説明

電気機器

【課題】使い勝手を向上した設定ボタン部を提供する。
【解決手段】可撓性を有する押圧部材26と、外部操作により押圧部材26の少なくとも一部を可撓変形させるスイッチ部材27と、スイッチ体18をホース手元ケース11に支持する支持部30を可動接点36に一体的に設けることで、組み立ての際に押圧部材26とスイッチ部材27を位置合わせする必要がなく、組み立て性が向上するとともに、固定接点22を設けた配線基板17と可動接点36を設けたスイッチ体18とを別体とすることで、故障などの際でも配線基板17とスイッチ体18のそれぞれが別個に交換可能となるなど、使い勝手が向上する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固定接点を一主面に有する基板を備えた電気機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば電気掃除機の手元操作部などに用いられる電気機器としては、例えば手元操作部に設けた複数の設定ボタンに対応させて、手元操作部内に配設した紙フェノールなどのプリント配線基板上にタクトスイッチをそれぞれ実装するものがある。
【0003】
しかしながら、このような電気機器では、構成が複雑になり、また、設定ボタンとタクトスイッチとの位置合わせが容易でなく、組み立て性を考慮しなければならず、製造コストが比較的高くなるという問題を有している。
【0004】
そこで、固定接点をそれぞれ設けた基板上に、これら固定接点に対応するボタン部を兼ねた可撓変形可能な銘板を一体に取り付け、各ボタン部の基板側の面に導電性の塗装による可動接点を設けた電気機器が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開平10−33434号公報(第4−5頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述の電気機器では、ボタン部の意匠面と可動接点部分が一体であるため、ボタン部分の意匠が変わる度に部品全体を作り直す必要性が生じ、ロットの消化状態によっては在庫が多数残ったり、急な生産数の変更に対応したりすることが容易でないという問題点を有している。
【0006】
さらに、このような電気機器では、手元操作部に貼り付けて固定するため、平面にしか配置できず、意匠の制限が比較的大きく、また、銘板と基板とを一体に取り付けるので、一度製造してしまうと修正がきかず、不良率が高くなる原因ともなっている。
【0007】
そして、導電性部材を塗装して可動接点を製造するため、繰り返し使用することによって可動接点が擦れて塗装が剥がれ、動作不良を起こすおそれがあるという問題もある。
【0008】
この結果、上述の電気機器では、使い勝手が良好でないという問題点を有している。
【0009】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、使い勝手を向上した電気機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、固定接点を一主面に備えた基板と、固定接点に対向し可動によりこの固定接点と通電可能な可動接点を備え基板と別体のスイッチ体と、基板およびスイッチ体を配設するケース体とを具備し、スイッチ体が、可撓性を有する押圧部材と、この押圧部材の少なくとも一部を外部操作により可撓変形させるスイッチ部材と、ケース体に支持される支持部とが、それぞれ可動接点と一体に設けられているものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、可撓性を有する押圧部材と、押圧部材の少なくとも一部を外部操作により可撓変形させるスイッチ部材と、ケース体に支持される支持部とを、可動接点と一体に設けてスイッチ体を構成することで、組み立ての際に押圧部材とスイッチ部材との位置合わせなどが必要なくなり、組み立て性が向上するとともに、固定接点を設けた基板と可動接点を設けたスイッチ体とを別体とすることで、例えば故障などの際でも基板とスイッチ体とのそれぞれが別個に交換可能となるなど、使い勝手が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の一実施の形態の構成を図1ないし図4を参照して説明する。
【0013】
図4において、1は掃除機本体で、この掃除機本体1の内部には、電動送風機2およびこの電動送風機2に給電する二次電池としての図示しない電池パックと、電動送風機2の駆動を制御する図示しない制御手段とがそれぞれ収容されている。そして、この掃除機本体1は、電動送風機2の駆動にて生じる吸気風とともに吸い込んだ塵埃を集塵部3にてサイクロン分離して集塵する、いわゆるサイクロン式の電気掃除機である。
【0014】
