説明

電気泳動粒子分散液、表示媒体、及び表示装置

【課題】帯電極性の変動が抑制された帯電粒子が得られる高分子分散剤を提供する。
【解決手段】構成単位(A)と構成単位(B)と構成単位(C)とを含む共重合体からなる高分子分散剤を用いた2種の電気泳動粒子を備え、2種の電気泳動粒子の母粒子が、互いに酸性基を持ち且つ互いに異なる酸価の酸性高分子を含んで構成される母粒子、又は一方が酸性基を持つ酸性高分子を含んで構成され、他方が塩基性基を持つ塩基性高分子を含んで構成された母粒子である電気泳動粒子分散液。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気泳動粒子分散液、表示媒体、及び表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
画像維持性(所謂メモリー性)を有するディスプレイとして電気泳動表示媒体が盛んに研究されている。本表示方式では、液体中に帯電した電気泳動粒子を用いて、電場付与によって泳動粒子をセル内(二枚の電極基板を重ねてその間に電気泳動材料を分散媒と共に封入した構成)の視野面及び背面へ交互に移動させることによって表示が行なわれる。
【0003】
本技術では、電気泳動粒子が重要な要素になっており、様々な技術開発がなされている。例えば、低誘電率溶媒(例えば、石油系溶媒やシリコーンオイル等)を、電気泳動粒子を分散させる分散媒として用いた場合に、電気泳動粒子に電荷を付与する手法(電気泳動粒子に帯電させる手法)が種々提案されている。
【0004】
例えば、特許文献1、2では、例えば、分散媒中で電気泳動粒子に電荷を付与する手法として、酸塩基解離に基づく手法が提案されている。
特許文献3には、分散媒中の電気泳動粒子を帯電させる手法として、電気泳動粒子を顔料、樹脂化合物、分散媒に対する溶解性が5重量%以下の電荷調整剤とで構成することが提案されている。
特許文献4には、電気泳動粒子の閾値電圧を調整する方法として、例えば、電気泳動粒子と極性が異なる電荷をもつ閾剤を添加する方法が提案されている。
特許文献5には、溶媒に溶解しにくい構造を採用することによって熱力学的に粒子間の引力を誘起し、凝集性を高めてメモリー性を付与する方法が提案されている。
特許文献6には、アニオン性界面活性剤を用いて電気泳動粒子を分散させる方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特公平8−23005号公報
【特許文献2】特許第3936588号明細書
【特許文献3】特開2004−279732号公報
【特許文献4】特表2007−534006号公報
【特許文献5】特表2007−508588号公報
【特許文献6】特開昭59−165028号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、少なくとも2種の電気泳動粒子を含む電気泳動粒子分散液において、下記共重合体からなる高分子分散剤と下記構成の母粒子とを組み合わせない場合に比べ、混色が抑制された電気泳動粒子分散液を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題は、以下の手段により解決される。即ち、
請求項1に係る発明は、
分散媒と、
前記分散媒に分散された電気泳動粒子であって、高分子及び着色剤を含んで構成される母粒子と前記母粒子の表面に付着された高分子分散剤とを有する電気泳動粒子と、
を備え、
前記電気泳動粒子として、少なくとも2種の電気泳動粒子を備える共に、前記2種の電気泳動粒子の前記母粒子が、互いに酸性基を持ち且つ互いに異なる酸価の酸性高分子を含んで構成される母粒子、又は一方が酸性基を持つ酸性高分子を含んで構成され、他方が塩基性基を持つ塩基性高分子を含んで構成された母粒子であり、
前記高分子分散剤が、下記構成単位(A)と下記構成単位(B)と下記構成単位(C)とを含む共重合体からなる高分子分散剤である電気泳動粒子分散液。
【0008】
【化1】

【0009】
(前記構成単位(A)〜(C)中、Xは、シリコーン鎖を含む基、又は炭素数12以上の長鎖アルキル鎖を含む基を表す。Ra、Ra、及びRaは、それぞれ独立に水素原子、又はメチル基を表す。Rbは、炭素数1以上11以下のアルキル基を表す。Rbは、水素原子、又は−Rb31−OH(但し、Rb31は、炭素数1以上11以下のアルキレン基、アリールオキシ基で置換された炭素数1以上11以下のアルキレン基、水酸基で置換された炭素数1以上11以下のアルキレン基、又は−(CH−CH−O)−CH−CH−を表す。mは0又は1以上4以下の自然数を表す。)、n1は、16以上99以下の自然数を表す。n2は、0.2以上55以下の自然数を表す。n3は、0.1以上14以下の自然数を表す。)
【0010】
請求項2に係る発明は、
前記2種の電気泳動粒子の前記高分子分散剤における前記構成単位(B)の比率が、全構成単位に対して、質量比で0.2以上55以下である請求項1に記載の電気泳動粒子分散液。
【0011】
請求項3に係る発明は、
少なくとも一方が透光性を有する一対の基板と、
前記一対の基板間に封入された、請求項1又は2に記載の電気泳動粒子分散液と、
を備えたことを特徴とする表示媒体。
【0012】
請求項4に係る発明は、
少なくとも一方が透光性を有する一対の電極と、
前記一対の電極間に設けられた、請求項1又は2に記載の電気泳動粒子分散液を有する領域と、
を備えたことを特徴とする表示媒体。
【0013】
請求項5に係る発明は、
請求項3又は4に記載の表示媒体と、
前記表示媒体の前記一対の基板間又は前記一対の電極間に電圧を印加する電圧印加手段と、
を備えた表示装置。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に係る発明によれば、少なくとも2種の電気泳動粒子を含む電気泳動粒子分散液において、上記共重合体からなる高分子分散剤と上記構成の母粒子とを組み合わせない場合に比べ、混色が抑制された電気泳動粒子分散液を提供することができる。
請求項2に係る発明によれば、少なくとも2種の電気泳動粒子を含む電気泳動粒子分散液において、当該2種の電気泳動粒子の高分子分散剤における構成単位(B)の比率が上記範囲外である場合に比べ、混色が抑制された電気泳動粒子分散液を提供することができる。
請求項3、4、5に係る発明によれば、少なくとも2種の電気泳動粒子を含む電気泳動粒子分散液において、上記共重合体からなる高分子分散剤と上記構成の母粒子とを組み合わせない電気泳動粒子分散液を適用した場合に比べ、混色が抑制された表示媒体又は表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本実施形態に係る表示装置の概略構成図である。
【図2】本実施形態に係る表示装置の表示媒体の基板間に電圧を印加したときの粒子群の移動態様を模式的に示す説明図である。
【図3】本実施形態における泳動粒子の構成を概念的に示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0017】
(電気泳動粒子分散液)
本実施形態に係る電気泳動粒子分散液は、分散媒と、分散媒に分散され、電界に応じて移動し、電気泳動粒子(その群)と、を有する。また、電気泳動粒子(本実施形態に係る電気泳動粒子)は、母粒子と、母粒子の表面に付着された高分子分散剤と、を備える。
そして、高分子分散財(本実施形態に係る高分子分散剤)は、下記構成単位(A)と下記構成単位(B)と下記構成単位(C)とを含む共重合体からなっている。
加えて、電気泳動粒子として、例えば、色(着色剤)が異なる等、少なくとも2種の電気泳動粒子(その群)を備えると共に、2種の電気泳動粒子の前記母粒子が、互いに酸性基を持ち且つ互いに異なる酸価の酸性高分子を含んで構成される母粒子、又は一方が酸性基を持つ酸性高分子を含んで構成され、他方が塩基性基を持つ塩基性高分子を含んで構成された母粒子としている。
【0018】
本実施形態に係る電気泳動粒子分散液は、上記構成とすることで、2種の電気泳動粒子を含む電機泳動粒子において、混色が抑制された電気泳動粒子分散液が得られる。これは、上記構成とすることで、2種の電気泳動粒子(帯電粒子)における帯電極性の変動が抑制されることから、帯電極性を持つ電気泳動粒子(その群)のうち、逆極性となる粒子の存在が少なく、言い換えれば、異なる帯電極性を持つ粒子が混在し難く、目的とする帯電極性を持つ粒子の存在率が高い状態となると共に、2種の電気泳動粒子における電界により移動を開始する電圧差(この、電界により移動を開始する電圧を「閾値」と称することがある)が大きくなるためであると考えられるためである。
【0019】
そして、上記本実施形態に係る電気泳動粒子分散液を、表示媒体や表示装置に適用すると、混色を抑制した表示が実現される。
【0020】
まず、高分子分散剤について説明する。
高分子分散剤(本実施形態に係る高分子分散剤)は、下記構成単位(A)と下記構成単位(B)と下記構成単位(C)とを含む共重合体からなっている。
【0021】
【化2】

