説明

電気炊飯器

【課題】ふつう、かため及びやわらか食感の炊き分けメニューに対応して、それぞれのご飯の特徴を引きだして炊き分け効果を高めることができるようにした電気炊飯器。
【解決手段】炊飯物を入れる鍋と、鍋内の炊飯物を加熱する加熱手段と、吸水工程I、立上加熱工程II、沸騰維持工程IIIを含む一連の炊飯工程を実行する制御装置と、かため、ふつう、やわらかの炊き分けメニューを選定する炊き分けメニュー選択手段とを備えている。
制御装置は、立上加熱電力及び沸騰維持電力を予め規定して記憶した記憶手段を備え、制御装置は、立上加熱工程IIにおいて、炊き分けメニュー選択手段で選定された炊き分けメニューに対応して、記憶手段に記憶された炊き分けメニューに対応する立上加熱電力で立上工程を実行し、立上加熱工程終了後に沸騰維持工程へ移行して、記憶手段に記憶された炊き分けメニューに対応する沸騰維持加熱電力で沸騰維持工程を実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気炊飯器に係り、さらに詳しくは、きめ細かな硬さと食感の炊き分けができる電気炊飯器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電気炊飯器(以下、炊飯器という)は、一般家庭などにおいて、今や、必需品となっており、様々なタイプのものが開発されている。この種の炊飯器は、炊飯時に鍋内をほぼ常圧で炊飯する常圧タイプと、大気圧を超える圧力に昇圧して炊飯する圧力タイプとに大別されている。近年、これらの炊飯器は、マイクロコンピュータが搭載されて、このマイクロコンピュータによって、様々な炊飯コース、例えば、白米・玄米などの米種に応じた米種炊飯コース、硬め・柔らかめなどを調節してお好みの炊飯ができるお好み炊飯コース、及び炊き込み、おこわ、雑穀、発芽玄米などの具材を混ぜ合わせて炊飯する炊き込み等の炊飯コース、さらにはすしめしを炊飯するすしめし炊飯コースなどが1台の炊飯器でできるようになっている。
【0003】
このような炊飯コースを1台で実行できる代表的な炊飯器として、例えば、下記特許文献1のような炊飯器がある。
【0004】
図8、図9は、下記特許文献1に記載された炊飯器を示し、図8は炊飯器を制御する制御ブロック図、図9は炊き分けメニューにおける炊飯工程の温度、時間、電力及び蒸気口の関係を示した図である。
【0005】
この炊飯器30は、鍋31と、この鍋を加熱する加熱手段32と、鍋の上部に位置する蓋体33と、蓋体に設けた蒸気口34と、蒸気口を開閉する蒸気口開閉装置35と、鍋の温度を検知する鍋温度検知手段36と、蓋体の温度を検知する蓋温度検知手段37と、鍋温度検知手段36及び蓋温度検知手段37からの出力を入力して加熱手段32及び蒸気口開閉装置35を制御する制御手段38と、炊き分けメニューを複数記憶し制御手段38に出力する炊飯シーケンス記憶手段39と、炊き分けメニューを選択する炊飯シーケンス選択手段40とを備えた構成となっている。
【0006】
この炊飯器30は、炊飯シーケンス選択手段40により、所定の炊き分けメニューが選択されると、図9に示すように、それぞれのメニューに対応した炊飯工程で炊飯される。
【0007】
炊飯シーケンス選択手段40で、例えば、ふつうが選択されると、蒸気口34が閉成された状態で所定時間掛けて吸水が行われる。吸水終了後は、蒸気口34が閉成されて昇温工程へ移行され、この昇温工程では、温度検知手段が沸騰前の所定温度を検知するまで加熱手段がオンされ続けて、温度検知手段が所定温度を検知した時点で鍋内の温度が均一になったとみなして昇温工程が終了し、以後の工程へ移行される。炊き上げ工程では、蒸気口34が閉成されて、蓋温度検知手段37が所定沸騰温度を検知するまで加熱手段がオンされ続ける。また、この炊き上げ工程で炊飯量が判定され、判定された炊飯量に応じて電力が変更されて次の沸騰維持工程が行なわれる。その後は一定時間の休止と加熱とが所定回数繰り返えされる追い炊き工程へ移行し、蒸気口は休止の間開成され、且つ加熱の間は閉成されている。