説明

電気絶縁ケーブル、制御システム用部品及び制御システム用部品の製造方法

【課題】PPSとの熱融着性に優れたシース層を有し、その端末部をPPS製のハウジングと熱融着させてハウジングとの接続部の防水性を確保することができる電気絶縁ケーブル、ハウジングと電気絶縁ケーブルの接続部の防水性に優れた制御システム用部品、及びその製造方法を提供する。
【解決手段】単芯もしくは複数芯の絶縁電線aの外周にシース層bが形成された電気絶縁ケーブルAであって、シース層bが、熱可塑性ポリエステルエラストマを45重量%以上含む樹脂組成物の架橋体からなり、ポリフェニレンスルフィド樹脂との熱融着に用いられることを特徴とする電気絶縁ケーブルA、この電気絶縁ケーブルAとポリフェニレンスルフィド樹脂製ハウジングHを有し、前記電気絶縁ケーブルAの端末部が、前記ハウジングHに熱融着していることを特徴とする制御システム用部品、及びこの制御システム用部品の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリフェニレンスルフィド樹脂との熱融着性を有する電気絶縁ケーブルに関する。本発明は又、自動車等に搭載される制御システム用の部品、例えばセンサ部であって、ポリフェニレンスルフィド樹脂製のハウジングを有する制御システム用部品、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等に搭載される各種の制御システムは、一般に、温度、速度、圧力等の物理量を電気信号に変換するセンサ部、そのセンサ部で発生した信号を演算処理するECU(Electric Control Unit)、そしてECUの出力信号により作動するアクチュエータ部の各部からなり、各部間は、信号を送信するケーブルで結ばれている。このような制御システムの1種であるアンチロックブレーキシステム(ABS)の場合、センサ部は、車輪の近傍に設けられる車輪速センサである。車輪速センサは、自動車の走行中に被水する環境で使用されるため、センサ自身はもとより、センサとケーブルの接続部にも防水性が要求される。
【0003】
車輪速センサのハウジングには、寸法精度や機械的強度、成形加工性等の観点から、PBT(ポリブチレンテレフタレート)等のポリエステル樹脂や、6−ナイロン、6,6−ナイロン、6T−ナイロン(芳香族ナイロン)等のポリアミド樹脂が選定されてきた。又、融点が280℃程度以上の耐熱性エンジニアリングプラスチックであるポリフェニレンスルフィド樹脂(PPS)も、優れた耐薬品性、難燃性を有することから、車輪速センサのハウジングの材料として用いられている。
【0004】
一方、車輪速センサとECUを接続するケーブルとしては、絶縁電線の外周をシース層で覆った電気絶縁ケーブルが使用されている。このシース層には、柔軟性、耐摩耗性、耐屈曲性、耐水性等が求められるが、さらに、センサとケーブルの接続部の防水性を確保するために、ハウジングを形成するエンジニアリングプラスチックと熱融着する樹脂によりシース層を形成し、ハウジングの射出成形時にシース層と熱融着させて気密封止して接続部を製造する方法が提案されている(特許文献1、特許文献2)。
【0005】
そして、前記の要請を満たす樹脂として、熱可塑性ポリウレタンエラストマと熱可塑性ポリエステルエラストマを含む混合物や、熱可塑性ポリウレタンエラストマと熱可塑性ポリアミドエラストマを含む混合物を主体とする樹脂組成物の架橋体が提案されている(特許文献1、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許3428391号公報
【特許文献2】特開2006−156407号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記混合物を主体とする樹脂組成物の架橋体は、混合物の成分の割合が所定範囲内の場合、ポリエステル樹脂やポリアミド樹脂と熱融着するので、ハウジングがこれらの樹脂からなる場合は、Oリング等のシール部品を用いることなく、接続部の防水性を確保することができる。しかし、PPSと優れた熱融着性を有する樹脂は未だ見出されていなかった。そこで、ハウジングがPPSの場合にケーブルのシース層を形成する好ましい材料が求められていた。
【0008】
本発明は、PPSとの熱融着性に優れたシース層を有し、その端末部をPPS製のハウジングと熱融着することによりハウジングとの接続部の防水性を確保することができる電気絶縁ケーブルを提供することを課題とする。本発明は、ハウジングと電気絶縁ケーブルの接続部の防水性に優れた制御システム用部品、及びその製造方法を提供することも課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
