説明

電気化学セルおよび電気化学セルの製造方法

【課題】組立性を向上し、比較的安価な材料で信頼性を向上する。
【解決手段】本体部3A,3Bと端子部5A,5Bとを有する金属材料からなるリードフレーム1A,1Bと、本体部3A,3Bに一体成形された絶縁材料からなる枠体9A,9Bとを備えるリードフレーム部材10A,10Bと、リードフレーム部材10A,10Bを板厚方向に対向配置し、枠体9A,9Bどうしを接合することにより形成された密閉空間を板厚方向に区画する絶縁材料からなるセパレータ11と、区画された各空間内に本体部3A,3Bに接触して配置され液体電解質が含浸された電極活物質13A,13Bとを備え、本体部3A,3Bに一部をセパレータ11から離れる方向に変位させるように変形可能な撓み領域7が設けられ、端子部5A,5Bの枠体9A,9Bの外方に張り出した部分の一部が互いに同一面上に配置されるように折り曲げられている電気化学セル100を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気化学セルおよび電気化学セルの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、非水電解質電池および電気二重層キャパシタ等の電気化学セルが知られている(例えば、特許文献1、特許文献2および特許文献3参照)。特許文献1に記載の非水電解質電池および電気二重層キャパシタは、正極および負極として用いる活物質と電解質を耐熱ガラス樹脂、ガラス、セラミックスまたはセラミックスガラス等の材料からなる凹状容器に収容し、金属、金属層を有する耐熱樹脂、ガラス、セラミックスまたはセラミックスガラス等の材料からなる板状部材によりその凹状容器を封口している。また、特許文献2および特許文献3に記載の面実装用方形蓄電セルは、正極および負極として用いる活物質と電解質を一対の金属枠により挟み込むように収容し、これらの金属枠間に絶縁性のガスケットを配置して封止することとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−216952号公報
【特許文献2】特開2008−153266号公報
【特許文献3】特開2009−135384号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の非水電解質電池および電気二重層キャパシタは、容器に用いられるセラミックス等の材料が高価であり、また、セラミックス等を用いることで製造工程も煩雑になるという問題がある。また、特許文献2、3に記載の面実装用方形蓄電セルは、一対の金属枠とガスケットとを別個に用意して組み合わせるため、製造時の部品点数が多く工程も煩雑になるという問題がある。
【0005】
本発明は上述した事情に鑑みてなされたものであって、部品点数が少なく組立性に優れ、比較的安価な材料で信頼性が高い電気化学セルを提供することを目的とする。また、このような電気化学セルを簡易に製造することができる製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
本発明は、略矩形状の本体部と該本体部から延びる端子部とを有する金属材料からなる板状のリードフレームと、該リードフレームの前記本体部の周縁を取り囲むように前記リードフレームに一体成形された絶縁材料からなる枠体とを備える2個一対のリードフレーム部材と、該リードフレーム部材を前記リードフレームどうしが板厚方向に間隔をあけて対向するように配置し、前記枠体どうしを接合することにより前記本体部間に形成された密閉空間を前記板厚方向に区画する絶縁材料からなるセパレータと、該セパレータにより区画された各小空間内に前記本体部の少なくとも一部に接触して配置される、液体電解質が含浸された電極活物質とを備え、前記リードフレームの本体部に、該本体部の一部を前記セパレータから離れる方向に変位させるように変形可能な可撓領域が設けられ、2つの前記リードフレーム部材を構成する2つの前記リードフレームの前記端子部が、該端子部の前記枠体の外方に張り出した部分の一部が互いに同一面上に配置されるように折り曲げられている電気化学セルを提供する。
【0007】
本発明によれば、液体電解質が含浸された2つの電極活物質がセパレータにより絶縁されることにより正極および負極として用いられ、これらの電極活物質を収容し各電極活物質に対して少なくとも一部が接触した金属材料からなるリードフレームの本体部が内部配線として作用する。したがって、枠体の外方に張り出してその一部が同一面上に配置されるように折り曲げられた各リードフレームの端子部を外部電極に接続する正負一対の外部端子として作用させることにより、面実装することができる。
