説明

電気構造体及び電気構造体の製造方法

【課題】 狭ピッチ配線においても、接続信頼性の高い電気構造体及びその製造方法を提供する。
【解決手段】 樹脂基板に少なくとも電極配線13を形成した電気構造体において、電極配線13がきのこ断面形状を有し、きのこの茎部が露出するようにきのこの傘部を樹脂基板13に埋め込み、きのこの傘部及び茎部を露出させたことにより、狭ピッチ配線においても、接続信頼性の高い電気構造体及びその製造方法の提供を実現することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導体配線を有する電気構造体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
配線基板、半導体パッケージおよび電子デバイスモジュールの小型化高性能化に伴い、配線パターンの微細化が要求されている。配線の微細化に伴って基材に対する配線の密着性や半導体素子あるいは電子部品の接続性が大きな課題となっている。
配線基板の従来技術として、仮基板1上に光硬化性樹脂を塗布し、露光、現像して導体配線パターンとは逆の反転パターンを形成した後、反転パターンのすき間に形成された電路3…に電気メッキ法により導体配線4…を形成し、次いで、得られた仮基板を金型内に収めて配線パターンの形成面に絶縁性基板を成型した後、仮基板1を成形体から取り除き、導体配線パターンとともに絶縁性マスク2をも成型体表面に転写するようにしたことで密着力を向上させている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、接続部を有する導体パターンを絶縁体の表面に形成し、前記接続部近傍における前記絶縁体表面に凹形状部を形成したことを特徴とする導体パターン接続体の配線形状を示している(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
また、半導体パッケージの小型化に対する従来技術としては特許文献3が挙げられる。
また、半導体素子Sが搭載される金属層2aと、金属層2aの周りに所定の間隔をおいて配置される1以上の電極層2bと、金属層2a上に搭載した半導体素子Sと電極層2bとを、ワイヤ−ボンデイング等の方法で電気的に接続した状態で樹脂封止して、金属層2aと電極層2bの各裏面を樹脂層4の底面から露出して形成した半導体装置において、樹脂封止される金属層2a及び電極層2b各々の上端部周縁を、庇状に張り出し形成した構成を採用することで、樹脂層4への喰い込み効果により、密着強度の向上を図ったものがある(例えば、特許文献4、5、6参照)。
【特許文献1】特開平11−17314号公報
【特許文献2】特許第2633680号公報
【特許文献3】特開平10−12773号公報
【特許文献4】特開2002−9196号公報
【特許文献5】特開2003−174121号公報
【特許文献6】特開2004−214265号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した特許文献1記載の技術では密着力を出すために配線幅を大きくする必要があり、微細化は困難である。
また、特許文献2記載の技術では、絶縁部に凹部を設けるため微細化は困難である。
また、特許文献3に記載の技術では、リードフレームを配線電極としているため、パターンの微細化が困難である。
【0006】
また、特許文献4、5、6に記載の技術では樹脂層から露出している電極巾は実際の電極巾に対して狭くなってしまうことから、露出している電極に対する接続面積を確保しにくい構造となり、接続信頼性の低下が見られることから、微細ピッチ接続が困難であった。さらに、配線形成に対して毎回フォトリソプロセスによるレジストパターニングが必要であり、製造プロセスが長いという問題もあった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで、本発明の目的は、上記課題を解決するため、狭ピッチ配線においても、接続信頼性の高い電気構造体及びその製造方法を提供することにある。
【0008】
