説明

電気加熱装置およびその製造方法

【課題】電気加熱装置の要素をより単純に組み立てる製造方法を提供する。さらに、より単純に、より低コストで製造できる電気加熱装置を提供する。
【解決手段】電気加熱装置は、ハウジング2を備えており、ハウジング内には、少なくとも1つのばね要素のテンション力によって加熱ブロック8が保持されており、このばね要素は、その組立て後位置において加熱ブロックとほぼ同じ高さに位置しており、ハウジングには対向するハウジング開口が画成されており、これらのハウジング開口を通じて加熱ブロック8が露出している。加熱ブロック8をハウジングパーツ4に挿入し、別のハウジングパーツ6によって加熱ブロック8をハウジング2内に囲む。組立てを容易にするため、ハウジング2を閉じて加熱ブロック8を囲むときに、ばね要素がその組立て後位置に配置されて弾性変形することを提案する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気加熱装置、特に、自動車の補助ヒータとして使用される電気加熱装置を製造する方法に関する。この電気加熱装置はハウジングを備えており、ハウジング内には、少なくとも1つのばね要素のテンション力によって加熱ブロックが保持されており、このばね要素は、その組立て後位置において加熱ブロックとほぼ同じ高さに位置している。さらに、ハウジングには対向するハウジング開口が形成されており、これらのハウジング開口を通じて加熱ブロックが露出している。
【背景技術】
【0002】
自動車の室内の空調を行うための、このような補助ヒータは、例えば、特許文献1から公知である。電気加熱装置の従来の製造方法においては、加熱ブロックを形成している要素をハウジングパーツの中に挿入する。さらに、ばね要素をハウジングパーツの中に挿入する。次いで、この第1のハウジングパーツの上に別のハウジングパーツを配置することによって、ハウジングを閉じる。特許文献1の教示内容によると、ハウジングを閉じる前には、ばね要素が弾性変形しておらず、他方のハウジングパーツに形成されているディスプレイサ(displacement element)(ばね要素を弾性変形させる)によって弾性変形する。ディスプレイサには傾斜面が形成されており、ばね要素は、その露出した上側脚部によってこの傾斜面をすべり、このプロセスにおいて、第1のハウジングパーツ内のベアリング(bearing)を中心に加熱ブロックの方に旋回し、最終的に弾性変形してテンションを発生させる。
【0003】
一般的な電気加熱装置の加熱ブロックは、通常では、放熱要素および発熱要素の、いくつかの平行な層を備えている。加熱ブロックの発熱要素は、いくつかのPTC加熱素子を備えており、これらのPTC加熱素子は、一平面内に重ねて設けられており、印刷導体(printed conductor)(通常は薄板金属帯によって形成されている)の間に配置されている。これらの印刷導体は、異なる極性の電流を流す。これらの印刷導体にPTC要素を貼り付けることができる。さらに、張力(tension)によって印刷導体とPTC加熱素子とを接触させることも可能である。いずれの場合にも、PTC加熱素子によって生成される熱を取り出すためと、電流を供給するため、印刷導体とPTC加熱素子とが良好に接触しているようにしなければならない。
【0004】
1つ以上の発熱要素を加熱ブロックの一部として設けることができる。発熱要素によって生成される熱は、加熱する媒体(すなわち空気)に放熱要素を通じて放散される。空気は、平坦な加熱ブロックを収容しているハウジングの中を2つのフレーム開口を通じて流れる。フレーム開口は、通常、本質的に平坦なフレーム形状のハウジングの対向面上に互いに平行に存在している。電気加熱装置の最も経済的な製造に関して、放熱要素は、一般的に、蛇行タイプの曲がり薄板片(meander-type bent sheet strip)(波形リブ(corrugated rib)を形成している)から形成されている。これらの波形リブは、片側または両側において放熱要素に接触している。結果として、加熱ブロックは、放熱要素および発熱要素のいくつかの層を備えており、この場合、熱放射に関して、放熱要素と発熱要素とが良好に接触するようにもしなければならない。さらに、この点において、放熱要素を発熱要素に永久的に接合する、もしくは、ハウジングに収容されている少なくとも1つのばね要素によるテンション下で放熱要素と発熱要素とを接触させる、またはこの両方を行うことができる。
【0005】
放熱要素は、蛇行タイプの薄板金属帯の代わりに、山型部材(ridge)を形成する押出しアルミニウムプロファイルによって形成することもでき、山型部材は、放熱要素および発熱要素を備えている層構造の層に本質的に直角に延びている。この構造の場合、PTC加熱素子のための印刷導体(すなわち、ほぼ平坦な位置決め面)を、この構造の押出しアルミニウムプロファイルの外面によって形成することができる。波形リブ要素または押出しプロファイルのいずれの代替形態においても、PTC加熱素子のための位置決め面は導電性として形成されており、通常は互いに絶縁されて取り付けられている接点に、電気的に接続されている。波形リブ要素の場合、接点は、一般には薄板金属帯の露出端部によって形成されている。
【0006】
平行な放熱要素および発熱要素から成る層状の加熱ブロック(オプションとして、加熱ブロックに平行に延在する1つ以上の追加のばね要素を備えている)は、断面がU形状であるハウジング内に取り付けられていることが好ましい。層構造にばねの圧力がかかる場合、たとえ温度が上昇したときにもばねの力をそのまま維持できるように、フレームの寸法を決定しなければならない。最近では、ひとつには経済的な理由から、絶縁フレームを射出成形部品として製造することに留意されたい。最近では、通常のハウジングは、下側ハウジングと上側ハウジングとから構成されている。この場合、下側ハウジングは、加熱ブロックの個々の要素およびばね要素(必要時)の受け部を形成している。加熱ブロックの個々の要素を、この下側ハウジングに配置する。次いで、上側ハウジングと下側ハウジングとを結合することによって、ハウジング内に加熱ブロックを囲む。これを達成するため、加熱ブロックがフレーム開口の間に囲まれてハウジング内に取り付けられるように、フレーム開口の周囲の縁部によって加熱ブロックを部分的に覆うことができる。次いで、2つのハウジング部分を、例えば掛止(latching)結合を使用してひとつに結合する。
【0007】
このタイプの組立ての場合、加熱ブロックの個々の層をハウジング内の所定の位置に配置しなければならないという問題がある。すべての発熱要素それぞれに接点が割り当てられるわけではないため、組立て時に加熱ブロック内の電気条件も考慮しなければならない。しかしながら、製造コストを最小にするためには、加熱ブロックの複数の異なる層に同じコンポーネントを使用できるように、加熱ブロックの部品をできるだけ標準化された部品として形成することも望まれる。
【0008】
さらには、電気加熱装置の経済的な製造に関連して、ハウジング自体についても、できるだけ単純に製造できるようにすべきである。しかしながら、ハウジングパーツを結合するときに、フレーム内で加熱ブロックにプレストレスがすでにかかっていて、従ってそのプレストレスに逆らって結合を行わなければならない場合、ハウジング内に1つ以上のばね要素を実際に取り付けるうえでの特定の要件に従わなくてはならない。
【0009】
上述した問題に関して、特許文献1には、一般的なタイプの電気加熱装置として、ばね要素を含んでいる加熱ブロックの層を、最初はテンションがかからない状態で下側ハウジングに最初に取り付ける電気加熱装置がすでに提案されている。下側ハウジングに結合することのできる上側ハウジングには、傾斜摺動面が形成されており、この摺動面は、加熱ブロックの外側に対応して下側ハウジングから上に突き出しているばね要素の端部の上に延在している。上側ハウジングと下側ハウジングとを結合すると、それに応じてばね要素が加熱ブロックの方向に圧縮され、応力がかかった状態で接触する。
【0010】
従来技術としてのこの提案では、組立て時の単純化が達成されるが、加熱ブロックの要素とばね要素とを下側ハウジングの中の正しい位置に配置することが要求される。さらには、この電気加熱装置において実施されるハウジングは、ハウジングパーツを結合するときに応力をかけるためとばね要素を囲むために必要なさまざまな傾斜面を有する。さらには、ばね要素のこの実施形態は、上記の動作が達成されるように構造が比較的複雑である。
【特許文献1】欧州特許第1564503号明細書
【発明の開示】
【0011】
本発明は、上記の問題に鑑み、電気加熱装置の製造方法として、電気加熱装置の要素をより単純に組み立てることができる方法を提供する。さらに、本発明は、本方法を実施する対象の電気加熱装置であって、より単純に、従ってより低コストで製造することのできる電気加熱装置、を提供する。
【0012】