発明者らは上記課題につき鋭意検討した結果、熱可塑性ポリエステルエラストマを所定の割合以上含む樹脂組成物は、PPSとの優れた熱融着性を有すること、そしてPPSをハウジング材として用いた場合には、耐摩耗性や耐屈曲性等の要求特性を損なうことなく、長期にわたり防水性を維持できる接続部を形成できることを、見出し本発明を完成した。
【0010】
請求項1の発明は、単芯もしくは複数芯の絶縁電線の外周にシース層が形成され、PPSとの熱融着に用いられる電気絶縁ケーブルであって、シース層が樹脂組成物の架橋体からなり、前記樹脂組成物は、熱可塑性ポリエステルエラストマを樹脂組成物に対し45重量%以上含むことを特徴とする電気絶縁ケーブルである。
【0011】
この発明は、シース層が、熱可塑性ポリエステルエラストマを、樹脂組成物の全重量に対し45重量%以上含む樹脂組成物の架橋体からなることを特徴とする。この特徴により、シース層とPPSとの熱融着性が優れたものとなる。
【0012】
シース層は、前記樹脂組成物の架橋体からなる。PPSを射出成形してハウジングの成形とともにケーブルを封止接続する場合、PPSの成形温度は310〜360℃程度であり、熱可塑性ポリエステルエラストマを45重量%以上含む樹脂組成物の溶融温度を越えるため、架橋がされない場合はシース層が溶融する。そこで、熱可塑性ポリエステルエラストマを含む樹脂組成物を架橋してシース層の溶融を防ぐ。架橋は、例えば、トリメチロールプロパントリメタクリレートやトリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート等の分子内に炭素−炭素二重結合を複数個有する多官能性モノマーを配合し、加速電子線やガンマ線等の電離性放射線を照射する等の方法による。
【0013】
架橋は、この他に、有機過酸化物を用いる熱加硫法や、上記混合物にアルコキシシランを予めグラフトしておき、これを有機錫系化合物等の触媒の存在下に、水あるいは水蒸気に接触させて架橋するいわゆる水架橋法も適用可能である。しかし、主に架橋処理速度の観点から、加速電子線等の電離放射線の照射を用いる方法が簡便であり、かつ生産性も高い。
【0014】
請求項2の発明は、前記樹脂組成物中の熱可塑性ポリエステルエラストマの割合が、80重量%を超えることを特徴とする請求項1に記載の電気絶縁ケーブルである。シース層を構成する樹脂組成物中の熱可塑性ポリエステルエラストマの割合が80重量%を超える場合は、シース層とPPSとの熱融着性が特に優れたものとなるので好ましい。特許文献1や特許文献2によれば、ポリエステル樹脂やポリアミド樹脂との熱融着性は、熱可塑性ポリエステルエラストマの割合が80重量%以下の樹脂組成物が好ましい。しかし、PPSとの熱融着性は、80重量%を超える場合が好ましく、従って、特許文献1や特許文献2等の従来の知見からは全く予測できない構成である。
【0015】
請求項3の発明は、前記熱可塑性ポリエステルエラストマが、結晶性ハードセグメントと非結晶ソフトセグメントとのブロック共重合体であり、前記非結晶ソフトセグメントが、ポリエーテル系重合体であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の電気絶縁ケーブルである。
【0016】
結晶性ハードセグメントとしては、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等の重合体からなるものが挙げられる。非晶性ソフトセグメントとしては、ポリテトラメチレンエーテルグリコール等のポリオキシメチレングリコールから構成される重合体や、ポリカプロラクトングリコール等のポリエステルグリコールから構成される重合体が挙げられる。非晶性ソフトセグメントがポリオキシメチレングリコール等のポリエーテル系重合体からなるものを用いた場合は、柔軟性に優れた成形体が得られるので好ましい。
【0017】
請求項4の発明は、前記樹脂組成物が、さらに熱可塑性ポリウレタンエラストマを含むことを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の電気絶縁ケーブルである。シース層を構成する樹脂組成物は、熱可塑性ポリエステルエラストマを前記の範囲内の割合で含む限りは、熱可塑性ポリエステルエラストマと混合する他の樹脂を含むことができる。この他の樹脂としては、例えば、熱可塑性ポリウレタンエラストマ、ポリエチレン、ポリプロピレンの2元系、3元系の共重合体、それらポリマーのグラフト系樹脂、熱可塑性エラストマ、植物由来樹脂、生分解性樹脂、エンジニアリングプラスチック等を挙げることができるが、耐熱性、耐摩耗性等が要求されることから熱可塑性ポリウレタンエラストマが好ましい。
