説明

電気化学デバイス用ガス拡散層の製造方法及びそれに使用される混合体

【課題】ガス拡散性及び導電性が良好な電気化学デバイス用ガス拡散層の製造方法及びそれに使用される混合体を提供すること。
【解決手段】PTFE粒子と界面活性剤を水に分散させた分散液を調製する第1工程と、粒径が10μm以上、30μm以下、タップ密度が1.15g/cm3以上、1.50g/cm3以下である炭素粒子と上記分散液を混練りして粘土状の混合物を調製する第2工程と、金属製メッシュに上記混合物を保持させた薄板状の成型体を形成する第3工程と、この成型体を130℃以上、180℃以下の温度で加熱し水を蒸発させ成型体を乾燥させる第4工程と、乾燥された成型体を320℃以上、360℃以下の温度で加熱して界面活性剤を分解させる第5工程を有し、25mLの空気の透気度が14sec/cm2以上、70sec/cm2以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気化学デバイス用ガス拡散層の製造方法及びそれに使用される混合体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は、供給された燃料と酸化剤の電気化学反応による化学エネルギーを電力として取出すものであり、近年、エネルギー・環境問題を背景とした社会的要求や動向と呼応して、常温でも作動して高出力密度が得られる燃料電池が移動体用電源、定置型電源として注目されている。燃料電池は、電極反応による生成物が原理的に水であり、地球環境への悪影響がほとんどないクリーンな発電システムである。特に、電解質に固体高分子電解質を用いた固体高分子型燃料電池(PEFC:Polymer Electrolyte Fuel Cells)は、比較的低温で作動することから、燃料電池自動車から携帯機器( 例えば、携帯電話、携帯情報端末、携帯音楽プレイヤ、ノート型パソコンなど)まで幅広い分野での移動体用電源として期待されている。
【0003】
固体高分子型燃料電池の基本構造は、固体高分子電解質膜の両側に触媒層及びガス拡散電極が接合された膜電極接合体(MEA:Membrane Electrode Assembly)の両側にセパレータが配置された単セルを含んでいる。
【0004】
固体高分子型燃料電池では、燃料極側のセパレータに供給された水素は、セパレータ内のガス流路を通ってガス拡散電極に導かれその中を拡散して触媒層に導かれ、白金等の触媒作用によって水素イオンと電子とに分離される。水素イオンは電解質膜を通って電解質膜を挟んで反対側の酸化剤極の触媒層に導かれる。一方、燃料極側で発生した電子は、負荷を含み外部回路を通って、酸化剤極側のガス拡散電極に導かれ触媒層に導かれる。酸化剤極側のセパレータから導かれた酸素は、酸化剤極側のガス拡散電極を通って触媒層に到達し、酸素、電子、水素イオンとから水を生成する。このようにして発電サイクルが完結する。
【0005】
拡散層は、主に次の三つの機能を持つ。その第一は拡散層の外面に配置されたガス流路から、触媒層へ均一に燃料ガス若しくは酸化剤ガスを供給するために、反応ガスを拡散させる機能である。第二は触媒層で生成した水を、速やかにガス流路に排出する機能である。第三は触媒層の反応に必要な電子を導電する機能である。
【0006】
高い反応ガス透過性能、水蒸気透過性能、電子導電性が必要となる。このため、従来のガス拡散層は、多孔質構造とすることでガス透過能を与え、フッ素樹脂で代表とされる撥水性の高分子材料を層中に分散することで水蒸気透過能を与え、カーボン繊維や金属繊維、炭素微粉末などの電子導電性材料で拡散層を構成することで電子導電性を与えてきた。
【0007】
次に示すように、ガス拡散層の製造方法に関して多数の報告がなされている。
【0008】
先ず、「電気化学素子」と題する後記の特許文献1には、カーボンクロス又はカーボンフェルトで構成され燃料と接する燃料電池基材と、カーボンクロス又はカーボンフェルトで構成され酸化剤と接する酸化剤電池基材とを有し、少なくとも燃料電池基材及び酸化剤電池基材の一方が糸で縫ってある電気化学素子の記載がある。
【0009】
また、「固体高分子電解質型燃料電池及びその製造方法」と題する後記の特許文献2には、導電性繊維からなるシートである拡散層を有し、シートの周縁部の導電性繊維が互いに固着されている固体高分子電解質型燃料電池が記載されている。
【0010】
また、「固体高分子電解質型燃料電池用ガス拡散膜」と題する後記の特許文献3には、固体高分子電解質型燃料電池用ガス拡散膜は、疎水性バインダー樹脂及び導電性材料から形成された疎水性多孔質膜であり、導電性材料の平均粒子径は、例えば、20nm〜50μmの範囲であり、好ましくは40nm〜10μmの範囲であるとの記載がある。
【0011】
また、「固体高分子電解質型燃料電池用ガス拡散電極の製造方法」と題する後記の特許文献4には、フッ素樹脂を該フッ素樹脂が溶解する溶媒に添加して得たフッ素樹脂溶液又はスラリーと、炭素材料を前記フッ素樹脂が溶解する溶媒に分散させて得た炭素分散液とを混合して混合分散液を作製し、該混合分散液に、前記フッ素樹脂が溶解する溶媒よりも沸点が高く、且つ前記フッ素樹脂を溶解しない溶媒を添加して塗料を作製し、得られた塗料を基材の上に塗布し、乾燥することを特徴とする固体高分子型燃料電池用ガス拡散電極の製造方法が記載されている。
【0012】