上記課題を解決するため、請求項1記載の発明は、樹脂基板に少なくとも電極配線を形成した電気構造体において、前記電極配線がきのこ断面形状を有し、前記きのこの茎部が露出するように前記きのこの傘部を前記樹脂基板に埋め込み、前記きのこの傘部及び茎部を露出させたことを特徴とする。
【0009】
請求項1記載の発明によれば、電極配線の密着力が高くなり、しかも狭ピッチ配線で、この電極配線に対する接続面積を確保することができる電気構造体を提供することができる。
【0010】
請求項2記載の発明は、半導体素子と電極配線とを電気的に接続し、前記電極配線が露出するように樹脂封止した電気構造体において、前記電極配線がきのこ断面形状を有し、前記きのこの茎部が露出するように前記きのこの傘部を前記樹脂基板に埋め込み、前記きのこの傘部及び茎部を露出させたことを特徴とする。
【0011】
請求項2記載の発明によれば、電極配線の密着力が高くなり、しかも狭ピッチ配線で、この電極配線に対する接続面積を確保することができる電気構造体を提供することができる。
【0012】
請求項3記載の発明は、請求項1または2記載の発明において、前記茎部の長手方向の長さを1μm以下0.05μm以上としたことを特徴とする。
【0013】
請求項3記載の発明によれば、電極配線部の段差を低減し、接続性を向上できる電気構造体を提供することができる。
【0014】
請求項4記載の発明は、請求項2記載の発明において、前記半導体素子をフリップチップ実装したことを特徴とする。
【0015】
請求項4記載の発明によれば、半導体パッケージの小型化、薄型化が可能となる。
【0016】
請求項5記載の発明は、請求項1または2記載の発明において、前記茎部の径方向の長さを前記電極配線の幅の1/2以下とし、かつ1μm以上としたことを特徴とする。
【0017】
請求項5記載の発明によれば、半導体素子の狭ピッチ接続部における接続面積を大きくし強度を高めることができる。
【0018】
請求項6記載の発明は、請求項4記載の発明において、前記半導体素子上に金バンプを形成し、金及び金あるいは金及び錫共晶接続したことを特徴とする。
【0019】
請求項6記載の発明によれば、フリップチップ実装時の温度を高く設定することにより、接続部の信頼性を向上させることができる。
【0020】
請求項7記載の発明は、請求項4記載の発明において、フリップチップ接続部をアンダーフィル樹脂にて封止し、該アンダーフィル樹脂の外周部を樹脂封止したことを特徴とする。
【0021】
請求項7記載の発明によれば、大型チップ実装時の信頼性を向上させることができる。
【0022】
請求項8記載の発明は、請求項4記載の発明において、前記半導体素子を異方性導電膜にて前記電極配線と接続し、その異方性導電膜の外周部を樹脂封止したことを特徴とする。
【0023】
請求項8記載の発明によれば、大型チップ実装時の信頼性を向上させることができると共に樹脂封止工程を簡素化することができる。
【0024】
請求項9記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記電極配線を多面に形成したことを特徴とする。
【0025】
請求項9記載の発明によれば、電極配線及び半導体素子実装密度を高くすることができ、実装部の小型化が可能となる。
【0026】
請求項10記載の発明は、請求項2記載の発明において、前記電極配線を多面に形成し、前記半導体素子を多面に実装したことを特徴とする。
【0027】
請求項10記載の発明によれば、電極配線及び半導体素子実装密度を高くすることができ、実装部の小型化が可能となる。
【0028】
請求項11記載の発明は、請求項1または2記載の発明において、前記電極配線の露出面に前記茎部の長手方向の長さ以上の厚みで金属めっきを施したことを特徴とする。
【0029】
請求項11記載の発明によれば、電極配線部の段差を低減し、接続性を向上する構造を提供することができる。
【0030】
請求項12記載の発明は、樹脂基板に少なくとも電極配線を形成する電気構造体の製造方法において、樹脂封止成型金型に、電極配線に沿った開口部を有する絶縁膜を形成し、この開口部に沿って電解めっきにてきのこ断面形状の電極配線を形成した後、樹脂封止することを特徴とする。
【0031】