製造方法に関する問題を解決するため、本発明は、請求項1の特徴を備えた方法を提案する。この方法では、従来技術の一般的な方法と異なる点として、ハウジングを閉じて加熱ブロックを囲むときに、ばね要素がその組立て後位置に配置される。従って、ばね要素は、最初、その組立て後位置にはない。ハウジングを閉じるとき、すなわち、2つのハウジングパーツを互いに相対的に動かすとき、ばね要素が押し込まれ、その組立て後位置に配置される。この挿入動作時、ばね要素が弾性変形し、必要なテンション力が発生する。従って、最初に、ばね要素を準備位置に配置することができ、この準備位置においては、ばね要素は、加熱ブロックもしくは一方のハウジングパーツ、またはその両方から、その一部または全体が突き出している。他方のハウジングパーツと協働して加熱ブロックが囲まれた段階において、ばね要素がその組立て後位置に移動して弾性変形する。ばね要素は、加熱ブロックの平面内に押し込まれるときに弾性変形する。
【0013】
好ましい手順ステップによると、最初に、ばね要素の長手セクション(longitudinal section)が、加熱ブロックが占めている平面から突き出すように、ばね要素をハウジングに挿入する。しかしながら、この開始位置においては、ばね要素の一部分が加熱ブロックと同じ高さにすでに位置しており、従って、個々の平行な放熱要素および発熱要素の位置に対応する位置にあることが好ましい。第1のハウジングパーツの上に他方のハウジングパーツを配置する前の段階で、ハウジング内のばね要素の位置は、少なくとも、2つのハウジングパーツを結合する方向を横切る一平面内に、あらかじめ実質的に決まっている。加熱ブロックから突き出している長手セクションは、本発明のさらなる好ましい発展においては、工具によって組立て後位置に押し込まれるのではなく、他方のハウジングパーツによって押し込まれる。このプロセスでは、結合動作時に、他方のハウジングパーツが、対応する長手セクションに作用し、ばね要素をその組立て後位置に押し込む。
【0014】
ハウジングパーツの結合動作を容易にするためと、ばね要素を加熱ブロックの平面内に配置するときにばね要素が良好にガイドされるようにする目的で、本発明のさらなる好ましい実施形態によると、ハウジングを閉じるときにハウジングパーツが互いにガイドされることを提案する。この目的のために設けられる、2つのハウジングパーツのガイド要素は、ばね要素をその組立て後位置に押し込む力が発生する前に係合している。この押し込む力が働くことにより、通常では、ばねのテンションも発生し、このテンションは、ばねが加熱ブロックの平面に配置されているときにのみ発生する。ばねのテンションが増すとともに、ばね要素の重なりが増し、従って、2つのハウジングパーツを結合させる動作の確実なガイド効果も増大する。さらには、この方法では、他方のハウジングパーツにおける長手セクションの配置が決まっており、従って、ばね要素がハウジング内に所定の様式で挿入される。
【0015】
ばね要素を加熱ブロックの平面内に配置するときの、ばね要素の正確な位置決めを改良する、本発明のさらなる好ましい実施形態によると、ばね要素は、ハウジング内に挿入されるとき、ばね要素が加熱ブロックにテンションをかけて対応する力が生じる前の段階では、ハウジングパーツの一方において、ばね要素の平坦部分と少なくとも直線的に協働するハウジング要素によってガイドされる。この平坦な平面の部分は、通常、挿入方向に平行に延在している。同様に、ハウジングパーツの対応するガイド面は、挿入方向に平行に延在しており、ばね要素の平坦部分に接触する。しかしながら、ばね要素と、ばね要素をハウジングパーツに挿入するときの移動経路は次のように設計されている。すなわち、ばね力が増大したとき、ばね要素が加熱ブロックの方に押されて、平坦部分と、最初にばね要素をガイドするハウジング要素との間の相互作用(この相互作用は回避すべきである)によってばね要素が何ら妨げられることなく弾性変形するのに少なくとも十分な距離だけ、ハウジング要素から離れる。通常、挿入動作が進行するにつれて、最終的に、ばね要素は自身が作用している加熱ブロックの外側によってガイドされる。
【0016】
本発明のさらなる発展によると、ばね要素をハウジング内に挿入するとき、ばね要素の少なくとも1枚のばね脚部が、ハウジングパーツの一方によって弾性変形する。しかしながら、挿入動作が進行するにつれて、ばね脚部は他方のハウジングパーツによって弾性変形する。これにより、最初に作用するハウジングパーツによってばね要素を最初にいくらか弾性変形させ、全体として加熱ブロックに圧力を印加するための最終的なばね力を他方のハウジングパーツによって発生させることが可能となる。これにより、結合プロセス時のハウジングパーツの移動経路と、ばね要素をハウジングパーツに挿入するときのばね要素の移動経路と、ハウジングパーツの寸法とを、場合に応じて適合させることができる。具体的には、最初に作用するハウジングパーツは、壁を比較的薄くして剛性をさほど高くしないことができ、なぜなら、このハウジングパーツはわずかなばね力を発生させることができればよいためである。
【0017】
本発明のさらなる好ましい実施形態によると、ばね要素がその組立て後位置に配置された時点で、ハウジングパーツは、フォームクロージャ状態に(in a form-closed manner)互いに結合されている。これにより、ハウジングパーツを必ず直線経路で結合することができ、このプロセスにおいては、結合動作の終了時にハウジングパーツの完全な結合を同時に達成することができる。従って、このさらなる好ましい発展では、特に、電気加熱装置を容易に組み立てることができる。
【0018】
電気加熱装置に関する問題を解決するための、本発明の独立した態様として提案する電気加熱装置は、請求項8に記載されている。この加熱装置は、特許文献1の上述した一般的な従来技術との違いとして、ばね要素が、一方のハウジングパーツの要素に対する傾斜摺動面を画成している少なくとも1枚のばね脚部を備えており、このばね脚部は、ハウジングパーツを結合することによってハウジングを閉じるときに、一方のハウジングパーツの支持面(ハウジングパーツの結合方向に平行に延在している)によって弾性変形する。このような実施形態は、特に、ハウジングパーツを射出成形によって単純に製造することを考慮したときに好ましく、1つ以上のばね要素に対する支持面を形成している機能表面を含めて、ハウジングパーツの機能表面、輪郭表面、および画成表面が、射出成形金型のモールドジョイントに必ず平行または直角に延在している。このような射出成形金型(すなわち、射出成形金型のモールドキャビティを形成している面)は、単にフライス加工によって(例えば、正面フライスを使用して)作製することができ、モールドキャビティを形成する面が放電腐食する複雑な射出成形金型を使用することなく、従って、特殊な製造知識なしに低コストで作製することができる。
【0019】
本発明におけるばね要素は、具体的には、加熱ブロックの個々の層(通常は互いに良好に結合されている)が互いに接触して熱および電流を伝えるように、加熱ブロックの個々の層を互いに押し付けるばね要素を意味する。電流の伝達特性が重要である理由は、一般的なタイプの電気加熱装置が、自動車においては通常では動作電圧12ボルトで動作し、従って、望ましい加熱出力が数千Wとはいかないまでも数百Wであるならば、個々の層の位相界面において相当な量の電流が流れるためである。しっかりと結合されていない要素の位相界面において境界抵抗が増大する限りは、この電流は摩耗につながる。この問題は、少なくとも1つのばね要素によって対処しなければならない。この場合、特に、2枚の薄板金属片と、その間に配置されているPTC加熱素子との間の位相界面(phase interface)において、電流が高い信頼性で伝わることが重要である。経験によると、ばねは、例えば200mmの長さにわたって、500N〜1000Nの範囲のばね力を印加しなければならない。これ以上のばね力も可能ではあるが、要求される熱出力および電流入力を考えれば、そのようなばね力は通常では必要ない。
【0020】
本発明においては、電気加熱装置であって、個々の取付け要素と、それに合致する、ハウジング側の取付け要素受け部とを形成することによる、個々の発熱要素の特殊な実施形態によって、個々の発熱要素が、加熱ブロック内の特定の位置にあらかじめ割り当てられる、電気加熱装置、を提案する。従って、加熱ブロックの個々の発熱要素をハウジング内の任意の位置に取り付けることはできない。特定の1つまたは複数の発熱要素(対応する取付け要素を備えている)の位置は、ハウジング内であらかじめ決まっているのに対して、放熱要素については、例えば、それぞれを同じ設計とすることができ、好ましくは、蛇行状に屈曲しており、層構造の層を横切る方向の長さが同じである薄板金属片として設計することができる。
【0021】
本発明においては、取付け要素は、特に、発熱要素をハウジング内に配置する、もしくは取り付ける、またはその両方を行う以外の機能を持たない、発熱要素の部品を意味する。このように他の機能を持たない取付け要素は、例えば、位置要素から形成されており、この位置要素は、特に、絶縁材料から作製されている配置フレーム(positional frame)によって、PTC加熱素子を発熱要素内の所定の場所に保持する。配置フレームには、少なくとも1つのPTC加熱素子のための互いに隣接する受け部が形成されている。この場合、取付け要素は、特に、対応する配置フレームの端部に形成されている。配置フレームの一端または両端に、そのための特殊な形状の頭部を設けることができ、この頭部を、ハウジング側の対応する形状の受け部に挿入することができる。配置フレームは、その側端部に同じ取付け要素を備えていることができる。しかしながら、これ以外の形態とすることもでき、実際には、発熱要素それぞれが相異なる取付け要素を備えていることもできる。その場合、そのための取付け要素受け部がハウジング側に形成されており、従って、ハウジング内の所定の発熱要素をハウジング内の所定の場所にのみ取り付けることができる。配置フレームに形成されており、発熱要素をハウジング内に保持および配置する以外の機能を持たない取付け要素に加えて、印刷導体を形成している個々の薄板金属帯を取付け要素として形成することができる。