最後のむらし工程では蒸気口が開成されたまま炊飯制御が実行される。また、やわらかめが選択されると、蒸気口34は、吸水工程から追い炊き工程までの間は閉成され、むらし工程でのみ開成されて炊飯される。さらに、かためが選択されると、蒸気口34は、吸水工程で閉成され、次の、昇温工程、炊き上げ工程及び沸騰維持工程で開成、追い炊き工程で1回目の加熱の間が閉成、むらし工程で開成させる制御で炊飯される。さらにまた、すしめし、倍速炊き及び玄米が選択された場合は、図9(d)〜(f)の炊飯工程で行なわれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平9−164064号公報(段落〔0032〕〜〔0039〕、 図1、4)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記特許文献1の炊飯器は、蓋体に設けた蒸気口と、この蒸気口を開閉する蒸気口開閉装置と、蒸気口開閉装置を炊飯工程中に所定回数開閉させる制御手段を備え、炊飯開始後、吸水工程、昇温工程及び炊き上げ工程の間は、蒸気口が閉成されて炊飯されるので、鍋内の水分の蒸発により掛かる微圧効果で米への吸水が促進され、且つ、追い炊き工程で蒸気口が閉成されることで、水分の蒸発を抑え、芯まで吸水糊化してしっとりとした食味のご飯が炊きあがる。しかしながら、炊き分けメニューの炊飯制御は、吸水工程及び沸騰維持工程で行い、ふつう、かため及びやわらかなどの、食感炊飯に特に、大きな影響を及ぼす昇温工程で行なわれていないので、炊上がりがきめ細かな食感になり難くなっている。近年、ユーザーの嗜好がより多様化して、よりおいしいご飯、特に、お好みの硬さの食感で炊き上がる炊飯器のニーズが高まって来ている。
【0010】
そこで、本発明は、このような従来技術の課題を解決するとともに、上記のユーザーニーズに応えるためになされたもので、本発明の目的は、ふつう、かため及びやわらかなどの食感の炊き分けメニューに応じて、それぞれのご飯の特徴を引きだして炊き分け効果を高めることができるようにした電気炊飯器を提供することである。より具体的には、立上加熱工程における立上加熱電力の制御を行ってふつう、かため及びやわらか食感のきめ細かな炊飯を可能にした電気炊飯器を提供するものである。なお、本発明の立上加熱工程は、上記特許文献1の昇温工程に略対応したものとなっている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的は、以下の構成によって達成される。すなわち、請求項1に記載の電気炊飯器
は、米と水とを含む炊飯物を入れる鍋と、前記鍋内の炊飯物を加熱する加熱手段と、前記加熱手段を制御して前記鍋内の米に所定量の水を吸水させる吸水工程、吸水後に鍋内を一気に加熱して沸騰させる立上加熱工程、沸騰状態を維持して炊き上げる沸騰維持工程を含む一連の炊飯工程を実行する制御装置と、複数の炊き分けメニューを選定する炊き分けメニュー選択手段とを備えた電気炊飯器において、前記制御装置は、前記立上加熱工程における前記炊き分けメニュー毎の立上加熱電力及び前記沸騰維持工程における前記炊き分けメニュー毎の沸騰維持電力を予め規定して記憶した記憶手段を備え、前記制御装置は、前記立上加熱工程において、前記炊き分けメニュー選択手段で選定された炊き分けメニューに対応して、前記記憶手段に記憶された炊き分けメニューに対応する立上加熱電力で前記立上工程を実行し、前記立上加熱工程終了後に前記沸騰維持工程へ移行して、前記記憶手段に記憶された炊き分けメニューに対応する沸騰維持加熱電力で沸騰維持工程を実行する炊飯制御手段を有していることを特徴とする。
【0012】