請求項12記載の発明によれば、電極配線形成において、毎回フォトリソプロセスを行う必要がなく、製造プロセスを簡素化でき、低コスト化と環境負荷の低減を図ることができる。
【0032】
請求項13記載の発明は、樹脂基板に少なくとも電極配線を形成する電気構造体の製造方法において、樹脂封止成型金型内に、電極配線に沿った開口部を有する絶縁膜を形成し、この開口部に沿って電解めっきにてきのこ断面形状の電極配線を形成し、この電極配線に半導体素子等の電子部品を電気的に接続した後、樹脂封止することを特徴とする。
【0033】
請求項13記載の発明によれば、電極配線形成において、毎回フォトリソプロセスを行う必要がなく、製造プロセスを簡素化でき、低コスト化と環境負荷の低減を図ることができる。
【0034】
請求項14記載の発明は、請求項12または13記載の発明において、前記樹脂封止成型金型内に形成される絶縁膜にダイヤモンドライクカーボンを用いることを特徴とする。
【0035】
請求項14記載の発明によれば、絶縁膜パターン形成された型の耐久性を向上することで繰り返し使用可能回数が増え、製造コストが低減する。
【0036】
請求項15記載の発明は、請求項12または13記載の発明において、前記樹脂封止成型金型内に形成される絶縁膜に窒化膜を用いることを特徴とする。
【0037】
請求項15記載の発明によれば、絶縁膜パターン形成された型の耐久性を向上することで繰り返し使用可能回数が増え、製造コストが低減する。
【0038】
請求項16記載の発明は、前記電解めっきの組成をクロム13%以上とすることを特徴とする。
【0039】
請求項16記載の発明によれば、型上に電解めっきにより形成した電極配線を樹脂側へ転写するときの離型性が向上する。
【発明の効果】
【0040】
本発明によれば、樹脂基板に少なくとも電極配線を形成した電気構造体において、電極配線がきのこ断面形状を有し、きのこの茎部が露出するようにきのこの傘部を樹脂基板に埋め込み、きのこの傘部及び茎部を露出させたことにより、狭ピッチ配線においても、接続信頼性の高い電気構造体及びその製造方法の提供を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
本実施形態の電気構造体は、樹脂基板に少なくとも電極配線を形成した電気構造体であって、電極配線がきのこ断面形状を有し、きのこの茎部が露出するようにきのこの傘部を樹脂基板に埋め込み、きのこの傘部及び茎部を露出させたことを特徴とする。
また、本実施形態の電気構造体は、半導体素子と電極配線とを電気的に接続し、電極配線が露出するように樹脂封止した電気構造体であって、電極配線がきのこ断面形状を有し、きのこの茎部が露出するようにきのこの傘部を樹脂基板に埋め込み、きのこの傘部及び茎部を露出させたことを特徴とする。
【0042】
本実施形態の電気構造体は、上記構成に加え、茎部の長手方向の長さ(「くびれ段差」ともいう)を1μm以下0.05μm以上とするのが好ましい。
ここで、くびれ段差は、絶縁開口部に対して電界めっきしているため、この絶縁膜厚分だけ段差が生じる。このため、絶縁膜厚としては0.05μm以上必要となる。また、くびれ段差が1μmを超えると、下段部での接続が困難となり、フリップチップ実装等において接続に有効な配線幅が狭くなるためである。
【0043】
尚、接続においては電極配線のTOP幅が広い方が接続信頼性を向上することができる。また、下限の0.05μmは絶縁膜のめっき絶縁性を確保するために必要な膜厚に依存した数値である。
【0044】
本実施形態の電気構造体は、上記構成に加え、半導体素子をフリップチップ実装してもよい。
【0045】
本実施形態の電気構造体は、上記構成に加え、茎部の径方向の長さを電極配線の幅の1/2とし、かつ以下1μm以上とするのが好ましい。
ここで、下限の1μmの根拠は、接続面積を増大させるためである。くびれ段差を有するにより、その分接続に寄与する電極配線の表面積が大きくなり、強度を増すことができる。また、上限の電極配線の幅の1/2については、フリップチップ実装において、電極幅に相当するバンプを接続するに際して、このバンプが電極部段差に追従して接続面積を拡大できる範囲を指定するものである。
【0046】