【0022】
この点において、本発明の好ましい実施形態によると、以下を提案する。発熱要素は、PTC加熱素子が電気的に接触する薄板金属帯を備えており、この薄板金属帯は、加熱ブロックの側面において、これを曲げることによって、関連付けられる発熱要素の平面から突き出しており、ハウジングの側面にカットされているスロットに通されている。さらに、複数の異なる発熱要素の屈曲薄板金属帯と、関連付けられるスロットとが、発熱要素をハウジング内の任意のランダムな場所には挿入できないように、形成されている。
【0023】
この好ましい実施形態においては、選択された薄板金属帯は、加熱ブロック内でそれぞれの配置フレームの上側および下側に位置しており、それぞれの配置フレームに配置されているPTC加熱素子に接触している。この薄板金属帯の端部は、加熱ブロック内で対応する発熱要素が存在している平面から薄板金属帯が離れるように、加熱ブロックの側端部において片側または両側において曲げられている。従って、加熱ブロックの端部においては、薄板金属帯が通常では加熱ブロックの層に直角に延びているが、特定の長さ(すなわち、この直角方向におけるオフセット)の位置で再び元の方向に曲げられており、スロットを通っている。このスロットは、ハウジングの側面にカットされており、すなわち、通常では層構造の層に本質的に平行に延びている。このオフセットの長さ(すなわち、スロットと、関連付けられる発熱要素との間の距離)によって、所定の放熱要素とハウジング内の所定の位置との間の割り当てを達成することができ、従って、発熱要素をハウジング内の任意のランダムな位置には挿入することができず、特定の、好ましくは一義的な場所に挿入できる。
【0024】
本発明と、前述したさらなる発展においては、ハウジングパーツを結合する前にハウジング内に層構造の個々の層を配置するときの、組立ての失敗が回避される。本発明による電気加熱装置においては、加熱ブロックの個々の要素は、所定の位置にのみ取り付けることができる。取付け要素および取付け要素受け部の構造および割り当てによって、設計上許容されない位置に発熱要素を取り付けることが完全に排除される。取付け要素および関連付けられる取付け要素受け部は、特定量の遊びが含まれるように設計されており、従って、取付け要素は取付け要素受け部内に確実に収まって固定されるにもかかわらず、層構造の層を容易に挿入することができ、一般には加熱ブロックの層に対して限られた長さだけ動くように保持されている。しかしながら、この許容差は、任意のランダムな取付け要素受け部に任意の取付け要素を収容できるほど大きくはない。
【0025】
本発明のさらなる好ましい発展によると、ハウジングは、下側ハウジングと上側ハウジングとを備えており、下側ハウジングは、加熱ブロックのための受け部と、受け部および取付け要素受け部を囲んでいるフレームと、を形成しており、上側ハウジングは、下側ハウジングに結合されており加熱ブロックを囲んでいる。この場合、取付け要素受け部は、加熱ブロックが延在する平面を横切る方向に取付け要素を下側ハウジングに挿入できるように、形成されている。従って、加熱装置の組立て時、加熱ブロックの個々の層を、下側ハウジング(片側に開いている)の中に、この下側ハウジングに形成されているフレーム開口の方向に、個々の層が受け部の底部に達するまで、挿入する。この場合、取付け要素受け部(挿入方向に開いている)は、加熱ブロック内における対応する発熱要素の容易に認識可能な位置を示している。この好ましい実施形態における一義的な割り当てに関して、発熱要素の長手方向に長さの異なる、もしくは、発熱要素を横切る方向に幅の異なる、またはこれらの両方である、複数の異なる取付け要素受け部を形成することを提案する。
【0026】
個々の発熱要素の取付け要素として、ハンマーヘッドに似た形状に幅を広げ、ただし比較的短く形成することができる。別の取付け要素として、突起状に細長く形成することができる。さらに、片側において発熱要素よりも突き出す、長く幅広の突起を設けることができる。極めて多様な輪郭形状が考えられ、取付け要素受け部は、それに対応する輪郭形状とする。例えば、取付け要素として、平面図における円、楕円、H形状、U形状を、同様に開いた下側ハウジングに形成することができる。上述した可能な断面形状は、通常では配置フレームに一体に成型し、通常では、取付け要素を加熱ブロックに結合している薄い突起に結合されている。
【0027】
組立て時の失敗のさらなる防止策として、本発明のさらなる好ましい実施形態によると、以下を提案する。上側ハウジングがガイドピンを有し、このガイドピンは、上側ハウジングのカバー(加熱ブロックを囲んでいる)から突き出しており、カバーとともに一体に形成されており、下側ハウジングにおける対応するカットされているピンガイドと係合する。この場合、ガイドピンおよびピンガイドは、2つのハウジングパーツを特定の向きにおいてのみひとつに結合できるように、互いに対応して2つのハウジングパーツに形成されている。このさらなる発展では、以下を考慮している。すなわち、カバーは一般的なタイプのカバーとして形成できるが、加熱ブロックの要素またはばね装置の部品を正確に配置することに関して、好ましくは、上側ハウジングは、特定の形状として形成し、加熱ブロックを囲むための所定の配置構成として形成し、加熱ブロックの要素の設計にカバーを適合させることができるように形成し、下側ハウジングに一義的に取り付ける。
【0028】
本発明による加熱装置の容易な製造に関して、特に、射出成形手法を使用してハウジングを製造することを考慮する。本発明の好ましい態様によると、下側ハウジングの受け部およびピンガイドを形成している機能領域と、下側ハウジングの輪郭表面(外側輪郭を与える)と、ガイドピンを形成している機能領域と、カバーを画成している、下側ハウジングの画成表面とを、フレーム開口を含んでいる平面に必ず平行または垂直にこれらの領域が延在するように、形成することを提案する。この実施形態の利点として、熱可塑性プラスチックの射出成形の過程において下側ハウジングおよび上側ハウジングを製造するための射出成形金型(injection moulding tool)にアンダーカットが存在せず、金型の機能表面、輪郭面、および画成表面が互いに直交する向きにあるため、ハウジングパーツを形成する面(すなわち射出成形金型の全体)を正面フライスを使用して単純に製造することができる。モールドキャビティを形成する面が放電腐食する複雑な射出成形金型を使用することなく、本発明による加熱装置のハウジングを製造するための射出成形金型は、特殊な知識なしに経済的に作製することができる。
【0029】
このさらなる発展の説明において、機能表面は、ハウジングパーツの表面のうち、加熱ブロックのための受け部を画成する表面と、ハウジングパーツの結合を容易にする表面と、そのために要求されるハウジングパーツの相対的な動きをガイドする表面とを意味する。このさらなる発展の説明において、輪郭面および画成表面は、ハウジングパーツの表面のうち、ハウジングパーツおよびハウジング全体の外側輪郭を画成する表面を意味する。2つの平面が直角に交わる比較的狭い側面または端面は、本発明の目的において適切な機能表面、輪郭面、および画成表面とはみなされない。これらの側面および端面は、丸める、または傾けることができる。
【0030】
この好ましい実施形態においては、ハウジングは、通常では、長方形(rectangular)コンポーネントであって、加熱ブロックのための本質的に類似する本質的に長方形の受け部が形成されており、両方の外面に、本質的に類似している長方形のハウジング開口があらかじめ形成されているコンポーネント、として形成されている。
【0031】
さらなる好ましい発展によると、ばね要素には平面の接触面が画成されており、加熱ブロックは、その外側がこの接触面に密着する状態に配置される。この実施形態は、放熱要素を、蛇行状に屈曲した波形リブの形に具体化する場合に、ばね要素が、波形リブの屈曲端部に対する接触面を同時に形成できるという利点がある。従って、従来技術から公知である薄板金属帯を、このばね要素に置き換えることができ、このばね要素は、加熱ブロックに電流を供給する目的にも使用できるが、そうでない場合、隣接する波形リブ要素に対する平面の接触面を、ばね要素のみに形成することもできる。このさらなる好ましい発展においては、それにより、電気加熱装置を組み立てるのに必要なコンポーネントの数を減らすことができる。このさらなる特徴のさらなる利点として、平面の接触面は加熱ブロックに対する摺動面を形成しており、これにより、ばね要素を組立て後位置に配置するとき、加熱ブロックとばね要素との間のなめらかな摺動運動を達成することができる。
【0032】
