説明

電気絶縁用フィラーの形態学的形状

ホスト樹脂マトリクスと高熱伝導性フィラーとを有する高熱伝導性樹脂。高熱伝導性フィラー(30)は、ホスト樹脂マトリクスと連続的有機−無機複合体を形成する。フィラーは、長さが1〜1,000nmであり、3〜100の平均アスペクト比を有する。高熱伝導性フィラーの少なくとも一部は、六方晶、立方晶、斜方晶、菱面体晶、正方晶、ウィスカー及びチューブのうちの1つ以上より選択される形態(31)を含んでなる。特に、フィラーの一部は凝集して2次構造を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、参照により本明細書に組み込まれているスミス(Smith)らにより2005年6月14日に出願された米国特許出願第11/152,983号「樹脂に配合された高熱伝導性材料(High Thermal Conductivity Materials Incorporated into Resins)」の一部継続出願である。
【0002】
本発明の分野は、特別の形態を持つ材料を含む、整列させられた高熱伝導性材料が配合された樹脂に関する。
【背景技術】
【0003】
いずれの形式の電気器具を用いても、導体を電気的に絶縁する必要がある。あらゆる電気及び電子システムのサイズを絶え間なく縮小させて合理化する取り組みについて、対応して、より優れ、より小規模な絶縁体及び絶縁システムを見出すことが要求されている。
【0004】
各種のエポキシ樹脂材料は、表面に容易に付着し得る強靭で可撓性のある電気絶縁材料であるというその実用的な利点の故に、電気絶縁システムで広範に使用されてきた。マイカフレーク及びガラス繊維のごとき在来の電気絶縁材料が、これらのエポキシ樹脂で表面塗布され及び接合されて、機械強度特性、耐化学薬品特性及び電気絶縁特性が向上した複合材料が作製される。在来のワニスは一部の高圧電気装置で引き続き使用されているが、多くの場合、エポキシ樹脂はこれに取って代わっている。
【0005】
良好な電気絶縁体は、将にその性質により、良好な断熱材でもあるが、このことは望ましくない。断熱作用は、特に空冷式電気装置及び部品のための断熱作用は、部品ばかりでなく装置全体としての効率及び耐久性を低下させる。最大の電気絶縁特性及び最小の断熱特性を有する電気絶縁システムを作製することが望ましい。
【0006】
電気絶縁体は、しばしば、絶縁テープの形で出現するが、絶縁テープ自体は各種の層を有する。これらの種類のテープには、紙層が共通して存在するが、紙層は界面で繊維層に結合されていて、どちらの層も樹脂で含浸される傾向がある。好ましい種類の絶縁材料はマイカテープである。マイカテープの改良は、米国特許第6,103,882号に教示されているような触媒マイカテープを含む。マイカテープは導体に巻き付けられて、極めて良好な電気絶縁を与える。この例を図1に示す。ここには、複数回巻かれた導体14からなるコイル13が示され、このコイルは、ここに示した実施例では、ベークライト化処理をした(bakelized)コイルとして組み立てられている。ターン絶縁体15は、繊維状材料、例えば、熱処理されたガラス又はガラス及びダクロン、から作製される。コイルの接地絶縁は、ベークライト化処理をしたコイル14の周囲に、1層以上の複合体マイカテープ16を巻き付けることによって与えられる。このような複合体テープは、例えばガラス繊維布又はポリエチレングリコールテレフタレートマットの柔軟性裏打シート18と組み合わされた、細かいマイカフレークの紙又はフェルトであり、マイカ層20は液体樹脂状結合剤によって結合されている。一般に電圧要件に応じて、複合体テープ16の複数の層がコイルの周囲に巻き付けられる。強靭な繊維状材料、例えばガラス繊維、の外側テープ21をコイルに巻き付けてもよい。
【0007】
一般に、マイカテープ16の多重層がコイルの周囲に巻き付けられるが、高圧コイルについては16以上の層が一般に使用される。次いで、樹脂がテープ層に含浸される。樹脂は、絶縁テープから独立して、絶縁体として使用することさえできる。都合の悪いことに、この量の絶縁体は、熱放散の複雑さを更に増大させるだけである。
【0008】
上記のように、主絶縁体は、フレーク又は小板状体の形状のマイカであり、これらは次に砕片又は紙として使用される。マイカは、絶縁体の巻き付け及び引き続く処理の間中、良好な機械強度を有するが、マイカを使用することに伴う1つの主な問題は、エポキシ等の含浸樹脂に対するマイカ表面の濡れ及び付着が不十分なことである。このことは、次に、樹脂硬化中に微小空洞を、そして高圧電気装置での使用中に界面層間剥離を、生じさせる。マイカ内の微小孔は、それらがマイカ紙内深く存在するため、樹脂の濡れ及び付着が特に不十分である。
【0009】
不十分な濡れ特性の故に、含浸樹脂及び樹脂内のフィラーを、マイカのこのような微小孔区域に、浸透及び付着させることは困難である。含浸樹脂及びフィラーのこの不十分な付着によって、熱伝導性を低下させる構造中の空隙並びにフィラーの移動及び損失を生じることがあり、結果として、マイカ絶縁体の熱伝導性を低下させる。また、この低い付着性は、微小孔形成をもたらし、これが、次に、絶縁体構造内での高圧下での部分放電を引き起こし、この結果、耐電圧が不十分となり、それにより電気装置の耐用年数が短縮される。
【0010】
必要なのは、より良好な種類のフィラー組成物である。従来技術による他の問題も存在し、その一部は更に読み進めることで明らかになろう。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記を考慮して、本発明と一致する方法及び装置は、高熱伝導性(HTC)含浸媒体を通じての光子の輸送をとりわけ促進して、HTC材料間の平均距離を光子平均自由行路長未満に短縮させる。これにより、光子散乱が低減して、熱源から遠ざかる光子のより大きな正味の流れ又は流束が生成する。樹脂は、多重層絶縁テープ等のホストマトリクス媒体に含浸される。
【0012】
高熱伝導性(HTC)有機−無機ハイブリッド材料は、分離2相有機−無機複合体から、分子アロイをベースとする有機−無機連続相材料から、そしてデンドリマーコア−シェル構造内において分離していない有機−無機界面を有する、分離有機デンドリマー複合体から、形成され得る。光子輸送を向上させ光子散乱を低減させる連続相材料構造は、構造要素の長さスケールを熱輸送に関与する光子分布よりも短くするか光子分布に釣り合わせることを保証するか、並びに/又は、例えば、マトリクスの構造秩序全体を向上させることによって及び/若しくは複合体内での界面光子散乱を有効に消滅又は低減させることによって、光子散乱中心の数を減少させることを保証することによって、形成され得る。連続的有機−無機ハイブリッドは、ポリマー又はネットワークセグメント長(典型的には、1〜50nm又はそれ以上)の水準又はそれ未満の寸法を有する無機、有機又は有機−無機ハイブリッドナノ粒子を、直鎖又は架橋ポリマー(熱可塑性物質を含む)及び熱硬化性樹脂に配合することによって、形成され得る。
【0013】
これらの多様な種類のナノ粒子は、密接に共有結合したハイブリッド有機−無機均質材料を形成するための反応性表面を含有する。相互に又はマトリクスポリマー若しくは反応性樹脂と反応して連続材料を形成し得る無機−有機デンドリマーにも、同様の要求が存在する。分離及び非分離有機−無機ハイブリッドの両方の場合に、ゾル−ゲル化学作用を使用して連続分子アロイを形成することができる。得られる材料は、在来の電気絶縁材料よりも高い熱伝導性を示し、未反応真空圧含浸樹脂として、そして、回転及び静電発電プラント並びに高圧(約5kV超)及び低圧(約5kV未満)の両方の電気装置、部品及び製品における電気絶縁用途を満足させる独立型材料として、利用されるときに、在来のマイカ−ガラステープ構造物における結合樹脂として、使用される。
【0014】
更に、HTCフィラーは、その1次構造及びそれらが凝集して2次構造を形成する方法の両方で、多様な形態学的形状を取りうる。1次構造は、六方晶、立方晶、斜方晶、菱面体晶、正方晶、ウィスカー及びチューブの1つ以上であり得る。これらは、それ自体で、高いアスペクト比の棒、回転楕円体、小板状体、円板及び立方晶として現れ、その形状は個別に又は組み合わせて使用され得る。これらの形状は独立した利点を有するが、2次構造が形成されたときに更なる利点が得られることがある。形成される2次凝集形状は、1つ以上の積重体(stack)、回転楕円体、スプレードスフィア(splayed sphere)、シート、樹枝状開始点及びパールネックレスであり得る。更に、サイズ分布と結び付けられると、より大きい1次形態がより小さい材料によって変性されて2次構造が形成され得る。
【0015】
有機ホスト材料の存在下でのナノ〜マイクロサイズの無機フィラーの使用に基づいた、所定の物理的特性及び性能特性を有する、設計された電機絶縁材料の形成は、有機ホストとの密接な界面を形成し得る粒子表面の製造を必要とする。このことは、化学基をフィラー表面にグラフトさせて表面をホストマトリクスと化学的又は物理的に適合させることによって達成され得るが、或いは、表面は、有機ホストと反応して粒子とホストとの間に共有結合を形成する化学反応性官能基を含有していてもよい。有機ホスト材料の存在下でのナノ〜マイクロサイズの無機フィラーの使用は、バルク誘電及び電気特性並びに熱伝導性に加えて定義された表面化学作用を備えた粒子の製造を必要とする。大半の無機材料は、形状及びサイズ等の構造的特徴と、各種の電気絶縁用途に適合し又は特性と性能との適正なバランスを有する複合体たり得るための特性とを、独立して選択することを許さない。このことは、適切なバルク特性並びに形状及びサイズ特徴を備えた粒子を選択し、次いで、電気絶縁用途に必要な複合体特性及び性能を更に制御するために、表面及び界面特性並びにその他の特性を変性することによって達成され得る。これは、粒子の適切な表面被覆によって、達成され得るが、これには、金属及び非金属無機酸化物、窒化物、炭化物及び混合系の製造並びに電気絶縁システムにおいてホスト材料として作用する適切な有機マトリクスと反応することができる反応性表面基を含む有機被覆が包含される。その結果生じるハイブリッド材料は、未反応の又は部分的に反応した複合体として有機樹脂と組み合わされたときに、マイカ−ガラステープ構造物中の樹脂として、他のガラス繊維、炭素繊維並びに重層型及び織物複合体において在来のマイカテープ構造物用の未反応真空圧含浸樹脂として、そして、回転及び静電発電装置並びに高圧及び低圧の両方の電気装置、部品及び製品での電気絶縁用途を満足させる独立型材料として、使用され得る。本発明で使用可能な有機−無機ハイブリッド樹脂としては、多面体型オリゴマーシルセスキオキサン(POSS)、オルトケイ酸テトラエチル(TEOS)及びオルトチタン酸テトラブチル(TBOT)並びに有機官能化無機化合物である関連モノマー及びオリゴマーハイブリッド化合物が挙げられる。
