説明

電気化学素子用セパレータ電極一体型蓄電素子およびそれを用いてなる電気化学素子

【課題】内部抵抗が低く、内部短絡不良率の低い電気化学素子を実現できるセパレータ電極一体型蓄電素子と、それを用いてなる電気化学素子を提供することにある。
【解決手段】セパレータを電極表面に接合一体化してなる電気化学素子用セパレータ電極一体型蓄電素子において、該セパレータがエレクトロスピニング法により形成されたナノファイバーを含有した多孔質層よりなることを特徴とする電気化学素子用セパレータ電極一体型蓄電素子と、それを用いてなるキャパシタ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気化学素子用セパレータ電極一体型蓄電素子およびそれを用いてなる電気化学素子に関する。
【背景技術】
【0002】
電気化学素子の1種であるキャパシタや電解コンデンサのセパレータとしては、従来、溶剤紡糸セルロース繊維や再生セルロース繊維の叩解物を主体とする紙製セパレータ(例えば、特許文献1〜3参照)や無機繊維とフィブリル化有機繊維からなるセパレータ(例えば、特許文献4参照)、合成繊維からなるセパレータ(例えば、特許文献5参照)が使用されている。また、電気化学素子の1種であるリチウムイオン電池のセパレータとしては、一般的に多孔質フィルム(例えば、特許文献6参照)が使用されている。近年の電子部品の高機能化に伴い、電気化学素子も低抵抗化が求められている。一般的に、低抵抗のキャパシタや電解コンデンサ、リチウムイオン電池を実現するには、セパレータの厚みを薄くすることが有効な手段の一つとして挙げられる。しかし、従来の紙製セパレータや特許文献4および5のセパレータ、多孔質フィルムは厚みを薄くするとピンホールができやすくなるため、内部短絡しやすくなったり、強度が低下し、取り扱いが不便となったりするため、薄層化に限界があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−267103号公報
【特許文献2】特開平11−168033号公報
【特許文献3】特開2000−3834号公報
【特許文献4】特開2005−327935号公報
【特許文献5】特開2003−45752号公報
【特許文献6】特開2002−105235号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記実情を鑑みたものであって、内部抵抗が低く、内部短絡不良率の低い電気化学素子を実現できるセパレータ電極一体型蓄電素子と、それを用いてなる電気化学素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によれば、エレクトロスピニング法により形成されたナノファイバーを含有した多孔質層を、セパレータとして、電極表面に一体接合することにより、セパレータ電極一体型蓄電素子とそれを用いてなる電気化学素子が得られる。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、セパレータとして機能する多孔質層が電極と一体接合されているため、機械的強度を損なうことなく多孔質層を薄層化することが可能となり、多孔質層の薄層化は内部抵抗の低減に貢献することができる。また、セパレータとなる多孔質層に繊維径の細いエレクトロスピニング法により形成されたナノファイバーを含有させることで、セパレータ中における電解質の移動を良好なものにすることができ、内部抵抗を低くすることができる。さらに、多孔質層を緻密にすることができることから、多孔質層を薄層化しても内部短絡し難くすることができる。多孔質層は正極に一体接合されても良く、負極に一体接合されても良く、正極および負極の両方に一体接合されても良い。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】エレクトロスピニング法による多孔質層を形成する工程を表す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明における電気化学素子としては、キャパシタ、電解コンデンサ、リチウムイオン電池、リチウムポリマー電池、ポリアセン電池、マンガン電池、アルカリマンガン電池、酸化銀電池、リチウム電池、鉛蓄電池、ニッケル−カドミウム蓄電池、ニッケル−水素蓄電池、ニッケル−亜鉛蓄電池、酸化銀−亜鉛蓄電池、各種のゲル電解質電池、亜鉛−空気蓄電池、鉄−空気蓄電池、アルミニウム−空気蓄電池、燃料電池、ナトリウム硫黄電池、ラジカルポリマーを用いる有機ラジカル電池等を指す。本発明のセパレータ電極一体型素子は、特にキャパシタ、電解コンデンサ、リチウムイオンキャパシタ、リチウムイオン電池に好適に用いられる。
【0009】
<キャパシタ>
本発明におけるキャパシタとは、電気二重層キャパシタ、リチウムイオンキャパシタ、レドックスキャパシタを意味する。電気二重層キャパシタは、電極と電解液との界面に電気二重層が形成され、蓄電される。電極活物質としては、活性炭、カーボンブラック、カーボンエーロゲル、カーボンナノチューブ、非多孔性炭素等の炭素材料が主に用いられる。電解液としては、イオン解離性の塩を溶解させた水溶液、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、アセトニトリル、γ−ブチロラクトン、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン、ジメトキシメタン、スルホラン、ジメチルスルホキシド、エチレングリコール、プロピレングリコール、メチルセルソルブ、これらの混合溶媒等の有機溶媒にイオン解離性の塩を溶解させたもの、イオン性液体(固体溶融塩)等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0010】
リチウムイオンキャパシタは、負極活物質がリチウムイオンを可逆的に担持可能な物質であり、正極活物質がリチウムイオンおよび/またはアニオンを可逆的に担持可能な物質であり、予め負極および/または正極にリチウムイオンが担持されてなるキャパシタである。負極活物質としては、例えば黒鉛、難黒鉛化炭素、ポリアセン系有機半導体等が挙げられる。正極活物質としては、例えばポリピロール、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリアセチレン等の導電性高分子、活性炭、ポリアセン系有機半導体、チタン酸リチウム等が挙げられる。電解液としては、リチウム塩の非プロトン性有機溶媒が用いられる。リチウム塩としては、例えばLiClO、LiAsF、LiBF、LiPF、Li(CSO)N等が挙げられる。非プロトン性有機溶媒としては、例えばプロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、アセトニトリル、γ−ブチロラクトン、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン、ジメトキシメタン、スルホラン、ジメチルスルホキシド、エチレングリコール、プロピレングリコール、メチルセルソルブ、これらの混合溶媒が挙げられる。
【0011】
レドックスキャパシタは、蓄電と放電の機構が、電極活物質の酸化還元、電極表面でのイオンの吸脱着、電気二重層における充放電のすべてあるいは一部を利用してなるものである。電極活物質としては、酸化ルテニウム、酸化イリジウム、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化ニッケル、酸化バナジウム、酸化タングステン、酸化マンガン、酸化コバルト等の金属酸化物、これら金属酸化物の複合物、これら金属酸化物の水和物、これら金属酸化物と炭素材料との複合物、窒化モリブデン、窒化モリブデンと金属酸化物との複合物等が挙げられる。電解液としては、イオン解離性の塩を溶解させた水溶液、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、アセトニトリル、γ−ブチロラクトン、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン、ジメトキシメタン、スルホラン、ジメチルスルホキシド、エチレングリコール、プロピレングリコール、メチルセルソルブ、これらの混合溶媒等の有機溶媒にイオン解離性の塩を溶解させたもの、イオン性液体(固体溶融塩)等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0012】
キャパシタ用電極には導電剤を含むことが好ましい。導電剤としては特に制限されないが、カーボンブラック、ケッチェンブラック(ケッチェンブラックインターナショナル社登録商標)、アセチレンブラック、カーボンウィスカー、炭素繊維、天然黒鉛、人造黒鉛等の、導電性を有し、細孔を有さないものや、二酸化チタン、酸化ルテニウム、アルミニウム、ニッケル、銀等の粒子および金属ファイバー等の金属を含有するものが挙げられる。導電剤の配合量は、電極活物質100質量部に対し0.1〜20質量部が好ましく、2〜10質量部がより好ましい。
【0013】
キャパシタ用電極に用いるバインダーとしては、電極活物質と導電剤を十分に結合する必要があり、また、電解液に対する耐性、耐電圧性、酸化還元反応に対する耐性を有するものから選ばれる。その例としては、ポリフッ化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリイミド、ポリエチレンナフタレート、ポリフェニレンサルファイド等の非水溶性樹脂や、カルボキシメチルセルロース等のセルロース誘導体、デンプンおよびその誘導体、カゼイン、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、ポリビニルメチルエーテル、ポリエチレングリコール等の水溶性樹脂、また、スチレンブタジエンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム等のゴムが挙げられる。バインダーの配合量は、電極活物質100質量部に対して0.05〜25質量部が好ましい。
【0014】
キャパシタ用電極の厚みは10〜300μmであることが好ましい。厚みが10μmより小さくなると、キャパシタにおいて十分な電気容量を得ることが困難になる場合があり、また、厚みが300μmを超えると内部抵抗が増加する場合がある。
【0015】
キャパシタ用電極の製法としては、一般的に、電極活物質と導電剤とバインダーを乾式混練または湿式混練し、これをプレス成形法や押出し成形法によりシート状もしくは棒状に成形し、打ち抜き、あるいはカッティングして集電体に貼り合わせる製法と、電極活物質と導電剤とバインダーを含む電極スラリーを集電体の表面に塗工、乾燥する製法が知られている。本発明においては、いずれの方法も適用できる。電極スラリーの塗工方法としては特に限定されないが、ディップコート法、スプレーコート法、ロールコート法、ドクターブレード法、グラビアコート法、スクリーン印刷法等を適用することができる。
【0016】
上記の集電体の材料は導電性材料を含むものであり、例えば、金、銀、銅、アルミニウム、ニッケル、白金等が挙げられる。集電体の形状としては、板状、繊維状、シート状、フィルム状、メッシュ状等が挙げられるが、これらに制限されない。
【0017】
<電解コンデンサ>
本発明における電解コンデンサとは、対向する2つの電極間に誘電体を挟んだ形で構成されてなる蓄電機能を有するもので、例えば、電解液を用いるアルミ電解コンデンサやタンタル電解コンデンサ等が挙げられる。また、電解質に導電性高分子を用いる固体電解コンデンサも含まれる。電解コンデンサは、アルミニウムやタンタル等の弁作用金属箔の表面積を、エッチング処理によって拡大し、誘電体層を形成して陽極とし、エッチング処理を施した同種または他の金属の箔を陰極とし、セパレータを両極間に配置した構造となっている。
【0018】
電解コンデンサに用いられる電解液としては、イオン解離性の塩を溶解させた水溶液、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、アセトニトリル、γ−ブチロラクトン、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、スルホラン、ジメチルスルホキシド、エチレングリコール、プロピレングリコール等の有機溶媒にイオン解離性の塩を溶解させたもの、イオン性液体(固体溶融塩)等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0019】
固体電解コンデンサの電解質として用いられる導電性高分子としては、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリアセチレン、ポリアセン、これらの誘導体が挙げられる。本発明における固体電解コンデンサは、これらの導電性高分子と電解液を併用したものでも良い。
【0020】
電解コンデンサ用電極に用いられる弁作用金属としては、アルミニウム、タンタル、ニオブ、チタン、ハフニウム、ジルコニウム、亜鉛、タングステン、ビスマス、アンチモン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0021】
電解コンデンサ用電極の厚みは5〜200μmであることが好ましい。厚みが5μmより小さくなると、電解コンデンサ用電極において十分な電気容量を得ることが困難になる場合があり、また、厚みが200μmを超えると等価直列抵抗(ESR)が増加する場合がある。
【0022】
<リチウムイオン電池>
