絶縁材料から形成されている。このため、例えば、シール材52を硬化させるために照射される紫外線や、当該液晶装置をライトバルブとして使用する際に照射される強い光によって、層間絶縁膜41、42及び43が劣化することを防止することができる。
【0069】
本実施形態では特に、画像表示領域10aの周囲に放熱配線300が形成されているので、液晶パネル100の中で最も高温となることが予想される画像表示領域10aの熱を効率的に放散することができる。
【0070】
尚、放熱配線300は、図11に示した層間絶縁膜43の上に形成されていなくてもよく、配線71が形成されている層又は配線72が形成されている層に形成されていてもよい。
【0071】
(変形例)
次に、第2実施形態に係る液晶装置の変形例を、図12を参照して説明する。ここに、図12は、図11と同趣旨の、図10のC−C´線断面図である。
【0072】
図12に示すように、本変形例では、放熱配線300は、スルーホール43aを介して、例えばグランド配線である配線71に接続されており、配線71は、スルーホール42aを介して、例えばグランド配線である配線72に接続されている。これにより、より効率的に液晶パネル100の熱を放散することができる。
【0073】
<第3実施形態>
次に、本発明の電気光学装置に係る第3実施形態を、図13を参照して説明する。第3実施形態では、フレキシブル基板の層構造が異なる以外は、第1実施形態と同様である。よって、第3実施形態について、第1実施形態と重複する説明を省略すると共に、図面上における共通箇所には同一符号を付して示し、基本的に異なる点についてのみ、図13を参照して説明する。ここに、図13は、図6と同趣旨の、本実施形態に係るフレキシブル基板のB−B´線断面図である。
【0074】
図13に示すように、本実施形態に係るフレキシブル基板200は、3つの導体層を備えて構成されている。即ち、フレキシブル基板200は、信号配線201及び放熱配線202を含む層、放熱配線203を含む層、並びに放熱配線221を含む層を備えて構成されている。尚、本実施形態に係る「放熱配線203」、「放熱配線221」、「放熱配線203を含む層」及び「放熱配線221を含む層」は、夫々、本発明に係る「第1放熱配線」、「第2放熱配線」、「第1配線層」及び「第2配線層」の他の例である。
【0075】
放熱配線202は、層間絶縁膜212に形成されたスルーホール204を介して放熱配線203に接続されており、放熱配線203は、層間絶縁膜213に形成されたスルーホール222を介して放熱配線221に接続されている。放熱配線221の上層側には、保護膜としての層間絶縁膜214が配置されている。
【0076】
<電子機器>
次に、図14を参照しながら、上述した液晶装置を電子機器の一例であるプロジェクタに適用した場合を説明する。上述した液晶装置における液晶パネル100は、プロジェクタのライトバルブとして用いられている。図14は、プロジェクタの構成例を示す平面図である。
【0077】
図14に示すように、プロジェクタ1100内部には、ハロゲンランプ等の白色光源からなるランプユニット1102が設けられている。このランプユニット1102から射出された投射光は、ライトガイド1104内に配置された4枚のミラー1106および2枚のダイクロイックミラー1108によってRGBの3原色に分離され、各原色に対応するライトバルブとしての液晶パネル1110R、1110Bおよび1110Gに入射される。
【0078】
液晶パネル1110R、1110Bおよび1110Gの構成は、上述した液晶装置と同等の構成を有しており、画像信号処理回路から供給されるR、G、Bの原色信号でそれぞれ駆動されるものである。そして、これらの液晶パネルによって変調された光は、ダイクロイックプリズム1112に3方向から入射される。このダイクロイックプリズム1112においては、RおよびBの光が90度に屈折する一方、Gの光が直進する。したがって、各色の画像が合成される結果、投射レンズ1114を介して、スクリーン等にカラー画像が投写されることとなる。
【0079】
ここで、各液晶パネル1110R、1110Bおよび1110Gによる表示像について着目すると、液晶パネル1110R、1110Bによる表示像は、液晶パネル1110Gによる表示像に対して左右反転することが必要となる。
【0080】
尚、液晶パネル1110R、1110Bおよび1110Gには、ダイクロイックミラー1108によって、R、G、Bの各原色に対応する光が入射するので、カラーフィルタを設ける必要はない。
【0081】
尚、図14を参照して説明した電子機器の他にも、モバイル型のパーソナルコンピュータや、携帯電話、液晶テレビ、ビューファインダ型又はモニタ直視型のビデオテープレコーダ、カーナビゲーション装置、ページャ、電子手帳、電卓、ワードプロセッサ、ワークステーション、テレビ電話、POS端末、タッチパネルを備えた装置等が挙げられる。そして、これらの各種電子機器に適用可能なのは言うまでもない。
【0082】
尚、本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨、或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う電気光学装置、及び該電気光学装置を具備してなる電子機器もまた、本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0083】
1,2…液晶装置、10…TFTアレイ基板、20…対向基板、100…液晶パネル、121、122…防塵基板、200…フレキシブル基板、201…信号配線、202、203、221、300…放熱配線、204、205、222…スルーホール。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気光学動作を行う電気光学パネルと、
前記電気光学パネルと電気的に接続されており且つ前記電気光学パネルの熱を放散する第1放熱配線を含む第1配線層、及び前記電気光学パネルと電気的に接続されており且つ前記電気光学パネルの熱を放散する第2放熱配線を含む第2配線層を有する配線基板と
を備え、
前記第1放熱配線と前記第2放熱配線とはスルーホールを介して相互に接続されている
ことを特徴とする電気光学装置。
【請求項2】
前記配線基板は、前記電気光学パネルと電気的に接続され、前記第1配線層及び前記第2配線層とは別層から構成され、前記電気光学パネルの信号入出力用の信号配線を更に有することを特徴とする請求項1に記載の電気光学装置。
【請求項3】
前記配線基板は、前記第1配線層又は前記第2配線層の少なくも一方から構成され、前記電気光学パネルの信号入出力用の信号配線を更に有することを特徴とする請求項1又は2に記載の電気光学装置。
【請求項4】
前記スルーホールは、前記配線基板の前記電気光学パネル側において第1割合で形成されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の電気光学装置。
【請求項5】
前記スルーホールは、前記配線基板の前記電気光学パネル側とは反対側において、前記第1割合より小さい第2割合で形成されていることを特徴とする請求項4に記載の電気光学装置。
【請求項6】
前記配線基板は、可撓性の基材を有し、
前記第1配線層は、前記基材の一方の表面側に形成され、
前記第2配線層は、前記基材の他方の表面側に形成される
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の電気光学装置。
【請求項7】
前記第2放熱配線は、ベタ状に形成されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の電気光学装置。
【請求項8】
前記電気光学パネルは、画素領域の周囲に位置する周辺領域の少なくとも一部に形成され、少なくとも前記第1放熱配線と接続された周辺配線を含むことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の電気光学装置。
【請求項9】
前記第1及び第2放熱配線は、所定電位とされることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の電気光学装置。
【請求項10】
前記第1放熱配線は、前記信号配線より太いことを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一項に記載の電気光学装置。
【請求項11】
請求項1乃至9のいずれか一項に記載の電気光学装置を備えることを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−208522(P2012−208522A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−158368(P2012−158368)
【出願日】平成24年7月17日(2012.7.17)
【分割の表示】特願2007−289738(P2007−289738)の分割
【原出願日】平成19年11月7日(2007.11.7)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】