説明

電気機械アセンブリ

【課題】高いトルク出力を可能にする性能を高めた回転電機を提供する。
【解決手段】回転電機は実質的に円形で複数の歯を含む第1の固定子鉄心部14と、実質的に円形で複数の歯を含む第2の固定子鉄心部16と、第1および第2の円形固定子鉄心部14,16間に配置されたコイル20と、複数の永久磁石22を含む回転子12と、を含む。第1の固定子鉄心部14と、第2の固定子鉄心部16と、コイル20と、回転子12は共通幾何学的軸を取り囲んでおり、第1の固定子鉄心部14および第2の固定子鉄心部16の複数の歯は回転子12に向かって突き出るように配置されている。さらに、第2の固定子鉄心部16の歯は第1の固定子鉄心部12の歯に関して円周方向に変位されており、回転子12内の永久磁石22は軟磁粉から作られた軸方向に延びる極部24により互いに円周方向に分離されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の技術分野)
本発明は一般的に回転機械(rotary machine)に関する。特に、本発明は複数の歯を含み実質的に円形である第1の固定子鉄心部と、複数の歯を含み実質的に円形である第2の固定子鉄心部と、第1および第2の円形固定子鉄心部間に配置されたコイルと、複数の永久磁石を含む回転子と、を含む回転電機(electrical rotary machine)に関する。さらに、第1の固定子鉄心部、第2の固定子鉄心部、コイルおよび回転子は共通幾何学的軸を取り囲んでおり、第1の固定子鉄心部および第2の固定子鉄心部の複数の歯は回転子に向かって突き出るように配置されている。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
近年、調整極機械(modulated pole machine)、クローポール機械、ランデル機械および交差磁束機械(TFM)から発展した電気機械(electric machine)の設計はますます興味深いものとなってきている。これらの機械の原理を使用する電気機械は早くも1910年頃にAlexaderssonおよびFessendenにより開示されている。
【0003】
ますます興味深いものとなってきている最も重要な理由の1つは、この設計は、たとえば、誘導機械、スイッチド・リラクタンス(switched reluctance)機械さらには永久磁石ブラシレス機械に関して非常に高いトルク出力を可能にすることである。さらに、このような機械にはしばしばコイルの製作が容易であるという利点がある。しかしながら、この設計の1つの欠点は典型的に製作費が比較的高くかつ漏洩磁束が高いことであり、それにより機械の性能および効率が低下する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
(発明の概要)
したがって、性能を高めた回転電機を提供することが本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の目的は請求項1に従った回転電機および請求項12に従った回転電機により達成される。本発明の実施例が従属項に開示されている。
【0006】
特に、本発明の1側面に従って、回転電機は実質的に円形で複数の歯を含む第1の固定子鉄心部と、実質的に円形で複数の歯を含む第2の固定子鉄心部と、第1および第2の円形固定子鉄心部間に配置されたコイルと、複数の永久磁石を含む回転子と、を含んでいる。第1の固定子鉄心部、第2の固定子鉄心部、コイルおよび回転子は共通幾何学的軸を取り囲んでおり、第1の固定子鉄心部および第2の固定子鉄心部の複数の歯は回転子に向かって突き出るように配置されている。さらに、第2の固定子鉄心部の歯は第1の固定子鉄心部の歯に関して円周方向に変位され、回転子内の永久磁石は軟磁性材料から作られた軸方向に延びる極部により互いに円周方向に分離されている。
【0007】
この構成の1つの利点は永久磁石およびコイルからの磁束をより効率的に使用できることである。たとえば、漏洩磁束路数が最小限に抑えられ永久磁石からの磁束は既知の調整極機械よりも大幅に利用することができる。他の電気機械に関して前記したような機械はより多くのトルクを発生することができる。さらにもう1つの利点はコイルの起磁力(MMF)の全てを各極に対して利用することができ、特定のサイズおよび/またはコストに対して高い電気的荷重および高い出力が得られることである。
【0008】