【0016】
本発明によるこれら及び他の目的、特徴及び利点は、ホスト樹脂マトリクス及び高熱伝導性フィラーを含有してなる高熱伝導性樹脂による詳細な実施態様によって提供される。高熱伝導性フィラーは、ホスト樹脂マトリクスと連続有機−無機複合体を形成し、長さが1〜1,000nmであり、3〜100、更に特別には10〜50、の平均アスペクト比を有するが、特定の粒子のアスペクト比は、この平均外であり得る。高熱伝導性フィラーの一部は、六方晶、立方晶、斜方晶、菱面体晶、正方晶、ウィスカー及びチューブの1つ以上より選択される形態からなる。
【0017】
特別の側面において、高熱伝導性フィラーの一部は凝集して2次構造を形成するが、この凝集体は化学又は物理結合によって保持される。2次構造間の相互連結は、ホスト樹脂マトリクスを通じて熱伝導を生じさせる。凝集2次構造は、積重体、回転楕円体、スプレードスフィア、シート、樹枝状星形及びパールネックレスのうちの少なくとも1つを形成する。そして高熱伝導性フィラーの最大50〜100重量%までが2次構造を形成する。また、高熱伝導性フィラーの5〜50%は、2次構造を形成しないか又は2次構造への限られた凝集をする。これらは凝集構造を架橋するように作用し得る。2次構造を形成しないフィラーは、2次構造を形成するHTCフィラーと異なる種類のフィラーである。それらは、例えば窒化ホウ素ベースというよりもアルミナベースであるというように、化学的に異なっていてもよく、例えば円板ではなくて棒であるというように、形態学的に異なっていてもよく、或いは、それらは、共反応性を制限するために表面処理されていてもよい。表面基は他の目的のために、例えば樹脂のより良好な共反応性のために、フィラー上に存在していてもよい。凝集したフィラーは、凝集を促進するために表面基をも有していてもよい。
【0018】
特別の実施態様において、高熱伝導性フィラーは、ナノフィラーで変性されたフィラーを含有してなる。これはナノ変性フィラー全体の5〜10重量%であり得る。同じホスト樹脂マトリクス内において多重の2次構造が形成され得る。2次構造の使用により、粘度を低下させ又は上昇させることができる。より小さい凝集体は、球のような形態がそうであるように、粘度を低下させ得る。高い充填密度を有する各種の形態との2モード及び多モード混合は、粘度を低下させ熱伝導性を上昇させるのに有用である。
【0019】
特定の実施態様において、HTCフィラーの少なくとも一部は、約50〜200nmの長さを有する六方晶BNである。六方晶の窒化ホウ素フィラーは凝集して積重体となり、より小さい六方晶BNフィラーは、より大きい六方晶BNフィラーを変性する。BNを補完するフィラーは棒形状である。
【0020】
別の側面において、本発明は、ホスト樹脂ネットワーク並びに第1のクラス及び第2のクラスの無機高熱伝導性フィラーを含有してなる、連続的有機−無機樹脂を提供する。第1のクラスは、ホスト樹脂ネットワーク中に均一に分散されて、ホスト樹脂ネットワークと実質的に完全に共反応し、第2のクラスは、ホスト樹脂ネットワーク中に不均一に分散され、凝集して2次構造が形成される。高熱伝導性フィラーは、1〜1,000nmの長さ及び3〜100の平均アスペクト比を有し、酸化物、窒化物及び炭化物のうちの少なくとも1つから選択される。高熱伝導性フィラーの少なくとも一部は、六方晶、立方晶、斜方晶、菱面体晶、正方晶、ウィスカー及びチューブから成る群より選択される形態を含む。特別な場合において、第2のクラスのフィラーに対する第1のクラスのフィラーの比は、重量で、3:1〜10:1である。第2のクラスのフィラーは、ある場合には、自己凝集することがあり、また、少なくとも部分的に、外部機構によって凝集されてもよい。
【0021】
いくつかの実施態様において、ホスト樹脂ネットワークは、マイカ紙に含浸される。このような場合、第2のクラスのフィラーは、マイカ紙の空隙内で、より高濃度で凝集する。他の実施態様において、高熱伝導性フィラーは、表面処理されて、ホスト樹脂ネットワークとの実質的に完全な共反応性を可能にする表面官能基が導入されている。ある実施態様において、連続的有機−無機樹脂は、最大60体積%の高熱伝導性フィラーを含有してなる。
【0022】
一例において、第1のクラスのフィラーは窒化ホウ素であり、第2のクラスのフィラーはアルミナである。特に良好な例は、有機−無機樹脂組成物全体の15〜30重量%を構成する窒化ホウ素及び3.5〜10重量%のアルミナを含む。
【0023】
本発明の他の実施態様も存在するが、これらは、詳細な説明を更に読むことによって明らかとなる。
【0024】
本発明は、以下の図面を参照する実施例によって、更に詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】固定子コイルの周囲に巻き付けられている絶縁テープの使用を示す。
【図2】本発明の一実施態様によるスプレードスフィアを示す。
【図3】本発明の一実施態様によるパールネックレス2次構造を示す。
【図4】本発明の一実施態様によるナノ変性メソ粒子を示す。
【図5】本発明の充填樹脂中を移動する光子を示す。
【図6】固定子コイル中の熱の流れを示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
高熱伝導性(HTC)複合体は、2相有機−無機ハイブリッド材料であるフィラーと組み合わされた樹脂ホストネットワークを含有してなる。有機−無機ハイブリッド材料は、2相有機−無機複合体から、分子アロイをベースとする有機−無機連続相材料から、そしてデンドリマーコアシェル構造から非分離の有機−無機界面を有する分離有機デンドリマー複合体から、形成される。構造要素の長さスケールを、熱輸送に関与する光子分布よりも短くするか又は光子分布に釣り合せることによって、光子輸送は強化され、光子散乱は低減される。
【0027】
2相有機−無機ハイブリッドは、無機マイクロ、メソ又はナノ粒子を直鎖又は架橋ポリマー(熱可塑性物質)及び熱硬化性樹脂に配合することによって形成され得る。ホストネットワークは、ポリマー及び他の種類の樹脂を含むが、その定義を下に示す。一般にホストネットワークとして作用する樹脂は、粒子と相溶性であって、必要ならば、フィラー表面に導入された基と反応することができる樹脂であれば、いずれでもよい。ナノ粒子の寸法は、典型的には、ポリマーネットワークセグメント長の水準又はそれ未満である。例えば1〜30nmである。無機粒子は、共有結合したハイブリッド有機−無機均質材料を形成するための反応性表面を含有する。粒子は、酸化物、窒化物、炭化物、並びに酸化物、窒化物及び炭化物のハイブリッド化学量論的及び非化学量論的混合物であり、その更なる例を下に示す。
【0028】
無機粒子は、表面処理して、ホストネットワークとの反応に関与できる各種の表面官能基を導入してもよい。表面官能基としては、これらに限定されるわけではないが、ヒドロキシル、カルボキシル、アミン、エポキシド、シラン及びビニルの各基が挙げられる。これらの基は、湿式化学法、非平衡プラズマ法、化学蒸着及び物理蒸着、スパッタイオンプレーティング並びに電子及びイオンビーム蒸着法を使用して付加され得る。
【0029】
分離有機デンドリマー複合体は、相互に又は樹脂マトリクスと反応させて単一材料を形成させてもよい。デンドリマーの表面は、デンドリマー−デンドリマー反応又はデンドリマー−有機マトリクス反応のどちらかを発生させる、上述したものに類似した反応基を含有し得る。デンドリマーは、無機コア及び課題の反応基を含有する有機シェルを有する。一般的なゾル−ゲル化学作用に関与するものに類似した無機反応に関係し得る反応基、例えばヒドロキシル又はシラン基、を含有する無機シェルを備えた有機コアを有していてもよい。
【0030】
非分離有機−無機ハイブリッドの使用に関して、ゾル−ゲル化学を使用して連続分子アロイを形成できる。水性及び非水性反応が関与するゾル−ゲル化学作用を使用することができる。有機−無機ハイブリッドの形成のためのその他の化合物としては、多面体オリゴマーシルセスキオキサン(POSS)、オルトケイ酸テトラエチル(TEOS)及びオルトチタン酸テトラブチル(TBOT)並びに有機官能化無機化合物である関連モノマー及びオリゴマーハイブリッド化合物が挙げられる。POSSの例において、分子はR−SiO1.5の構成単位の周囲に構築され、ここで、基Rは、他の有機化合物及びホストネットワークと相溶化し及び/又は反応するように、選択されている。ベース化合物は、組み合わせてポリマーセグメント及びコイル構造のサイズに釣り合った、より大きい分子を生じさせてもよい。POSSは、有機−無機ハイブリッドを生成するために使用でき、熱伝導性を始めとする特性を制御するために既存のポリマー及びネットワーク中にグラフトしてもよい。この材料はAldrich(商標)Chemical Co.、Hybrid Plastics(商標)Inc.及びGelest(商標)Inc.等の供給者から入手できる。
【0031】
上述したように、光子散乱を低減するために材料の構造形態を制御することが重要である。これは、そのマトリクスが高い熱伝導性を示し、この効果を維持するのに十分な粒径及び樹脂との界面特性を保証し且つ光子散乱を低減するための長さスケール要件を満たすことが知られている、ナノ粒子を使用することによって、促進される。短期及びより長期の両方の周期性を有する反応デンドリマー格子並びにホスト樹脂、例えば液晶エポキシ及びポリブタジエン、から形成され得るはしご形又は秩序化ネットワーク構造を始めとする、より高度に秩序化された構造の選択も、このことに利益をもたらす。
