説明

電気特性測定方法および電気特性測定用プローブ

【課題】直径1mm以下の球形導電体の電気抵抗を正確に評価する。
【解決手段】球形導電体の電気抵抗を4端子法にて評価できるようなプローブ構造を工夫した。具体的には、2つの対向電極間に球形導電体を挟み込み接触させ定電流を流すための電流プローブ、および球形導電体表面上の2点間の電位差を測定するための電圧プローブを独立に設置し、正確な評価を可能にした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気抵抗測定方法および電気抵抗測定用プローブに関するものである。
【背景技術】
【0002】
直径1mm以下程度の大きさを有する微小な球形導電体は、半導体ボール、導電体コーティング絶縁体ボールなど、産業界で多く用いられている。
【0003】
従来、直径1mm以下の球形導電体の電気抵抗を測定する場合、2つの対向電極間に球形導電体を挟み込み、方法で2つの対向電極間の抵抗値を2端子法にて測定していた。しかしながら、この方法の場合、電極と球形導電体間の接触抵抗が挟み込む力により変化するために、球形導電体の真の電気抵抗の測定することができなかった。
【0004】
そのために、半導体ボール、導電体コーティング絶縁体ボールなどの微小な球形導電体の生産において、生産品の電気抵抗値の制御性の確保に支障をきたしていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
直径1mm以下の球形導電体の電気抵抗を正確に評価することが、発明が解決しようとする課題である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記の課題を解決するため、球形導電体の電気抵抗を4端子法にて評価できるようなプローブ構造を工夫したことを特徴とする。具体的には、次の2つの工夫を行った。
(A)2つの対向電極間に球形導電体を挟み込み接触させ定電流を流すためのプローブ構造の工夫、および、一方の対向電極と球形導電体との接触点からの距離が異なる球形導電体表面上の2点間の電位差を測定するためのプローブ構造の工夫。
(B)球形導電体との接触時において球形導電体の表面上の一点から等距離の場所に接触点が得られるような4本のプローブ構造の工夫。
【発明の効果】
【0007】
本発明では、直径1mm以下の球形導電体の電気抵抗を4端子法にて正確に評価するためのプローブを工夫し、これを実現した。 本発明によれば、球形導電体の電気抵抗を4端子法にて正確に評価することができる。これにより、半導体ボール、導電体コーティング絶縁体ボールなどの微小な球形導電体の生産において、生産品の正確な電気抵抗値の測定が可能となり、生産時の制御性の確保が容易にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は電圧測定用プローブを示した説明図である。(実施例1)
【図2】図2は電圧測定用プローブのセット用絶縁体を示した説明図である。(実施例1)
【図3】図3は電圧測定用2端子プローブを示した説明図である。(実施例1)
【図4】図4は電流供給用プローブおよび絶縁体(A)を示した説明図である。(実施例1)
【図5】図5は電流供給用プローブおよび絶縁体(B)を示した説明図である。(実施例1)
【図6】図6は抵抗測定用4端子プローブ(電流供給および電圧測定用2端子プローブの組合せ)を示した説明図である。(実施例1)
【図7】図7は抵抗測定用4端子プローブ(測定する球形導電体セット時)を示した説明図である。(実施例1)
【図8】図8は抵抗測定用4端子プローブ(球形導電体測定時)を示した説明図である。(実施例1)
【図9】図8は正方形配置4端子プローブを示した説明図である。(実施例1)
【図10】図10は正方形配置4端子プローブ作製手順を示した説明図である。(実施例1)
【図11】図11は正方形配置4端子プローブ(球形導電体測定時)を示した説明図である。(実施例1)
【図12】図12は正方形配置4端子プローブの実装例を示した説明図である。(実施例1)
【図13】図13は円柱を正方形配置した4端子プローブを示した説明図である。(実施例1)
【図14】図14は円柱を正方形配置した4端子プローブ(球形導電体測定時)を示した説明図である。(実施例1)
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明では、上記の従来技術の欠点を克服するために、以下の工夫により、4端子法にて直径1mm以下の球形導電体の電気抵抗測定を実現した。
【0010】
本発明では、球形導電体の直径方向に定電流を印加する2端子プローブ、および定電流印加位置から最も遠い球面上の1点近傍の近接した2点間の電圧降下を測定する2端子プローブを工夫し、これをジグとして組み合わせ、球形導電体の4端子法での電気抵抗測定を実現した。
【0011】
