説明

電気機器の冷却装置

【課題】優れた冷却効率を実現しつつ、小型化が図られる電気機器の冷却装置、を提供する。
【解決手段】電力制御ユニットの冷却装置20は、電気絶縁性の冷媒が封入されるPCUケース24と、通路形成板30と、発熱素子36と、PCUケース24に設けられるラジエータ部26とを備える。通路形成板30は、鉛直方向に互いに間隔を隔てて配置される複数の整流用隔壁部31を有する。通路形成板30は、PCUケース24の内部に冷媒を循環させるための循環通路40を形成する。発熱素子36は、複数の整流用隔壁部31に搭載され、循環通路40に配置される。ラジエータ部26は、発熱素子36よりも鉛直方向の上側に配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、一般的には、電気機器の冷却装置に関し、より特定的には、電気絶縁性および熱伝導性に優れた冷媒を用いる電気機器の冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の電気機器の冷却装置に関して、たとえば、国際公開第2000/16397号公報には、発熱量の大きい半導体パッケージを効率よく冷却しながら、冷却水の圧力損失を小さく抑えることを目的とした電子機器が開示されている(特許文献1)。特許文献1に開示された電子機器においては、半導体モジュールを搭載した筐体に、ポンプを用いて、冷却された水が循環される。半導体モジュールを冷却する間、水は、蛇行状に形成された水路を流れる。
【0003】
また、特開昭61−1041号公報には、品質管理を容易にするとともに高い信頼性を実現し、かつコストを低減することを目的とした沸騰冷媒式冷却装置が開示されている(特許文献2)。特許文献2に開示された沸騰冷媒式冷却装置においては、半導体スタックのような電気機器が、密閉容器内の沸騰冷媒中に浸される。
【0004】
また、特開平1−73996号公報には、組み立て時の作業性を向上させるとともに、より高い放熱効率を得ることを目的としたモジュールの放熱構造が開示されている(特許文献3)。特許文献3に開示されたモジュールの放熱構造においては、ケーシングの上側開口部がラジエータにより密封されるとともに、ケーシング内に不活性冷媒溶液が封入される。
【0005】
また、特開2005−116578号公報には、デバイスで発生する熱を効率よく放散し、デバイスの動作や寿命、信頼性を向上することを目的とした放熱構造体が開示されている(特許文献4)。特許文献4に開示された放熱構造体においては、放熱器の内部に、LLC(long life coolant)やフロリナート(商品名、スリーエム社製)などの冷媒が流される。放熱器には、冷媒と直接接触するように金属箔が設けられ、その金属箔の表面に、発熱を伴うデバイスが接合されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2000/16397号公報
【特許文献2】特開昭61−1041号公報
【特許文献3】特開平1−73996号公報
【特許文献4】特開2005−116578号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述の特許文献に開示されるように、冷却水などの冷媒を循環させながら半導体モジュールなどの発熱素子を冷却する装置が利用されている。
【0008】
しかしながら、特許文献1に開示された電子機器においては、冷却水を循環させるためのポンプが設けられるため、冷却装置の小型化を十分に図ることができない。また、特許文献2に開示された沸騰冷媒式冷却装置においては、冷媒の気化熱を利用して電気機器を冷却するため、冷媒に積極的に気泡を発生させ、冷却効率を高める必要がある。しかしながら、気泡によって発熱素子間で放電が発生する懸念が生じるため、半導体素子等の発熱素子間の距離を十分に確保する必要がある。この場合、電気機器の小型化が困難となる。
【0009】