【0008】
この場合において、リードフレームに枠体が一体成形された2個一対のリードフレーム部材どうしを組み合せることで、接合時の部品点数を少なくし組立性を向上することができる。また、リフローにより面実装した場合に液体電解質が熱膨張しても、リードフレームの本体部の一部をセパレータから離れる方向に変位させるように可撓領域が変形し、本体部間に形成された密閉空間の内容積を増大させることができる。これにより、密閉空間の内圧を緩和させ、内圧の増大によって枠体が破損するのを防ぐことができる。したがって、セラミックス等の高価な材料を用いることなく比較的安価な材料で信頼性を向上することができる。
【0009】
上記発明においては、前記可撓領域が、前記枠体の内縁に沿って環状に形成され、前記可撓領域の外側に配される前記本体部に対して該可撓領域の内側に配される該本体部の一部を変位させることとしてもよい。
このように構成することで、リードフレームの本体部において、枠体の内縁に近接させて可撓領域を配置すれば、セパレータから離れる方向に変位させる部分の面積を有効に確保し、リードフレームの本体部間に形成される密閉空間の内容積を効率的に増大させことができる。
【0010】
また、上記発明においては、前記可撓領域が、前記本体部の他の領域よりも薄肉に形成されていることとしてもよい。
このように構成することで、可撓領域をより変形させ易くすることができる。
【0011】
また、上記発明においては、前記端子部が、前記枠体に沿って折り曲げられていることとしてもよい。
このように構成することで、枠体をスペーサとして作用させ、折り曲げられた端子部の一部がリードフレームの本体部等に接触するのを防ぐことができる。
【0012】
また、上記発明においては、前記枠体が、前記可撓領域の変形による変位後の前記本体部の一部の位置よりも前記板厚方向に張り出していることとしてもよい。
このように構成することで、可撓領域の変形により本体部の一部がセパレータから離れる方向に変位した場合において、枠体をスペーサとして作用させ、変位した本体部の一部が外部に接触して破損するのを防ぐことができる。
【0013】
本発明は、金属材料からなる板状のリードフレームの本体部の周縁を取り囲み、該リードフレームから延びる端子部が外方へ張り出すように、該リードフレームに絶縁材料からなる枠体を一体成形する成形工程と、該成形工程により前記リードフレームに前記枠体が一体成形された2個一対のリードフレーム部材を前記リードフレームどうしが板厚方向に間隔を空けて対向するように配置し、液体電解質が含浸された2つの電極活物質と該2つの電極活物質どうしを絶縁するセパレータとを前記本体部間に挟み、該本体部間に形成される空間を密閉するように前記枠体どうしを接合する接合工程と、前記枠体の外方に張り出した前記リードフレームの各端子部を、前記枠体から張り出した部分の一部が互いに同一面上に配置されるように、前記枠体に沿って折り曲げる折り曲げ工程とを含む電気化学セルの製造方法を提供する。
【0014】
本発明によれば、2つの電極活物質をセパレータにより絶縁して正極および負極として作用させ、これらの電極活物質を収容する2つのリードフレームの各本体部を内部配線として作用させ、枠体の外方に張り出されて互いに同一面上に配置された各リードフレームの端子部の一部を正負一対の外部端子として作用させて面実装することができる電気化学セルを製造することができる。
【0015】
この場合において、成形工程により予めリードフレームに枠体が一体成形された2個一対のリードフレーム部材どうしを組み合わせて電極活物質およびセパレータを収容することで、接合工程での部品点の削減を図ることができる。また、折り曲げ工程において、リードフレームの端子部を枠体に沿って折り曲げることで、枠体をスペーサとして作用させ、折り曲げたリードフレームの端子部の一部がリードフレームの本体部に接触するのを防ぐことができる。したがって、少ない部品点数で組立性を向上し、比較的安価な材料で信頼性が高い電気化学セルを簡易に製造することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る電気化学セルによれば、部品点数が少なく組立性に優れ、比較的安価な材料で信頼性を向上することができるという効果を奏する。また、本発明に係る電気化学セルの製造方法によれば、そのような電気化学セルを簡易に製造することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態に係る電気化学セルの斜視図である。