本発明において、リチウムイオン電池とはリチウムイオンを吸蔵、放出できる電極と、電解液や固体電解質とからなるものを指す。負極活物質には炭素材料、正極活物質にはリチウム金属酸化物等が用いられる。炭素材料としては、アモルファスカーボン、グラファイト、天然黒鉛、メゾカーボンマイクロビーズ、およびピッチ系炭素繊維が挙げられるが、これらに限定されるものではない。リチウム金属酸化物としては、コバルト酸リチウム、マンガン酸リチウム、ニッケル酸リチウム、リン酸鉄リチウムが挙げられるが、これらに限定されるものではない。電解液には、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメトキシエタン、ジメトキシメタン、これらの混合溶媒等の有機溶媒にリチウム塩を溶解させたものが用いられる。リチウム塩としては、六フッ化リン酸リチウムや4フッ化ホウ酸リチウムが挙げられるが、これらに限定されるものではない。固体電解質としては、ポリエチレングリコールやその誘導体、ポリメタクリル酸誘導体、ポリシロキサンやその誘導体、ポリフッ化ビニリデン等のゲル状ポリマーにリチウム塩を溶解させたものが用いられるが、これらに限定されるものではない。
【0023】
リチウムイオン電池用正極には導電剤を含むことが好ましい。導電剤としては特に制限されないが、カーボンブラック、ケッチェンブラック(ケッチェンブラックインターナショナル社製、登録商標)、アセチレンブラック、カーボンウィスカー、炭素繊維、天然黒鉛、人造黒鉛等の、導電性を有し、細孔を有さないものや、二酸化チタン、酸化ルテニウム、アルミニウム、ニッケル、銀等の粒子および金属ファイバー等の金属を含有するものが挙げられる。導電剤の配合量は、電極活物質100質量部に対し0.1〜20質量部が好ましく、2〜10質量部がより好ましい。
【0024】
リチウムイオン電池用正極および負極に用いるバインダーとしては、電解液に対する耐性、耐電圧性、酸化還元反応に対する耐性を有するものであれば特に限定されず、ポリフッ化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリイミド、ポリエチレンナフタレート、ポリフェニレンサルファイド等の非水溶性樹脂や、カルボキシメチルセルロース等のセルロース誘導体、デンプンおよびその誘導体、カゼイン、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、ポリビニルメチルエーテル、ポリエチレングリコール等の水溶性樹脂、また、スチレンブタジエンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム等のゴムが挙げられる。バインダーの配合量は、電極活物質100質量部に対して0.05〜25質量部が好ましい。
【0025】
リチウムイオン電池用正極および負極の厚みは、10〜300μmであることが好ましい。厚みが10μmより小さくなると、リチウムイオン電池において十分な電気容量を得ることが困難になる場合があり、また、厚みが300μmを超えると内部抵抗が増加する場合がある。
【0026】
リチウムイオン電池用正極の製法としては、正極活物質と導電剤とバインダーを乾式混練または湿式混練し、これをプレス成形法や押出し成形法によりシート状もしくは棒状に成形し、打ち抜き、あるいはカッティングして集電体に貼り合わせる製法と、電極活物質と導電剤とバインダーを含む電極スラリーを集電体の表面に塗工、乾燥する製法が知られている。本発明においては、いずれの方法も適用できる。電極スラリーの塗工方法としては特に限定されないが、ディップコート法、スプレーコート法、ロールコート法、ドクターブレード法、グラビアコート法、スクリーン印刷法等を適用することができる。
【0027】
リチウムイオン電池用負極の製法としては、負極活物質とバインダーを乾式混練または湿式混練し、これをプレス成形法や押出し成形法によりシート状もしくは棒状に成形し、打ち抜き、あるいはカッティングして集電体に貼り合わせる製法と、電極活物質と導電剤とバインダーを含む電極スラリーを集電体の表面に塗工、乾燥する製法が知られている。本発明においては、いずれの方法も適用できる。電極スラリーの塗工方法としては特に限定されないが、ディップコート法、スプレーコート法、ロールコート法、ドクターブレード法、グラビアコート法、スクリーン印刷法等を適用することができる。
【0028】
上記の集電体の材料は導電性材料を含むものであり、例えば、金、銀、銅、アルミニウム、ニッケル、白金等が挙げられる。特に、正極用集電体としてアルミニウム、負極用集電体として銅が好ましい。集電体の形状としては、板状、繊維状、シート状、フィルム状、メッシュ状等が挙げられるが、これらに制限されない。
【0029】
<セパレータ電極一体型蓄電素子>
本発明において、セパレータとなる多孔質層を形成させるために使用するエレクトロスピニング法は、電気の力を利用した繊維化方法として公知の技術である。具体的には、図1に示したように、ポリマー溶液1を貯蔵タンク2および紡糸口3からなるエレクトロスピニング装置4に入れ、ポリマー溶液に接するプラス電極5とアース電極(電気化学素子用電極)6との間に電源7から電圧を印加して紡糸口3よりポリマー溶液を噴射してアース電極6の基板表面上に、ナノファイバーからなる多孔質層を形成させる。
【0030】
本発明によれば、プラスの高電圧をポリマー溶液1に負荷させる。この高電圧により、ポリマー溶液1は鋭い円錐状になり、アース電極6に向かって飛び始める。電気化学素子用電極にアースをつなぐことにより、電気化学素子用電極表面にナノファイバーからなる多孔質層(セパレータ)を接合一体化した形で形成することができ、セパレータ電極一体型素子を得ることができる。
【0031】
このエレクトロスピニング法において、印加電圧、紡糸口と基材との距離、紡糸口の口径、ポリマー溶液の組成等を適宜調整することにより、所望の平均直径および平均長さの高分子化合物のナノファイバーを積層させることができる。
【0032】
本発明において、エレクトロスピニング法における印加電圧は特に制限はないが、1〜500kVであるのが好ましく、1〜100kVであるのがより好ましい。印加電圧が1kVよりも低いと、エレクトロスピニング現象が発生しにくい場合があり、500kVよりも高いと、装置からの漏電や放電現象が発生しやすくなり、装置の絶縁のために大掛かりの装置が必要になることがある。
【0033】
また、紡糸口と基材との距離は、印加電圧やポリマー溶液の粘性、導電率等によっても異なるが、5〜20cm程度とすることが好ましい。この距離が近すぎても遠すぎても、良好なナノファイバーを形成できないことがある。また、紡糸口がノズルの場合の口径は、通常300〜500μm程度とすることが好ましい。この紡糸口の口径についても、大きすぎても小さすぎても、良好なナノファイバーを形成できない場合がある。
【0034】
本発明における多孔質層に含有されるナノファイバーの原料となるポリマー溶液のポリマーとしては、電気絶縁性を有するものであれば特に限定されず、例えば、アクリル、ポリオレフィン、ナイロン、ポリエステル、ポリアミド、フッ化ビニリデン成分含有ポリマー、ポリエーテルスルホン、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体、セルロースが挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を用いることができる。ポリアミドは、脂肪族ポリアミド、芳香族ポリアミド、メタ型全芳香族ポリアミド、パラ型全芳香族ポリアミドのいずれでも良い。
【0035】
本発明におけるフッ化ビニリデン成分含有ポリマーとは、ポリフッ化ビニリデン、ポリ(ヘキサフルオロプロピレン−ビニリデンフロライド)共重合体、ポリ(パーフルオロビニルエーテル−ビニリデンフロライド)共重合体、ポリ(テトラフルオロエチレン−ビニリデンフロライド)共重合体、ポリ(ヘキサフルオロプロピレンオキシド−ビニリデンフロライド)共重合体、ポリ(ヘキサフルオロプロピレンオキシド−テトラフルオロエチレン−ビニリデンフロライド)共重合体、ポリ(ヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン−ビニリデンフロライド)共重合体が挙げられる。これらフッ化ビニリデン成分含有ポリマーは単独でも混合体でも用いることができる。
【0036】
また、上記ポリマーを溶解する溶媒としては、ポリマーを溶解し、また、これらと反応しないものであれば制限されず、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、アミンオキサイド、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ベンゼン、キシレン、トルエン、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、エチルメチルエーテル、メチルエチルケトン、酢酸エチル、メタノール、エタノール、ブタノール、2−プロパノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、アセトニトリル、アセトン、ギ酸、水等が挙げられる。これらは単独で使用しても良いし、混合して使用しても良い。水はイオン交換水や蒸留水が好ましい。
【0037】
本発明において、使用するポリマー溶液の濃度は特に制限はないが、0.1〜50質量%であることが好ましい。0.1質量%より薄いと、十分な繊維化を図れない場合があり、50質量%を超えると、粘度が高くなりすぎて収率が低下する場合がある。
【0038】
このように、ポリマー溶液を用いて、エレクトロスピニング法により電気化学素子用電極上に接合一体化された多孔質層(セパレータ)に含有されるナノファイバーは、平均直径50〜800nm程度で、平均長さ1mm以上程度であることが、セパレータとしての十分な機械的強度と電解液の流通に十分な多孔質を確保する上で好ましい。
【0039】
本発明におけるセパレータの厚さは1〜50μmであることが好ましく、1〜30μmであることがより好ましい。セパレータの厚さが1μm未満であると自己放電による電圧降下が大きくなるおそれがあり、50μmを超えると必要以上に厚くなり、内部抵抗が大きくなるおそれがある。
【0040】
本発明において、セパレータの強度を上げたり、セパレータと電極との接合をより強固なものにしたりするため、セパレータに含有されるナノファイバーの融点以上の温度でセパレータ電極一体型素子の熱処理を行っても良い。
【0041】
本発明における多孔質層からなるセパレータは正極に一体接合されても良く、負極に一体接合されても良く、正極および負極の両方に一体接合されても良い。
【実施例】
【0042】
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0043】
[ポリマー溶液Aの調製]
ポリフッ化ビニリデン(質量平均分子量300,000)10質量部とN,N−ジメチルホルムアミド90質量部を室温で24時間撹拌し、ポリマー溶液Aを調製した。
【0044】
[ポリマー溶液Bの調製]
10質量部のナイロン6とギ酸90質量部を室温で24時間撹拌し、ポリマー溶液Bを調製した。
【0045】
[電気絶縁性樹脂C]
ポリアミドイミド(東洋紡績製、商品名:バイロマックスHR16NN)15質量部とN−メチル−2−ピロリドン85質量部を室温で5時間撹拌し、ポリマー溶液Cを調製した。
【0046】
<電気二重層キャパシタ>
[電極0の作製]
ポリフッ化ビニリデン10質量部をN−メチル−2−ピロリドン90質量部に溶解し、これにフェノール樹脂を出発原料とする平均粒径5.0μm、比表面積2000m/gの粉末状活性炭80質量部と、平均粒径200nmのアセチレンブラック10質量部と、N−メチル−2−ピロリドン300質量部を添加し、混合撹拌機にて十分混合して、電極スラリーを得た。塩酸により表面をエッチング処理した厚み30μmのアルミニウム箔集電体に、アプリケータを用いて上記の電極スラリーを塗布・乾燥した後に、ロールプレス装置を用いてプレス処理を行い、厚み150μmの電気二重層キャパシタ用電極を作製し、これを電極0とした。
【0047】
[セパレータ電極一体型蓄電素子の作製]
(実施例1)
電極0の電極面に、エレクトロスピニング法(印加電圧10kV、紡糸口と電極0との距離15cm)を用いてポリマー溶液Aを噴霧し、厚みが1μmの多孔質層を形成させ、セパレータ電極一体型素子を得た。
【0048】
(実施例2)
電極0の電極面に、エレクトロスピニング法(印加電圧10kV、紡糸口と電極0との距離15cm)を用いてポリマー溶液Aを噴霧し、厚みが10μmの多孔質層を形成させ、セパレータ電極一体型素子を得た。
【0049】
(実施例3)
電極0の電極面に、エレクトロスピニング法(印加電圧10kV、紡糸口と電極0との距離15cm)を用いてポリマー溶液Aを噴霧し、厚みが30μmの多孔質層を形成させ、セパレータ電極一体型素子を得た。
【0050】
(実施例4)
電極0の電極面に、エレクトロスピニング法(印加電圧10kV、紡糸口と電極0との距離15cm)を用いてポリマー溶液Aを噴霧し、厚みが50μmの多孔質層を形成させ、セパレータ電極一体型素子を得た。
【0051】
(実施例5)
電極0の電極面に、エレクトロスピニング法(印加電圧25kV、紡糸口と電極0との距離15cm)を用いてポリマー溶液Bを噴霧し、厚みが20μmの多孔質層を形成させ、セパレータ電極一体型素子を得た。
【0052】
(実施例6)
電極0の電極面に、エレクトロスピニング法(印加電圧15kV、紡糸口と電極0との距離10cm)を用いてポリマー溶液Cを噴霧し、厚みが5μmの多孔質層を形成させ、セパレータ電極一体型素子を得た。
【0053】
(比較例1)
電極0の電極面に、メルトブロー法を用いて溶融させたポリエチレンテレフタレートを吐出し、厚みが20μmの多孔質層を形成させ、セパレータ電極一体型素子を得た。ここで用いたメルトブロー法は公知の方法であり、具体的には、溶融させたポリエチレンテレフタレートを、ノズル孔から溶融ポリマーとして吐出し、オリフィスダイに隣接して設備した噴射ガス口から高温高速空気を噴射せしめて、吐出された溶融ポリエチレンテレフタレートを繊維化し、次いで繊維流をコレクタであるコンベアネット上に設置した電極0の電極面に当てることで、電極0上に多孔質層を形成させた。
【0054】
[繊維径評価]
実施例および比較例のセパレータ電極一体型蓄電素子の走査型電子顕微鏡写真より、多孔質層を形成する繊維の繊維径を計測し、無作為に選んだ100本の平均値を繊維径として表1に示した。
【0055】
【表1】