そこでこの発明の目的は、上記の課題を解決することであり、優れた冷却効率を実現しつつ、小型化が図られる電気機器の冷却装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明に従った電気機器の冷却装置は、電気絶縁性の冷媒が封入される密閉筐体と、通路形成部材と、発熱素子と、密閉筐体に設けられる放熱部とを備える。通路形成部材は、鉛直方向に互いに間隔を隔てて配置される複数の隔壁部を有する。通路形成部材は、密閉筐体の内部に冷媒を循環させるための循環通路を形成する。発熱素子は、複数の隔壁部に搭載され、循環通路に配置される。放熱部は、発熱素子よりも鉛直方向の上側に配置される。
【0011】
このように構成された電気機器の冷却装置によれば、鉛直方向に互いに距離を隔てた複数の隔壁部に発熱素子を搭載することにより、冷媒は、発熱素子からの受熱によって温度上昇しながら、密閉筐体内の下側から上側に向けて循環通路を流れる。温度上昇した冷媒は、発熱素子よりも鉛直方向の上側に配置された放熱部との間で熱交換を行なうことによって冷却され、密閉筐体内の下側に再び戻される。本発明では、このような冷媒の熱対流を利用することによって、発熱素子を効率的に冷却しつつ、冷却装置の小型化を図ることができる。
【0012】
また好ましくは、複数の隔壁部は、互いに隣り合って配置される第1隔壁部および第2隔壁部を含む。第1隔壁部および第2隔壁部は、第1隔壁部と第2隔壁部との間に形成される循環通路の面積が、冷媒流れの上流側よりも下流側で大きくなるように配置される。このように構成された電気機器の冷却装置によれば、循環通路を流れる冷媒の圧力が、冷媒流れの上流側で高く、下流側で低くなる。これにより、冷媒の流速が高まり、発熱素子の冷却効率をさらに向上させることができる。
【0013】
また好ましくは、複数の隔壁部は、循環通路が鉛直方向の下側から上側に蛇行しながら延びるように配置される。このように構成された電気機器の冷却装置によれば、冷媒装置の小型化を図りつつ、冷媒が循環する循環通路上により多くの発熱素子を配置することができる。
【0014】
また好ましくは、複数の隔壁部は、複数の隔壁部のうちで最も鉛直方向の上側に配置される第3隔壁部と、最も鉛直方向の下側に配置される第4隔壁部とを含む。通路形成部材は、第3隔壁部と第4隔壁部との間で延在し、放熱部により冷却された冷媒を冷媒流れの上流側に戻すための戻し通路用隔壁部をさらに有する。戻し通路用隔壁部は、第3隔壁部および第4隔壁部よりも小さい熱伝導性を有する。
【0015】
このように構成された電気機器の冷却装置によれば、冷媒流れの上流側となる第4隔壁部と、冷媒流れの下流側となる第3隔壁部との間で、戻し通路用隔壁部を通じて熱が授受されることを抑制できる。これにより、放熱部によって冷却された冷媒をより円滑に、冷媒流れの下流側から上流側に戻すことができる。
【0016】
また好ましくは、電気機器の冷却装置は、隔壁部と発熱素子との間に介挿され、発熱素子を隔壁部に固定するための素子固定部をさらに備える。素子固定部は、電気絶縁性を有する材料により形成される。このように構成された電気機器の冷却装置によれば、発熱素子に対する電気的な絶縁を、素子固定部により確保する。これにより、隔壁部を形成する材料の自由度が高まるため、循環通路を形成する隔壁部と、循環通路を流れる冷媒との間の熱交換を促進させることができる。
【0017】
また好ましくは、冷媒は、飽和蒸気圧以上に加圧されて密閉筐体に封入される。このように構成された電気機器の冷却装置によれば、発熱素子から受熱した冷媒に気泡が発生するということがなくなる。これにより、気泡の発生に起因して発熱素子間で放電が発生するという懸念が解消する。結果、発熱素子間の距離をより小さく設定することが可能となり、冷却装置の小型化を図ることができる。
【発明の効果】
【0018】
以上に説明したように、この発明に従えば、優れた冷却効率を実現しつつ、小型化が図られる電気機器の冷却装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】ハイブリッド自動車を示す側面図である。
【図2】図1中のハイブリッド自動車に搭載される電力制御ユニットを説明するための電気回路図である。
【図3】図2中の電力制御ユニットの冷却装置を示す断面図である。
【図4】図3中のPCUケース内に形成される冷媒流れを示す断面図である。