また、「ガス拡散層の酸化安定性ミクロ層」と題する後記の特許文献5には、炭素粒子及びポリマー組成物からなるミクロ層及び基材を含むガス拡散層の製造方法が記載される。この方法は、キャリア、界面活性剤、炭素粒子、溶融加工可能ではない第1の高度にフッ素化されたポリマー、及び溶融加工可能である第2の高度にフッ素化されたポリマーを含む懸濁液を形成すること、導電性多孔性基材上に前記懸濁液をコーティングすること、前記第1の高度にフッ素化されたポリマー及び前記第2の高度にフッ素化されたポリマーを焼結することを含むとしている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
従来の固体高分子型燃料電池においては、カーボンクロスやカーボンペーパー等の基材に、導電性を付与するためのカーボン粉末と撥水性を付与するためのポリ四フッ化エチレン(以下、「PTFE」という。)を混練したペーストを含浸したり塗布したりする方法によって、ガス拡散層を作製していた。しかし、カーボンクロスやカーボンペーパー等の基材を用いたガス拡散層の製造方法では、裁断時にほつれ等が生じるという問題がある。また、この方法で作製されたガス拡散層は、ガス拡散性が充分でなく、燃料電池の性能に悪影響を与えていた。
【0014】
燃料電池中で、加湿された燃料ガス及び酸化ガスは、それぞれ、セパレータに形成されたガス流路溝よりガス拡散基材を通って、触媒層を有する電極へ供給される。その電極上(陽極側)で、酸化ガスは、プロトンと反応して水となる。加湿に用いられた水と反応により生成する水は、触媒層からガス拡散基材を通じて外部に排出される必要がある。この排水を効率的に行うために、ガス拡散基材のガス透気度は非常に重要である。
【0015】
本発明は、上述したような課題を解決するためになされたものであって、その目的は、ガス拡散性及び導電性が良好な電気化学デバイス用ガス拡散層の製造方法及びそれに使用される混合体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
即ち、本発明は、撥水性樹脂粒子と界面活性剤を水に分散させた分散液を調製する第1工程と、粒径が10μm以上、30μm以下、タップ密度が1.15g/cm3以上、1.50g/cm3以下である炭素粒子と前記分散液を混練した混合物を調製する第2工程と、前記混合物を薄板状とした成型体を形成する第3工程と、前記成型体を加熱し前記水を蒸発させ前記成型体を乾燥させる第4工程と、乾燥された前記成型体を加熱して前記界面活性剤を分解させる第5工程とを有する電気化学デバイス用ガス拡散層の製造方法に係わるものである。
【0017】
また、本発明は、粒径が10μm以上、30μm以下、タップ密度が1.15g/cm3以上、1.50g/cm3以下である炭素粒子と、撥水性樹脂粒子と、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコール−ポリエチレングリコールブロックコポリマーからなる界面活性剤とが水を分散媒として混練された、電気化学デバイス用ガス拡散層の製造に使用される混合体に係わるものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、撥水性樹脂粒子と界面活性剤を水に分散させた分散液を調製する第1工程と、粒径が10μm以上、30μm以下、タップ密度が1.15g/cm3以上、1.50g/cm3以下である炭素粒子と前記分散液を混練した混合物を調製する第2工程と、薄板状の成型体を形成する第3工程と、前記成型体を加熱し前記水を蒸発させ前記成型体を乾燥させる第4工程と、乾燥された前記成型体を加熱して前記界面活性剤を分解させる第5工程とを有するので、ガス拡散層の製造工程での裁断時においてほつれの原因となるカーボン繊維を使用せずに、タップ密度の高い炭素粒子を用いることにより、導電性を損なうことなく、通気性が良好な電気化学デバイス用ガス拡散層の製造方法を提供することができる。
【0019】
また、本発明によれば、粒径が10μm以上、30μm以下、タップ密度が1.15g/cm3以上、1.50g/cm3以下である炭素粒子と、撥水性樹脂粒子と、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコール−ポリエチレングリコールブロックコポリマーからなる界面活性剤とが混練された混合体は、前記界面活性剤がPRTR(Pollutant Release and Transfer Register)法(特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律、化学物質管理促進法とも言う。)に非該当であり、水を分散媒として使用しているので、特別な設備を必要としないで作成することができ、密封された容器に長期間保存することが可能であり、導電性及び通気性が良好な電気化学デバイス用ガス拡散層の製造に好適に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施の形態におけるガス拡散層の製造工程を説明する図である。
【図2】同上、燃料電池の構造を模式的に示す断面図である。
【図3】同上、膜電極接合体の構造を模式的に示す断面図である。
【図4】同上、空気亜鉛電池の構造を模式的に示す断面図である。
【図5】本発明の実施例におけるガス拡散層の構成と透気度を説明する図である。
【図6】同上、ガス拡散層を構成するMPLのSEM像である。