【0022】
構成単位(A)〜(C)中、Xは、シリコーン鎖を含む基、又は炭素数12以上の長鎖アルキル鎖を含む基を表す。
Ra、Ra、及びRaは、それぞれ独立に水素原子、又はメチル基を表す。
Rbは、炭素数1以上11以下のアルキル基を表す。
Rbは、水素原子、又は−Rb31−OH(但し、Rb31は、炭素数1以上11以下のアルキレン基、アリールオキシ基で置換された炭素数1以上11以下のアルキレン基、水酸基で置換された炭素数1以上11以下のアルキレン基、又は−(CH−CH−O)−CH−CH−を表す。mは0又は1以上4以下の自然数を表す。)
n1は、16以上99以下の自然数を表す。
n2は、0.2以上55以下の自然数を表す。
n3は、0.1以上14以下の自然数を表す。
ただし、n1+n2+n3=100であることがよく、n1、n2、n3は質量比を表す。
【0023】
ここで、構成単位(A)のXがシリコーン鎖を含む基)を表す場合、上記高分子分散剤はシリコーン系高分子分散剤であり、Xが長鎖アルキル鎖を含む基を表す場合、上記高分子分散剤は長鎖アルキル系高分子分散剤である。
【0024】
構成単位(A)〜(C)中、Xが表すシリコーン鎖を含む基は、直鎖状、又は分鎖状のシリコーン鎖(Si−O結合が連なった鎖)を含む基であり、具体的には、例えば、下記構造式(X1)、又は(X2)で示される基が挙げられる。
【0025】
【化3】

【0026】
構造式(X1)及び(X2)中、Rは、水酸基、水素原子又は炭素数1以上10以下のアルキル基を表す。
は、炭素数1以上10以下のアルキレン基を表す。
nは、1以上1000以下の整数を表す。
【0027】
構造式(X1)及び(X2)中、Rが表すアルキル基は、炭素数1以上10以下のアルキル基であるが、望ましくは炭素数1以上4以下のアルキル基、より望ましくは、メチル基である。
が表すアルキレン基は、炭素数1以上10以下のアルキル基あるが。望ましくは炭素数1以上3以下のアルキレン基、より望ましくは炭素数3のアルキレン基である。
nは、1以上1000以下の整数であるが、望ましくは2以上200以下、より望ましくは5以上100以下である。
【0028】
一方、構成単位(A)〜(C)中、Xが表す長鎖アルキル鎖を含む基は、直鎖状、又は分鎖状の炭素数12以上30以下のアルキル鎖を含む基であり、具体的には、例えば、ペンタデカ(メタ)アクリレート(炭素数15)、ヘプタデカ(メタ)アクリレート(炭素数17)などが挙げられる。
【0029】
構成単位(A)〜(C)中、Rbが表すアルキル基は、炭素数1以上11以下のアルキル基であるが、望ましくは炭素数1以上6以下のアルキル基、より望ましくはメチル基である。
【0030】
構成単位(A)〜(C)中、Rbが−Rb31−OHを表す場合、当該Rb31が表すアルキレン基は、炭素数1以上11以下のアルキレン基であるが、望ましくは炭素数1以上4以下のアルキレン基である。
また、Rbが−Rb31−OHを表す場合、当該Rb31が表すアルキレン基に置換されるアリールオキシ基としては、例えば、フェニルオキシ基、1−ナフチルオキシ基、2−ナフチルオキシ基、2−クロロフェニルオキシ基、2−メチルフェニルオキシ基等が挙げられる。
なお、Rbが−Rb31−OHを表す場合において、Rb31が水酸基で置換された炭素数1以上11以下のアルキレン基を表すとき、「−Rb31−OH」はグリセリン構造を持つ基を示し、Rb31が−(CH−CH−O)−CH−CH−を表すとき、「−Rb31−OH」はエチレングリコール構造を持つ基を示す。
【0031】
ここで、上記各符号が表すアルキル基は、直鎖状であっても、分鎖状であってもよく、具体的には、例えば、メチル基、エチル基、イソプロピル基、ブチル基、イソペンチル基、アミル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、エチルヘキシル基、イソノニル基、デシル基等が挙げられ、目的の炭素数のもの合せて選択される。
また、上記各符号が表すアルキレン基も、直鎖状であっても、分鎖状であってもよく、具体的には、例えば、メチレン基、エチレン基、イソプロピレン基、ブチレン基、イソペンチレン基、アミレン基、へキシレン基、シクロへキシレン基、オクチレン基、エチルへキシレン基、イソノニレン基、デシレン基等が挙げられ、目的の炭素数のもの合せて選択される。
【0032】
構成単位(A)〜(C)中、
n1は、16以上99以下の自然数を表すが、望ましくは80以上99以下である。
n2は、0.2以上55以下の自然数を表すが、望ましくは0.2以上7以下である。
n3は、0.1以上14以下の整数を表す。
なお、高分子分散剤の重合比(n1/n2/n3)は、例えば、95/3/2乃至99/0.5/0.5が望ましく、より望ましくは98/1.5/0.5である。
【0033】
高分子分散剤において、構造単位(A)を構成する単量体として具体的には、Xがシリコーン鎖を含む基を表すものである場合、例えば、片末端に(メタ)アクリレート基を持ったジメチルシリコーンモノマー(例えば、チッソ社製:サイラプレーン:FM−0711,FM−0721,FM−0725等、信越シリコーン(株):X−22−174DX, X−22−2426, X−22−2475等)等が挙げられる。これらの中でも、サイラプレーンFM−0711が望ましい。
一方、構造単位(A)を構成する単量体として具体的には、Xがアルキル鎖を含む基を表すものである場合、例えば、長鎖アルキル(メタ)アクリレート(例えば、炭素数12以上のアルキル鎖をもったもの)が望ましく、具体的には、2ドデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0034】
また、構造単位(B)を構成する単量体として具体的には、メチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの中でも、メチルメタクリレート(MMA)、ブチルメタクリレート(BMA)が望ましい。
【0035】
また、構造単位(C)を構成する単量体として具体的には、メタクリル酸、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルサクシネート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの中でも、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、メタクリル酸(MAA)が望ましい。
【0036】
なお、高分子分散剤は、上記構成単位(A)〜(C)からなる高分子分散剤であってもよいし、上記構成単位(A)〜(C)に加え、他の構成単位を有する高分子分散剤であってもよい。
この他の構成単位(他の構造単位を構成する単量体)としては、例えば、スチレン、グリシジル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート化合物等が挙げられる。
【0037】
高分子分散剤の具体例としては、以下に示すものが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0038】
【化4】