【図5】この発明の実施の形態2における電力制御ユニットの冷却装置を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
この発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、以下で参照する図面では、同一またはそれに相当する部材には、同じ番号が付されている。
【0021】
(実施の形態1)
図1は、ハイブリッド自動車を示す側面図である。本実施の形態では、本発明を、ハイブリッド自動車10に搭載された電力制御ユニット(PCU:power control unit)を冷却するための装置に適用した場合について説明する。
【0022】
図1を参照して、ハイブリッド自動車10は、ガソリンエンジンやディーゼルエンジン等の内燃機関と、充放電可能な2次電池(バッテリ)から電力供給されるモータとを動力源とする。
【0023】
ハイブリッド自動車10には、エンジンルーム15が形成されている。エンジンルーム15は、車両前方に配置されている。エンジンルーム15は、ハイブリッド自動車10の走行時に、格子状のフロントグリルなどを通じて走行風を取り込み可能なように設けられている。本実施の形態における電力制御ユニットの冷却装置20は、エンジンルーム15に配置されている。
【0024】
図2は、図1中のハイブリッド自動車に搭載される電力制御ユニットを説明するための電気回路図である。
【0025】
図2を参照して、電力制御ユニット60は、高電圧蓄電装置50および低電圧蓄電装置56の直流電力を、高電圧交流電力で作動する回転電機としてのモータジェネレータ52およびモータジェネレータ54と、低電圧で作動するLV(low-level voltage)機器58とに対して、それぞれの作動に適した電圧、交流等の状態に変換する機能を有する。また、逆に、モータジェネレータ52およびモータジェネレータ54からの回生電力を、高電圧蓄電装置50に適した電圧、直流に変換して、高電圧蓄電装置50に充電する機能も有する。
【0026】
電力制御ユニット60に接続される高電圧蓄電装置50は、充放電可能な高電圧の2次電池(バッテリ)である。このような高電圧蓄電装置50としては、たとえば、200〜300Vの端子電圧を有するリチウムイオン電池やニッケル水素電池、キャパシタなどが用いられる。電力制御ユニット60に接続される低電圧蓄電装置56は、充放電可能な低電圧の2次電池である。このような低電圧蓄電装置56としては、たとえば、公称電圧12〜14Vの鉛蓄電池などが用いられる。
【0027】
電力制御ユニット60に接続されるモータジェネレータ52およびモータジェネレータ54は、電力が供給されたときはモータとして機能し、制動時には発電機として機能する三相同期型回転電機である。
【0028】
図2中においてMG1と示されたモータジェネレータ52は、エンジンに接続されており、主にジェネレータとして機能する。モータジェネレータ52は、エンジンの出力により交流電力を発電する。発電された交流電圧は、後述するMG1用のインバータ68によって直流電力に変換され、高電圧蓄電装置50を充電する。
【0029】
図2中にMG2と示されたモータジェネレータ54は、主に、エンジンの出力を補助し、駆動力を高めるためのモータとして機能する。高電圧蓄電装置50の直流電力を後述するMG2用のインバータ70により変換して交流電力が得られ、モータジェネレータ54は、その交流電力によって作動する。また、モータジェネレータ54は、ハイブリッド自動車10の制動時にはその回生エネルギを回収して、交流電力を発電するジェネレータとしての機能も有する。発電された交流電圧は、インバータ70によって直流電力に変換され、高電圧蓄電装置50を充電する。
【0030】
電力制御ユニット60に対して低電圧蓄電装置56と並列に接続されるLV機器58は、低電圧蓄電装置56の電圧により作動する機器であり、オーディオ機器、照明機器、小型モータ等の機器、ならびに、マイクロプロセッサ等の電子機器および電気回路などである。
【0031】