【図7】本発明の参考例における、ガス拡散層の透気度と燃料電池の出力との関係を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の電気化学デバイス用ガス拡散層の製造方法では、25mLの空気の透気度が14sec/cm2以上、70sec/cm2以下である構成とするのがよい。このような構成によれば、通気性が良好な電気化学デバイス用ガス拡散層の製造方法を提供することができる。
【0022】
また、前記界面活性剤が、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコール−ポリエチレングリコールブロックコポリマーからなる構成とするのがよい。このような構成によれば、前記界面活性剤はPRTR法に非該当せず、前記分散液の分散媒として水を使用しているので、防爆設備を必要とせず、前記撥水性樹脂粒子を水に良好に分散させることができ、不活性ガス雰囲気下で前記成型体を加熱して前記界面活性剤を効率よく分解させ除去することができ、環境に問題となる成分の残留物もないことから、製品の安全性を確保することができ、製品の廃棄時にも特別な処理工程を必要とせずコストを低減することが可能な電気化学デバイス用ガス拡散層の製造を提供することができる。
【0023】
また、前記界面活性剤の平均分子量が1670、エチレンオキサイド(EO)含有率が40wt%である構成とするのがよい。このような構成によれば、前記撥水性樹脂粒子を水に良好に分散させ前記炭素粒子をほぼ均一に混合させることができ、不活性ガス雰囲気下で前記成型体を加熱して前記界面活性剤を効率よく分解させ除去することができる。
【0024】
また、前記第4工程における加熱温度が130℃以上、180℃以下である構成とするのがよい。このような構成によれば、前記成型体に含まれる水を効率よく蒸発させ除去することができる。
【0025】
また、前記第5工程における加熱温度が320℃以上、360℃以下である構成とするのがよい。このような構成によれば、不活性ガス雰囲気下で前記成型体に含まれる前記界面活性剤を効率よく分解させ除去することができる。
【0026】
また、前記撥水性樹脂粒子がPTFE(ポリ四フッ化エチレン)である構成とするのがよい。このような構成によれば、PTFEの分解温度が390℃以上であるので、PTFEを分解させることなく、前記炭素粒子の間をPTFEによって結着させると共に、前記成型体に含まれる前記界面活性剤を殆んど分解させ除去することができる。
【0027】
また、前記第3工程において、前記第3工程において、多孔性の基体に前記混合物を保持させ前記成型体を形成する構成とするのがよい。このような構成によれば、ガス拡散層に機械的強度をもたせることができる。
【0028】
また、前記基体が金属製メッシュである構成とするのがよい。このような構成によれば、前記基体を集電体として使用することができる。
【0029】
本発明の電気化学デバイス用ガス拡散層の製造に使用される混合体では、前記界面活性剤の平均分子量が1670であり、エチレンオキサイド(EO)含有率が40wt%である構成とするのがよい。このような構成によれば、前記撥水性樹脂粒子を水に良好に分散させ前記炭素粒子をほぼ均一に混合させた混合体を形成することができ、この混合体を成型してこれを不活性ガス雰囲気下で加熱して前記界面活性剤を効率よく分解させ除去し、導電性及び通気性が良好な電気化学デバイス用ガス拡散層を製造することができる。
【0030】
また、前記界面活性剤の熱分解温度が320℃以上、360℃以下である構成とするのがよい。このような構成によれば、混合体を成型してこれを不活性ガス雰囲気下で加熱して前記界面活性剤を効率よく分解させ除去して、導電性及び通気性が良好な電気化学デバイス用ガス拡散層を製造することができる。
【0031】
また、前記撥水性樹脂粒子がPTFE粒子である構成とするのがよい。このような構成によれば、PTFEの分解温度が390℃以上であるので、PTFEを分解させることなく、前記炭素粒子の間をPTFEによって結着させると共に、前記成型体に含まれる前記界面活性剤を殆んど分解させ除去して、導電性及び通気性が良好な電気化学デバイス用ガス拡散層を製造することができる。
【0032】
本発明による電気化学デバイス用ガス拡散層の製造方法では、先ず、撥水性樹脂粒子と界面活性剤を水に分散させた分散液を調製し、この分散液に、粒径が10μm以上、30μm以下、タップ密度が1.15g/cm3以上、1.50g/cm3以下である炭素粒子を混合して混練し粘土状の混合物を調製する。次に、この混合物を薄板状とした成型体を形成し、これを130℃以上、180℃以下の温度で加熱し水を蒸発させ成型体を乾燥させた後に、乾燥された成型体を320℃以上、360℃以下の温度で加熱して界面活性剤を分解させ除去する。このようにして、25mLの空気の透気度が14sec/cm2以上、70sec/cm2以下であり通気性が良好であり、導電性も良好な電気化学デバイス用ガス拡散層を製造することができる。
【0033】
界面活性剤として、平均分子量が1670、エチレンオキサイド(EO)含有率が40wt%であるポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコール−ポリエチレングリコールブロックコポリマーを好適に使用することができる。
【0034】
撥水性樹脂粒子として、PTFE粒子を好適に使用することができ、炭素粒子の間をPTFEによって結着させることができる。