本発明のもう1つの側面に従って、回転機械は複数の位相部を含み、各々が前記した電気機械の特徴を含んでいる。
【0009】
その利点は、前記したものの他に、このような機械を実質的に一定のトルクを提供するようにできることであり、それはある応用において有利となる。
【0010】
一実施例では、極部は軟磁粉により作られる。極部を軟磁粉により作ることにより回転子の製作を単純化することができ、有効な3次元磁束路の利点を利用して磁束集中をより効率的とすることができる。
【0011】
もう1つの実施例では、2つの固定子鉄心部間に磁束ブリッジが配置され、この磁束ブリッジは第1および第2の円形固定子鉄心部が同心状に配置される固定子ヨーク部である。このような固定子鉄心部を配置することにより、固定子アセンブリの部品の製作工程および固定子アセンブリの組立工程を容易にしよりコスト効果的にすることができる。
【0012】
以下の詳細な説明を読めば本発明のさらなる応用範囲が明らかになる。しかしながら、詳細な説明および特定の例は、本発明の好ましい実施例を示すものではあるが、単なる例示のために与えられたものであり、当業者ならばこの詳細な説明を読めば本発明の精神および範囲内でさまざまな変更および修正が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の1側面の一実施例に従ったラジアル回転電機の略分解斜視図である。
【図2】図1の回転電機の略斜視図である。
【図3】図2の回転電機の断面図である。
【図4】図1−3の回転電機の固定子鉄心部の略図である。
【図5】図1−3の回転電機の回転子の略斜視図である。
【図6】磁束路も略示している、図1−3の回転電機の軸方向の略平面図である。
【図7】本発明の1側面の一実施例に従ったアキシアル回転電機の略分解斜視図である。
【図8】図7の回転電機の略斜視図である。
【図9】図7の回転電機の固定子アセンブリの略斜視図である。
【図10】図7の回転電機の回転子の略斜視図である。
【図11】本発明の第2の側面の実施例に従った三相回転機の略斜視図である。
【図12】図11の三相回転機の斜視断面図である。
【図13】異なる位相関の可能な空間差を示す、図11の三相回転機の各相の第1の固定子鉄心部の略図である。
【図14】本発明の一実施例に従った二相アキシアル回転電機の略分解斜視図である。
【図15】図14の二相回転機の略斜視図である。
【図16】本発明の一実施例に従った三相回転電機の略分解斜視図である。
【図17】図16の三相回転電機の略斜視図である。
【図18】本発明の一実施例に従った回転電機の略分解斜視図である。
【図19】図18の回転機の固定子部の略斜視図である。
【実施例】
【0014】
(実施例の詳細な説明)
添付図について好ましい実施例の以下の説明を読めば本発明の他の特徴および利点が明らかとなる。図1−3は本発明に従った回転機の一実施例を示す。この実施例は固定子アセンブリ10および回転子12を含んでいる。
【0015】
固定子アセンブリは第1の固定子鉄心部14、第2の固定子鉄心部16、固定子ヨーク部18およびコイル20を含んでいる。
【0016】
回転子は永久磁石22および極部24を含んでいる。
【0017】
固定子の固定子ヨーク部18は第1および第2の固定子鉄心部14,16間に磁束路を提供して、「磁束ブリッジ」として作用するようにされている。固定子の組立てを容易にしかつ2つの固定子鉄心部14,16間で比較的低いリラクタンス遷移を提供するために、固定子ヨーク部18に対して使用される材料は軟磁粉とすることができる。
【0018】
図1−3の実施例で使用された固定子鉄心部14,16の実施例が図4に示されている。1つの固定子鉄心部しか図示されていない。しかしながら、一実施例では、2つの固定子鉄心部14,16は実質的に同一である。各固定子鉄心部は本質的に円形形状であり複数の半径方向に延びる歯26を含んでいる。歯26は回転子12と閉回路磁束路を形成するために回転子12に向かって延びるようにされている。図4では、歯は内部回転子に向かって内向きに延びるように示されている。しかしながら、図示せぬ一実施例では、回転子を固定子鉄心部14,16の外側に配置することができ、そのために歯は半径方向外向きに延びるように配置される。
【0019】