電力制御ユニット60は、平滑コンデンサ62,66,74と、高電圧側の電圧変換器であるHV(high-level voltage)コンバータ64、低電圧側のLV(low-level voltage)コンバータ72、モータジェネレータ52に接続されるMG1用のインバータ68、モータジェネレータ54に接続されるMG2用のインバータ70を含んで構成されている。
【0032】
高電圧蓄電装置50と、HVコンバータ64との間に設けられる平滑コンデンサ62は、高電圧蓄電装置50側における電圧、電流の変動を抑制するために用いられる容量素子である。HVコンバータ64と、インバータ68およびインバータ70との間に設けられる平滑コンデンサ66は、インバータ68,70側における電圧、電流の変動を抑制するために用いられる容量素子である。LVコンバータ72と低電圧蓄電装置56との間に設けられる平滑コンデンサ74は、低電圧蓄電装置56側における電圧、電流の変動を抑制するために用いられる容量素子である。
【0033】
HVコンバータ64は、高電圧蓄電装置50と、インバータ68およびインバータ70との間に設けられ、高電圧蓄電装置50の端子間電圧とインバータ68,70側の電圧との間の電圧変換を行なう機能を有するコンバータ回路である。このようなHVコンバータ64としては、リアクトルとスイッチング素子とを含むコンバータが用いられる。
【0034】
LVコンバータ72は、高電圧蓄電装置50と低電圧蓄電装置56との間に設けられ、高電圧蓄電装置50の端子間電圧と低電圧蓄電装置56の電圧との間の電圧変換を行なう機能を有するコンバータ回路である。このようなLVコンバータ72としては、HVコンバータ64と同様に、リアクトルとスイッチング素子とを含むコンバータが用いられる。
【0035】
インバータ68,70は、高電圧直流電力を交流三相駆動電力に変換し、モータジェネレータ52,54に供給する機能と、モータジェネレータ52,54からの交流三相駆動電力を高電圧直流電力に変換する機能とを有する回路である。このようなインバータ68,70としては、スイッチング素子(IGBT:Insulated Gate Bipolar Transistor)およびダイオードなどを含む回路により構成される。
【0036】
以上に説明したように、電力制御ユニット60は、コンバータ、インバータ、コンデンサなどを含み、これらは、スイッチング素子、ダイオード、リアクトル、容量素子などの各種素子により構成されている。
【0037】
続いて、本実施の形態における電力制御ユニットの冷却装置20の構造について説明する。
【0038】
図3は、図2中の電力制御ユニットの冷却装置を示す断面図である。図3を参照して、本実施の形態における電力制御ユニットの冷却装置20は、PCUケース24、発熱素子36およびラジエータ部26を有する。
【0039】
PCUケース24は、その内部に密閉された空間を形成するように設けられている。PCUケース24は、たとえば、下部容器と上部容器とを組み合わせ、両者の間を封止することによって形成されている。PCUケース24は、互いに対向する頂部24tと底部24bとを有する筐体形状を有する。PCUケース24は、アルミニウム等の金属から形成されている。
【0040】
PCUケース24内には、電気絶縁性の冷媒が封入されている。本実施の形態では、PCUケース24内に、フッ素系不活性液体などの、電気絶縁性および熱伝導性に優れた液体が封入されている。冷媒は、PCUケース24内を満たすように設けられている。冷媒は、飽和蒸気圧以上に加圧されてPCUケース24内に封入されている。
【0041】
ラジエータ部26は、フィン形状を有し、本実施の形態では、PCUケース24に一体に形成されている。ラジエータ部26は、PCUケース24の頂部24tに形成されている。冷却装置20は、図1中のエンジンルーム15に取り込まれた走行風がラジエータ部26に向かうように配置されている。
【0042】
発熱素子36は、電力制御ユニット60を構成する上記の各種素子であり、電力制御ユニット60の作動に伴って発熱する。本実施の形態では、複数の発熱素子36がPCUケース24内に収容されている。発熱素子36は、PCUケース24内に封入された冷媒に浸されている。
【0043】