【0039】
ここで、高分子分散剤の末端基としては、例えば、水酸基、メチル基、アルキル基、カルボキシル基等が挙げられる。
【0040】
高分子分散剤の重量分子量は、シリコーン系高分子分散剤の場合、500以上100万以下が望ましく、より望ましくは1000以上100万以下である。
一方、高分子分散剤の重量分子量は、長鎖アルキル系高分子分散剤の場合、1000以上100万以下が望ましく、より望ましくは1万以上100万以下である。
なお、重量平均分子量は静的光散乱法又はサイズ排除カラムクロマトグラフィーにより測定され、本明細書に記載の数値は当該方法によって測定されたものである。
【0041】
高分子分散剤の付着量としては、例えば、粒子の質量に対して2質量%から200質量%の範囲であることがよい。
この付着量は、次のようにして求められる。例えば、作製した粒子を遠心沈降させて、その質量を測定することで粒子材料量に対する増加量分として算出する。
【0042】
高分子分散剤は、帯電粒子(電気泳動粒子)に対して物理的に付着(吸着)した状態であってもよいし、化学的に付着(結合)した状態であってもよい。
【0043】
高分子分散剤は、周知の手法により合成される。具体的には、例えば、攪拌機、温度計を備えた反応容器に、溶媒(例えばイソプロピルアルコール(IPA)等)を採り、分散剤を合成する原料となる単量体、及び重合開始剤を加えて溶解させる。この溶液に対して窒素バブリング(例えば毎分100ml、15分間)を行い、密栓して加熱攪拌を続け(例えば55℃で5時間)、反応を終了する。得られた樹脂溶液から溶媒を蒸発させることで、共重合体からなる高分子分散剤が得られる。
ここで、重合開始剤としては、例えば、V−65、AIBN等が用いられる。
溶媒としては、前述のイソプロピルアルコール(IPA)の他、テトラヒドロフラン(THF)、ジメチルシリコーンオイル等が用いられる。
なお、高分子分散剤における各構成単位の比率の調整は、重合に用いる各単量体の比率の調整によって行われる。
【0044】
次に、電気泳動粒子について説明する。
電気泳動粒子は、図3に示すように、母粒子2と、母粒子2の表面に付着した高分子分散剤4と、で構成されている。母粒子2は、極性基を持つ高分子2Aと着色剤2Bとを含んで構成される。そして、高分子分散剤として、上記本実施形態に係る高分子分散剤が適用される。
【0045】
ここで、電気泳動粒子は、2種の電気泳動粒子が用いられ、その2種の電気泳動粒子の母粒子は、1)互いに酸性基を持ち且つ互いに異なる酸価の酸性高分子を含んで構成される母粒子である形態、又は2)一方が酸性基を持つ酸性高分子を含んで構成され、他方が塩基性基を持つ塩基性高分子を含んで構成された母粒子である形態とする。
【0046】
1)の形態においては、理由は不明であるが、上記高分子分散剤が母粒子に付着した電気泳動粒子は、同じ酸性基を持つ酸性高分子を用いた電気泳動粒子であっても、酸価の高い高分子を適用すると電気泳動泳動粒子が負帯電となる傾向があり、酸価の低い高分子を適用すると電気泳動粒子が正帯電となる傾向がある。これにより、2種の電気泳動粒子を含む分散液中において、帯電極性の変動も抑制された状態で、互いに帯電極性が異なるものとなると共に、2種の電気泳動粒子における電界により移動を開始する電圧差が大きくなると考えられ、結果、混色が抑制される。