【0032】
一側面において、本発明は、フィラーが高熱伝導性(HTC)粒子であり、その少なくとも一部が特定の形態を有する、充填樹脂を提供する。高いアスペクト比を持つ粒子は、低減された光子散乱によってその長さに沿って熱を伝導する傾向がある。しかしながら、熱伝導を始めとする物理的特性は、粒子の特定の形状又は特定の形状の組み合わせを使用することによって向上され得る。これらの形状は、使用される個々の粒子のレベル又は量に影響を与え得るか、或いは、それらはある形状が組み合わされて凝集2次構造を形成する傾向がある故に、影響を与え得る。ある場合には、粒子の形状は、その個々の形状及び凝集構造の両方によって、物理的特性を向上させ得る。
【0033】
粒子の個々の形状は、高いアスペクト比の棒、回転楕円体、小板状体、円板及び立方形状であり、参照により本明細書に組み込まれている、スミス(Smith)らによる米国特許出願第11/152,985号、「樹脂内で整列した高熱伝導性材料(High Thermal Conductivity Materials Aligned Within Resins)」で論じられている。加えて、個々の粒子の構造は、以下の、六方晶、立方晶、斜方晶、菱面体晶、正方晶、ウィスカー及びチューブより選択され得る。これらの別個の形態を有するHTCフィラーの量は、使用されるHTCフィラーの量全体までである。加えて、これらの形態の混合も使用することができ、これにより、相互連結を促進し、局在化構造を与えることができる。
【0034】
形態の種類の組み合わせの数は多数であるが、棒及び/又は球形態と組み合わされた六方晶小板状体形態が補完的であることが見出されている。混合形態はサイズ分布も有するので、例えば、六方晶形状はマイクロ、メソ及びナノ範囲で示され得る。
【0035】
形態を論ずるにあたって、連結性/集塊と粘度との間のバランスが必要である。一般的に言えば、高い連結性及び低い粘度、例えば粒子が凝集して2次構造を形成するときに概ね上昇する30〜50センチポイズの粘度、を有することが好ましい。
【0036】
粒子が合一するとき、その一部は凝集して2次構造を形成する。形態の無作為な選択により、積重体、シート、回転楕円体、スプレードスフィア、樹枝状星形及びパールネックレスを始めとする一連の超構造形状又は2次構造が産み出される。積重体、シート及び樹枝状星形のような或る2次形状は、或る基本の形態を主として使用して仕立てることができる。例えば、積重体は円板形状を使用して、シートは平行な小板状体を使用して、樹枝状星形は棒/ウィスカー/チューブを使用して形成することができる。回転楕円状凝集体は、いずれの小粒子からも形成できるが、主にナノ及びメソ小板状体から形成される。スプレードスフィアは、多重の積重体等から形成された回転楕円体として始まり、分離して、分離によって生じた間隙は次に他のHTCフィラーで充填される。
【0037】
2次構造は、それ自体を通じて、分散粒子よりも遥かに大きい速度で熱を伝導する。加えて、2次構造は、粘度及び非凝集体への架橋熱リンクを増加させることができ、誘電体バリアを形成することさえできる。積重体のような或る2次構造は、非平面充填で有用である。粒子フィラーは横剪断を受けるので、或るレベルの剪断に耐えられる2次形態が作製され得る;例えば平行小板状体の積み重ね(parallel platelet stacking)は、端間(end−to−end)充填よりも高い剪断強度を有する。平行積み重ねの表面接触度を考えると、これは2次構造の熱伝導性を向上させる。
【0038】
特定の種類の2次構造は、変性1次構造である。これは、より大きいスケールを有する1次形態が、より小さいスケールを有する同様の又は異なる形態によって、変性される場合である。例えば、六方晶マイクロ又はメソサイズ粒子は、その上に配置された数十又は数百のナノサイズの六方晶、棒及び/又は回転楕円体を有し得る。
【0039】
いくつかの2次構造は他のいくつかの2次構造と相互作用して3次構造を形成するが、3次構造の例は、回転楕円体の紐状集合であり、これは、上で議論したパールネックレス形状である。非凝集フィラーが2次構造を補完する場合に、擬似3次構造も形成され得る。例えば、パールネックレスの範疇とするには余りに離れすぎている一連の凝集回転楕円体は、棒形状フィラーの分散によって、連結され得る。平行積重体の場合、追加の相互連結を形成するために、積重体に対して垂直な大型棒形状フィラーを有することが有益である。
【0040】
図2〜図4は、これまで議論した各種の2次構造31を示す。図2を参照すると、ここでは棒として示されているが、円板でもあり得るフィラー材料30は、スプレードスフィアを形成する。ある場合には、追加の粒子が、一般的にはスプレードスフィア30を形成する粒子よりも小さいのだが、スプレードスフィア内の空間を充填して、より高密度の2次構造を生成する。図3において、2次構造31は、棒形状フィラーの連結で構成されたパールネックレスである。
【0041】
図4は、ナノ変性35されたメソフィラー33の一例である。この図で、メソ構造は、メソ六方晶BN粒子の出現の仕方に類似した六方晶状フィラーである。ナノ変性35は、メソ構造に類似した形態を有していてもよく又はその独自の形態を有していてもよい。変性は、隣接するメソフィラーを架橋37するのにも役立つ。
【0042】
特定の形態を形成するのに有用な特定の種類のフィラーは、窒化ホウ素である。窒化ホウ素は、複数の異なる結晶学的及び形態学的形状で存在するが、その程度は、種々に調整することができる。粒子の形状は基礎となる結晶学に直接関連しているので、結晶形状は基礎となる単位セル構造を反映する。単位セル構造は、当技術分野で公知の熱力学的制約から生じる。単結晶粒子形状は、通常、対応する結晶学に直接関係するが、他の形状も可能である。本発明により考慮される形状としては、六方晶及び立方晶が挙げられ、これらは、高温化学プロセスによって作り出される。低温化学プロセスによって作製され得る他の形状としては、斜方晶、菱面体晶及び正方晶が挙げられる。更に、極めて細いフィラメント状結晶形である窒化ホウ素のウィスカーも商業的に製造されてきた。窒化ホウ素ナノチューブも、より大きなサイズの粒子から、衝撃ボールミル機械プロセスによって、製造されている。更に特殊処置によって、窒化ホウ素メソ又はマイクロ粒子は、凝集させて、球直径が典型的には10〜20ミクロンの範囲にある回転楕円体形状にすることができる。
【0043】
BNの好ましいサイズ範囲は、形態形状及び所望の任意の2次構造に依存する。50〜200nmの長さ範囲の六方晶及び立方晶BNは、ホスト樹脂マトリクス及び多くの多孔性媒体に完全に浸透するが、100nm〜数百ミクロンの六方晶BNは、より容易に相互に積層して、2次積重体構造を形成する。これらの2次構造は、より大きい範囲のBN粒子及びより高い濃度BNを使用することによって、より有利に形成される。六方晶BNは、良好な剪断弾性係数を有するが、これにより、平面においてそれが応力に屈する容易さが説明される。それは柔軟でもあり、このことは低い圧縮及び剪断弾性係数値に表われている。それは、本来は円板であり、良好な熱伝導性と共に強い誘電体バリア特性を有する。
【0044】
窒化ホウ素は、アルミナ等の他の材料と組み合わせることもできる。BNのアルミナに対する比は変化し得るが、最適には約50重量%である。この種類の混合は、変性小板状体を形成し得る。
【0045】
各種の形態形状は、BNに各種の物理的特性を付与し得るが、粒子は、一般に、良好な電気的及び熱的特性、即ち、非常に高い誘電強度及び非常に高い熱伝導性を保持する。このことが、そのすべての形状において、それを電気及び関連用途で使用される絶縁材料の製造に有用なものにしている。現在知られているBNの結晶形すべてが良好な電気及び誘電特性を有する。
【0046】
BN材料を包含する複合材料の熱伝導性は、例えば外部電場における、これらの粒子の配向によって、著しく向上され得る。このような分野では、粒子配列及び凝集構造は、最終特性に影響を及ぼし、例えば伸張パールネックレス及び樹枝状形態は、高アスペクト比粒子及び低アスペクト比粒子の双方から、それらがクラスタ化束(clustered bundle)又は棒伸張構造を形成するときに生じうる。
【0047】
テープ又は多孔性媒体に関しては、2次構造を形成する粒子を空隙区域に集合させることが望ましい。マイカテープ等の多孔性媒体を処理するには、これらの領域に2次構造を形成させることが望ましい。2次構造は、空隙領域において、十分なナノフィラー濃度で、自己集合しやすい。これはマイカ紙における、又は参照のために本明細書に組み込まれている、Smithらによる米国出願第11/396,990号、「HTC材料を充填した複合絶縁テープ(Composite Insulation Tape with Loaded HTC Materials)」に記載されているようなバックコーティングにおける、事前播種によって行なうことができる。空隙領域に集合する傾向のある粒子及び粒子クラスタは、ナノ〜メソスケール範囲内にある傾向がある。
【0048】
充填樹脂は、回路基板及び絶縁テープ等の各種の産業における接合樹脂として、使用され得る。特定の種類の絶縁テープは、発電機分野で使用されるマイカ−ガラステープである。これらの種類のテープにおいて、樹脂は、当技術分野で知られているように、接合樹脂として又は含浸樹脂として使用され得る。充填樹脂は、回転及び静電発電装置部品における電気絶縁用途を満足させるために、テープを用いない発電機分野でも使用され得る。
【0049】
テープは、電気用品に適用する前又は後に、樹脂で含浸することができる。樹脂含浸技術としては、以下で更に議論するVPI及びGVPIが挙げられる。VPIでは、一旦、テープを巻き付けて含浸し、圧縮する。一旦位置決めされると、圧縮テープ中の樹脂は硬化されて、これにより、HTC材料の位置が効果的に固定される。いくつかの実施態様において、樹脂は、当業者に明らかであるが、2段階プロセスで硬化される。しかしながら、充填されたHTC材料の最適な圧縮には、圧縮段階中に完全に硬化しない樹脂が好都合である。