また、請求項2の発明は、請求項1に記載の電気炊飯器において、前記複数の炊き分けメニューは、かため、ふつう、やわらかの選択肢を有し、前記選択肢それぞれに対応するかため立上加熱電力をPH、ふつう立上加熱電力をPM及びやわらか立上加熱電力をPSとしたときに、これらの関係がPS<PM<PHに規定され、同様に、かため沸騰維持電力をPH'、ふつう沸騰維持電力をPM'及びやわらか沸騰維持電力をPS'としたときに、これらの関係は、PS'<PM'<PH'に規定されて、前記記憶手段に記憶されていることを特徴とする。
【0013】
また、請求項3の発明は、請求項1又は2に記載の電気炊飯器において、前記記憶手段には、前記立上加熱工程における炊き分けメニュー毎の前記立上加熱工程開始から鍋内が沸騰までに掛かる沸騰時間と、これらの沸騰時間に対応する炊飯量とを関連付けしたデータを記憶しておき、前記制御装置は、前記立上加熱工程において前記立上加熱工程開始から前記鍋内が沸騰までに掛かる時間を計時する計時手段と、前記計時手段の出力と前記記憶手段のデータから炊飯量を判定する量判定手段と、前記炊飯制御手段は、前記量判定手段の判定結果に基づいて前記沸騰維持工程を実行することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、以下の効果を有する。請求項1の発明によれば、立上加熱工程において、炊き分けメニュー毎に予め規定した立上加熱電力で鍋内を一気に加熱して沸騰させ、その後、炊き分けメニューに対応して沸騰維持電力で沸騰状態を維持して炊き上げるので、従来技術の沸騰維持工程で炊き分け炊飯するのに比べて、きめ細かな制御が可能となって、お好みのかため、ふつう、やわらかなどの食感のご飯が炊きあがる。
【0015】
請求項2の発明によれば、炊き分けメニューに対応するかため立上加熱電力をPH、ふつう立上加熱電力をPM及びやわらか立上加熱電力をPSとしたときに、これらの関係がPS<PM<PHに規定され、同様に、かため沸騰維持電力をPH'、ふつう沸騰維持電力をPM'及びやわらか沸騰維持電力をPS'としたときに、これらの関係は、PS'<PM'<PH'に規定されているので、立上加熱工程において、炊き分けメニュー毎に予め規定した立上加熱電力で鍋内を一気に加熱して沸騰させ、その後、炊き分けメニューに対応して沸騰維持電力で沸騰状態を維持して炊き上げるので、従来技術の沸騰維持工程で炊き分け炊飯するのに比べて、きめ細かな制御が可能となって、お好みのかため、ふつう、やわらかな食感のご飯が炊きあがる。
【0016】
請求項3の発明によれば、立上加熱工程の立上加熱電力Pが可変されても、予め記憶手段に記憶して置くことにより、鍋内の炊飯量を判定できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は本発明の実施形態に係る炊飯器の外観斜視図である。
【図2】図2は図1の炊飯器を縦方向の略中央部で切断した断面図である。
【図3】図3は図2の蓋体の圧力弁開放機構部分を拡大した断面図である。
【図4】図4は図1、2の炊飯器を制御する制御ブロック図である。
【図5】図5は炊き分けメニューにおける炊飯工程を示したフローチャート図である。
【図6】図6は炊き分けメニューにおける炊飯工程の温度、時間、電力の関係を示した図である。
【図7】図7は立上加熱工程に掛かった時間と炊飯量との関係を規定した炊飯量判定表である。
【図8】図8は従来技術の炊飯器の制御ブロック図である。
【図9】図9は図8の炊飯器の炊き分けメニューにおける炊飯工程の温度、時間、電力及び蒸気口の関係を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。但し、以下に示す実施形態は、本発明の技術思想を具体化するための炊飯器を例示するものであって、本発明をこれに特定することを意図するものではなく、特許請求の範囲に含まれるその他の実施形態のものにも等しく適応し得るものである。なお、本発明の炊飯技術は、圧力式炊飯器に適応したものとなっているが、この炊飯器に限定されるものでなく、常圧式炊飯器にも適用できるものである。
【0019】