図1および4に示す実施例では、固定子鉄心部14,16は積層される、すなわち、薄い電気絶縁体により分離された軟磁性材料の積層シートから作られる。固定子鉄心部の一般的な積層技術は当業者ならばよく知っている。一実施例では、積層鉄心部14,16は、たとえば、歯間の領域をパンチングにより除去して歯が形成されている軟磁性材料の細片すなわち細長シートから作ることができる。次に、各形成されたシートまたは複数の形成されたシートが面に平行な方向に曲げられて円形形状とされる。アキシアル磁束機械に対する対応する製作技術がWO 2004/093291 A1、Hoeganaes ABに記述されている。本積層鉄心背部(laminated core back section)とWO 2004/093291 A1の鉄心背部の違いは、各々が個別に製作された歯を受け入れるようにされている開口を含むWO 2004/093291 A1文書のシートとは異なり、本鉄心背部のシートは鉄心背部の歯をも形成することである。鉄心背部をこのように製作することによりスクラップが減り、軟磁性材料はより効率的に使用される。
【0020】
図1−3の実施例で使用された回転子12の実施例が図5に示されている。回転子12は永久磁石部22および軟磁性材料から作られた極部24を含んでいる。極部24は永久磁石22間に配置され、永久磁石22を互いに分離する。
【0021】
図5に示す実施例では、永久磁石22および極部24は回転子の軸方向に実質的に同じ距離だけ延びている。
【0022】
永久磁石はその磁化方向が実質的に円周方向となる、すなわち、北極および南極が、それぞれ、実質的に円周方向を向くようにされている。
【0023】
さらに、円周方向に数えて一つ置きの永久磁石22はその磁化方向が他の永久磁石に関して反対方向となるようにされている。したがって、1つの永久磁石22の北極Nは隣接永久磁石22の1つの北極Nに面している。同様に、1つの永久磁石22の南極Sは隣接永久磁石22の南極Sに面している。
【0024】
回転子12のこの設計には永久磁石22からの磁束集中を可能にして固定子10の歯26に対向する回転子12の表面が両方の隣接永久磁石22からの全磁束を対向する歯6の表面へ与えられるという利点がある。磁束集は歯に対向する領域により分割された各極部24に対向する永久磁石22の領域の関数と見ることができる。各極部24の磁束集中性により弱い低コストの永久磁石を回転子内の永久磁石22として使用して非常に高い空隙磁束密度を達成することができる。磁束集中は有効な3次元磁束路を可能にする軟磁粉から作られる極部により促進される。さらに、この設計により対応するタイプの機械よりもより効率的に磁石を使用することができる。この設計のさらにもう1つの利点は磁石が回転子位置に無関係に実質的に同じリラクタンスとなり脈動磁束の問題を緩和することである。
【0025】
前記した実施例では、図1および図6参照、第1および第2の固定子鉄心部14,16は互いに軸方向に変位され共通軸周りに配置される。コイル20は2つの固定子鉄心部14,16間に配置される。コイルをこのように配置することの利点は全てのMMF(起磁力)に各極が遭遇して、定められたサイズおよび/またはコストに対して高い電気的荷重および高い出力が得られることである。固定子ヨーク部18は2つの固定子鉄心部14,16に同心的に配置される。2つの固定子鉄心部14,16間の磁束ブリッジとして配置されるように、固定子ヨーク部18は、軸方向において、実質的に2つの固定子鉄心部14,16およびコイル20のアセンブリの長さに対応する長さである。固定子ヨーク部18を軟磁粉から作ることにより、固定子鉄心部14,16から固定子ヨーク部18に至る3次元磁束路の効率は固定子ヨーク部が積層板から作られる実施例に関して高められる。
【0026】
さらに、2つの固定子鉄心部の一方は他方の固定子鉄心部に関して回転変位される。この変位により一方の固定子鉄心部の歯26は他方の固定子鉄心部の歯の円周方向位置とは異なる円周方向位置に位置決めされる。これは図6に示され、この観点から、第1の固定子鉄心部14はコイル20の前に位置決めされ、第2の固定子鉄心部16はコイルの後ろに位置決めされる。第2の固定子鉄心部16の隠れた部分は破線で示されている。図6に示す実施例では、固定子鉄心部14,16の一方の各歯は、円周方向において、他方の固定子部の2つの歯間の間隙の中央に位置決めされる。
【0027】
固定子アセンブリ10の前記した構成には組立てが容易で部品の製作が容易であるという利点がある。
【0028】