【0056】
[電気二重層キャパシタの作製]
(実施例7)
50mm×100mm角にカッティングした実施例1のセパレータ電極一体型蓄電素子を負極側、電極0を正極側として、それぞれセパレータが電極間に介するように積層した。これをアルミニウム製収納袋に収納し、200℃で10時間真空加熱を行った。このアルミニウム製収納袋内に電解液を注入し、注入口を密栓して、電気二重層キャパシタを作製した。電解液には、プロピレンカーボネートに1.5mol/lになるように(C(CH)NBFを溶解させたものを用いた。
【0057】
(実施例8)
実施例2のセパレータ電極一体型蓄電素子を用いて、実施例7と同様の方法で、電気二重層キャパシタを作製した。
【0058】
(実施例9)
50mm×100mm角にカッティングした実施例3のセパレータ電極一体型蓄電素子を正極側、電極0を負極側として、それぞれセパレータが電極間に介するように積層した。これをアルミニウム製収納袋に収納し、200℃で10時間真空加熱を行った。このアルミニウム製収納袋内に電解液を注入し、注入口を密栓して、電気二重層キャパシタを作製した。電解液には、プロピレンカーボネートに1.5mol/lになるように(C(CH)NBFを溶解させたものを用いた。
【0059】
(実施例10)
実施例4のセパレータ電極一体型蓄電素子を用いて、実施例9と同様の方法で、電気二重層キャパシタを作製した。
【0060】
(実施例11)
実施例5のセパレータ電極一体型蓄電素子を用いて、実施例9と同様の方法で、電気二重層キャパシタを作製した。
【0061】
(実施例12)
実施例6のセパレータ電極一体型蓄電素子を用いて、実施例9と同様の方法で、電気二重層キャパシタを作製した。
【0062】
(実施例13)
実施例6のセパレータ電極一体型蓄電素子を50mm×100mm角に2枚カッティングし、それぞれセパレータが電極間に介するように積層した。これをアルミニウム製収納袋に収納し、200℃で10時間真空加熱を行った後、アルミニウム製収納袋内に電解液を注入し、注入口を密栓して電気二重層キャパシタを作製した。電解液には、プロピレンカーボネートに1.5mol/lになるように(C(CH)NBFを溶解させたものを用いた。
【0063】
(比較例2)
比較例1のセパレータ電極一体型蓄電素子を用いて、実施例7と同様の方法で、電気二重層キャパシタを作製した。
【0064】
(比較例3)
繊度1.7dtex、繊維長5mmの溶剤紡糸セルロース(レンチング社製、商品名:テンセル)をダブルディスクリファイナーにて叩解処理して得られた、質量平均繊維長0.64mm、カナディアンスタンダードフリーネス10mlのフィブリル化セルロース50質量%と麻パルプ(カナディアンスタンダードフリーネス500ml)50質量%を、円網抄紙機と円網抄紙機のコンビネーション抄紙機を用い湿式抄紙して、坪量16g/m、厚み60μmのセルロース製セパレータ1を作製した。
【0065】
電極0を50mm×100mm角に2枚カッティングし、セルロース製セパレータ1が電極間に介するように積層した。これをアルミニウム製収納袋に収納し、200℃で10時間真空加熱を行った後、アルミニウム製収納袋内に電解液を注入し、注入口を密栓して電気二重層キャパシタを作製した。電解液には、プロピレンカーボネートに1.5mol/lになるように(C(CH)NBFを溶解させたものを用いた。
【0066】
[DC抵抗評価]
実施例および比較例の電気二重層キャパシタを用い、充放電電圧範囲0〜2.7V、充放電電流1Aで、定電流充放電を500サイクル繰り返し、500サイクル目の放電開始直後の電圧低下より内部抵抗を算出し、100個の平均値をDC抵抗評価として表2に示した。
【0067】
[内部短絡不良率]
上記内部抵抗評価の際の内部短絡不良率を算出し、表2に示した。
【0068】
【表2】