本実施形態の電気構造体は、上記構成に加え、半導体素子上に金バンプを形成し、金及び金あるいは金及び錫共晶接続するのが好ましく、フリップチップ接続部をアンダーフィル樹脂にて封止し、アンダーフィル樹脂の外周部を樹脂封止するのが好ましい。
【0047】
本実施形態の電気構造体は、上記構成に加え、半導体素子を異方性導電膜にて電極配線と接続し、その異方性導電膜の外周部を樹脂封止してもよく、電極配線を多面に形成してもよい。
【0048】
本実施形態の電気構造体は、上記構成に加え、電極配線を多面に形成し、半導体素子を多面に実装してもよい。
【0049】
本実施形態の電気構造体は、上記構成に加え、電極配線の露出面に茎部の長手方向の長さ以上の厚みで金属めっきを施すのが好ましい。
【0050】
本実施形態の電気構造体の製造方法は、樹脂基板に少なくとも電極配線を形成する電気構造体の製造方法であって、樹脂封止成型金型に、電極配線に沿った開口部を有する絶縁膜を形成し、この開口部に沿って電解めっきにてきのこ断面形状の電極配線を形成した後、樹脂封止することを特徴とする。
【0051】
本実施形態の電気構造体の製造方法は、樹脂基板に少なくとも電極配線を形成する電気構造体の製造方法において、樹脂封止成型金型内に、電極配線に沿った開口部を有する絶縁膜を形成し、この開口部に沿って電解めっきにてきのこ断面形状の電極配線を形成し、この電極配線に半導体素子等の電子部品を電気的に接続した後、樹脂封止することを特徴とする。
【0052】
本実施形態の電気構造体の製造方法は、上記構成に加え、樹脂封止成型金型内に形成される絶縁膜にダイヤモンドライクカーボンを用いてもよく、樹脂封止成型金型内に形成される絶縁膜に窒化膜を用いてもよい。
【0053】
本実施形態の電気構造体の製造方法は、上記構成に加え、電解めっきの組成をクロム13%以上とするのが好ましい。
【実施例1】
【0054】
図1(a)〜(e)は本発明に係る電気構造体の製造方法の一実施例を示す工程図である。
金属型10上にフッ素コート剤(フロロサーフFG−5010S)11を約0.1μm厚でコーティングし、100℃30分加熱後、エキシマレーザによるアブレーション加工で50μm巾の開口パターン(親疎水パターン)12を120μmピッチで形成した。
この親疎水パターン12が形成された金属型10上に硫酸銅めっき液を使用して電解銅めっきを施して8μm厚の電極配線13を形成した。
この電解銅めっきはフッ素コート膜(絶縁膜)11の膜厚より、厚付けしているため、電極配線13の形状はきのこ断面形状となる。電極配線がきのこ形状を有していても、電極配線全面が露出していることから、狭ピッチ配線においても、この電極配線に対する接続面積を確保することができ接続信頼性を向上できる。
このときの電極配線13の幅W10は電解銅めっき膜厚に依存し、約65μmとなった。尚、W11は電極くびれ幅(きのこの茎部の幅)である(図1(a))。
【0055】
この電解銅めっきによる電極配線13が形成された型14を一部として、熱硬化性半導体封止用の樹脂(G760L(住友ベークライト製))15にてトランスファー成形し(図1(b))、離型した。
離型により、電極配線13が樹脂15側に転写され、型14上にはフッ素コート膜11による親疎水パターンが形成されたまま残った。
【0056】
ここで、電極配線13を形成した型を多面(図では上下両面であるが限定されない。)に配置し、樹脂成形することにより、多面に電極配線13を転写形成することができた(図1(c))。
【0057】
このきのこ形状をした電極配線13は、湾曲部が樹脂15中に埋め込まれており樹脂15との密着力を向上することができる。
ここで、電極配線13はフッ素コート膜(絶縁膜)11の厚さに依存するくびれ部段差(きのこの茎部の長手方向の長さ)H10(ここでは約0.1μm)を有しており、電極配線13の幅方向に対して樹脂面から全面露出している。くびれ段差が1μm以下0.05μm以上であるため、電極配線に対する接続性が向上できる。
この電極配線13に対して、無電解ニッケル、金めっき16を総厚が約0.5μmになるように行い(図1(d))、異方性導電膜17を用いて半導体素子18をフリップチップ実装した結果(図1(e))、良好な接続特性を得ることができた。 電極くびれ段差以上の膜厚で金属めっきしていることから、電極段差がより一層小さくでき、電極配線に対する接続性を向上できる。
