電気化学的試験片内の部分的充填の決定
例えば、ブドウ糖について試験するための血液サンプルなどのサンプルを含む試験片上の電荷の充電または放電から二重層静電容量のDC決定を行うことにより、電気化学的試験片の部分的充填を決定する。測定した二重層静電容量と基準値とを比較する。二重層静電容量は、積分静電容量または微分静電容量として決定してよい。二重層静電容量は、特にスクリーン印刷電極を用いる試験片において、電極形成の品質を監視する品質管理にも用いてよい。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、電気化学的試験片内の部分的充填を検出する方法と、かかる方法に用いられる計器と計器/試験片の組合せとに関するものである。
【背景技術】
【0002】
小型の使い捨て電気化学的試験片は、糖尿病による血液ブドウ糖の監視にしばしば用いられる。かかる試験片は、関心のある他の生理学的薬物や乱用の物質の検出にも用いることができる。一般に、試験片は、少なくとも2つの電極と実行する試験のための適当な試薬とを含み、1回使用の使い捨て要素として製作される。試験片は、再使用可能な計器内に挿入する前または後に血液や唾液や尿などのサンプルと結合させる。計器は、試験片からの電気化学的信号を検出し、処理して、試験片により決定される分析物が存在するかしないかまたはその量を表示する機構を含む。
【0003】
電気化学的試験片内では小容量サンプルを用いることが一般に望ましい。小容量試験片を用いるときに起こる1つの問題は、部分的充填状態が発生することである。すなわち、試験片に導入されたサンプルの量が不十分なために、読取り値に誤差を生じる。この部分的充填という問題に対して種々の解決法が提案されている。
【0004】
多くの場合、この問題の解決には追加の電極を用いる。例えば、米国特許第4,929,426号は、分析室が充填されると、サンプルがその上を流れるインピーダンス電極の使用を開示し、米国特許第5,582,697号、米国特許第6,212,417号および米国特許第6,299,757号は、全て充填を検出するために用いることができる第3の電極の使用を開示している。米国特許第6,743,635号は、別個の充填検出アノードおよびカソードを含む4電極方式を開示している。米国特許第5,997,817号は、サンプルが透かして見える窓と、サンプルが十分あることを示す「充填目標」線とを備える試験片を開示している。
【0005】
米国特許第6,856,125号は、サンプル容量を決める1つの方法として静電容量の測定を開示している。機器は、サンプルを含むバイオ・センサ・セルにAC信号を与える正弦波発生器、電流・電圧変換器、移相器、方形波発生器、同期復調器およびバイオ・センサ・セル全体の有効静電容量に比例する信号を生成する低域フィルタを含む。この信号は、サンプル容量に比例する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
電気化学的試験片は、一般に使い捨てであって、糖尿病患者は、毎日、複数の試験片を用いることがあるので、各品目のコストを抑えることが望ましい。したがって、試験片または計器内の要素の数を(したがって、試験片および計器の製作コストを)あまり増やさずに、サンプル容量が十分であることを確認する装置を有することが望ましい。かかるシステムは、試験計器内で自動化されて、ユーザによる観察や判断に依存せずにすめば更に望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、サンプルが十分であることを判定する優れた方法を提供するもので、この方法は、電極間で充電および放電する二重層の測度を用いて、サンプルを与えた後の試験片の二重層静電容量を決定する。二重層静電容量は、サンプルで濡れた電極の面積に比例するので、サンプル室が充填された程度を直接、示す測度になる。本発明では、電極と、電極間に置かれた液体サンプルとを有する電気化学的試験片内の部分的充填を検出することができる。この方法は、
(a) サンプルを電気化学的試験片に導入するステップと、
(b) 試験片の電極間に電位差を印加するステップと、
(c) 印加電位をオフまたオプションで第2の電位を印加するステップと、
(d) 生成される電流を観測し、観測した電流から電極間の二重層の充電または放電を決定するステップと、
(e) 印加電位をオフにした後の電圧変化を観測して、測定した二重層の充電または放電と観測した電圧変化から試験片の二重層静電容量を決定するステップと、
(f) 決定した二重層静電容量と基準値とを比較し、二重層静電容量が基準値より小さい場合、液体サンプルが対面する電極の一部をカバーし、電気化学的試験片が部分的にだけ充填されていることとを示すステップと、
を含む。
【0008】
本発明の1つの実施の形態では、二重層放電を以下のステップにより測定する。すなわち、(1)電極間に電位を印加し、(2)電極間の印加電位を或る時刻tswitchにオフにし、(3)電極間の電位差の減衰を観測して電位が或るしきい値まで減衰するのに要する時間tthresholdを識別し、(4)tswitchからtthresholdまでの間に放電した二重層電荷の量を決定する。
【0009】
本発明の別の実施の形態では、二重層充電を以下のステップにより測定する。すなわち、(1)電極間に第1の電位を印加し、(2)電極間の印加電位を或る時刻tswitchにオフにし、(3)電極間の電位差の減衰を観測して電位が或るしきい値まで減衰するのに要する時間tthresholdを識別し、(4)tthresholdに電極間に第2の電位を印加して電流スパイクを生成し(5)電流スパイクの下の面積で反映される二重層充電の量を決定し、(6)二重層充電の量および時刻tswitchの電流から二重層静電容量を決定する。
【0010】
本発明は、また電気化学的試験片に関連して用いられる計器を提供する。この計器は、電位を印加し、電流を観測し、電位をオフにし、電位をオフにした後の電位の減衰を観測する回路を含む。この計器は、更に電位を再印加した後の電流を観測する回路を含んでよい。計器内のプロセッサは、生成された情報を用いて二重層静電容量を決定し、二重層静電容量の値が不十分である場合に測定サイクルを中断する。また、この計器は、サンプル内に存在する分析物(例えば、ブドウ糖)の量を測定する回路と、分析物の量またはサンプル容量が不十分なために試験を終了することをユーザに伝える手段とを含む。
【実施例】
【0011】
1. 定義
本願の明細書およびクレームは、次の定義を適用する。
(a)「分析物」は、サンプル内に存在する関心のある物質を指す。本願の例では、分析物としてブドウ糖を用いるが、本発明は、分析物の種類にも量にも無関係である。したがって、ブドウ糖検出装置への応用は、単に1つの特定の制限のない実施の形態と見なすべきである。
【0012】
(b)「分析物の決定」は、サンプルを評価する定性的、半定量的および定量的プロセスを指す。定性的評価は、結果が分析物がサンプル内に検出されたかどうかを示す。半定量的評価は、結果が分析物が或る定義されたしきい値より多く存在するかどうかを示す。定量的評価は、結果が存在する分析物の量を数値で示す。
【0013】
(c)「二重層」は、帯電層を指し、導体表面上のイオン吸着の結果、この層が導体/電解質界面に形成され、そのために導体内のミラー電荷を中和する局所的層が固体表面の近くに形成される。電位が印加されているかどうかに関わらず、液体サンプルが電極と接触して存在すると、電気化学的試験片内の各電極に二重層が形成される。しかし、二重層内の電荷の量は、電極電位の関数である。二重層構造は、本質的にコンデンサとして動作する。
【0014】
(d)「二重層静電容量」は、二重層の静電容量である。これは、式
Cint=IΔt/ΔV
で表すことができる積分静電容量か、または式
Cdif=I/(dV/dt)
で表すことができる微分静電容量でよい。ただし、Iは、電流、tは、時間、Vは、電圧である。測定された二重層静電容量は、一方の電極が優勢な場合がある。例えば、一方の電極の面積の方が実質的に大きいか、またはサンプル内の一方の電荷のイオンの吸着が他方の電荷のイオンより強い場合である。ブドウ糖試験片の場合は、正の電極が優勢であることが多い。なぜなら、負のイオン(例えば、塩化物イオン)は、容易に水和殻を失って二重層内に組み込まれるからである。これらの例で測定された二重層静電容量は、本発明の範囲内にある。ただし、一方の電極が優勢の場合は、充填の形は、優勢な電極の二重層静電容量が電気化学的試験片の充填状態を表すものであることに注意しなければならない。
【0015】
(e)「二重層充電」は、電位を印加した結果、二重層内に蓄積される電荷が増加するプロセスである。「電極での二重層充電」という表現は、両方の電極または優勢な電極での充電を指す。
(f)「二重層放電」は、印加電位をオフにした結果、二重層内に蓄積された電荷が減少するプロセスである。「電極での二重層放電」という表現は、両方の電極または優勢な電極での放電を指す。
【0016】
(g)「電気化学的試験片」は、少なくとも2つの電極を有して、サンプル内の分析物の決定のために必要な任意の試薬が電極の間に置かれる試験片を指す。好ましい実施の形態では、電気化学的試験片は、1度、使用したら使い捨てにされ、また別個の再使用可能な計器に接続するコネクタを有する。この計器は、電位を印加し、信号を分析し、結果を表示する電子回路を含む。
【0017】
(h)「対面する電極」は、互いに平行に配置されるが別個の平面内にある一対の電極である。一対の対面する電極の向かい合う面の一部または全ては、重なり合い、電極間の電位傾斜および電流の方向は、向かい合う面に実質的に垂直である。対面する電極は、隣り合う電極とは異なる。隣り合う電極は、2つの電極の面が同じ平面内にあり、その電位傾斜および電流は、電極の面に実質的に平行にある。本発明は、対面する電極または隣り合う電極ならびに他の幾何学的配置で用いてよい。
【0018】
(i)印加電位を「オフにすること」は、開回路を作って電流を強制的にゼロにする(スイッチを開きまたは回路内に高いインピーダンスを導入する)ことを指す。これにより、二重層内で化学的濃度傾斜を形成しまたイオンを吸着するので電極間の電位を決定することができる。これは、電圧をゼロ・ボルトに設定することと同じではない。
(j)「電極抵抗」があると印加電圧間に差を生じて、電極での電気化学により実際に電圧を生じる。電極抵抗は、電極材料および電極に関連するコネクタの抵抗、電極の付着物などの要因の結果として生じる。
【0019】
(k)Vdropは、印加電圧と電極抵抗の結果、生じる実際の電圧との差である。
(l)「酸素保持能力」は、サンプルが酸素を溶解した形でまたは赤血球貯蔵器内に保持する能力を指す。
(m)「tmob」は、分析中に実験的に決定される時間で、特定の試験セル内の特定のサンプル内のメディエータの移動度を反映する。tmobは、印加電位をオフにした後で電極間の電位が予め決められた値まで減衰するのに要する時間である。
【0020】
(n)「予め決められた」は、この出願では、特定の計器または試験片または計器/試験片の組合せについて経験的に決められた量または値を指すのに用いられる。予め決められた量または値は、ユーザのニーズへの最適化を反映する。必要な信頼性レベルは、考慮するが、可能な最良の結果または100%の精度を達成する必要はない。
【0021】
2. 分析物(例えばブドウ糖)の決定
従来、ブドウ糖などの分析物の電気化学的検出は、ブドウ糖、ブドウ糖を酸化する酵素(ブドウ糖酸化酵素など)および酸化還元メディエータの存在/量について評価するサンプルを含む電気化学セルに電位を印加することにより達成している。図1に示すように、酵素は、ブドウ糖を酸化してグルコノラクトンおよび酵素の還元形を形成する。酸化メディエータは、還元酵素と反応して活性酸化酵素を再生しまた還元メディエータを作る。還元メディエータは、電極の1つで酸化され、他方の電極での反応を減らすことにより電気化学的平衡を保持して、測定可能な電流を生じる。測定電流は、サンプル内のブドウ糖の量に関係する。かかるシステム内のブドウ糖濃度を決定するには、種々の周知の方法がある(例えば、米国特許第6,284,125号、第5,942,102号、第5,352,351号、および第5,243,516号などを参照。これらを参照によってここに援用する)。
【0022】