本実施の形態における電力制御ユニットの冷却装置20は、通路形成板30をさらに有する。通路形成板30は、複数枚の板材が組み合わさって構成されている。通路形成板30は、PCUケース24内に配置されている。通路形成板30によって、PCUケース24内には、冷媒を循環させるための循環通路40が形成されている。
【0044】
循環通路40は、蛇行通路41および戻し通路46により構成されている。蛇行通路41は、PCUケース24内において鉛直方向の下側から上側に蛇行しながら延びるように形成されている。戻し通路46は、蛇行通路41の下側部分と上側部分とを繋ぐように、鉛直方向に沿って延びている。
【0045】
本実施の形態では、循環通路40が、周回経路が一通りしか存在しないように、つまり、循環通路40を一周する場合に途中で分岐する箇所がないように形成されている。このような構成により、熱対流する冷媒を意図したように循環通路40に流通させることができる。結果、循環通路40に配置された複数の発熱素子36を、ばらつきなく冷却することができる。
【0046】
通路形成板30は、整流用隔壁部31p、整流用隔壁部31qおよび整流用隔壁部31r(以下、特に区別しない場合は整流用隔壁部31という)と、戻し通路用隔壁部33とから構成されている。
【0047】
整流用隔壁部31は、平板形状を有する。整流用隔壁部31は、熱伝導性に優れた材料により形成されている。整流用隔壁部31は、たとえば、アルミニウムや銅などの金属から形成されている。整流用隔壁部31は、導電性材料により形成されている。
【0048】
戻し通路用隔壁部33は、平板形状を有する。戻し通路用隔壁部33は、整流用隔壁部31pおよび整流用隔壁部31rよりも小さい熱伝導性を有する材料から形成されていることが好ましい。戻し通路用隔壁部33は、整流用隔壁部31と同じ材料から形成されてもよい。
【0049】
整流用隔壁部31p、整流用隔壁部31qおよび整流用隔壁部31rは、鉛直方向において互いに間隔を設けて位置決めされている。整流用隔壁部31p、整流用隔壁部31qおよび整流用隔壁部31rは、上下方向に層状に配置されている。複数の整流用隔壁部31の中で、整流用隔壁部31pは、最も鉛直方向の上側に配置され、整流用隔壁部31rは、最も鉛直方向の下側に配置され、整流用隔壁部31qは、鉛直方向において、整流用隔壁部31pと整流用隔壁部31rとの間に配置されている。整流用隔壁部31pは、PCUケース24の頂部24tと向かい合って配置されている。整流用隔壁部31rは、PCUケース24の底部24bと向かい合って配置されている。
【0050】
整流用隔壁部31は、鉛直方向の上側に面する上面31mと、上面31mの裏側に配置され、鉛直方向の下側に面する下面31nとを有する。互いに隣り合う整流用隔壁部31同士は、上面31mと下面31nとが向かい合わせとなるように配置されている。
【0051】
戻し通路用隔壁部33は、整流用隔壁部31pと整流用隔壁部31rとの間で延在している。戻し通路用隔壁部33は、鉛直方向に延在している。整流用隔壁部31p、戻し通路用隔壁部33および整流用隔壁部31rは、戻し通路用隔壁部33とPCUケース24とを繋ぐ隔壁部支持スペーサ39と、整流用隔壁部31pとPCUケース24とを繋ぐ隔壁部支持スペーサ38とによって、PCUケース24内に支持されている。一方、整流用隔壁部31qは、PCUケース24に直接繋がれて支持されている。
【0052】
蛇行通路41は、直線部41A、直線部41B、直線部41Cおよび直線部41Dと、複数の曲がり部41Eとから構成されている。
【0053】
PCUケース24の頂部24tと整流用隔壁部31pとの間に、直線部41Aが形成され、整流用隔壁部31pと整流用隔壁部31qとの間に、直線部41Bが形成され、整流用隔壁部31qと整流用隔壁部31rとの間に、直線部41Cが形成され、整流用隔壁部31rとPCUケース24の底部24bとの間に直線部41Dが形成されている。すなわち、直線部41Aと直線部41Bとの間は整流用隔壁部31pによって区画され、直線部41Bと直線部41Cとの間は整流用隔壁部31qによって区画され、直線部41Cと直線部41Dとの間は整流用隔壁部31rによって区画されている。複数の曲がり部41Eは、直線部41Aと直線部41Bとの間、直線部41Bと直線部41Cとの間、および直線部41Cと直線部41Dとの間をそれぞれ繋ぐように、鉛直方向に延びて形成されている。