【0069】
実施例7〜13で作製した電気二重層キャパシタは、セパレータの厚みが薄いセパレータ電極一体型蓄電素子を具備しており、さらに、セパレータとなる多孔質層にはエレクトロスピニング法により形成された繊維径の細いナノファイバーを含有していることから、セパレータ中における電解質の移動を良好なものにすることができ、DC抵抗評価において、低い値を示した。一方、比較例3で作製した電気二重層キャパシタは、セパレータの厚みが厚く、セパレータ中の太い繊維が電解質の移動を妨げるため、DC抵抗評価において高い内部抵抗を示した。
【0070】
また、実施例7〜13で作製した電気二重層キャパシタは、セパレータとなる多孔質層にエレクトロスピニング法により形成された繊維径の細いナノファイバーを含有しているため、多孔質層は緻密になることから、内部短絡不良率は低い値を示した。一方、比較例2で作製した電気二重層キャパシタは、繊維径の太い繊維からなる薄層の多孔質層をセパレータとして用いているため、ピンホールができやすく、内部短絡不良率は高い値を示した。
【0071】
正極、負極とも実施例6のセパレータ電極一体型蓄電素子を用いている実施例13の電気二重層キャパシタは、実施例6のセパレータ電極一体型蓄電素子を正極のみに用いた実施例12の電気二重層キャパシタと比較して、セパレータの厚みが厚いために、DC内部抵抗がやや高くなった。
【0072】
<レドックスキャパシタ>
[電極10の作製]
ポリフッ化ビニリデン10質量部をN−メチル−2−ピロリドン90質量部に溶解し、これに平均粒径0.5μmの酸化ルテニウム粉末30質量部と、フェノール樹脂を出発原料とする平均粒径5.0μm、比表面積2000m/gの粉末状活性炭60質量部と、平均粒径200nmのアセチレンブラック10質量部と、N−メチル−2−ピロリドン300質量部を添加し、混合撹拌機にて十分混合して電極スラリーを得た。塩酸により表面をエッチング処理した厚み30μmのアルミニウム箔集電体に、アプリケータを用いて上記の電極スラリーを塗布・乾燥した後に、ロールプレス装置を用いてプレス処理を行い、厚み100μmのキャパシタ電極を作製し、これを電極10とした。
【0073】
[セパレータ電極一体型蓄電素子の作製]
(実施例14)
電極10の電極面に、エレクトロスピニング法(印加電圧25kV、紡糸口と電極10との距離15cm)を用いてポリマー溶液Bを噴霧し、厚みが10μmの多孔質層を形成させ、セパレータ電極一体型素子を得た。
【0074】
(比較例4)
電極10の電極面に、比較例1と同様に、メルトブロー法を用いて溶融させたポリエチレンテレフタレートを吐出し、厚みが20μmの多孔質層を形成させ、セパレータ電極一体型素子を得た。
【0075】
[繊維径評価]
実施例および比較例のセパレータ電極一体型蓄電素子の走査型電子顕微鏡写真より、多孔質層を形成する繊維の繊維径を計測し、無作為に選んだ100本の平均値を繊維径として表3に示した。
【0076】
【表3】

