説明

電気化学装置

【課題】接続信頼性を向上させることが可能な電気化学装置を提供する。
【解決手段】活物質形成部21A,25Aと箔露出部21B,25Bとを備えた電極板21,25を積層してなる発電要素20と、発電要素20を収容するケーシング11に設けられた外部端子13,14に連なる本体部30A,31Aと箔露出部21B,25Bの積層部分に沿って本体部30A,31Aから延設される複数の接続片30B,31Bとを有する集電体30,31と、少なくとも箔露出部21B,25Bの積層部分をその厚さ方向に挟み付ける一対の挟持片部35Aと、箔露出部21B,25Bの積層部分をその厚さ方向に分割して挟持片部35Aとの間で挟み付ける進入片部35Bとを有し、接続片30B,31Bに対して箔露出部21B,25Bの積層部分と共に溶接された集電体30,31とは別部品のクリップ35とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気化学装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、電池、電気二重層キャパシタ等の電気化学装置では、金属箔表面に活物質層が形成された発電要素を備える。この発電要素を構成する電極板は、例えば、特許文献1及び特許文献2に記載されているように、金属箔に活物質層が形成された後、ロールプレス等によってプレスされ、所定の厚みに調整されている。そして、プレスされた正極板及び負極板の間に、セパレータを挟んだ状態で巻回することで、発電要素が得られる。
【0003】
この発電要素の巻軸方向の両端の一方には、正極板を構成する金属箔において活物質層が形成されていない未塗工部が設けられており、他方には負極板を構成する金属箔において同様の未塗工部が設けられている。正極板の未塗工部には正極集電体が、負極板の未塗工部には負極集電体がそれぞれ接続され、この各集電体には電力を入出力するための正極又は負極の外部端子が接続されている。このような構成の発電要素は、電池容器内へと収容されると共に、電解液を発電要素の電極間に満たすことで、電池として製造される。
【0004】
ところで、特許文献1及び特許文献2に記載の正極集電体及び負極集電体は、対応する電極板の未塗工部に溶接される波板状のクリップ部と当該クリップ部の略中央に位置して外部端子に接続される平板状の接続片部とから構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−223109号公報
【特許文献2】特開平11−354095号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このような構成によると、外部端子に接続される接続片部は、金属箔の未塗工部に直接溶接されるわけではないため、接続信頼性の低下が懸念される。即ち、特許文献1においては、電池ケースに固定されている外部端子に更に固定されている接続片部と、電池ケースに固定されていない電極板の未塗工部に溶接されるクリップ部とで、例えば同じ外力が加わった場合であっても振動モードが異なり、結果としてその境界部に応力が集中するため、破断等によって接続信頼性が低下する虞がある。
【0007】
また、特許文献2においては、クリップ部及び接続片部がそれぞれ未塗工部及び外部端子に溶接されており、電極板及び外部端子に対して高い接続信頼性が要求される集電体において、溶接箇所が多いのは好ましいとは言えない。更には、いずれの特許文献においても、波板状のクリップ部は、未塗工部を複数枚ずつその凹部内に挟み込んで両側から接続片部に向かって押圧・溶接するために、特に接続片部から離れた外周側に位置する未塗工部は接続片部側に向かって強く引っ張られることとなる。このため、集電体とは別に、電極板自体が破損することによっても接続信頼性が低下することが懸念されている。
