電気自動車のバッテリパック車体支持構造
【課題】バッテリパック間寸法とサイドメンバ間寸法に寸法差がある場合、寸法差を許容してバッテリパックを車体のサイドメンバに支持すること。
【解決手段】バッテリモジュール2を収容したバッテリパックケース1を、車体下面に車両前後方向に延びて設けられた一対のサイドメンバ109,109に対して支持する。この電気自動車のバッテリパック車体支持構造において、バッテリパックケース1のロア側バッテリケース11に、固定面71aを有する第1バッテリ側ブラケット71を設けた。一対のサイドメンバ109,109に、第1バッテリ側ブラケット71の固定面71aと車幅方向に符合する位置に固定面72aを有する第1サイドメンバ側ブラケット72を設けた。そして、第1バッテリ側ブラケット71の固定面71aと第1サイドメンバ側ブラケット72の固定面72aを互いに重ね合わせて固定した。
【解決手段】バッテリモジュール2を収容したバッテリパックケース1を、車体下面に車両前後方向に延びて設けられた一対のサイドメンバ109,109に対して支持する。この電気自動車のバッテリパック車体支持構造において、バッテリパックケース1のロア側バッテリケース11に、固定面71aを有する第1バッテリ側ブラケット71を設けた。一対のサイドメンバ109,109に、第1バッテリ側ブラケット71の固定面71aと車幅方向に符合する位置に固定面72aを有する第1サイドメンバ側ブラケット72を設けた。そして、第1バッテリ側ブラケット71の固定面71aと第1サイドメンバ側ブラケット72の固定面72aを互いに重ね合わせて固定した。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッテリモジュールを収容したバッテリパックケースを、車体下面に車両前後方向に延びて設けられた一対のサイドメンバに対して支持する電気自動車のバッテリパック車体支持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車のバッテリパック車体支持構造としては、ロア側バッテリケースの外周部からフランジを延長し、この延長フランジと車体側のサイドメンバをボルト締結することで、バッテリパックを車体に支持する構造としたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−193942号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の電気自動車のバッテリパック車体支持構造にあっては、延長フランジをサイドメンバに対し、直接、ボルト締結する構成である。このため、バッテリパック間寸法がサイドメンバ間寸法と合致する場合に限って適用することができ、バッテリパック間寸法がサイドメンバ間寸法よりも長い場合、あるいは、バッテリパック間寸法がサイドメンバ間寸法よりも短い場合には、バッテリパックをサイドメンバに支持することができない、という問題があった。
なお、バッテリパックケースの車幅方向寸法を「バッテリパック間寸法」といい、左右一対のサイドメンバの車幅方向離間寸法を「サイドメンバ間寸法」という。
【0005】
本発明は、上記問題に着目してなされたもので、バッテリパック間寸法とサイドメンバ間寸法に寸法差がある場合、寸法差を許容してバッテリパックを車体のサイドメンバに支持することができる電気自動車のバッテリパック車体支持構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の電気自動車のバッテリパック車体支持構造は、バッテリモジュールを収容したバッテリパックケースを、車体下面に車両前後方向に延びて設けられた一対のサイドメンバに対して支持するものを前提とする。
この電気自動車のバッテリパック車体支持構造において、
前記バッテリパックケースのロア側バッテリケースに、固定面を有するバッテリ側ブラケットを設けた。
前記一対のサイドメンバに、前記バッテリ側ブラケットの固定面と車幅方向に符合する位置に固定面を有するサイドメンバ側ブラケットを設けた。
前記バッテリ側ブラケットの固定面と前記サイドメンバ側ブラケットの固定面を互いに重ね合わせて固定した。
【発明の効果】
【0007】
よって、バッテリパックケースのロア側バッテリケースと、一対のサイドメンバが、バッテリ側ブラケットとサイドメンバ側ブラケットを介し、それぞれの固定面を互いに重ね合わせて固定される。