図1〜図4を参照して、本発明に実施形態に係る炊飯器を説明する。なお。図1は本発明の実施形態に係る炊飯器の外観斜視図、図2は図1の炊飯器を縦方向の略中央部で切断した断面図、図3は図2の蓋体の圧力弁機構部分を拡大した断面図、図4は炊飯器を制御する制御ブロック図である。
【0020】
本発明の実施形態に係る炊飯器1は、図1及び図2に示すように、米と水とを含む炊飯物を入れる鍋7と、上方にこの鍋7が収容される開口部及び内部にこの鍋7を加熱し炊飯物を加熱する加熱手段5を有する炊飯器本体(以下、本体という)2と、この本体2の一側に枢支されて鍋及び本体の開口を覆う蓋体10と、この蓋体10に装着されて鍋7内の内圧を調整する圧力弁13と、この圧力弁13を開放制御する圧力弁開放機構18と、各種の炊飯コースを表示して選択する表示操作部25と、表示操作部で選択された炊飯コースに基づいて加熱手段5及び圧力弁開放機構18を制御して鍋7内の炊飯物を所定温度に加熱して吸水工程、立上加熱工程、沸騰維持工程及び蒸らし工程などを含む一連の炊飯工程を実行する制御装置24(図4参照)とを有している。
【0021】
本体2は、図2に示すように、有底箱状の外部ケース3と、この外部ケース3に収容される内部ケース4とからなり、外部ケース3と内部ケース4との間に隙間が形成されて、この隙間に制御装置24を構成する制御回路基板等(図示省略)が配設されている。内部ケース4には、深底の容器からなる鍋7が収容される。この鍋7は、アルミニウムとステンレスとのクラッド材で形成されている。また、この内部ケース4は、その底部4a及び側部4bにそれぞれ底部ヒーター5b及び側部ヒーター5aが設けられ、底部4aに鍋底温度を検知するサーミスタ等からなる鍋底温度センサー6が設けられている。底部ヒーター5bは環状に巻装した電磁誘導コイル(以下、単にIHコイルともいう)が使用されている。
【0022】
また、本体2には、図1に示すように、その正面に表示操作部25が設けられている。この表示操作部25には、図1に示すように、各種の炊飯メニュー及び時刻等が表示される表示パネル8と、この表示パネル8の左右及び下方に設けられた複数個のスイッチ操作釦3a〜3c、9とを備えている。これらのスイッチ操作釦は、炊飯器1を作動させる炊飯/スタート釦3a、炊飯コースを選択するコース選択釦3b、米種選択釦3cなど及び表示パネル8に表示されたメニュー等を選択・決定する十字シフトキー9となっている。なお、十字シフトキー9は、炊き分けメニュー選択手段の機能を備えたキーとなっている。
【0023】
蓋体10は、図2に示すように、鍋7の開口部を閉蓋する内蓋11と、本体2の開口部全体を覆う外蓋12等とで構成されている。この蓋体10は、一側がヒンジ機構Hにより本体2に枢支され、他側が係止機構21により本体2の係止部に係止されている。図2及び図3に示すように、内蓋11には、負圧弁17及び圧力弁13が設けられている。圧力弁13は圧力弁開放機構18によって開放される。圧力弁13は、所定径の弁孔14bが形成された弁座14aと、この弁孔14bを塞ぐように弁座14a上に載置される金属製のボール15と、このボール15の移動を規制することで弁座14a上にボール15を保持するカバー14cとで構成されている。また、圧力弁開放機構18は、電磁コイルが巻回されたシリンダー19aと、このシリンダー19a内から電磁コイルの励磁により入出しボール15を移動させるプランジャ19bと、プランジャ19bの先端に装着された作動棹20と、シリンダー19aの一端部と作動棹20との間に設けられたバネとで構成されている。
【0024】
圧力弁開放機構18は、制御装置24により制御される。すなわち、制御装置24からの指令に基づき、電磁コイルへの励磁がストップされるとプランジャ19bがシリンダー19aから飛出してボール15に衝突し、ボール15が所定方向に押し出される。この押し出しにより、ボール15は弁孔14b上で移動して弁孔14bを強制的に開放させる。また、この開放状態において、電磁コイルが励磁されると、プランジャ19bがバネの付勢力によりシリンダー19a内に引き込まれ、この引き込みにより、ボール15が弁孔14b上に戻り、弁孔14bがボール15で閉塞される。内蓋11には、鍋7内の蒸気圧力が所定圧力以上の異常圧力に上昇したときに、鍋7内の圧力を外部に逃がす安全弁16が設けられている。また、この内蓋11には、蒸気温度センサー23(図3参照)が取り付けられている。