【0077】
[レドックスキャパシタの作製]
(実施例15)
50mm×100mm角にカッティングした実施例14のセパレータ電極一体型蓄電素子を負極側、電極10を正極側として、それぞれセパレータが電極間に介するように積層した。これをアルミニウム製収納袋に収納し、200℃で10時間真空加熱を行った後、このアルミニウム製収納袋に電解液を注入し、注入口を密栓してそれぞれレドックスキャパシタを作製した。電解液には、プロピレンカーボネートに1.0mol/lになるようにトリフルオロ酢酸を溶解させたものを用いた。
【0078】
(比較例5)
比較例4のセパレータ電極一体型蓄電素子を用いて、実施例15と同様の方法で、レドックスキャパシタを作製した。
【0079】
(比較例6)
電極10を50mm×100mm角に2枚カッティングし、セルロース製セパレータ1が電極間に介するように積層した。これをアルミニウム製収納袋に収納し、200℃で10時間真空加熱を行った後、アルミニウム製収納袋内に電解液を注入し、注入口を密栓してレドックスキャパシタを作製した。電解液には、プロピレンカーボネートに1.5mol/lになるように(C(CH)NBFを溶解させたものを用いた。
【0080】
[DC抵抗評価]
実施例および比較例のレドックスキャパシタを用い、充放電電圧範囲0〜2.7V、充放電電流1Aで、定電流充放電を500サイクル繰り返し、500サイクル目の放電開始直後の電圧低下より内部抵抗を算出し、100個の平均値をDC抵抗評価として表4に示した。
【0081】
[内部短絡不良率]
上記内部抵抗評価の際の内部短絡不良率を算出し、表4に示した。
【0082】
【表4】

【0083】
実施例15で作製したレドックスキャパシタは、セパレータの厚みが薄いセパレータ電極一体型蓄電素子を具備しており、さらに、セパレータとなる多孔質層にはエレクトロスピニング法により形成された繊維径の細いナノファイバーを含有していることから、セパレータ中における電解質の移動を良好にすることができ、DC抵抗評価において低い値を示した。一方、比較例6で作製したレドックスキャパシタはセパレータの厚みが厚く、セパレータ中の太い繊維が電解質の移動を妨げるため、DC抵抗評価において、高い内部抵抗を示した。
【0084】
また、実施例15で作製したレドックスキャパシタは、セパレータとなる多孔質層にエレクトロスピニング法により形成された繊維径の細いナノファイバーを含有しているため、多孔質層は緻密になることから、内部短絡不良率は低い値を示した。一方、比較例5で作製したレドックスキャパシタは繊維径の太い繊維からなる薄層の多孔質層をセパレータとして用いているため、ピンホールができやすく、高い内部短絡不良率を示した。
【0085】
<リチウムイオンキャパシタ>
[電極20の作製]
ポリフッ化ビニリデン10質量部をN−メチル−2−ピロリドン80質量部に溶解し、これに難黒鉛化炭素粉末(クレハ製、商品名:カーボトロンP)100質量部を添加して混合撹拌機にて十分混合して、負極用スラリーを作製した。該負極用スラリーを、厚さ32μm(気孔率57%)の銅製エキスパンドメタルからなる負極集電体に、アプリケータを用いて上記の負極用スラリーを塗布・乾燥した後に、ロールプレス装置を用いてプレス処理を行い、厚み80μmのリチウムイオンキャパシタ用負極を作製し、これを電極20とした。
【0086】
[電極21の作製]
ポリフッ化ビニリデン10質量部をN−メチル−2−ピロリドン90質量部に溶解し、これにフェノール樹脂を出発原料とする平均粒径5.0μm、比表面積2000m/gの粉末状活性炭80質量部と、平均粒径200nmのアセチレンブラック10質量部と、N−メチル−2−ピロリドン300質量部を添加し、混合撹拌機にて十分混合して、正極用電極スラリーを得た。該正極用スラリーを厚さ38μm(気孔率47%)のアルミニウム製エキスパンド集電体に、アプリケータを用いて上記の電極スラリーを塗布・乾燥した後に、ロールプレス装置を用いてプレス処理を行い、厚み90μmのリチウムイオンキャパシタ用正極を作製し、これを電極21とした。
【0087】
[セパレータ電極一体型蓄電素子の作製]
(実施例16)
電極20の電極面に、エレクトロスピニング法(印加電圧15kV、紡糸口と電極20との距離10cm)を用いてポリマー溶液Cを噴霧し、厚みが15μmの多孔質層を形成させ、セパレータ電極一体型素子を得た。
【0088】
(実施例17)
電極21の電極面に、エレクトロスピニング法(印加電圧15kV、紡糸口と電極21との距離10cm)を用いてポリマー溶液Cを噴霧し、厚みが15μmの多孔質層を形成させ、セパレータ電極一体型素子を得た。
【0089】
(比較例7)
電極20の電極面に、比較例1と同様に、メルトブロー法を用いて溶融させたポリエチレンテレフタレートを吐出し、厚みが20μmの多孔質層を形成させ、セパレータ電極一体型素子を得た。
【0090】
[繊維径評価]
実施例および比較例のセパレータ電極一体型蓄電素子の走査型電子顕微鏡写真より、多孔質層を形成する繊維の繊維径を計測し、無作為に選んだ100本の平均値を繊維径として表5に示した。
【0091】
【表5】