【0054】
整流用隔壁部31には、発熱素子36が搭載されている。本実施の形態では、整流用隔壁部31に、複数の発熱素子36が搭載されている。より具体的には、整流用隔壁部31pに複数の発熱素子36が搭載され、整流用隔壁部31qに複数の発熱素子36が搭載され、整流用隔壁部31rに複数の発熱素子36が搭載されている。複数の発熱素子36は、循環通路40における冷媒の流れ方向に沿って互いに間隔を隔てて配置されている。
【0055】
発熱素子36は、整流用隔壁部31が有する上面31mおよび下面31nのうちの上面31mに搭載されている。ラジエータ部26は、発熱素子36よりも鉛直方向の上側に配置されている。ラジエータ部26は、複数設けられた発熱素子36の全てよりも、鉛直方向の上側に配置されている。
【0056】
本実施の形態における電力制御ユニットの冷却装置20は、素子固定部としての素子搭載台35をさらに有する。素子搭載台35は、発熱素子36と整流用隔壁部31との間に介挿されている。発熱素子36は、素子搭載台35によって整流用隔壁部31に固定されている。すなわち、素子搭載台35は、発熱素子36を整流用隔壁部31に固定するための接着剤として機能している。素子搭載台35は、高熱伝導性および電気的絶縁性を有する材料、たとえば、高熱伝導率のフィラーを含有する樹脂シートから形成されている。
【0057】
電力制御ユニット60を構成するコンバータ、インバータ、コンデンサは、作動電圧が相互に異なり、また発熱性も異なるため、発熱素子36を分けるには、コンバータ、インバータ、コンデンサごとに各整流用隔壁部31に搭載してもよい。また、素子の種類ごとに各整流用隔壁部31に搭載してもよい。
【0058】
続いて、本実施の形態における電力制御ユニットの冷却装置20によって奏される作用、効果について説明する。図4は、図3中のPCUケース内に形成される冷媒流れを示す断面図である。
【0059】
図3および図4を参照して、電力制御ユニット60の作動に伴って発熱素子36が発熱する。本実施の形態における電力制御ユニットの冷却装置20においては、発熱素子36から、PCUケース24に封入された冷媒に熱が受け渡されることにより、発熱素子36が冷却される。
【0060】
この際、発熱素子36は鉛直方向に層状に設けられた整流用隔壁部31に搭載されるため、冷媒は、発熱素子36からの受熱によって徐々に温度上昇しながら、蛇行通路41の直線部41A、直線部41Bおよび直線部41Cを順に通り、直線部41Dに達する。直線部41Dに達した冷媒は、走行風を受けるラジエータ部26と熱交換を行なうことによって冷却される。冷却された冷媒は、戻し通路46を通って再び蛇行通路41の直線部41Aに向かう。このようにPCUケース24内の冷媒には熱対流が発生し、図4中の矢印に示すような冷媒流れの循環サイクルが循環通路40に形成される。冷媒は、蛇行通路41を流通する間、複数の発熱素子36を効率的に冷却する。
【0061】
発熱素子36が配置される蛇行通路41は、整流用隔壁部31によって形成されている。このため、発熱素子36で発生した熱は、主に、素子搭載台35を通じて整流用隔壁部31に伝わり、整流用隔壁部31と冷媒との熱交換によって放熱される。
【0062】
一方、本実施の形態では、複数の発熱素子36間の電気的な絶縁が素子搭載台35によって確保されるため、整流用隔壁部31を熱伝導性に優れた金属により形成することが可能となる。これにより、整流用隔壁部31と冷媒との熱交換を促進させ、発熱素子36の冷却効率を向上させることができる。
【0063】
また、たとえば、整流用隔壁部31qに注目すると、整流用隔壁部31qの両側には蛇行通路41の直線部41Bおよび直線部41Cが形成されている。この場合、冷媒が整流用隔壁部31qと熱交換を行なうタイミングは、直線部41Bを流れる間と、直線部41Cを流れる間との2回となり、冷媒と整流用隔壁部31qとの熱交換を促進させることができる。これにより、素子搭載台35を整流用隔壁部31から離れた位置に支持する場合と比較して、発熱素子36の冷却効率を向上させることができる。