【0008】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、接続信頼性を向上させることが可能な電気化学装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、導電箔表面に活物質層が形成された活物質形成部と、前記導電箔の端縁部に位置して前記活物質から前記導電箔が露出する箔露出部と、を備えた電極板を積層してなる発電要素と、前記発電要素を収容するケーシングと、前記ケーシングに設けられた外部端子と、前記外部端子に連なる本体部と、前記発電要素における前記箔露出部の積層部分に沿って前記本体部から延設される複数の接続片と、を有する集電体と、少なくとも前記箔露出部の積層部分をその厚さ方向に挟み付ける一対の挟持片部と、前記箔露出部の積層部分に分け入って前記積層部分をその厚さ方向に分割して前記挟持片部との間で前記分割された前記積層部分を挟み付ける進入片部とを有し、前記接続片に対して前記箔露出部の積層部分と共に溶接された前記集電体とは別部品のクリップと、を備えるところに特徴を有する。
【0010】
このような構成によれば、接続信頼性を向上させることができる。詳しく説明すると、まず、外部端子に連なる集電体と、発電要素の箔露出部を挟み付けて接続片と共に溶接されるクリップとは、別部品であるから、従来の例えば集電体とクリップが一体型であった場合と比較して、外力が作用することによりその境界部分に応力が集中する虞がなく、外部端子から発電要素にかけての接続信頼性を向上させることができる。
【0011】
続いて、本発明の集電体の接続片は、箔露出部の積層部分に沿って延設されており、この接続片と少なくともクリップで挟み込んだ箔露出部の積層部分とを、一度に溶接する構成であるため、従来の例えば発電要素と集電体、集電体と外部端子といった具合に、外部端子から発電要素にかけて複数回溶接を施していた場合と比較して、接続信頼性は高くなる。
【0012】
また、本発明のクリップは、箔露出部の積層部分をその厚さ方向に分割するように分け入る進入片部を有し、挟持片部との間で箔露出部を挟み付け、溶接する構成である。また、外部端子に接続される集電体の接続片は、クリップとは別部品であって箔露出部の積層部分に沿って複数設けられている。よって、少なくとも1本の接続片に向かって同側に位置する発電要素の箔露出部が寄せ集められて溶接される場合と比較して、箔露出部の溶接先である接続片が複数に分散され、又、クリップ自体も積層する箔露出部に分け入って挟持する進入片部を有するため、箔露出部が集電体及びクリップに引っ張られにくくなる。よって、引っ張られることによってその部分に応力が集中し、電極板自体が破損したり、活物質が剥離したりするのを抑制できる。結果として、発電要素と集電体にかけての接続信頼性をも向上することが可能である。
【0013】
前記クリップは、前記接続片毎に設けられていてもよい。このような構成とすれば、1つのクリップ当たり、進入片部を多数設けずともよく、製造上都合がよい。また、複数の接続片間に1つのクリップが跨って溶接される場合と比較して、自由度が高く、発電要素の箔露出部にかかる負担(例えば応力集中等)も低減可能である。
【0014】
前記クリップは、前記箔露出部の積層部分への溶接前においては、平板状の前記挟持片部と断面がV字形状をなす前記進入片部とを金属板から一体に形成されて全体として断面がM字形状をなしており、前記箔露出部の積層部分に溶接された状態では前記V字形状部分の各片が両側から圧縮されて互いに密着していることが望ましい。
【0015】
このような構成によれば、クリップ、及びその間に挟まれた発電要素の箔露出部は、当該箔露出部の積層方向においてクリップごとに隙間なく接合されることとなるため、例えば箔露出部がクリップの挟持片部と進入片部、進入片部と挟持片部等、一つのクリップであっても、複数に分かれて隙間を空けて接続されている場合と比較して、振動等に耐えうる所定以上の強度を確保することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、接続信頼性を向上させることが可能な電気化学装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態に係る非水電解質二次電池の分解斜視図
【図2】発電要素及び集電体の接続片をクリップにより挟み付けて溶接する直前の状態を模式的に表した部分拡大平面図
【図3】同溶接後を模式的に表した拡大平面図
【発明を実施するための形態】
【0018】
<実施形態>
本発明の一実施形態を図1ないし図3によって説明する。