【0035】
上記成型体は、多孔性の基体、例えば、金属製メッシュに上記混合物を保持させ形成することが好ましく、ガス拡散層に機械的強度をもたせ、基体を集電体として使用することができる。
【0036】
炭素粒子として、粒径が10μm以上、30μm以下、タップ密度が1.0g/cm3以上、1.5g/cm3以下であるものを使用する場合、ガス拡散層における炭素粒子と撥水性樹脂粒子の組成比と組み合わせることによって、ガス拡散層の透気度(25mLの空気の透気度)を、広い範囲の値とすることができる。より好ましくは、炭素粒子として、粒径が15μm以上、20μm以下、タップ密度が1.3g/cm3以上、1.5g/cm3以下であるものを使用する。これによって、ガス拡散層の透気度を、14sec/cm2以上、70sec/cm2以下とすることができる。更に好ましくは、炭素粒子として、粒径が20μm、タップ密度が1.5g/cm3であるものを使用する。これによって、ガス拡散層の透気度を、14sec/cm2とすることができる。
【0037】
ガス拡散層における炭素粒子、撥水性樹脂粒子の重量組成をそれぞれx(%)、y(%)とするとき、ガス拡散層に導電性をもたせ、且つ、透気度を変化させるために、x:yを、95:5から60:40の範囲とするのが好ましい。
【0038】
以下、図面を参照しながら本発明による実施の形態について詳細に説明する。
【0039】
<実施の形態>
本発明によるガス拡散層は、燃料電池、空気亜鉛電池等の電池をはじめ、水素ガス、酸素ガス等のガスを発生させる電気化学デバイスに好適に適用することができる。
【0040】
先ず、本発明によるガス拡散層が適用される電気化学デバイスの例として、燃料電池を説明する。
【0041】
代表的な燃料電池として、PEFC(高分子電解質型燃料電池、Polymer Electrolyte Fuel Cell、固体高分子型燃料電池等とも呼ばれる。)と呼ばれ水素を燃料とする水素燃料電池、メタノール水溶液を直接燃料として用いるDMFC(直接メタノール型燃料電池、Direct Methanol Fuel Cell)、エタノール、プロパノール、ギ酸、ジメチルエーテル等の原料燃料を蒸発させて使用する液体原料燃料電池がある。本発明によるガス拡散層はこれら燃料電池に適用することができる。
【0042】
[燃料電池の構造]
図2は、本発明の実施の形態における燃料電池の構造を模式的に示す断面図である。
【0043】
燃料電池は、図1に示す単セル(1セル)又は積層された複数のセルから構成される。このセルは、図2に示すように電解質膜10とその両面にそれぞれ接合された燃料極15aと酸化剤極15bからなる膜電極接合体(MEA:Membrane-Electrode Assembly18、及び、これをガスケット38a、38bによって挟持するセレータ25a、25bから構成されている。
【0044】
燃料極15aはガス拡散層60a及び触媒層20aからなり、酸化剤極15bはガス拡散層60b及び触媒層20bからなる。セレータ25a、25bは、燃料30a、酸化剤30bの流体通路26a、26bを有し、ガス拡散層60a、60bを介して触媒層20a、20bにそれぞれ燃料30a、酸化剤30bを供給するためのものであり、集電体として機能させることもできる。燃料30aは、例えば、H2、メタノールガス等)であり、酸化剤30bは、例えば、酸素、空気であり、余剰の燃料30a、酸化剤30bは、電極反応の生成物と共に排出物34a、34bとして排出される。
【0045】
膜電極接合体18への燃料30a、酸化剤30bの供給によって、燃料極15a(アノード)では、電子が放出され酸化反応が生成し、酸化剤極15b(カソード)では、電子が取込まれる還元反応が生じる。
【0046】
固体高分子型燃料電池では、燃料極側のセパレータ25aに供給された水素(燃料30a)は、流体通路26a流路を通って燃料極15aのガス拡散層60aに導かれその中を拡散して触媒層20bに導かれ、白金等の触媒作用によって水素イオンと電子とに分離される(H2 → 2H+ + 2e-)。水素イオンは固体電解質膜10を通って酸化剤極15bの触媒層20bに導かれる。一方、燃料極側で発生した電子は、負荷を含み外部回路を通って酸化剤極のガス拡散層60b極に導かれ触媒層20bに導かれる。酸化剤極側のセパレータ30bから導かれた酸素(酸化剤)は、酸化剤極のガス拡散層60bを通って触媒層20bに到達し、酸素、電子、水素イオンとから水を生成する(1/2O2 + 2H++2e- → H2O)。このようにして水素と酸素から水を生成する反応(H2 +1/2O2 → H2O)を含む発電サイクルが進行して、起電力を生じる。
【0047】
メタノール水溶液を直接燃料として用いメタノールを気化させたガスが燃料30aとして供給される直接メタノール型燃料電池では、メタノールガス(燃料30a)が供給される燃料極では、酸化反応(CH3OH+H2O → CO2 +6H+ +6e-)により電子が放出され、空気中の酸素(酸化剤30b)が供給される酸化剤極では、還元反応(6H+ +3/2O2 +6e- → 3H2O)により電子が取込まれ、メタノールと酸素から炭酸ガスと水を生成する反応(CH3OH+3/2O2 → CO2 +2H2O)が進行して、起電力を生じる。
【0048】