図2は、ブドウ糖を検出するために電気化学的試験片に電位を印加した後の電流の理論的プロットを時間の関数として示す。試験片は、対面する作用電極および対向電極を有し、電極の間隔は、非常に小さいので、電極間のメディエータ/電荷キャリアのリサイクリングが起こる。すなわち、残りの分析物の存在が観察されるかどうかに無関係に、電極でのメディエータの酸化および還元から往復電流が生じる。電流トレースは、電位を印加した直後の初期電流21を図の時間尺度で示す。この電流は、二重層の初期充電と外部の酸化還元活性種の消費に関連する。その後で電流は、減少する。なぜなら、電流は、メディエータが溶解した後に作用電極(試薬は、製作のときに堆積されている)から対向電極に拡散することに依存するからである。
【0023】
この低電流の継続時間(矢印20で示す)は、メディエータが溶解する速度、電極間の距離およびメディエータが対向電極に到達するまでに移動しなければならない有効距離およびメディエータの移動度に依存する。メディエータの移動度は、メディエータ自体の特性(すなわち、拡散係数)であるが、ヘマトクリットや粘度などの他のサンプル特性にも依存する。電流が減少する期間20の後、電流は、ピーク電流22まで急速に上昇し、次に水平域電流23まで徐々に減少する。ブドウ糖の決定に用いる種々の方法は、この電流プロフィールに沿う種々の時点で測定を行う。例えば、米国特許第5,942,102号は、水平領域での電流を測定する。米国特許第5,243,516号、第5,352,351号および第6,284,125号に記述されているように、点22と23の間の領域でのコットレル分析を用いてもよい。本発明では、電流測定を用いてブドウ糖または他の分析物の濃度を決定するのに任意の時点を用いてよい。
【0024】
以下に説明する実施の形態では電荷の充電の測定は、電圧を二度目に印加するときに行うが、ブドウ糖またはその他の分析物の測定は、最初に電圧を印加しているときに行ってもよいし、または電圧を二度目に印加した後に測定した信号に基づいて行ってもよい。
サンプル内のブドウ糖またはその他の分析物の決定は、他の電気化学的方法を用いて行ってもよい。これらの中には、例えば、米国特許第6,251,260号(これを参照によってここに援用する)に記述されている電位差測定法や、例えば、米国特許第6,299,757号(これを参照によってここに援用する)に記述されている電量分析などがある。
【0025】
3. 二重層静電容量の決定
本発明は、二重層静電容量の決定を用いて、電気化学的試験片内に導入されたサンプルの容量が十分かどうか判断する。二重層静電容量の決定には、電流と電圧の変化とを時間の関数として知る必要がある。これらの値は、二重層の充電中または放電中に得ることができる。また電圧の変化は、電圧の大きな単一ステップの変化として(この場合は、積分静電容量が得られる)または電圧の瞬時の変化を時間の関数として(この場合は、微分静電容量が得られる)見ることができる。したがって、二重層静電容量は、図13Aおよび図13Bに要約されている3つの方法のいずれかを用いて決定することができる。図13Aは、電荷の放電から静電容量を決定する方法を要約し、図13Bは、電荷の充電から静電容量を決定する方法を要約する。
【0026】
A. 電荷の放電/積分静電容量
図3は、印加電圧Vappおよび電極間の電位差Velectを時間の関数として示す。最初に、或る一定の印加電圧と或る一定の電極電圧があり、第1の近似として、これらの2つの電圧は、同じである。時刻tswitchに印加電圧をオフにする。この時点で、Velectは減衰を開始する。予め選択されたしきい値電圧に達するまで、この減衰を観測し、時刻tthresholdに注目する。積分静電容量は、次の式で与えられる。
Cint=IΔt/ΔV
【0027】
本発明の1つの実施の形態では、この式の中のIは、tswitchの直前の電流である。これは、電圧をオフにする前のtswitchに十分近い時刻の値であるから、観測した電流は、電圧をオフにする直前の電流を表す。測定時刻とtswitchとの実際の時間差は、10ミリ秒から500ミリ秒程度である。特にtswitchが水平領域に入っていれば、電流は、変化したとしてもごく緩やかである。ΔVは、最初のVelectからの電圧降下であり、簡単なモデルでは、Vappとしきい値電圧Vthresholdとの差に等しいと考えてよい。Δtは、tthresholdとtswitchとの差である。この方法で決定される静電容量は、各電極または液体サンプルで濡れて二重層が形成された優勢な電極の表面積に関係する。
【0028】
tswitchの直前の電流に基づくIの単一の値を用いるのは、近似であるが、tswitchになるのが水平領域に達した後であれば、Iの変化が小さいので実質的に有効である。しかし、より高い精度が望ましい場合、またはIがtswitchからtthresholdまでの時間間隔にわたって大幅に変化するときにtswitchがある場合は、一層、厳密な方法でIを決定するのが望ましいことがある。tswitchからtthresholdまでの間、電流は、実際には流れないが、印加電圧が保持された場合にtthresholdでIが取り得る値Ithresholdは、線形モデル、コットレル方程式などの減衰モデルへのフィットまたはtswitchより前に観測された挙動から何らかのの他の外挿など用いて推定することができる。この場合は、IswitchとIthresholdの中間のIの値または減衰モデルの数学的積分を適当に用いてCintを決定することができる。
【0029】
Vthresholdの値は、Vappの値ならびに減衰の予想される時間コースに基づいて決定する。VthresholdがVappの大部分である場合は、測定される差が小さいので誤差が大きい。また、後で説明するが、炭素電極などの抵抗性電極を用いる場合は、電極抵抗による初期電圧降下Vdropがあり、Vthresholdは、Vapp−Vdropより小さくなければならない。他方で、Vthresholdがあまり小さい場合は、測定に要する時間が長くなり、ユーザの立場からは、一般に受け入れにくい。これらの2つの観点のバランスをとるため、炭素電極の場合は、VthresholdはVappより少なくとも30mV低い値、また60mVより低くない値、好ましくは120mVより低くない値、またより好ましくは少なくとも150mVが適当である。1つの特定の実施の形態では、ブドウ糖の測定に炭素電極を用いるとき、Vappは、300mVであり、Vthresholdは、150−240mVの電圧値を選択する。
【0030】
B. 電荷の放電/微分静電容量
積分静電容量を決定する代わりに、放電サイクルから微分静電容量を決定することができる。積分静電容量の決定の場合と同様に、印加電位をtswitchでオフにする。その後の測定時刻に、電圧減衰の傾斜の瞬時測定値を決定する。測定を行う時刻は、所定の試験片設計の標準性能に基づいてtswitch後の予め決められた時間間隔(例えば、tswitchの後の1msecから500msecの間)のときでよい。または、用いる試験片の性能に基づいて、上に説明したVthresholdで時間測定を行うのと同様な方法で決定してよい。この減衰の傾斜の観測から値dV/dtが得られる。これを電流測定値と組み合わせると、方程式
Cdif=I/(dV/dt)
によりCdifの値が得られる。
【0031】
この方程式のIの値は、上に述べたtswitchの直前の電流の値でよく、または上に述べた任意のモデルを用いた測定時の電流についての推定値でよい。
Cintに比べてCdifの決定の方が優れている1つの点は、二重層静電容量が静電容量を測定したときの電圧に依存するということである。Cdifを用いると毎回同じ電圧での瞬時測定値が得られるので、この変動の原因を除くことができる。
【0032】
C. 電荷の充電/積分静電容量
図4は、tthresholdに到達した後に電極に電位を再印加したときの電流を時間の関数としてプロットしたものを示す。電位を再印加した後に第2の電流スパイク41があり、続いて電流値は、印加電位をオフにする前からの推定電流に本質的に等しくなるまで減衰する。電流曲線の下の斜線の面積は、信号またはその代表的な部分を積分し、または三角近似を用いることにより決定することができる。これは、二重層の充電を表す。理論的には、上のAで測定した電荷の放電と、この電荷の充電とは、同じでなければならない。実際には実験的な差が観測されるが、電荷の充電は、やはり別個に用いてよく、または部分的充填の評価において電荷の放電の確認として用いてよい。
【0033】
本発明の1つの実施の形態では、再印加電圧は、最初の印加電圧と同じである。しかし、同じ拡散制限条件を再び確立するのであれば、再印加電圧は、最初の印加電圧より大きくても小さくてもよい。
電流測定を行う時間間隔は、静的に(すなわち、試験片の設計に基づいて固定的に)または動的に決めてよい。測定時間を静的に定義する場合は、電流スパイクの時間(例えば、1msecから10msec)後に電流の測定を開始して回路の応答/飽和の影響を除くことが望ましい。この場合、測定の終了時刻は、予め決められた時間(例えば、100msecから1000msec)後である。
【0034】
準動的方法では、終了時刻は、放電段階からの倍数(例えば、整数倍)に設定してもよい。したがって、測定間隔は、ΔtまたはΔdtに等しくてよい。
完全に動的な方法では、測定時間間隔は、測定電流の特性に基づいて決める。この場合は、予め決められた過剰な電流の降下(Iobs−Iswitch)(例えば、50%より多い、好ましくは75%、更に好ましくは、少なくとも90%)に達するまで測定を行ってよい。ただし、Iobsはtswitch後の任意の所定の時刻に観測される電流である。また、測定は、電流がIswitchに近いレベル(例えば、1.1xIswitch)に減少するまで続けてもよい。
【0035】
4. 電極トラック抵抗の補正
炭素電極を持つ電気化学的試験片の実際の電圧プロフィールを測定すると、印加電位をオフにした直後に図5に示すような電圧降下が観測される。この降下の大きさVdropは、複数の要因(電極材料および電極に関連するコネクタの抵抗、電極の付着物など)の関数である。このように、電圧降下は、炭素電極の方が金などを材料とする低抵抗電極の場合より大きい。本発明の実施の形態では、Vdropの大きさを複数の方法のいずれかで考慮に入れる。
【0036】
電荷の放電から積分静電容量を決定する場合は、上に述べたようにVthresholdの選択は、Vdropに依存するのがよい。第2のより正確なΔVの表示には、次式を用いる。すなわち、
ΔV=(Vapp−Vdrop)−Vthreshold
電荷の充電から積分静電容量を決定する場合は、第2の印加電圧を第1の印加電圧プラスVdropに設定すると、数学的に都合がよい。なぜなら、実際に印加して新たに二重層を充電する電圧であるΔVを第1の印加電圧と電位を再印加したときのしきい値電圧との差として測定せずに近似することができるので、測定するパラメータは、減少時間および電流だけだからである。
微分静電容量を決定するとき、測定を行う電圧は、((Vapp−Vdrop)−予め決められた量)として記述してよい。
【0037】
5. 温度の補正
本発明の1つの実施の形態では、温度を決定する手段を計器または試験片が備える場合は、二重層静電容量の値をサンプルの温度について補正する。温度を補正した二重層静電容量CT−corrは次の式で表すことができる。
Ct−corr=CDL−T−correction
ただし、CDLは上に概説した方法のいずれかにより決定される二重層静電容量である。
【0038】
温度補正項T−correctionは、共に譲渡された2005年4月15日出願の米国特許出願第10/907790号に記述されているものと同じ形を有する。この特許出願を参照によってここに援用する。ただし、前記出願では補正項は、分析物濃度測定値を補正するのに用いられている。
【0039】
温度補正項は、酸素保持能力の測度とサンプルの温度測定値との組合せを与える任意の方法により評価してよい。本発明者は、測定した生の分析物濃度と酸素保持能力の測度とを対比したグラフは、測定を行ったときの温度に依存するが、通常の値の範囲ではpO2およびブドウ糖濃度には無関係な傾斜を持つ直線であることを発見した。pO2またはブドウ糖濃度が変化すると、グラフの線は、更にずれるが、傾斜は、変らない。温度の関数である傾斜のプロットを用いて、次式のように所定の温度Tの温度補正項に組み入れられる傾斜(S)および切片(I)パラメータを定義してよい。
温度補正項=定数x[(SxT)+I]xOCC