【0018】
熱可塑性ポリウレタンエラストマとは、トリレンジイソシアネート等のジイソシアネートとエチレングリコール等の短鎖ジオールの縮合重合体により構成されるポリウレタンのハードセグメントと、2官能性ポリオールからなるソフトセグメントがブロック共重合されたポリマーであり、ソフトセグメントの種類により、ポリエーテル系、カプロラクトンエステル系、アジペート系、ポリ炭酸エステル系等の種類がある。
【0019】
請求項5の発明は、シース層を形成する樹脂組成物が、窒素系難燃剤、又はエチレンビス臭素化フタルイミド、ビス(臭素化フェニル)エタン及びビス臭素化フェニルテレフタルアミドから選ばれる1種もしくは複数種からなる難燃剤で難燃化されていることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の電気絶縁ケーブルである。
【0020】
熱可塑性ポリエステルエラストマの樹脂組成物は可燃性であり、ケーブルのシース層等に適用するためには難燃化が望まれる。難燃化の手法としては、電線構造によっては、介在あるいは絶縁を難燃化する方法もあるが、難燃剤を配合する方法も広く知られており、この方法で難燃化した樹脂組成物を本発明の電気絶縁ケーブルのシース層に適用すれば、JASO規格(日本自動車規格)の燃焼試験に合格する安全性の高いケーブルを得ることができる。
【0021】
しかし、シース層とハウジング材の熱融着強度は、エラストマの混合物に配合する難燃剤の種類によって影響を受ける。難燃剤として、窒素系難燃剤、又はエチレンビス臭素化フタルイミド、ビス(臭素化フェニル)エタン、ビス(臭素化フェニル)テレフタルアミド等を使用すると、ハウジングとケーブルシース層が強固に熱融着する。ここで、窒素系難燃剤としては、メラミン樹脂やメラミンシアヌレート等を挙げることができる。
【0022】
一方、難燃剤にデカブロモジフェニルエーテルやオクタブロモジフェニルエーテル等のポリブロモジフェニルエーテルを使用すると、ハウジング材とケーブルシース層の熱融着強度が不十分になる場合がある。
【0023】
この難燃剤の種類による熱融着強度への影響は、シース材として用いる樹脂組成物の架橋度を高めるほど顕著になる傾向がある。難燃剤としてデカブロモジフェニルエーテル等のポリブロモジフェニルエーテルを添加した樹脂組成物でシース層を形成した場合は、射出成形時にシース層の保形が確実になされるところまで架橋度を上げると、ハウジング材とシース層の十分な熱融着強度が得られなくなる場合がある。
【0024】
これに対し、窒素系難燃剤や、エチレンビス臭素化フタルイミドやビス(臭素化フェニル)エタンやビス(臭素化フェニル)テレフタルアミド等の難燃剤を使用した場合には、射出成形時にシース層の保形が確実になされるところまで架橋度を上げても、ハウジング材とシース層が強固に熱融着し、所定の防水性能が得られる。又、窒素系難燃剤、特にメラミンシアヌレートは、ポリウレタンエラストマ等の樹脂に混合する際、高温加工時にも分解しにくいとの利点も有する。
【0025】
シース層を構成する樹脂組成物には、本発明の趣旨を損なわない範囲で、酸化防止剤、光安定剤、加水分解抑制剤等の各種の安定剤や、補強剤、充填剤、着色剤等の既知の配合薬品を添加することも可能である。
【0026】
シース層を構成する樹脂組成物は、前記の成分を、バンバリーミキサ、加圧型ニーダ、単軸混合機、二軸混合機、オープンロールミキサ等の既知の混合機を用いて混合することにより製造することができる。
【0027】
本発明は、前記の電気絶縁ケーブルに加えて、PPS製ハウジングと、前記の電気絶縁ケーブルを有し、その端末部が、前記ハウジングに熱融着していることを特徴とする制御システム用部品を提供する(請求項6)。前記の電気絶縁ケーブルは、PPSとの優れた熱融着性を有するので、この電気絶縁ケーブルとPPSからなるハウジングの接続部は、防水性が確保されたものとすることができる。従って、防水性に優れた制御システム用部品が得られる。
【0028】
本発明は、さらに、前記制御システム用部品の製造方法として、PPSを、請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の電気絶縁ケーブル端末部を含む型内に射出成形してハウジングを形成し、前記ハウジングと前記電気絶縁ケーブル端末部を熱融着させて気密封止する工程を有する方法を提供する(請求項7)。