ガス拡散層60a、60bの通気性は燃料電池の発電効率に大きな影響を与える。ガス拡散層60a、60bの導電性を重視して空隙を少なくすると、燃料30a、酸化剤30bを触媒層20a、20bに供給量が少なくなり発電効率が低下してしまう。逆に、ガス拡散層60a、60bの通気性を重視して空隙を多くすると、導電性が低下しイオン化の効率が低下してしまう。
【0049】
[ガス拡散層の製造方法]
図1は、本発明の実施の形態におけるガス拡散層の製造工程を説明する図である。
【0050】
ガス拡散層は図1(A)に示す製造工程(1)〜(6)によって得ることができる。
【0051】
(1)撥水性樹脂粒子と界面活性剤を水に分散させた分散液の調製
撥水性樹脂粒子(例えば、PTFE(ポリ四フッ化エチレン)粒子45)の分散液、界面活性剤を水に分散させた分散液を調製する。撥水性樹脂として、PTFEの他に、四フッ化エチレン−パーフルオロアルコキシエチレン共重合体(PFA)、四フッ化エチレン−エチレン共重合体(ETFE)等、融点が320℃以上、熱分解温度が360℃以上であるフッ素系樹脂を使用することができる。
【0052】
(2)(1)で調製した分散液と炭素粒子を混練した粘土状の混合物の調製
混合・混練機を使用して混合、混練して粘土状の混合物を調製する。
【0053】
(3)(2)で調製した粘土状の混合物の圧延
粘土状の混合物を離型性樹脂シートに挟んで1本ロールにより粘土状の混合物を薄く圧延して、粘土状の混合物の圧延体50を形成する。
【0054】
(4)(3)で薄く圧延された粘土状の混合物を多孔性の基体に保持させた薄板状の成型体の形成
粘土状の混合物の圧延体50を多孔性の基体55(例えば、金属性メッシュ)に保持し、ロールプレス57にかけて延伸させて、基体55を骨格とする薄板状(シート状)の成型体を形成する。
【0055】
(5)(4)で形成された成型体の加圧下での乾燥
18KN〜22KNの加圧下で、140℃〜160℃、2min〜5mminかけて成型体を加熱乾燥(予備乾燥)させ、水分を蒸発させる。
【0056】
(6)(5)で乾燥された成型体の窒素雰囲気下の焼成
乾燥された成型体を、窒素雰囲気下で、340℃〜360℃、1.8hr〜2.2hrかけて焼成して、界面活性剤を熱分解させて除去し、撥水性樹脂粒子を熱溶融させて、炭素粒子間、基体(金属製メッシュ等)と炭素粒子間が結合され一体化された機械的強度を有するシートとされたガス拡散層60を得る。
【0057】
以上のようにして得られたガス拡散層60は、図1(B)示す模式断面図に示す構造を有している。
【0058】
図1(B)示すように、多孔性基体(金属メッシュ)55の片面が混合物(炭素粒子40と撥水性樹脂粒子45の混合物)の圧延体の外面よりも外部にあり、多孔性基体55の他面が混合物の圧延体の外面よりも内部にあるように、ガス拡散層60が形成され、多孔性基体55は、ガス拡散層60の骨格をなし炭素粒子40を支持し集電体として働く。
る。多孔性基体55として、焼結金属、発泡金属などの多孔性基体を用いることもできる。
【0059】
本発明では、ガス拡散層の形成において炭素繊維を使用しないので、ほつれを生じることがなく、マイクロショートや隣接する電極との短絡を生じることもない。
【0060】
以上のようにして作製されたガス拡散層は、通気性及び導電性を有しており、通気性及び導電性は、ガス拡散層における炭素粒子、撥水材粒子の含有量を調製することができ、所望の通気性及び導電性を有するガス拡散層を作製することができる。
【0061】
[膜電極接合体(MEA)の構造]
図3は、本発明の実施の形態における膜電極接合体(MEA)の構造を模式的に示す断面図である。
【0062】
膜電極接合体(MEA)18は、図1(A)に示す製造工程によって形成され、図1(B)に示す構造を有するガス拡散層60a、60bの間に、触媒層20a、固体電解質膜10、触媒層20b、ガス拡散層60a、触媒層20aが挟持されている。
【0063】
ガス拡散層60a、60bにおいて、多孔性の基体55が炭素粒子40と撥水性樹脂粒子45の混合物による圧延体50の外面よりも外部に露出する側の面を外面とするように配置され、多孔性の基体55は、燃料極15a、酸化剤極15bの集電体として使用される。
【0064】
以上のようにして製造されたガス拡散層は、燃料電池、空気亜鉛電池等の電池をはじめ、水素ガス、酸素ガス等のガスを発生させる電気化学デバイスに好適に適用することができる。
【0065】
次に、本発明によるガス拡散層が適用される電気化学デバイスの例として、空気亜鉛電池を説明する。
【0066】
[空気亜鉛電池の構造]
図4は、本発明の実施の形態における空気亜鉛電池の構造を模式的に示す断面図である。
【0067】
図4に示すように、空気亜鉛電池は、空気極70、亜鉛極71、空気極70と亜鉛極71に挟持された電解質膜72とを有している。空気極70は、ガス拡散層60cとこれに接合された触媒層20cによって構成されており、亜鉛極71は亜鉛板によって構成されている。電解質膜72は塩化亜鉛の水溶液をゲル化させたものであり、空気極70と亜鉛極71のセパレータである。触媒層20cは、酸素の分解を促進させる触媒(例えば、マンガン酸化物)がカーボン粒子に担持されてなる。
【0068】
空気極70、電解質膜72を保持する空気孔付き正極ケース(端子)73は、ガスケット75を介して、亜鉛極71を保持する負極ケース(端子)74亜鉛極71に勘合され、亜鉛極71は電解質膜72に密着している。
【0069】