したがって、バッテリパック間寸法がサイドメンバ間寸法よりも長い場合には、サイドメンバ側ブラケットの固定面を、一対のサイドメンバより車両外側へオフセットさせた位置に配置する。一方、バッテリパック間寸法がサイドメンバ間寸法よりも短い場合には、サイドメンバ側ブラケットの固定面を、一対のサイドメンバより車両内側へオフセットさせた位置に配置する。このように、バッテリパック間寸法とサイドメンバ間寸法との間に寸法差があっても、寸法差の大小関係や寸法差の大きさにかかわらず、2つのブラケットを介在させることで高められた支持自由度により寸法差が許容される。
この結果、バッテリパック間寸法とサイドメンバ間寸法に寸法差がある場合、寸法差を許容してバッテリパックを車体のサイドメンバに支持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実施例1の車体支持構造を採用したバッテリパックBPが搭載されたワンボックスタイプの電気自動車を示す概略側面図である。
【図2】実施例1の車体支持構造を採用したバッテリパックBPが搭載されたワンボックスタイプの電気自動車を示す概略底面図である。
【図3】実施例1のバッテリパックBPを示す全体斜視図である。
【図4】実施例1のバッテリパックBPを示すアッパー側バッテリケースカバーを外した斜視図である。
【図5】実施例1のバッテリパックBPの内部構成と温調風の流れを示すアッパー側バッテリケースカバーを外した平面図である。
【図6】実施例1のバッテリパックBPの温調風ユニットの構成と温調風の流れを示す図5のK部拡大図である。
【図7】実施例1のバッテリパックBPが支持される車体下面を斜め下方から視たときの第1車体支持構造を示す図2のA部詳細斜視図である。
【図8】実施例1のバッテリパックBPの第1車体支持構造を示す図2のC−C線端面図である。
【図9】実施例1のバッテリパックBPが支持される車体下面を斜め下方から視たときの第2車体支持構造を示す図2のB部詳細斜視図である。
【図10】実施例1のバッテリパックBPの第2車体支持構造を示す図2のD−D線端面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の電気自動車のバッテリパック車体支持構造を実現する最良の形態を、図面に示す実施例1に基づいて説明する。
【実施例1】
【0010】
まず、構成を説明する。
実施例1の電気自動車のバッテリパック車体支持構造における構成を、「バッテリパックBPの車載構成」、「バッテリパックBPのパック構成要素」、「バッテリパックBPの第1車体支持構造」、「バッテリパックBPの第2車体支持構造」に分けて説明する。
【0011】
[バッテリパックBPの車載構成]
図1及び図2は、実施例1の車体支持構造を採用したバッテリパックBPが搭載されたワンボックスタイプの電気自動車を示す概略側面図及び概略底面図である。以下、図1及び図2に基づき、バッテリパックBPの車載構成を説明する。
【0012】
前記バッテリパックBPは、図1に示すように、フロアパネル100の下部のホイールベース中央部位置に配置される。フロアパネル100は、モータ室101と車室102を画成するダッシュパネル104との接続位置から、車室102に連通する荷室103を確保する車両後端位置まで設けられる。フロアパネル100の車両前方から車両後方までのフロア面は、段差を抑えたフラット形状としている。車室102には、インストルメントパネル105と、センターコンソールボックス106と、エアコンユニット107と、乗員シート108と、を有する。
【0013】
前記バッテリパックBPは、図2に示すように、車体強度部材である車体メンバに対して8点支持される。車体メンバは、車両前後方向に延びる一対のサイドメンバ109,109と、一対のサイドメンバ109,109を車幅方向に連結する複数のクロスメンバ110,110,…と、を有して構成される。バッテリパックBPの両側は、一対の第1サイドメンバ支持点S1,S1と一対の第1クロスメンバ支持点C1,C1と一対の第2サイドメンバ支持点S2,S2により6点支持される。バッテリパックBPの後側は、一対の第2クロスメンバ支持点C2,C2により2点支持されている。
【0014】
前記バッテリパックBPは、図1に示すように、ダッシュパネル104に沿って車両前後方向に直線状に配索した充放電ハーネス111を介し、モータ室101に配置されている強電モジュール112(DC/DCコンバータ+充電器)と接続される。このモータ室101には、強電モジュール112以外に、インバータ113と、モータ駆動ユニット114(走行用モータ+減速ギヤ+デファレンシャルギヤ)と、を有する。また、車両前面位置には、充電ポートリッドを有する急速充電ポート115と普通充電ポート116が設けられる。急速充電ポート115と強電モジュール112は、急速充電ハーネス117により接続される。普通充電ポート116と強電モジュール112は、普通充電ハーネス118により接続される。