本実施形態の電気化学装置は、例えば電気自動車やハイブリット自動車等の車両に搭載される非水電解質二次電池10(以下、単に電池という)に適用した場合を例示している。この電池10は、図1に示すように、扁平型をなす発電要素20が角形のケース11(ケーシングに相当する)に収容され、このケース11内には電解液が充填されてなる。以下、図1における上下方向を電池10の上下方向として、紙面手前側、奥側をそれぞれ前側、後側として説明する。
【0019】
ケース11は、上端が開放された上方開放型に構成され、このケースの上端開口が図示しない長方形をなした板状の蓋体12によって塞がれる。蓋体12の長手方向両側には、それぞれ対応する集電体30,31に接続された正極端子13及び負極端子14(外部端子に相当する)が突設されている。正極端子13及び負極端子14は、蓋体12、及びその上下(ケースの内外)に配された図示しないパッキンを介して対応する正極集電体30、又は負極集電体31に締結されている。
【0020】
各集電体30,31は、それぞれ大きな電流容量が得られるように十分な厚さの金属板が使用され、正極集電体30は、例えばアルミニウム合金板、負極集電体31は、例えば銅板合金板を用いて成形されている。各集電体30,31は、蓋体12の裏面に沿って配される平板状の本体部30A,31Aと、本体部30A,31Aの端縁から下方に向かって分岐した各2本ずつの接続部30B,31B(接続片に相当する)とを備えている。この接続部30A,31Bは、後述する各未塗工部21B,25Bに沿って下方に延設されており、それぞれ対応する未塗工部21B,25Bを前後両側から挟み込む位置に配置される。
【0021】
この集電体30,31の接続部30B,31Bは、クリップ35によって、発電要素20の溶接部22,26(箔露出部の積層部分における溶接部分に相当する)へと接続されている。クリップ35は、溶接される集電体30,31及び発電要素20の溶接部22,26の材質と同等の抵抗値を有する材料からなり、例えば正極側は、アルミニウム合金、負極側は銅合金製が望ましい。
【0022】
発電要素20は、正極板21(電極板に相当する)と負極板25(電極板に相当する)との間に図示しないセパレータを挟んだ状態で扁平型に巻回して構成されている。巻き解いた状態では、それぞれ巻回方向を長手方向とする帯状をなしている。正極板21は、アルミニウム箔の表面に正極活物質が担持された塗工部21A(活物質形成部に相当する)と、幅方向一端側に位置し、正極活物質が塗布されずにアルミニウム箔が露出した帯状の未塗工部21B(箔露出部に相当する)を備えている。一方、負極板25は、銅箔の表面に負極活物質が担持された塗工部25A(活物質形成部に相当する)と、正極板21の未塗工部21Bとは反対側の幅方向一端部に位置する未塗工部25B(箔露出部に相当する)とを備えている。未塗工部25Bは、同様に負極活物質が塗布されずに銅箔が露出した帯状をなしている。
【0023】
各塗工部21A,25Aには、正極又は負極の活物質層が形成されている。この活物質層は、主成分を活物質とし、それ以外に結着剤や導電助剤等が含まれている。そして、正極板21の未塗工部21Bがセパレータ及び負極板25に重ならないように、負極板25の未塗工部25Bがセパレータ及び正極板21に重ならないように面方向にずらした状態で巻回されて、図1のような発電要素20が得られる。
【0024】
即ち、発電要素20の両端部の正極側は、正極板21の未塗工部21Bのみが積層して突設された箔露出部の積層部分に相当し、同負極側は、同じく負極板25の未塗工部25Bのみが積層して突設された箔露出部の積層部分に相当する。この発電要素20の両側部に突設された各未塗工部21B,25Bの積層部分には、対応する集電体30,31の接続部30B,31Bとともにクリップ35に挟み込まれた状態で超音波溶接される溶接部22,26が設けられている。
【0025】
さて、本実施形態のクリップ35は、各電極ごとに2本ずつ設けられた集電体30,31の接続部30B,31Bに対して1個ずつ、計4個が用いられている。クリップ35は溶接前の状態において、図2に示すように、断面M字形状をなしており、その両側が溶接部22,26を挟み付ける一対の挟持片部35Aとされ、進入片部35Bは、一対の挟持片部35Aをつなぐようにして間に位置し、積層した未塗工部21B,25Bに分け入って挟み付ける断面V字形状をなしている。