亜鉛極71では、酸化反応(Zn+2OH- → Zn(OH)2 +2e- )により電子が放出され、空気中の酸素が供給される空気極70では、還元反応(O2 +2H2O+4e- → 4OH-)により電子が取込まれ、亜鉛、酸素、水から水酸化亜鉛を生成する反応(1/2O2 +Zn+H2O → Zn(OH)2)が進行して、起電力を生じる。
【0070】
<実施例>
[ガス拡散層の形成]
図1に示す製造工程に従ってガス拡散層を作製した。
【0071】
(1)撥水性樹脂粒子と界面活性剤を水に分散させた分散液の調製
PTFE粒子45の水性分散液(ポリフロン PTFE D−1E、ダイキン社製、商品名)、界面活性剤(プロノン104、日油社製、商品名)を水に分散させた分散液を調製した。この分散液における、界面活性剤、PTFE分散液(後述の図5では単にPTFEと示す欄)、水の組成を、後述の図5の(A)、(B)、(C1)〜(C3)、(D1)〜(D3)について示す。
【0072】
なお、界面活性剤、プロノン104は、HO−(C24−O)n−(C36O)m−(C24−O)n−H(n、mは整数である。)で示されるポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコール−ポリエチレングリコールブロックコポリマーであり、平均分子量は1670、エチレンオキサイド(EO)含有率は40wt%である。界面活性剤、プロノン104の使用によって、TFPEを良好な状態で分散させることができ、350℃、80分でほぼ完全に熱分解させることができる。
【0073】
(2)(1)で調製した分散液と炭素粒子を混練した粘土状の混合物の調製
プライミックス社製のハイビスミックス混合・混練機を使用して炭素粒子と、調製した分散液とを混合、混練して粘土状の混合物を調製した。
【0074】
上記(1)において調製された分散液に、図5の(A)、(B)、(C1)〜(C3)、(D1)〜(D3)に示すようなタップ密度、粒径を有する炭素粒子を混合、混練して粘土状の混合物を調製した。
【0075】
(3)(2)で調製した粘土状の混合物の圧延
粘土状の混合物をポリイミドフィルムに挟んで1本ロールにより粘土状の混合物を薄く圧延して、粘土状の混合物の圧延体50を形成した。
【0076】
(4)(3)で薄く圧延された粘土状の混合物を多孔性の基体に保持させた薄板状の成型体の形成
粘土状の混合物の圧延体50を多孔性の基体55(Tiメッシュ(サンク社製、メッシュ短目方向の中心距離SW=0.5mm、メッシュ長目方向の中心距離LW=1.omm、刻み幅0.2mm、メッシュ材料の厚み=0.1mmのものを使用した。)に保持し、ロールプレス57にかけてトータル厚み170±10μmに延伸させて、基体55を骨格とする薄板状の成型体を形成した。
【0077】
(5)(4)で形成された成型体の加圧下での乾燥
20KNの加圧下で、150℃、4mminかけて成型体を加熱乾燥させた。
【0078】
(6)(5)で乾燥された成型体の窒素雰囲気下の焼成
乾燥された成型体を、窒素雰囲気下で、350℃、2hrかけて焼成して、ガス拡散層60を得た。
【0079】
[ガス拡散層の構成]
図5は、本発明の実施例におけるガス拡散層の構成と透気度を説明する図である。
【0080】
図5における炭素粒子の性状は次の通りである。(A)に示す炭素粒子(バルカンXC−72R、Cabot 社製、商品名)の粒径は20nmである。(B)に示す炭素粒子(KS−15、TIMCAL 社製、商品名)の粒径は8μmである。(C1)〜(C3)に示す炭素粒子の粒径は20μm±4μm、タップ密度は1.5g/cm3±0.07g/cm3である。(D1)〜(D3)に示す炭素粒子の粒径は16.5μm±2μm、タップ密度は1.36g/cm3±0.07g/cm3である。
【0081】
上記した粒径は、粉末を粒径の小さいものから累積して累積量が全粒子数の50%になる粒径(D50%)(セイシン企業製レーザ式粒度分布測定機LMS−30を使用して測定した。)を示す。
【0082】
また、上記したタップ密度は、粒子が自由充填した状態に対して外部から強制衝撃(タッピング)を与えたときの密度を示す。タップ密度の測定は、JIS規格に従った一般的な方法によっている。
【0083】
図6は、本発明の実施例におけるガス拡散層を構成するMPL(micro porous layer 、微多孔質層)のSEM像(表面像)である。
【0084】
図6において、(A)は図5の(A)に示すガス拡散層、(B)は図5の(B)に示すガス拡散層、(C)は図5の(C1)〜(C3)の1つに示すガス拡散層をそれぞれ構成するMPLのSEM像である。なお、図6に示す(A)では、炭素粒子の粒径が小さいため(A)に示すSEM像の倍率では、炭素粒子の粒径は確認できない。
【0085】
[ガス拡散層の透気度]
図5に示す透気度は、25mLの空気が、1cm2のガス拡散層を厚み方向に通過する時間(sec)を示し、東洋精機製ガーレ式デンソメータ(型式G−B2C)を使用して測定した。図5に示す透気度の値が大きい程、気体が透過し難く通気性が悪く、透気度の値が小さい程、気体が透過し易く、通気性が良好であることを示している。
【0086】
透気度は、ガス拡散層の厚さに依存するが、図5に示す結果は、ガス拡散層の厚さが同程度であるので、炭素粒子の粒子の大きな差、タップ密度の大きな差によって、透気度が変化していることを明らかに示している。
【0087】