次に、回転子12は図示せぬアクスル(axle)50すなわちシャフト上に配置され固定子アセンブリ10の中心に位置決めされるか、あるいは、回転子がアウターロータ型であれば固定子アセンブリ周りに位置決めされる。
【0029】
一方の固定子鉄心部の歯を他方の固定子鉄心部の歯に関して変位させる概念は前記した最も有効な回転子設計を有効利用するのに有利である。図6について、永久磁石22から開始する時、システムの磁束路は次のように描くことができる、
I)磁束路は最初円周方向であり永久磁石22から隣接極部24内を向いていて、磁束集中を生じることがあり、極部24内で磁束路は円周方向であり永久磁石22の対向領域からの磁束を第1の固定子鉄心部14の歯26の位置に集中させるために一部軸方向であり、
II)次に、磁束路は極部24から半径方向を向き、空隙28を横切り第1の固定子鉄心部14の歯を通り半径方向および一部円周方向に、ここでは固定子ヨーク部18である、磁束ブリッジ内に入り、
III)次に、磁束路は軸方向および円周方向を向き磁束ブリッジを通って第2の固定子鉄心部16の隣接歯へ向かい、
IV)次に、磁束路は半径方向を向き第2の固定子鉄心部16の歯を通り、この歯と回転子間の空隙28を横切って永久磁石22の他方側の極部24に入り、
V)次に、磁束路は円周方向を向き永久磁石22へ戻る。
【0030】
各永久磁石に対して対応する磁束路を描くことができるが、理解し易くするために1つしか示されていない。
【0031】
本発明の一実施例では、一方の固定子鉄心部14の歯26は円周方向に延びる間隙により他方の固定子鉄心部16の歯26から軸方向に分離されている。間隙は円周方向に延びていて第2の固定子鉄心部16の歯26間のスペース内へ軸方向に延びる第1の固定子鉄心部14の歯26により中断されない。すなわち、間隙は完全なリングを描く。
【0032】
2つの固定子鉄心部14,16間に配置されるコイル20には異なる動作電圧、たとえば正弦波または方形波、を供給することができる。
【0033】
本発明のもう1つの実施例では、図1−6について記述したラジアル回転電機の一般的設計をアキシャル回転電機に使用することができる。アキシャル回転電機に対する一般的性質および利点はラジアル回転電機に対するものと同じである。しかしながら、アキシャル回転電機は以下に記述するさらなる利点を提示することができる。
【0034】
本発明の1つの側面および実施例に従ったアキシャル回転電機およびその部品を図7−10に示す。ラジアル回転電機だけでなくアキシャル回転電機も固定子アセンブリ60および回転子62を含んでいる。ラジアル回転電機とこのアキシャル回転電機間の本質的な違いはアキシャル回転電機の第1および第2の固定子鉄心部64,66がアキシャル突起歯76を含むことである。さらに、第1の固定子鉄心部64は第2の固定子鉄心部66を取り囲んでおり、両方が実質的に同じ軸方向位置に配置されており、それは図8および9から明らかである。ラジアル回転電機のコイルと実質的に同一であるコイル70が第1および第2の固定子鉄心部64,66間に配置されている、すなわち、コイルは第2の固定子鉄心部66の周辺を取り囲み第1の固定子鉄心部64に取り囲まれている。磁束ブリッジすなわち固定子ヨーク部68は第1および第2の両方の固定子鉄心部64,66上に軸方向から配置され、かつ回転子62に対向しない端部上に配置される。
【0035】
図7および9に明示されているように、第1の固定子鉄心部64および第2の固定子鉄心部66の半径方向幅は異なることがある。これらの磁束路を通過する磁束が経験する断面積の領域を実質的に同一にして固定子アセンブリ60の磁束路を最適化するために、固定子鉄心部64,66には異なる半径方向幅が与えられる。したがって、第1の固定子鉄心部64の歯は第2の固定子鉄心部の歯よりも円周方向に長く半径方向に短い。
【0036】
ラジアル回転電機と同様に、第2の固定子鉄心部66の歯76は第1の固定子鉄心部64の歯76に関して円周方向に変位されている、図9参照。したがって、第1の固定子鉄心部64の歯76が回転子62の特定の極部74に対向している時、同じ極部74に対向している第2の固定子鉄心部66の歯76は無い。
【0037】
固定子アセンブリ60の材料および組成の選出はラジアル回転電機に関連して記述した任意の実施例と同一とすることができる。しかしながら、積層のシートが軸方向に広がる点において固定子鉄心部64,66の積層方向は異なる。したがって、固定子鉄心部64,66はシートの面の法線に対応する方向で曲げられてリングまたは螺旋とされリング状固定子鉄心部に組立てられる細長シートから作ることができる。