【0015】
前記バッテリパックBPは、インストルメントパネル105内に配置されているエアコンユニット107を備えた空調システムと接続される。即ち、後述するバッテリモジュールが搭載されているバッテリパックBPの内部温度を温調風(冷風、温風)により管理する。なお、冷風は、空調システムから分岐冷媒管を介して冷媒をエバポレータに導入することで作り出す。温風は、空調システムからのPTCハーネスを介してPTCヒータを作動することで作り出す。
【0016】
前記バッテリパックBPは、図外のCANケーブル等の双方向通信線を介し、外部の電子制御システムと接続される。即ち、バッテリパックBPは、外部の電子制御システムと情報交換に基づく統合制御により、バッテリモジュールの放電制御(力行制御)や充電制御(急速充電制御・普通充電制御・回生制御)等が行われる。
【0017】
[バッテリパックBPのパック構成要素]
図3〜図6は、実施例1のバッテリパックBPの詳細を示す図である。以下、図3〜図6に基づき、バッテリパックBPのパック構成要素を説明する。
【0018】
実施例1のバッテリパックBPは、図3及び図4に示すように、バッテリパックケース1と、バッテリモジュール2と、温調風ユニット3と、サービス・ディスコネクト・スイッチ4(以下、「SDスイッチ」という。)と、ジャンクションボックス5と、リチウムイオン・バッテリ・コントローラ6(以下、「LBコントローラ」という。)と、を備えていている。
【0019】
前記バッテリパックケース1は、図3及び図4に示すように、ロア側バッテリケース11とアッパー側バッテリケースカバー12の2部品によって構成される。
【0020】
前記ロア側バッテリケース11は、図4に示すように、車体メンバに対し支持固定されるフレーム部材である。このロア側バッテリケース11には、バッテリモジュール2や他のパック構成要素3,4,5,6を搭載する方形凹部による搭載空間を有する。このロア側バッテリケース11のフレーム前端縁には、冷媒管コネクタ端子12と弱電コネクタ端子13と充放電コネクタ端子14と車室内空調用に強電を供給する強電コネクタ端子15が取り付けられている。
【0021】
前記アッパー側バッテリケースカバー12は、図3に示すように、ロア側バッテリケース11の外周部位置にボルト固定されるカバー部材である。このアッパー側バッテリケースカバー12には、ロア側バッテリケース11に搭載される各パック構成要素2,3,4,5,6のうち、特にバッテリモジュール2の凹凸高さ形状に対応した凹凸段差面形状によるカバー面を有する。
【0022】
前記バッテリモジュール2は、図4及び図5に示すように、ロア側バッテリケース11に搭載され、第1バッテリモジュール21と第2バッテリモジュール22と第3バッテリモジュール23との3分割モジュールにより構成される。各バッテリモジュール21,22,23は、二次電池(リチウムイオンバッテリ等)による複数のバッテリセルを積み重ねた集合体構造であり、各バッテリモジュール21,22,23の詳しい構成は、下記の通りである。
【0023】
前記第1バッテリモジュール21は、図4及び図5に示すように、ロア側バッテリケース11のうち車両後部領域に搭載される。この第1バッテリモジュール21は、厚みが薄い直方体形状のバッテリセルを構成単位とし、複数個のバッテリセルを厚み方向に積み重ねたものを用意しておく。そして、バッテリセルの積み重ね方向と車幅方向を一致させて搭載する縦積み(例えば、20枚縦積み)により構成している。
【0024】
前記第2バッテリモジュール22と前記第3バッテリモジュール23のそれぞれは、図4に示すように、ロア側バッテリケース11のうち、第1バッテリモジュール21より前側の車両中央部領域に車幅方向に左右分かれて一対搭載される。この第2バッテリモジュール22と第3バッテリモジュール23は、全く同じパターンによる平積み構成としている。即ち、厚みが薄い直方体形状のバッテリセルを構成単位とし、複数枚(例えば、4枚と5枚)のバッテリセルを厚み方向に積み重ねたものを複数個(例えば、4枚積みを1組、5枚積みを2組)用意しておく。そして、バッテリセルの積み重ね方向と車両上下方向を一致させた平積み状態としたものを、例えば、車両後方から車両前方に向かって順に4枚平積み・5枚平積み・5枚平積みというように、車両前後方向に複数個整列させることで構成している。
【0025】