【0050】
図5は、本発明の一実施態様を示す。ここでは、樹脂マトリクス32に充填されたHTC材料30を示す。マトリクス中を移動する光子34は、平均行路長nを有し、これは光子の平均自由行路である。この行路長は、樹脂マトリクスの正確な組成に応じて変化し得るが、エポキシ樹脂等の樹脂では、通常、2〜100nm、更に典型的には5〜50nm、である。従って、充填HTC材料間の平均距離は、平均して、この距離未満であるべきである。HTC材料間の距離は、テープの厚さ方向対横方向で変化し得るが、間隔を最適化する必要があるのは、通常、厚さ方向であることに注目されたい。
【0051】
光子34は、樹脂32中を移動するときに、埋め込まれたHTC材料30に沿って通過する傾向がある。これにより、未処理のHTC材料が10〜1,000W/mKの熱伝導性を有するのに対して樹脂が約0.1〜0.5W/mKであるので、局所的な光子流量が増加する。光子は充填されたHTC材料に沿って通過するので、材料間の距離がn未満である場合に、光子36は、次のHTC材料まで通過する。従って、HTC材料は相互連結ネットワークを形成する。図5は、理想化された行路を示す。実際、光子が樹脂とHTC材料との間を通過するときに光子散乱があるだろうが、材料間の距離が短くなればなるほど、そしてHTC材料と樹脂との間の光子伝播特性の一致がより良好であればあるほど、散乱は、より少なくなる。
【0052】
樹脂に充填されたHTC材料の量は、実際にかなり少なくてもよく、図5に示すように、例えば約10%であり得る。充填HTC材料間の平均距離、即ち、長さスケールは、従って、nよりも僅かに大きいことがあるが、大部分はnよりもなお小さく、従って、本発明の実施態様に含まれる。詳細な実施態様において、次のHTC材料からの距離がn未満である材料の割合は、50%を超え、特定の実施態様では75%を超える。特別の実施態様では、HTC材料の平均長は、nより大きく、これにより光子輸送が更に促進される。
【0053】
nが短くなればなるほど、充填HTC材料の濃度は高くなり、反対に粒径が大きくなればなるほど、必要なHTC材料は少なくなる。特定の実施態様は、樹脂及びフィラーの総体積に基づいて5〜60%の充填HTC材料を使用し、更に特定の実施態様では25〜40%である。樹脂がテープに含浸されるとき、樹脂は、テープ繊維と基材との間の間隙を満たす。しかしながら、この時点でのテープ内でのHTC分布は、しばしば、最適化されておらず、nよりも大きいHTC材料間平均距離を有することさえあり得る。本発明の実施に当たっては、次に、樹脂含浸テープを圧縮して、充填HTC材料間の距離を短縮する。
【0054】
単一のHTCフィラー材料は、このように使用して、ホストマトリクス内の熱経路を独立して連結するだけでなく、凝集2次構造を連結する。凝集2次構造は高い熱伝導性を有するが、それが凝集体で形成されているため、凝集体を形成する物質は、しばしば、粒子間では著しく低下した濃度を有する。凝集体自体は、nより長い距離で隔てられていることが多い。非凝集フィラー又は限定凝集フィラー(例えば1〜5重量%)を散在させることによって、それらは、凝集2次構造間でマトリクスを架橋するように、作用し得る。限定凝集体は、メソ及びナノスケールであり得る非常に小さい凝集体である。非凝集体に対する凝集フィラーの比は、より高く、重量で、3:1〜10:1である。
【0055】
充填された樹脂がテープに含浸されつつあるとき、テープの繊維又は粒子は、特に樹脂が30%以上フィラーである場合に、HTC材料の一部を遮断するように作用する。しかしながら、テープを圧縮することによって逆のことが起こり、HTC材料が全体構造の不動部分に付着するときに、より多くのフィラーがテープ内に捕捉される。HTCフィラーは、相互に固定されることさえある。所与の実施態様において、フィラーが樹脂マトリクスとは反応しないことが示唆されてきたが、しかしながら、いくつかの実施態様において、フィラーは、事実、樹脂と共有結合を形成して、より均質なマトリクスを形成する。均質なマトリクスにおいて、フィラーに結合された樹脂分子は、圧縮中に、未結合樹脂分子よりも良好に保持される。
【0056】
樹脂は、複数の産業で使用され、多くの用途を有する。樹脂の各種の特性は、その用途だけではなく、それらと共に使用される製品の品質及び効率にも、影響を及ぼす。例えば、樹脂が電気絶縁用途に使用されるとき、その誘電強度及び耐電圧性は、熱安定性及び耐熱性がそうであるように、高いものである必要がある。しかしながら、しばしば、これらの目的とは反対に、樹脂は、通常、低い熱伝導性も有する。本発明は、樹脂及びそれらが導入される絶縁系の各種の物理的特性の均衡を保って、一方では、十分な、向上すらされた主要な物理的特性、例えば誘電強度、耐電圧性、熱安定性及び耐熱性、機械的強度及び粘弾性応答、を維持しながら、在来の電気絶縁材料よりも高い熱伝導性を有する系を産み出す。熱的及び機械的サイクル効果によって引き起こされたストレスに起因する層間剥離及び微小空洞形成は、減少又は排除される。本明細書で使用するとき、樹脂という用語は、変性エポキシ、ポリエステル、ポリウレタン、ポリイミド、ポリエステルイミド、ポリエーテルイミド、ビスマレイミド、シリコーン、ポリシロキサン、ポリブタジエン、シアン酸エステル、炭化水素等並びにこれらの樹脂の均質ブレンドを始めとする全ての樹脂及びエポキシ樹脂を指す。樹脂のこの定義は、架橋剤、促進剤並びに他の触媒及び加工助剤等の添加剤を含む。或る樹脂、例えば液晶熱硬化性物質(LCT)及び1,2−ビニルポリブタジエン、は、低分子量特性と良好な架橋特性とを兼ね備えている。樹脂は、ヘテロ原子を含み又は含まない炭化水素等の有機マトリクスから成り立っていてもよく、ケイ酸塩及び/又はアルミノケイ酸塩成分を含有する無機マトリクスから成り立っていてもよく、有機及び無機マトリクスの混合物から成り立っていてもよい。有機マトリクスの例としては、必要に応じて無機粒子表面に導入された反応基と反応し得る、ポリマー又は反応性熱硬化性樹脂が挙げられる。架橋剤を樹脂に添加して最終架橋ネットワークの構造及びセグメント長分布を操作することも可能であり、このことは熱伝導性にプラスの効果を与え得る。この熱伝導性の向上は、他の樹脂添加剤、例えば触媒、促進剤及び他の加工助剤による変性によっても得られる。或る樹脂、例えば液晶熱硬化性物質(LCT)及び1,2−ビニルポリブタジエン、は、低分子量特性と良好な架橋特性とを兼ね備えている。このような種類の樹脂は、そのサブ構造のミクロ及びマクロ秩序が向上していて、これが、改善された光子輸送の結果として熱伝導の向上をもたらし得るので、熱をより良好に伝導する傾向がある。光子輸送が良好であればあるほど、熱伝達もより良好である。
【0057】
本発明の高熱伝導性フィラーが樹脂と混合されるとき、それらは、樹脂とフィラーとの間に界面がないという点で連続的な生成物を、形成する。ある場合には、フィラーと樹脂との間に共有結合が形成される。しかしながら、連続というのは、やや主観的であり、観察者が使用するスケールによって変わる。マクロスケールでは、生成物は連続的であるが、ナノスケールではフィラーと樹脂ネットワークとの間になお別個の相があり得る。従って、樹脂と混合する高熱伝導性フィラーに言及するとき、それらはマクロスケールでは連続的な有機−無機複合体を形成するが、マイクロスケールでは同じ混合物をハイブリッドと呼ぶことができる。
【0058】
上述のように、充填された樹脂は、回転及び静電発電装置部品における電気絶縁用途を満足させるために、テープを用いない発電機分野で使用され得る。発電機における高熱伝導性材料の使用は、多様である。固定子コイル内には、設計を最適化するために高い熱伝導性を有しなければならない接地壁以外の構成要素材料がある。同様に、コイルと連結された他の構成要素は、熱除去を最大限にする。固定子設計の改良は、発電機の効率を最大化できるようにロータ設計の改良を行なうことを要求している。
【0059】
本明細書に記載した高熱伝導技術が固定子において適用できる箇所、構成要素及び材料の例としては、素線間絶縁体、内部コロナ保護(ICP)システム、外部コロナ保護(OCP)システム、パッキング及びプレストレスト・ドライビング・ストリップ(PSDS−上部リップルバネ)を始めとする底部、中央及び上部フィラー;側部フィラー、積層体、及び側部PSDS、コイル中央セパレータ又はソード、コイル転位フィラー、固定子ウェッジ、コア絶縁体、ダイヤモンドスペーサ、ブレース又はブラケット、エンドワインディング接合樹脂及び圧縮式ギャップフィラー、コネクタ絶縁体、平行リング絶縁体及び平行リング支持構造が挙げられる。ロータにおいて、例としては、セル又はスロットライナー、ターン間絶縁体、ターン及び接地絶縁体が挙げられ、一体型エンドキャップ絶縁体は、ラジアルピン及びリード並びにスロット上部パッカー即ち「U」を遮断する。
【0060】
明確にするために、固定子コイル中の熱流11、12の断面図を示す図6を、参照する。12は、接地壁中の主たる流れである。本図によって描かれた固定子コイルは、他の部品の中でも、銅素線5、転位された素線6、下部、中央、及び上部フィラー4、接地壁絶縁体7、並びに中央セパレータ8を含む。
【0061】
上記の構成要素又は材料は、当業者が精通している積層化、押出、成形及びその他のプロセスを始めとする各種の手段によって、生産することができる。固定子コイルで使用される構成材料は、銅及び絶縁体である。銅は、一般に絶縁され、組み立てられ、ベークライト化処理をしたコイル又は積重体に変換されている素線の形をとっている。ベークライト化処理をしたコイルは、接地壁絶縁体によって絶縁されるが、それに結合された電気ストレス制御層がある。固定子コイルの熱伝導性に影響を及ぼす主要な構成要素は、接地壁絶縁体であるが、他の構成要素も同様に改良されることによって利益を与える。例えば、固定子コイルの構築で利用されるストレス制御及び他の系は、典型的には、銅から固定子コアまでの絶縁体厚さの10〜20%であり得る。一部の例では、材料に構造的変化を導入することによって熱及び電気伝導性を所望の値に調整することが提案される。
【0062】