【図2】図1の電気化学セルを板厚方向に見た平面図である。
【図3】図1の電気化学セルの長手方向の縦断面図である。
【図4】図1のリードフレームを板厚方向に見た平面図である。
【図5】図1のリードフレーム部材を板厚方向に見た平面図である。
【図6】本発明の一実施形態に係る電気化学セルの製造方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態に係る電気化学セルおよび電気化学セルの製造方法について、図面を参照して説明する。
本実施形態に係る電気化学セル100は、例えば、図1および図2に示すように、長手方向の寸法が3.2mm、幅方向の寸法が2.5mm、厚さ寸法が0.9mmの大きさの略方形に形成され、リフローはんだ付けにより面実装することができるようになっている。リフローはんだ付けは、例えば、プリント基板上のはんだ付を行なう部分(はんだ付け部分)に予めはんだクリーム等を塗布しておき、はんだ付け部分に部品を載置するか、あるいは、はんだ付け部分に部品を載置後はんだ小球(はんだバンプ)をそのはんだ付部分に供給するかしたものを高温雰囲気の炉内に通過させ、プリント基板上のはんだ付部分の温度がはんだの融点以上、例えば、200〜230℃となるようにすることにより、はんだを溶融させてはんだ付けする。
【0019】
この電気化学セル100は、図3に示すように、金属材料からなる板状のリードフレーム1A,1Bと、リードフレーム1A,1Bを略周縁に沿って覆う絶縁材料からなる枠体9A,9Bとが一体成形された2個一対のリードフレーム部材10A,10Bを備えている。これらのリードフレーム部材10A,10Bは、リードフレーム1A,1Bどうしが板厚方向に間隔をあけて対向するように配置され、枠体9A,9Bどうしが接合されている。
【0020】
リードフレーム1A,1Bとしては、例えば、アルミニウム材やステンレス材を用いることができる。このリードフレーム1A,1Bは、図4に示すように、略矩形状の本体部3A,3Bと、本体部3A,3Bから長手方向に延び本体部3A,3Bよりも幅寸法が小さい略矩形状の端子部5A,5Bとを有している。
【0021】
また、リードフレーム1A,1Bは、図5に示すように、本体部3A,3Bがその周縁を枠体9A,9Bにより取り囲まれ、端子部5A,5Bが枠体9A,9Bの外方に張り出している。さらに、リードフレーム1A,1Bは、枠体9A,9Bの厚さよりも十分に薄く形成されている。枠体9A,9Bとしては、例えば、PPS(ポリフェニレンサルファイド)、液晶ポリマーまたはPEEK(ポリエーテルエーテルケトン)等が用いられる。
【0022】
リードフレーム1A,1Bの本体部3A,3Bには、部分的に撓んだ撓み領域(可撓領域)7が設けられている。撓み領域7は、板厚方向に屈曲して本体部3A,3Bの他の領域よりも薄肉に形成されている。また、撓み領域7は、枠体9A,9Bの内縁に沿って環状に形成されている。各本体部3A,3Bの撓み領域7は、その外側に配される本体部3A,3Bの領域に対して内側に配される本体部3A,3Bの領域がそれぞれ外方に盛り上がるように、すなわち、本体部3A,3Bの一部をそれぞれ互いに離れる方向に変位させるように変形することができるようになっている。
【0023】
各リードフレーム1A,1Bの端子部5A,5Bは、枠体9A,9Bの外方に張り出した部分の一部が互いに同一面上に配置されるように折り曲げられている。具体的には、一方のリードフレーム1Aの端子部5Aは、枠体9Aの外方に張り出した部分がその枠体9Aに沿って他方のリードフレーム1Bとは反対側に折り曲げられ、その先端が本体部3Aに対して板厚方向に間隔をあけた位置に配置されている。他方のリードフレーム1Bの端子部5Bは、枠体9Bの外方に張り出した部分がその枠体9Bから一方のリードフレーム1Aの枠体9Aに沿って一方のリードフレーム1Aの端子部5Aと同一方向に折り曲げられ、その先端が一方のリードフレーム1Aの本体部3Aに対して板厚方向に間隔をあけた位置に配置されている。
【0024】
また、電気化学セル100には、枠体9A,9Bにより各リードフレーム1A,1Bの本体部3A,3B間に形成された密閉空間を板厚方向に2つの小空間R1,R2に区画する絶縁材料からなる板状のセパレータ11と、セパレータ11により区画された小空間R1内に配置される電極活物質13Aおよび小空間R2内に配置される電極活物質13Bとが備えられている。