ただし、OCCは、ヘマトクリットなどの酸素保持能力の測度であり、定数は、正または負の符号を持つ経験的に決まる係数である。
【0040】
温度補正係数の精度は、1つの温度で収集したデータの大集団と測定温度で収集したデータの限られた集団があるとき、測定温度で収集したデータから傾斜だけを決定し、全ての利用可能なデータから切片を決定することにより改善することができる。このように、標準較正データの大集団が利用可能な場合は、パラメータIは、試験片と計器との組合せについて確立された定数でよく、傾斜だけを実験的に決定すればよい。
【0041】
(a) 酸素保持能力の測度としてtmobを使用する。
本発明の1つの実施の形態では、メディエータの移動度の測度であるtmobを酸素保持能力の測度として用いる。tmobは、電位をオフにした後の電位傾斜の減衰中に決定する。電位の減衰は、観測した電位が減少して予め決められた値Vmobになるまで観測する。印加電圧が300mV程度のときは、50mV付近まで減少すると都合がよい。ただし、特定の実験的構成では47mVまたは48mVなどのやや小さな値を用いると、最適な結果が見つかることがある。一般にVmobは、0.025Vから0.1Vが適当である。例えば、250mVから300mVのVappでブドウ糖を決定するときは、Vmobは、25mVから100mV、好ましくは45mVから50mVの範囲が適当である。tmobは、tswitchの後で、この電圧に達するのに要する時間である。
【0042】
減衰の速さの測度を決定する他の方法を用いてもよい。例えば、電位の減衰の瞬時の傾斜を決定してよく、または予め決められた時間にわたる電圧の減少を用いてよい。また計器は、特定の時間窓を選択してV対log(t)またはln(t)の線形回帰を行って、特定の電圧までの時間であるtmobを見つけてよい。Vmobが選択された窓内に入らない場合は、この線形フィットに基づく予測を用いてよい。補正関数を決定するときに測定した減衰の値を考慮に入れる限り、特定の方法は、重要でない。
【0043】
(b) 酸素保持能力の測度として他の方法を使用する。
米国特許第6,287,451号および第6,475,372号(これらを参照によってここに援用する)は、使い捨て試験片内のヘマトクリットの決定のための電気化学的方法を開示している。本発明の加法補正とは対照的に、ヘマトクリット測定は、乗法補正に用いられる。しかし、上に述べたようにtmobを両方のタイプの補正に用いたのと同様に、この測定を両方のモードで用いてよい。これはヘマトクリットが赤血球の測度であり、赤血球は、酸素保持能力を有するからである。
【0044】
本発明の酸素保持能力の測度として任意のタイプのヘマトクリット測定を用いるために、一連の較正測定を行って複数の温度で、それぞれ未補正の分析物濃度およびヘマトクリットのデータ・ポイント対を得る。各温度でデータ・ポイントを直線モデルにフィットさせて直線の傾斜を決定する。上に述べたように、この傾斜は、ブドウ糖およびpO2とは無関係なので、これらのパラメータは、実験を通して同じ値に保つ必要はあるが、特定の値は、重要でない。次に、得られた傾斜/温度のデータ・ポイント対を直線モデルにフィットさせて傾斜と切片とを決定し、上に述べたように加法補正係数内に組み込む。
或る場合には、直線モデルで十分なのは、データの狭い範囲だけである。二次指数方程式などの非線形項を項に導入することにより、広範囲の温度または酸素保持能力について改善された加法補正係数を決定してよい。
【0045】
6. 電流測定モードから電位差測定モードへの動的切換え
本願では、計器は、最初、電流測定モードで動作し、印加電位をオフにした後、電位差測定モードで動作する。電位差測定モードで動作中の測定の質および一貫性を強化するため、電気化学的試験セル内に酸化および還元メディエータの安定な拡散傾斜が形成された後に、はじめて電位差測定モードに切り換えることが望ましい。一般に、電位差測定法は、サンプルのバルク内に「十分深く」延びる安定なプロフィールを濃度傾斜が形成した後に任意の点で同じ安定な読みの値を与える。
【0046】
安定な拡散傾斜を達成する機会を最大にするには、スイッチを入れて測定サイクルを開始した後に或る時間をかけるだけでよい。この時間は、所定の試験片の設計について経験的に決定されるが、一般に4秒から8秒程度でよい。しかし、計器が種々の異なるサンプル特性に適応できるようにするには、tswitchを動的に決定してよい。
本発明の1つの実施の形態では、tswitchは、tpeak(図2のピーク22の時刻)の決定された値から、或る時間間隔(例えば、2秒から3秒)をtpeakのこの決定された値に加えることにより、動的に決定する。
【0047】
本発明の別の実施の形態では、tswitchは、tpeakが小さいときにtswitchの或る固定値を用いて、またtpeakがより大きいときにtpeakプラス或る予め決められた量を用いて動的に決定する。例えば、tswitchは、tpeakが1.5秒より小さいときに3.5秒という固定値を有してよく、またtpeakが1.5秒より大きいとき、tpeakプラス或る偏差(例えば、2秒)に等しくてよい。
更に別の実施の形態では、tpeakが通常より長い時に起こるという環境では第3の測定モードを確立する。この場合は、tpeakが予め決められたしきい値(例えば、5秒)より上で起こると、tswitchは、tpeakと加法補正係数(コットレル電流の傾斜から得られる予め決められた定数を用いる)との関数として適当に決める。
更に、tpeakの最大値を設定して、それより上ではエラー・メッセージを生成してよい。
【0048】
7. 本発明の装置
本発明の方法は、試験片を受けまた必要な電圧印加および信号処理を行う計器を備えていれば、対面する電極を有する任意の試験片で用いることができる。またかかる計器は、本発明の1つの態様を形成する。このように本発明は、電極を有する電気化学的試験片を受け、またその中に受けたときに電気化学的試験片に与えるサンプル内の分析物を決定する計器を提供する。この計器は、
(a) 電気化学的試験片を受けるスロットを有するハウジングと、
(b) ユーザから入力を受けまたユーザに結果を伝える通信手段と、
(c) 計器内に受けたサンプルを含む試験片上の二重層静電容量のDC決定を行い、決定した二重層静電容量と基準値とを比較し、二重層静電容量が基準値より低いことは、液体サンプルが電極の一部をカバーし、電気化学的試験片が部分的にだけ充填されていることとを示す手段と、
を備える。
【0049】
図6は、本発明に係る計器の外観を示す。この計器は、ハウジング61およびディスプレイ62を有する。ハウジング61は、使用するときに試験片を中に挿入するスロット63を有する。また、計器は、測定サイクルの開始を合図するボタン64を有してよく、または試験片の挿入またはサンプルの投与を検出する内部機構を有してよい。かかる機構は、この技術では周知であって、例えば、米国特許番号第5,266,179号、第5,320,732号、第5,438,271号および第6,616,819号に記述されている。これらの特許を参照によってここに援用する。本発明の計器内には、ボタン、LCDディスプレイなどのディスプレイ、RFや赤外線やその他の無線送信機、USBなどの有線コネクタ、ユーザから入力を受けまたユーザに結果を伝える並列または直列の接続構成手段があり、個別または種々に組み合わせて用いてよい。
【0050】
図7は、計器と試験片との接続を示す内部図を示す。図に示すように、試験片71は、接点72,73を有し、これにより電極は、計器の接点74,75と電気的に接触する。
二重層静電容量のDC決定を行う手段は、プログラムされたマイクロ・プロセッサに関連する回路板上などに回路を備え、マイクロ・プロセッサは、回路と相互作用して、前に述べたように電流測定モードと電位差測定モードとの間で必要に応じて切り換え、また電流および電圧を観測する。電流を測定する電流測定動作モードと電極間の電位差を測定する電位差測定動作モードとの間で切り換えるのに適した機器は、2004年5月30日出願の米国暫定出願第60/521,592号および2005年3月25日出願の第60/594,285号に記述されており、これらを参照によってここに援用する。
【0051】
図8は、本発明の計器の1つの実施の形態の電気回路図を示す。しかし、電圧を印加また切り換える点において同じ結果を達成する他の構成要素を用いてもよいことが認識される。作用電極80は、スイッチ82を含むコネクタを介して演算増幅器81に接続し、また演算増幅器83に接続する。対向電極84は、演算増幅器85、86に接続する。演算増幅器83、85、86は、高インピーダンス入力増幅器である。分析物を決定するために電流測定モードで動作中は、演算増幅器81に電圧V2が印加され、演算増幅器85に電圧V1が印加される。ただし、V2は、V1より大きい。電極間で得られる電位差により、分析物の量に関係する電流が生成される。この電流を出力87で観測して、分析物の存在または量の表示に変換してよい。スイッチ82を開いて開回路を作って電位差の印加を停止すると、電流は、止まり、増幅器86の出力は、対向電極の電位になり、増幅器83の出力は、作用電極80の電位になる。演算増幅器83と演算増幅器86の出力の差は、化学ポテンシャルの減衰を示す。上に述べた方法に従って、これを処理して部分的充填の表示を生成する。
【0052】
図9は、2つだけの演算増幅器と多数のスイッチを用いる回路の別の形態を示す。作用電極80は、入力電圧V2を受ける演算増幅器81に接続する。対向電極84は、2つのスイッチ経路の一方を介して高入力インピーダンス演算増幅器90に接続する。入力電圧V1は、第3のスイッチ経路を介してこの回路に接続する。スイッチ91、93が閉じてスイッチ92が開くと、回路は、電流測定モードで動作し、95の出力は、電極の電流を反映する。スイッチ92が閉じてスイッチ91、93が開くと、回路は、電位差測定モードで動作し、95の出力は、対向電極の電位になる(図8の増幅器86と同様)。このように、95の出力は、電極間の電位差を間接的に反映する。電極間の実際の電位差は、95の出力と演算増幅器81の出力(作用電極80)との差である。
本発明の計器では、二重層静電容量の測定値が予め決められたレベルより低いときは、充電が不十分であることを示すユーザへの適当な信号が生成される。
【0053】
8. 本発明を用いる品質管理試験
用いている電気化学的試験片の部分的充填を示す他に、上に述べた二重層静電容量の測定値は、スクリーン印刷などのプロセスを用いて作られた電極の品質も示す。印刷の質が悪いか、または一貫性がない場合は、観測した二重層静電容量の間の変動は、印刷品質が一貫している良いロットのものより大きい(図12および例4を参照のこと)。このように、本発明の別の態様は、電気化学的試験片のロットの品質検査の方法を提供する。この方法は、
(a) そのロットから複数の試験片を得るステップと、
(b) サンプルを各試験片に与えるステップと、
(c) サンプルが存在する試験片の二重層静電容量を測定するステップと、
(d) 測定した二重層静電容量の変動を決定するステップとを含む。予め定義されたしきい値を超える変動は、試験片の品質に欠陥があることを示す。
【0054】
「複数の」試験片は、ロット全体を十分代表するだけの数でなければならないが、破壊試験であるから経済的に考えてロットの余り大きな部分を用いてはならない。更に、この試験のための試験片は、用意したロット内の異なる時のものから取り、多重試験片のシートが作られる場合は、シートの異なる部分から切り取ることが望ましい。
試験片に与えられるサンプルは、血液サンプルのことがある。しかし、二重層静電容量の測定では化学ポテンシャルの傾斜を作りさえすればよいので、電荷キャリア(例えば、ヘキサシアノ鉄(II)酸塩およびヘキサシアノ鉄(III)酸塩の混合物)を含む対照溶液が好ましい。
測定した二重層静電容量の「変動性」は、任意の許容できる数理解析を用いて決定してよい。例えば、変動性は、測定値の範囲または測定値の標準偏差で示してよい。
【0055】
9. 例