組立てを容易にするため、本発明の別の好ましい実施形態によると、ばね要素が、加熱ブロックの実質的に全長にわたり延在している薄板金属帯を備えていることを提案する。スタンピングおよび曲げによるばね要素の製造を容易にするため、この薄板金属片には、薄板金属帯に一体に形成されているばね脚部が設けられている。薄板金属帯の長手方向に、いくつかのばね脚部が設けられている。従って、薄板金属片と、テンションをかけるばね力を発生させる個々のばね脚部とが、一様なコンポーネントとして画成されている。
【0033】
ばね要素をその組立て後位置に配置するのに必要な力を低減するため、本発明のさらなる好ましい実施形態によると、ばね要素の一部としての2枚のばね脚部を、結合方向において一方が他方の上方に位置するように、対向する端部に設けることを提案する。従って、これらの2つのばね要素は、結合方向において連続的に作用する。さらに、この実施形態においては、結合状態において加熱ブロックに作用するばね力を一様なものとすることができる。この好ましい実施形態においては、ばね脚部のそれぞれが傾斜摺動面を画成している。
【0034】
ハウジングパーツを結合することによってハウジングを閉じるとき、ただ1つのハウジング要素の支持面によって、ばね脚部を弾性変形させることができる。あるいは、一方が他方の上方に位置するように配置されているばね脚部を、異なるハウジングパーツの要素によって協働させることもできる。後者の代替形態においては、傾斜摺動面と協働するハウジングパーツの要素を低い剛性に設計し、従って、ハウジングパーツ全体をいくらか軽量に設計することができる。
【0035】
さらなる好ましい発展においては、同様に、2枚のばね脚部が、結合方向において一方が他方の上方に位置するように設けられており、これらのばね脚部が、好ましくは、一つのハウジング要素の支持面によって弾性変形し、この支持面は、結合プロセス時、すなわちハウジングパーツを結合することによってハウジングを閉じるときの相対的な動きに平行に延在している。この実施形態においては、ハウジングが完全に閉じていないとき、少なくとも1つのばね要素によって発生するばね力を良好に制御することもできる。これらのばね力は、ハウジングパーツのガイド動作をガイドするガイド要素によってさらに支持することができる。その場合、ばね力のうち、加熱ブロックの位置に厳密には平行に作用していない力によって、加熱ブロックまたはその要素がハウジングから押し出される可能性が減少する。
【0036】
本発明のさらなる好ましい実施形態によると、ばね要素の長手方向に何枚かのばね脚部が連続的に設けられている。従って、加熱ブロックに、層に平行に配置されている何枚かのばね脚部によってテンションがかかり、従って、全体として作用するばね力が均一に分布する。さらには、ばね要素またはばね脚部を、加熱ブロック内にPTC加熱素子が設けられている場所に選択的に設けることができ、これにより、特に、これらの位置において、薄板金属帯(PTC加熱素子に電流を供給する)とPTC加熱素子との間の押し付け力が高まる。これらのばね脚部は、薄板金属片の実質的に平坦な部分によって互いに結合されており、スタンピングおよび曲げによる形成によって平坦部分に画成されている。従って、隣接するばね脚部と平坦部分は、一様なコンポーネントを形成している。しかしながら、平坦部分は、隣接するばね脚部を結合しているだけではない。ばね要素をハウジング内に挿入するとき、これらの平坦部分によって、ばね要素の特定の部分をガイドすることができる。これを目的として、少なくとも一方のハウジングパーツにスペーサが形成されており、このスペーサは、支持面より突き出しており、平坦部分に対する接触面を形成している。これらの平坦部分を最初にスペーサによってガイドすることができる。さらには、ハウジングにスペーサが形成されていることと合わせて、ばねの実施形態として、ばね脚部が薄板金属帯の片面にのみ設けられており、隣接要素である加熱ブロックに対する接触面が反対側に設けられている実施形態では、ばね要素を加熱ブロックに対して正しい向きにのみ取り付けることができ、すなわち、平面の接触面が加熱ブロックの横に位置している場合にのみ、ばね要素を取り付けることができる。この実施形態(本発明における本質的な実施形態である)によって、ばねを加熱ブロック内に挿入する方向、あるいは挿入方向に対する支持面の向きは重要ではなく、電気加熱装置の組立て時の誤りを回避することができる。誤りの回避を目的としたとき、平坦部分に対するガイド面がスペーサに画成されているかについても重要ではない。重要であるのは、加熱ブロックを制限し、かつばね要素の実施形態に合わせた輪郭が、スペーサによって、ハウジングの内面において長手方向に画成されていることである。輪郭のうち、内側に突き出しているスペーサは、ばね要素の平坦部分の位置に対応している。
【0037】
ばね要素の実施形態として、いくつかの平坦部分(すなわち通常の薄板金属片の部分)を備えており、ばね脚部がこれらの平坦部分の間に配置されており、平坦部分の平面の片面に突き出している実施形態では、ばね脚部をスタンピングおよび曲げた後、薄板材料をコイルに巻き付けて、この状態で供給あるいは保管することがさらに可能である。従って、本発明による加熱装置の好ましいばね要素は、極めて長い製品としての薄板金属片から形成して、それを所定の長さに切断することができ、これにより、必要なばね力または必要な長さにばねを比較的容易に適合させることができる。
【0038】
本発明のさらなる詳細および利点については、実施形態の以下の説明の中で図面を参照しながら記載する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
図1は、下側ハウジング4と上側ハウジング6とから構成されているハウジング2を備えた電気加熱装置の実施形態の斜視図を示している。ハウジングパーツ4,6の両方が一体に結合されて確実に固定されており、加熱ブロック8を収容している。加熱ブロック8は、互いに平行に層状に配置されているいくつかの発熱要素10および放熱要素12から構成されている。放熱要素12は、蛇行タイプの屈曲薄板金属片から波形リブ要素(corrugated rib element)として形成されている。
【0040】
5枚の接触突起片14(横方向に並んで配置されている)は、ハウジング2の側面から突き出している。これらの接触突起片は、カットされているスロット15においてハウジング2を貫いている。カットされているスロット15は、それぞれが1枚の接触突起片を収容しており、主として下側ハウジング4に形成されているが、一部分は上側ハウジング6の側面に形成されている。
【0041】
ハウジング2は、対向配置されている2つのフレーム開口を有し、図1には、上側ハウジング6に形成されているフレーム開口16のみが見えている。下側ハウジング4に形成されているフレーム開口は、図4に参照数字18として示してある。フレーム開口16,18のそれぞれには、何本かの支柱20が配置されている。これらの支柱20は、加熱ブロック8の層に直角に延びており、下側ハウジング4および上側ハウジング6における対向配置されている縦桁を互いに結合している。
【0042】
図2は、加熱ブロック8の詳細と、特に下側ハウジング4における収容とを示しており、上側ハウジングを取り外した状態で下側ハウジング4を平面図として示している。放熱要素12は、下側ハウジング4の側端部それぞれにおいて一部のみを示してある。従って、図2における図解は、下側ハウジング4に形成されているフレーム開口18を上から見ている。
【0043】
図から理解できるように、図示した実施形態は、4つの発熱要素10を備えており、発熱要素10のそれぞれは、側面において絶縁されており、下側ハウジング4の中で層構造(加熱ブロック8)の層を横切る方向にある程度動く状態で収容されている。下側ハウジング4は、そのための取付け要素受け部22(受け部24の方に開いている)を備えている。この受け部24は、本質的には下側ハウジング4に形成されており、加熱ブロック8を収容している。図示した実施形態においては、下側ハウジング4の側面のそれぞれに、2種類の取付け要素受け部22a,22bが設けられている(図3も参照)。取付け要素受け部22の幾何形状に対応して、発熱要素10は、その側端部に取付け要素26a,26bを備えており、取付け要素26a,26bのそれぞれは、取付け要素受け部22aまたは22bのうち正しく対応する受け部にのみ収まる。この場合、取付け要素受け部22と、対応して設けられている取付け要素26との間の遊びは、発熱要素10がハウジング2内で加熱ブロック8の層の長手方向を横切る方向にゼロコンマ数ミリメートルだけ動くことができる程度である。外側の取付け要素26aは、ハンマーヘッド状に形成されており、適切に形成されている取付け要素受け部22aと係合する。この取付け要素受け部22aは、中央に設けられている第2の取付け要素受け部22bよりも、発熱要素10の長手方向に実質的に短い。これら縦長の取付け要素受け部22bに割り当てられている取付け要素26bは棒状であり、ハンマーヘッド形状の取付け要素26aよりも幅が狭い。この特殊な設計によって、中央の発熱要素10は、加熱ブロックの発熱要素10に対する外側の位置には収まらない。同じように、外側の発熱要素を中央の加熱ブロックに配置する(すなわちハウジング2に挿入する)ことはできない。
【0044】
発熱要素10は、任意のランダムな場所においてハウジング2に挿入できないが、放熱波形リブ要素12はそれぞれ同じものとして作製されており、最初に、蛇行タイプの屈曲薄板金属片の縦長材として作製した後、その長い材料から所定の長さに切断する。個々の放熱要素12のそれぞれは、加熱ブロック8内の放熱要素のための任意の位置に挿入することができる。