【0025】
セパレータ11は、電極活物質13A,13B間を絶縁するようになっている。セパレータ11としては、イオン透過度が大きく、所定の機械的強度を有する絶縁性の膜を用いることができる。リフローハンダ付けするには、セパレータ11としてガラス繊維が最も安定して用いることができ、その他、熱変形温度が230℃以上のポリフェニレンサルファイド、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルエーテルケトン、PTFE、ポリアミドまたはポリイミドなどの樹脂を用いることもできる。セパレータ11の孔径、厚さは特に限定されるものでなく、使用機器の電流値とキャパシタ内部抵抗に基づき決定することができる。また、セパレータ11としてセラミックスの多孔質体を用いることもできる。
【0026】
電極活物質13A,13Bとしては、例えば、フェノール樹脂による活性炭とヤシガラによる活性炭とを組合せて構成したものや、いずれか一方の活性炭のみで構成したものを用いることができる。活性炭としては、例えば、ピッチやコークス等の天然成分のほか、繊維を含む樹脂の炭化物を原料とする活性炭を用いることができる。活性炭を作製する際は、水蒸気賦活およびアルカリ賦活の一方または両方を用いることができる。
【0027】
電極活物質13A,13Bには、それぞれリードフレーム1A,1Bの本体部3A,3Bの撓み領域7よりも外側の領域が導電性の接着剤により接着されている。これにより、電極活物質13Aとリードフレーム1Aの本体部3Aの一部とが電気的に接続され、また、電極活物質13Bとリードフレーム1Bの本体部3Bの一部とが電気的に接続されている。電極活物質13A,13Bとリードフレーム1A,1Bの本体部3A,3Bの撓み領域7よりも内側の領域は接着されておらず、それぞれ接触していてもよいし接触していなくてもよい。
【0028】
また、電極活物質13A,13Bには、液体電解質(図示略)が含浸されている。液体電解質としては、例えば、従来の電気二重層キャパシタや非水二次電池に用いられている非水溶媒を用いることができる。この非水溶媒としては、例えば、環状エステル類、鎖状エステル類、環状エーテル類、鎖状エーテル類等が挙げられる。リフローハンダ付けする場合は、液体電解質として常圧での沸点が200℃以上の非水溶媒が安定である。
【0029】
次に、本実施形態に係る電気化学セル100の製造方法について説明する。
本実施形態に係る電気化学セル100の製造方法は、図6のフローチャートに示されるように、リードフレーム1A,1Bの本体部3A,3Bの周縁を取り囲み端子部5A,5Bを外方へ張り出させるように、リードフレーム1A,1Bに枠体9A,9Bを一体成形する成形工程S2と、リードフレーム1A,1Bに枠体9A,9Bが一体成形された2個一対のリードフレーム部材10A,10Bどうしを2つの電極活物質13A,13Bおよびセパレータ11を挟んで対面させた状態で、枠体9A,9Bどうしを接合する接合工程S6と、枠体9A,9Bの外方に張り出したリードフレーム1A,1Bの各端子部5A,5Bを、その先端が互いに同一面上に配置されるように折り曲げる折り曲げ工程S8とを含んでいる。
【0030】
以下、本実施形態に係る電気化学セル100の製造方法について具体的に説明する。
本実施形態においては、例えば、打ち抜きやプレスにより複数のリードフレーム1A,1Bが繋がった状態で形成されている大判のステンレス材またはアルミニウム材が用いられる。この大判の板材上の各リードフレーム1A,1Bには、打ち抜き時またはプレス時に撓み領域7も合わせて形成されている。
【0031】
まず、大判の板材上の各リードフレーム1A,1Bの全体にエッチングやサンドブラストなどにより表面を荒らす粗面化加工や密着性を向上させる表面処理等を施し、枠体9A,9Bとの密着性を向上させる(粗面化処理S1)。各リードフレーム1A,1Bを粗面化処理したら、インサート成形により、各リードフレーム1A,1Bに枠体9A,9Bを一体成形する(一体成形S2)。これにより、大判の板材上に複数のリードフレーム部材10A,10Bが形成される。
【0032】
