説明

電気端子および電気端子を使用する電気コネクタ

【課題】 電気端子およびこれを使用する電気コネクタにおいて、電気端子の本体部の強度が大きく、コネクタのストッパ部と係合しても変形しにくく、電気的接続の信頼性が高く、且つ製造が容易なものとする。
【解決手段】 電線接続部2と、相手方の端子に接触する接触部8と、電線接続部2と接触部8との間に配置された本体部4とを備え、本体部4に電気コネクタのストッパ部と係合する係止部5を有する電気端子1において、電線接続部2、接触部8および本体部4は、展開状態で1枚の金属板に一体的に形成されるとともに、電気端子1の中心線12に沿う折曲げ部で折り曲げられてそれぞれ形成されてなり、本体部4は、略筒状に形成されるとともに、本体部4を構成する金属板の突合せ端部4d同士が、本体部4の内側に折曲げ部4a、8a、14に向けて互いに折り曲げられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電気端子および電気端子を使用する電気コネクタに関し、特に、金属板を折り曲げて形成された略筒状の本体部を有する電気端子およびコネクタハウジング内に挿入された電気端子の本体部に係止して電気端子を抜止めするストッパ部を有する電気コネクタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
電気コネクタに使用される電気端子は、コネクタハウジングの端子収容室に挿入された後、例えば端子係止具(リテーナ)等によって係止されて、端子収容室に保持されることが知られている(特許文献1)。この特許文献1に記載された電気端子は雌形の端子であり、箱型の本体部の後端に形成された係止部に、端子係止具の係止段部が係合して電気端子を端子収容室内に係止するようになっている。
【0003】
また、雄型の電気端子においても、本体部にこのような係止部が形成されているものは、一般的に知られている(特許文献2)。この雄型の電気端子の本体部は、金属板を箱状に折り曲げて、金属板の突き合わせ端部同士を本体部の上面で重ね合わせて構成されている。
【特許文献1】特許第3311228号公報(図9、図10)
【特許文献2】特開2003−45534号公報(図1、図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された、コネクタハウジング内に係止された状態にある電気端子に、例えば電気端子に接続された電線を引っ張る等により後方への引抜力が加わった場合、引抜力による荷重が電気端子とハウジングとの係合部分に生じる。すなわち、電気端子の係止部と、この係止部に当接する、ハウジング側の端子保持具(ストッパ部)の係止段部に荷重が集中する。その結果、端子が荷重に抗する程堅固でない場合は端子が変形したり、あるいは、端子が堅固であっても端子保持具が破損したりするおそれがある。従って、電気端子がコネクタハウジング内に安定的に保持されるためには、電気端子の側では、この係止部の強度を向上させることが好ましい。この係止部が金属板の1枚のエッジすなわち端縁からなる場合は、係止部の強度は1枚の金属板の強度に依存する。この種の端子は小型であり、必然的に金属板も板厚の薄いものが使用されることが多く、1枚の金属板では強度不足になるおそれがある。
【0005】
端子の強度を向上させるためには、例えば 特許文献2に示されているように、本体部を形成する金属板の端部同士を互いに重ね合わせて2重にし、合計の板厚を厚くすることが行われている。しかし、この場合、電気端子を製造するのに、電気端子の底壁部分の両側から金属板を折り曲げると、本体部の前述の重ね合わせ部分が互いに干渉してしまうので単なる折曲げ加工のみによって製造することはできない。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、本体部の強度が大きくコネクタのストッパ部と係合しても変形しにくく、電気的接続の信頼性が高く、且つ製造が容易な電気端子および電気端子を使用する電気コネクタを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の電気端子は、電気コネクタに挿入される電気端子であって、電線接続部と、相手方の端子に接触する接触部と、電線接続部と接触部との間に配置された本体部とを備え、本体部に電気コネクタのストッパ部と係合する係止部を有する電気端子において、
電線接続部、接触部および本体部は、展開状態で1枚の金属板に一体的に形成されるとともに、電気端子の中心線に沿う折曲げ部で折り曲げられてそれぞれ形成されてなり、本体部は、略筒状に形成されるとともに、本体部を構成する金属板の突合せ端部同士が、本体部の内側に折曲げ部に向けて互いに折り曲げられていることを特徴とするものである。
【0008】
係止部は、本体部の電線接続部側端縁と、折り曲げられた突合せ端部の電線接続部側の端縁とにより構成されることが好ましい。
【0009】