また、円柱を四分の一分割した導電体を絶縁分離させた状態で密接させ、円柱状のプローブとし、その円柱端部平面状の中心位置に球形導電体をセットするようにさせ、4端子法での電気抵抗測定を実現した。
【実施例1】
【0012】
図1は、電圧測定用プローブである。実施例では、導電体として、直径1mm長さ20mmの超硬製円柱(1)を用い、その半分の長さ分(10mm)を直径0.5mmの円柱に切削加工することにより、直径0.5mmと1mmの2つ円柱が各10mmずつ連結され一体化したもの(2)である。
【0013】
図2は、図1の電圧測定用プローブのセット用絶縁体(3)で、実施例ではハロゲン化ポリイミドを用いた。電圧測定用プローブを2本収納するための穴が開いていて、穴の直径は0.5mmであり、穴の中心間距離は、1.05mmである。
【0014】
図3は、電圧測定用2端子プローブで、図1の電圧測定用プローブ(2)を2本、図2の絶縁体(3)にセットしたものであり、プローブ間の隙間の最小値が0.05mmとなっている。プローブ間の隙間の最小値は、後述する本プローブでの球形導電体の抵抗測定を行う際の、電圧測定用2端子プローブ間距離である。
【0015】
図4、5は、「電流供給用プローブおよび絶縁体」(A)(B)であり、(A)と(B)を組み合わせて使用する。図4の「電流供給用プローブおよび絶縁体」(A)は、絶縁体(5)の上に導電体(4)を載せて固定したものであり、実施例では、導電体として超硬製平板、絶縁体としてハロゲン化ポリイミド製直方体を用いた。図5の「電流供給用プローブおよび絶縁体」(B)は、(A)と同じように絶縁体(5)の上に導電体(4)を載せて固定したものであり、実施例では(A)と同様のものを用いた。なお、絶縁体の上面には溝が掘られており、非測定物である球形導電体をセットするためのガイドの役割を果たす。図6は、図4と5に示した2つの電流供給用プローブを組み合わせた電流供給用2端子プローブであり、あわせて描いた球形導電体(6)をセットしたところである。図7は、図3と6に示した各プローブを組み合わせて作り上げた球形導電体の抵抗値測定用の4端子プローブの全体側面図である。図8と9は、抵抗測定用4端子プローブ斜視図であり、それぞれ球形導電体(6)のセット時と測定時の様子を示してある。図8に示すように電流供給用の2端子プローブ(4)の間の距離を開けた状態で球形導電体(6)をセットする。このとき、電圧測定用2端子プローブ(2)は、球形導電体とは非接触の状態で球形導電体の直上に配置されている。球形導電体(6)のセット後、電流供給用の両プローブ(4)接近させ、球形導電体を両プローブで挟み込むことにより電気的な導通を得る。続いて、図9に示すように、球形導電体(6)の直上に配置させた電圧測定用2端子プローブ(2)を降下させ球形導電体に押し付けることにより、電気的な導通を得る。この状態で、電流供給用プローブ(4)の間に球形導電体を通して定電流を印加し、電圧測定用2端子プローブ(2)の間に生じる電圧降下を測定することにより、球形導電体(6)の4端子法による電気抵抗測定を行う。
【0016】
このようにして作製した球形導電体の抵抗値測定用の4端子プローブを用いて、1Ωcmの抵抗率を有する直径1mmのシリコン製の球形導電体の抵抗測定を、先に述べた方法にて行った。その結果、電流供給用プローブ間の印加電流、3.93、3.12、2.60mAに対し、電圧測定用2端子プローブ間に生じた電圧降下は、2.7、2.2、1.8mVであり、電圧降下を印加電流で除した抵抗値は、それぞれ、0.68、0.70、0.69Ωであった。測定された抵抗値は、直径1mmで高さ0.05mmの円柱の抵抗体として概算される理論値である0.63Ωに極めて近い値であった。測定の再現性も良好であった。これにより、本方法の有効性を確認した。
【0017】
図9は、もうひとつの実施例である、正方形配置4端子プローブである。実施例では、超硬材料製の円柱(長さ50mm、直径10mm)の四分の一片(7)を0.01mm厚のエポキシ配合樹脂(8)にて張り合わせることにより中心に正方四角柱の絶縁層を有する円柱状の正方形配置4端子プローブを作製した。
【0018】
図10は、その作製の手順である。まず、超硬材料製の円柱(9)を機械研磨することにより、半円柱(10)とした。次に、半円柱2本の研磨面同士をポリイミド両面接着テープ(8)を用いて張り合わせ、円柱状にした。この円柱を、さらに機械研磨することにより、半円柱とした。さらに、この半円柱2本の研磨面同士を前述のエポキシ配合樹脂(8)を用いて張り合わせ、円柱状にした。このようにすることで、中心に正方四角柱の絶縁層を有する円柱状の正方形配置4端子プローブとした。
【0019】
図11は、球形導電体を測定する際の正方形配置4端子プローブの配置である。まず、左図のように、球形導電体(6)をプローブ中心部分に置く。つづいて、球形導電体の直径より小さい穴を有する穴あき透明板(11)を用いて球形導電体(6)とプローブ間を加圧する。その状態で正方形配置4端子プローブの隣り合う超硬材料製の2端子に一定電流を印加し、電流が印加されていない他の2端子間に生ずる電圧降下を測定する。