前記温調風ユニット3は、図5に示すように、ロア側バッテリケース11のうち車両前側空間の右側領域に配置され、バッテリパックBPの温調風通路に温調風(冷風、温風)を送風する。温調風ユニット3は、図6に示すように、ユニットケース31と、送風ファン32と、エバポレータ33と、PTCヒータ34と、温調風ダクト35と、を有して構成される。なお、エバポレータ33には、フレーム前端縁に取り付けられた冷媒管コネクタ端子12を介して冷媒が導入される。
【0026】
前記SDスイッチ4は、図3及び図4に示すように、ロア側バッテリケース11のうち車両前側空間の中央部領域に配置され、手動操作によりバッテリ強電回路を機械的に遮断するスイッチである。このSDスイッチ4は、強電モジュール112やインバータ113等の点検や修理や部品交換等を行う際、手動操作によりスイッチ入とスイッチ断が切り替えられる。
【0027】
前記ジャンクションボックス5は、図3及び図4に示すように、ロア側バッテリケース11のうち車両前側空間の左側領域に配置され、リレー回路により強電の供給/遮断/分配を集中的に行う。このジャンクションボックス5には、温調風ユニット3の制御を行う温調用リレー51と温調用コントローラ52が併設されている。
【0028】
前記LBコントローラ6は、図4及び図5に示すように、第1バッテリモジュール21の左側端面位置に配置され、各バッテリモジュール21,22,23の容量管理・温度管理・電圧管理を行う。このLBコントローラ6は、温度検出信号線からの温度検出信号、バッテリ電圧検出線からのバッテリ電圧検出値、バッテリ電流検出信号線からのバッテリ電流検出信号に基づく演算処理により、バッテリ容量情報やバッテリ温度情報やバッテリ電圧情報を取得する。
【0029】
[バッテリパックBPの第1車体支持構造]
図7は、実施例1のバッテリパックBPが支持される車体下面を斜め下方から視たときの第1車体支持構造を示す図2のA部詳細斜視図である。図8は、実施例1のバッテリパックBPの第1車体支持構造を示す図2のC−C線端面図である。以下、図7及び図8に基づいて、バッテリパックBPの第1車体支持構造7を説明する。
【0030】
前記バッテリパックBPの第1車体支持構造7は、電気自動車のリアドアにスライドドアを採用したことに伴い、図2に示すように、サイドメンバ109,109によるサイドメンバ間寸法が狭くなっている一対の第1サイドメンバ支持点S1,S1に適用される。
【0031】
前記第1車体支持構造7は、バッテリモジュール2を収容したバッテリパックケース1を、車体下面に車両前後方向に延びて設けられた一対のサイドメンバ109,109に対して支持する。この第1車体支持構造7は、図7及び図8に示すように、バッテリパックケース1と、フロアパネル100と、サイドメンバ109と、シル91と、第1バッテリ側ブラケット71(バッテリ側ブラケット)と、第1サイドメンバ側ブラケット72(サイドメンバ側ブラケット)と、締結ボルト92と、を備えている。
【0032】
前記バッテリパックケース1は、図8に示すように、ロア側バッテリケース11と、アッパー側バッテリケースカバー12と、を有する。ロア側バッテリケース11は、バッテリモジュール2等を搭載する方形凹部による搭載空間が形成される。アッパー側バッテリケースカバー12は、ロア側バッテリケース11の外周部位置にボルト固定され、バッテリモジュール2等の搭載空間を覆う。そして、アッパー側バッテリケースカバー12のうち、サイドメンバ109と干渉する部位に、図8に示すように、サイドメンバ109との干渉を回避する凹部12aを設けている。
【0033】
前記フロアパネル100は、図8に示すように、サイドメンバ109と、シル91と、を有する。サイドメンバ109は、フロアパネル100の下面に車両前後方向に延びて設けられる。シル91は、車体の両サイドを構成するフレームであり、フロアパネル100の両側端部のうち、左右ドアの真下部分に車両前後方向に延びて設けられる。
【0034】
前記第1バッテリ側ブラケット71は、図7及び図8に示すように、バッテリパックケース1のロア側バッテリケース11の側面と、ロア側バッテリケース11の下面に車幅方向に設けられた補強プレート93の上面と、に溶接等により固定される。この第1バッテリ側ブラケット71は、図7に示すように、プレート材を台形形状に成形したものであり、ブラケット上面を固定面71aとする。
【0035】
前記第1サイドメンバ側ブラケット72は、図7及び図8に示すように、サイドメンバ109の外側面と底面に対し溶接等により固定される。この第1サイドメンバ側ブラケット72は、図7に示すように、プレート材をL字形状に成形したものであり、ブラケット下面を固定面72aとする。この固定面72aは、図8に示すように、サイドメンバ109より車両外側(シル91側)へオフセットさせた位置に配置することで、第1バッテリ側ブラケット71の固定面71aと車幅方向に符合する位置としている。