本発明について、以下の非制限的な例を参照して更に説明する。これらの例では、対面するスクリーン印刷の炭素電極、625ナノリットルの名目サンプル容量および観察窓を有する電気学的試験片を用いて測定を行った。観察窓を通してサンプルを見ることができないときは、試験片は、部分的に充填されていると考えた。試験に用いた血液サンプルはバキュテイナ(Vacutainer)(TM)チューブを用いて新たに採取し(8時間以内に)、EDTAを抗凝血剤として用いて安定させた。既知のヘマトクリットおよびブドウ糖濃度の正常な血液サンプルを遠心分離し、プラズマを十分除去してhct65サンプルを残し、次に、このサンプルとプラズマとを適当な量だけ再結合して低ヘマトクリットを作ることにより、種々のヘマトクリットを持つ血液サンプルを準備した。これらのサンプルは、全て単一の血液サンプルから迅速に準備したので、全てが同じプラズマ・ブドウ糖濃度を有した。遠心分離を行う前に1Mブドウ糖原液を血液に加えることにより異なるブドウ糖濃度を生成した。
【0056】
例1
電気学的試験片に300mVを印加して、水平域電流が観察されるまで保持した。次に、印加電圧をオフにして作用電極と対向電極との電位差を測定した。対向電極に対する種々の電位で、種々のブドウ糖濃度(3.17mMから16.5mM)およびヘマトクリット(20、40、または60)を有する複数のサンプルについて微分静電容量を決定した。その結果の概要を図10に示す。x軸は、電位差を示すので、グラフの右の方は、低い電圧降下で作った測定を反映することに注意すべきである。
図10に示すように、曲線は、濃度またはヘマトクリットに規則的には依存しないが、所定のサンプル/試験片についての微分静電容量は、測定したときの電位に従って大幅に変動する。また、グラフは、電圧によるCdifの変化が小さい領域100を示しており、Cdifの決定のための測定は、この電圧差の領域で行うのが好ましい。
【0057】
例2
2.79mMまたは20.2mMのブドウ糖を有する血液サンプルを持つ電気化学的試験片に水平域電流が観測されるまで300mVを印加した。次に印加電圧をオフにして、二重層を250mVから150mVまで放電したときに通過した電荷を測定した。次に300mVを再印加して、二重層を250mVまで再充電したときに通過した電荷を観測した。充電電流と放電電流との関係は、ゼロ切片を持つ実質的に直線であることを観察した。しかし、再充電において決定された電荷は、放電の場合より小さく、これは、二重層の再充電を溶液と完全に平衡させるのに100msという測定時間は十分でなかったことを示す。観測した電荷の量は、ブドウ糖濃度とは無関係であった。ただし、濃度が高いとき減衰は、非常に速かった。
【0058】
例3
種々のヘマトクリット・レベル(20、40、または60)およびブドウ糖濃度(3.87mM、10.2mM、または20.1mM)を有する血液サンプルを持つ電気化学的試験片に、水平域電流が観察されるまで300mVを印加した。次に印加電圧をオフにして、Velectrodeより40mV下で微分静電容量を決定した。観察窓の中のサンプルの観察に基づいて試験片を充填または部分的充填と指定した。図11は、種々の試験片について測定した微分静電容量を示す。図11では、ブドウ糖濃度を線の種類(実線=3.87mM、破線=10.2mM、一点鎖線=20.1mM)で示し、ヘマトクリットをシンボルの形(ひし形=20、三角形=40、四角形=60)で示す。黒塗りのシンボルは、充填された試験片を示し、白抜きのシンボルは、部分的充填を示す。図11の水平線は、1.7μFに設定された微分静電容量のしきい値レベルで、この試験片のサンプルの充填度を評価するのに用いた。図に示すように、充填されたサンプルの静電容量は、全てこのしきい値より上であったが、部分的充填の場合は、3つだけが間違って許容された。
しきい値の設定は、部分的充填を許容するか、または他の点では許容できるサンプルを除外するかの考え方に依存することを当業者は、認識する。
【0059】
例4
本発明の方法の頑強性を評価するため、同じメーカから得た上に述べたものと同じ設計の試験片の異なる10ロットを評価した。図12は、10ロットの結果について、50mVまで減衰したときの微分静電容量対時間をプロットしたものを示す。このグラフから2つのことが観察される。第1に、10ロットの中の8ロットについては、微分静電容量は、ほぼ一定である。ただし、50mV降下に要する時間は、変動する。この結果から見ると測定時間を動的に決定するのが良いことになるが、この技術は、一般に頑強性を有することを示す。また他の8ロットとは異なる2ロットは、ほぼ一定レベルの静電容量であることを示し、50mVまでの時間の変動は、非常に小さい。これらのロットの炭素電極は、異なる方法を用いてスクリーン印刷されたと決定された。このように、部分的充填を示す静電容量がカットオフされることは一貫した製作技術でもロット毎の変動があることを示すが、製作技術が変ったときは、セットし直す必要がある。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】従来の電流測定方式のブドウ糖検出器内で起こる電子移動反応を示す。
【図2】ブドウ糖を検出するために電気化学的試験片に電位を印加した後の電流の理論的プロットを時間の関数として示し、試験片は、対面する作用電極と対向電極とを有し、電極の間隔は、電極間にメディエータのリサイクルが起こるようにあけている。
【図3】印加電圧Vappと電極間の電位差Velectとのプロットを時間の関数として示す。
【図4】tthresholdに達した後に電極に電位を再印加したときの電流のプロットを時間の関数として示す。
【図5】電極抵抗の結果起こる電圧降下を示す電圧対時間のプロットを示す。
【図6】計器の外観を示す。
【図7】試験片と計器内のコネクタとの接続を示す。
【図8】電流測定モードと電位差測定モードとを切換える回路図を示す。
【図9】電流測定モードと電位差測定モードとを切換える回路図を示す。
【図10】微分静電容量と電位との関係を示す。
【図11】充填された試験片と部分的充填された試験片の測定された微分静電容量を示す。
【図12】微分静電容量のロット毎の変動を50mVまでの時間の関数として示す。
【図13A】本発明に係る二重層静電容量を決定する方法の概要を示す。
【図13B】本発明に係る二重層静電容量を決定する方法の概要を示す。
【技術分野】
【0001】
本願は、電気化学的試験片内の部分的充填を検出する方法と、かかる方法に用いられる計器と計器/試験片の組合せとに関するものである。
【背景技術】
【0002】
小型の使い捨て電気化学的試験片は、糖尿病による血液ブドウ糖の監視にしばしば用いられる。かかる試験片は、関心のある他の生理学的薬物や乱用の物質の検出にも用いることができる。一般に、試験片は、少なくとも2つの電極と実行する試験のための適当な試薬とを含み、1回使用の使い捨て要素として製作される。試験片は、再使用可能な計器内に挿入する前または後に血液や唾液や尿などのサンプルと結合させる。計器は、試験片からの電気化学的信号を検出し、処理して、試験片により決定される分析物が存在するかしないかまたはその量を表示する機構を含む。
【0003】
電気化学的試験片内では小容量サンプルを用いることが一般に望ましい。小容量試験片を用いるときに起こる1つの問題は、部分的充填状態が発生することである。すなわち、試験片に導入されたサンプルの量が不十分なために、読取り値に誤差を生じる。この部分的充填という問題に対して種々の解決法が提案されている。
【0004】
多くの場合、この問題の解決には追加の電極を用いる。例えば、米国特許第4,929,426号は、分析室が充填されると、サンプルがその上を流れるインピーダンス電極の使用を開示し、米国特許第5,582,697号、米国特許第6,212,417号および米国特許第6,299,757号は、全て充填を検出するために用いることができる第3の電極の使用を開示している。米国特許第6,743,635号は、別個の充填検出アノードおよびカソードを含む4電極方式を開示している。米国特許第5,997,817号は、サンプルが透かして見える窓と、サンプルが十分あることを示す「充填目標」線とを備える試験片を開示している。
【0005】
米国特許第6,856,125号は、サンプル容量を決める1つの方法として静電容量の測定を開示している。機器は、サンプルを含むバイオ・センサ・セルにAC信号を与える正弦波発生器、電流・電圧変換器、移相器、方形波発生器、同期復調器およびバイオ・センサ・セル全体の有効静電容量に比例する信号を生成する低域フィルタを含む。この信号は、サンプル容量に比例する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
電気化学的試験片は、一般に使い捨てであって、糖尿病患者は、毎日、複数の試験片を用いることがあるので、各品目のコストを抑えることが望ましい。したがって、試験片または計器内の要素の数を(したがって、試験片および計器の製作コストを)あまり増やさずに、サンプル容量が十分であることを確認する装置を有することが望ましい。かかるシステムは、試験計器内で自動化されて、ユーザによる観察や判断に依存せずにすめば更に望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、サンプルが十分であることを判定する優れた方法を提供するもので、この方法は、電極間で充電および放電する二重層の測度を用いて、サンプルを与えた後の試験片の二重層静電容量を決定する。二重層静電容量は、サンプルで濡れた電極の面積に比例するので、サンプル室が充填された程度を直接、示す測度になる。本発明では、電極と、電極間に置かれた液体サンプルとを有する電気化学的試験片内の部分的充填を検出することができる。この方法は、
(a) サンプルを電気化学的試験片に導入するステップと、
(b) 試験片の電極間に電位差を印加するステップと、
(c) 印加電位をオフまたオプションで第2の電位を印加するステップと、
(d) 生成される電流を観測し、観測した電流から電極間の二重層の充電または放電を決定するステップと、
(e) 印加電位をオフにした後の電圧変化を観測して、測定した二重層の充電または放電と観測した電圧変化から試験片の二重層静電容量を決定するステップと、
(f) 決定した二重層静電容量と基準値とを比較し、二重層静電容量が基準値より小さい場合、液体サンプルが対面する電極の一部をカバーし、電気化学的試験片が部分的にだけ充填されていることとを示すステップと、
を含む。
【0008】
本発明の1つの実施の形態では、二重層放電を以下のステップにより測定する。すなわち、(1)電極間に電位を印加し、(2)電極間の印加電位を或る時刻tswitchにオフにし、(3)電極間の電位差の減衰を観測して電位が或るしきい値まで減衰するのに要する時間tthresholdを識別し、(4)tswitchからtthresholdまでの間に放電した二重層電荷の量を決定する。
【0009】
本発明の別の実施の形態では、二重層充電を以下のステップにより測定する。すなわち、(1)電極間に第1の電位を印加し、(2)電極間の印加電位を或る時刻tswitchにオフにし、(3)電極間の電位差の減衰を観測して電位が或るしきい値まで減衰するのに要する時間tthresholdを識別し、(4)tthresholdに電極間に第2の電位を印加して電流スパイクを生成し(5)電流スパイクの下の面積で反映される二重層充電の量を決定し、(6)二重層充電の量および時刻tswitchの電流から二重層静電容量を決定する。
【0010】
本発明は、また電気化学的試験片に関連して用いられる計器を提供する。この計器は、電位を印加し、電流を観測し、電位をオフにし、電位をオフにした後の電位の減衰を観測する回路を含む。この計器は、更に電位を再印加した後の電流を観測する回路を含んでよい。計器内のプロセッサは、生成された情報を用いて二重層静電容量を決定し、二重層静電容量の値が不十分である場合に測定サイクルを中断する。また、この計器は、サンプル内に存在する分析物(例えば、ブドウ糖)の量を測定する回路と、分析物の量またはサンプル容量が不十分なために試験を終了することをユーザに伝える手段とを含む。
【実施例】
【0011】
1. 定義
本願の明細書およびクレームは、次の定義を適用する。
(a)「分析物」は、サンプル内に存在する関心のある物質を指す。本願の例では、分析物としてブドウ糖を用いるが、本発明は、分析物の種類にも量にも無関係である。したがって、ブドウ糖検出装置への応用は、単に1つの特定の制限のない実施の形態と見なすべきである。
【0012】
(b)「分析物の決定」は、サンプルを評価する定性的、半定量的および定量的プロセスを指す。定性的評価は、結果が分析物がサンプル内に検出されたかどうかを示す。半定量的評価は、結果が分析物が或る定義されたしきい値より多く存在するかどうかを示す。定量的評価は、結果が存在する分析物の量を数値で示す。