更なる例として、内部ストレス制御層は、直接又は抵抗を介して銅に連結されていてもよく銅から絶縁されていてもよい低伝導性層から、成っていてもよい。このような例では、低伝導性層が施される前に、ベークライト化処理をしたコイル表面に絶縁層が施されてもよい。接合又は空隙区域を充填するための表面平滑化の目的で、絶縁テープ又はシートを、ベークライト化処理をしたコイルに、施してもよい。次に、低伝導性層の後に、要求された特性を有する材料の単一の又は複数の層を追加してもよい。これはストレス制御又は絶縁等の電気的目的のためであってよい。
【0063】
接地壁が施された後に、コアまでの良好な接続を確保するために一又は複数の低伝導性層がコイル表面に施され、コア積層体の短絡を回避しながら、部分放電及びバーバウンス効果を防止する。この低伝導性層がその上に施された絶縁層を有する用途は、特許文献にも記載されている。従って、外部コロナ保護系は、低伝導性、絶縁及び部分絶縁層を含みうる。
【0064】
固定子端部領域において電気ストレスを制御するために、コイル直線部の端部に、そしてエンドワインディング又はらせん状領域内に、ストレス制御層が施される。これは、通常、1つ又は複数の層に、場合によっては階段状層に施された炭化ケイ素充填テープ又は塗料より成る。それは、絶縁層又は比較的高い抵抗率の一又は複数の層と、組み合わされることもある。本用途では、高熱伝導性材料は、系の熱伝導性を著しく向上させる。高熱伝導性材料を使用する時点の選択は、機械設計並びに通常の絶縁材料及び接地壁の熱伝導特性によって変わる。
【0065】
端部領域では、ガラステープ及び収縮材料が、強化等の各種の機能のために、そして機械的ブレーシングを向上させるために、ある種の設計で使用される。更に、エンドワインディング領域の機械的ブレーシングは、樹脂、ダイヤモンドスペーサ、フェルトや布等の適合する含浸材料、並びにバッグ、袋又はホース等の樹脂を充填できる材料の使用を含む。これらの構成要素及び材料では、高熱伝導性材料の使用は、系の熱伝導性を著しく向上させる。高熱伝導性材料を使用する場所及び時点の選択は、機械の設計及び通常の絶縁材料の熱伝導特性に依存する。
【0066】
直接冷却ロータでは、冷却ガス又は媒体が、銅と直接接触している。直接冷却には、2つの主要な設計−半径方向冷却及び軸方向冷却がある。エンドワインディング領域は、異なる冷却方法を有し得る。半径方向冷却設計において、ガスは、各スロット下部のサブスロット又は中空ターンに沿って、通過する。ガスは、次いで、固体銅ターンの冷却スロットを半径方向に通過して、スロット上部から流出する。軸方向冷却設計では、ターンは中空であり、通常、断面は正方形又は長方形である。ガスは、各端部にて中空導体の側壁の孔から入り、銅管の内側を通過して、ロータ中心の銅の孔から半径方向に流出する。
【0067】
ロータのこれらの両設計で、高熱伝導性材料の使用の設計に対する効果は重要である。実際に、間接冷却装置において更に重要になり得る。ロータコイルは、典型的には、スロットセル又は角のどちらかの形の成形エポキシガラス積層体によって、接地絶縁される。ターン間絶縁体は積層体又は角であり得る。本明細書で記載した方法の使用によってこのような構成要素を高熱伝導性にすることができることが認識できる。
【0068】
本発明の一実施態様は、高熱伝導性(HTC)材料を樹脂に加えて樹脂の熱伝導性を改善する。いくつかの実施態様において、樹脂の残りの物理的特性は高熱伝導性と引き換えに低下するが、他の実施態様では、残りの物理的特性のいくつかはそれほど影響を受けず、一部の特別の実施態様では、このような他の特性が改善される。特別の実施態様において、HTC材料は、LCTエポキシ等の、秩序化サブ構造を有する樹脂に添加される。このような種類の樹脂に添加するとき、使用するHTC材料の量は、秩序化サブ構造を持たない樹脂における使用と比べて減少させることができる。
【0069】
樹脂に充填されたHTC材料は、樹脂と物理的及び/又は化学的に相互作用し又は反応して熱伝導性を改善するために充填できる、各種の物質からなる。HTC材料は、一実施態様においてはデンドリマーであり、別の実施態様においては、3〜100又はそれ以上の、更に特別には、10〜50の範囲の、アスペクト比(平均縦寸法に対する平均横寸法の比)の粒子を始めとする、定義されたサイズ及び形状を有するナノ又はマイクロ無機フィラーである。
【0070】
関連実施態様において、HTC材料は定義されたサイズ及び形状分布を有していてもよい。両方の場合において、フィラー粒子の濃度及び相対濃度は、バルク連結(又はいわゆる伝播)構造が実現されるように、選択される。この構造は、体積充填を伴い又は伴わずに高い熱伝導性を付与して向上した熱伝導性を備えた構造的に安定な分離2相複合体を実現する。別の関連実施態様において、HTC材料の配向は熱伝導性を向上させる。更に別の実施態様において、HTC材料の表面コーティングが光子輸送を向上させる。これらの実施態様は、他の実施態様と独立していてもよく、一体的に関連付けられてもよい。例えば、デンドリマーは、熱硬化性及び熱可塑性の材料等の、高度に構造化された他の種類の材料と組み合わされる。それらは樹脂マトリクス中に均一に分散され、HTC材料が光子散乱を低減させ光子のためのマイクロスケール架橋を提供して、HTC材料間の良好な熱伝導性界面を生成する。高度に構造化された物質は、熱伝導性が一方向又は複数の方向に沿って向上するように整列されて、局所的又はバルク異方性電気絶縁材料のどちらかを生じる。別の実施態様において、HTCは、定義されたバルク特性を有するフィラーに物理的又は化学的に結合される高熱伝導性の金属酸化物、炭化物又は窒化物並びに混合系により、低い熱伝導性フィラーの表面をコーティングすることによって達成され、このような結合は、化学蒸着及び物理蒸着等のプロセスによって、そしてプラズマ処理によっても、達成される。
【0071】
関連実施態様において、HTC材料は、望ましくない微視的な界面、変わりやすい粒子の濡れ及び微小空隙形成が実質的にない、樹脂との本質的に均質な混合物を形成する。これらの均質材料は、在来の電気絶縁材料における光子波長又は光子平均自由行路のどちらかより短い長さスケールで非分離である連続相材料を、形成する。一部の実施態様において、意図的な界面を樹脂構造に配置して、絶縁破壊を制御することができる。絶縁材料において、正しい条件を与えれば、絶縁破壊が発生する。2相系における界面の性質及び空間分布を制御することによって、絶縁破壊強度及び長期耐電性を向上させることができる。誘電強度の向上は、一部には、高密度化の上昇、微小空隙の除去及び高レベルの内部機械的圧縮強度の故に起こる。
【0072】
本発明の樹脂は、マイカテープ並びにガラス及びポリエステルテープ等のような他の複合体構造の含浸に、使用され得る。電気絶縁に典型的に使用される標準マイカ(白雲母、金雲母)に加えて、黒雲母並びに、カオリナイト、ハロイサイト、モンモリロナイト及びクロライト等の、複数の他のマイカ様アルミノケイ酸材料もある。モンモリロナイトは、ポリマー樹脂、金属カチオン及びナノ粒子を容易に挿入して高い誘電強度複合体を与える格子を、その構造内に有する。
【0073】
他の実施態様において、本発明は、絶縁が望ましい表面での連続コーティングとして使用される;「連続コーティング」がマクロスケール用途の説明であることに注目されたい。連続コーティングにおいて、樹脂は、テープ又は他の基材を必要とせずに、材料上にコーティングを形成する。基材と共に使用されるとき、HTC材料は、多様な各種の方法によって、樹脂と組み合わせることができる。例えば、HTC材料は、樹脂が基材に添加される前に添加することができ、又は、HTC材料は、樹脂がそれに含浸される前に基材に添加することができ、又は、先ず樹脂を続いてHTC材料を添加し、次に樹脂の追加の含浸を行なうことができる。他の製造及び処理方法は、当業者に明らかであろう。
【0074】
一実施態様において、本発明は、より高い熱伝導性を与え、また、他の主要な特性及び性能特性を維持し又は向上させる新規な有機−無機材料を使用する。このような材料は、高い熱伝導性が電力定格の向上、絶縁体厚さの縮小、より小型の電気設計及び高い熱伝達の点で利点を与える、他の高電圧及び低電圧電気絶縁状況での用途を有する。本発明は、アルミナ、酸化マグネシウム、炭化ケイ素、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、酸化亜鉛及びダイヤモンド、その他のナノ、メソ及びマイクロ無機HTC材料を添加して、より高い熱伝導性をもたらす。これらの材料は、各種の結晶学的及び形態学的形態を有していてよく、それらは、直接に又は担体液体として作用する溶媒を介して、マトリクス材料で加工され得る。HTC材料をマイカテープ等の各種の基材に混合してマトリクスとするために、溶媒混合物を使用してもよい。これに対して、本発明の別の実施態様を形成する分子ハイブリッド材料は、分離界面を含有せず、有機相中の無機相によって付与される利点を有する。これらの材料は、また、熱安定性、引張強度、曲げ強度、衝撃強度等の他の物理的特性、可変周波数及び温度依存性機械的係数及び損失並びに一般的な粘弾性応答等を強化する。
【0075】
別の実施態様において、本発明は、デンドリマーコア−シェル構造と非分離の有機−無機界面を有する、分離有機デンドリマー複合体を含む。デンドリマーは、一群の、中心コアの上に構築された3次元ナノスケール・コア−シェル構造である。コアは、有機又は無機材料から成っていてよい。中心コア上に構築されることにより、デンドリマーは同心状シェルの連続付加によって形成される。シェルは、分岐分子群を含み、各分岐シェルは世代と呼ばれる。典型的には、使用される世代数は1〜10であり、より外側のシェルの分子群の数は、世代と共に指数関数的に増加する。分子群の組成は、精密に合成することができ、外側グループは反応性官能基であってもよい。デンドリマーは、樹脂マトリクスと、また、相互間でも、結合できる。従って、それらはHTC材料として樹脂に添加されてもよく、又は、他の実施態様において、在来の樹脂に添加されることなく、それ自体でマトリクスを形成し得る。
【0076】