【0064】
また、冷媒を戻し通路46を通じて蛇行通路41の直線部41Aから直線部41Dに戻す際、直線部41Aにおける冷媒の温度が低いほど冷媒流れが円滑となる。これに対して、戻し通路用隔壁部33が整流用隔壁部31pおよび整流用隔壁部31rよりも小さい熱伝導性を有する場合、整流用隔壁部31rから整流用隔壁部31pに熱が伝わることを抑制し、直線部41Aにおける冷媒の温度をより低く設定することができる。結果、循環通路40における冷媒流れの速度を高めて、発熱素子36の冷却効率を向上させることができる。
【0065】
また、本実施の形態では、冷媒の循環に熱対流の効果を利用するため、冷却装置20にポンプなどの冷媒を循環させるための機構を設ける必要がない。このため、冷却装置20を小型化するとともに、製造コストを低減させることができる。
【0066】
また、本実施の形態では、冷媒が飽和蒸気圧以上に加圧されてPCUケース24内に封入されている。このため、発熱素子36から受熱した冷媒に気泡が発生することがなく、気泡の発生に起因した発熱素子36間の放電の懸念がなくなる。これにより、冷媒の絶縁耐力の許容範囲内で発熱素子36間を接近させることが可能となり、冷却装置20を小型化することができる。
【0067】
以上に説明した、この発明の実施の形態1における電気機器の冷却装置の構造についてまとめて説明すると、本実施の形態における電気機器としての電力制御ユニットの冷却装置20は、電気絶縁性の冷媒が封入される密閉筐体としてのPCUケース24と、通路形成部材としての通路形成板30と、発熱素子36と、PCUケース24に設けられる放熱部としてのラジエータ部26とを備える。通路形成板30は、鉛直方向に互いに間隔を隔てて配置される複数の隔壁部としての整流用隔壁部31を有する。通路形成板30は、PCUケース24の内部に冷媒を循環させるための循環通路40を形成する。発熱素子36は、複数の整流用隔壁部31に搭載され、循環通路40に配置される。ラジエータ部26は、発熱素子36よりも鉛直方向の上側に配置される。
【0068】
このように構成された、この発明の実施の形態1における電力制御ユニットの冷却装置20によれば、冷媒を循環させるための特別な機器を要せずに、冷却対象である発熱素子36を効率的に冷却することができる。
【0069】
なお、本発明を、燃料電池と2次電池とを動力源とする燃料電池ハイブリッド車(FCHV:Fuel Cell Hybrid Vehicle)または電気自動車(EV:Electric Vehicle)に搭載される電力制御ユニットに適用することもできる。本実施の形態におけるハイブリッド自動車では、燃費最適動作点で内燃機関を駆動するのに対して、燃料電池ハイブリッド車では、発電効率最適動作点で燃料電池を駆動する。また、2次電池の使用に関しては、両方のハイブリッド自動車で基本的に変わらない。
【0070】
また、本発明が適用される電気機器は、電力制御ユニットに限られず、発熱素子の冷却が必要となる各種電気機器に本発明が適用される。
【0071】
(実施の形態2)
図5は、この発明の実施の形態2における電力制御ユニットの冷却装置を示す断面図である。本実施の形態における電力制御ユニットの冷却装置は、実施の形態1における電力制御ユニットの冷却装置20と比較して、基本的には同様の構造を備える。以下、重複する構造についてはその説明を繰り返さない。
【0072】
図5を参照して、本実施の形態では、互いに隣り合う整流用隔壁部31が、整流用隔壁部31間に形成される直線部41の面積(冷媒の流れ方向に直交する平面により直線部41を切断した時の通路面積)が、冷媒流れの上流側よりも下流側で大きくなるように配置されている。
【0073】
より具体的には、整流用隔壁部31qおよび整流用隔壁部31rは、冷媒流れの上流側から下流側に向かうに従って互いの間の距離が大きくなるように配置されている。整流用隔壁部31pおよび整流用隔壁部31qは、冷媒流れの上流側から下流側に向かうに従って互いの間の距離が大きくなるように配置されている。たとえば、互いに隣り合う整流用隔壁部31qおよび整流用隔壁部31rに注目すると、整流用隔壁部31qと整流用隔壁部31rとの間に形成される直線部41Cの面積が、冷媒流れの上流側(S1)よりも下流側(S2)で大きくなる。