【0026】
溶接後においては、図3に示すように、クリップ35の断面がE字状をなしている。つまり、溶接前においてV字形状をなす進入片部35Bが両側から圧縮されて互いに密着している。そして、クリップ35ごとに各接続部30B,31Bと共に、積層した各未塗工部21B,25Bの特に溶接部22、26が圧縮された状態で、その積層方向において隙間なく接合されている。
【0027】
本実施形態は以上にような構成であって、続いて作用及び効果について説明する。
まず、電極板21,25を構成するアルミニウム箔又は銅箔の表面に、正極又は負極の対応する活物質等からなるスラリーを塗布又は噴霧し乾燥させることで、活物質層を形成する。そして、ロールプレス工程において、活物質層が形成された各金属箔を、厚さ方向にプレスして正極板21及び負極板25を成形する。ロールプレス工程を終えた電極板21,25は、その間に図示しないセパレータを挟んで巻回され、図1のように、それぞれの電極板21,25の未塗工部21B,25Bが、その両端部にそれぞれ積層して配される。
【0028】
このようにして製造された発電要素20に、続いて集電体30,31を接続する。集電体30,31を接続するには、まず、集電体30,31の接続部30B,31Bと、それに対応する未塗工部21B,25Bの溶接部22,26とをクリップ35で挟み込む。具体的には、図2に示すように、まず積層状態の各未塗工部21B,25Bを、対応する接続部30B,31Bごとに2分割して、その分割した間部にクリップ35の進入片部35Bを進入させる。この際、接続部30B,31Bは、発電要素20の前後両側に位置するように対応する未塗工部21B,25Bと共に上記間部内へと進入される。
【0029】
そして、2分割した各未塗工部21B,25Bの溶接部22,26を挟持片部35Aと進入片部35Bとで挟み込む。続いて、隣り合うクリップ35間にアンビルを挟み、各集電体30,31の前後両端をホーンで挟んで加圧すると共に、超音波振動を与えることにより、超音波溶接される(図3参照)。この際、各未塗工部21B,25Bを各接続部30B,31Bごとに2分割し、計8分割して対応するクリップ35に超音波溶接することとなる。よって、クリップ35の各部位35A,35Bから最も遠い溶接部22,26であっても、従来の例えば分割せずに一括して一方の電極側の未塗工部を束ねて集電体の接続部に溶接していた場合と比較して、箔破れや活物質の剥離の原因となる引っ張りによる応力集中を緩和することが可能となる。
【0030】
最後に、接続された発電要素20及び集電体30,31をケース11内に収容し、電解液を注液したのち、蓋体12によって各端子13,14を外部に突出させた状態でその上部を塞ぐことにより、電池10が完成する。
【0031】
以上説明したように、本実施形態によれば、接続信頼性を向上させることができる。詳しく説明すると、まず、電極端子13,14に連なる集電体30,31と、集電体30,31の接続部30B,31Bと発電要素20の未塗工部21B,25Bとを挟み付けて溶接されるクリップ35とは、別部品であるから、従来の例えば集電体とクリップが一体型であった場合と比較して、外力が作用することによりその境界部分に応力が集中する虞がなく、電極端子13,14から発電要素20にかけての接続信頼性を向上させることができる。
【0032】
続いて、本実施形態の集電体30,31の接続部30B,31Bは、未塗工部21B,25Bの積層部分に沿ってその各前後両端に延設されており、この接続部30B,31Bと未塗工部21B,25Bの積層部分とをクリップ35で挟み込んで、一度に溶接する構成であるため、従来の例えば発電要素と集電体、集電体と外部端子といった具合に、外部端子から発電要素にかけて複数回溶接を施していた場合と比較して、接続信頼性は高まる。
【0033】
また、本実施形態のクリップ35は、未塗工部21B,25Bの積層部分をその厚さ方向に分割するように分け入る進入片部35Bを有し、挟持片部35Aとの間で未塗工部21B,25B及び集電体30,31の接続部30B,31Bを挟み付け、溶接する構成である。また、電極端子13,14に接続される集電体30,31の接続部30B,31Bは、クリップ35とは別部品であって未塗工部21B,25Bの積層部分に沿って複数設けられている。