【0020】
図12は、もうひとつの正方形配置4端子プローブであり、平面導電体測定に用いる。本図は、次のように先端加工されたプローブを外部バネ型のプローブに仕上げた例である。このプローブは、先に図9に示したプローブの円柱の一方の先端を機械研磨加工と放電加工を組み合わせ四角錐状の形状を作り、さらに集束イオンビーム仕上げ加工により先端を尖塔状にしたものである。使用時は、プローブの尖塔部分を平面導電体に対して垂直に押し当て、その状態で正方形配置4端子プローブの隣り合う超硬材料製の2端子に一定電流を印加し、電流が印加されていない他の2端子間に生ずる電圧降下を測定する。図では、正方形配置4端子プローブの実装形体を描いている。4端子プローブの各端子にはリード線(12)が接続されている。また、ソケット(13)とスプリング(14)を4端子プローブの外部を取り囲むようにセットし、ストッパ(15)を4端子プローブに固定してセットすることにより、いわゆるアウタースプリング型プローブが完成する。なお、この4端子プローブでは、各プローブが互いに電気的に分離される必要があるため、ソケット、スプリングおよびストッパは、それぞれ、少なくとも表面が絶縁体であるものを用いる。
【0021】
図13は、球形導電体を測定する際の正方形配置4端子プローブの、さらなる実施例で、円柱を正方形配置した4端子プローブである。本実施例では、絶縁膜を曲面にコーティングした直径0.5mmの超硬製円柱(16)を用い、それら4本を正方形状に配置し、これらを隙間無く収納することができる絶縁体パイプ(17)により固定した。なお、超硬製円柱の直径は、最小0.2mmまで試作し成功した。
【0022】
図14は、図13で示した4端子プローブにより、直径0.25mmの球形導電体(6)の測定時の様子を示している。球形導電体(6)をプローブ中心部分に置き、つづいて、球形導電体の直径より小さい穴を有する穴あき透明板(11)を用いて球形導電体(6)とプローブ間を加圧する。その状態で正方形配置4端子プローブの隣り合う超硬材料製の2端子に一定電流を印加し、電流が印加されていない他の2端子間に生ずる電圧降下を測定する。
【0023】
実施例では、導電材料として超硬(タングステンカーバイド)、絶縁材料としてハロゲン化ポリイミドやエポキシ配合樹脂を用いたが、非測定物の材料に適合した材料を選択する。導電材料としては、タングステン、モリブデンなどの高融点金属の他、マルエージング鋼、ハイス鋼、ダイス鋼などの鋼材や、ベリリウム銅などがその候補になる。絶縁材料としては、各種高分子膜や、セラミックス、ガラスなどの無機物質がその候補になる。また、実施例では、導電体加工の際、機械研磨加工、放電加工、集束イオンビームを組み合わせて行ったが、電解研磨加工などの既知の様々な加工のその候補となりうる。導電体の材質に応じて、それらのうちのひとつを用いるか、複数を組み合わせて行う。
【符号の説明】
【0024】
1 超硬製円柱
2 電圧測定用プローブ(切削加工後の超硬製円柱)
3 電圧測定用プローブ用絶縁体
4 電流供給用プローブ
5 電流供給用プローブ用絶縁体
6 球形導電体
7 超硬材(1/4円柱)
8 絶縁物
9 超硬材(円柱)
10 超硬材(1/2円柱)
11 穴あき透明板
12 リード線
13 ソケット(プローブに非固定)
14 スプリング(プローブに非固定)
15 ストッパ(プローブに固定)
16 絶縁膜を曲面にコーティングした超硬製円柱
17 絶縁体パイプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの対向電極間に球形導電体を挟み込み接触させ定電流を流し、一方の対向電極と球形導電体との接触点からの距離が異なる球形導電体表面上の2点間の電位差を測定することにより、球形導電体の電気抵抗を4端子法にて求める電気特性測定方法。
【請求項2】
球形導電体との接触時において球形導電体の表面上の一点から等距離の場所に接触点が得られるような4本のプローブを用い、隣り合う2本のプローブに定電流を流し、他の2本のプローブ間の電位差を測定することにより球形導電体の表面電気抵抗を4端子法にて求める電気特性測定方法。
【請求項3】
4本のプローブ同士が互いに絶縁体をはさんで密着し一体化した構造を有する電気特性測定用プローブ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2010−169553(P2010−169553A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−12716(P2009−12716)
【出願日】平成21年1月23日(2009.1.23)
【出願人】(000102739)エヌ・ティ・ティ・アドバンステクノロジ株式会社 (265)
【出願人】(591037133)有限会社清田製作所 (14)
【Fターム(参考)】