さらに、掃除機本体1には、外部から空気を吸引する本体吸込口4が開口されている。この本体吸込口4には、湾曲可能な細長略円筒状の接続管としてのホース体5が連通接続されている。このホース体5の先端には、作業者に把持される屈曲管としての手元操作部6が設けられ、この手元操作部6には、掃除機本体1内の電動送風機2の強、中、弱、切などの動作モードを設定する電気機器としての設定ボタン部7が設けられている。
【0015】
また、この手元操作部6の先端には、伸縮可能な細長略円筒状の延長管8が着脱可能に連通接続されている。さらに、この延長管8の先端には、例えば室内の床面の絨毯などの上に載置させて、この絨毯上の塵埃を吸い込む吸込口体としての床ブラシ9が着脱可能に連通接続されている。
【0016】
そして、手元操作部6は、図1に示すように、側面視で略へ字状に屈曲されたケース体としての手元操作部本体であるホース手元ケース11と、このホース手元ケース11の基端側であるホース体5との接続部分に設けられた接続部12と、ホース手元ケース11の上部に一体的に取り付けられたカバー体としてのホース手元カバー13とをそれぞれ備えている。
【0017】
ホース手元ケース11は、延長管8に接続される先端側からホース体5に連通する基端側へと、電動送風機2の駆動により床ブラシ9の先端から吸い込んだ空気が塵埃とともに通過するもので、設定ボタン部7の一部を構成している。
【0018】
また、接続部12は、ホース体5に対して手元操作部6を周方向に回動可能とするものであり、先端側にホース手元ケース11が連通接続され、基端側にホース体5が連通接続されている。
【0019】
さらに、ホース手元カバー13は、ホース手元ケース11の上部の先端側から基端側まで全体に亘って設けられ、ホース手元ケース11との間に設定ボタン部7を収容する収容部15が先端側に形成され、この収容部15から手元操作部6の基端側に亘って、連通空間部16が連続的に形成されている。
【0020】
収容部15は、ホース手元ケース11の上面からの距離が連通空間部16よりも大きい空間部であり、手元操作部6の先端から、屈曲した中間部近傍の先端側寄りの位置に亘って形成されている。
【0021】
また、連通空間部16は、ホース手元ケース11とホース手元カバー13との間に隙間状に形成された細長い空間部である。
【0022】
そして、設定ボタン部7は、図1および図2に示すように、基板としての配線基板17と、この配線基板17に取り付けられたスイッチ体18とがホース手元ケース11に配設されている。
【0023】
配線基板17は、設定ボタン部7の形状に応じて例えば細長四角形状に形成された基板本体21と、この基板本体21上にプリントされた複数、例えば3つの固定接点22と、これら固定接点22と掃除機本体1内の制御手段とを電気的に接続する一対のリード線23とを有している。そして、この配線基板17は、図1に示すように、手元操作部6の収容部15内の下部に、手元操作部6の長手方向に沿って、かつ、リード線23を手元操作部6の基端側であるホース体5側に向けて配置されている。
【0024】
基板本体21は、いわゆるフレキシブル配線基板であり、可撓性を有する合成樹脂などによりフィルム状に形成され、図示しない所定の回路パターンが一主面にプリントされている。また、この基板本体21の長手方向の一端部には、リード線23が配線される突出部21aが突設されている。
【0025】
また、各固定接点22は、基板本体21上にプリントされた回路パターンの一部が平面視で例えば円形状に露出した部分であり、それぞれの固定接点22は、それぞれ抵抗値が異なる図示しない抵抗素子などを介して所定の回路パターンにより各リード線23に電気的に接続された部分同士が電気的に遮断され、かつ、互いに隣り合うように配置されている。さらに、これら固定接点22は、基板本体21の長手方向に、略等間隔に離間されて配置されている。
【0026】
そして、リード線23は、例えば基板本体21の長手方向の一端部から互いに平行に導出されている。また、これらリード線23は、配線基板17での配線パターン上、互いに電気的に遮断されている。さらに、これらリード線23は、ホース体5内に螺旋状に連続し先端側が連通空間部16内に挿通された図示しない一対の本体リード線とそれぞれ電気的に接続されている。なお、これら本体リード線は、ホース体5を本体吸込口4に接続した際に、基端側が掃除機本体1内の制御手段に電気的に接続される。
【0027】
一方、スイッチ体18は、例えば金属、あるいはカーボンなどを含んだ導電性を有する合成樹脂などの部材により可撓変形可能に形成され、略直方体状のスイッチ本体部25と、配線基板17に対向して設けられた複数、例えば3つの凸部としての可撓性を有する押圧部材26と、スイッチ本体部25の上部に押圧部材26に対応して突設された複数、例えば3つのスイッチ部材27とを一体に備えている。そして、このスイッチ体18は、配線基板17の上側に嵌合して配置されている。
【0028】