【0092】
(実施例18)
[リチウムイオンキャパシタの作製]
50mm×100mm角にカッティングした実施例16のセパレータ電極一体型蓄電素子と電極21とを、それぞれセパレータが電極間に介するように積層した。これをアルミニウム製収納袋に収納し、200℃で10時間真空加熱を行った。このアルミニウム製収納袋にリチウム金属を収納し、プロピレンカーボネートに1.5mol/lになるようにLiPFを溶解した電解液を注入後、注入口を密栓した。その後、リチウム金属と負極の間で1mAの定電流充電を16時間行うことにより、負極へのリチウムイオンの吸蔵を行い、それぞれリチウムイオンキャパシタを作製した
【0093】
(実施例19)
50mm×100mm角にカッティングした実施例17のセパレータ電極一体型蓄電素子と電極20とを、それぞれセパレータが電極間に介するように積層した。これをアルミニウム製収納袋に収納し、200℃で10時間真空加熱を行った。このアルミニウム製収納袋にリチウム金属を収納し、プロピレンカーボネートに1.5mol/lになるようにLiPFを溶解した電解液を注入後、注入口を密栓した。その後、リチウム金属と負極の間で1mAの定電流充電を16時間行うことにより、負極へのリチウムイオンの吸蔵を行い、それぞれリチウムイオンキャパシタを作製した。
【0094】
(比較例8)
比較例7のセパレータ電極一体型蓄電素子を用いて、実施例18と同様の方法で、リチウムイオンキャパシタを作製した。
【0095】
(比較例9)
電極20、電極21をそれぞれ50mm×100mm角にカッティングし、セルロース製セパレータ1が電極間に介するように積層した。これをアルミニウム製収納袋に収納し、200℃で10時間真空加熱を行った。このアルミニウム製収納袋にリチウム金属を収納し、プロピレンカーボネートに1.5mol/lになるようにLiPFを溶解した電解液を注入後、注入口を密栓した。その後、リチウム金属と負極の間で1mAの定電流充電を16時間行うことにより、負極へのリチウムイオンの吸蔵を行い、リチウムイオンキャパシタを作製した。
【0096】
[DC抵抗評価]
実施例および比較例のリチウムイオンキャパシタを用い、充放電電圧範囲1.9〜3.6V、充放電電流3Aで、定電流充放電を500サイクル繰り返し、500サイクル目の放電開始直後の電圧低下より内部抵抗を算出し、100個の平均値をDC抵抗評価として表6に示した。
【0097】
[内部短絡不良率]
上記内部抵抗評価の際の内部短絡不良率を算出し、表6に示した。
【0098】
【表6】

【0099】
実施例18、19で作製したリチウムイオンキャパシタは、セパレータの厚みが薄いセパレータ電極一体型蓄電素子を具備しており、さらに、セパレータとなる多孔質層にはエレクトロスピニング法により形成された繊維径の細いナノファイバーを含有していることから、セパレータ中における電解質の移動を良好なものにすることができ、DC抵抗評価において低い値を示した。一方、比較例9で作製したリチウムイオンキャパシタはセパレータの厚みが厚く、セパレータ中の太い繊維が電解質の移動を妨げるため、DC抵抗評価において、高い内部抵抗を示した。
【0100】
実施例18、19で作製したリチウムイオンキャパシタは、セパレータとなる多孔質層にエレクトロスピニング法により形成された繊維径の細いナノファイバーを含有しているため、多孔質層は緻密になることから、内部短絡不良率は低い値を示した。一方、比較例8で作製したリチウムイオンキャパシタは、繊維径の太い繊維からなる薄層の多孔質層をセパレータとして用いているため、ピンホールができやすく、高い内部短絡不良率を示した。
【0101】
また、実施例18、19で作製したリチウムイオンキャパシタはセパレータの構成が同一のセパレータ電極一体型素子をそれぞれ負極側、正極側に用いているため、DC内部抵抗は同等の値を示した。
【0102】
<電解コンデンサ>
[電極30]
表面をエッチング処理して粗面化した、厚み60μmのアルミニウム箔を電解コンデンサ用陰極とし、電極30とした。
【0103】
[電極31]
表面をエッチング処理して粗面化した後、誘電体皮膜を形成させた、厚み110μmのアルミニウム箔を電解コンデンサ用陽極とし、電極31とした。
【0104】
[セパレータ電極一体型蓄電素子の作製]
(実施例20)
電極30の電極面に、エレクトロスピニング法(印加電圧10kV、紡糸口と電極30との距離15cm)を用いてポリマー溶液Aを噴霧し、厚みが20μmの多孔質層を形成させ、セパレータ電極一体型素子を得た。
【0105】
(実施例21)
電極31の電極面に、エレクトロスピニング法(印加電圧25kV、紡糸口と電極31との距離15cm)を用いてポリマー溶液Bを噴霧し、厚みが10μmの多孔質層を形成させ、セパレータ電極一体型素子を得た。
【0106】
(比較例10)
電極30の電極面に、比較例1と同様に、メルトブロー法を用いて溶融させたポリエチレンテレフタレートを吐出し、厚みが20μmの多孔質層を形成させ、セパレータ電極一体型素子を得た。
【0107】
[繊維径評価]
実施例および比較例のセパレータ電極一体型蓄電素子の走査型電子顕微鏡写真より、多孔質層を形成する繊維の繊維径を計測し、無作為に選んだ100本の平均値を繊維径として表7に示した。
【0108】
【表7】