電気泳動粒子分散液を提供することができる。
【0047】
ここで、酸価は、材料をKOHで中和滴定して(COOH)の量を測定することにより行われる。具体的には、高分子分散剤をIPA(イソプロピルアルコール)/水混合溶媒に溶解させた後、JIS K2501(2003年)の酸価の電位差測定法(測定には電位差計とpH計を用いる)に準じ、KOHの消費量を測定して、酸価が求められる。
なお、酸価を調整する手法としては、例えば、分散剤中の酸(例えばカルボン酸等)を持つ単量体成分の量を制御する手法が挙げられる。
【0048】
一方、2)の形態の形態では、上記高分子分散剤が母粒子に付着した電気泳動粒子は、酸性基を持つ酸性高分子を用いた電気泳動粒子が負帯電となる傾向があり、塩基性基を持つ塩基性高分子を用いた電気泳動粒子は正帯電となる傾向がある。これにより、2種の電気泳動粒子を含む分散液中において、帯電極性の変動も抑制された状態で、互いに帯電極性が異なるものとなると共に、2種の電気泳動粒子における電界により移動を開始する電圧差が大きくなると考えられ、結果、混色が抑制される。
【0049】
また、上記構成の2種の電気泳動粒子を適用する場合、当該2種の電気泳動粒子の上記高分子分散剤における構成単位(B)の比率は、全構成単位に対して、質量比で0.2以上77以下であることがよく、望ましくは0.2以上7以下である。高分子分散剤において、構成単位(B)の比率を上記範囲とすると、2種の電気泳動粒子における電界により移動を開始する電圧差(閾値差)が大きくなり易くなる、また、帯電極性の変動もより抑制され、帯電安定性が増すと考えられ。結果、混色が抑制される。
【0050】
なお、上記構成の2種の電気泳動粒子以外に、他の電気泳動粒子を含む場合、当該他の電気泳動粒子としては、2種の電気泳動粒子と閾値差があればよい。
【0051】
以下、各構成について説明する。なお、符号は省略して説明する。
母粒子は、上記1)又は2)の形態に従って、極性基(酸性基又は塩基性基)を持つ高分子と着色剤と含み、必要に応じて、その他の配合材料も含んで構成される。母粒子としては、例えば、高分子に着色剤が分散・配合されて構成、又は着色剤の表面を高分子で被覆した構成が挙げられる。
【0052】
極性基を持つ高分子は、当該極性基(分極性の官能基)として塩基性基又は酸基を持つ高分子である。この塩基性基を持つ高分子が塩基性高分子であり、酸性基を持つ高分子が酸性高分子である。
極性基としての塩基(以下、カチオン性基)は、例えば、アミノ基、4級アンモニウム基が挙げられる(これら基の塩も含む)。また、極性基としての酸基(以下、アニオン性基)は、例えば、フェノール基、カルボキシル基、カルボン酸塩基、スルホン酸基、スルホン酸塩基、リン酸基、リン酸塩基及びテトラフェニルボロン基が挙げられ(これら基の塩も含む)。
【0053】
極性基(帯電基)を有する高分子として、具体的には、例えば、極性基(帯電基)を有する単量体の単独重合体であってもよいし、極性基(帯電基)を有する単量体と他の単量体(極性基を持たない単量体)との共重合体が挙げられる。なお、「(メタ)アクリレート」等の記述は、「アクリレート」及び「メタクリレート」等のいずれをも含む表現である。以下、同様である。
【0054】
極性基(帯電基)を有する単量体としては、カチオン性基を有する単量体(以下、カチオン性単量体)、アニオン性基を有する単量体(以下、アニオン性単量体)が挙げられる。
【0055】
カチオン性単量体としては、例えば、以下のものが挙げられる。具体的には、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ヒドロキシエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N−エチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N−オ クチル−N−エチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジヘキシルアミノエチル(メタ)アクリレート等の脂肪族アミノ基を有する(メタ)アクリレート類、ジメチルアミノスチレン、ジエチルアミノスチレン、ジメチルアミノメチルスチレン、ジオクチルアミノスチレン等の含窒素基を有する芳香族置換エチレン系単量体類、
ビニル−N−エチル −N−フェニルアミノエチルエーテル、ビニル−N−ブチル−N−フェニルアミノエチルエーテル、トリエタノールアミンジビニルエーテル、ビニルジフェニルアミノエチルエーテル、N−ビニルヒドロキシエチルベンズアミド、m−アミノフェニルビニルエーテル等の含窒素ビニルエーテル単量体類、ビニルアミン、N−ビニルピロール等のピロール類、N−ビニル−2−ピロリン、N−ビニル−3−ピロリン等のピロリン類、N−ビニルピロリジン、ビニルピロリジンアミノエーテル、N−ビニル−2−ピロリドン等のピロリジン類、N−ビニル−2−メチルイミダゾール等のイミダゾール類、N−ビニルイミダゾリン等のイミダゾリン類、N−ビニルインドール等のインドール類、N−ビニルインドリン等のインドリン類、N−ビニルカルバゾール、3,6−ジブロム−N−ビニルカルバゾール等のカルバゾール類、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、2−メチル−5−ビニルピリジン等のピリジン類、(メタ)アクリルピペリジン、N−ビニルピペリドン、N−ビニルピペラジン等のピペリジン類、2−ビニルキノリン、4−ビニルキノリン等のキノリン類、N−ビニルピラゾール、N−ビニルピラゾリン等のピラゾール類、2−ビニルオキサゾール等のオキサゾール類、4−ビニルオキサジン、モルホリノエチル(メタ)アクリレート等のオキサジン類などが挙げられる。
また、汎用性から特に好ましいカチオン性単量体としては、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレートなどの脂肪族アミノ基を有する(メタ)アクリレート類が好ましく、特に重合前あるいは重合後に4級アンモニウム塩とした構造で使用されることが好ましい。4級アンモニウム塩化は、例えば、前記化合物をアルキルハライド類やトシル酸エステル類と反応することで得られる。
【0056】
アニオン性単量体としては、例えば、以下のものが挙げられる。
具体的には、アニオン性単量体のうち、カルボン酸モノマーとしては、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマール酸、シトラコン酸、又はそれらの無水物及びそのモノアルキルエステルやカルボキシエチルビニルエーテル、カルボキシプロピルビニルエーテルの如きカルボキシル基を有するビニルエーテル類等がある。
スルホン酸モノマーとしては、スチレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、3−スルホプロピル(メタ)アクリックアシッドエステル、ビス−(3−スルホプロピル)−イタコニックアシッドエステル等及びその塩がある。また、その他2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリル酸の硫酸モノエステル及びその塩がある。
リン酸モノマーとしては、ビニルホスホン酸、ビニルホスフェート、アシッドホスホキシエチル(メタ)アクリレート、アシッドホスホキシプロピル(メタ)アクリレート、ビス(メタクリロキシエチル)ホスフェート、ジフェニル−2−メタクリロイロキシエチルホスフェート、ジフェニル−2−アクリロイロキシエチルホスフェート、ジブチル−2−メタクリロイロキシエチルホスフェート、ジブチル−2−アクリロイロキシエチルホスフェート、ジオクチル−2−(メタ)アクリロイロキシエチルホスフェート等がある。
望ましくはアニオン性単量体としては、(メタ)アクリル酸やスルホン酸を持ったものであり、より望ましくは重合前若しくは重合後にアンモニウム塩となった構造のものである。アンモニウム塩は、例えば、3級アミン類若しくは4級アンモニウムハイドロオキサイド類と反応させることで作製される。
【0057】
一方、他の単量体としては、非イオン性単量体(ノニオン性単量体)が挙げられ、例えば、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリルアミド、エチレン、プロピレン、ブタジエン、イソプレン、イソブチレン、N−ジアルキル置換(メタ)アクリルアミド、スチレン、ビニルカルバゾール、スチレン、スチレン誘導体、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、塩化ビニル、塩化ビニリデン、イソプレン、ブタジエン、ビニルピロリドン、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0058】
ここで、極性基(帯電基)を有する単量体と他の単量体との共重合比は、所望の粒子の帯電量に応じて変更させる。通常は極性基(帯電基)を有する単量体と他の単量体との共重合比がそのモル比で1:100乃至100:0からの範囲で選択される。
【0059】
極性基(帯電基)を有する高分子の重量平均分子量としては、1000以上100万以下が望ましく、より望ましくは1万以上20万以下である。
【0060】
次に、着色剤について説明する。着色剤としては、有機若しくは無機の顔料や、油溶性染料等が挙げられ、例えば、マグネタイト、フェライト等の磁性紛、カーボンブラック、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、フタロシアニン銅系シアン色材、アゾ系イエロー色材、アゾ系マゼンタ色材、キナクリドン系マゼンタ色材、レッド色材、グリーン色材、ブルー色材等の公知の着色剤が挙げられる。具体的には、着色剤としては、アニリンブルー、カルコイルブルー、クロムイエロー、ウルトラマリンブルー、デュポンオイルレッド、キノリンイエロー、メチレンブルークロリド、フタロシアニンブルー、マラカイトグリーンオキサレート、ランプブラック、ローズベンガル、C.I.ピグメント・レッド48:1、C.I.ピグメント・レッド122、C.I.ピグメント・レッド57:1、C.I.ピグメント・イエロー97、C.I.ピグメント・ブルー15:1、C.I.ピグメント・ブルー15:3、等が代表的なものとして例示される。
【0061】
着色剤の配合量としては、極性基(帯電基)を持つ高分子に対し10質量%以上99質量%以下が望ましく、望ましくは30質量%以上99質量%以下である。