【0038】
回転子62はラジアル回転電機の回転子に対するものと同様に配置される永久磁石72および極部74を含むこともできる、図5および10参照。このように、永久磁石の極は円周方向に向けられる。回転子に使用される材料はラジアル回転電機の実施例で記述した材料と同一とすることができる。
【0039】
この実施例の回転子62は空隙78を介して固定子鉄心部64,66の歯に対向する2つの軸方向を向いた表面の一方と固定子鉄心部64,66の歯との間で磁束を行き来させるようにされている、図1,8および10参照。このように、アキシャル回転電機の回転子62は軸方向に磁束を分布し受け入れるようにされており、ラジアル回転電機の回転子12は半径方向に磁束を分布し受け入れるようにされている。これにより、歯に対向する十分な相互作用領域を提供するために、アキシャル回転電機の回転子62は半径方向においてラジアル回転電機よりも広くなることがある。しかしながら、回転子62を軸方向に小さくしてフラットなモータ設計を可能にすることができる。したがって、車両の車輪に嵌めることができるような少量の軸方向スペースを必要とするようなモータを作ることさえできる。
【0040】
本発明の一実施例では、一方の固定子鉄心部64の歯76は円周方向に延びる間隙により他方の固定子鉄心部66の歯76から半径方向に分離されている。間隙は円周方向に延び第2の固定子鉄心部66の歯76間のスペース内へ軸方向に延びる第1の固定子鉄心部64の歯76により中断されない。言い換えれば、間隙は完全なリングを描く。
【0041】
ラジアルまたはアキシャル回転電機のいずれか一方の固定子鉄心部のさらなる実施例が可能であり、有利な場合もある。たとえば、固定子鉄心部14,16;64,66の各々を軟磁粉から作ることができる。固定子鉄心部が軟磁粉から作られる場合、固定子ヨーク部18;68は除去することができ、磁束ブリッジ機能を固定子鉄心部14,16;64,66に内蔵することができる。これは各固定子鉄心部14,16;64,66内に円周方向に実質的に連続的に配置された突起を含むように固定子鉄心部14,16;64,66を形成して達成することができる。突起は他方の固定子鉄心部14,16;64,66に向かって突き出るように配置される。このような設計は固定子アセンブリの組立工程がさらに容易になる点において有利である。
【0042】
しかしながら、ある応用では、固定子鉄心部14,16;64,66を積層板から作り固定子ヨーク部18;68を軟磁粉から作るのが有利となることがある。このような1つの利点は、しばらくの間、積層板は2次元磁束路において軟磁粉よりも良好な透磁率を有し、軟磁粉は3次元磁束路を必要とする部品に対してより良い性質を有することである。したがって、2つの材料、積層板および軟磁粉、の組合せにより効率的な磁束路を提供することができる。したがって、このようにして製作される機械は出力密度、すなわち発生される力のモータの空間堆積に対する比率、が増加する。さらに、前記した2つの材料を組み合わせた機械内の抵抗損が減少し、それは所望のトルクを発生するのにより少ない電流しか必要としない結果である。固定子鉄心部14,16;64,66内に積層板を使用することにより、軟磁粉構造よりも大きいねじれ力に耐えられる構造が達成される。
【0043】
軟磁粉から作られた2つの磁束接続部間に配置された積層部から固定子ヨーク部18;68を形成することにより機械の効率をさらに高めることができる。3次元磁束伝導性により磁束を積層部に結合するために、各磁束接続部を各固定子鉄心部上に配置することができる。
【0044】
さらにもう1つの実施例では、全体ヨーク部18;68が積層から作られる。積層は積層シートの延長部がラジアルおよびアキシャルである、すなわち、シートの面への法線が実質的に円周方向を指しているようにされる。このような積層シートは楔状とするか、あるいはシート間にスロットを配置することができる。
【0045】
一実施例では、軟磁粉コンポーネントすなわち部品は使用する軟磁性材料に応じて所望する形に圧粉成形または焼結することができる。得られるコンポーネントすなわち部品は少なくとも1μΩmの抵抗率を提示しなければならない。さらに、もう1つの実施例では、固定子部品の密度は少なくとも6500kg/mとすることができる。圧粉成形により固定子部品を作るために使用できる軟磁粉のいくつかの例はHoeganaes AB,S−263 83 Hoeganaes,スエーデンのSomaloy 500、Somaloy 550およびPermite 75である。