【0109】
[電解コンデンサの作製]
(実施例22)
実施例20のセパレータ電極一体型素子と電極31を所定の巾にスリット加工し、それぞれセパレータが電極間に介するように巻き取り、電解コンデンサ素子を作製した。次いで、電解コンデンサ素子に電解液(フタル酸テトラエチルアンモニウム24.1質量%、γ−ブチロラクトン70質量%、エチレングリコール5.9質量%)を含浸した後、所定の円筒ケースに収納して電解コンデンサを作製した。
【0110】
(実施例23)
実施例21のセパレータ電極一体型素子と電極30を所定の巾にスリット加工し、それぞれセパレータが電極間に介するように巻き取り、固体電解コンデンサ素子を作製した。次いで、電解コンデンサ素子に電解液(フタル酸テトラエチルアンモニウム24.1質量%、γ−ブチロラクトン70質量%、エチレングリコール5.9質量%)を含浸した後、所定の円筒ケースに収納して電解コンデンサを作製した。
【0111】
(比較例11)
比較例10のセパレータ電極一体型蓄電素子を用いて、実施例22と同様の方法で、電解コンデンサを作製した。
【0112】
(比較例12)
繊度1.7dtex、繊維長5mmの溶剤紡糸セルロース(レンチング社製、商品名:テンセル)をダブルディスクリファイナーにて叩解処理して得られた、質量平均繊維長0.64mm、カナディアンスタンダードフリーネス10mlのフィブリル化セルロース70質量%と麻パルプ(カナディアンスタンダードフリーネス500ml)30質量%を、円網抄紙機と円網抄紙機のコンビネーション抄紙機を用い湿式抄紙して、坪量14g/m、厚み60μmのセルロース製セパレータ2を作製した。
【0113】
電極30および電極31を所定の巾にスリット加工し、それぞれセルロース製セパレータ2が電極間に介するように巻き取り、固体電解コンデンサ素子を作製した。次いで、電解コンデンサ素子に電解液(フタル酸テトラエチルアンモニウム24.1質量%、γ−ブチロラクトン70質量%、エチレングリコール5.9質量%)を含浸した後、所定の円筒ケースに収納して電解コンデンサを作製した。
【0114】
[ESR評価]
実施例および比較例の電解コンデンサのESRを、20℃、100kHzの条件で測定し、その値を表8に示した。
【0115】
[内部短絡不良率]
上記ESR評価の際の内部短絡不良率を算出し、表8に示した。
【0116】
【表8】

【0117】
実施例22、23で作製した電解コンデンサは、セパレータの厚みが薄いセパレータ電極一体型蓄電素子を具備しており、さらに、セパレータとなる多孔質層にはエレクトロスピニング法により形成した繊維径の細いナノファイバーを含有していることから、セパレータ中における電解質の移動を良好なものにすることができ、ESR評価において低い値を示した。一方、比較例12で作製した電解コンデンサはセパレータの厚みが厚く、セパレータ中の太い繊維が電解質の移動を妨げるため、ESR評価において高い値を示した。
【0118】
実施例22、23で作製した電解コンデンサは、セパレータとなる多孔質層にエレクトロスピニング法により形成した繊維径の細いナノファイバーを含有しているため、多孔質層は緻密になることから、内部短絡不良率は低い値を示した。一方、比較例11で作製した電解コンデンサは繊維径の太い繊維からなる薄層の多孔質層をセパレータとして用いているため、ピンホールができやすく、高い内部短絡不良率を示した。
【0119】
<固体電解コンデンサ>
[電極40]
表面をエッチング処理して粗面化した、厚み40μmのアルミニウム箔を固体電解コンデンサ用陰極とし、電極40とした。
【0120】
[電極41]
表面をエッチング処理して粗面化した後、誘電体皮膜を形成させた、厚み70μmのアルミニウム箔を固体電解コンデンサ用陽極とし、電極41とした。
【0121】
[セパレータ電極一体型蓄電素子の作製]
(実施例24)
電極40の電極面に、エレクトロスピニング法(印加電圧10kV、紡糸口と電極40との距離15cm)を用いてポリマー溶液Aを噴霧し、厚みが5μmの多孔質層を形成させ、セパレータ電極一体型素子を得た。
【0122】
(実施例25)
電極41の電極面に、エレクトロスピニング法(印加電圧15kV、紡糸口と電極41との距離10cm)を用いてポリマー溶液Cを噴霧し、厚みが10μmの多孔質層を形成させ、セパレータ電極一体型素子を得た。
【0123】
(比較例13)
電極40の電極面に、比較例1と同様に、メルトブロー法を用いて溶融させたポリエチレンテレフタレートを吐出し、厚みが20μmの多孔質層を形成させ、セパレータ電極一体型素子を得た。
【0124】
[繊維径評価]
実施例および比較例のセパレータ電極一体型蓄電素子の走査型電子顕微鏡写真より、多孔質層を形成する繊維の繊維径を計測し、無作為に選んだ100本の平均値を繊維径として表9に示した。
【0125】
【表9】

【0126】
[固体電解コンデンサの作製]
(実施例26)
実施例24のセパレータ電極一体型素子と電極41を所定の巾にスリット加工し、それぞれセパレータが電極間に介するように巻き取り、固体電解コンデンサ素子を作製した。次いで、3,4−エチレンジオキシチオフェン:p−トルエンスルホン酸鉄(III):n−ブチルアルコール=34:33:33の質量比で混合した溶液を調製し、これに固体電解コンデンサ素子を浸漬した後、200℃で5分間熱処理してポリチオフェンを重合した。次いで、固体電解コンデンサ素子を所定の円筒ケースに収納して固体電解コンデンサを作製した。
【0127】
(実施例27)
実施例25のセパレータ電極一体型素子と電極40を所定の巾にスリット加工し、それぞれセパレータが電極間に介するように巻き取り、固体電解コンデンサ素子を作製した。次いで、3,4−エチレンジオキシチオフェン:p−トルエンスルホン酸鉄(III):n−ブチルアルコール=34:33:33の質量比で混合した溶液を調製し、これに固体電解コンデンサ素子を浸漬した後、200℃で5分間熱処理してポリチオフェンを重合した。次いで、固体電解コンデンサ素子を所定の円筒ケースに収納して固体電解コンデンサを作製した。
【0128】
(比較例14)
比較例13のセパレータ電極一体型蓄電素子を用いて、実施例26と同様の方法で、固体電解コンデンサを作製した。
【0129】
(比較例15)
繊度0.1dtex、繊維長3mmのポリエチレンテレフタレート繊維70質量%と繊度1.7dtex、繊維長5mmの芯鞘複合繊維(芯部:ポリエチレンテレフタレート、鞘部:ポリエチレンテレフタレートとポリエチレンイソフタレートの共重合体)30質量%を、円網抄紙機と円網抄紙機のコンビネーション抄紙機を用い湿式抄紙して、坪量16g/m、厚み60μmのポリエステル製セパレータ1を作製した。
【0130】
電極40および電極41を所定の巾にスリット加工し、それぞれポリエステル製セパレータ1が電極間に介するように巻き取り、固体電解コンデンサ素子を作製した。次いで、3,4−エチレンジオキシチオフェン:p−トルエンスルホン酸鉄(III):n−ブチルアルコール=34:33:33の質量比で混合した溶液を調製し、これに固体電解コンデンサ素子を浸漬した後、200℃で5分間熱処理してポリチオフェンを重合した。次いで、固体電解コンデンサ素子を所定の円筒ケースに収納して固体電解コンデンサを作製した。
【0131】
[ESR評価]
実施例および比較例の固体電解コンデンサのESRを、20℃、100kHzの条件で測定し、100個の平均値を表10に示した。
【0132】
[内部短絡不良率]
上記ESR評価の際の内部短絡不良率を算出し、表10に示した。
【0133】
【表10】