【0062】
次にその他の配合材料を説明する。その他の配合材料としては、例えば帯電制御材料、磁性材料が挙げられる。
帯電制御材料としては、電子写真用トナー材料に使用される公知のものが使用でき、例えば、セチルピリジルクロライド、BONTRON P−51、BONTRON P−53、BONTRON E−84、BONTRON E−81(以上、オリエント化学工業社製)等の第4級アンモニウム塩、サリチル酸系金属錯体、フェノール系縮合物、テトラフェニル系化合物、酸化金属粒子、各種カップリング剤により表面処理された酸化金属粒子を挙げられる。
【0063】
磁性材料としては、必要に応じてカラーコートした無機磁性材料や有機磁性材料を使用する。また、透明な磁性材料、特に、透明有機磁性材料は着色顔料の発色を阻害し難く、比重も無機磁性材料に比べて小さく、より望ましい。
着色した磁性材料(カラーコートした材料)として、例えば、特開2003−131420公報記載の小径着色磁性粉が挙げられる。核となる磁性粒子と該磁性粒子表面上に積層された着色層とを備えたものが用いられる。そして、着色層としては、顔料等により磁性粉を不透過に着色する等選定して差し支えないが、例えば光干渉薄膜を用いるのが好ましい。この光干渉薄膜とは、SiOやTiO等の無彩色材料を光の波長と同等な厚みを有する薄膜にしたものであり、薄膜内の光干渉により光の波長を選択的に反射するものである。
【0064】
次に、分散媒について説明する。
分散媒としては、特に制限はないが、低誘電溶媒(例えば誘電率5.0以下、望ましくは3.0以下)が選択されることがよい。分散媒は、低誘電溶媒以外の溶媒を併用してもよいが、50体積%以上の低誘電溶媒を含むことがよい。なお、低誘電率の誘電率は、誘電率計(日本ルフト製)により求められる。
低誘電溶媒としては、例えば、パラフィン系炭化水素溶媒、シリコーンオイル、フッ素系液体など石油由来高沸点溶媒が挙げられるが、高分子分散剤の種類に応じて選択されることがよい。具体的には、例えば、高分子分散剤としてシリコーン系高分子分散剤を適用する場合、分散媒としてはシリコーンオイルを選択することがよい。また、高分子分散剤として長鎖アルキル系高分子分散剤を適用する場合、分散媒としてはパラフィン系炭化水素溶媒を選択することがよい。
【0065】
シリコーンオイルとして具体的には、シロキサン結合に炭化水素基が結合したシリコーンオイル(例えば、ジメチルシリコーンオイル、ジエチルシリコーンオイル、メチルエチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、ジフェニルシリコーンオイル等)が挙げられる。これらの中も、ジメチルシリコーンが特に望ましい。
【0066】
パラフィン系炭化水素溶媒としては、炭素数20以上(沸点80℃以上)のノルマルパラフィン系炭化水素、イソパラフィン系炭化水素が挙げられるが、安全性、揮発性等の理由から、イソパラフィンを用いることが望ましい。具体的には、シェルゾル71(シェル石油製)、アイソパーO、アイソパーH、アイソパーK、アイソパーL、アイソパーG、アイソパーM(アイソパーはエクソン社の商品名)やアイピーソルベント(出光石油化学製)等が挙げられる。
【0067】
次に、本実施形態に係る電気泳動粒子分散液の製造方法と共に、電気泳動粒子の製造方法について説明する。
本実施形態に係る電気泳動粒子の製造方法としては、例えば、高分子分散剤及び第1溶媒(連続相を形成し得る貧溶媒)を含む溶液と、高分子、着色剤、及び前記第1溶媒に対して非相溶で前記第1溶媒より沸点が低く且つ高分子を溶解する第2溶媒(分散相を形成し得る良溶媒)を含む溶液と、を混合した混合溶液を攪拌し、乳化させる工程と、前記乳化させた混合溶液から前記第2溶媒を除去して、前記高分子及び前記着色剤を含有する着色粒子(母粒子)の表面に高分子分散剤が付着した電気泳動粒子を生成する工程と、を有する周知の製法が挙げられる。この製法は、所謂、液中乾燥法と呼ばれる製法である。
【0068】
本製法は、第1溶媒として表示媒体に利用する分散媒を利用することで、そのまま、電気泳動粒子と分散媒を含む電気泳動粒子分散液として利用してもよい。これにより、本実施形態に係る電気泳動粒子の製造方法では、上記工程を経ることで、第1溶媒を分散媒とした電気泳動粒子分散液を、洗浄・乾燥工程を経ることなく得られる。また、粒子の洗浄(イオン性不純物の除去)や分散媒の置換を行ってもよい。
【0069】
なお、電気泳動粒子の製造方法は、上記製法方法に限られず、例えば、周知の手法(粉砕法、コアセルベーション法、分散重合法、懸濁重合法等)などにより着色粒子(電気泳動粒子)を形成する手法が採用される。各手法では、溶媒(製法で最終的に残る溶媒)として表示媒体に利用する分散媒を利用し、製造後そのまま、電気泳動粒子と分散媒を含む電気泳動粒子分散液として利用してもよい。これにより、電気泳動粒子の製造方法では、各製造工程を経ることで、使用する溶媒を分散媒とした電気泳動粒子分散液を、洗浄・乾燥工程を経ることなく得られる。また、粒子の洗浄(イオン性不純物の除去)や分散媒の置換を行ってもよい。
【0070】
上記工程を経て、電気泳動粒子を得ると共に、これを含む電気泳動粒子分散液が得られる。
ここで、得られた電気泳動粒子分散液に対し、必要に応じて、例えば、分散媒(溶媒)で希釈したり、してもよい。そして、2種以上の電気泳動粒子を含む電気泳動粒子分散液を得るためには、それぞれの分散液を作製した後、これらを混合すればよい。
【0071】
本実施形態に係る電気泳動粒子分散液には、必要に応じて、酸、アルカリ、塩、分散剤、分散安定剤、酸化防止や紫外線吸収などを目的とした安定剤、抗菌剤、防腐剤などを添加してもよい。また、本実施形態に係る電気泳動粒子分散液には、帯電制御剤を添加してもよい。
【0072】
本実施形態に係る電気泳動粒子分散液中の電気泳動粒子の濃度は、表示特性や応答特性あるいはその用途によって種々選択されるが0.1質量%以上30質量%以下の範囲で選択されることが望ましい。色の異なった粒子を混合する場合にはその粒子総量がこの範囲であると望ましい。
【0073】
本実施形態に係る電気泳動粒子分散液は、電気泳動方式の表示媒体、電気泳動方式の調光媒体(調光素子)、液体現像方式電子写真システムの液体トナーなどに利用される。なお、電気泳動方式の表示媒体、電気泳動方式の調光媒体(調光素子)としては、公知である電極(基板)面の対向方向に粒子群を移動させる方式、それとは異なり電極(基板)面に沿った方向に移動させる方式(いわゆるインプレーン型素子)、又はこれらを組み合わせたハイブリッド素子がある。
なお、本実施形態に係る電気泳動粒子分散液において、電気泳動粒子として色や帯電極性の異なる複数種の粒子を混合して使用すれば、カラー表示が実現される。
【0074】
(表示媒体、表示装置)
以下、実施形態に係る表示媒体、及び表示装置の一例について説明する。
【0075】
図1は、本実施形態に係る表示装置の概略構成図である。図2は、本実施形態に係る表示装置の表示媒体の基板間に電圧を印加したときの粒子群の移動態様を模式的に示す説明図である。
【0076】
本実施形態に係る表示装置10は、その表示媒体12の分散媒50と粒子群34とを含む粒子分散液として、本実施形態に係る電気泳動粒子分散液を適用する形態である。具体的には、粒子群34として、粒子群34Aと、当該粒子群34Aとは異なる色を呈し、且つ帯電極性が異なる粒子群34Bと、を適用した形態である。
【0077】
本実施形態に係る表示装置10は、図1に示すように、表示媒体12と、表示媒体12に電圧を印加する電圧印加部16と、制御部18と、を含んで構成されている。
【0078】
表示媒体12は、画像表示面とされる表示基板20、表示基板20に間隙をもって対向する背面基板22、これらの基板間を特定間隔に保持すると共に、表示基板20と背面基板22との基板間を複数のセルに区画する間隙部材24、各セル内に封入された粒子群34とは異なる光学的反射特性を有する反射粒子群36を含んで構成されている。
【0079】
上記セルとは、表示基板20と、背面基板22と、間隙部材24と、によって囲まれた領域を示している。このセル中には、分散媒50が封入されている。粒子群34は、複数の粒子から構成されており、この分散媒50中に分散され、セル内に形成された電界強度に応じて表示基板20と背面基板22との基板間を反射粒子群36の間隙を通じて移動する。
【0080】
なお、この表示媒体12に画像を表示したときの各画素に対応するように間隙部材24を設け、各画素に対応するようにセルを形成することで、表示媒体12を、画素毎の表示を行うように構成してもよい。
【0081】
また、本実施形態では、説明を簡易化するために、1つのセルに注目した図を用いて本実施形態を説明する。以下、各構成について詳細に説明する。
【0082】
まず、一対の基板について説明する。表示基板20は、支持基板38上に、表面電極40及び表面層42を順に積層した構成となっている。背面基板22は、支持基板44上に、背面電極46及び表面層48を積層した構成となっている。
【0083】
表示基板20、又は表示基板20と背面基板22との双方は、透光性を有している。ここで、本実施形態における透光性とは、可視光の透過率が60%以上であることを示している。
【0084】
支持基板38及び支持基板44の材料としては、ガラスや、プラスチック、例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリエーテルサルフォン樹脂等が挙げられる。
【0085】
表面電極40及び背面電極46の材料としては、インジウム、スズ、カドミウム、アンチモン等の酸化物、ITO等の複合酸化物、金、銀、銅、ニッケル等の金属、ポリピロールやポリチオフェン等の有機材料等が挙げられる。表面電極40及び背面電極46は、これらの単層膜、混合膜又は複合膜のいずれであってもよい。表面電極40及び背面電極46の厚さは、例えば、100Å以上2000Å以下であることがよい。背面電極46及び表面電極40は、例えば、マトリックス状、又はストライプ状に形成されていてもよい。
【0086】
また、表面電極40を支持基板38に埋め込んでもよい。また、背面電極46を支持基板44に埋め込んでもよい。この場合、支持基板38及び支持基板44の材料を粒子群34の各粒子の組成等に応じて選択する。
【0087】
なお、背面電極46及び表面電極40各々を表示基板20及び背面基板22と分離させ、表示媒体12の外部に配置してもよい。