【0058】
樹脂面から露出しているきのこ形状電極配線13のくびれ部段差H10約0.1μmに対して、表面に約0.5μmの無電解めっきを行うことにより、くびれ部段差H10は更に小さくなり、電極配線13に対するワイヤボンディング等に対する接続性が向上できる。
【0059】
逆にくびれ部段差H10が大きくなると、異方性導電膜17による接続においては、導電粒子の電極に対する接触が安定しなくなる。また、ワイヤボンディングにおいては、十分なワイヤ変形が得られず接続強度が大幅に低下してしまうなどの問題が生じる。また、型側においては親疎水パターンがそのまま残っていることから、繰り返し使用することができ、電極配線形成に対して毎回フォトリソプロセスをする必要がなくなることから製造プロセスの簡素化による低コスト化と、レジスト等の使用部材を削減できることから環境負荷を低減することとを図ることができる。
なお、電極配線13を形成する型14は、薄い金属シート状でも良い。
【0060】
ここで、一般的に狭ピッチで電極配線を形成する場合は、電極配線膜厚以上の膜厚を有するレジスト膜をパターニングすることが行われている。しかし、この構成では樹脂成形による電極配線の転写において、樹脂との接触面積が小さいことから、電極配線を安定して型から離型することができなかった。
【0061】
本構成によれば、電極配線形成のための絶縁膜を薄くすることで、電極配線はきのこ形状となるため成形樹脂との接触面積を大きくすることができることで接着力を大きくできるため、安定して転写できる。しかも、本構成では露出する電極幅も広く取ることができる。また、多面に電極配線および半導体素子を実装することにより、実装部の小型化が可能となる。さらに、絶縁膜パターンを繰り返し使うことができるため、製造プロセスを簡素化でき、低コスト化と環境負荷の低減ができる。
【実施例2】
【0062】
図2(a)〜(e)は本発明に係る電気構造体の製造方法の他の実施例を示す工程図である。
金属型20上にフッ素コート剤(フロロサーフFG−5010S)21を約0.1μm厚でコーティングし、100℃30分加熱後、エキシマレーザによるアブレーション加工で50μm巾の開口パターン(親疎水パターン)22を120μmピッチで形成した。
この親疎水パターン22が形成された金属型20上に硫酸銅めっき液を使用して電解銅めっきを8μm厚で形成した。
この電解銅めっきはフッ素コート膜(絶縁膜)21の膜厚より、厚付けしているため、電極配線23の断面形状はきのこ形状となる。電極配線がきのこ形状を有していても、電極配線全面が露出していることから、狭ピッチ配線においても、この電極配線に対する接続面積を確保することができ接続信頼性を向上できる。
このときの電極配線23の幅W20は電解銅めっき膜厚に依存し、約65μmとなった。
この金属型20上に形成された電極配線23上に半導体素子TEGチップ24をフリップチップ実装した。
【0063】
ここでは、9×1.6mmサイズの半導体素子TEGチップ24の電極パッド上に金バンプ(30μm厚)25を形成し、金属型20上の電極配線23には錫めっきを施し、熱圧着による金及び錫共晶接続を行った。 耐熱性を有する型上で金及び金あるいは金及び錫共晶接続をすることから、接続信頼性を高くできる(図2(a))。
【0064】
なお、金属型20上の電極配線23の表層に金めっきを施し、金及び金の熱圧着接続によるフリップチップ接続も可能である。フリップチップ実装することで、小型、薄型化ができる。
金属型20上の電極配線23に対して熱圧着接続するため、温度を高く設定することができ金属間の接合が安定し、接続信頼性を向上できる。
【0065】
この半導体素子TEGチップ24がフリップチップ接続された電極配線23を有する型26を一部として、熱硬化性半導体封止用の樹脂(G760L(住友ベークライト製))27にてトランスファー成形した(図(b))。
【0066】
樹脂27は半導体素子TEGチップ24の接続面まで浸透、硬化し、電極配線23の転写および半導体素子TEGチップ24を埋め込んだ構成にて離型でき、半導体素子TEGチップ24と電極配線23との導通特性が良好であることを確認した(図2(c)、(d))。