【0025】
内蓋11と外蓋12とは、図2に示すように、その間に所定広さの隙間空間Sをあけて結合されている。外蓋12には、鍋7から排出される水分を含むおねばを一時貯留する貯留タンク22が着脱自在に装着されている。この貯留タンク22は、その内部におねばを一時貯留する空間22bと、蒸気を外部へ逃す蒸気口22cと、タンク弁221とを有している。隙間空間S及び貯留タンク22の空間22bは、おねばを一時貯留する貯留部となっている。なお、おねばは粘り気のある糊状の汁であって、この糊状の汁は旨み成分を含んでおり、このおねばがそのまま鍋7外へ排出されてしまうとご飯が美味しく炊きあがらない。そこで、このおねばを貯留する貯留タンク22を設けて、この貯留タンク22におねばを一時貯留しておき、鍋7内の加熱が終了して鍋7内が負圧になったときにおねばを鍋7内に戻すことで美味しく炊きあげることができる。
【0026】
制御装置24は、図4に示すように、CPU、ROM、RAMなどが搭載された回路基板からなるハードウェアを備え、炊飯/スタート釦3a、コース選択釦3b、お米選択釦3c、及び鍋底温度センサー6、蒸気温度センサー23などにそれぞれ接続されて、これらの釦及びセンサーの信号がCPUに入力されるようになっている。また、CPUには、所定時間を計時するタイマー及びROM、RAM(記憶手段)などが接続されている。この記憶手段には、一連の炊飯工程を実行する炊飯プログラム、立上加熱工程及び沸騰維持工程における炊き分けメニュー別の立上加熱電力及び沸騰維持電力などが記憶されている。
【0027】
また、出力部(ドライバー)には、ヒーター5a、5bなどの加熱手段5、圧力弁開放機構18、及び表示パネル8などが接続されている。ROMには、各種の炊飯コース、及びこの炊飯コースを実行するプログラムが収納されている。この制御装置は、また、炊飯制御手段、圧力弁開閉制御手段、加熱制御手段及び炊飯量判定手段などを備えている。
【0028】
制御装置24は、炊き分けメニューに対応して加熱手段を制御し、鍋内の米に所定量の水を吸水させる吸水工程、吸水後に鍋内を一気に加熱して沸騰させる立上加熱工程、沸騰状態を維持して炊き上げる沸騰維持工程、炊き上ったご飯から余分な水分を除去する蒸らし工程などを含む一連の炊飯工程を実行する。この発明は、これらの炊飯工程において、立上加熱工程及び沸騰維持工程における電力制御に特徴がある。
【0029】
図5〜図7を参照して、立上加熱工程II及び沸騰維持工程IIIにおける電力制御について説明する。なお、図5は炊き分けメニューにおける炊飯工程を示したフローチャート図、図6は炊き分けメニューにおける炊飯工程の温度、時間、電力の関係を示した図、図7は立上加熱工程に掛かった時間と炊飯量との関係を規定した炊飯量判定表である。
【0030】
炊き分けメニュー炊飯は、表示パネルに表示されたふつう、かため、やわらかのいずれかが炊き分けメニュー選択手段で選択されると、それぞれの炊き分けメニューに対応して、図5、図6に示すように、吸水工程I、立上加熱工程II、沸騰維持工程III及び蒸らし工程IVなどを含む一連の工程で炊飯される。
【0031】
制御装置24は、吸水工程Iでは、加熱手段を制御して、鍋内を所定の吸水温度θ1(例えば50℃)に昇温して、所定時間Itを掛けて鍋内の米に所定量の水が吸水される。吸水後は、立上加熱工程IIへ移行する。この立上加熱工程IIでは、炊き分けメニューに対応した立上加熱電力で鍋内が沸騰するまで昇温される。この立上加熱工程IIでは、圧力弁が閉成されて鍋内が大気圧以上、例えば1.2気圧に昇圧される。
【0032】
この立上加熱工程IIにおける炊き分けメニュー毎の立上加熱電力は、以下のように規定されている。