【0088】
なお、上記では、表示基板20と背面基板22の双方に電極(表面電極40及び背面電極46)を備える場合を説明したが、何れか一方にだけ設けるようにして、アクティブマトリクス駆動させるようにしてもよい。
【0089】
また、アクティブマトリックス駆動を実施するために、支持基板38及び支持基板44は、画素毎にTFT(薄膜トランジスタ)を備えていてもよい。TFTは表示基板ではなく背面基板22に備えることがよい。
【0090】
次に、表面層について説明する。表面層42及び表面層48は、表面電極40及び背面電極46各々上に形成されている。表面層42及び表面層48を構成する材料としては、例えば、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリスチレン、ポリイミド、エポキシ、ポリイソシアネート、ポリアミド、ポリビニルアルコール、ポリブタジエン、ポリメチルメタクリレート、共重合ナイロン、紫外線硬化アクリル樹脂、フッ素樹脂等が挙げられる。
【0091】
表面層42及び表面層48は、上記樹脂と電荷輸送物質を含んで構成されていてもよく、電荷輸送性を有する自己支持性の樹脂を含んで構成されてもよい。
【0092】
次に、間隙部材について説明する。表示基板20と背面基板22との基板間の隙を保持するための間隙部材24は、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、電子線硬化樹脂、光硬化樹脂、ゴム、金属等で構成される。
【0093】
間隙部材24は表示基板20及び背面基板22の何れか一方と一体化されてもよい。この場合には、支持基板38又は支持基板44をエッチングするエッチング処理、レーザー加工処理、予め作製した型を使用してプレス加工処理又は印刷処理等を行うことによって作製する。
この場合、間隙部材24は、表示基板20側、背面基板22側のいずれか、又は双方に作製する。
【0094】
間隙部材24は有色でも無色でもよいが、無色透明であることがよく、その場合には、例えば、ポリスチレンやポリエステルやアクリルなどの透明樹脂等で構成される。
【0095】
また、粒子状の間隙部材24もまた透明であることが望ましく、ポリスチレン、ポリエステル又はアクリル等の透明樹脂粒子の他、ガラス粒子も使用される。
なお、「透明」とは、可視光に対して、透過率60%以上有することを示している。
【0096】
次に、反射粒子群について説明する。反射粒子群36は、粒子群34とは異なる光学的反射特性を有する反射粒子から構成され、粒子群34とは異なる色を表示する反射部材として機能するものである。そして、表示基板20と背面基板22との基板間の移動を阻害することなく、移動させる空隙部材としての機能も有している。すなわち、反射粒子群36の間隙を通って、背面基板22側から表示基板20側、又は表示基板20側から背面基板22側へ粒子群34の各粒子は移動される。この反射粒子群子36の色としては、例えば、背景色となるように白色又は黒色を選択することがよいが、その他の色であってもよい。また、反射粒子群36は、帯電されていない粒子群(つまり電界に応じて移動しない粒子郡)であってもよいし、帯電されている粒子群(電界に応じて移動する粒子郡)であってもよい。なお、本実施形態では、反射粒子群36は、帯電されていない粒子群で、白色である場合を説明するが、これに限定されることはない。
【0097】
反射粒子群36の粒子は、例えば、白色顔料(例えば酸化チタン、酸化ケイ素、酸化亜鉛など)を、樹脂(例えばポリスチレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂(PMMA)、アクリル樹脂、フェノール樹脂、ホルムアルデヒド縮合物等)に分散した粒子が挙げられる。また、反射粒子群36の粒子として、白色以外の粒子を適用する場合、例えば、所望の色の顔料、あるいは染料を内包した前記した樹脂粒子を使用してもよい。顔料や染料は、例えばRGBやYMC色であれば、印刷インキやカラートナーに使用されている一般的な顔料又は染料が挙げられる。
【0098】
反射粒子群36を基板間へ封入するには、例えば、インクジェット法などにより行う。また、反射粒子群36を固定化する場合、例えば、反射粒子群36を封入した後、加熱(及び必要があれば加圧)して、反射粒子群36の粒子群表層を溶かすことで、粒子間隙を維持させつつ行われる。
【0099】
表示媒体12における上記セルの大きさとしては、表示媒体12の解像度と密接な関係にあり、セルが小さいほど高解像度な画像を表示する表示媒体12を作製することができ、通常、表示媒体12の表示基板20の板面方向の長さが10μm以上1mm以下程度である。
【0100】
上記表示基板20及び背面基板22を、間隙部材24を介して互いに固定するには、ボルトとナットの組み合わせ、クランプ、クリップ、基板固定用の枠等の固定手段を使用する。また、接着剤、熱溶融、超音波接合等の固定手段も使用してもよい。
【0101】
このように構成される表示媒体12は、例えば、画像の保存及び書換えがなされる掲示板、回覧版、電子黒板、広告、看板、点滅標識、電子ペーパー、電子新聞、電子書籍、及び複写機・プリンタと共用するドキュメントシート等に使用する。
【0102】
上記に示したように、本実施形態に係る表示装置10は、表示媒体12と、表示媒体12に電圧を印加する電圧印加部16と、制御部18とを含んで構成されている(図1参照)。
【0103】
電圧印加部16は、表面電極40及び背面電極46に電気的に接続されている。なお、本実施形態では、表面電極40及び背面電極46の双方が、電圧印加部16に電気的に接続されている場合を説明するが、表面電極40及び背面電極46の一方が、接地されており、他方が電圧印加部16に接続された構成であってもよい。
【0104】
電圧印加部16は、制御部18に信号授受されるように接続されている。
【0105】
制御部18は、装置全体の動作を司るCPU(中央処理装置)と、各種データを一時的に記憶するRAM(Random Access Memory)と、装置全体を制御する制御プログラム等の各種プログラムが予め記憶されたROM(Read Only Memory)と、を含むマイクロコンピュータとして構成されていてもよい。
【0106】
電圧印加部16は、表面電極40及び背面電極46に電圧を印加するための電圧印加装置であり、制御部18の制御に応じた電圧を表面電極40及び背面電極46間に印加する
【0107】
次に、表示装置10の作用を説明する。この作用は制御部18の動作に従って説明する。
【0108】
ここで、表示媒体12に封入されている粒子群34のうち、粒子群34Bが負極性に帯電されており、粒子群34Bが正極性に帯電されている場合を説明する。また、分散媒50は透明であり、反射粒子群36が白色であるものとして説明する。すなわち、本実施形態では、表示媒体12は、粒子群34A及び粒子群34Bの移動によって、それぞれの呈する色を表示し、その背景色として白色を表示する場合を説明する。
【0109】
まず、電圧を、特定時間、表面電極40が負極となり背面電極46が正極となるように印加することを示す初期動作信号を、電圧印加部16へ出力する。基板間に負極で且つ濃度変動が終了する閾値電圧以上の電圧が印加されると、負極に帯電している粒子群34Aを構成する粒子が背面基板22側へと移動して、背面基板22に到る(図2(A)参照)。一方で、正極に帯電している粒子群34Bを構成する粒子が表示基板20側へと移動して、表示基板20に至る(図2(A)参照)。
このとき、表示基板20側から視認される表示媒体12の色は、反射粒子群36の色としての白色を背景色とし、粒子群34Bの呈する色が視認される。なお、粒子群34Aは、反射粒子群36に隠蔽され、視認され難くなる。
【0110】
このT1時間は、初期動作における電圧印加における電圧印加時間を示す情報として、予め制御部18内の図示を省略するROM等のメモリ等に記憶しておけばよい。そして、処理実行のときに、この特定時間を示す情報を読み取るようにすればよい。
【0111】
次に、表面電極40と背面電極46との電極間に、基板間に印加した電圧とは極性を反転させて、表面電極40を正極とし背面電極46を負極として電圧を印加すると、負極に帯電している粒子群34Aは表示基板20側へと移動し、表示基板20側に至る(図2(B)参照)。一方で、正極に帯電している粒子群34Bを構成する粒子が背面基板22側へと移動して、背面基板22に至る(図2(B)参照)。
このとき、表示基板20側から視認される表示媒体12の色は、反射粒子群36の色としての白色を背景色とし、粒子群34Aの呈する色が視認される。なお、粒子群34Bは、反射粒子群36に隠蔽され、視認され難くなる。
【0112】
このように、本実施形態に係る表示装置10では、粒子群34(粒子群34A、粒子群34B)が表示基板20又は背面基板22に到達して、付着することで表示が行われる。
【0113】
なお、上記本実施形態に係る表示媒体12及び表示装置10では、表示基板20に表面電極40、背面基板22に背面電極46を設けて当該電極間(即ち基板間)に電圧を印加して、当該基板間を粒子群34を移動させて表示させる形態を説明したがこれに限られず、例えば、表示基板20に表面電極40を設ける一方で、間隙部材に電極を設けて、当該電極間に電圧を印加して、表示基板20と間隙部材との間を粒子群34を移動させて表示させる形態であってもよい。
【0114】
また、上記本実施形態に係る表示媒体12及び表示装置10では、粒子群34として2ッ種類(2色)の粒子群(34A、34B)を適用した形態を説明したが、1種類(1色)の粒子群を適用した形態であってもよいし、3種類(3色)以上の粒子群を適用した形態であってもよい。
【実施例】
【0115】
以下、本発明を、実施例を挙げてさらに具体的に説明する。
【0116】
[高分子分散剤の作製]
(高分子分散剤Aの作製)
イソプロパノール10gに、表1に従った配合量で、FM0711(チッソ社製:サイラプレーン)、メチルメタクリレート(MMA)、及び2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)と共に、重合開始剤(アゾビスジメチルバレロニトリル「V−65」、和光純薬社製)0.1gを溶解させ、窒素バブリングにより酸素除去をさせ、55℃、8時間で重合を行った。重合後、精製処理及び乾燥を行い、例示化合物(1−1)を得た。これを高分子分散剤Aとした。
【0117】
【化5】