また、透気度は、ガス拡散層の形成に使用した分散液の組成にも依存している。この分散液中に含まれる分散媒である水は、ガス拡散層の形成における乾燥処理、焼成処理によって蒸発され除去され、分散液中に含まれる界面活性剤は、焼成処理によって分解され除去されるので、透気度は、形成されたガス拡散層における炭素粒子と撥水性樹脂粒子の重量組成比に依存していることになる。
【0088】
図5の(A)、(B)、(C1)〜(C3)、(D1)〜(D3)に示すガス拡散層における炭素粒子と撥水性樹脂粒子の重量組成比は次の通りである。(A)に示すガス拡散層では炭素粒子58.8%、撥水性樹脂粒子41.2%である。(B)に示すガス拡散層では炭素粒子73.7%、撥水性樹脂粒子26.3%である。(C1)及び(D1)に示すガス拡散層では炭素粒子91.9%、撥水性樹脂粒子8.1%である。(C2)及び(D2)に示すガス拡散層では炭素粒子85.1%、撥水性樹脂粒子14.9%である。
(C3)及び(D3)に示すガス拡散層では炭素粒子74.4%、撥水性樹脂粒子25.6%である。
【0089】
なお、図5に示す(A)、(B)、(C1)〜(C3)、(D1)〜(D3)はそれぞれ、対応する組成の分散液を用いて作製された1枚のシート(1ロット)から切出された、3つ、2つ、2つ、3つ、3つ、3つ、3つ、3つのガス拡散層に関する透気度を示している。図5に示す例では、1つのロットから切出されたガス拡散層の透気度が、切出された位置に依存してばらつく場合があることを示している。
【0090】
図5に示すように、径が10μm未満の炭素粒子を使用する場合、透気度が約1000秒〜約1400秒と大きな値のガス拡散層となる。また、径が15μm以上であり、タップ密度が1.36g/cm3以上の炭素粒子を使用する場合、透気度は約15秒〜約75秒と小さな値のガス拡散層となっている。
【0091】
また、図5に示す(C1)〜(C3)、(D1)〜(D3)に示すように、粒径及びタップ密度が同じ炭素粒子を使用した場合、上述の分散液における炭素粒子と撥水性樹脂粒子の重量組成比、即ち、形成されたガス拡散層における炭素粒子と撥水性樹脂粒子の重量組成比によって、透気度が変化し、炭素粒子の重量組成比が大となる(即ち、撥水性樹脂粒子の重量組成比が小)となる程、透気度は小さくなっている。
【0092】
更に、図5に示す(C1)〜(C3)と(D1)〜(D3)の比較から、形成されたガス拡散層における炭素粒子と撥水性樹脂粒子の重量組成比が同じである場合、炭素粒子として粒径とタップ密度が大きいものを使用した(C1)〜(C3)に示すガス拡散層の方がより小さな透気度を示し良好な通気性を示している。
【0093】
従って、上述の分散液における、炭素粒子の粒径とタップ密度、及び、炭素粒子と撥水性樹脂粒子の重量組成比を変えることによって、形成されるガス拡散層の透気度を調整することができる。
【0094】
[ガス拡散層の透気度と燃料電池の出力との関係]
図7は、本発明の参考例における、ガス拡散層の透気度と燃料電池(単セル)の出力との関係を説明する図である。
【0095】
なお、図7は、燃料として自然揮発させたメタノールを使用し、酸化剤として空気中の酸素使用した場合の出力(W/cm2)を示しており、(A)〜(E)における燃料電池は、ガス拡散層を除いて同じ構成を有している。
【0096】
(A)〜(E)における燃料電池で使用しているガス拡散層の形成に使用した炭素粒子は、図5に示す構成と同様にバルカンXC−72R(Cabot 社製、商品名)であり、ガス拡散層の透気度の値は図7の下方、及び、次に示す通りである。なお、ここに示す透気度は、上述したように、1つのロットから切出されたガス拡散層の透気度が、切出された位置に依存してばらつく場合があるので、切出されたガス拡散層の代表的な透気度を示している。
【0097】
図7の(A)は、燃料極及び酸化剤極におけるガス拡散層の透気度の値が同じ1100secである場合の燃料電池の出力を示す。
【0098】
図7の(B)は、燃料極のガス拡散層における透気度の値が図7の(A)より大きい1300secであり、酸化剤極のガス拡散層における透気度の値が図7の(A)と同じである場合の燃料電池の出力を示す。
【0099】
図7の(C)は、燃料極のガス拡散層における透気度の値が図7の(A)と同じであり、酸化剤極のガス拡散層における透気度の値が図7の(A)より小さい700secである場合の燃料電池の出力を示す。
【0100】
図7の(D)は、燃料極のガス拡散層における透気度の値が図7の(A)と同じであり、酸化剤極のガス拡散層における透気度の値が図7の(A)より小さい200secである場合の燃料電池の出力を示す。酸化剤極のガス拡散層における透気度の小さな値200secは、ガス拡散層にクラックが存在するためである。このようにガス拡散層にクラックが存在する場合には、明らかに出力が低下している。
【0101】
図7の(E)は、燃料極のガス拡散層における透気度の値が図7の(A)より大きい1300secであり、酸化剤極のガス拡散層における透気度の値が図7の(A)より小さい700secである場合の燃料電池の出力を示す。
【0102】
図7に示すように、酸化剤極のガス拡散層の透気度が同じである場合、燃料極のガス拡散層の透気度を表わす数値が大きく通気性が悪い時、燃料電池の出力が大である。また、燃料極のガス拡散層の透気度が同じである場合、酸化剤極のガス拡散層の透気度を表わす数値が小さく通気性が良い時、燃料電池の出力が大である。
【0103】