【0036】
前記締結ボルト92は、図8に示すように、第1バッテリ側ブラケット71の固定面71aと、第1サイドメンバ側ブラケット72の固定面72aと、を互いに重ね合わせ、車両下側から真上に向かってねじ込むことで締結固定する。
【0037】
[バッテリパックBPの第2車体支持構造]
図9は、実施例1のバッテリパックBPが支持される車体下面を斜め下方から視たときの第2車体支持構造を示す図2のB部詳細斜視図である。図10は、実施例1のバッテリパックBPの第2車体支持構造を示す図2のD−D線端面図である。以下、図9及び図10に基づいて、バッテリパックBPの第2車体支持構造を説明する。
【0038】
前記バッテリパックBPの第2車体支持構造8は、電気自動車のリアドアにスライドドアを採用したことに伴い、図2に示すように、サイドメンバ109,109によるサイドメンバ間寸法が広くなっている一対の第2サイドメンバ支持点S2,S2に適用される。
【0039】
前記第2車体支持構造8は、図9及び図10に示すように、バッテリパックケース1と、フロアパネル100と、サイドメンバ109と、シル91と、第2バッテリ側ブラケット81(バッテリ側ブラケット)と、第2サイドメンバ側ブラケット82(サイドメンバ側ブラケット)と、締結ボルト92と、を備えている。
【0040】
前記バッテリパックケース1と前記フロアパネル100の構成については、図8に示すように、第1車体支持構造7で説明した構成と同様である。但し、第1車体支持構造7では、アッパー側バッテリケースカバー12に凹部12aを設けたが、第2車体支持構造8には、この凹部12aの構成が無い。
【0041】
前記第2バッテリ側ブラケット81は、図9及び図10に示すように、バッテリパックケース1のロア側バッテリケース11の側面と、ロア側バッテリケース11の下面に車幅方向に設けられた補強プレート93の上面と、に溶接等により固定される。この第2バッテリ側ブラケット81は、図9に示すように、プレート材を台形形状に成形したものであり、ブラケット上面を固定面81aとする。すなわち、第2バッテリ側ブラケット81の構成は、第1バッテリ側ブラケット71と全く同じ構成である。
【0042】
前記第2サイドメンバ側ブラケット82は、図9及び図10に示すように、サイドメンバ109の外側面と底面に対し溶接等により固定される。この第2サイドメンバ側ブラケット82は、図8に示すように、プレート材をJ字形状に成形したものであり、ブラケット下面を固定面82aとする。この固定面82aは、図10に示すように、サイドメンバ109より車両内側(バッテリパックBP側)へオフセットさせた位置に配置することで、第2バッテリ側ブラケット81の固定面81aと車幅方向に符合する位置としている。
【0043】
前記締結ボルト92は、図10に示すように、第2バッテリ側ブラケット81の固定面81aと、第2サイドメンバ側ブラケット82の固定面82aと、を互いに重ね合わせ、車両下側から真上に向かってねじ込むことで締結固定する。
【0044】
次に、作用を説明する。
実施例1の電気自動車のバッテリパック車体支持構造における作用を、「バッテリパックBPの充放電作用」、「バッテリパックBPの車体支持作用」に分けて説明する。
【0045】
[バッテリパックBPの充放電作用]
リチウムイオンバッテリ等の二次電池を搭載したバッテリパックBPは、エンジン車にとっての燃料タンクに相当し、バッテリ容量を増加させる充電とバッテリ容量を減少させる放電が繰り返される。以下、バッテリパックBPの充放電作用を説明する。
【0046】
急速充電スタンドに停車して急速充電を行う時には、車両前面位置の充電ポートリッドを開き、スタンド側の急速充電用コネクタを車両側の急速充電ポート115に差し込む。この急速充電操作を行うと、急速充電ハーネス117を介して強電モジュール112のDC/DCコンバータに直流急速充電電圧が送電され、DC/DCコンバータでの電圧変換により直流充電電圧とされる。この直流充電電圧は、充放電ハーネス111を介してバッテリパックBPに送電され、バッテリパックBP内のジャンクションボックス5及びバスバーを経過し、各バッテリモジュール21,22,23のバッテリセルに充電される。
【0047】