「ふつう」立上加熱電力PMは、ヒーター最大ワット数P×「ふつう」立上通電時間tm/所定時間t
(1)
「かため」立上加熱電力PHは、ヒーター最大ワット数P×「かため」立上通電時間th/所定時間t
(2)
「やわらか」立上加熱電力PSはヒーター最大ワット数P×「やわらか」立上通電時間ts/所定時間t
(3)
上記(1)〜(3)式の通電時間tm、th、tsは所定時間t間に加熱手段5へ通電する時間を示し、通電時間tm、th、tsの関係は、th>tm>tsに設定されている。これらの通電時間により立上加熱電力PM、PH、PSの関係は、PH>PM>PSとなる。これらの立上加熱電力PM、PH、PSは、予め規定されて記憶手段に記憶されている。
【0033】
つまり、これらの立上加熱電力PM、PH、PSは、具体的には、加熱手段(IHヒーター)への通電時間tm、th、tsを所定時間に対する通電率として算出したものとなっている。
【0034】
例えば、ヒーター最大ワット数Pを1100Wとすると、立上加熱電力PMは、1100(W)×(通電率)12.3/16≒約860W、立上加熱電力PHは、1100(W)×(通電率)14.6/16≒1000W、立上加熱電力PSは、1100(W)×(通電率)10.0/16≒約690Wとなっている。
【0035】
炊き分けメニューに対応したそれぞれの立上加熱電力PM、PH、PSで鍋内が加熱されると、鍋底温度は変化し、図6に示すように、炊き分けメニューに対応して、「ふつう」BMT、「かため」BHT及び「やわらか」BSTの各鍋底温度曲線を呈し、同様に蒸気温度も炊き分けメニューに対応して、「ふつう」SMT、「かため」SHT及び「やわらか」SSTの各蒸気温度曲線を呈したものとなる。鍋底温度は、鍋底温度センサー及び蒸気温度は蓋体に設けた蒸気温度センサーで検出される。
【0036】
図6の設定温度θ2は、鍋内が沸騰状態に達したときの蒸気温度に設定されている。この設定温度θ2は、例えば75℃である。したがって、蒸気温度センサーが設定温度θ2を検出すると、鍋内が沸騰状態に達したとみなされる。
【0037】
炊き分けメニュー毎の蒸気温度曲線SMT、SST、SHTにおいて、吸水工程終了後の立上加熱工程開始から鍋内が沸騰するまでの時間を計時すると、立上加熱工程開始から各蒸気温度曲線SMT、SST、SHTが設定温度θ2に到達するまでの時間、すなわち、IIMt、IISt、IIHtは、炊き分けメニューに対応し、各立上加熱電力PH、PM、PSで加熱して、鍋内を沸騰状態にするまでに掛かった時間となり、この時間は炊き分けメニュー及び鍋内の炊飯量によっても変化する。すなわち、個々の炊き分けメニューでは、炊飯量の増大にしたがって時間が長くなり、炊き分けメニュー間では、かため、ふつう、やわらかの順に時間が長くなる。
【0038】
そこで、これらの時間IIMt、IIHt、IIStは、炊飯量と関連しているので、時間を計時することによって、これらの計時時間から炊き分けメニューにおける炊飯量が判定できる。
【0039】
図7は、炊き分けメニューにおける時間IIMt、IISt、IIHtと炊飯量との関係を示している。この図では、a1〜a5は時間IIMtの実測値、b、b1〜b5はIIHtの実測値、c1〜c5はIIStの実測値を表している。
【0040】
この図から、各炊き分けメニューの計時時間がa1、b1、c1のとき、炊飯量は1カップ、同様に、時間a2、b2、c3は2カップ、時間a3、b3、c3は3カップ、時間a4、b4、c4は4カップ、時間a5、b5、c5は5カップと関連しており、これらの時間関係は、
b<a<c、b1<a1<c1〜b5<a5<c5、a1<a2<a3<a4<a5、b1<b2<b3<b4<b5、c1<c2<c3<c4<c5
となっている。
【0041】
したがって、立上加熱工程IIでは、炊き分けメニュー毎に立上加熱電力PH、PM、PSが異なっているが、時間IISt、IIMt、IIHtを計時し、これらの計時時間から鍋内の炊飯量が判定できる。この判定結果は、次の沸騰維持工程IIIにおける電力制御に利用される。