【0029】
成形型内に電気絶縁ケーブル端末部を設置し、そこへPPSを射出成形することによりシース層を構成する樹脂組成物の架橋体とハウジング材が熱融着し、接続部が気密封止される。この製造方法によれば、シール部材の装着等の工程は不要であり、本発明の制御システム用部品を簡易な工程で安価に製造することができる。射出成形の方法、条件としては、PPSの射出成形の際に通常行われている方法、条件を採用することができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明の電気絶縁ケーブルは、PPSとの熱融着性に優れたシース層を有し、PPS製のハウジングとの接続に用いられる場合、ハウジング材と熱融着して接続部の防水性を確保することができる。このような電気絶縁ケーブルとPPS製のハウジングを有する本発明の制御システム用部品は、電気絶縁ケーブルとの接続部の防水性に優れ、自動車分野等での利用価値は非常に大きいものである。そして、この制御システム用部品は、本発明の製造方法により簡易な工程で安価に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の電気絶縁ケーブルの使用の一例(制御システム用部品:車輪速センサ)を示す断面図である。
【図2】本発明の電気絶縁ケーブルの一例を示す部分拡大斜視図である。
【図3】剥離強度を測定するときの試料セット方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
次に発明を実施するための形態、特に最良の形態を、図や参考例を用いてさらに詳しく説明する。ただし本発明は、この形態や参考例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を損ねない範囲で、変更を加えることも可能である。
【0033】
図1に、本発明の電気絶縁ケーブルの使用の一例(制御システム用部品:車輪速センサ)の断面図を示す。図1中でAは、電気絶縁ケーブルであり、電気絶縁ケーブルAは、その部分拡大図である図2に示されるように、絶縁電線aが2本ある多芯ケーブルであり、2本の絶縁電線aの外周は中間層cで覆われ、中間層cの外周はシース層bで覆われている。本発明の電気絶縁ケーブルの形態としては、他に絶縁電線が1本のもの(単芯ケーブル)や中間層の無いものも挙げることができる。
【0034】
電気絶縁ケーブルAは、シース層bを形成する材料として、熱可塑性ポリエステルエラストマを45重量%以上含む樹脂組成物を用いる以外は、通常の電気絶縁ケーブルの製造と同様の方法により、絶縁電線を中間層、シース層で覆った後、シース層を架橋することにより得ることができる。例えば、溶融押出機を用い、中間層、シース層を形成する材料を共押出して被覆して中間層、シース層を形成することができる。
【0035】
図1中でCは、車輪速センサであり、ハウジングHに収納されている。電気絶縁ケーブルAの絶縁電線aは、車輪速センサCの出力端子dに接続しており、さらに電気絶縁ケーブルAのシース層bは、接続部BでハウジングHと熱融着しており、この熱融着により優れた防水性が確保されている。この構造は、絶縁電線aを出力端子dに接続した後、成形金型に設置し、電気絶縁ケーブルAの端末部の外周をハウジング材で包み込むように射出成形する方法により製造することができる。
【0036】
なお、上記実施形態では、制御システム用部品として車輪速センサを例にして説明したが、本発明の制御システム用部品の他の例としては、主体金具に載置した圧電素子に本発明の電気絶縁ケーブルAを電気的に接続し、その上で圧電素子及び電気絶縁ケーブルAの末端部の外周をPPS製のハウジング材で包み込むように射出成形した構成のノッキングセンサが挙げられる。
【0037】
参考例
先ず、以下に示す成分を表1〜2に示す割合(重量比)で配合し、高温ロールにて混合し、帯出しした試料片を熱プレスして、厚さ1mmのシートを形成した。形成されたシートに、加速電圧が120kGyないし180kGyの電子線を照射して架橋し樹脂組成物シートを作製した。
【0038】
(配合成分)
・熱可塑性ポリエステルエラストマ:
ハードセグメントがPBT、ソフトセグメントがポリテトラメチレングリコールであるポリエーテルタイプ。融点:168℃、硬度:40D
・熱可塑性ポリウレタンエラストマ:
ポリエーテルタイプ、JISA硬度:85±2A