家庭等で駐車して普通充電を行う時には、車両前面位置の充電ポートリッドを開き、家庭電源側の普通充電用コネクタを車両側の普通充電ポート116に差し込む。この普通充電操作を行うと、普通充電ハーネス118を介して強電モジュール112の充電器に交流普通充電電圧が送電され、充電器での電圧変換及び交流/直流変換により直流充電電圧とされる。この直流充電電圧は、充放電ハーネス111を介してバッテリパックBPに送電され、バッテリパックBP内のジャンクションボックス5及びバスバーを経過し、各バッテリモジュール21,22,23のバッテリセルに充電される。
【0048】
モータ駆動力により走行するモータ力行時には、各バッテリモジュール21,22,23からの直流バッテリ電圧が、バスバー及びジャンクションボックス5を介してバッテリパックBPから放電される。この放電された直流バッテリ電圧は、充放電ハーネス111を介して強電モジュール112のDC/DCコンバータに送電され、DC/DCコンバータでの電圧変換により直流駆動電圧とされる。この直流駆動電圧は、インバータ113での直流/交流変換により交流駆動電圧とされる。この交流駆動電圧は、モータ駆動ユニット114の走行用モータに印加され、走行用モータを回転駆動する。
【0049】
減速要求時に走行用モータをジェネレータとして用いるモータ回生時には、走行用モータがジェネレータ機能を発揮し、駆動タイヤから入力された回転エネルギーを発電エネルギーに変換する。この発電エネルギーにより発電された交流発電電圧は、インバータ113での交流/直流変換により直流発電電圧とされ、強電モジュール112のDC/DCコンバータでの電圧変換により直流充電電圧とされる。この直流充電電圧は、充放電ハーネス111を介してバッテリパックBPに送電され、バッテリパックBP内のジャンクションボックス5及びバスバーを経過し、各バッテリモジュール21,22,23のバッテリセルに充電される。
【0050】
[バッテリパックBPの車体支持作用]
上記のように、バッテリモジュール2を収容したバッテリパックBPは、支持剛性を確保するために、車体強度部材である一対のサイドメンバ109,109に支持することが必要である。以下、これを反映するバッテリパックBPの車体支持作用を説明する。
【0051】
バッテリパックBPを車体に支持する際には、図2に示すように、バッテリパックBPの両側を、一対の第1サイドメンバ支持点S1,S1と一対の第1クロスメンバ支持点C1,C1と一対の第2サイドメンバ支持点S2,S2により6点支持する。そして、バッテリパックBPの後側を、一対の第2クロスメンバ支持点C2,C2により2点支持する。
【0052】
このうち、サイドメンバ109,109に対する一対の第1サイドメンバ支持点S1,S1と一対の第2サイドメンバ支持点S2,S2に関しては、電気自動車のリアドアにスライドドアを採用したことに伴いサイドメンバ間寸法が異なる。つまり、サイドメンバ109,109の形状は、図2に示すように、車両前方側のサイドメンバ間寸法が狭く一定であるが、途中から車両後方に向かって徐々にサイドメンバ間寸法が広くなり、車両後方側のサイドメンバ間寸法が広く一定になっている。
【0053】
そして、一対の第1サイドメンバ支持点S1,S1では、図8に示すように、バッテリパック間寸法Lb>サイドメンバ間寸法Ls1という寸法差がある。一方、一対の第2サイドメンバ支持点S2,S2では、図8に示すように、バッテリパック間寸法Lb<サイドメンバ間寸法Ls2という寸法差がある。なお、バッテリパックBPの車幅寸法であるバッテリパック間寸法Lbは、車両前後方向で一定としている。
【0054】
このため、一対の第1サイドメンバ支持点S1,S1と一対の第2サイドメンバ支持点S2,S2では、寸法差を許容する車体支持構造により対応する必要がある。以下、図7及び図8に基づいて第1車体支持構造7による車体支持作用を説明し、図9及び図10に基づいて第2車体支持構造8による車体支持作用を説明する。
【0055】
(第1車体支持構造7による車体支持作用)
第1車体支持構造7により車体に支持する際は、図8に示すように、ロア側バッテリケース11に設けた第1バッテリ側ブラケット71の固定面71aと、サイドメンバ109に設けた第1サイドメンバ側ブラケット72の固定面72aを互いに重ね合わせる。そして、両固定面71a,72aを互いに重ね合わせた状態で、締結ボルト92を車両下側から差し込み、車両上側に向かってねじ込むことにより、両ブラケット71,72が固定される。
【0056】
このとき、バッテリパック間寸法Lbがサイドメンバ間寸法Ls1よりも長いため、第1サイドメンバ側ブラケット72の固定面72aを、サイドメンバ109より車両外側(シル91側)へオフセットさせた位置に配置する。これにより、第1バッテリ側ブラケット71の固定面71aの位置に、第1サイドメンバ側ブラケット72の固定面72aの位置を合致させることができる。