【0067】
ここで、電極配線23を形成した金属型20を多面に配置し半導体素子TEGチップ24を実装後、樹脂成形することにより、多面に電極配線23および半導体素子TEGチップ24を実装した電気構造体を形成することができる(図2(e))。
【0068】
また、電極配線23はきのこ断面形状を有しており、傘部(湾曲部)が樹脂27中に埋め込まれているので、接触面積が大きくなり樹脂27との密着力を向上することができる。
【0069】
ここで、電極配線23はフッ素コート膜(絶縁膜)21の厚さに依存する段差H20を有しており、電極配線23の幅方向に対して樹脂面から全面露出している。
この露出している電極配線23に対して、電子部品をはんだ接続するに際して、電極幅W20を広く取ることができているため、接続信頼性を向上できる。尚、W21は電極くびれ幅(きのこの茎部の幅)である。電極くびれ幅を電極幅の1/2以下とし、かつ1μm以上とすることで、きのこ形状の曲率を小さくでき、フリップチップ実装部の接続面積が大きくなり、強度を高くできる。また、多面に電極配線および半導体素子を実装していることから、実装部の小型化が可能となる。
【実施例3】
【0070】
図3は本発明に係る電気構造体の製造方法の他の実施例の説明図である。
図示しない金属型上に、フッ素コート剤(フロロサーフFG−5010S)を約0.1μm厚でコーティングし、100℃30分加熱後、エキシマレーザによるアブレーション加工で25μm幅の開口パターン(親疎水パターン)を120μmピッチで形成した。この親疎水パターンが形成された金属型上に硫酸銅めっき液を使用して電解銅めっきを20μm厚で形成した。この電解銅めっきはフッ素コート膜(絶縁膜)の膜厚より、厚付けしているため、電極配線30の断面形状はきのこ形状となる。このときの電極幅W30は電解銅めっき膜厚に依存し、約65μmとなった。開口パターン幅を狭くし、電解銅めっき厚を厚く形成したことにより、実施例1、2に比較して電極配線30のきのこ形状の傘部の曲率が小さくなっている。電極くびれ幅を電極幅の1/2以下とし、かつ1μm以上とすることで、きのこ形状の曲率を小さくでき、フリップチップ実装部の接続面積が大きくなり、強度を高くできる。また、くびれ段差が1μm以下0.05μm以上であるため、電極配線に対する接続性が向上できる。
【0071】
この電極配線30に半導体素子TEGチップ33をフリップチップ実装した。フリップチップ実装することで、小型、薄型化ができる。
ここでは、実施例2と同様に9×1.6mmサイズの半導体素子TEGチップ33の電極パッド上に金バンプ(30μm厚)32を形成し、金属型上の電極配線30には錫めっき32を施し、熱圧着による金及び錫共晶接続を行った。耐熱性を有する型上で金及び金あるいは金及び錫共晶接続をすることから、接続信頼性を高くできる。なお、本実施例においても金属型上の電極配線32の表層に金めっきを施し、金及び金の熱圧着接続によるフリップチップ接続も可能である。
【0072】
フリップチップ接続面の電極配線30のきのこ形状の傘部の曲率が小さくなったことで、半導体素子TEGチップ33上のバンプの変形により、実質的な接続面積が増え、接続強度を向上することができた。
この半導体素子TEGチップ33がフリップチップ接続された電極配線30を有する型を一部として、熱硬化性半導体封止用の樹脂(G760L(住友ベークライト製))にてトランスファー成形した。
【0073】
樹脂は半導体素子TEGチップ接続面まで浸透、硬化し、電極配線転写および半導体素子TEGチップを埋め込んだ構成にて離型でき、半導体素子TEGチップと電極配線との導通特性が良好であることを確認した。また、アンダーフィル樹脂により封止することで、大型チップに対しても樹脂が浸透し、安定して導体配線転写できる。
【実施例4】
【0074】
図4(a)〜(e)は本発明に係る電気構造体の製造方法の他の実施例を示す工程図である。
Cr13%以上の組成を有するステンレス製の金型(HPM38:日立金属)40上にプラズマCVDにより、ダイヤモンドライクカーボン(以下DLC)膜41を約0.8μmの厚さに成膜した。電極配線が離型する金型表面材質としてCrを13%以上とすることで、電解銅めっきの離型性が向上し、樹脂への転写性を向上できる。また、絶縁膜パターンとしてDLCおよび窒化膜を使用することで、耐久性が向上するため繰り返し使用可能回数が増え、製造コストを低減できる。