【0074】
このような構成によれば、循環通路40の各直線部を流れる冷媒の圧力が、冷媒流れの上流側で高く、下流側で低くなる。これにより、冷媒は循環通路40の上流側から下流側に向けて流れ易くなり、発熱素子36の冷却効率を向上させることができる。
【0075】
このように構成された、この発明の実施の形態2における電力制御ユニットの冷却装置によれば、実施の形態1に記載の効果を同様に得ることができる。
【0076】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0077】
この発明は、主に、発熱素子を有する各種の電気機器の冷却構造に適用される。
【符号の説明】
【0078】
10 ハイブリッド自動車、15 エンジンルーム、20 冷却装置、24 PCUケース、24b 底部、24t 頂部、26 ラジエータ部、30 通路形成板、31m 上面、31n 下面、31,31p,31q,31r 整流用隔壁部、33 戻し通路用隔壁部、35 素子搭載台、36 発熱素子、38,39 隔壁部支持スペーサ、40 循環通路、41 蛇行通路、41A,41B,41C,41D 直線部、41E 曲がり部、46 戻し通路、50 高電圧蓄電装置、52,54 モータジェネレータ、56 低電圧蓄電装置、58 LV機器、60 電力制御ユニット、62,66,74 平滑コンデンサ、64 HVコンバータ、68,70 インバータ、72 LVコンバータ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気絶縁性の冷媒が封入される密閉筐体と、
鉛直方向に互いに間隔を隔てて配置される複数の隔壁部を有し、前記密閉筐体の内部に冷媒を循環させるための循環通路を形成する通路形成部材と、
複数の前記隔壁部に搭載され、前記循環通路に配置される発熱素子と、
前記発熱素子よりも鉛直方向の上側に配置され、前記密閉筐体に設けられる放熱部とを備える、電気機器の冷却装置。
【請求項2】
複数の前記隔壁部は、互いに隣り合って配置される第1隔壁部および第2隔壁部を含み、
前記第1隔壁部および前記第2隔壁部は、前記第1隔壁部と前記第2隔壁部との間に形成される前記循環通路の面積が、冷媒流れの上流側よりも下流側で大きくなるように配置される、請求項1に記載の電気機器の冷却装置。
【請求項3】
複数の前記隔壁部は、前記循環通路が鉛直方向の下側から上側に蛇行しながら延びるように配置される、請求項1または2に記載の電気機器の冷却装置。
【請求項4】
複数の前記隔壁部は、複数の前記隔壁部のうちで最も鉛直方向の上側に配置される第3隔壁部と、最も鉛直方向の下側に配置される第4隔壁部とを含み、
前記通路形成部材は、前記第3隔壁部と前記第4隔壁部との間で延在し、前記放熱部により冷却された冷媒を冷媒流れの上流側に戻すための戻し通路用隔壁部をさらに有し、
前記戻し通路用隔壁部は、前記第3隔壁部および前記第4隔壁部よりも小さい熱伝導性を有する、請求項1から3のいずれか1項に記載の電気機器の冷却装置。
【請求項5】
前記隔壁部と前記発熱素子との間に介挿され、前記発熱素子を前記隔壁部に固定するための素子固定部をさらに備え、
前記素子固定部は、電気絶縁性を有する材料により形成される、請求項1から4のいずれか1項に記載の電気機器の冷却装置。
【請求項6】
冷媒は、飽和蒸気圧以上に加圧されて前記密閉筐体に封入される、請求項1から5のいずれか1項に記載の電気機器の冷却装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−156373(P2012−156373A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−15366(P2011−15366)
【出願日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】