【0045】
取付け要素26は、配置フレーム28に一体に形成されており、図6および図7に示してあり、以下ではこれらの図を参照しながらさらに詳しく説明する。配置フレーム28は、絶縁材料から構成されており、PTC加熱素子30を配置するために使用される。この場合、配置フレーム28には、個々のPTC加熱素子30のそれぞれに対する受け部32がカットされており、受け部32は、PTC加熱素子の周囲を保持する。一平面上に互いに隣接して配置されているPTC加熱素子30それぞれの両側には、薄板金属帯34,36が接触している。薄板金属帯34,36は、PTC加熱素子30に電力供給するための印刷導電体を形成しており、PTC加熱素子によって生成される熱は、この薄板金属帯34,36を介して熱伝導によって放熱要素12に伝わる。これらの放熱要素12は、薄板金属帯34,36の上に直接配置されている。
【0046】
配置フレーム28の側端部には、取付け要素の突起38が、薄板金属帯34,36の位置を超えて延在している。取付け要素の突起38の外側端部には、配置フレーム28の各取付け要素26が存在している。図6に示した線VII−VIIに沿った断面図(図7参照)に図解したように、各薄板金属帯34,36は、配置フレーム28の幅方向のほとんどを占めている。この断面図において、配置フレームは、薄板金属帯34,36の隣に保持突起40を有し、この保持突起40は、薄板金属帯34,36の側縁部に隣接して設けられており、上側においては対応する薄板金属帯34,36より突き出しており、外側においては薄板金属帯34,36と重なっており、好ましくは印刷導体34,36に接触している。図示した実施形態においては、保持突起40は、射出成形の過程において、最初、配置フレーム28の主方向に直角に延びている突出部として、単一部品として形成する。両側の突出部の間隔は、薄板金属帯34または36がこれら突出部の間にちょうど収まるように選択する。
【0047】
次いで、このように射出成形によって作製した一体型コンポーネントに、発熱要素10の主コンポーネントを取り付け、すなわち、PTC加熱素子30を対応する受け部32に挿入し、両面を薄板金属帯34,36によって囲む。その後、塑性変形により内側方向にくぼみを形成し、印刷導体34,36を完全に形成する。この場合、通常では加熱成形を用いて、保持突起40を形成している材料のうち薄板金属帯34,36の領域を局所的に加熱し、これにより柔らかくする。使用する加熱手段としては、例えば、配置フレーム28を熱風または熱伝導によって局所的に加熱することができる。熱伝導を使用して加熱する場合、加熱手段は、加熱と同時に保持突起40を形成する金型に設けられていることが好ましい。
【0048】
保持突起40は、発熱要素10の長手方向に連続的に形成するのではなく、セクション40.1〜40.5として設ける。これらのセクション40.1〜40.5の間には通路41が残されており、この通路41は、支柱22がセクション40.1、40.2、40.3、40.4、または40.5の間に幅方向にぴったり収まるように形成されている。通路41によって形成されるセクションは、支柱22の厚さの少なくとも1/2が保持突起40の間に収まって収容される程度だけ、保持突起40の外面よりも内側にくぼんでいる。
【0049】
しかしながら、支柱22と配置フレーム28との間の確実な固定係合は、加熱ブロック8の層を横切る方向には存在せず、従って、ハウジングパーツ4,6の支柱22(第1の支柱とも称する)と保持突起40(第2の支柱43とも称する)との間に、加熱ブロック8の層を横切る方向の動きが提供される。
【0050】
発熱要素10は、あらかじめ組み立てられるコンポーネントとして形成されており、従って、組立て時、配置フレーム28に挿入されている印刷導体34,36、さらにはPTC加熱素子30が失われる危険性なしに取り扱うことができる。しかしながら、指摘しておくべき点として、保持突起は、通常では、配置フレーム内に薄板金属帯34,36を固定するのみであり、動作時にPTC加熱素子30に高い信頼性で電力供給するのに十分な接触圧力がかかるように、薄板金属帯34,36とPTC加熱素子30とを接触させるようには機能しない。本発明の範囲の中で説明した実施形態においては、この接触はばね要素によって行われ、この点については図8〜図10を参照しながらさらに詳しく説明する。
【0051】
しかしながら、最初に、加熱ブロック8の要素をハウジング2の中の任意のランダムな場所には取り付けることができないようにするいくつかの特徴について説明する。
【0052】
特に図3および図6から理解できるように、薄板金属帯(すなわち図6に示した薄板金属帯34)は、発熱要素10の平面の外側に曲げられている。結果として、薄板金属帯34とPTC加熱素子30とが接触している平面と、自由端部44(薄板金属帯34の主セクションの反対方向にもう一度曲げられているため、このセクションに平行に延びている)との間にオフセット42が形成されている。図3に示したように、この自由端部44は、割り当てられている接触突起片14に圧着要素46によって機械的かつ電気的に結合されている。
【0053】
図3に参照数字10.3および10.4によって表してある上側の放熱要素は、上側薄板金属帯34から上方に突き出しているオフセット42.3および42.4を有する。下側の発熱要素10.1は、下方に突き出しているオフセット42.1を有する。参照数字10.2によって表してある発熱要素10の薄板金属帯34,36は、両側に曲がっておりオフセット42.20,42.21を形成しており、それぞれに接触突起片14が設けられている。これらの違いにより、ハウジング2の中で発熱要素10.3および10.2の位置が入れ替わることを防止することができる。この場合、この実施形態では、接触突起片受け部48の設計のおかげで、中央の2つの発熱要素10.2および10.3を入れ替えて取り付けることができる。外側の発熱要素10.1および10.4の両方についても、入れ替えて取り付けることができる。
【0054】
図1を参照しながら前述したスロット15は、ハウジング2の外側から延びており、幅を広げながら突起片受け部48に達している。この接触突起片受け部48の後ろにはくびれスロット(constricted slot)50が形成されており、このスロット50は、接触突起片14をポンチングおよび成形することによって形成されている薄板金属片と、割り当てられている薄板金属帯34の自由端部44とを収容することができる。
【0055】
下側ハウジング4は、経済的に製造される射出成形金型において形成することができ、なぜなら、ハウジング4の重要な面のすべてが、下側ハウジング4のフレーム開口18に平行または直角に延在しているためである。
【0056】
従って、下側ハウジング4は、本質的に互いに直角に延在しているフレーム面52a〜52dを有し、これらのフレーム面52a〜52dは、加熱ブロック8の周囲を囲み、フレーム開口18が含まれている平面に直角に延在している。接触突起片14が下側ハウジング4から外に突き出している側面には、対応するフレーム面52bが4つの取付け要素受け部54よりも外側に開いており、取付け要素受け部54の主壁も、フレーム開口18が含まれている平面に直角に延在している。下側ハウジング4の機能表面のうち、本質的には、接触突起片受け部48と、この受け部48に達しているスロット15または50と、取付け要素受け部22を画成している壁とを形成している機能表面は(図3に示してある)、適切なサイズを有する。上述した受け部15,22,50,54は、下側ハウジング4の側面付近において、底部(下側ハウジング4のフレーム開口18が含まれている平面に平行に延在している)によって画成されている。この受け部底部は、図4には参照数字56によって表してある。この底部56は、支柱22の内面も形成しているのみならず、両側に位置する外側放熱要素12およびばね要素(後から説明する)のための、縁部における停止面58,60も形成している。これらの停止面58または60は、フレーム開口18が含まれている平面に平行である。
【0057】
下側ハウジング4の内面(取付け要素受け部22または接触突起片受け部48を形成している壁の端部の側面に形成されている)、フレーム開口18が含まれている平面に平行に延在している。長手側については、この上側縁部はスペーサ62によって形成されており、このスペーサ62は、フレーム面52cを超えて受け部24まで突き出しており、その機能については、後からばね要素の説明の中で扱う。下側ハウジング4の内面であるこの上側平面より下には、下側ハウジング4の2つの縦桁64,66の内面63が存在しているが、これらの内面63は、下側ハウジング4内に加熱ブロック8の周囲がほぼ完全に(すなわち高さの70%以上が)保持される深さまで、縁部における停止面58,60より下まで延在している。縦桁64,66には、フレーム開口18が含まれている平面に直角に延びているいくつかのピンガイド68,70,72が存在している。これらピンガイド68,70,72は、縦桁44,66の本質的に長手方向全体にわたって各セクションに存在している。
【0058】
