説明

電気特性変更可能な繊維強化プラスチック板及びその繊維強化プラスチック板の製造方法

【課題】繊維強化プラスチック板の製造後にも電気特性を任意に設定出来る電気特性変更可能な繊維強化プラスチック板及びその繊維強化プラスチック板の製造方法を提供する。【解決手段】電気特性変更可能な繊維強化プラスチック板1は、ガラス繊維,芳香族ポリアミド繊維等の補強繊維布に熱可塑性樹脂材料を含浸させた繊維強化プラスチック板1の内部に内径(0.7mm), 外径(0.85mm)から成る微細な中空ファイバー2を複数本並列に埋設して一体的に形成してある。中空ファイバー2の中空部2aには、中空ファイバー2の端末部から電気特性変更可能な繊維(例えば、アルミ繊維)や、電気特性を有する液体(例えば、磁性流体)を注入して電気特性を変更可能にするものである。このような繊維強化プラスチック板1を製造する場合には、補強繊維布に樹脂材料を含浸させた繊維強化シート1aに微細な中空ファイバー2を複数本並列に配設して複数枚形成し、この繊維強化シート1aを所定枚数積層させた後、加熱硬化することにより一体的に成形する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電気特性変更可能な繊維強化プラスチック板及びその繊維強化プラスチック板の製造方法にかかわり、更に詳しくは電気特性を任意に設定出来る繊維強化プラスチック板及びその繊維強化プラスチック板の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ガラス繊維,芳香族ポリアミド繊維,炭素繊維等の補強繊維布に熱可塑性樹脂材料を含浸させて硬化させた繊維強化プラスチック板(FRP板)が知られているが、このような従来の繊維強化プラスチック板を電磁窓等の電磁波シールドの使用する場合には、補強繊維布に導電性を有するものを使用して繊維強化プラスチック板に電気特性を持たせた構造にしている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
ところで、繊維強化プラスチック板(FRP板)の電気特性は、繊維強化プラスチック板の製造する材料で決まるため、繊維強化プラスチック板の製造後に任意に設定を変えることが出来ず、その都度、用途にあった電気特性を備えた繊維強化プラスチック板を製造していた。
【0004】
このため、製造には多くの手間と時間がかかり、また製造コストが非常に高くなると言う問題があった。
【特許文献1】特開平5−69441号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この発明は、かかる従来の問題点に着目して案出されたもので、繊維強化プラスチック板の製造後にも、電気特性を任意に設定出来る電気特性変更可能な繊維強化プラスチック板及びその繊維強化プラスチック板の製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、上記目的を達成するため、この発明の電気特性変更可能な繊維強化プラスチック板は、補強繊維布に樹脂材料を含浸させた繊維強化プラスチック板の内部に微細な中空ファイバーを複数本並列に埋設して一体的に形成したことを要旨とするものである。
【0007】
ここで、前記中空ファイバーの中空部に繊維を挿入したり、また繊維と電気特性を有する液体を注入して形成するものである。
【0008】
また、この発明の電気特性変更可能な繊維強化プラスチック板の製造方法は、補強繊維布に樹脂材料を含浸させた繊維強化シートに微細な中空ファイバーを複数本並列に配設して複数枚形成し、この繊維強化シートを所定枚数積層させた後、加熱硬化することにより一体的に成形することを要旨とするものである。
【0009】
また、この発明の他の電気特性変更可能な繊維強化プラスチック板の製造方法は、補強繊維布に樹脂材料を含浸させた繊維強化シートに微細な中空ファイバーを複数本並列に配設して複数枚形成し、この繊維強化シートを板状の芯材の表裏面にラミネートさせてサンドイッチ構造に成形するものである。
【0010】
ここで、前記中空ファイバーは、その中空部内に繊維、または繊維と電気特性を有する液体を注入するものである。
【発明の効果】
【0011】
この発明は、上記のように電気特性変更可能な繊維強化プラスチック板は、補強繊維布に樹脂材料を含浸させた繊維強化プラスチック板の内部に微細な中空ファイバーを複数本並列に埋設して一体的に形成するので、繊維強化プラスチック板の製造後にも、電気特性を任意に設定することが出来、製造も容易で、安価に製造出来る効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、添付図面に基づきこの発明の実施の形態を説明する。
【0013】
図1は、この発明の第1実施形態を示す電気特性変更可能な繊維強化プラスチック板の斜視図、図2は繊維強化プラスチック板に埋設した微細な中空ファイバーの斜視図を示し、前記電気特性変更可能な繊維強化プラスチック板1は、ガラス繊維,芳香族ポリアミド繊維等の補強繊維布に熱可塑性樹脂材料を含浸させた繊維強化プラスチック板1の内部に内径(0.7mm),外径( 0.85mm) から成る微細な中空ファイバー2を複数本並列に埋設して一体的に形成してある。
【0014】
前記中空ファイバー2は、図2に示すように中空部2aに中空ファイバー2の端末部から電気特性変更可能な繊維(例えば、アルミ繊維)や、電気特性を有する液体(例えば、磁性流体)を注入して電気特性を変更可能にするものである。
【0015】
例えば、厚さ2.5 mm,縦横300 ×300 mmの繊維強化プラスチック板1の場合には、緒系400 mmの中空ファイバー2を、59本配設して形成するものである。
【0016】
このような繊維強化プラスチック板1を製造する場合には、補強繊維布に樹脂材料を含浸させた繊維強化シート1aに微細な中空ファイバー2を複数本並列に配設して複数枚形成し、この繊維強化シート1aを所定枚数積層させた後、加熱硬化することにより一体的に成形するものである。
【0017】
また、前記電気特性は、中空ファイバー2の中空部2aに電気特性変更可能な繊維や電気特性を有する液体を注入(毛細管現象等による)して電気特性を変更可能にする。
【0018】
また、中空ファイバー2の中空部2a内に繊維、または繊維と電気特性を有する液体を注入した後には、端末部を樹脂等を塗布し、硬化させてシールするものである。
【0019】
更に、電気特性を変更する場合には、繊維や電気特性を有する液体を入れ替えることで任意に設定を変更することが出来る。
【0020】
また、図3はこの発明の第2実施形態を示す繊維強化プラスチック板3の斜視図を示し、この実施形態は、上記第1実施形態と同様に補強繊維布に樹脂材料を含浸させた繊維強化シート3aに微細な中空ファイバー2を複数本並列に配設して複数枚形成する。そしてこの繊維強化シート3aを金属または非金属材料から成るハニカムコア等の板状の芯材4の表裏面にラミネートさせてサンドイッチ構造にして成形するものである。
【0021】
なお、中空ファイバー2の中空部2a内には、中空ファイバー2の端末部から繊維、または繊維と電気特性を有する液体を注入して電気特性を変更可能にするものである。
【0022】
また、中空ファイバー2の中空部2a内に繊維、または繊維と電気特性を有する液体を注入した後には、端末部を樹脂等を塗布し、硬化させてシールするものである。
【0023】
更に、電気特性を変更する場合には、繊維や電気特性を有する液体を入れ替えることで任意に設定を変更することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】この発明の第1実施形態を示す電気特性変更可能な繊維強化プラスチック板の斜視図である。
【図2】繊維強化プラスチック板に埋設した微細な中空ファイバーの斜視図である。
【図3】この発明の第2実施形態を示す電気特性変更可能な繊維強化プラスチック板の斜視図である。
【符号の説明】
【0025】
1 繊維強化プラスチック板
2 中空ファイバー 2a 中空部
3 繊維強化プラスチック板 3a 繊維強化シート
4 芯材