【0057】
このように、バッテリパック間寸法Lbとサイドメンバ間寸法Ls1との間に、Lb>Ls1という関係の寸法差があっても、さらに、寸法差の大きさが異なったとしても、両ブラケット71,72を介在させることで高められた支持自由度により寸法差が許容される。
【0058】
したがって、バッテリパック間寸法Lbとサイドメンバ間寸法Ls1の間に、Lb>Ls1という関係の寸法差がある場合、この寸法差関係と寸法差の大きさを許容してバッテリパックBPが車体のサイドメンバ109に支持される。
【0059】
実施例1では、アッパー側バッテリケースカバー12のうち、サイドメンバ109と干渉する部位に、図8に示すように、サイドメンバ109との干渉を回避する凹部12aを設けた構成を採用した。
この構成より、バッテリパックBPを、図8に示すように、サイドメンバ109と車両上下方向にオーバーラップする位置まで押し上げることができ、フロアパネル100の地上高が低く抑えられる。つまり、地上からバッテリパックBPの底面までは、最低地上高により決まっている。また、バッテリパックBPの高さ寸法も決まっている。したがって、フロアパネル100の地上高は、最低地上高+バッテリパック高さ寸法+隙間で決まる。このとき、アッパー側バッテリケースカバー12に凹部12aを設けたことで、フロアパネル100の下面に対し、バッテリパックBPの上面を、最小限の隙間まで近づけることができる。
したがって、フロアパネル100の地上高が低く抑えられ、車室102や荷室103の空間が広く確保される。
【0060】
(第2車体支持構造8による車体支持作用)
第2車体支持構造8により車体に支持する際は、図10に示すように、ロア側バッテリケース11に設けた第2バッテリ側ブラケット81の固定面81aと、サイドメンバ109に設けた第2サイドメンバ側ブラケット82の固定面82aを互いに重ね合わせる。そして、両固定面81a,82aを互いに重ね合わせた状態で、締結ボルト92を車両下側から差し込み、車両上側に向かってねじ込むことにより、両ブラケット81,82が固定される。
【0061】
このとき、バッテリパック間寸法Lbがサイドメンバ間寸法Ls2よりも短いため、第2サイドメンバ側ブラケット82の固定面82aを、サイドメンバ109より車両内側(バッテリパックBP側)へオフセットさせた位置に配置する。これにより、第2バッテリ側ブラケット81の固定面81aの位置に、第2サイドメンバ側ブラケット82の固定面82aの位置を合致させることができる。
【0062】
このように、バッテリパック間寸法Lbとサイドメンバ間寸法Ls2との間に、Lb<Ls2という関係の寸法差があっても、さらに、寸法差の大きさが異なったとしても、両ブラケット81,82を介在させることで高められた支持自由度により寸法差が許容される。
【0063】
したがって、バッテリパック間寸法Lbとサイドメンバ間寸法Ls2の間に、Lb<Ls2という関係の寸法差がある場合、この寸法差関係と寸法差の大きさを許容してバッテリパックBPが車体のサイドメンバ109に支持される。
【0064】
次に、効果を説明する。
実施例1の電気自動車のバッテリパック車体支持構造にあっては、下記に列挙する効果を得ることができる。
【0065】
(1) バッテリモジュール2を収容したバッテリパックケース1を、車体下面に車両前後方向に延びて設けられた一対のサイドメンバ109,109に対して支持する電気自動車のバッテリパック車体支持構造において、
前記バッテリパックケース1のロア側バッテリケース11に、固定面71a,81aを有するバッテリ側ブラケット(第1バッテリ側ブラケット71,第2バッテリ側ブラケット81)を設け、
前記一対のサイドメンバ109,109に、前記バッテリ側ブラケット(第1バッテリ側ブラケット71,第2バッテリ側ブラケット81)の固定面71a,81aと車幅方向に符合する位置に固定面72a,82aを有するサイドメンバ側ブラケット(第1サイドメンバ側ブラケット72,第2サイドメンバ側ブラケット82)を設け、
前記バッテリ側ブラケット(第1バッテリ側ブラケット71,第2バッテリ側ブラケット81)の固定面71a,81aと前記サイドメンバ側ブラケット(第1サイドメンバ側ブラケット72,第2サイドメンバ側ブラケット82)の固定面72a,82aを互いに重ね合わせて固定した。
このため、バッテリパック間寸法Lbとサイドメンバ間寸法Ls1,Ls2に寸法差がある場合、寸法差を許容してバッテリパックBPを車体のサイドメンバ109,109に支持することができる。
【0066】