縦桁64,66それぞれの中央にはピンガイド70が存在しており、このピンガイド70は、比較的短い長さとして形成されており、下側ハウジング4の外側に位置している窓74に通じている。この中央のピンガイド70の隣には、縦桁64,66の長さの約1/3にわたり延びているピンガイド68が設けられている。これらのピンガイド68の外側端部には、上述した窓74が割り当てられているピンガイド70が存在している。縦桁64,66の側面端部にも、比較的小さいピンガイド72が形成されており、このピンガイド72は、縦桁64,66の内面から、フレーム開口18が含まれている下側ハウジングの外面まで延びている。
【0059】
ピンガイド68,70,72を形成または画成している機能表面は、いずれも、フレーム開口18が含まれている平面に直角に延在している。これらの開口68〜72の側面縁部のみは、上側ハウジング6の対応するガイドピン76〜80を容易に挿入できるように、わずかに傾斜している、または丸められている。さらに、下側ハウジング4と上側ハウジング6を容易に結合できるように、スペーサ62を画成している壁の自由端部(スペーサ62の上端部を形成している)と、端部における受け部22b,15,50,48を画成している壁の自由端部は、傾斜している、または丸められている。
【0060】
図5に斜視図として示した上側ハウジング6も、対応するハウジング開口16に必ず直角または平行に配置されている機能表面または画成表面を備えている。機能表面としては、特に、前述したガイドピン76,78,80のガイド領域が設けられており、これらは対応するピンガイド68,70,72に挿入することができる。ガイドピン78は、切り欠きピンとして射出成形されており、掛止突起82を形成している。掛止突起82の上側に、切り欠きピン78の厚い頭部が突き出しており、この頭部には、フレーム開口16が含まれている平面に平行な掛止面86が形成されている。掛止突起82は、カバー88の上面から延びている。このカバー88は、本質的に平坦なコンポーネントとして形成されており、フレーム開口16を形成しており、さらに支柱22の外面を含んでいる。カバー88は、下側ハウジング4のカバーとしてフレーム形状に形成されている。従って、ガイドピン76〜80は、カバー88の内面から直角に延びている。さらに、掛止突起82のくぼみ90が設けられている。くぼみ90の領域では、カバー88の端面が内側に引っ込んでおり、従って、掛止突起82の平たく均一な側面は、ガイドピン76あるいは80のガイド面に平行に延在しているが、これらのガイドピン76,80の外側ガイド面それぞれよりも内側に位置している。しかしながら、対応するガイドピン78〜80の、加熱ブロック8側の内面は、一平面内に存在している。
【0061】
上側ハウジング6の一方の側面、カバー88の内壁には、5つの接触突起片受け部48に対応する5つのくぼみが形成されており、このくぼみは、スロット15の一部を形成しており、閉じたハウジングとして加熱ブロックを組み立てた後の、接触突起片14の上側余裕領域も含んでいる。反対側の側面には、さらなるガイドピン92が設けられており、このガイドピン92は、下側ハウジング4にカットされている対応するさらなるガイド受け部と相互作用するが、取付け要素受け部22あるいは接触突起片受け部48には収まらず、従って、上側ハウジング6は、必ず所定の一義的な向きで下側ハウジング4の上に配置されて結合される。この場合も、さらなるピンガイド94を囲んでいる壁と、ガイドピン92を形成している壁は、フレーム開口16または18が含まれている平面に直角に延在している。
【0062】
図8は、ばね要素96の斜視図であり、ばね要素96は、加熱ブロック8の縁部に接触し、取付け位置において加熱ブロック8の高さに位置する。図8におけるばね要素96の前側は、平坦な位置決め面98を形成しており、隣接する(図3では一番上の)放熱要素がそのベーン(vane)によってこの位置決め面に接触している。より正確に記述すると、波形リブ帯12の、蛇行ベーンの側面の曲がり端部(face side bent ends of more meandering vanes)が、この位置決め面98に接触している。位置決め面98は、最初に平坦な薄板金属帯によって形成し、この薄板金属帯に、両側におけるパンチングによって、側方に突き出しているばね脚部100を形成する。これらのばね脚部100は、最初は位置決め面98の平面上にあるが、パンチングの後、曲げることによって、図8、図10、図11、図12に示した形状になる。2枚のばね脚部100o,100uは、幅方向に(すなわち、平坦な位置決め面98の長手方向を横切る方向に、従って組立て時のばね要素96の挿入方向に)位置決め面98と重なっている。個々のばね脚部100o,100uのそれぞれは、傾斜摺動面102a,102b,102cを形成しており、これらの摺動面は、平坦な位置決め面との間に角度35〜55度、好ましくは約45度をなしている。ばね要素96の長手方向に並んで設けられているばね脚部100の対の間には、平坦部分が存在しており、この部分においては、ばね要素96は長方形の平坦な薄板金属帯として形成されている。
【0063】
図8に示したばね要素96は、縦桁64における個々のスペーサ62(図4を参照)の間に存在する空間の数に対応する、ばね脚部の対100o,100uを備えている。ばね脚部の各対100o,100uは、ばね要素96の取付け位置において、これらのスペーサ62の間に存在している。平坦部分104は、スペーサ62の幅だけ延在しており、隣接するばね脚部の対100o,100uを連結している。従って、対応して製造されるばねは、ハウジング2、具体的には下側ハウジング4の中に単一コンポーネントとして挿入することができ、これにより、電気加熱装置の製造が単純化される。相応して、隣接するスペーサ62の間に設けられているフレーム面42cの壁セクションは、ばね脚部100の各対に対応する支持面106を形成している。ばね要素100の形状、特に、位置決め面と重なっているばね脚部100の対の間の平坦部分104の形状によって、ばね要素96を正しくない向きで下側ハウジング4に挿入することは不可能である。ばね要素96は、その取付け位置にのみ押し込むことができ、その場合、平坦な位置決め面98が加熱ブロックに対して正しい位置にあるとき、ばね要素はハウジング2の中で加熱ブロック8の高さに収容されている。さらには、加熱ブロックは、スペーサ62によって支持面106から特定の距離に保持されており、従って、ばね要素96を下側ハウジング4に挿入するときに、加熱ブロック8によって妨げられることなく支持面106に接触させることができる。
【0064】
加熱ブロック8の方向へのばね要素96の連続的な挿入動作によって、すなわち、加熱ブロックに連続的に挿入することによって、ばね要素96が、下側ばね脚部100uからのばね力によって加熱ブロック8の方向に押し付けられ、従って、加熱ブロックの層10,12が押し付けられる。さらに挿入すると、放熱要素12が隣接している平坦な位置決め面98は、ばね要素96が加熱ブロック8と下側ハウジング4との間で挿入方向に十分にガイドされる深さまで、すでに押し込まれている。最終的に、さらなる挿入によって、下側ばね脚部100uが弾性圧縮される。この場合、ハウジング側における、これに対抗する力は、上側縁部108(支持面106と縦桁64の内面との間に、これら2つの面の交差部分によって形成される)によって形成される。この縁部108は、最初、ばね要素96の挿入時に下側ばね脚部100uを内側に押す。さらなる挿入動作により、最終的には、対応するばね脚部100oの自由端部(内側に傾斜して曲がっている)との相互作用によって、上側ばね脚部100oが内側に押される。
【0065】
図10、図11、図12から理解できるように、ハウジング2は、ばね要素96と相互作用するさらなるハウジング要素を備えている。このさらなるハウジング要素は、上側ハウジング6の縁部110によって形成されている。この縁部110は、カバー88の内面と上側ハウジング6の底部112との間に形成されており、すなわち、上側ハウジングの底部112を画成している外縁部113とカバー88の内面とが交差する縁部によって形成されている。この底部112とカバー88の内面との間の高さのオフセットは、縦桁64,66によって形成されている面63よりも加熱ブロック8が突き出す(実際には、スペーサ62が縦桁64,66の内面63よりも突き出す長さとほぼ同じだけ突き出す)ことを考慮したものである。縁部110は、上側ばね脚部100oによって形成されている、ばね要素96の傾斜摺動面102aと接触する。図10および図12aから明らかであるように、ばね要素96の上端部は、上側ハウジング6の底部112との間隔があるため、本質的に接触圧力がかかっていない状態にある。
【0066】
以下では、組立てについて図12a〜図12eを参照しながら説明する。最初に、個々の層10,12を下側ハウジング4に挿入する。次いで、ばね要素96を下側ハウジングの中に途中まで、すなわち、加熱ブロック8の層が互いに密着し、かつ、ばね要素96が加熱ブロック6とフレーム面52cとの間に十分な深さに達するまで、手操作で挿入する。
【0067】