スイッチ本体部25は、図1および図3に示すように、下端部側が開口された中空状に形成され、スイッチ体18をホース手元ケース11に支持する支持部30が外側部の下端に形成されている。そして、スイッチ本体部25の支持部30に囲まれた内部には、押圧部材26に対応する複数、例えば3つの収容凹部31が設けられ、これら収容凹部31の間に、これら収容凹部31を区画する区画壁部32が形成されている。また、このスイッチ本体部25の支持部30の長手方向の一側部の下端部には、切欠部33が切り欠き形成されている。
【0029】
各収容凹部31は、スイッチ本体部25の下端部に開口した四角形状の空間部であり、スイッチ本体部25の長手方向に略等間隔に離間され、内部に押圧部材26が収容されている。
【0030】
また、各区画壁部32は、スイッチ本体部25の幅方向に亘って形成された壁部であり、下端部がスイッチ本体部25の下端部よりも若干上側に位置している。このため、各区画壁部32の下端部とスイッチ本体部25の支持部30との間には、配線基板17の基板本体21が嵌合可能な段差部35が形成されている。
【0031】
さらに、切欠部33は、配線基板17の基板本体21の突出部21aが嵌合する部分であり、段差部35と略等しい段差となるようにスイッチ本体部25の長手方向の一端部の支持部30に切り欠き形成されている。そして、この切欠部33は、設定ボタン部7を収容部15に配設した状態で連通空間部16側に対向している。
【0032】
また、押圧部材26は、固定接点22に対応した個数設けられ、上下方向に沿って軸方向を有する略円柱状に形成されている。さらに、これら押圧部材26は、各固定接点22に対向する対向部としての可動接点36が先端部である下端部に一体に設けられている。
【0033】
これら可動接点36は、スイッチ体18が導電性を有する部材で形成されているため、導電性を有しており、固定接点22に接触することでリード線23同士を電気的に接続するもので、固定接点22の外形形状と略等しい外形形状、本実施の形態では円形状に形成されている。また、これら可動接点36は、スイッチ本体部25の下端部に取り付けられた配線基板17の一主面に対して離間されている。すなわち、これら可動接点36は、段差部35よりも上側に位置している。
【0034】
さらに、スイッチ部材27は、図1および図2に示すように、各押圧部材26の背中、すなわち上部に対応してスイッチ本体部25の上端部に略円柱状に突設され、ホース手元カバー13にそれぞれ穿設された複数、例えば3つの突出孔37に挿通されて手元操作部6の上部に突出して露出している。そして、これらスイッチ部材27は、作業者の外部操作により押圧される操作ボタン部となり、上側から押圧されることで押圧部材26を下方へと可撓変形させて、可動接点36を介して固定接点22を開閉可能とするものである。
【0035】
なお、スイッチ部材27の上面には、例えば電動送風機2の動作モードに応じて、「強」、「中/弱」、あるいは「切」などの表示を設けてもよい。
【0036】
次に、上記一実施の形態による掃除動作を説明する。
【0037】
まず、作業者は、掃除機本体1の本体吸込口4に、ホース体5、延長管8および床ブラシ9を順次連通接続する。
【0038】
さらに、作業者が、手元操作部6を把持して設定ボタン部7の所定のスイッチ部材27を押すと、このスイッチ部材27に対応した押圧部材26が下方に可撓変形し、可動接点36が固定接点22に接触し、この固定接点22の各リード線23に接続された部分同士が可動接点36により電気的に接続されて、各動作モードに対応した所定の信号電流がリード線23間に流れ、この信号電流が本体リード線を介して制御手段に送信されることで、制御手段が電動送風機2を所定の動作モードで駆動させる。
【0039】
そして、作業者は、床面上で床ブラシ9を前後に走行させ、床ブラシ9の先端から床面の塵埃を吸い込む。この床ブラシ9の先端から空気とともに吸い込まれた塵埃は、床ブラシ9から延長管8およびホース体5を順次通過した後、掃除機本体1の本体吸込口4へと導かれて、集塵部3にてサイクロン分離されて捕集される。
【0040】
塵埃が捕集された空気は、電動送風機2へと吸気されて排気風となり、掃除機本体1の図示しない排気口から外部へと排気される。
【0041】
上述したように、上記一実施の形態では、可撓性を有する押圧部材26と、外部操作により押圧部材26の少なくとも一部を可撓変形させるスイッチ部材27と、スイッチ体18をホース手元ケース11に支持する支持部30とを可動接点36と一体的に設けてスイッチ体18を構成した。
【0042】
このため、例えば押圧部材とスイッチ部材とを別個に設ける従来の場合などと比較して、スイッチ体18の製造工程を簡略化できて、製造コストを抑制できるとともに、スイッチ体18自体の信頼性および設定ボタン部7の操作性をも向上でき、かつ、組み立ての際に押圧部材26とスイッチ部材27とを位置合わせする必要がなく、組み立てのリードタイムを短縮でき、組み立て性をも向上できる。