【0042】
立上加熱工程IIが終了すると、沸騰維持工程IIIへ移行し、この沸騰維持工程では、炊き分けメニュー毎の沸騰維持電力で炊飯制御される。
【0043】
沸騰維持工程における炊き分けメニュー毎の沸騰維持電力は、以下のものとなる。
「ふつう」沸騰維持電力PM'は、ヒーター最大ワット数P×「ふつう」沸騰維持通電時間tm’/所定時間t’ (4)
「かため」沸騰維持電力PH'は、ヒーター最大ワット数P×「かため」沸騰維持通電時間th’ /所定時間t’ (5)
「やわらか」沸騰維持電力PS'は、ヒーター最大ワット数P×「やわらか」沸騰維持通電時間ts’ /所定時間t’ (6)
上記(4)〜(6)式の通電時間tm’、th’、ts’の関係は、概ね、th’<tm’<ts’に設定してある。これらの通電時間により沸騰維持電力PM'、PH'、PS'の関係は、概ね、PH<PM<PSとなる。そして、これらの沸騰維持電力PM'、PH'、PS'は、炊き分けメニュー毎の炊飯量に応じて変更されて炊飯制御がされる。
【0044】
沸騰維持工程IIIが終了すると、蒸らし工程IVへ移行して、炊き上ったご飯から余分な水分が除去されて、炊飯制御を終了する。
【0045】
この炊き分けメニューの炊飯制御によれば、ふつう、かため及びやわらかなどの食感の炊き上げに大きく影響を及ぼす炊飯工程、特に立上加熱工程でそれらの炊き分けメニューに対応した立上加熱電力で制御するので、よりきめ細かな硬さ食感のご飯を炊き上げることができる。なお、この実施形態の炊飯器では、それぞれの炊き分けメニューは、立上加熱電力及び沸騰維持電力の制御で行なったが、それぞれの炊き分けメニューに対応して吸水工程の吸水時間を調節した後に上記の電力制御を行ってもよい。また、炊き分けメニューをふつう、かため及びやわらかに細分化したが、これらをさらに細分化してもよい。
【0046】
図1〜図7を参照して、個々の炊き分けメニューにおけるふつう、かため及びやわらか炊飯を説明する。
(i)ふつう
鍋7に所定量の米とこの米量に対応する水を調節して入れる。炊飯物を入れた鍋7を本体のケース2内に入れて、蓋体10を閉めて炊飯セットした後に、炊飯スタート釦3aを押す。この炊飯スタート釦3aを押すと表示パネル8に炊き分けメニューが表示されるので、「ふつう」を選定する。この選定により、ふつうの炊飯工程が開始される。まず、吸水工程Iでは、IHコイル5bにより鍋7内を所定の吸水温度θ1(例えば50℃)に昇温して、所定時間Itを掛けて鍋内の米に所定量の水が吸水させる。吸水後は、立上加熱工程IIへ移行して、この立上加熱工程IIでは、圧力弁13を閉成するとともに、炊き分けメニュー「ふつう」に対応した立上加熱電力PMで鍋7内が沸騰するまで昇温し、鍋内が大気圧以上、例えば1.2気圧に昇圧する。
【0047】
この圧力弁13の閉成は、プランジャ19bを操作してロッドをシリンダー19a内へ引き込み、ボール15を弁孔14bの上に戻した状態でボールの自重によって弁孔14bを塞ぎ、鍋内を大気圧を超える圧力に昇圧する。この立上加熱工程IIにおいて、量判定手段は、計時手段及び蒸気センサー23からの出力を入力して、記憶手段に記憶されたデータを参照して鍋内の炊飯量を判定する。計時手段により、蒸気センサー蒸気センサー23が所定温度θ2(例えば、75℃)を検出すると、鍋7内が沸騰状態になったとみなして、制御装置24は、沸騰維持工程IIIへ移行させる。この沸騰維持工程では、炊飯量の判定結果に基づいて沸騰維持電力PM'により制御される。一方で、制御装置24は、圧力弁開放機構18を作動させて、圧力弁13を強制的に所定の単位時間で複数回間歇的に開放させる。この圧力弁13の間歇的な開放により、開放時には鍋7内の状態が加圧状態から一気に大気圧近傍まで低下して鍋内に圧力変動が起こり、この圧力変動が間歇的に複数回に亘って繰り返される。