続いて、リードフレーム1A,1Bとしてステンレス材を用いた場合は、リードフレーム部材10A,10Bのそれぞれ内側に配される表面に導電膜(図示略)を形成する(導電膜形成S3)。導電膜はバルブメタルで形成されていることが望ましい。バルブメタルとして、アルミニウム(Al)やチタン(Ti)、タンタル(Ta)、ニオブ(Nb)、ハフニウム(Hf)、ジルコニウム(Zr)等が挙げられるが、特にアルミニウム(Al)、チタン(Ti)またはタンタル(Ta)を採用することが望ましい。
【0033】
また、導電膜は、下地層であるクロム層の上層に形成することが望ましい。下地層を形成することで、リードフレーム1A,1Bに対する導電膜の密着性を向上させることができる。なお、下地層として、クロム層の他にチタン層も好適である。チタン層は、下地層としてだけではなく、導電膜自体として利用することも可能である。
【0034】
また、導電膜は、蒸着、スパッタリング、イオンプレーティングやメッキ法により形成する。バルブメタルは表面に耐腐食性の不働態皮膜を生成するので、電解液(液体電解質)による導電膜の腐食を防止することができる。
リードフレーム1A,1Bとしてアルミニウム材を用いた場合は、内側に配される表面に導電膜を形成する必要はない。
【0035】
次に、2個一対のリードフレーム部材10A,10Bのリードフレーム1A,1Bに対して導電性の接着剤により電極活物質13A,13Bを接着し(活物質接着S4)、その電極活物質13A,13Bに液体電解質を含浸させる(電解液含浸S5)。そして、これらのリードフレーム部材10A,10Bをリードフレーム1A,1Bどうしが板厚方向に間隔をあけて対向するように配置し、電極活物質13A,13B間にセパレータ11を挟み、リードフレーム1A,1Bの本体部3A,3B間に形成される空間を密閉するように、枠体9A,9Bどうしを接合する(接合S6)。
【0036】
続いて、リードフレーム1A,1Bの枠体9A,9Bから露出する外側表面全体に対して、基板実装しやすくするためにニッケル(Ni)やスズ(Sn)、金(Au)、ハンダ等の層を設けておくことが望ましい。前記層をメッキ法により形成してもよい(メッキ処理S7)。これにより、大判の板材上に一対のリードフレーム1A,1B間の密閉空間内に2つの電極活物質13A,13Bがセパレータ11により互いに絶縁されて収容された2個一対のリードフレーム部材10A,10Bが複数組形成される。枠体9A,9Bの接合方法としては、例えば、超音波溶接、熱溶接、レーザ溶接、接着等が挙げられる。
【0037】
次に、2個一対のリードフレーム部材10A,10Bごとに切断し、各リードフレーム1A,1Bの端子部5A,5Bを枠体9A,9Bに沿って折り曲げる(折り曲げS8)。枠体9A,9Bをスペーサとして作用させることで、各端子部5A,5Bの先端がそれぞれリードフレーム1A,1Bの本体部3A,3Bに接触しないように配置することができる。これにより、複数の電気化学セル100が製造される。
【0038】
次に、このように構成された電気化学セル100およびその製造方法の作用について説明する。
本実施形態に係る電気化学セル100によれば、液体電解質が含浸された2つの電極活物質13A,13Bがセパレータ11により絶縁されることにより互いに正極および負極として用いられる。また、これらの電極活物質13A,13Bを収容し、各電極活物質13A,13Bに対して少なくとも一部が接触したリードフレーム1A,1Bの本体部3A,3Bが内部配線として作用する。したがって、枠体9A,9Bの外方に張り出して同一面上に配置されるように折り曲げられた各リードフレーム1A,1Bの端子部5A,5Bの先端を外部電極(図示略)に接続する正負一対の外部端子として作用させることにより、面実装することができる。
【0039】
この場合において、リードフレーム1A,1Bに枠体9A,9Bが一体成形された2個一対のリードフレーム部材10A,10Bどうしを組み合せることで、接合時の部品点数を少なくし組立性を向上することができる。また、リフローにより面実装する際に液体電解質が熱膨張しても、リードフレーム1A,1Bの本体部3A,3Bの撓み領域7が変形し、本体部3A,3Bの撓み領域7よりも内側の領域がセパレータ11から離れる方向に変位することで、本体部3A,3B間に形成された密閉空間の内容積を増大させることができる。これにより、密閉空間の内圧を緩和させ、内圧の増大によって枠体9A,9Bが破損するのを防ぐことができる。
【0040】
したがって、本実施形態に係る電気化学セル100およびその製造方法によれば、セラミックス等の高価な材料を用いることなく比較的安価な材料で信頼性を向上することができる。また、このような電気化学セル100を簡易に製造することができる。