【0034】
よって、1本の接続部に向かって同側に位置する発電要素の未塗工部が寄せ集められて溶接される場合と比較して、未塗工部21B,25Bの溶接先である接続部30B,31Bがそれぞれ電極毎に前後一対に分散され、又、クリップ35自体も積層する未塗工部21B,25Bに分け入って挟持する進入片部35Bを有するため、未塗工部21B,25Bが集電体30,31及びクリップ35に引っ張られにくくなる。よって、引っ張られることによってその部分に応力が集中し、電極板21,25自体が破損したり、活物質層が剥離したりするのを抑制できる。結果として、発電要素20と集電体30,31にかけての接続信頼性をも向上することが可能である。
【0035】
また、クリップ35は、集電体30,31の接続部30B,31B毎に設けられているから、1つのクリップ35当たり、進入片部35Bを多数設ける必要がなく、製造上都合がよい。また、複数の接続部間に1つのクリップが跨って溶接される場合と比較して、自由度が高く、発電要素20の未塗工部21B,25B付近にかかる負担(例えば応力集中等)も低減可能である。
【0036】
また、クリップ35、及びその間に挟まれた集電体30,31の接続部30B,31B及び発電要素20の未塗工部21B,25Bは、当該未塗工部21B,25Bの積層方向においてクリップ35ごとに隙間なく接合される、つまり密着されることとなるため、例えば未塗工部がクリップの挟持片部と進入片部、進入片部と挟持片部等、一つのクリップであっても、複数に分かれて隙間を空けて接続されている場合と比較して、振動等に耐えうる所定以上の強度を確保することができる。
【0037】
また、本実施形態に例示したクリップ35を用いれば、各電極板21,25の未塗工部21B、25Bの積層部分の両端にホーンを、隣り合うクリップ35の挟持片部35A間にアンビルを設置することで、超音波溶接をすることができ、従来の構成においても本実施形態の構成が容易に適用可能である。
【0038】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0039】
(1)上記した実施形態において、集電体30,31の各接続部30B,31Bごとに1個ずつのクリップ35が設けられていたが、これに限られず、複数の接続部に対して1個のクリップが設けられていてもよい。たとえば、各集電体ごとに1個のクリップが配されていてもよい。
【0040】
(2)上記した実施形態において、集電体30,31の各接続部30B,31Bは、クリップ35の挟持片部35A間に未塗工部21B,25Bの溶接部22,26と共に挟み付けられていたが、これに限られず、未塗工部(の溶接部)のみをクリップで挟み付け、そのクリップの外側に接続部を沿わせることで、発電要素の未塗工部、クリップ、集電体の接続部とを一度に溶接するものであってもよい。
【0041】
(3)上記した実施形態において、クリップ35は、一対の挟持片部35Aとこの挟持片部35A間をつなぐようにして間に位置する進入片部35Bとにより構成されていたが、これに限られず、一クリップの構成が、複数の例えば3つの挟持片部を有し、その間に進入片部が配されている構成であってもよいし、挟持片部は一対でなく、二対以上の複数対からなるものであってもよい。また、1つの挟持片部を有する構成のクリップを複数組み合わせて、隣り合うクリップの挟持片部との間で未塗工部を挟み付けるような構成であってもよい。
【0042】
(4)上記した実施形態において、クリップ35は一枚の厚さが均一な平板をプレス等で屈曲させた態様をなしていたが、必ずしもクリップの肉厚が一定である必要はない。例えば箔露出部が引っ張られることによってその部位にかかる応力が著しく高い場合には、進入片部の厚さを厚くすることで、各箔露出部における最寄の進入片部までの距離を短くし、より各箔露出部に応力がかかりにくい構成とすることができる。これにより、箔露出部における箔破れやそれに連なる活物質形成部の活物質の剥離を更に抑制することが可能となる。
【0043】
(5)上記した実施形態において、電池10は、発電要素20を1個備える場合を例示したが、これに限られず、発電要素は2個であってもよいし、3個以上であってもよい。また、発電要素が複数からなる場合、それらの接続形態は、並列接続であってもよいし、直列接続であってもよい。