分子群は、相互に又は樹脂と反応するその能力によって、選択することができる。しかしながら、他の実施態様において、デンドリマーのコア構造は、熱伝導性を促進するその独自の能力のために選択される。例えば、金属酸化物は、後述するように。
【0077】
一般に、デンドリマーが大きいほど、光子輸送要素として機能するその能力は向上する。しかしながら、物質に浸透するその能力及び伝播潜在力は、そのサイズによって悪影響を及ぼされるので、構造と要求特性とのバランスを達成するための最適なサイズが求められている。他のHTC材料と同様に、マイカ又はガラステープ等の基材へのデンドリマーの含浸を促進させるために、デンドリマーに溶媒を添加してもよい。多くの実施態様において、デンドリマーは、多様な各種の分子群を持つ多様な世代について、使用される。
【0078】
市販の有機デンドリマーポリマーとしては、ポリアミド−アミンデンドリマー(PAMAM)及びポリプロピレン−イミンデンドリマー(PPI)及びPAMAM内部構造及び有機ケイ素外部を備えたデンドリマーであるPAMAM−OSが挙げられる。前の2つはAldrich Chemical(商標)から、最後の1つはDow−Corning(商標)から入手できる。
【0079】
相互に又はマトリクスポリマー若しくは反応性樹脂と反応して単一材料を形成する無機−有機デンドリマーには、同様の要件が存在し得る。この場合、デンドリマーの表面は、デンドリマー−デンドリマー間、デンドリマー−有機間、デンドリマー−ハイブリッド間、及びデンドリマー−HTCマトリクス間の反応のいずれかを発生させる、上記で規定したものと同様の反応基を含有していてもよい。この場合、デンドリマーは無機コア及び有機シェルを有するか、又はその逆であり、有機若しくは無機反応基又は配位子を含有する。従って、一般的なゾル−ゲル化学に関与するものに類似した無機反応に関与し得る、ヒドロキシル、シラノール、ビニル−シラン、エポキシ−シラン及び他の基等の、反応基をも含有する無機シェルを備えた有機コアを有していてもよい。
【0080】
全ての場合において、構造要素の長さスケールを熱輸送に関与する光子分布よりも短くし又は光子分布に釣り合せることによって、光子輸送は増強され、光子散乱は低減される。より大きいHTC微粒子材料は、それ自体で、実際に光子輸送を増加させることができるが、より小さいHTC材料は、樹脂マトリクスの性質を変化させ、それにより光子散乱に変化を及ぼすことができる。このことは、ナノ粒子を使用することによって更に促進され得る。名の粒子は、そのマトリクスが高い熱伝導性を示し、粒径及び界面特性を、上記の効果を維持するのに十分であるようにし、また、光子散乱低減のための長さスケール要件を満たすことが知られている。短期又はより長期の周期性の両方を有する反応済デンドリマー格子並びに液晶エポキシ樹脂及びポリブタジエン等のマトリクスから形成され得るはしご形又は秩序化ネットワーク構造を始めとする、より高度に秩序化された構造の選択を考慮することも必要である。従来技術の樹脂マトリクスは、約0.15W/mKの最大熱伝導率を有する。本発明は0.5〜5W/mK及び更に大きい熱伝導率を備えた樹脂を提供する。
【0081】
連続有機−無機ハイブリッドは、ナノ粒子寸法がポリマー又はネットワークセグメント長(典型的には1〜50nm)の水準又はそれ未満である無機ナノ粒子を、直鎖又は架橋ポリマー及び熱硬化性樹脂に、導入することによって、形成され得る。これには、これを引き起こす3つの経路又は機構が、これらに限定されるわけではないが、(i)側鎖グラフト、(ii)例えば2つのポリマー鎖末端間の包括グラフト(inclusive grafting)、(iii)少なくとも2個、典型的には複数、のポリマー分子が関与する架橋グラフト、が挙げられる。これらの無機ナノ粒子は、共有結合した密接なハイブリッド有機−無機均質材料を形成するために、反応性表面を含有する。これらのナノ粒子は、金属酸化物、金属窒化物及び金属炭化物並びにいくつかの非金属酸化物、窒化物及び炭化物であってもよい。例えば、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化亜鉛及び他の金属酸化物、窒化ホウ素及び窒化アルミニウム及び他の金属窒化物、炭化ケイ素及び他の炭化物、天然又は合成起源のダイヤモンド、並びに各種類の多様な物理形態のいずれか及び他の金属炭化物並びにハイブリッド化学量論的及び非化学量論的混合酸化物、窒化物及び炭化物。これらの更に特定の例としては、混合された化学量論的及び非化学量論的組み合わせによるAl23、AlN、MgO、ZnO、BeO、BN、Si34、SiC及びSiO2が挙げられる。更に、これらのナノ粒子は、表面処理して、ホスト有機ポリマー又はネットワークとの反応に関与できる各種の表面官能基を導入してもよい。シリカ及び他のバルクフィラー材料等の非HTC材料を、HTC材料で、塗布することも可能である。このことは、より高価なHTC材料が使用されるときの選択肢であり得る。
【0082】
樹脂中のHTC材料の体積百分率は、約60体積%以上まで、そして更に詳細には約35体積%まで、であり得る。より大きい体積充填が、より高い構造安定性をマトリクスに与える傾向がある。しかしながら、サイズ及び形状の分布、粒子会合度並びに整列を制御すると、HTC材料は僅か1体積%以下を占有し得る。とはいえ、構造安定性の理由から、伝播(percolation)が発生するのに必要な最低量よりも多い量を添加することが有用であり得る。従って、樹脂は、伝播構造及びHTC特性を損なわずに、物理的歪み及び変形に耐えることができる。
【0083】
表面官能基の付加としては、ホスト有機ポリマー又はネットワークを形成する樹脂系との化学反応に利用できる、ヒドロキシル、カルボキシル、アミン、エポキシド、シラン又はビニルの各基が挙げられる。これらの官能基は、本来、無機フィラーの表面に存在してもよく、また、湿式化学法、プラズマ重合を含む非平衡プラズマ蒸着、化学蒸着及び物理蒸着、スパッタイオンプレーティング並びに電子及びイオンビーム蒸着法を使用して取り付けられてもよい。マトリクスポリマー又は反応性樹脂は、ナノ粒子と相溶性であるいずれの系でもよく、所望ならば、ナノ粒子表面に導入された反応基と反応することができる。これらは、エポキシ、ポリイミドエポキシ、液晶エポキシ、シアン酸エステル並びに各種の架橋剤を有する他の低分子量ポリマー及び樹脂であってもよい。
【0084】
非分離有機−無機ハイブリッドの場合、ゾル−ゲル化学作用を使用して連続分子アロイを形成することができる。この場合、水性及び非水性反応が関与するゾル−ゲル化学作用が考えられる。
【0085】
本発明の生成物は、在来の電気絶縁材料よりも高い熱伝導性を示し、マイカ−ガラステープ構造物における接合樹脂として、在来のマイカテープ構造物における未反応真空圧含浸樹脂として、そして、回転及び静電発電装置並びに高圧及び低圧の両方の電気及び電子装置、部品及び製品での電気絶縁用途を満足させる独立型材料として、使用され得る。本発明の生成物は、相互に、また、従来技術のHTC材料及び他の材料と、組み合わせることができる。
【0086】
マイクロ及びナノHTC粒子は、自己凝集して所望の構造、フィラメント及び分岐樹枝状結晶となるその能力に基づいて、選択され得る。粒子は、本来自己凝集するその能力によって選択され得るが、本プロセスは、電場、磁場、音波、超音波、pH制御、界面活性剤の使用等の外力、及び粒子の電荷分布を始めとする粒子表面電荷状態に変化を及ぼす他の方法によっても、変更され得る。特別の実施態様において、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、ダイヤモンド等の粒子は、所望の形状に自己凝集させられる。この方法で、所望の凝集構造が高熱伝導性材料から最初に作製され得るか、又はホストマトリクス中への導入の間に組み立てられる。
【0087】
多くの実施態様において、HTC材料のサイズ及び形状は、同じ用途内で変更される。複数の範囲のサイズ及び形状が同じ製品において使用される。種々の、長く、そしてより短い可変アスペクト比を有するHTC材料は、樹脂マトリクスの熱伝導性を向上させ、また、物理的特性及び性能を潜在的に向上させる。しかしながら、注目すべき一側面は、粒子長が、基材/絶縁体の層間での架橋を引き起こすほど長くならないことである。また、種々の形状及び長さは、より均一な体積充填及び充填密度を与えることによって、HTC材料の伝播安定性を改善して、より均質なマトリクスをもたらす。サイズ及び形状を混合したとき、一実施態様において、より長い粒子はより棒形状であるが、これに対してより小さい粒子はより回転楕円体、小板状体又は円板であり、立方晶状でさえもある。例えば、HTC材料を含有する樹脂は、約55〜65体積%の直径10〜50nmの回転楕円体及び約15〜25体積%の10〜50μm長の棒を、10〜30体積%の樹脂と共に、含有できる。
【0088】
他の実施態様において、本発明は有機−無機複合体に基づく新たな電気絶縁材料を提供する。熱伝導性は、粘弾性特性及び熱膨張係数等の他の因子、並びに全体の絶縁性に加えて、誘電特性(誘電率及び誘電損失)、電気伝導性、電気強度及び耐電圧等の他の絶縁特性、熱安定性、引張弾性率、曲げ弾性率、衝撃強度及び耐熱性に悪影響を及ぼさずに、最適化される。特性及び性能の適切なバランスを達成するように、有機及び無機相が構築及び選択される。
【0089】
一実施態様において、所望の形状とサイズ分布及び選択された表面特性を有するナノ、メソ及びマイクロ無機フィラーの表面コーティング並びにバルクフィラー特性は、お互いに補完的である。これにより、必要なバルク特性を維持しながら、有機ホストにおけるフィラー相の伝播構造及び相互連結特性を独立して制御することが可能になる。更に、有機及び無機コーティングは、単一又は2次コーティングとして使用され、粒子表面の有機マトリクスとの相溶性を確保して、ホスト有機マトリクスとの化学反応を可能にする。
【0090】