【0013】
(c)「二重層」は、帯電層を指し、導体表面上のイオン吸着の結果、この層が導体/電解質界面に形成され、そのために導体内のミラー電荷を中和する局所的層が固体表面の近くに形成される。電位が印加されているかどうかに関わらず、液体サンプルが電極と接触して存在すると、電気化学的試験片内の各電極に二重層が形成される。しかし、二重層内の電荷の量は、電極電位の関数である。二重層構造は、本質的にコンデンサとして動作する。
【0014】
(d)「二重層静電容量」は、二重層の静電容量である。これは、式
Cint=IΔt/ΔV
で表すことができる積分静電容量か、または式
Cdif=I/(dV/dt)
で表すことができる微分静電容量でよい。ただし、Iは、電流、tは、時間、Vは、電圧である。測定された二重層静電容量は、一方の電極が優勢な場合がある。例えば、一方の電極の面積の方が実質的に大きいか、またはサンプル内の一方の電荷のイオンの吸着が他方の電荷のイオンより強い場合である。ブドウ糖試験片の場合は、正の電極が優勢であることが多い。なぜなら、負のイオン(例えば、塩化物イオン)は、容易に水和殻を失って二重層内に組み込まれるからである。これらの例で測定された二重層静電容量は、本発明の範囲内にある。ただし、一方の電極が優勢の場合は、充填の形は、優勢な電極の二重層静電容量が電気化学的試験片の充填状態を表すものであることに注意しなければならない。
【0015】
(e)「二重層充電」は、電位を印加した結果、二重層内に蓄積される電荷が増加するプロセスである。「電極での二重層充電」という表現は、両方の電極または優勢な電極での充電を指す。
(f)「二重層放電」は、印加電位をオフにした結果、二重層内に蓄積された電荷が減少するプロセスである。「電極での二重層放電」という表現は、両方の電極または優勢な電極での放電を指す。
【0016】
(g)「電気化学的試験片」は、少なくとも2つの電極を有して、サンプル内の分析物の決定のために必要な任意の試薬が電極の間に置かれる試験片を指す。好ましい実施の形態では、電気化学的試験片は、1度、使用したら使い捨てにされ、また別個の再使用可能な計器に接続するコネクタを有する。この計器は、電位を印加し、信号を分析し、結果を表示する電子回路を含む。
【0017】
(h)「対面する電極」は、互いに平行に配置されるが別個の平面内にある一対の電極である。一対の対面する電極の向かい合う面の一部または全ては、重なり合い、電極間の電位傾斜および電流の方向は、向かい合う面に実質的に垂直である。対面する電極は、隣り合う電極とは異なる。隣り合う電極は、2つの電極の面が同じ平面内にあり、その電位傾斜および電流は、電極の面に実質的に平行にある。本発明は、対面する電極または隣り合う電極ならびに他の幾何学的配置で用いてよい。
【0018】
(i)印加電位を「オフにすること」は、開回路を作って電流を強制的にゼロにする(スイッチを開きまたは回路内に高いインピーダンスを導入する)ことを指す。これにより、二重層内で化学的濃度傾斜を形成しまたイオンを吸着するので電極間の電位を決定することができる。これは、電圧をゼロ・ボルトに設定することと同じではない。
(j)「電極抵抗」があると印加電圧間に差を生じて、電極での電気化学により実際に電圧を生じる。電極抵抗は、電極材料および電極に関連するコネクタの抵抗、電極の付着物などの要因の結果として生じる。
【0019】
(k)Vdropは、印加電圧と電極抵抗の結果、生じる実際の電圧との差である。
(l)「酸素保持能力」は、サンプルが酸素を溶解した形でまたは赤血球貯蔵器内に保持する能力を指す。
(m)「tmob」は、分析中に実験的に決定される時間で、特定の試験セル内の特定のサンプル内のメディエータの移動度を反映する。tmobは、印加電位をオフにした後で電極間の電位が予め決められた値まで減衰するのに要する時間である。
【0020】
(n)「予め決められた」は、この出願では、特定の計器または試験片または計器/試験片の組合せについて経験的に決められた量または値を指すのに用いられる。予め決められた量または値は、ユーザのニーズへの最適化を反映する。必要な信頼性レベルは、考慮するが、可能な最良の結果または100%の精度を達成する必要はない。
【0021】
2. 分析物(例えばブドウ糖)の決定
従来、ブドウ糖などの分析物の電気化学的検出は、ブドウ糖、ブドウ糖を酸化する酵素(ブドウ糖酸化酵素など)および酸化還元メディエータの存在/量について評価するサンプルを含む電気化学セルに電位を印加することにより達成している。図1に示すように、酵素は、ブドウ糖を酸化してグルコノラクトンおよび酵素の還元形を形成する。酸化メディエータは、還元酵素と反応して活性酸化酵素を再生しまた還元メディエータを作る。還元メディエータは、電極の1つで酸化され、他方の電極での反応を減らすことにより電気化学的平衡を保持して、測定可能な電流を生じる。測定電流は、サンプル内のブドウ糖の量に関係する。かかるシステム内のブドウ糖濃度を決定するには、種々の周知の方法がある(例えば、米国特許第6,284,125号、第5,942,102号、第5,352,351号、および第5,243,516号などを参照。これらを参照によってここに援用する)。
【0022】
図2は、ブドウ糖を検出するために電気化学的試験片に電位を印加した後の電流の理論的プロットを時間の関数として示す。試験片は、対面する作用電極および対向電極を有し、電極の間隔は、非常に小さいので、電極間のメディエータ/電荷キャリアのリサイクリングが起こる。すなわち、残りの分析物の存在が観察されるかどうかに無関係に、電極でのメディエータの酸化および還元から往復電流が生じる。電流トレースは、電位を印加した直後の初期電流21を図の時間尺度で示す。この電流は、二重層の初期充電と外部の酸化還元活性種の消費に関連する。その後で電流は、減少する。なぜなら、電流は、メディエータが溶解した後に作用電極(試薬は、製作のときに堆積されている)から対向電極に拡散することに依存するからである。
【0023】
この低電流の継続時間(矢印20で示す)は、メディエータが溶解する速度、電極間の距離およびメディエータが対向電極に到達するまでに移動しなければならない有効距離およびメディエータの移動度に依存する。メディエータの移動度は、メディエータ自体の特性(すなわち、拡散係数)であるが、ヘマトクリットや粘度などの他のサンプル特性にも依存する。電流が減少する期間20の後、電流は、ピーク電流22まで急速に上昇し、次に水平域電流23まで徐々に減少する。ブドウ糖の決定に用いる種々の方法は、この電流プロフィールに沿う種々の時点で測定を行う。例えば、米国特許第5,942,102号は、水平領域での電流を測定する。米国特許第5,243,516号、第5,352,351号および第6,284,125号に記述されているように、点22と23の間の領域でのコットレル分析を用いてもよい。本発明では、電流測定を用いてブドウ糖または他の分析物の濃度を決定するのに任意の時点を用いてよい。
【0024】
以下に説明する実施の形態では電荷の充電の測定は、電圧を二度目に印加するときに行うが、ブドウ糖またはその他の分析物の測定は、最初に電圧を印加しているときに行ってもよいし、または電圧を二度目に印加した後に測定した信号に基づいて行ってもよい。
サンプル内のブドウ糖またはその他の分析物の決定は、他の電気化学的方法を用いて行ってもよい。これらの中には、例えば、米国特許第6,251,260号(これを参照によってここに援用する)に記述されている電位差測定法や、例えば、米国特許第6,299,757号(これを参照によってここに援用する)に記述されている電量分析などがある。
【0025】
3. 二重層静電容量の決定
本発明は、二重層静電容量の決定を用いて、電気化学的試験片内に導入されたサンプルの容量が十分かどうか判断する。二重層静電容量の決定には、電流と電圧の変化とを時間の関数として知る必要がある。これらの値は、二重層の充電中または放電中に得ることができる。また電圧の変化は、電圧の大きな単一ステップの変化として(この場合は、積分静電容量が得られる)または電圧の瞬時の変化を時間の関数として(この場合は、微分静電容量が得られる)見ることができる。したがって、二重層静電容量は、図13Aおよび図13Bに要約されている3つの方法のいずれかを用いて決定することができる。図13Aは、電荷の放電から静電容量を決定する方法を要約し、図13Bは、電荷の充電から静電容量を決定する方法を要約する。
【0026】
A. 電荷の放電/積分静電容量
図3は、印加電圧Vappおよび電極間の電位差Velectを時間の関数として示す。最初に、或る一定の印加電圧と或る一定の電極電圧があり、第1の近似として、これらの2つの電圧は、同じである。時刻tswitchに印加電圧をオフにする。この時点で、Velectは減衰を開始する。予め選択されたしきい値電圧に達するまで、この減衰を観測し、時刻tthresholdに注目する。積分静電容量は、次の式で与えられる。
Cint=IΔt/ΔV
【0027】
本発明の1つの実施の形態では、この式の中のIは、tswitchの直前の電流である。これは、電圧をオフにする前のtswitchに十分近い時刻の値であるから、観測した電流は、電圧をオフにする直前の電流を表す。測定時刻とtswitchとの実際の時間差は、10ミリ秒から500ミリ秒程度である。特にtswitchが水平領域に入っていれば、電流は、変化したとしてもごく緩やかである。ΔVは、最初のVelectからの電圧降下であり、簡単なモデルでは、Vappとしきい値電圧Vthresholdとの差に等しいと考えてよい。Δtは、tthresholdとtswitchとの差である。この方法で決定される静電容量は、各電極または液体サンプルで濡れて二重層が形成された優勢な電極の表面積に関係する。
【0028】
tswitchの直前の電流に基づくIの単一の値を用いるのは、近似であるが、tswitchになるのが水平領域に達した後であれば、Iの変化が小さいので実質的に有効である。しかし、より高い精度が望ましい場合、またはIがtswitchからtthresholdまでの時間間隔にわたって大幅に変化するときにtswitchがある場合は、一層、厳密な方法でIを決定するのが望ましいことがある。tswitchからtthresholdまでの間、電流は、実際には流れないが、印加電圧が保持された場合にtthresholdでIが取り得る値Ithresholdは、線形モデル、コットレル方程式などの減衰モデルへのフィットまたはtswitchより前に観測された挙動から何らかのの他の外挿など用いて推定することができる。この場合は、IswitchとIthresholdの中間のIの値または減衰モデルの数学的積分を適当に用いてCintを決定することができる。
【0029】
Vthresholdの値は、Vappの値ならびに減衰の予想される時間コースに基づいて決定する。VthresholdがVappの大部分である場合は、測定される差が小さいので誤差が大きい。また、後で説明するが、炭素電極などの抵抗性電極を用いる場合は、電極抵抗による初期電圧降下Vdropがあり、Vthresholdは、Vapp−Vdropより小さくなければならない。他方で、Vthresholdがあまり小さい場合は、測定に要する時間が長くなり、ユーザの立場からは、一般に受け入れにくい。これらの2つの観点のバランスをとるため、炭素電極の場合は、VthresholdはVappより少なくとも30mV低い値、また60mVより低くない値、好ましくは120mVより低くない値、またより好ましくは少なくとも150mVが適当である。1つの特定の実施の形態では、ブドウ糖の測定に炭素電極を用いるとき、Vappは、300mVであり、Vthresholdは、150−240mVの電圧値を選択する。
【0030】
B. 電荷の放電/微分静電容量
積分静電容量を決定する代わりに、放電サイクルから微分静電容量を決定することができる。積分静電容量の決定の場合と同様に、印加電位をtswitchでオフにする。その後の測定時刻に、電圧減衰の傾斜の瞬時測定値を決定する。測定を行う時刻は、所定の試験片設計の標準性能に基づいてtswitch後の予め決められた時間間隔(例えば、tswitchの後の1msecから500msecの間)のときでよい。または、用いる試験片の性能に基づいて、上に説明したVthresholdで時間測定を行うのと同様な方法で決定してよい。この減衰の傾斜の観測から値dV/dtが得られる。これを電流測定値と組み合わせると、方程式
Cdif=I/(dV/dt)