また、本発明の電気コネクタは、端子受容孔を有するとともに端子受容孔内に挿入された端子と係止するストッパ部を有するコネクタハウジングを備え、端子受容孔内に請求項1または2記載の電気端子が配置され、ストッパ部が係止部に係合するよう構成されてなることを特徴とするものである。
【0010】
係止部は、端子の本体部の側面に形成された開口であってもよい。
【0011】
コネクタハウジングのストッパ部は、コネクタハウジングとは別体に構成された係止部材(リテーナ)でもよく、コネクタハウジングに形成されたランス(ハウジングランス)であってもよい。
【0012】
電線接続部、接触部および本体部は、展開状態で前記中心線の両側にそれぞれ略対称的に形成されていてもよい。
【0013】
また、突合せ端部は、互いに接するように同じ方向に折り曲げられてもよい。また、突合せ端部は、本体部の長手方向に沿う略全長に亘る長さを有することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の電気端子は、電線接続部、接触部および本体部が、展開状態で1枚の金属板に一体的に形成されるとともに、電気端子の中心線に沿う折曲げ部で折り曲げられてそれぞれ形成され、本体部は、略筒状に形成されるとともに、本体部を構成する金属板の突合せ端部同士が、本体部の内側に折曲げ部に向けて互いに折り曲げられているので、次の効果を奏する。すなわち、突合せ端部同士が折曲げにより形成されていることにより本体部の強度が大きく、コネクタのストッパ部と係合しても変形しにくく、電気的接続の信頼性が高く、且つ製造が容易な電気端子を得ることができる。
【0015】
係止部が、本体部の電線接続部側端縁と、折り曲げられた突合せ端部の電線接続部側の端縁とにより構成されている場合は、ストッパ部と接触する係止部の接触面積が、本体部の電線接続部側端縁だけの場合より大きくなり、引っ張り荷重が加わっても端子が変形しにくくなり、電気的接続の信頼性が高い電気端子とすることができる。
【0016】
また、本発明の電気コネクタは、端子受容孔内に挿入された端子と係止するストッパ部を有するコネクタハウジングを備え、端子受容孔内に請求項1または2記載の端子が配置されて、ストッパ部が端子の係止部に係合するよう構成されているので、次の効果を奏する。すなわち端子の強度が大きく、変形しにくくなるとともに、コネクタのストッパ部と接触する端子の接触部が大きくなることにより、ストッパ部に荷重が集中せず、ストッパ部が破損しにくくなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の一例を示す電気端子(以下、単に端子という)1の好ましい実施の形態について添付図を参照して詳細に説明する。図1および図2は雄型の端子1を示し、図1は前方側から見た斜視図、図2は、電線接続部側から見た背面図である。以下、図1および図2を参照して説明する。端子1は、電線80に圧着される電線接続部2と、この電線接続部2に連結部6を介して連結された本体部4と、電線接続部2と逆側で本体部4に連結された接触部8から構成される。これら、電線接続部2、本体部4および接触部8は、1枚の金属板を打抜き、折り曲げて一体に形成されている。なお、説明の便宜上、上下等の表現は、図における上下をいう。また、接触部8側を前方、電線接続部2側を後方という。
【0018】
また、電線接続部2、本体部4および接触部8は、端子1の底壁4a側にある端子1の中心線12(図1)の両側に対称的に形成されている。すなわち、端子1を展開した状態では、中心線12に対し、電線接続部2、本体部4および接触部8は、各々対称的に形成されている。この板状の状態から端子1を形成するには、中心線12に沿うように両側を折り曲げることにより容易に形成することができる。さらに詳細には、底壁4a、および底壁4aの後部に位置する底部14の両側に、それぞれ本体部4と電線接続部2が折曲げにより形成される。また、接触部8は、下端8aが一体に連結された2枚のタブ16、16が縦に重ね合された状態に形成されている。この接触部8の形状によって、折曲げ加工による形成が容易となる。これら底壁4a、低部14および下端8aが折曲げ部となる。
【0019】
各部についてさらに詳細に説明する。電線接続部2は、電線80の芯線80aと外被80bにそれぞれ圧着される導体圧着バレル2aと絶縁体圧着バレル2bとを有する。図1の電線接続部2は、圧着される前の状態を示す。本体部4は、底壁4aの両側で上方に折り曲げられた側壁4b、4bおよび両側壁4b、4bの上端から互いに接近するように折り曲げられた上壁4c、4cを有する。さらに上壁4c、4cには、互いに接して合わさるように底壁4aに向けて折り曲げられたリブ4d、4d(突合せ端部)が形成されている。このリブ4dは、本体部4の長手方向に沿う略全長に亘る長さを有しており、本体部4全体に剛性を付与している。従って、この本体部4は変形しにくい。この、本体部4の電線接続部側端縁5aと、リブ4dの端縁5bとにより係止部5が構成される。端縁5bと電線接続部側端縁5aは、本体部4の長手方向に同じ位置にあって係止部5を構成している。従って、後方に向く係止部5のエッジの面積が増大する。この係止部5に、後述するコネクタ100(図3、図4)のリテーナ(ストッパ部)150(図5)が係合して、端子1の抜止めがなされる。この抜け止めの態様の詳細については後述する。