このDLC膜41は、DLC膜41上に形成した金属薄膜のパターニング膜をマスクとして、酸素プラズマ処理により、エッチングが施され、50μm幅の開口パターン42が形成されている。その後、表層の金属薄膜を全面エッチングした。開口パターン42のピッチは120μmとした。
このDLC膜41は絶縁性を有しており、金型40上に硫酸銅めっき液を使用して電解銅めっきを8μm厚で形成した。
この電解銅めっきはDLC膜41の膜厚より、厚付けしているため、電極配線43の断面形状はきのこ形状となる。電極配線がきのこ形状を有していても、電極配線全面が露出していることから、狭ピッチ配線においても、この電極配線に対する接続面積を確保することができ接続信頼性を向上できる。このときの電極幅W40は電解銅めっき膜厚に依存し、約65μmとなった(図4(a))。
【0075】
この金型40上に形成された電極配線43上に半導体素子TEGチップ44をフリップチップ実装した。フリップチップ実装することで、小型、薄型化ができる。
【0076】
本実施例では、8×8mmサイズの半導体素子TEGチップ44の電極パッド上に金バンプ(30μm厚)45を形成し、金型40上の電極配線43には錫めっきを施し、熱圧着による金及び錫共晶接続を行った。
その後、フリップチップ実装部にアンダーフィル樹脂(CEL-C-7700(日立ケミカル製))46を供給し、硬化した。アンダーフィル樹脂により封止することで、大型チップに対しても樹脂が浸透し、安定して導体配線転写できる。(図4(b))。
【0077】
その後、この半導体素子TEGチップ44がフリップチップ接続された電極配線43を有する型47を一部として、熱硬化性半導体封止用樹脂(G760L(住友ベークライト製))48にてトランスファー成形した(図4(c))。
【0078】
アンダーフィル樹脂46は狭ギャップ部への浸透性に優れ、半導体素子のチップサイズが大きくなっても完全に浸透させることができ、電極配線43の転写および半導体素子実装部の封止を確実に行うことができた(図4(d))。
【0079】
ここで、金型40上に形成したDLC膜41は硬度が高く耐磨耗性に優れ、離型性も良いことから、無機フィラーを含有した樹脂成形に対しても、金型40上に形成したパターン絶縁膜として耐久性に優れており、繰り返し使用回数を更に多くすることができるため、電極配線形成に対して毎回フォトリソプロセスをする必要がなくなることから製造プロセスの簡素化による低コスト化と、レジスト等の使用部材を削減できることから環境負荷を低減することができる。
【0080】
ここで、DLC膜以外にも絶縁性に優れ、フォトリソプロセスでパターニングが可能な窒化膜を適用することができる。
また、本実施例では金及び錫共晶接続の例を示したが、金及び金接続およびメカニカルな金及び金接触状態でアンダーフィル樹脂の収縮力にて接続を確保する構造等も適用可能となる。
【実施例5】
【0081】
図5は本発明に係る電気構造体の製造方法の他の実施例の説明図である。
実施例1〜4に示した構造で金型上に形成された電極配線50に対して、異方性導電膜51により金バンプ52を形成した半導体素子53を接続し、樹脂54により成形し、金型より離型することで、電極配線の転写と半導体素子の埋め込み状態での実装を達成した構成である。異方性導電膜により接続することで、大型チップ実装に対しても接続部と電極配線転写部の信頼性を確保できる。
実施例1〜4においては、熱硬化性樹脂を用いて成形しているが、熱可塑性樹脂でも問題ない。熱可塑性樹脂としては、接続性を考慮すると耐熱性が求められ、高耐熱性を有するPPS、LCP等の樹脂が特に優れている。
【0082】
本発明は、各種電子機器の配線基板に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】(a)〜(e)は本発明に係る電気構造体の製造方法の一実施例を示す工程図である。
【図2】(a)〜(e)は本発明に係る電気構造体の製造方法の他の実施例を示す工程図である。