によりCdifの値が得られる。
【0031】
この方程式のIの値は、上に述べたtswitchの直前の電流の値でよく、または上に述べた任意のモデルを用いた測定時の電流についての推定値でよい。
Cintに比べてCdifの決定の方が優れている1つの点は、二重層静電容量が静電容量を測定したときの電圧に依存するということである。Cdifを用いると毎回同じ電圧での瞬時測定値が得られるので、この変動の原因を除くことができる。
【0032】
C. 電荷の充電/積分静電容量
図4は、tthresholdに到達した後に電極に電位を再印加したときの電流を時間の関数としてプロットしたものを示す。電位を再印加した後に第2の電流スパイク41があり、続いて電流値は、印加電位をオフにする前からの推定電流に本質的に等しくなるまで減衰する。電流曲線の下の斜線の面積は、信号またはその代表的な部分を積分し、または三角近似を用いることにより決定することができる。これは、二重層の充電を表す。理論的には、上のAで測定した電荷の放電と、この電荷の充電とは、同じでなければならない。実際には実験的な差が観測されるが、電荷の充電は、やはり別個に用いてよく、または部分的充填の評価において電荷の放電の確認として用いてよい。
【0033】
本発明の1つの実施の形態では、再印加電圧は、最初の印加電圧と同じである。しかし、同じ拡散制限条件を再び確立するのであれば、再印加電圧は、最初の印加電圧より大きくても小さくてもよい。
電流測定を行う時間間隔は、静的に(すなわち、試験片の設計に基づいて固定的に)または動的に決めてよい。測定時間を静的に定義する場合は、電流スパイクの時間(例えば、1msecから10msec)後に電流の測定を開始して回路の応答/飽和の影響を除くことが望ましい。この場合、測定の終了時刻は、予め決められた時間(例えば、100msecから1000msec)後である。
【0034】
準動的方法では、終了時刻は、放電段階からの倍数(例えば、整数倍)に設定してもよい。したがって、測定間隔は、ΔtまたはΔdtに等しくてよい。
完全に動的な方法では、測定時間間隔は、測定電流の特性に基づいて決める。この場合は、予め決められた過剰な電流の降下(Iobs−Iswitch)(例えば、50%より多い、好ましくは75%、更に好ましくは、少なくとも90%)に達するまで測定を行ってよい。ただし、Iobsはtswitch後の任意の所定の時刻に観測される電流である。また、測定は、電流がIswitchに近いレベル(例えば、1.1xIswitch)に減少するまで続けてもよい。
【0035】
4. 電極トラック抵抗の補正
炭素電極を持つ電気化学的試験片の実際の電圧プロフィールを測定すると、印加電位をオフにした直後に図5に示すような電圧降下が観測される。この降下の大きさVdropは、複数の要因(電極材料および電極に関連するコネクタの抵抗、電極の付着物など)の関数である。このように、電圧降下は、炭素電極の方が金などを材料とする低抵抗電極の場合より大きい。本発明の実施の形態では、Vdropの大きさを複数の方法のいずれかで考慮に入れる。
【0036】
電荷の放電から積分静電容量を決定する場合は、上に述べたようにVthresholdの選択は、Vdropに依存するのがよい。第2のより正確なΔVの表示には、次式を用いる。すなわち、
ΔV=(Vapp−Vdrop)−Vthreshold
電荷の充電から積分静電容量を決定する場合は、第2の印加電圧を第1の印加電圧プラスVdropに設定すると、数学的に都合がよい。なぜなら、実際に印加して新たに二重層を充電する電圧であるΔVを第1の印加電圧と電位を再印加したときのしきい値電圧との差として測定せずに近似することができるので、測定するパラメータは、減少時間および電流だけだからである。
微分静電容量を決定するとき、測定を行う電圧は、((Vapp−Vdrop)−予め決められた量)として記述してよい。
【0037】
5. 温度の補正
本発明の1つの実施の形態では、温度を決定する手段を計器または試験片が備える場合は、二重層静電容量の値をサンプルの温度について補正する。温度を補正した二重層静電容量CT−corrは次の式で表すことができる。
Ct−corr=CDL−T−correction
ただし、CDLは上に概説した方法のいずれかにより決定される二重層静電容量である。
【0038】
温度補正項T−correctionは、共に譲渡された2005年4月15日出願の米国特許出願第10/907790号に記述されているものと同じ形を有する。この特許出願を参照によってここに援用する。ただし、前記出願では補正項は、分析物濃度測定値を補正するのに用いられている。
【0039】
温度補正項は、酸素保持能力の測度とサンプルの温度測定値との組合せを与える任意の方法により評価してよい。本発明者は、測定した生の分析物濃度と酸素保持能力の測度とを対比したグラフは、測定を行ったときの温度に依存するが、通常の値の範囲ではpO2およびブドウ糖濃度には無関係な傾斜を持つ直線であることを発見した。pO2またはブドウ糖濃度が変化すると、グラフの線は、更にずれるが、傾斜は、変らない。温度の関数である傾斜のプロットを用いて、次式のように所定の温度Tの温度補正項に組み入れられる傾斜(S)および切片(I)パラメータを定義してよい。
温度補正項=定数x[(SxT)+I]xOCC
ただし、OCCは、ヘマトクリットなどの酸素保持能力の測度であり、定数は、正または負の符号を持つ経験的に決まる係数である。
【0040】
温度補正係数の精度は、1つの温度で収集したデータの大集団と測定温度で収集したデータの限られた集団があるとき、測定温度で収集したデータから傾斜だけを決定し、全ての利用可能なデータから切片を決定することにより改善することができる。このように、標準較正データの大集団が利用可能な場合は、パラメータIは、試験片と計器との組合せについて確立された定数でよく、傾斜だけを実験的に決定すればよい。
【0041】
(a) 酸素保持能力の測度としてtmobを使用する。
本発明の1つの実施の形態では、メディエータの移動度の測度であるtmobを酸素保持能力の測度として用いる。tmobは、電位をオフにした後の電位傾斜の減衰中に決定する。電位の減衰は、観測した電位が減少して予め決められた値Vmobになるまで観測する。印加電圧が300mV程度のときは、50mV付近まで減少すると都合がよい。ただし、特定の実験的構成では47mVまたは48mVなどのやや小さな値を用いると、最適な結果が見つかることがある。一般にVmobは、0.025Vから0.1Vが適当である。例えば、250mVから300mVのVappでブドウ糖を決定するときは、Vmobは、25mVから100mV、好ましくは45mVから50mVの範囲が適当である。tmobは、tswitchの後で、この電圧に達するのに要する時間である。
【0042】
減衰の速さの測度を決定する他の方法を用いてもよい。例えば、電位の減衰の瞬時の傾斜を決定してよく、または予め決められた時間にわたる電圧の減少を用いてよい。また計器は、特定の時間窓を選択してV対log(t)またはln(t)の線形回帰を行って、特定の電圧までの時間であるtmobを見つけてよい。Vmobが選択された窓内に入らない場合は、この線形フィットに基づく予測を用いてよい。補正関数を決定するときに測定した減衰の値を考慮に入れる限り、特定の方法は、重要でない。
【0043】
(b) 酸素保持能力の測度として他の方法を使用する。
米国特許第6,287,451号および第6,475,372号(これらを参照によってここに援用する)は、使い捨て試験片内のヘマトクリットの決定のための電気化学的方法を開示している。本発明の加法補正とは対照的に、ヘマトクリット測定は、乗法補正に用いられる。しかし、上に述べたようにtmobを両方のタイプの補正に用いたのと同様に、この測定を両方のモードで用いてよい。これはヘマトクリットが赤血球の測度であり、赤血球は、酸素保持能力を有するからである。
【0044】
本発明の酸素保持能力の測度として任意のタイプのヘマトクリット測定を用いるために、一連の較正測定を行って複数の温度で、それぞれ未補正の分析物濃度およびヘマトクリットのデータ・ポイント対を得る。各温度でデータ・ポイントを直線モデルにフィットさせて直線の傾斜を決定する。上に述べたように、この傾斜は、ブドウ糖およびpO2とは無関係なので、これらのパラメータは、実験を通して同じ値に保つ必要はあるが、特定の値は、重要でない。次に、得られた傾斜/温度のデータ・ポイント対を直線モデルにフィットさせて傾斜と切片とを決定し、上に述べたように加法補正係数内に組み込む。
或る場合には、直線モデルで十分なのは、データの狭い範囲だけである。二次指数方程式などの非線形項を項に導入することにより、広範囲の温度または酸素保持能力について改善された加法補正係数を決定してよい。
【0045】
6. 電流測定モードから電位差測定モードへの動的切換え
本願では、計器は、最初、電流測定モードで動作し、印加電位をオフにした後、電位差測定モードで動作する。電位差測定モードで動作中の測定の質および一貫性を強化するため、電気化学的試験セル内に酸化および還元メディエータの安定な拡散傾斜が形成された後に、はじめて電位差測定モードに切り換えることが望ましい。一般に、電位差測定法は、サンプルのバルク内に「十分深く」延びる安定なプロフィールを濃度傾斜が形成した後に任意の点で同じ安定な読みの値を与える。
【0046】
安定な拡散傾斜を達成する機会を最大にするには、スイッチを入れて測定サイクルを開始した後に或る時間をかけるだけでよい。この時間は、所定の試験片の設計について経験的に決定されるが、一般に4秒から8秒程度でよい。しかし、計器が種々の異なるサンプル特性に適応できるようにするには、tswitchを動的に決定してよい。
本発明の1つの実施の形態では、tswitchは、tpeak(図2のピーク22の時刻)の決定された値から、或る時間間隔(例えば、2秒から3秒)をtpeakのこの決定された値に加えることにより、動的に決定する。
【0047】
本発明の別の実施の形態では、tswitchは、tpeakが小さいときにtswitchの或る固定値を用いて、またtpeakがより大きいときにtpeakプラス或る予め決められた量を用いて動的に決定する。例えば、tswitchは、tpeakが1.5秒より小さいときに3.5秒という固定値を有してよく、またtpeakが1.5秒より大きいとき、tpeakプラス或る偏差(例えば、2秒)に等しくてよい。
更に別の実施の形態では、tpeakが通常より長い時に起こるという環境では第3の測定モードを確立する。この場合は、tpeakが予め決められたしきい値(例えば、5秒)より上で起こると、tswitchは、tpeakと加法補正係数(コットレル電流の傾斜から得られる予め決められた定数を用いる)との関数として適当に決める。
更に、tpeakの最大値を設定して、それより上ではエラー・メッセージを生成してよい。
【0048】
7. 本発明の装置
本発明の方法は、試験片を受けまた必要な電圧印加および信号処理を行う計器を備えていれば、対面する電極を有する任意の試験片で用いることができる。またかかる計器は、本発明の1つの態様を形成する。このように本発明は、電極を有する電気化学的試験片を受け、またその中に受けたときに電気化学的試験片に与えるサンプル内の分析物を決定する計器を提供する。この計器は、
(a) 電気化学的試験片を受けるスロットを有するハウジングと、
(b) ユーザから入力を受けまたユーザに結果を伝える通信手段と、
(c) 計器内に受けたサンプルを含む試験片上の二重層静電容量のDC決定を行い、決定した二重層静電容量と基準値とを比較し、二重層静電容量が基準値より低いことは、液体サンプルが電極の一部をカバーし、電気化学的試験片が部分的にだけ充填されていることとを示す手段と、
を備える。
【0049】
図6は、本発明に係る計器の外観を示す。この計器は、ハウジング61およびディスプレイ62を有する。ハウジング61は、使用するときに試験片を中に挿入するスロット63を有する。また、計器は、測定サイクルの開始を合図するボタン64を有してよく、または試験片の挿入またはサンプルの投与を検出する内部機構を有してよい。かかる機構は、この技術では周知であって、例えば、米国特許番号第5,266,179号、第5,320,732号、第5,438,271号および第6,616,819号に記述されている。これらの特許を参照によってここに援用する。本発明の計器内には、ボタン、LCDディスプレイなどのディスプレイ、RFや赤外線やその他の無線送信機、USBなどの有線コネクタ、ユーザから入力を受けまたユーザに結果を伝える並列または直列の接続構成手段があり、個別または種々に組み合わせて用いてよい。