【0020】
本体部4の形成に当たっては、これらのリブ4d、4dおよび上壁4c、4cが予め形成される。その後、側壁4b、4bを折り曲げれば、図1および図2に示すような本体部4の構成になる。また、本体部4の側壁4bには、底壁4aおよび上壁4cに亘る略矩形の開口10が形成されている。この開口10は、端子1がコネクタハウジング(絶縁ハウジング)102に挿入されたときに、コネクタ100側のランス118(1次係止部材)が係合して端子1の抜止めとなる(図4)。また、側壁4bにはエンボスにより外方に突出する湾曲突起18が形成されている。この湾曲突起18は、端子1を端子受容孔112に挿入する際に、端子受容孔112の対応するガイド溝(図示せず)に案内される(図4)。
【0021】
次に、端子1が挿入される電気コネクタの一例について、図3および図4を参照して概略を説明する。図3は、電気コネクタ(以下、単にコネクタという)100を示し、図3(a)は、相手方のコネクタ200と嵌合途中の状態にあるコネクタ100の正面図、図3(b)は、図3(a)のIIIB−IIIB線に沿う断面図である。図4は、図3(b)の断面図の要部を拡大して示す部分拡大断面図である。
【0022】
最初に、図3を参照して説明する。コネクタ100は、コネクタハウジング(以下、単にハウジングという)102と、ハウジング102に嵌合方向111と直交方向に摺動可能に取り付けられたカムスライダ104と、ハウジング102に回動可能に取り付けられて、カムスライダ104を駆動するレバー106とを有する。また、ハウジング102の後部(図3におけるハウジング102の上部)には、電線80の導出方向を規制するカバー部材108が、ラッチアーム110によりハウジング102に取り付けられている。レバー106は、このカバー部材108を跨いでハウジング102に取り付けられている。また、ハウジング102内の端子受容孔112には端子1が装着されている。カムスライダ104は、ハウジング102の両側に配置されている。各カムスライダ104は、互いに摺動方向に沿って離隔した2つのカム溝114および上端縁にギヤ(ラック)116を有する。カム溝114は、相手方のコネクタ200のハウジング202に設けられたカム従動子204と係合し、カムスライダ104の摺動にともなって、ハウジング202をハウジング102に引き込み或いは引き離すように作用する。また、レバー106には、1対の回動軸106aが形成されているとともに、各回動軸106aの周りには、カムスライダ104のギヤ116を駆動するギヤ(ピニオン)106bが一体に形成されている(図3(a))。
【0023】
相手方のコネクタ200のハウジング202には、端子1に対応して端子206が配置されており、図3(b)に示すように、嵌合途中の状態でも、端子1と端子206は互いに接触している。図3に示すレバー106を、図3(a)に示す位置からさらに反時計方向に回動すると、コネクタ100および200は、さらに接近して端子1と端子206は一層深く互いに係合する。コネクタ同士の最終嵌合位置では、レバー106はラッチ突起108aに係合して固定される。
【0024】
次に、図4を参照して、さらに詳細に説明する。ハウジング102の端子受容孔112には、端子1が配置されているのが示されている。ハウジング102には、端子受容孔112に臨むランス(ハウジングランス)118が形成されている。このランス118は、ストッパ部となる。ランス118は、端子1の開口10の前端縁(係止部)10aに係合して端子1を端子受容孔112内に保持している。開口10も、本体部4の剛性が増大していることにより変形するおそれが少ない。また、両側の開口10、10の間には、リブ4dが位置する。この構成により、多数の端子1をまとめて梱包するときに、他の端子1の先端すなわち接触部8が、開口10内に位置しても、リブ4dによってそれ以上の進入が阻止されるので、こじりによる端子1の接触部8の変形や本体部4の変形が防止される。
【0025】
また、ハウジング102の嵌合凹部120には、規制部材122が配置されている。規制部材122には、前方に向く突起122aと、ランス118の背面に位置してランス118の撓みを規制する規制部122b、122cとが形成されている。なお、図4に表れていない各端子1に対しても、規制部122b、122cと同様の規制部(図示せず)が位置する。これにより端子1は、ランス118が撓んで係合が外れたりすることがなく、ハウジング102内に確実に保持される。突起122aは、相手方のコネクタ200との嵌合時に、相手方のコネクタ200に挿入されてガイドとなる。