【0046】
さらにもう1つの実施例では、固定子鉄心部14,16の複数の歯26の中にスロット30が配置されている、図18,19参照。スロット30は複数の歯26の各々を軸および半径方向に延びるようにされている。このようなスロット30を配置することにより永久磁石から歯の望ましくない表面への漏洩が減少される。このような望ましくない表面は固定子鉄心部の背面から歯の先端へ広がる表面とすることができる、すなわち回転子に対向する表面ではない。
【0047】
図1−3および6−8の全てがある応用に対して非常に有用となることがある単相機械を示している。このような機械は(1+cos2ωt)の形の単向性脈動トルクを発生する。2台以上の単相機械を結合して正しい空間および時間位相角によりそれらを分離することにより、得られる機械は実質的に定トルクを発生することができる。結合できる相数は実際的な要件だけで制限される。
【0048】
本発明に従った、ここでは三相機械である、多層ラジアル機械の例が図11−12に示されている。参照数字は、′が第1相の特徴に関し、′′が第2相の特徴に関し、′′′が第3相の特徴に関する違いのある単相ラジアル機械の参照数字に対応する。これらの図には回転子が搭載されるアクスル50が示されている。各位相部、すなわち明細書に前記したような単相機械、はそれ自体の回転子を含んで示されている、すなわち各位相部は前記した単相機械に完全に対応する。しかしながら、3つの位相部全てとの相互作用に対して単一回転子を配置することができる、すなわち、ラジアル単相機械に関連して前記した回転子は3つの位相部全てと相互作用するために軸方向に延長される。さらに、図はラジアル電気機械から作られるバリエーションしか示していないが、各ラジアル位相部はアキシャル位相部と交換することができる。
【0049】
位相間の空間分離の例を図13に示す。各位相の第1の固定子鉄心部14′、14′′、14′′′が図示されている。この例における空間分離は他の位相の固定子鉄心部の歯に関して円周方向に変位されている1つの位相の固定子鉄心部の歯に関連している。
【0050】
アキシャル位相部を利用する二相電気機械、すなわち図7−10に関して記述したアキシャル電気機械、の実施例が図14−15に示されている。参照数字は、′が第1の位相部の特徴に関し、′′が第2の位相部の特徴に関する違いのある単相アキシャル機械の参照数字に対応する。この実施例では、固定子アセンブリ60′および60′′はそれらの歯76′および76′′が他方の固定子アセンブリに対向するようにされている。2つの固定子アセンブリ60′および60′′は同じ回転子62を共有するようにされている。この実施例はそれが、少なくとも軸方向において、非常にコンパクトとなり、比較的少数の部品を含み、すなわち組立てが容易であり、しかも前記した利点を示す点において有利である。
【0051】
本発明に従った三相電気機械のもう1つの実施例が図16−17に示されている。この実施例は2つのアキシャル位相部および1つのラジアル位相部および本発明に従って磁束が軸方向および半径方向の両方で固定子アセンブリに対して送受されるようにされた1つの回転子を含んでいる。図において、参照数字は、′が第1のアキシャル位相部の特徴に関し、′′が第2のアキシャル位相部の特徴に関する違いのある単相アキシャル機械および単相ラジアル機械の参照数字に対応する。電気機械をこのように設計することにより、組立てが容易でしかも回転電機の有利な特性を提示する非常にコンパクトな三相電気機械を本発明に従って製造することができる。
【0052】
本発明は調整極機械のより効率的な設計に関連している。明細書には本発明のインプリメンテーション例が与えられている。明細書は制約的感覚で解釈すべきではない。当業者ならば本発明の範囲および精神を必ずしも逸脱しない変更および修正が自明である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転電機であって、前記機械は、
実質的に円形で複数の歯を含む第1の固定子鉄心部と、
実質的に円形で複数の歯を含む第2の固定子鉄心部と、
第1および第2の円形固定子鉄心部間に配置されたコイルと、