【0050】
図7は、計器と試験片との接続を示す内部図を示す。図に示すように、試験片71は、接点72,73を有し、これにより電極は、計器の接点74,75と電気的に接触する。
二重層静電容量のDC決定を行う手段は、プログラムされたマイクロ・プロセッサに関連する回路板上などに回路を備え、マイクロ・プロセッサは、回路と相互作用して、前に述べたように電流測定モードと電位差測定モードとの間で必要に応じて切り換え、また電流および電圧を観測する。電流を測定する電流測定動作モードと電極間の電位差を測定する電位差測定動作モードとの間で切り換えるのに適した機器は、2004年5月30日出願の米国暫定出願第60/521,592号および2005年3月25日出願の第60/594,285号に記述されており、これらを参照によってここに援用する。
【0051】
図8は、本発明の計器の1つの実施の形態の電気回路図を示す。しかし、電圧を印加また切り換える点において同じ結果を達成する他の構成要素を用いてもよいことが認識される。作用電極80は、スイッチ82を含むコネクタを介して演算増幅器81に接続し、また演算増幅器83に接続する。対向電極84は、演算増幅器85、86に接続する。演算増幅器83、85、86は、高インピーダンス入力増幅器である。分析物を決定するために電流測定モードで動作中は、演算増幅器81に電圧V2が印加され、演算増幅器85に電圧V1が印加される。ただし、V2は、V1より大きい。電極間で得られる電位差により、分析物の量に関係する電流が生成される。この電流を出力87で観測して、分析物の存在または量の表示に変換してよい。スイッチ82を開いて開回路を作って電位差の印加を停止すると、電流は、止まり、増幅器86の出力は、対向電極の電位になり、増幅器83の出力は、作用電極80の電位になる。演算増幅器83と演算増幅器86の出力の差は、化学ポテンシャルの減衰を示す。上に述べた方法に従って、これを処理して部分的充填の表示を生成する。
【0052】
図9は、2つだけの演算増幅器と多数のスイッチを用いる回路の別の形態を示す。作用電極80は、入力電圧V2を受ける演算増幅器81に接続する。対向電極84は、2つのスイッチ経路の一方を介して高入力インピーダンス演算増幅器90に接続する。入力電圧V1は、第3のスイッチ経路を介してこの回路に接続する。スイッチ91、93が閉じてスイッチ92が開くと、回路は、電流測定モードで動作し、95の出力は、電極の電流を反映する。スイッチ92が閉じてスイッチ91、93が開くと、回路は、電位差測定モードで動作し、95の出力は、対向電極の電位になる(図8の増幅器86と同様)。このように、95の出力は、電極間の電位差を間接的に反映する。電極間の実際の電位差は、95の出力と演算増幅器81の出力(作用電極80)との差である。
本発明の計器では、二重層静電容量の測定値が予め決められたレベルより低いときは、充電が不十分であることを示すユーザへの適当な信号が生成される。
【0053】
8. 本発明を用いる品質管理試験
用いている電気化学的試験片の部分的充填を示す他に、上に述べた二重層静電容量の測定値は、スクリーン印刷などのプロセスを用いて作られた電極の品質も示す。印刷の質が悪いか、または一貫性がない場合は、観測した二重層静電容量の間の変動は、印刷品質が一貫している良いロットのものより大きい(図12および例4を参照のこと)。このように、本発明の別の態様は、電気化学的試験片のロットの品質検査の方法を提供する。この方法は、
(a) そのロットから複数の試験片を得るステップと、
(b) サンプルを各試験片に与えるステップと、
(c) サンプルが存在する試験片の二重層静電容量を測定するステップと、
(d) 測定した二重層静電容量の変動を決定するステップとを含む。予め定義されたしきい値を超える変動は、試験片の品質に欠陥があることを示す。
【0054】
「複数の」試験片は、ロット全体を十分代表するだけの数でなければならないが、破壊試験であるから経済的に考えてロットの余り大きな部分を用いてはならない。更に、この試験のための試験片は、用意したロット内の異なる時のものから取り、多重試験片のシートが作られる場合は、シートの異なる部分から切り取ることが望ましい。
試験片に与えられるサンプルは、血液サンプルのことがある。しかし、二重層静電容量の測定では化学ポテンシャルの傾斜を作りさえすればよいので、電荷キャリア(例えば、ヘキサシアノ鉄(II)酸塩およびヘキサシアノ鉄(III)酸塩の混合物)を含む対照溶液が好ましい。
測定した二重層静電容量の「変動性」は、任意の許容できる数理解析を用いて決定してよい。例えば、変動性は、測定値の範囲または測定値の標準偏差で示してよい。
【0055】
9. 例
本発明について、以下の非制限的な例を参照して更に説明する。これらの例では、対面するスクリーン印刷の炭素電極、625ナノリットルの名目サンプル容量および観察窓を有する電気学的試験片を用いて測定を行った。観察窓を通してサンプルを見ることができないときは、試験片は、部分的に充填されていると考えた。試験に用いた血液サンプルはバキュテイナ(Vacutainer)(TM)チューブを用いて新たに採取し(8時間以内に)、EDTAを抗凝血剤として用いて安定させた。既知のヘマトクリットおよびブドウ糖濃度の正常な血液サンプルを遠心分離し、プラズマを十分除去してhct65サンプルを残し、次に、このサンプルとプラズマとを適当な量だけ再結合して低ヘマトクリットを作ることにより、種々のヘマトクリットを持つ血液サンプルを準備した。これらのサンプルは、全て単一の血液サンプルから迅速に準備したので、全てが同じプラズマ・ブドウ糖濃度を有した。遠心分離を行う前に1Mブドウ糖原液を血液に加えることにより異なるブドウ糖濃度を生成した。
【0056】
例1
電気学的試験片に300mVを印加して、水平域電流が観察されるまで保持した。次に、印加電圧をオフにして作用電極と対向電極との電位差を測定した。対向電極に対する種々の電位で、種々のブドウ糖濃度(3.17mMから16.5mM)およびヘマトクリット(20、40、または60)を有する複数のサンプルについて微分静電容量を決定した。その結果の概要を図10に示す。x軸は、電位差を示すので、グラフの右の方は、低い電圧降下で作った測定を反映することに注意すべきである。
図10に示すように、曲線は、濃度またはヘマトクリットに規則的には依存しないが、所定のサンプル/試験片についての微分静電容量は、測定したときの電位に従って大幅に変動する。また、グラフは、電圧によるCdifの変化が小さい領域100を示しており、Cdifの決定のための測定は、この電圧差の領域で行うのが好ましい。
【0057】
例2
2.79mMまたは20.2mMのブドウ糖を有する血液サンプルを持つ電気化学的試験片に水平域電流が観測されるまで300mVを印加した。次に印加電圧をオフにして、二重層を250mVから150mVまで放電したときに通過した電荷を測定した。次に300mVを再印加して、二重層を250mVまで再充電したときに通過した電荷を観測した。充電電流と放電電流との関係は、ゼロ切片を持つ実質的に直線であることを観察した。しかし、再充電において決定された電荷は、放電の場合より小さく、これは、二重層の再充電を溶液と完全に平衡させるのに100msという測定時間は十分でなかったことを示す。観測した電荷の量は、ブドウ糖濃度とは無関係であった。ただし、濃度が高いとき減衰は、非常に速かった。
【0058】
例3
種々のヘマトクリット・レベル(20、40、または60)およびブドウ糖濃度(3.87mM、10.2mM、または20.1mM)を有する血液サンプルを持つ電気化学的試験片に、水平域電流が観察されるまで300mVを印加した。次に印加電圧をオフにして、Velectrodeより40mV下で微分静電容量を決定した。観察窓の中のサンプルの観察に基づいて試験片を充填または部分的充填と指定した。図11は、種々の試験片について測定した微分静電容量を示す。図11では、ブドウ糖濃度を線の種類(実線=3.87mM、破線=10.2mM、一点鎖線=20.1mM)で示し、ヘマトクリットをシンボルの形(ひし形=20、三角形=40、四角形=60)で示す。黒塗りのシンボルは、充填された試験片を示し、白抜きのシンボルは、部分的充填を示す。図11の水平線は、1.7μFに設定された微分静電容量のしきい値レベルで、この試験片のサンプルの充填度を評価するのに用いた。図に示すように、充填されたサンプルの静電容量は、全てこのしきい値より上であったが、部分的充填の場合は、3つだけが間違って許容された。
しきい値の設定は、部分的充填を許容するか、または他の点では許容できるサンプルを除外するかの考え方に依存することを当業者は、認識する。
【0059】
例4
本発明の方法の頑強性を評価するため、同じメーカから得た上に述べたものと同じ設計の試験片の異なる10ロットを評価した。図12は、10ロットの結果について、50mVまで減衰したときの微分静電容量対時間をプロットしたものを示す。このグラフから2つのことが観察される。第1に、10ロットの中の8ロットについては、微分静電容量は、ほぼ一定である。ただし、50mV降下に要する時間は、変動する。この結果から見ると測定時間を動的に決定するのが良いことになるが、この技術は、一般に頑強性を有することを示す。また他の8ロットとは異なる2ロットは、ほぼ一定レベルの静電容量であることを示し、50mVまでの時間の変動は、非常に小さい。これらのロットの炭素電極は、異なる方法を用いてスクリーン印刷されたと決定された。このように、部分的充填を示す静電容量がカットオフされることは一貫した製作技術でもロット毎の変動があることを示すが、製作技術が変ったときは、セットし直す必要がある。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】従来の電流測定方式のブドウ糖検出器内で起こる電子移動反応を示す。
【図2】ブドウ糖を検出するために電気化学的試験片に電位を印加した後の電流の理論的プロットを時間の関数として示し、試験片は、対面する作用電極と対向電極とを有し、電極の間隔は、電極間にメディエータのリサイクルが起こるようにあけている。
【図3】印加電圧Vappと電極間の電位差Velectとのプロットを時間の関数として示す。
【図4】tthresholdに達した後に電極に電位を再印加したときの電流のプロットを時間の関数として示す。
【図5】電極抵抗の結果起こる電圧降下を示す電圧対時間のプロットを示す。
【図6】計器の外観を示す。
【図7】試験片と計器内のコネクタとの接続を示す。
【図8】電流測定モードと電位差測定モードとを切換える回路図を示す。
【図9】電流測定モードと電位差測定モードとを切換える回路図を示す。
【図10】微分静電容量と電位との関係を示す。
【図11】充填された試験片と部分的充填された試験片の測定された微分静電容量を示す。
【図12】微分静電容量のロット毎の変動を50mVまでの時間の関数として示す。
【図13A】本発明に係る二重層静電容量を決定する方法の概要を示す。
【図13B】本発明に係る二重層静電容量を決定する方法の概要を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極と、電極間に置かれた液体サンプルとを有する電気化学的試験片内の部分的充填を検出する方法であって、
(a) サンプルを電気化学的試験片に導入するステップと、
(b) 前記試験片の電極間に電位差Vappを印加するステップと、
(c) 時刻tswitchに印加電位をオフにし、またオプションで第2の電位を印加するステップと、
(d) 生成される電流を観測し、観測した電流から電極での二重層の充電または放電を決定するステップと、
(e) 印加電位をオフにした後の電圧変化を観測して、測定した二重層の充電または放電と観測した電圧変化から試験片の二重層静電容量を決定するステップと、
(f) 決定した二重層静電容量と基準値とを比較し、二重層静電容量が基準値より小さい場合は、液体サンプルは、電極の一部をカバーし、電気化学的試験片は、部分的にだけ充填されることとを示すステップと、
を含む部分充填を検出する方法。
【請求項2】
請求項1記載の方法であって、
決定される二重層静電容量は、式
Cint=IΔt/ΔV
により決定される積分静電容量である(ただしIは電流、tは時間、Vは電圧である)前記方法。
【請求項3】