形状に関して、本発明は、伝播向上のために天然の棒及び小板状体へ向かう傾向がある個々の粒子形状を利用するが、棒は、天然に形成されるものに加えて合成加工材料を含む、最も好ましい実施態様である。棒は、約5以上の、特別な実施態様では10以上の、しかし更に特別な実施態様では100を超えない、平均アスペクト比を有する粒子として定義される。一実施態様において、棒の軸長は、約10nm〜100ミクロンの範囲内にある。より小さい棒は、樹脂マトリクスをより良好に伝播して、樹脂の粘度に与える悪影響がより小さい。
【0091】
多くのマイクロ及びナノ粒子は、回転楕円及び円板形状を形成し、これらは、ある条件下で均一に分布する能力が低く、そのため伝播が生じる濃度を低下させる凝集フィラメント状構造をもたらすことがある。伝播を向上させることによって、樹脂の熱特性を向上させることができるか、或いは樹脂に添加する必要があるHTC材料の量を減少させることができる。また、伝播の向上は、回避すべき凝集よりも、むしろ、樹脂中でのHTC材料のより均一な分布をもたらし、望ましくない界面、不完全な粒子濡れ及び微小空隙形成を有しそうにないより均質な生成物を生成する。同様に、より高いアスペクト比の粒子から形成された凝集したフィラメント状又は樹枝状構造は、球状(高密度)凝集体又は集塊体よりも、向上した熱伝導性を与える。
【0092】
更に、流体流場並びに電場及び磁場を、HTC材料に印加して、エポキシ樹脂の内部でそれらを分布させ構造的に配置することができる。交流電場又は静電場を使用することによって、棒及び小板状体形状をマイクロスケールで整列させることができる。これにより、異なる方向に異なる熱特性を有する材料を創造する。電場の創造は、当技術分野で公知の各種の技術によって、例えば絶縁導電体を横断して電極を取り付けることによって、又は材料若しくは絶縁系の中心における導体の使用によって達成され得る。
【0093】
金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物及び混合系のような有機表面コーティング及び無機表面コーティングが生成され、これは、選択された粒子サイズ及び形状分布と組み合わされたときに、絶縁系のバルクの熱及び電導性が制御され、一方では粒子誘電率が選択された伝播構造を与え、系の誘電率が制御される。別の種類のコーティングは、天然又は合成起源のマイクロ微粒子及びナノ微粒子ダイヤモンドコーティングである。多結晶性及び単結晶性ナノ微粒子形態では、粒子は、担体粒子、例えばシリカ、の表面と会合し得る。シリカ自体は強力な熱伝導性材料ではないが、表面コーティングの添加によって、より高熱伝導性の材料となる。しかしながら、シリカ及び他のそのような材料は、上述のように棒形状粒子に容易に形成されるような有益な特性を有する。この方法で、各種のHTC特性が1つの生成物に組み合わされる。これらのコーティングは、樹脂含浸を伴い又は伴わないマイカ成分及びガラス成分の両方を始めとする、マイカテープ構造への用途も有し得る。
【0094】
反応性表面官能基は、無機コーティングに固有の表面基から形成されてもよく、追加の有機コーティングを施すことによって達成されてもよく、そのどちらも、ホスト有機マトリクスとの化学反応に利用できるヒドロキシル、カルボキシル、アミン、エポキシド、シラン、ビニル及び他の基を含みうる。これら単一又は多重の表面コーティング及び表面官能基は、湿式化学法、プラズマ重合並びに化学蒸着及び物理蒸着を始めとする非平衡プラズマ法、スパッタイオンプレーティング並びに電子及びイオンビーム蒸着法を使用して付加される。
【0095】
別の実施態様において、本発明は有機−無機複合体に基づく新たな電気絶縁系を提供する。各種の無機及び有機成分間の界面は、化学的及び物理的に密接にされて、異なる相間での高度の物理的連続性を確保し、且つ、機械的に強力な、高電圧及び低電圧用途の両方で用いられる電気絶縁系の作動中に故障しにくい、界面となる。このような材料は、高電圧及び低電圧電気絶縁状況での用途を有するが、そこでは、向上した界面完全性が電力定格の向上、絶縁系のより高い電圧ストレス印加、絶縁体厚さの縮小の点で利点を与え、高い熱伝達を達成する。
【0096】
特別の実施態様は、無機表面を有機マトリクスに相溶させるために又はホスト有機マトリクスとの化学反応を起させる各種の表面官能基を導入するために、ナノ、メソ及びマイクロ無機フィラーへの各種の表面処理を使用する。これらの表面官能基には、ホスト有機マトリクスとの化学反応に利用できる、ヒドロキシル、カルボキシル、アミン、エポキシド、シラン又はビニルの各基が含まれる。これらの官能基は、湿式化学法、非平衡プラズマ法、化学蒸着及び物理蒸着、レーザビーム、スパッタイオンプレーティング並びに電子及びイオンビーム蒸着法を使用して付加され得る。
【0097】
多くの実施態様において、表面処理された材料は、マイカ−ガラステープ構造物における接合樹脂において、在来のマイカテープ構造物用未反応真空圧含浸(GVPI&VPI)樹脂において、そして独立型電気絶縁コーティング又はバルク材料において、使用され、回転及び静電発電装置並びに高圧及び低圧の両方の電気装置、部品及び製品での電気絶縁又は導電用途のいずれかを果たす。また、すべての化学反応は、揮発性副生成物を回避するために、縮合反応ではなく付加反応の結果であるべきである。
【0098】
エポキシ樹脂の改良は、近年、液晶ポリマーを使用することにより行われてきた。エポキシ樹脂を液晶モノマーと混合することによって又は液晶性メソゲンをDGEBA等のエポキシ樹脂分子に導入することによって、架橋により著しく改善された機械的特性を有する秩序化ネットワークを形成できるポリマー又はモノマーを含有する液晶熱硬化(LCT)エポキシ樹脂が製造される。参照として本明細書に組み込まれている、米国特許第5,904,984号を参照。LCTの更なる利点は、それらが標準エポキシ樹脂よりも改善された熱伝導性と、より低い熱膨張係数(CTE)値とを、同様に有することである。
【0099】
LCTエポキシ樹脂を更に魅力的にしているのは、それらが標準エポキシ樹脂よりも良好に熱を伝導することができることである。参照として本明細書に組み込まれている米国特許第6,261,481号は、在来のエポキシ樹脂の熱伝導性よりも高い熱伝導性を有するLCTエポキシ樹脂が製造され得ることを教示している。例えば、標準ビスフェノールAエポキシは、横(面)方向及び厚さ方向の両方で、0.18〜0.24ワット/メートル度ケルビン(W/mK)の熱伝導値を有することが示されている。これに対して、LCTエポキシ樹脂は、実際の用途で使用されるときに、横方向では0.4W/mK以下、厚さ方向では0.9W/mKまでの熱伝導値を有することが示されている。
【0100】
紙に施されるHTC材料に関連して使用されるように、基材という用語は、絶縁紙がそれから形成されるホスト材料を指すが、一方、紙マトリクスは、基材から作製されるより完全な紙構成要素を指す。これらの2つの用語は、本発明の実施態様を議論するときにやや互換的に使用され得る。熱伝導性の向上は、誘電正接等の電気特性又は引張強度や凝集性等の基材の物理的特性を著しくは損なわずに、達成されるべきである。物理的特性は、一部の実施態様では、表面コーティング等によってもなお向上され得る。更に、一部の実施態様において、ホスト紙マトリクスの電気抵抗は、HTC材料の添加によっても向上され得る。
【0101】
電気絶縁に典型的に使用される標準マイカ(白雲母、金雲母)に加えて、黒雲母並びにカオリナイト、ハロイサイト、モンモリロナイト及びクロライト等の複数の他のマイカ様アルミノケイ酸材料もある。モンモリロナイトは、その構造内に格子を有しており、金属カチオン、有機化合物並びにモノマー及びポリマー等のHTC材料を容易に挿入して高い誘電強度複合材料を与える。
【0102】
絶縁紙は、本発明の樹脂で含浸できる多孔性媒体のほんの1種類である。それから作製された他の多くの材料及び成分は、多くの産業において、その一部は後述するが、樹脂を含浸させるための各種の多孔性媒体を使用し得る。一例として、ガラス繊維マトリクス又は織物、及びポリマーマトリクス又は織物があり、織物は、典型的には、布、マット又はフェルトである。平面積層を有するガラス織物積層体である回路基板は、本発明の樹脂の使用によって利益を享受する一製品である。
【0103】
固定子コイルに使用される樹脂含浸の種類は、VPI及びGVPIとして知られている。テープは、コイルの周囲に巻き付けられ、次に、真空圧含浸(VPI)によって低粘度液体絶縁樹脂で含浸される。そのプロセスは、マイカテープに捕捉されている空気及び水分を除去するために、コイルを含有するチャンバを排気し、次いで、圧力下に絶縁樹脂を導入してマイカテープに樹脂を完全に含浸させて空隙を排除し、マイカホスト中に樹脂絶縁体を製造することから成る。一部の実施態様において、約20%の圧縮がVPIプロセスに特有である。これが完了した後、コイルを加熱して樹脂を硬化させる。樹脂が促進剤を含有していてもよく、また、テープがその上に促進剤を有していてもよい。この変形であるグローバルVPI(GVPI)は、乾燥絶縁コイルが巻き付けられるプロセスを含み、次に、個々のコイルではなく固定子全体が真空圧含浸される。GVPIプロセスにおいて、乾燥コイルが含浸前にその最終位置に挿入されるため、コイルは樹脂による含浸前に圧縮される。各種の圧縮方法をこれまで述べてきたが、本発明の実際の圧縮段階にVPI/GVPI含浸プロセスを使用することも可能である。
【0104】
一側面において、本発明は、ホスト樹脂マトリクスと高熱伝導性フィラーとを含有してなる高熱伝導性樹脂を提供する。高熱伝導性フィラーは、ホスト樹脂マトリクスと連続的な有機−無機複合体を形成し、長さが1〜1,000nmであり、3〜100、更に特別には10〜50、の平均アスペクト比を有するが、特定の粒子のアスペクト比はこの平均外であり得る。高熱伝導性フィラーの一部は、六方晶、立方晶、斜方晶、菱面体晶、正方晶、ウィスカー及びチューブのうちの1つ以上より選択される形態を含む。
【0105】