この最初の挿入動作(この動作ではばね要素96によるばね圧力が加熱ブロック8に本質的にかからない)では、加熱ブロック8に面している、スペーサ62の側面(ばね要素96の平坦部分104と相互作用する)上を、ばね要素96がガイドされる。ばね要素96とスペーサ62との接触によって、ばね要素96は、その平坦な位置決め面98と加熱ブロックの層4,6とが平行である状態に配置される。この最初の組立てステップの終了時点で、ばね要素96は、加熱ブロック8が存在している平面より、縦セクション(図12aにはLとして表してある)だけ上に突き出している。次いで、上側ハウジング6を下側ハウジング4の上に配置する。この場合、ガイドピン76,78,80,92が、対応するピンガイド68,70,72,94の中で係合する。このステップにおいて、ばね要素96は、最初は本質的に応力がかからないままである。この状態において、ガイドピンは対応するピンガイドの中に十分な深さまで達しており、従って、ハウジングパーツ4,6の両方を互いに対して直線方向にのみ動かすことができる。次いで、ハウジングパーツ4,6を結合し、このとき、ばねの力が印加される。
【0068】
最初に、上側ハウジング6の底部112がばね要素96の上端部に当たるまでは、ばね脚部100o,100uがわずかに圧縮される(図12bを参照)。このとき、2つの縁部108,100は、傾斜摺動面102aおよび102bに沿ってすでに少しだけすべっている。これにより、上側ばね脚部100oがすでに内側に弾性的に曲がっており、従って、ばね要素96の中央において内側に曲がっている脚部100oの自由端部(さらなる傾斜摺動面102cを形成している)が、さらなる挿入動作によって高い信頼性で縁部108を通過することができる。その後、2つのハウジングパーツ4,6の結合動作を続ける結果として、さらに、ばね要素96が押し込まれる。この場合、最初、縁部108によって、下側ばね脚部100uにさらに弾性応力がかかる。この下側ばね脚部100uは、最終的には支持面106と加熱ブロック8との間に完全に収容される(図12c)。ばね要素96を下側ハウジング4の中にさらに挿入すると、上側ばね脚部100oも、最終的には、自身と縁部108との相互作用によって加熱ブロック8の方向に弾性的に変形し、従って、ばね力が発生する。この弾性ばね力は、主として、さらなる傾斜摺動面102cが縁部108によって下方にすべり、上側ばね脚部100oを加熱ブロック8の方向に押し付けられるときに発生する(図12cと図12dとの間の中間ステップ)。2つのハウジングパーツ4,6が密着してそれぞれの表面が互いに正しく配置された時点で、ばね要素96はその最終的な位置に達している。ばね要素96は、この取付け位置においては、加熱ブロック8とフレーム面52cとの間のばね力に起因して、応力がかかった状態に保持されている。意図しない力によってばね要素96が外側から押された場合、停止面58または上側ハウジング6の底部112によって、ばね要素96がハウジング2から押し出されることが防止される。
【0069】
2つのハウジングパーツ4,6が互いに接触する直前、掛止突起82がわずかに弾性的に屈曲した状態でピンガイド70の中のガイド溝の中をガイドされた後、頭部84が外側に押され、従って、頭部の掛止面86が掛止対抗面114に接触する、または掛止面86が掛止対抗面114よりも(わずかな遊びの分だけ)突き出し、従って、ハウジングパーツ4,6の両方が、しっかりとひとつに固定される。
【0070】
上述したように、説明した実施形態による電気加熱装置の製造時、下側ハウジングと上側ハウジングとを結合することによってハウジングを閉じると、ばね要素がその取付け位置となる。この位置においては、ばね要素は加熱ブロックの高さに位置しており、すなわち、加熱ブロックが存在している平面内に配置されている。さらに、ばね要素にばね圧力が発生するのは、導入時と、その後、ガイドピン76〜80と対応するピンガイド68,70,72との確実な固定係合によって2つのハウジングパーツ4,6を互いにガイドするときのみである。従って、この構造上の特徴によると、加熱ブロックのコンポーネントを、ハウジング2に形成されている受け部24に、張力がかかることなく挿入することが可能である。ばねの応力がかかるのはその後であり、実際には、応力は、互いに限られた位置にあるハウジングパーツ4,6において接触時に発生する。その後、ハウジングパーツ4,6の結合時、発生するばねの圧力に起因して、加熱ブロック8の要素がずれる、あるいは加熱ブロック8の要素が受け部24から押し出される力がかかっても、これらの要素は、ハウジング2の中の加熱ブロックを囲んでいる、ハウジングパーツ4,6の部分によって保持されており、ハウジングパーツ4,6の結合時には所望の位置に戻される。
【0071】
この構造上の特徴に関して、本発明は、説明した実施形態に制限されない。従って、例えば、ばね脚部を備えているばね要素として、取付け位置において最初に本質的には応力が生じないばね要素を設けることができる。このばね要素は、加熱ブロックに応力がかかることなく受け部24に挿入される。このばね要素はばね脚部を備えており、このばね脚部は、停止面58への方向、外側斜め下方に傾いている摺動面を形成している。実際には、ばね要素と相互作用するピンを使用し、このピンは、上側ハウジングと下側ハウジングとをばねの圧力下で結合するとき、ばね要素全体がばねの圧力下で加熱ブロック8に接触するように、対応するばね脚部に作用する。この実施形態においては、ばね要素は、最初、下側ハウジングの中に加熱ブロックと一緒に応力なしの状態で収容されているが、ばねの圧力の発生時、結合方向には静止したままである。ばね要素は、加熱ブロックの平面内でわずかに押されて加熱ブロックに接触する。さらに、1つ以上のばね脚部が旋回して弾性応力が発生する。発熱要素10のこの特殊な特徴によると、さらに単純な組立てが促進され、なぜなら、第1および第2の支柱20,43によって形成されている格子構造が、ハウジングパーツのみによって形成されているのではなく、第2の支柱が配置フレーム28によって形成されており、従って、PTC加熱素子30が、加熱ブロック8の中で収まるべき場所に高い信頼性で位置するためである。従って、この技術分野の従来の方式(格子構造がハウジングパーツのみによって形成されている)と比較すると、比較的単純に形成されるハウジングパーツを製造することができる。さらには、より大きな許容差が容認され、なぜなら、ハウジングに結合される単体支柱として、加熱ブロック8の層に平行に延びており、かつ発熱要素10の位置に正確に設けなければならない支柱が存在しないためである。支柱20および通路41の寸法と、特に、保持突起40の2つのセクションの間に支柱20が挿入されることにより、第1および第2の支柱20,43を互いに確実に固定して支持することができ、従って、ハウジング全体の剛性を高めることができる。
【0072】
放熱要素12は、あらかじめ組み立てられるユニットとして作製されており、さらに、取付け要素26および関連付けられる受け部22によって、発熱要素12をハウジング2の中の特定の場所にのみ取り付けることができるようにされているため、本電気加熱装置の製造、特に個々の部品の組立てを、経験の浅い作業者によっても行うことができる。
【0073】
本実施形態の配置構造では、電気加熱装置の複数の異なるコンポーネントの配置が一義的である。この一義的な配置が維持されない場合、電気加熱装置のコンポーネントを組み立てることができない。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】電気加熱装置の実施形態の斜視図である。
【図2】図1に示した実施形態における、加熱ブロックが取り付けられた状態の下側ハウジングの側面図である。
【図3】図2による図解を拡大した詳細である。
【図4】図1〜図3に示した実施形態の斜視図である。
【図5】図1による電気加熱装置の上側ハウジングの斜視図である。
【図6】図1による電気加熱装置の発熱要素の分解斜視図である。
【図7】組み立てた発熱要素の、図6の図解における線VII−VIIに沿っての断面図である。
【図8】図1〜図7に示した実施形態の加熱ブロックをプレストレスするためのばね要素の斜視図である。
【図9】ハウジングパーツを結合する前の、図1による例の端部の側面図である。
【図10】図9の図解における線X−Xに沿っての断面図である。
【図11】図10における細部Aの拡大詳細図である。
【図12】図12a〜図12eは、ハウジングパーツを結合するときのさまざまな状態における、図11に類似する拡大詳細図である。
【符号の説明】
【0075】
2 ハウジング
4 下側ハウジング
6 上側ハウジング
8 加熱ブロック
10 発熱要素
12 放熱要素
14 接触突起片
15 スロット
16 フレーム開口(上側ハウジング)
18 フレーム開口(下側ハウジング)
20 支柱/第1の支柱
22 取付け要素受け部
24 加熱ブロックのための受け部
26 取付け要素
28 配置フレーム
30 PTC加熱素子
32 PTC加熱素子のための受け部
34 薄板金属帯
36 薄板金属帯
38 取付け要素の突起
40 保持突起
40.1〜40.5 保持突起の各セクション
41 通路
42 オフセット
43 第2の支柱
44 薄板金属帯34の自由端部
46 圧着要素
48 接触突起片受け部
50 スロット
52 フレーム面
54 取付け要素(突起)受け部
56 底部
58 ばね要素の縁部停止面
60 放熱要素の縁部停止面
62 スペーサ
63 縦桁の内面
64 縦桁
66 縦桁
68 ピンガイド
70 ピンガイド
72 ピンガイド
74 窓
76 ガイドピン
78 ガイドピン
80 ガイドピン
82 掛止突起