【図3】本発明に係る電気構造体の製造方法の他の実施例の説明図である。
【図4】(a)〜(e)は本発明に係る電気構造体の製造方法の他の実施例を示す工程図である。
【図5】本発明に係る電気構造体の製造方法の他の実施例の説明図である。
【符号の説明】
【0084】
10 金属型
11 フッ素コート剤(フッ素コート膜、絶縁膜)
12 親疎水パターン
13 電極配線
14 型
15 樹脂
16 金めっき
17 異方性導電膜
18 半導体素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂基板に少なくとも電極配線を形成した電気構造体において、
前記電極配線がきのこ断面形状を有し、前記きのこの茎部が露出するように前記きのこの傘部を前記樹脂基板に埋め込み、前記きのこの傘部及び茎部を露出させたことを特徴とする電気構造体。
【請求項2】
半導体素子と電極配線とを電気的に接続し、前記電極配線が露出するように樹脂封止した電気構造体において、
前記電極配線がきのこ断面形状を有し、前記きのこの茎部が露出するように前記きのこの傘部を前記樹脂基板に埋め込み、前記きのこの傘部及び茎部を露出させたことを特徴とする電気構造体。
【請求項3】
前記茎部の長手方向の長さを1μm以下0.05μm以上としたことを特徴とする請求項1または2記載の電気構造体。
【請求項4】
前記半導体素子をフリップチップ実装したことを特徴とする請求項2記載の電気構造体。
【請求項5】
前記茎部の径方向の長さを前記電極配線の幅の1/2以下とし、かつ1μm以上としたことを特徴とする請求項1または2記載の電気構造体。
【請求項6】
前記半導体素子上に金バンプを形成し、金及び金あるいは金及び錫共晶接続したことを特徴とする請求項4記載の電気構造体。
【請求項7】
フリップチップ接続部をアンダーフィル樹脂にて封止し、該アンダーフィル樹脂の外周部を樹脂封止したことを特徴とする請求項4記載の電気構造体。
【請求項8】
前記半導体素子を異方性導電膜にて前記電極配線と接続し、その異方性導電膜の外周部を樹脂封止したことを特徴とする請求項4記載の電気構造体。
【請求項9】
前記電極配線を多面に形成したことを特徴とする請求項1記載の電気構造体。
【請求項10】
前記電極配線を多面に形成し、前記半導体素子を多面に実装したことを特徴とする請求項2記載の電気構造体。
【請求項11】
前記電極配線の露出面に前記茎部の長手方向の長さ以上の厚みで金属めっきを施したことを特徴とする請求項1または2記載の電気構造体。
【請求項12】
樹脂基板に少なくとも電極配線を形成する電気構造体の製造方法において、
樹脂封止成型金型に、電極配線に沿った開口部を有する絶縁膜を形成し、この開口部に沿って電解めっきにてきのこ断面形状の電極配線を形成した後、樹脂封止することを特徴とする電気構造体の製造方法。
【請求項13】
樹脂基板に少なくとも電極配線を形成する電気構造体の製造方法において、
樹脂封止成型金型内に、電極配線に沿った開口部を有する絶縁膜を形成し、この開口部に沿って電解めっきにてきのこ断面形状の電極配線を形成し、この電極配線に半導体素子等の電子部品を電気的に接続した後、樹脂封止することを特徴とする電気構造体の製造方法。
【請求項14】
前記樹脂封止成型金型内に形成される絶縁膜にダイヤモンドライクカーボンを用いることを特徴とする請求項12または13記載の電気構造体の製造方法。
【請求項15】
前記樹脂封止成型金型内に形成される絶縁膜に窒化膜を用いることを特徴とする請求項12または13記載の電気構造体の製造方法。
【請求項16】
前記電解めっきの組成をクロム13%以上とすることを特徴とする請求項12または13記載の電気構造体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−253228(P2006−253228A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−64455(P2005−64455)
【出願日】平成17年3月8日(2005.3.8)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】