【0041】
なお、本実施形態に係る電気化学セル100においては、枠体9A,9Bが撓み領域7の変形による変位後の本体部3A,3Bの撓み領域7よりも内側の領域の位置よりも板厚方向に張り出していることが望ましい。このようにすることで、撓み領域7の変形により本体部3A,3Bの一部がセパレータ11から離れる方向に変位した場合において、枠体9A,9Bをスペーサとして作用させ、変位した本体部3A,3Bの一部が外部に接触して破損するのを防ぐことができる。
【0042】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。例えば、本実施形態においては、可撓領域として板厚方向に屈曲して薄肉に形成された環状の薄肉領域7を例示して説明したが、可撓領域はリードフレーム1A,1Bの本体部3A,3Bの一部をセパレータ11から離れる方向に変位させるように変形可能な形状であればよい。
【符号の説明】
【0043】
1A,1B リードフレーム
3A,3B 本体部
5A,5B 端子部
7 撓み領域(可撓領域)
9A,9B 枠体
10A,10B リードフレーム部材
11 セパレータ
13A,13B 電極活物質
100 電気化学セル
R1,R2 小空間
S2 形成工程
S6 接合工程
S8 折り曲げ工程

【特許請求の範囲】
【請求項1】
略矩形状の本体部と該本体部から延びる端子部とを有する金属材料からなる板状のリードフレームと、該リードフレームの前記本体部の周縁を取り囲むように前記リードフレームに一体成形された絶縁材料からなる枠体とを備える2個一対のリードフレーム部材と、
該リードフレーム部材を前記リードフレームどうしが板厚方向に間隔をあけて対向するように配置し、前記枠体どうしを接合することにより前記本体部間に形成された密閉空間を前記板厚方向に区画する絶縁材料からなるセパレータと、
該セパレータにより区画された各小空間内に前記本体部の少なくとも一部に接触して配置される、液体電解質が含浸された電極活物質とを備え、
前記リードフレームの本体部に、該本体部の一部を前記セパレータから離れる方向に変位させるように変形可能な可撓領域が設けられ、
2つの前記リードフレーム部材を構成する2つの前記リードフレームの前記端子部が、該端子部の前記枠体の外方に張り出した部分の一部が互いに同一面上に配置されるように折り曲げられている電気化学セル。
【請求項2】
前記可撓領域が、前記枠体の内縁に沿って環状に形成され、前記可撓領域の外側に配される前記本体部に対して該可撓領域の内側に配される該本体部の一部を変位させる請求項1に記載の電気化学セル。
【請求項3】
前記可撓領域が、前記本体部の他の領域よりも薄肉に形成されている請求項2に記載の電気化学セル。
【請求項4】
前記端子部が、前記枠体に沿って折り曲げられている請求項1から請求項3のいずれかに記載の電気化学セル。
【請求項5】
前記枠体が、前記可撓領域の変形による変位後の前記本体部の一部の位置よりも前記板厚方向に張り出している請求項1から請求項4のいずれかに記載の電気化学セル。
【請求項6】
金属材料からなる板状のリードフレームの本体部の周縁を取り囲み、該リードフレームから延びる端子部が外方へ張り出すように、該リードフレームに絶縁材料からなる枠体を一体成形する成形工程と、
該成形工程により前記リードフレームに前記枠体が一体成形された2個一対のリードフレーム部材を前記リードフレームどうしが板厚方向に間隔を空けて対向するように配置し、液体電解質が含浸された2つの電極活物質と該2つの電極活物質どうしを絶縁するセパレータとを前記本体部間に挟み、該本体部間に形成される空間を密閉するように前記枠体どうしを接合する接合工程と、
前記枠体の外方に張り出した前記リードフレームの各端子部を、前記枠体から張り出した部分の一部が互いに同一面上に配置されるように、前記枠体に沿って折り曲げる折り曲げ工程とを含む電気化学セルの製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2012−186357(P2012−186357A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−49113(P2011−49113)
【出願日】平成23年3月7日(2011.3.7)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】