【0134】
実施例26、27で作製した固体電解コンデンサは、セパレータの厚みが薄いセパレータ電極一体型蓄電素子を具備しており、さらに、セパレータとなる多孔質層にはエレクトロスピニング法により形成した繊維径の細いナノファイバーを含有しており、固体電解質である導電性高分子の導通路を良好なものにすることができることから、ESR評価において低い値を示した。一方、比較例15で作製した固体電解コンデンサはセパレータの厚みが厚く、セパレータ中の太い繊維が導電性高分子の導通を大きく阻害することから、ESR評価において高い値を示した。
【0135】
実施例26、27で作製した固体電解コンデンサは、セパレータとなる多孔質層にエレクトロスピニング法により形成した繊維径の細いナノファイバーを含有しているため、多孔質層は緻密になることから、内部短絡不良率は低い値を示した。一方、比較例14で作製した固体電解コンデンサは繊維径の太い繊維からなる薄層の多孔質層をセパレータとして用いているため、ピンホールができやすく、高い内部短絡不良率を示した。
【0136】
<リチウムイオン電池>
[電極50の作製]
天然黒鉛(関西熱化学製、商品名:NG)97質量%、ポリフッ化ビニリデン3質量%を混合し、これをN−メチル−2−ピロリドンに分散させたスラリーを調製し、厚み15μmの銅箔の両面に塗布して圧延した後、150℃で2時間真空乾燥して、厚み100μmのリチウムイオン電池用負極を作製し、これを電極50とした。
【0137】
[電極51の作製]
LiMnを95質量%、アセチレンブラック2質量%、ポリフッ化ビニリデン3質量%を混合し、これをN−メチル−2−ピロリドンに分散させたスラリーを調製し、厚み20μmのアルミニウム箔の両面に塗布して圧延した後、150℃で2時間真空乾燥して、厚み100μmのリチウムイオン電池用正極を作製し、これを電極51とした。
【0138】
[セパレータ電極一体型蓄電素子の作製]
(実施例28)
電極50の電極面に、エレクトロスピニング法(印加電圧10kV、紡糸口と電極50との距離15cm)を用いてポリマー溶液Aを噴霧し、厚みが10μmの多孔質層を形成させ、セパレータ電極一体型素子を得た。
【0139】
(実施例29)
電極51の電極面に、エレクトロスピニング法(印加電圧15kV、紡糸口と電極51との距離15cm)を用いてポリマー溶液Bを噴霧し、厚みが5μmの多孔質層を形成させ、セパレータ電極一体型素子を得た。
【0140】
(比較例16)
電極50の電極面に、比較例1と同様に、メルトブロー法を用いて溶融させたポリエチレンテレフタレートを吐出し、厚みが20μmの多孔質層を形成させ、セパレータ電極一体型素子を得た。
【0141】
[繊維径評価]
実施例および比較例のセパレータ電極一体型蓄電素子の走査型電子顕微鏡写真より、多孔質層を形成する繊維の繊維径を計測し、無作為に選んだ100本の平均値を繊維径として表11に示した。
【0142】
【表11】

【0143】
[リチウムイオン電池の作製]
(実施例30)
実施例28のセパレータ電極一体型蓄電素子と電極51とを、それぞれセパレータが電極間に介するように巻回し、アルミニウム合金製の円筒型容器に収納して、リード体の溶接を行った。次いで円筒型容器ごと200℃で10時間真空乾燥した。これを真空中で室温まで放冷した後、電解液を注入して密栓し、リチウムイオン電池を作製した。電解液には、エチレンカーボネート30質量%、ジエチルカーボネート70質量%からなる混合溶媒に、LiPFを1.2Mとなるように溶解させたものを用いた。
【0144】
(実施例31)
実施例29のセパレータ電極一体型蓄電素子と電極50とを、それぞれセパレータが電極間に介するように巻回し、アルミニウム合金製の円筒型容器に収納して、リード体の溶接を行った。次いで円筒型容器ごと200℃で10時間真空乾燥した。これを真空中で室温まで放冷した後、電解液を注入して密栓し、リチウムイオン電池を作製した。電解液には、エチレンカーボネート30質量%、ジエチルカーボネート70質量%からなる混合溶媒に、LiPFを1.2Mとなるように溶解させたものを用いた。
【0145】
(比較例17)
比較例16のセパレータ電極一体型蓄電素子を用いて、実施例30と同様の方法で、リチウムイオン電池を作製した。
【0146】
(比較例18)
電極50と電極51とを、それぞれ多孔性ポリエチレンフィルムからなるセパレータ(厚み22μm、空孔率40%)が電極間に介するように巻回し、アルミニウム合金製の円筒型容器に収納して、リード体の溶接を行った。次いで円筒型容器ごと200℃で10時間真空乾燥した。これを真空中で室温まで放冷した後、電解液を注入して密栓し、リチウムイオン電池を作製した。電解液には、エチレンカーボネート30質量%、ジエチルカーボネート70質量%からなる混合溶媒に、LiPFを1.2Mとなるように溶解させたものを用いた。
【0147】
[内部抵抗]
実施例および比較例のリチウムイオン電池を1Cで30分間充電した後、交流1kHzで内部抵抗を測定し、100個の平均値を表12に示した。
【0148】
[内部短絡不良率]
上記内部抵抗評価の際の内部短絡不良率を算出し、表12に示した。
【0149】
【表12】

【0150】
実施例30、31で作製したリチウムイオン電池は、セパレータの厚みが薄いセパレータ電極一体型蓄電素子を具備しており、さらに、セパレータとなる多孔質層にはエレクトロスピニング法により形成したナノファイバーを含有しており、比較例18で用いた多孔性ポリエチレンフィルムに比べて、多孔質層の空隙が大きいことから、電解液の含浸性を良好なものにすることができ、内部抵抗評価において低い値を示した。一方、比較例18で作製したリチウムイオン電池は、多孔性ポリエチレンフィルムからなるセパレータの厚みが厚く、電解液の含浸性に劣ることから、内部抵抗評価において高い値を示した。
【0151】
実施例30、31で作製したリチウムイオン電池は、セパレータとなる多孔質層にエレクトロスピニング法により形成した繊維径の細いナノファイバーを含有しているため、多孔質層は緻密になることから、内部短絡不良率は低い値を示した。一方、比較例17で作製したリチウムイオン電池は繊維径の太い繊維からなる薄層の多孔質層をセパレータとして用いているため、ピンホールができやすく、高い内部短絡不良率を示した。
【産業上の利用可能性】
【0152】
本発明の活用例としては、キャパシタ、電解コンデンサ、固体電解コンデンサ、リチウムイオン電池、ポリアセン電池、有機ラジカル電池等の電気化学素子用セパレータが好適である。
【符号の説明】
【0153】
1 ポリマー溶液
2 貯蔵タンク
3 紡糸口
4 エレクトロスピニング装置
5 プラス電極
6 アース電極(電気化学素子用電極)
7 電源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セパレータを電極表面に接合一体化してなる電気化学素子用セパレータ電極一体型蓄電素子において、該セパレータがエレクトロスピニング法により形成されたナノファイバーを含有した多孔質層よりなることを特徴とする電気化学素子用セパレータ電極一体型蓄電素子。
【請求項2】
請求項1記載の電気化学素子用セパレータ電極一体型蓄電素子を用いてなる電気化学素子。

【図1】
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【公開番号】特開2010−225809(P2010−225809A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−70882(P2009−70882)
【出願日】平成21年3月23日(2009.3.23)
【出願人】(000005980)三菱製紙株式会社 (1,550)
【Fターム(参考)】