【0043】
また、配線基板17とスイッチ体18とを別体とすることにより、例えば配線基板とスイッチ体とを一体に設ける従来の場合などと比較して、配線基板17とスイッチ体18とを並列に製造できるので、これら部品のリードタイムすなわち調達時間を短縮でき、在庫を必要以上に増やさずに済むため、異なる機種同士での部品の共通化、急な生産変更、あるいは多品種少量生産などにも対応可能となり、かつ、設定ボタン部7に故障などが発生した際などでも、配線基板17とスイッチ体18とのそれぞれを別個に交換するだけで対応することも可能となり、不良品の発生をも抑制できる。
【0044】
さらに、配線基板17の基板本体21を、フレキシブル配線基板とし、スイッチ体18を、可撓性を有する部材とすることにより、設定ボタン部7を比較的自由に湾曲させることが可能となり、平面以外の部分にも容易に配置できるので、様々な意匠にも対応可能となる。
【0045】
この結果、設定ボタン部7の使い勝手が向上する。
【0046】
また、スイッチ体18を導電性部材で形成することで、例えば可動接点のみを導電性部材で形成する場合などと比較して、設定ボタン部7を繰り返し操作しても、可動接点36の剥がれ、あるいは欠落などが起きることを確実に防止できる。
【0047】
なお、上記一実施の形態において、図5に示すように、スイッチ体18のスイッチ本体部25の各スイッチ部材27の間の部分および支持部30で突出孔37のそれぞれの内周縁部を挟持して、スイッチ本体部25の各スイッチ部材27の間の上部によりケース手元カバー13の一部を構成するようにしてもよい。この場合には、設定ボタン部7の組み立て性がより向上するとともに、設定ボタン部7の動作が確実となる。
【0048】
また、導電性を有さないゴム、あるいは軟質の合成樹脂などの部材でスイッチ体18を形成する場合には、押圧部材26の下端部に例えばカーボン、銀、あるいは金などの導電性部材を塗布して可動接点としたり、これら導電性部材で形成された可動接点を押圧部材26の下端部に一体に設けたりしても、上記各実施の形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0049】
さらに、設定ボタン部7は、手元操作部6に限らず、例えば掃除機本体1など、任意の位置に設ける構成としてもよい。
【0050】
またさらに、電気掃除機としては、サイクロン式に限らず、紙パック式などでもよく、また、キャニスタ型の電気掃除機に限らず、床ブラシ9が掃除機本体1の下面に直接形成されたアップライト型、あるいはハンディ型などであっても対応させて用いることができる。
【0051】
そして、電気機器は、電気掃除機以外の電気装置に使用することも可能である。この場合には、操作する電気装置の動作などに応じて、固定接点、可動接点、押圧部材およびスイッチ部材の数を適宜設定する。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の一実施の形態の電気機器を示す側面断面図である。
【図2】同上電気機器を示す分解斜視図である。
【図3】同上電気機器のスイッチ体の下面を示す斜視図である。
【図4】同上電気機器を備えた電気掃除機を示す斜視図である。
【図5】同上電気機器の他の実施の形態を示す側面断面図である。
【符号の説明】
【0053】
7 電気機器としての設定ボタン部
11 ケース体としてのホース手元ケース
17 基板としての配線基板
18 スイッチ体
22 固定接点
26 押圧部材
27 スイッチ部材
30 支持部
36 可動接点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定接点を一主面に備えた基板と、
前記固定接点に対向し可動によりこの固定接点と通電可能な可動接点を備え前記基板と別体のスイッチ体と、
前記基板および前記スイッチ体を配設するケース体とを具備し、
前記スイッチ体は、
可撓性を有する押圧部材と、この押圧部材の少なくとも一部を外部操作により可撓変形させるスイッチ部材と、前記ケース体に支持される支持部とが、それぞれ前記可動接点と一体に設けられている
ことを特徴とした電気機器。
【請求項2】
押圧部材は、導電性部材で形成されている
ことを特徴とした請求項1記載の電気機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−155939(P2006−155939A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−340958(P2004−340958)
【出願日】平成16年11月25日(2004.11.25)
【出願人】(000003562)東芝テック株式会社 (5,631)
【Fターム(参考)】