・酸化防止剤: 2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン重合体:アミン−ケトン系酸化防止剤
・加水分解防止剤: 芳香族ポリカルボジイミドを主成分とする加水分解防止剤
・カーボン: 算術平均粒径が27nmのカーボン
・滑剤: モンタン酸部分ケン化エステルワックス
・架橋助剤: トリメチロールプロパントリメタクリレート
【0039】
上記のようにして作製した樹脂組成物シート上に、住友重機械社製射出成形機(SE18D)を使用して、PPSを、射出温度360℃、保持圧250Kgfで射出融着した後、
引張試験機(島津製作所製 AGS10kND)で、図3に示すように、樹脂組成物シートを引張速度50mm/minで引っ張り、剥離強度を測定した。表1〜2に、測定結果を示す。
【0040】
【表1】

【0041】
【表2】

【0042】
表1〜2に示すように、熱可塑性ポリエステルエラストマを50重量%以上含む樹脂組成物の架橋体はPPSとの剥離強度が大きい。この結果より、熱可塑性ポリエステルエラストマを45重量%以上含む樹脂組成物の架橋体からなるシース層を有する電気絶縁ケーブルは、PPS製ハウジングとの熱融着性に優れることが明らかである。中でも、熱可塑性ポリエステルエラストマが80重量以上であるNo.8〜10では、剥離強度が特に大きく、この樹脂組成物を用いることにより、PPS製ハウジングとの熱融着性に特に優れた電気絶縁ケーブルが得られることが示されている。
【符号の説明】
【0043】
A 電気絶縁ケーブル
a 絶縁電線
b シース層
c 中間層
d 出力端子
B 接続部
C 車輪速センサ
H ハウジング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
単芯もしくは複数芯の絶縁電線の外周にシース層が形成され、ポリフェニレンスルフィド樹脂との熱融着に用いられる電気絶縁ケーブルであって、シース層が樹脂組成物の架橋体からなり、前記樹脂組成物は熱可塑性ポリエステルエラストマを樹脂組成物に対し45重量%以上含むことを特徴とする電気絶縁ケーブル。
【請求項2】
前記樹脂組成物中の熱可塑性ポリエステルエラストマの割合が、80重量%を超えることを特徴とする請求項1に記載の電気絶縁ケーブル。
【請求項3】
前記熱可塑性ポリエステルエラストマが、結晶性ハードセグメントと非結晶ソフトセグメントとのブロック共重合体であり、前記非結晶ソフトセグメントが、ポリエーテル系重合体であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の電気絶縁ケーブル。
【請求項4】
前記樹脂組成物が、さらに熱可塑性ポリウレタンエラストマを含むことを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の電気絶縁ケーブル。
【請求項5】
シース層を形成する樹脂組成物が、窒素系難燃剤、又はエチレンビス臭素化フタルイミド、ビス(臭素化フェニル)エタン及びビス臭素化フェニルテレフタルアミドから選ばれる1種もしくは複数種からなる難燃剤で難燃化されていることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の電気絶縁ケーブル。
【請求項6】
ポリフェニレンスルフィド樹脂製ハウジングと、請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の電気絶縁ケーブルを有し、前記電気絶縁ケーブルの端末部が、前記ハウジングに熱融着していることを特徴とする制御システム用部品。
【請求項7】
ポリフェニレンスルフィド樹脂を、請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の電気絶縁ケーブル端末部を含む型内に射出成形してハウジングを形成し、前記ハウジングと前記電気絶縁ケーブル端末部を熱融着させて気密封止する工程を有することを特徴とする制御システム用部品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−267526(P2010−267526A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−118667(P2009−118667)
【出願日】平成21年5月15日(2009.5.15)
【出願人】(000004547)日本特殊陶業株式会社 (2,912)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】