請求項2記載の方法であって、
Δtは、電極間の電位差の減衰を観測して電位がしきい値Vthresholdまで減衰するのに要する時間tthresholdを識別することにより決定され、Δt=tthreshold−tswitchである前記方法。
【請求項4】
請求項3記載の方法であって、
放電される二重層電荷の量は、
電荷=Iswitch Δt
として決定される(ただし、Iswitchは時刻tswitchの直前の電流である)前記方法。
【請求項5】
請求項3記載の方法であって、
前記電流は、tswitchより前の観測した電流から外挿により決定される時刻tmeasでの電流の推定値である前記方法。
【請求項6】
請求項2から5のいずれかに記載の方法であって、
ΔVは、VappとVthresholdとの差である前記方法。
【請求項7】
請求項2から5のいずれかに記載の方法であって、
即時の電圧降下Vdropは、電位をオフにした後に観測し、ΔVは、(Vapp−Vdrop)−Vthresholdで与えられる前記方法。
【請求項8】
請求項1から7のいずれかに記載の方法であって、
観測した電流は、電位を再印加した後に起こり、前記二重層静電容量は、二重層充電から決定する前記方法。
【請求項9】
請求項1記載の方法であって、
微分静電容量は、式
Cdif=I/(dV/dt)
から得られる(ただし、Iは、電流、(dV/dt)は、時刻tmeasでの電圧の瞬時変化である)前記方法。
【請求項10】
請求項9記載の方法であって、
前記電流Iは、時刻tswitchの直前の電流である前記方法。
【請求項11】
請求項9記載の方法であって、
前記電流は、tswitchより前の前記観測した電流から外挿により決定される時刻tmeasでの電流の推定値である前記方法。
【請求項12】
請求項9から11のいずれかに記載の方法であって、
tmeasは、動的に決定する前記方法。
【請求項13】
請求項12記載の方法であって、
tmeasは、観測した電位が印加電位より予め決められた量だけ低いときの時刻である前記方法。
【請求項14】
請求項9から12のいずれかに記載の方法であって、
電位をオフにした後に即時の電圧降下Vdropを観測し、tmeasは、観測した電位が(Vapp−Vdrop)より予め決められた量だけ低いときの時刻である前記方法。
【請求項15】
請求項9から14のいずれかに記載の方法であって、
前記電流Iは、時刻tswitchの直前の電流である前記方法。
【請求項16】
請求項9から14のいずれかに記載の方法であって、
前記電流は、tswitchより前の観測した電流から外挿により決定される時刻tmeasでの電流の測定値である前記方法。
【請求項17】
請求項1から16のいずれかに記載の方法であって、
測定した二重層静電容量は、前記基準値と比較する前の温度および酸素保持能力の関数である加法補正項により補正する前記方法。
【請求項18】
電極を有する電気化学的試験片を受け、その中に受けたときに電気化学的試験片に与えるサンプル内の分析物を決定する計器であって、
(a) 電気化学的試験片を受けるスロットを有するハウジングと、
(b) ユーザから入力を受けユーザに結果を伝える通信手段と、
(c) 計器内に受けたサンプルを含む試験片上の二重層静電容量のDC決定を行い、決定した二重層静電容量と基準値とを比較して、二重層静電容量が基準値より低いことは、液体サンプルが電極の一部をカバーし、電気化学的試験片が部分的にだけ充填されることを示す手段と、
を備える計器。
【請求項19】
請求項18記載の計器であって、
二重層静電容量のDC決定を行う前記手段は、
回路と、
プロセッサとを含み、プロセッサは、
(1) 前記試験片の電極間に電位差Vappを印加し、
(2) 印加電圧を時刻tswitchにオフにして、オプションでその後の時刻に第2の電位を再印加し、
(3) 生成された電流を観測して、観測した電流から電極での二重層充電または放電を決定し、
(4) 印加電圧をオフにした後の電圧変化を観測し、測定した二重層充電または放電および観測した電圧変化から、請求項1から17のいずれかに記載の方法に従って試験片の二重層静電容量を決定するようにプログラムされる前記計器。
【請求項20】
請求項18または19記載の計器と、ハウジング内に配置された電気化学的試験片とを備える測定装置。
【請求項21】
請求項20記載の測定装置であって、
前記電気化学的試験片は、サンプル内のブドウ糖を測定する測定装置。
【請求項22】
電気化学的試験片のロットの品質検査の方法であって、
(a) ロットから複数の試験片を得るステップと、
(b) 前記試験片のそれぞれにサンプルを与えるステップと、
(c) サンプルが存在するときに前記試験片の二重層静電容量を測定するステップと、
(d) 測定した二重層静電容量の変動性を決定し、定義されたしきい値を超える変動性が前記試験片の品質欠陥を示すステップと、
を含む前記方法。
【請求項1】
電極と、電極間に置かれた液体サンプルとを有する電気化学的試験片内の部分的充填を検出する方法であって、
(a) サンプルを電気化学的試験片に導入するステップと、
(b) 前記試験片の電極間に電位差Vappを印加するステップと、
(c) 時刻tswitchに印加電位をオフにし、またオプションで第2の電位を印加するステップと、
(d) 生成される電流を観測し、観測した電流から電極での二重層の充電または放電を決定するステップと、
(e) 印加電位をオフにした後の電圧変化を観測して、測定した二重層の充電または放電と観測した電圧変化から試験片の二重層静電容量を決定するステップと、
(f) 決定した二重層静電容量と基準値とを比較し、二重層静電容量が基準値より小さい場合は、液体サンプルは、電極の一部をカバーし、電気化学的試験片は、部分的にだけ充填されることとを示すステップと、
を含む部分充填を検出する方法。
【請求項2】
請求項1記載の方法であって、
決定される二重層静電容量は、式
Cint=IΔt/ΔV
により決定される積分静電容量である(ただしIは電流、tは時間、Vは電圧である)前記方法。
【請求項3】
請求項2記載の方法であって、
Δtは、電極間の電位差の減衰を観測して電位がしきい値Vthresholdまで減衰するのに要する時間tthresholdを識別することにより決定され、Δt=tthreshold−tswitchである前記方法。
【請求項4】
請求項3記載の方法であって、
放電される二重層電荷の量は、
電荷=Iswitch Δt
として決定される(ただし、Iswitchは時刻tswitchの直前の電流である)前記方法。
【請求項5】
請求項3記載の方法であって、
前記電流は、tswitchより前の観測した電流から外挿により決定される時刻tmeasでの電流の推定値である前記方法。
【請求項6】
請求項2から5のいずれかに記載の方法であって、
ΔVは、VappとVthresholdとの差である前記方法。
【請求項7】
請求項2から5のいずれかに記載の方法であって、
即時の電圧降下Vdropは、電位をオフにした後に観測し、ΔVは、(Vapp−Vdrop)−Vthresholdで与えられる前記方法。
【請求項8】
請求項1から7のいずれかに記載の方法であって、
観測した電流は、電位を再印加した後に起こり、前記二重層静電容量は、二重層充電から決定する前記方法。
【請求項9】
請求項1記載の方法であって、
微分静電容量は、式
Cdif=I/(dV/dt)
から得られる(ただし、Iは、電流、(dV/dt)は、時刻tmeasでの電圧の瞬時変化である)前記方法。
【請求項10】
請求項9記載の方法であって、
前記電流Iは、時刻tswitchの直前の電流である前記方法。
【請求項11】
請求項9記載の方法であって、
前記電流は、tswitchより前の前記観測した電流から外挿により決定される時刻tmeasでの電流の推定値である前記方法。
【請求項12】
請求項9から11のいずれかに記載の方法であって、
tmeasは、動的に決定する前記方法。
【請求項13】
請求項12記載の方法であって、
tmeasは、観測した電位が印加電位より予め決められた量だけ低いときの時刻である前記方法。
【請求項14】
請求項9から12のいずれかに記載の方法であって、
電位をオフにした後に即時の電圧降下Vdropを観測し、tmeasは、観測した電位が(Vapp−Vdrop)より予め決められた量だけ低いときの時刻である前記方法。
【請求項15】
請求項9から14のいずれかに記載の方法であって、
前記電流Iは、時刻tswitchの直前の電流である前記方法。
【請求項16】
請求項9から14のいずれかに記載の方法であって、
前記電流は、tswitchより前の観測した電流から外挿により決定される時刻tmeasでの電流の測定値である前記方法。
【請求項17】
請求項1から16のいずれかに記載の方法であって、
測定した二重層静電容量は、前記基準値と比較する前の温度および酸素保持能力の関数である加法補正項により補正する前記方法。
【請求項18】
電極を有する電気化学的試験片を受け、その中に受けたときに電気化学的試験片に与えるサンプル内の分析物を決定する計器であって、
(a) 電気化学的試験片を受けるスロットを有するハウジングと、
(b) ユーザから入力を受けユーザに結果を伝える通信手段と、
(c) 計器内に受けたサンプルを含む試験片上の二重層静電容量のDC決定を行い、決定した二重層静電容量と基準値とを比較して、二重層静電容量が基準値より低いことは、液体サンプルが電極の一部をカバーし、電気化学的試験片が部分的にだけ充填されることを示す手段と、
を備える計器。
【請求項19】
請求項18記載の計器であって、
二重層静電容量のDC決定を行う前記手段は、
回路と、
プロセッサとを含み、プロセッサは、
(1) 前記試験片の電極間に電位差Vappを印加し、
(2) 印加電圧を時刻tswitchにオフにして、オプションでその後の時刻に第2の電位を再印加し、
(3) 生成された電流を観測して、観測した電流から電極での二重層充電または放電を決定し、
(4) 印加電圧をオフにした後の電圧変化を観測し、測定した二重層充電または放電および観測した電圧変化から、請求項1から17のいずれかに記載の方法に従って試験片の二重層静電容量を決定するようにプログラムされる前記計器。
【請求項20】
請求項18または19記載の計器と、ハウジング内に配置された電気化学的試験片とを備える測定装置。
【請求項21】
請求項20記載の測定装置であって、
前記電気化学的試験片は、サンプル内のブドウ糖を測定する測定装置。
【請求項22】
電気化学的試験片のロットの品質検査の方法であって、
(a) ロットから複数の試験片を得るステップと、
(b) 前記試験片のそれぞれにサンプルを与えるステップと、
(c) サンプルが存在するときに前記試験片の二重層静電容量を測定するステップと、
(d) 測定した二重層静電容量の変動性を決定し、定義されたしきい値を超える変動性が前記試験片の品質欠陥を示すステップと、
を含む前記方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13A】
【図13B】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13A】
【図13B】
【公表番号】特表2008−536139(P2008−536139A)
【公表日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−506044(P2008−506044)
【出願日】平成18年4月15日(2006.4.15)
【国際出願番号】PCT/IB2006/051180
【国際公開番号】WO2006/109277
【国際公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【出願人】(506145762)アガマトリックス インコーポレーテッド (6)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年4月15日(2006.4.15)
【国際出願番号】PCT/IB2006/051180
【国際公開番号】WO2006/109277
【国際公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【出願人】(506145762)アガマトリックス インコーポレーテッド (6)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]