84 頭部
86 掛止面
88 カバー
90 くぼみ
92 さらなるガイドピン
94 さらなるピンガイド
96 ばね要素
98 平坦な位置決め面
100 ばね脚部
102 摺動面
104 平坦部分
106 支持面
108 縁部
110 縁部
112 上側ハウジングの底部
113 底部112の外縁部
114 掛止対抗面
L 縦セクション


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジング(2)を備えており、前記ハウジング(2)内に、少なくとも1つのばね要素(96)のテンション力によって加熱ブロック(8)が保持されており、前記ばね要素が、その組立て後位置において前記加熱ブロックとほぼ同じ高さに位置しており、前記ハウジングが、対向するハウジング開口(16,18)を画成しており、前記ハウジング開口(16,18)を通じて前記加熱ブロック(8)が露出している、電気加熱装置を製造する方法であって、
前記加熱ブロック(8)を前記ハウジングパーツ(4)に挿入し、別のハウジングパーツ(6)によって前記加熱ブロック(8)を前記ハウジング(2)内に囲み、
前記ハウジング(2)が閉じられて前記加熱ブロック(8)を囲むときに、前記ばね要素(96)がその組立て後位置に配置されて弾性変形する、
ことを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記ばね要素(96)の長手セクション(L)が、前記加熱ブロック(8)が占めている平面から最初は突き出しているように、前記ばね要素(96)が前記ハウジングパーツ(4)に挿入され、
前記ハウジング(2)内に前記加熱ブロック(8)を囲む動作を完了する前記さらなるハウジングパーツ(6)が前記長手セクション(L)に作用して、前記ばね要素(96)がその組立て後位置に押し込まれる、
ことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ハウジング(2)が閉じられるときに、前記ハウジングパーツ(4,6)が互いにガイドされ、
この目的に設けられているガイド要素(68,70,72;76,78,80)が、前記ばね要素(96)をその組立て後位置に押し込む力が発生する前に、係合している、
ことを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記ハウジング(2)が閉じられるときに、前記ハウジングパーツ(4,6)が、前記ばね力を保持している前記ハウジングパーツ(4,6)のうちの一方の支持面(106)に平行な方向に、互いにガイドされる、
ことを特徴とする、請求項1から請求項3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記ばね要素(96)が、前記ハウジング内に挿入されるとき、かつ、前記加熱ブロックにテンションをかける力が前記ばね要素(96)によって発生する前に、最初、一方の前記ハウジングパーツ(4)において、前記ばね要素(96)の平坦部分(104)と相互作用するハウジング要素(62)によってガイドされ、前記ハウジング内への挿入が進行すると、増大するばね力によって、前記ばね要素(96)が前記加熱ブロックの方に押されて前記ハウジング要素(62)から離れる、
ことを特徴とする、請求項1から請求項4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記ばね要素(96)が前記ハウジング(2)内に挿入されるとき、前記ばね要素(96)のばね脚部(100o)が、最初、一方の前記ハウジングパーツ(縁部)(6,110)によって弾性変形し、前記ハウジング(4)の中への挿入が進行すると、他方の前記ハウジングパーツ(縁部)(4,108)によって弾性変形する、
ことを特徴とする、請求項1から請求項5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記ばね要素(96)がその組立て後位置に配置された後、前記ハウジングパーツ(4,6)が、フォームクロージャ状態に互いに結合されている、
ことを特徴とする、請求項1から請求項6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
ハウジング(2)を備えており、
放熱要素および発熱要素(10,12)を有する加熱ブロック(8)が、少なくとも1つのばね要素(96)のテンション力によって、前記ハウジング(2)内に保持されており、前記ばね要素が、その組立て後位置において前記加熱ブロックとほぼ同じ高さに位置しており、前記ハウジングが、対向するハウジング開口(16,18)を画成しており、前記ハウジング開口(16,18)を通じて前記加熱ブロック(8)が露出している、電気加熱装置であって、
前記ばね要素(96)が、一方の前記ハウジングパーツ(4)の要素(108,110)に対する傾斜摺動面(102)を画成している少なくとも1枚のばね脚部(100)を備えており、前記ハウジングパーツ(4,6)を結合することによって前記ハウジングが閉じられるときに、前記ばね脚部が、前記ハウジングパーツ(4,6)のうちの一方の支持面(106)によって弾性変形し、前記支持面(106)が前記ハウジングパーツ(4,6)の結合方向に平行に延在している、
ことを特徴とする、電気加熱装置。
【請求項9】
前記ばね要素(96)が平面状の接触面(98)を画成しており、前記加熱ブロック(8)が、その外側が前記接触面(98)に接するように配置されている、
ことを特徴とする、請求項8に記載の電気加熱装置。
【請求項10】
前記ばね要素(96)が、平面状の薄板金属帯(34,36)を備えており、屈曲した波形リブによって形成されている放熱要素(12)が前記薄板金属帯(34,36)に直接接するように配置されている、
ことを特徴とする、請求項8または請求項9に記載の電気加熱装置。
【請求項11】
前記ばね要素(96)が、
前記加熱ブロック(8)の実質的に全長にわたり延在している薄板金属帯と、
薄板金属片の長手方向に相次いで配置されており、かつスタンピングおよび曲げによって前記薄板金属帯に一体に形成されている、何枚かのばねリブ(100)と、
を備えている、
ことを特徴とする、請求項8から請求項10のいずれかに記載の電気加熱装置。
【請求項12】
前記ばね要素(96)が、
前記結合方向において一方が他方の上方に位置するように、対向する端部に設けられている少なくとも2枚のばね脚部(100o,100u)であって、それぞれが、一方の前記ハウジングパーツ(4)の同一要素(108)に対する傾斜摺動面(102b,102c)を画成している、前記ばね脚部(100o,100u)、
を備えている、
ことを特徴とする、請求項8から請求項11のいずれかに記載の電気加熱装置。
【請求項13】
前記ばね要素(96)が、
前記結合方向に一方が他方の上方に位置するように対向する端部に設けられている少なくとも2枚のばね脚部(100o,100u)であって、それぞれが、異なるハウジングパーツ(4,6)の要素(108,110)に対する傾斜摺動面(102a,102b)を画成している、前記ばね脚部(100o,100u)、
を備えている、
ことを特徴とする、請求項8から請求項13のいずれかに記載の電気加熱装置。
【請求項14】
前記ハウジングパーツ(4,6)を結合することによって前記ハウジング(2)が閉じられるとき、前記ばね脚部(100o,100u)が1つのハウジング要素の支持面(106)によって弾性変形し、前記支持面(106)が、前記結合プロセス時の相対的な動きに平行に延在している、
ことを特徴とする、請求項12または請求項13に記載の電気加熱装置。
【請求項15】
実質的に同じ設計を有し、かつ前記結合方向に一方が他方の上方に位置するように設けられている少なくとも2枚のばね脚部(100o,100u)、
を特徴とする、請求項14に記載の電気加熱装置。
【請求項16】
何枚かのばね脚部(100)が、前記ばね要素(96)の長手方向に相次いで設けられており、薄板金属帯の実質的に平坦な部分(104)によって結合されており、
前記ハウジングパーツ(4,6)の一方が、前記平坦部分(104)に対するスペーサ(62)であって、隣り合う支持面(106)の間に設けられており、前記加熱ブロック(8)の方に前記支持面(106)よりも突き出している、前記スペーサ(62)、を画成している、
ことを特徴とする、請求項12から請求項15のいずれかに記載の電気加熱装置。
【請求項17】
前記スペーサ(62)が、
少なくとも、前記ばねが最初に前記加熱ブロック(58)に挿入されるときの、前記ばね要素(96)のためのガイド面、
を画成している、
ことを特徴とする、請求項13に記載の電気加熱装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−40401(P2009−40401A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2008−181637(P2008−181637)
【出願日】平成20年7月11日(2008.7.11)
【出願人】(501324823)カテム・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング・ウント・コンパニー・コマンディットゲゼルシャフト (23)
【Fターム(参考)】