従って、燃料極のガス拡散層の透気度を表わす数値がより大きく通気性が悪く、且つ、酸化剤極のガス拡散層の透気度を表わす数値が小さく通気性が良い方が、燃料電池の出力が最も大きくなっていることが明らかである。また、酸化剤極のガス拡散層のクラックが存在する場合には、燃料電池の出力が低下する。
【0104】
このようにして、燃料極及酸化剤極のガス拡散層の透気度を調整することによって、燃料電池の出力を最適化することができる。
【0105】
以上、本発明を実施の形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づいて各種の変形が可能である。
【0106】
例えば、上記のガス拡散層又はこれを用いた膜電極接合体を使用して、水素センサ、酸素センサ、アルコールセンサ等の各種ガスセンサーへの応用も可能である。
【産業上の利用可能性】
【0107】
本発明によって製造された製造されたガス拡散層は電池、ガス発生装置等の電気化学デバイスに好適に適用することができる。
【符号の説明】
【0108】
10…固体電解質膜、15a…燃料極、15b…酸化剤極、18…膜電極接合体、
20a、20b、20c…触媒層、25a、25b…セパレータ、
26a、26b…流体通路、30a…燃料、30b…酸化剤、34a、34b…排出物、
38a、38b…ガスケット、40…炭素粒子、45…PTFE粒子、50…圧延体、
55…基体、57…ロールプレス、60、60a、60b、60c…ガス拡散層、
70…空気電極、71…亜鉛電極、72…電解質膜、73…正極ケース、
74…負極ケース、75…ガスケット、76…空気孔
【先行技術文献】
【特許文献】
【0109】
【特許文献1】特開2003−17087号公報(段落0009、段落0016)
【特許文献2】特開2005−85594号公報(段落0012、段落0034)
【特許文献3】特開2006−4787号公報(段落0006、段落0011〜0018)
【特許文献4】特開2006−31951号公報(段落0012)
【特許文献5】特表2008−535178号公報(請求項15、段落0012、段落0017)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撥水性樹脂粒子と界面活性剤を水に分散させた分散液を調製する第1工程と、
粒径が10μm以上、30μm以下、タップ密度が1.15g/cm3以上、1.5
0g/cm3以下である炭素粒子と前記分散液を混練りした混合物を調製する第2工程
と、
前記混合物を薄板状とした成型体を形成する第3工程と、
前記成型体を加熱し前記水を蒸発させ前記成型体を乾燥させる第4工程と、
乾燥された前記成型体を加熱して前記界面活性剤を分解させる第5工程と
を有する、電気化学デバイス用ガス拡散層の製造方法。
【請求項2】
25mLの空気の透気度が14sec/cm2以上、70sec/cm2以下である、請求項1に記載の電気化学デバイス用ガス拡散層の製造方法。
【請求項3】
前記界面活性剤が、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコール−ポリエチレングリコールブロックコポリマーからなる、請求項1に記載の電気化学デバイス用ガス拡散層の製造方法。
【請求項4】
前記界面活性剤の平均分子量が1670、エチレンオキサイド(EO)含有率が40wt%である、請求項3に記載の電気化学デバイス用ガス拡散層の製造方法。
【請求項5】
前記第4工程における加熱温度が130℃以上、180℃以下である、請求項1に記載の電気化学デバイス用ガス拡散層の製造方法。
【請求項6】
前記第5工程における加熱温度が320℃以上、360℃以下である、請求項1に記載の電気化学デバイス用ガス拡散層の製造方法。
【請求項7】
前記撥水性樹脂粒子がPTFE粒子である、請求項6に記載の電気化学デバイス用ガス拡散層の製造方法。
【請求項8】
前記第3工程において、多孔性の基体に前記混合物を保持させ前記成型体を形成する、請求項1に記載の電気化学デバイス用ガス拡散層の製造方法。
【請求項9】
前記基体が金属製メッシュである、請求項8に記載の電気化学デバイス用ガス拡散層の製造方法。
【請求項10】
粒径が10μm以上、30μm以下、タップ密度が1.15g/cm3以上、1.5
0g/cm3以下である炭素粒子と、
撥水性樹脂粒子と、
ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコール−ポリエチレングリコールブロ
ックコポリマーからなる界面活性剤と
が水を媒体として混練された、電気化学デバイス用ガス拡散層の製造に使用される混合体。
【請求項11】
前記界面活性剤の平均分子量が1670であり、エチレンオキサイド含有率が40wt%である、請求項10に記載の混合体。
【請求項12】
前記界面活性剤の熱分解温度が320℃以上、360℃以下である、請求項10に記載の混合体。
【請求項13】
前記撥水性樹脂粒子がPTFE粒子である、請求項12に記載の混合体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−176948(P2010−176948A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−16533(P2009−16533)
【出願日】平成21年1月28日(2009.1.28)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】