特別の側面において、高熱伝導性フィラーの一部は、凝集して2次構造を形成し、凝集体は、化学又は物理結合によって保持される。2次構造間の相互連結は、ホスト樹脂マトリクス中の熱伝導を生じさせる。凝集2次構造は、積重体、回転楕円体、スプレードスフィア、シート、樹枝状開始点及びパールネックレスのうちの少なくとも1つを形成する。そして、50〜100重量%までの高熱伝導性フィラーが2次構造を形成する。また、高熱伝導性フィラーの5〜50%は、2次構造を形成しないか、限られた凝集をする。これらは凝集構造を架橋するように作用し得る。2次構造を形成しないフィラーは、2次構造を形成するHTCフィラーと異なる種類のフィラーである。それらは、例えば、窒化ホウ素ベースというよりもアルミナベースであるというように化学的に異なり、例えば、円板ではなくて棒であるというように形態的に異なり、又は、それらは共反応性を制限するために表面処理されてもよい。表面基は、他の目的のために、例えば樹脂のより良好な共反応性のために、フィラー上に存在してもよい。凝集したフィラーは、凝集を促進するために表面基を有していてもよい。
【0106】
特別の実施態様において、高熱伝導性フィラーは、ナノフィラーで変性されたフィラーを含有してなる。これはナノ変性フィラー全体の5〜10重量%であり得る。同じホスト樹脂マトリクス内に多重の2次構造が形成されてもよい。2次構造の使用は、粘度を低下又は上昇させ得る。より小さい凝集体は、ある形態、例えば球、がそうするように、粘度を低下させ得る。一般に、高い充填密度の、各種の形態との2モード及び多重モード混合は、粘度を低下させて熱伝導性を上昇させるのに有用であり得る。
【0107】
特定の実施態様において、HTCフィラーの少なくとも一部は、約50〜200nmの長さを有する六方晶BNである。六方晶の窒化ホウ素フィラーは、集合して積重体となり、より小さい六方晶BNフィラーは、より大きい六方晶BNフィラーを変性する。BNを補完するフィラーは棒形状である。
【0108】
別の側面において、本発明は、ホスト樹脂ネットワーク、第1クラス及び第2クラスの無機高熱伝導性フィラーを含有してなる、連続的有機−無機樹脂を提供する。第1のクラスは、ホスト樹脂ネットワーク中に均一に分散され、ホスト樹脂ネットワークと本質的に完全に共反応し、第2のクラスは、ホスト樹脂ネットワーク中に不均一に分散され、凝集して2次構造を形成する。高熱伝導性フィラーは1〜1,000nmの長さ及び3〜100の平均アスペクト比を有し、酸化物、窒化物及び炭化物のうちの少なくとも1つより選択される。高熱伝導性フィラーの少なくとも一部は、六方晶、立方晶、斜方晶、菱面体晶、正方晶、ウィスカー及びチューブから成る群より選択される形態を含む。特別な場合において、第2のクラスのフィラーに対する第1クラスのフィラーの比は、重量で、3:1〜10:1である。第2のクラスのフィラーは、ある場合には、自己凝集することがあり、又は少なくとも一部は機械的に凝集され得る。
【0109】
一部の実施態様において、ホスト樹脂ネットワークは、マイカ紙に含浸される。このような場合、第2のクラスのフィラーは、より高い濃度でマイカ紙の空隙内で凝集する。他の実施態様において、高熱伝導性フィラーは、表面処理されて、ホスト樹脂ネットワークとの実質的に完全な共反応性を可能にする表面官能基が導入されている。ある実施態様において、連続的有機−無機樹脂は、最大60重量%の高熱伝導性フィラーを含有してなる。
【0110】
一例において、第1のクラスのフィラーは窒化ホウ素であり、第2のクラスのフィラーはアルミナである。特に良好な例は、有機−無機樹脂組成物全体の15〜35重量%を構成する窒化ホウ素及び1〜10重量%のアルミナを含む。
【0111】
主に電気産業での使用について本発明を議論してきたが、本発明は他の分野にも等しく利用できる。熱伝達を上昇させる必要のある産業は、本発明から等しく利益を享受する。例えば、石油及びガス、自動車航空宇宙産業を含む、エネルギー、化学、加工及び製造産業である。本発明の他の焦点は、部品の密度向上への高まる要求から局所的で大きな区域での熱を効率的に除去する必要性が生じている、パワーエレクトロニクス、在来の電子機器及び集積回路を含む。また、本発明の特定の実施態様を詳細に説明してきたが、当業者は、本開示の教示全体に照らして、これらの詳細事項に対する様々な改良及び変更を開発できることを認識するであろう。従って、開示された詳細な機構は、本発明の範囲についての単に例示的なものであって制限的なものではなく、本発明の範囲は、添付された請求項及びそのありとあらゆる等価物の全ての広さを有する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホスト樹脂マトリクス;及び
高熱伝導性フィラー;
を含有してなる高熱伝導性樹脂であって:
前記高熱伝導性フィラーは、前記ホスト樹脂マトリクスと連続的有機−無機複合体を形成し;
前記高熱伝導性フィラーの長さが1〜1,000nmであり、前記高熱伝導性フィラーが3〜100の平均アスペクト比を有し;
前記高熱伝導性フィラーの少なくとも一部が、六方晶、立方晶、斜方晶、菱面体晶、正方晶、ウィスカー及びチューブから成る群より選択される形態を含んでなる;
高熱伝導性樹脂。
【請求項2】
前記高熱伝導性フィラーの一部が凝集して2次構造を形成し、それにより前記凝集体が化学又は物理結合によって保持される、請求項1に記載の高熱伝導性樹脂。
【請求項3】
2次構造間の相互連結が前記ホスト樹脂マトリクス中に熱伝導を生じさせる、請求項2に記載の高熱伝導性樹脂。
【請求項4】
前記凝集2次構造が積重体、回転楕円体、スプレードスフィア、シート、樹枝状開始点及びパールネックレスのうちの少なくとも1つを形成する、請求項2に記載の高熱伝導性樹脂。
【請求項5】
前記高熱伝導性フィラーの50〜100重量%までが2次構造を形成する、請求項2に記載の高熱伝導性樹脂。
【請求項6】
前記高熱伝導性フィラーの5〜50%が2次構造を形成しない、請求項2に記載の高熱伝導性樹脂。
【請求項7】
2次構造を形成しない前記高熱伝導性フィラーが、2次構造を形成する高熱伝導性フィラーとは異なる種類のフィラーである、請求項2に記載の高熱伝導性樹脂。
【請求項8】
前記高熱伝導性フィラーがナノフィラーによって変性されているフィラーを含有してなる、請求項1に記載の高熱伝導性樹脂。
【請求項9】
前記ナノフィラーが全ナノ変性フィラーの5〜10重量%を含有してなる、請求項8に記載の高熱伝導性樹脂。
【請求項10】
多重の2次構造が同じホスト樹脂マトリクス内に形成される、請求項8に記載の高熱伝導性樹脂。
【請求項11】
前記高熱伝導性フィラーが六方晶BNを含有してなる、請求項1に記載の高熱伝導性樹脂。
【請求項12】
前記六方晶BNが長さ約50〜200nmである、請求項11に記載の高熱伝導性樹脂。
【請求項13】
前記六方晶窒化ホウ素フィラーが積重体へと凝集する、請求項11に記載の高熱伝導性樹脂。
【請求項14】
より小さい六方晶BNフィラーがより大きい六方晶BNフィラーを変性する、請求項11に記載の高熱伝導性樹脂。
【請求項15】
前記高熱伝導性フィラーが棒形状フィラーを更に含んでなる、請求項11に記載の高熱伝導性樹脂。
【請求項16】
前記高熱伝導性フィラーが10〜50の平均アスペクト比を有する、請求項1に記載の高熱伝導性樹脂。
【請求項17】
反応性表面基が前記熱伝導性フィラー上に存在する、請求項1に記載の高熱伝導性樹脂。
【請求項18】
ホスト樹脂ネットワーク;
前記ホスト樹脂ネットワークに均一に分散されて、前記ホスト樹脂ネットワークと実質的に完全に共反応した、第1のクラスの無機高熱伝導性フィラー;及び
前記ホスト樹脂ネットワークに不均一に分散されている第2のクラスの無機高熱伝導性フィラーであって、凝集して2次構造を形成し、第2のクラスの無機高熱伝導性フィラー;
を含んでなる連続的有機−無機樹脂であって:
前記高熱伝導性フィラーが1〜1,000nmの長さ及び3〜100の平均アスペクト比を有し;
前記高熱伝導性フィラーが酸化物、窒化物及び炭化物のうちの少なくとも1つより選択され;
前記高熱伝導性フィラーの少なくとも一部が、六方晶、立方晶、斜方晶、菱面体晶、正方晶、ウィスカー及びチューブから成る群より選択される形態を含んでなる;
連続的有機−無機樹脂。
【請求項19】
前記第2のクラスのフィラーが自己凝集する、請求項18に記載の連続的有機−無機樹脂。
【請求項20】
前記第2のクラスのフィラーが外部機構によって少なくとも部分的に凝集される、請求項18に記載の連続的有機−無機樹脂。
【請求項21】
前記ホスト樹脂ネットワークがマイカ紙中に含浸される、請求項18に記載の連続的有機−無機樹脂。
【請求項22】
前記第2のクラスのフィラーが前記マイカ紙の空隙内において、より高濃度で凝集する、請求項21に記載の連続的有機−無機樹脂。
【請求項23】
前記高熱伝導性フィラーが表面処理されて、前記ホスト樹脂ネットワークとの実質的に完全な共反応性を可能にする表面官能基が導入されている、請求項18に記載の連続的有機−無機樹脂。
【請求項24】
前記連続的有機−無機樹脂が最大60体積%の前記高熱伝導性フィラーを含有してなる、請求項18に記載の連続的有機−無機樹脂。
【請求項25】
前記第1のクラスのフィラーが窒化ホウ素であり、前記第2のクラスのフィラーがアルミナである、請求項18に記載の連続的有機−無機樹脂。
【請求項26】
窒化ホウ素が前記連続的有機−無機樹脂の15〜30重量%を構成して、前記アルミナが前記連続的有機−無機樹脂の1〜10重量%を構成する、請求項25に記載の連続的有機−無機樹脂。
【請求項27】
前記第1クラスのフィラーに対する前記第2クラスのフィラーの比が、重量で、3:1〜10:1である、請求項18に記載の連続的有機−無機樹脂。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2010−505027(P2010−505027A)
【公表日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−530346(P2009−530346)
【出願日】平成19年8月17日(2007.8.17)
【国際出願番号】PCT/US2007/018280
【国際公開番号】WO2008/039279
【国際公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【出願人】(599078705)シーメンス エナジー インコーポレイテッド (57)
【Fターム(参考)】