【0026】
また、規制部材122の前面には、規制部材122を保持する押え部材124が、ハウジング102に取り付けられている。また、ハウジング102の後面126には、防水部材128と、この防水部材128の外れを阻止する押え部材130が、ハウジング102に取り付けられている。これらの防水部材128、押え部材124および130については、本願発明の趣旨ではないので詳細な説明を省略する。
【0027】
上述の実施形態においては、端子1が使用されるコネクタ100は、スライド機構付のレバー式防水コネクタであるが、スライド機構のない(レバー式でない)コネクタでもよいし、防水タイプでないコネクタであってもよい。また、ランス118は、端子1の一方の開口10にのみ係合しているが、両側の開口10、10に係合するように各端子1につきランス118を1対設けてもよい。さらに、ランス118に代えて、あるいはランス118に加えて、端子1の本体部4の後端に位置する係止部5に、他の係止部材すなわちリテーナを係合させてもよい。このリテーナについて図5を参照して説明する。
【0028】
図5は、リテーナと端子1が係合した状態を示す概念図である。この実施形態では、ストッパ部となるリテーナ150が、連結部6に近接するように、電線接続部2と本体部4との間に配置されている。従って、端子1を後方(図5において右側)に引っ張るような力が端子1に作用しても、リテーナ150に係止部5が当接して、端子1の移動が阻止される。このとき、前述したように、係止部5は、電線接続部側端縁5aとリブ4dの端縁5bとから構成されているので、リテーナ150との接触面積が、電線接続部側端縁5aだけの場合よりも大きくなり、力が接触部に集中することが防止される。従って、本体部4の剛性の増大と相俟って、本体部4が変形することが阻止される。また,リテーナ150に接触する係止部5の接触面積が大きいので、リテーナ150が係止部5によって削られたり、破損したりするおそれが少なくなる。このリテーナ150が、前述のランス118に加えて端子1に係合する場合は、リテーナ150は2次係止部材となる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の一態様の電気端子を前方側から見た斜視図
【図2】図1の電気端子を電線接続部側から見た背面図
【図3】図1の電気端子を使用する電気コネクタを示し、(a)は、相手方の電気コネクタと嵌合途中の状態にある電気コネクタの正面図、(b)は、図3(a)のIIIB−IIIB線に沿う断面図である。
【図4】図3(b)の断面図の要部を拡大して示す、電気コネクタの部分拡大断面図
【図5】他の係止部材と図1の電気端子が係合した状態を示す概念図
【符号の説明】
【0030】
1 電気端子
2 電線接続部
4 本体部
4a、8a、14 折曲げ部
4d リブ(突合せ端部)
5、10a 係止部
5a 電線接続部側端縁
5b 端縁
8 接触部
12 中心線
100 電気コネクタ
102 コネクタハウジング
112 端子受容孔
118 ランス(ストッパ部)
150 リテーナ(ストッパ部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気コネクタに挿入される電気端子であって、電線接続部と、相手方の端子に接触する接触部と、前記電線接続部と前記接触部との間に配置された本体部とを備え、該本体部に前記電気コネクタのストッパ部と係合する係止部を有する電気端子において、
前記電線接続部、前記接触部および前記本体部は、展開状態で1枚の金属板に一体的に形成されるとともに、前記電気端子の中心線に沿う折曲げ部で折り曲げられてそれぞれ形成されてなり、前記本体部は、略筒状に形成されるとともに、前記本体部を構成する前記金属板の突合せ端部同士が、前記本体部の内側に前記折曲げ部に向けて互いに折り曲げられていることを特徴とする電気端子。
【請求項2】
前記係止部が、前記本体部の前記電線接続部側端縁と、折り曲げられた前記突合せ端部の前記電線接続部側の端縁とにより構成されていることを特徴とする請求項1記載の電気端子。
【請求項3】
端子受容孔を有するとともに該端子受容孔内に挿入された前記端子と係止するストッパ部を有するコネクタハウジングを備え、前記端子受容孔内に請求項1または2記載の電気端子が配置され、前記ストッパ部が前記係止部に係合するよう構成されてなることを特徴とする請求項1または2記載の電気端子を使用する電気コネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−5100(P2007−5100A)
【公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−182901(P2005−182901)
【出願日】平成17年6月23日(2005.6.23)
【出願人】(000227995)タイコエレクトロニクスアンプ株式会社 (340)
【Fターム(参考)】