【0044】
(6)上記した実施形態において、発電要素20は、扁平型に巻回されたものを例示したが、これに限られず、例えば巻回される形状は円筒状等他の形状であってもよいし、巻回するのではなく、正極板と負極板とをセパレータを挟んで複数層積層してなるものであってもよい。
【0045】
(7)上記した実施形態において、電気化学装置として非水電解質二次電池10を例示したが、これに限られず、例えば水系電解質二次電池であってもよいし、その他の電解質を用いる電池であってもよい。また、リチウムイオンキャパシタのような電気化学現象を伴うキャパシタであってもよい。
【0046】
(8)上記した実施形態において、上述の利点や効果の各々の全てが本願発明の必須の構成要件につながるものではなく、本願発明は、上述の利点や効果の各々を簡易に実現させる設計自由度を与えるものであって、少なくとも一つの利点あるいは効果を実現させるものであれば良い。
【符号の説明】
【0047】
10:非水電解質二次電池(電気化学装置)、11:ケース(ケーシング)、12:蓋体、13:正極端子(外部端子)、14:負極端子(外部端子)、20:発電要素、21:正極板(電極板)、21A,25A:塗工部(活物質形成部)、21B,25B:未塗工部(箔露出部)、22,26:溶接部、25:負極板(電極板)、30:正極集電体(集電体)、30A,31A:本体部、30B,31B:接続部(接続片)、31:負極集電体(集電体)、35:クリップ、35A:挟持片部、35B:進入片部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電箔表面に活物質層が形成された活物質形成部と、前記導電箔の端縁部に位置して前記活物質から前記導電箔が露出する箔露出部と、を備えた電極板を積層してなる発電要素と、
前記発電要素を収容するケーシングと、
前記ケーシングに設けられた外部端子と、
前記外部端子に連なる本体部と、前記発電要素における前記箔露出部の積層部分に沿って前記本体部から延設される複数の接続片と、を有する集電体と、
少なくとも前記箔露出部の積層部分をその厚さ方向に挟み付ける挟持片部と、前記箔露出部の積層部分に分け入って前記積層部分をその厚さ方向に分割して前記挟持片部との間で前記分割された前記積層部分を挟み付ける進入片部とを有し、前記接続片に対して前記箔露出部の積層部分と共に溶接された前記集電体とは別部品のクリップと、
を備える電気化学装置。
【請求項2】
前記クリップは、前記接続片毎に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の電気化学装置。
【請求項3】
前記クリップは、前記箔露出部の積層部分への溶接前においては、平板状の前記挟持片部と断面がV字形状をなす前記進入片部とを金属板から一体に形成されて全体として断面がM字形状をなしており、前記箔露出部の積層部分に溶接された状態では前記V字形状部分の各片が両側から圧縮されて互いに密着していることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の電気化学装置。
【請求項4】
前記挟持片部は対をなすことを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の電気化学装置。
【請求項5】
前記接続片は、前記クリップによって、前記箔露出部の積層部分と共にその厚さ方向の両側から挟み付けられることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の電気化学装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−77467(P2013−77467A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−217079(P2011−217079)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(507151526)株式会社GSユアサ (375)
【Fターム(参考)】