【0118】
(高分子分散剤B〜Gの作製)
表1に従って、原料の種及び量を変更した以外は高分子分散剤Aと同様にして、高分子分散剤B〜Gを得た。
【0119】
(比較高分子分散剤H〜Jの作製)
表2に従って、原料の種及び量を変更した以外は高分子分散剤Aと同様にして、比較高分子分散剤H〜Jを得た。

【0120】
【表1】

【0121】
【表2】

【0122】
[シアン泳動粒子(その分散液)]
(シアン泳動粒子A1(その分散液A1)の作製)
高分子分散剤A:3質量部を、絶縁性溶媒としてのジメチルシリコーンオイル(信越シリコーン社製KF−96−2CS)97質量部に溶解して連続相を調製した。次いで、母粒子の構成成分である極性基を持つ高分子としてのカチオン性ジメチルアミン・エポクロロヒドリン系ポリマ(酸価値は表3に記載)10質量部、着色剤としてのシアン顔料C.I.ピグメントブルー15:3(H524F、山陽エマコール)3質量部、及び良溶媒としての水85質量部を混合して分散相を調製した。前記連続相と前記分散相とを混合し、超音波破砕機(エスエムテー社製UH−600S)を用いて10分間乳化を行った。
次に、得られた乳化液をナスフラスコに入れ、攪拌しながらエバポレーターにて加熱(65℃)及び減圧(10mPa)することで水を除去し、シアン泳動粒子A1がシリコーンオイルに分散された泳動粒子分散液A1を得た。
【0123】
作製したシアン泳動粒子A1を動的光散乱式粒径分布測定装置(大塚電子社製Fpar1000)にて測定したところ、平均粒子径750nmであった。
また、得られた泳動粒子分散液を固形分0.1質量%になるように分散媒で希釈して希釈分散液を調製し、該希釈分散液に、電極間隔1mmで対向させた電極基板を浸漬し、電極間に電圧(100V)を10秒間印加した。電極に粒子を電着させ粒子の極性を評価したところ、正帯電と負帯電が混在していた。
【0124】
(シアン泳動粒子A2〜A8(その分散液A2〜A8)の作製)
表3に従って、高分子分散液及び極性基を持つ高分子の種類を変更した以外は、シアン泳動粒子A1(その分散液A1)と同様にして、シアン泳動粒子A2〜A8(その分散液A2〜A8)を作製した、
【0125】
(比較シアン泳動粒子A9〜A11(その分散液A9〜A11)の作製)
表3に従って、高分子分散液及び極性基を持つ高分子の種類を変更した以外は、シアン泳動粒子A1(その分散液A1)と同様にして、比較シアン泳動粒子A9〜A11(その分散液A9〜A11)を作製した、
【0126】
【表3】

【0127】
[マゼンタ泳動粒子(その分散液)の作製]
(マゼンタ泳動粒子B1(その分散液B1)の作製)
高分子分散剤B:3質量部を、絶縁性溶媒としてのジメチルシリコーンオイル(信越シリコーン社製KF−96−2CS)97質量部に溶解して連続相を調製した。次いで、母粒子の構成成分である極性基を持つ高分子としてのポリ−2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(酸価値は表4に記載)10質量部、着色剤としてのマゼンタ顔料分散液(山陽色素社製エマコール:顔料固形分20質量部相当)3質量部、及び良溶媒としての水85質量部を混合して分散相を調製した。前記連続相と前記分散相とを混合し、超音波破砕機(エスエムテー社製UH−600S)を用いて10分間乳化を行った。
次に、得られた乳化液をナスフラスコに入れ、攪拌しながらエバポレーターにて加熱(65℃)及び減圧(10mPa)することで水を除去し、マゼンタ泳動粒子B1がシリコーンオイルに分散された泳動粒子分散液B1を得た。
【0128】
作製したマゼンタ泳動粒子B1を動的光散乱式粒径分布測定装置(大塚電子社製Fpar1000)にて測定したところ、平均粒子径550nmであった。
また、得られた泳動粒子分散液を固形分0.1質量%になるように分散媒で希釈して希釈分散液を調製し、該希釈分散液に、電極間隔1mmで対向させた電極基板を浸漬し、電極間に電圧(100V)を10秒間印加した。電極に粒子を電着させ粒子の極性を評価したところ、正帯電と負帯電が混在していた。
【0129】
(マゼンタ泳動粒子B2〜B8(その分散液B2〜B8))
表4に従って、高分子分散液及び極性基を持つ高分子の種類を変更した以外は、マゼンタ泳動粒子B1(その分散液B1)と同様にして、マゼンタ泳動粒子B2〜B8(その分散液B2〜B8)を作製した。
【0130】
(比較マゼンタ泳動粒子B9〜B11(その分散液B9〜B11)の作製)
表4に従って、高分子分散液及び極性基を持つ高分子の種類を変更した以外は、マゼンタ泳動粒子B1(その分散液B1)と同様にして、比較マゼンタ泳動粒子B9〜B11(その分散液B9〜B11)を作製した。
【0131】
【表4】