複数の永久磁石を含む回転子と、を含み、
第1の固定子鉄心部と、第2の固定子鉄心部と、コイルと回転子は共通幾何学的軸を取り囲んでおり、第1の固定子鉄心部および第2の固定子鉄心部の複数の歯は回転子に向かって突き出るように配置されており、
第2の固定子鉄心部の歯は第1の固定子鉄心部の歯に関して円周方向に変位されており、
前記第2の固定子鉄心部の全体が、周方向に延在する領域によって、第1の固定鉄心部の歯の全体から軸方向に分離され、当該領域は周方向に延在して、前記第1及び第2の固定子鉄心部の歯で中断されることは無く、当該領域は前記第1及び第2の固定子鉄心部の歯で中断されないリングを形成し、
回転子内の永久磁石は軟磁粉により作られた軸方向に延びる極部により互いに円周方向に分離され、
前記永久磁石を分離する前記軸方向に延在する極部は、前記第1及び第2の固定子鉄心の双方に対し軸方向に延在し、
当該回転子の永久磁石の磁化方向は実質的に円周方向であり、前記軸方向に延びる極部は磁束路を構成し、当該磁束路は少なくとも円周方向及び軸方向に延在して、前記磁束を前記隣接する永久磁石の対向面から前記固定子鉄心部の一つの歯の位置に集中させる、ことを特徴とする回転電機。
【請求項2】
請求項1に記載の電気機械であって、1つ置きの永久磁石の磁化方向はその間の永久磁石の磁化方向とは反対である電気機械。
【請求項3】
請求項1−2のいずれか一項に記載の電気機械であって、極部は軟磁粉により作られる電気機械。
【請求項4】
請求項1−3のいずれか一項に記載の電気機械であって、前記円形固定子鉄心部間に磁束路を提供するための磁束ブリッジが第1および第2の円形固定子鉄心部間に配置される電気機械。
【請求項5】
請求項4に記載の電気機械であって、磁束ブリッジは前記共通幾何学的軸を取り囲むように配置された固定子ヨーク部である電気機械。
【請求項6】
請求項5に記載の電気機械であって、固定子ヨーク部は軟磁粉により作られる電気機械。
【請求項7】
請求項1−6のいずれか一項に記載の電気機械であって、前記固定子鉄心部は積層された軟磁性材料のシートおよび電気絶縁体のシートにより作られる電気機械。
【請求項8】
請求項1−7のいずれか一項に記載の電気機械であって、前記固定子鉄心部は軟磁粉により作られる電気機械。
【請求項9】
請求項1−8のいずれか一項に記載の電気機械であって、第1の固定子鉄心部および第2の固定子鉄心部の歯は半径方向に突き出ており、第1の固定子鉄心部および第2の固定子鉄心部は互いに軸方向に変位されている電気機械。
【請求項10】
請求項1−8のいずれか一項に記載の電気機械であって、第1の固定子鉄心部および第2の固定子鉄心部の歯は軸方向に突き出ており、第1の固定子鉄心部は第2の固定子鉄心部を取り囲むように配置されている電気機械。
【請求項11】
請求項1−9のいずれか一項に記載の電気機械であって、回転子は第1および第2の固定子鉄心部周りに配置されており、歯は半径方向外向きに延びている電気機械。
【請求項12】
請求項1−5のいずれか一項に記載の電気機械であって、固定子鉄心部は軟磁粉から作られており第1および第2の固定子鉄心部間に磁束路を発生するためにその中に内蔵された磁束ブリッジを含む電気機械。
【請求項13】
請求項12に記載の電気機械であって、各固定子鉄心部は円周方向に実質的に連続的に配置され対応する他方の固定子鉄心部へ向かって突き出る突起を含む電気機械。
【請求項14】
回転電機であって、前記機械は、
各々が請求項1−13のいずれか一項に記載の特徴を含む複数の位相部、を含む回転電機。
【請求項15】
請求項1に記載の電気機械であって、前記周方向に延在する領域は、少なくともコイルが詰められた箇所で、軸方向に歯を分離する電気機械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2011−250689(P2011−250689A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−169038(P2011−169038)
【出願日】平成23年8月2日(2011.8.2)
【分割の表示】特願2008−527876(P2008−527876)の分割
【原出願日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【出願人】(595054486)ホガナス アクチボラゲット (66)
【Fターム(参考)】