【特許請求の範囲】
【請求項1】
補強繊維布に樹脂材料を含浸させた繊維強化プラスチック板の内部に微細な中空ファイバーを複数本並列に埋設して一体的に形成して成る電気特性変更可能な繊維強化プラスチック板。
【請求項2】
前記中空ファイバーの中空部に繊維を挿入した請求項1に記載の電気特性変更可能な繊維強化プラスチック板。
【請求項3】
前記中空ファイバー中空部に、繊維と電気特性を有する液体を注入した請求項1に記載の電気特性変更可能な繊維強化プラスチック板。
【請求項4】
補強繊維布に樹脂材料を含浸させた繊維強化シートに微細な中空ファイバーを複数本並列に配設して複数枚形成し、この繊維強化シートを所定枚数積層させた後、加熱硬化することにより一体的に成形する電気特性変更可能な繊維強化プラスチック板の製造方法。
【請求項5】
補強繊維布に樹脂材料を含浸させた繊維強化シートに微細な中空ファイバーを複数本並列に配設して複数枚形成し、この繊維強化シートを板状の芯材の表裏面にラミネートさせてサンドイッチ構造に成形する電気特性変更可能な繊維強化プラスチック板の製造方法。
【請求項6】
前記中空ファイバーは、その中空部内に繊維、または繊維と電気特性を有する液体を注入した請求項4または5に記載の電気特性変更可能な繊維強化プラスチック板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−175649(P2006−175649A)
【公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−369420(P2004−369420)
【出願日】平成16年12月21日(2004.12.21)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】