【0132】
[実施例]
(実施例1〜8、比較例9〜11)
上記各例で得られた泳動粒子分散液を用い、表5に従った組み合わせで、シアン泳動粒子分散液(固形分0.1質量部) 0.1質量部と、シアン泳動粒子分散液(固形分0.1質量部) 0.1質量部と、を混合し、混合泳動粒子分散液を作製した。
【0133】
(評価)
閾値電圧と混色性について評価を行った。結果を表6に示す。
【0134】
−閾値電圧−
得られた泳動粒子分散液が電界により移動を開始する電圧(電極間に印加する電圧)を調べた。具体的には、短冊状(1cm×5cm)の透明ガラス電極をスペーサー(厚さ100μm)を介して対向させた。対向させた電極側面部からシアン泳動粒子分散液を注入した。最初に直流電圧を印加して泳動粒子をそれぞれ両電極に泳動させた。このとき透明ガラス電極側面部からは電極上に泳動してきた泳動粒子の色が観察される。その後、電極間に三角波(0.5V/sec)を印加しながら、透明ガラス側面部からの強度を測定し、色変化が最大となる電圧を閾値電圧(粒子の移動が最も多い電圧)とした。
【0135】
−混色性−
得られた混合泳動粒子分散液に電極間隔1mmで対向させた一対の電極基板を浸漬し、電極基板間に電圧(15V)を印加した。正極の電極基板、及び負極の電極基板に付着した粒子を、それぞれ観察し、以下の評価基準で評価した。
G4:電極基板に他の粒子がまったく存在しなかった(シアンかマゼンタの単色)。
G3:電極基板に他の粒子が僅かではあるが存在した(凝視をして、赤みがかったシアンか青みがかったマゼンタ)。
G2:電極基板に他の粒子が存在したたするものの、他の粒子の割合が少ない(赤みがかったシアンか青みがかったマゼンタ)。
G1:電極基板に他の粒子が同じ比率で存在した(青)。
【0136】
【表5】

【0137】
【表6】

【0138】
上記結果から、本実施例では、比較例に比べ、閾値電圧、混色性につき、良好な結果が得られることがわかる。
【0139】
(実施例12)
上記実施例1で得られた混合泳動粒子分散液に対して、下記イエロー泳動粒子分散液(固形分0.1質量部) 0.1質量部を加えて混合し、混色性の評価を行ったところ、実施例1と同様な結果が得られた。また、作製した表示媒体において、イエロー泳動粒子によるイエロー表示も混色なく良好に表示された。
【0140】
−(イエロー泳動粒子(その分散液)の作製−
下記成分を混合し、10mmΦのジルコニアボールにてボールミル粉砕を20時間実施して分散液を調製した。
・メタクリル酸メチルモノマー 89質量部
・メタクリル酸ジエチルアミノエチルモノマー 0.3質量部
・マイクロリスブラック(チバスペシャリティケミカルズ製) 10質量部
−炭カル分散液B4の調製−
下記成分を混合し、上記と同様にボールミルにて微粉砕して炭カル分散液を調製した。
<組成>
・炭酸カルシウム 40質量部
・水 :60質量部
−混合液の調製−
下記成分を混合し、超音波機で脱気を10分間おこない、ついで乳化機で攪拌して混合液C1を調製した。
<組成>
・炭カル分散液 8.5g
・20%食塩水 50g
【0141】
次に、分散液35gとジメタクリル酸エチレングリコール1g、重合開始剤AIBN:0.35gを秤量した後、充分混合し、超音波機で脱気を2分おこなった。これを前記混合液に加え、乳化機で乳化を実施した。次にこの乳化液をビンにいれ、シリコーン詮をし、注射針を使用し、減圧脱気を充分行い、窒素ガスで封入した。この状態で65℃で15時間反応させ粒子を作製した。得られた微粒子粉をイオン交換水中に分散させ、塩酸水で炭酸カルシウムを分解させ、ろ過を行った。その後充分な蒸留水で洗浄し、イエロー粒子未分級品を作製した。粒度調整は、目開き:10μm、17μmのナイロン篩にかけ、粒度を揃えた。
【0142】
作製したイエロー泳動粒子を動的光散乱式粒径分布測定装置(大塚電子社製Fpar1000)にて測定したところ、平均粒子径15μmであった。
【符号の説明】
【0143】
10 表示装置
12 表示媒体
16 電圧印加部
18 制御部
20 表示基板
22 背面基板
24 間隙部材
34、34A、34B 粒子群
36 反射粒子群
38 支持基板
40 表面電極
42 表面層
44 支持基板
46 背面電極
48 表面層
50 分散媒

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分散媒と、
前記分散媒に分散された電気泳動粒子であって、高分子及び着色剤を含んで構成される母粒子と前記母粒子の表面に付着された高分子分散剤とを有する電気泳動粒子と、
を備え、
前記電気泳動粒子として、少なくとも2種の電気泳動粒子を備える共に、前記2種の電気泳動粒子の前記母粒子が、互いに酸性基を持ち且つ互いに異なる酸価の酸性高分子を含んで構成される母粒子、又は一方が酸性基を持つ酸性高分子を含んで構成され、他方が塩基性基を持つ塩基性高分子を含んで構成された母粒子であり、
前記高分子分散剤が、下記構成単位(A)と下記構成単位(B)と下記構成単位(C)とを含む共重合体からなる高分子分散剤である電気泳動粒子分散液。
【化1】

(前記構成単位(A)〜(C)中、Xは、シリコーン鎖を含む基、又は炭素数12以上の長鎖アルキル鎖を含む基を表す。Ra、Ra、及びRaは、それぞれ独立に水素原子、又はメチル基を表す。Rbは、炭素数1以上11以下のアルキル基を表す。Rbは、水素原子、又は−Rb31−OH(但し、Rb31は、炭素数1以上11以下のアルキレン基、アリールオキシ基で置換された炭素数1以上11以下のアルキレン基、水酸基で置換された炭素数1以上11以下のアルキレン基、又は−(CH−CH−O)−CH−CH−を表す。mは0又は1以上4以下の自然数を表す。)、n1は、16以上99以下の自然数を表す。n2は、0.2以上55以下の自然数を表す。n3は、0.1以上14以下の自然数を表す。)
【請求項2】
前記2種の電気泳動粒子の前記高分子分散剤における前記構成単位(B)の比率が、全構成単位に対して、質量比で0.2以上55以下である請求項1に記載の電気泳動粒子分散液。
【請求項3】
少なくとも一方が透光性を有する一対の基板と、
前記一対の基板間に封入された、請求項1又は2に記載の電気泳動粒子分散液と、
を備えたことを特徴とする表示媒体。
【請求項4】
少なくとも一方が透光性を有する一対の電極と、
前記一対の電極間に設けられた、請求項1又は2に記載の電気泳動粒子分散液を有する領域と、
を備えたことを特徴とする表示媒体。
【請求項5】
請求項3又は4に記載の表示媒体と、
前記表示媒体の前記一対の基板間又は前記一対の電極間に電圧を印加する電圧印加手段と、
を備えた表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−158770(P2011−158770A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−21261(P2010−21261)
【出願日】平成22年2月2日(2010.2.2)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】