この間歇的な圧力弁の開放により、鍋内の圧力が大きく変動し、その度毎に鍋内に激しい沸騰現象、いわゆる突沸現象が生じて大量の泡が発生する、と同時に鍋内の中央側の米粒が鍋内の側方へ或いは逆方向への移動を繰り返して鍋内の米粒が効率よく攪拌される。この攪拌により、米粒全体に十分な熱が加わり、加熱ムラがなくなる。この沸騰維持工程IIIにおいて、圧力弁13が強制的に複数回に亘り開放された後は、このような強制的な開放作動をさせずに残りの沸騰維持工程を継続する。この残りの沸騰維持工程では、圧力弁13は、その弁口を塞ぐボールの自重と鍋内圧力とのバランスによって略一定の加圧状態が維持されるように小刻みな開閉動作が繰り返えされる。
【0048】
沸騰維持工程が所定時間継続された後に、鍋底近傍に設置した鍋底センサー6が所定の鍋底温度θ4(130℃)を検出すると、制御装置は加熱手段への通電を停止してむらし工程IVへ移行させる。このとき、圧力弁の開放動作は行われない。これにより、炊飯工程を終了する。
(ii)かため及び(iii)やわらかも、上記(i)のふつうと同様にして、立上加熱電力PMの代わりに立上加熱電力PH、PS、及び沸騰維持電力PM'の代わりに沸騰維持電力PH'、PS'を用いて制御され、炊飯される。
【符号の説明】
【0049】
1 炊飯器
2 炊飯器本体
5 加熱手段
5a 側面ヒーター
5b 底ヒーター
7 鍋
13 圧力弁
18 圧力弁開放機構
15 ボール
24 制御装置
25 表示操作部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
米と水とを含む炊飯物を入れる鍋と、前記鍋内の炊飯物を加熱する加熱手段と、前記加熱手段を制御して前記鍋内の米に所定量の水を吸水させる吸水工程、吸水後に鍋内を一気に加熱して沸騰させる立上加熱工程、沸騰状態を維持して炊き上げる沸騰維持工程を含む一連の炊飯工程を実行する制御装置と、複数の炊き分けメニューを選定する炊き分けメニュー選択手段とを備えた電気炊飯器において、
前記制御装置は、前記立上加熱工程における前記炊き分けメニュー毎の立上加熱電力及び前記沸騰維持工程における前記炊き分けメニュー毎の沸騰維持電力を予め規定して記憶した記憶手段を備え、
前記制御装置は、前記立上加熱工程において、前記炊き分けメニュー選択手段で選定された炊き分けメニューに対応して、前記記憶手段に記憶された炊き分けメニューに対応する立上加熱電力で前記立上工程を実行し、前記立上加熱工程終了後に前記沸騰維持工程へ移行して、前記記憶手段に記憶された炊き分けメニューに対応する沸騰維持加熱電力で沸騰維持工程を実行する炊飯制御手段を有していることを特徴とする電気炊飯器。
【請求項2】
前記複数の炊き分けメニューは、かため、ふつう、やわらかの選択肢を有し、
前記選択肢それぞれに対応するかため立上加熱電力をPH、ふつう立上加熱電力をPM及びやわらか立上加熱電力をPSとしたときに、これらの関係がPS<PM<PHに規定され、同様に、かため沸騰維持電力をPH'、ふつう沸騰維持電力をPM'及びやわらか沸騰維持電力をPS'としたときに、これらの関係は、PS'<PM'<PH'に規定されて、前記記憶手段に記憶されていることを特徴とする請求項1に記載の電気炊飯器。
【請求項3】
前記記憶手段には、前記立上加熱工程における炊き分けメニュー毎の前記立上加熱工程開始から鍋内が沸騰までに掛かる沸騰時間と、これらの沸騰時間に対応する炊飯量とを関連付けしたデータを記憶しておき、
前記制御装置は、前記立上加熱工程において前記立上加熱工程開始から前記鍋内が沸騰までに掛かる時間を計時する計時手段と、前記計時手段の出力と前記記憶手段のデータから炊飯量を判定する量判定手段と、前記炊飯制御手段は、前記量判定手段の判定結果に基づいて前記沸騰維持工程を実行することを特徴とする請求項2又は3に記載の炊飯器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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