(2) 前記サイドメンバ側ブラケット(第1サイドメンバ側ブラケット72)の固定面72aを、前記一対のサイドメンバ109,109より車両外側へオフセットさせた位置に配置した。
このため、(1)の効果に加え、バッテリパック間寸法Lbとサイドメンバ間寸法Ls1の間に、Lb>Ls1という関係の寸法差がある場合、この寸法差関係と寸法差の大きさを許容してバッテリパックBPを車体のサイドメンバ109に支持することができる。
【0067】
(3) 前記一対のサイドメンバ109,109を、フロアパネル100の下面に設け、
前記バッテリパックケース1のアッパー側バッテリケースカバー12のうち、前記一対のサイドメンバ109,109と干渉する部位に凹部12aを設けた。
このため、(2)の効果に加え、フロアパネル100の地上高が低く抑えられ、車室102や荷室103の空間を広く確保することができる。
【0068】
(4) 前記サイドメンバ側ブラケット(第2サイドメンバ側ブラケット82)の固定面82aを、前記一対のサイドメンバ109,109より車両内側へオフセットさせた位置に配置した。
このため、(1)の効果に加え、バッテリパック間寸法Lbとサイドメンバ間寸法Ls2の間に、Lb<Ls2という関係の寸法差がある場合、この寸法差関係と寸法差の大きさを許容してバッテリパックBPを車体のサイドメンバ109に支持することができる。
【0069】
以上、本発明の電気自動車のバッテリパック車体支持構造を実施例1に基づき説明してきたが、具体的な構成については、この実施例1に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
【0070】
実施例1では、一対のサイドメンバ109,109として、サイドメンバ間寸法が車両前後方向で変化する例を示した。しかし、一対のサイドメンバとして、サイドメンバ間寸法が車両前後方向で変化せず一定寸法の場合にも適用できる。特に、同じ寸法規格のバッテリパックを共有化し、車種が異なる電気自動車に搭載する場合、バッテリパック車体支持構造を採用することで、サイドメンバ間寸法が様々に異なっても対応できる。
【0071】
実施例1では、サイドメンバ側ブラケットとして、L字形状の第1サイドメンバ側ブラケット72とJ字形状の第2サイドメンバ側ブラケット82を用いる例を示した。しかし、サイドメンバ側ブラケットの形状は、これらの形状に限られるものではなく、様々な形状を用いても良い。
【0072】
実施例1では、ブラケット固定面として、車両上下方向に対向する水平面による固定面71a,72a,81a,82aの例を示した。しかし、ブラケット固定面としては、傾斜面としても良いし、また、垂直面としても良い。さらに、固定部材として、締結ボルト92を用いる例を示したが、締結ボルト以外の固定部材を用いても良い。
【0073】
実施例1では、本発明のバッテリパック構造を走行用駆動源として走行用モータのみを搭載したワンボックスタイプの電気自動車に適用する例を示した。しかし、本発明の電気自動車のバッテリパック車体支持構造は、ワンボックスタイプ以外に、セダンタイプやワゴンタイプやSUVタイプ等の様々な電気自動車に適用できるのは勿論である。さらに、走行用駆動源として走行用モータとエンジンを搭載したハイブリッドタイプの電気自動車(ハイブリッド電気自動車)に対しても適用することができる。要するに、バッテリパックを一対のサイドメンバに支持する電気自動車であれば適用できる。
【符号の説明】
【0074】
BP バッテリパック
1 バッテリパックケース
11 ロア側バッテリケース
12 アッパー側バッテリケースカバー
12a 凹部
2 バッテリモジュール
21 第1バッテリモジュール
22 第2バッテリモジュール
23 第3バッテリモジュール
3 温調風ユニット
4 SDスイッチ
5 ジャンクションボックス
6 LBコントローラ
7 第1車体支持構造
71 第1バッテリ側ブラケット(バッテリ側ブラケット)
71a 固定面
72 第1サイドメンバ側ブラケット(サイドメンバ側ブラケット)
72a 固定面
8 第2車体支持構造
81 第2バッテリ側ブラケット(バッテリ側ブラケット)
81a 固定面
82 第2サイドメンバ側ブラケット(サイドメンバ側ブラケット)
82a 固定面
91 シル
92 締結ボルト
93 補強プレート
100 フロアパネル
109,109 サイドメンバ
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッテリモジュールを収容したバッテリパックケースを、車体下面に車両前後方向に延びて設けられた一対のサイドメンバに対して支持する電気自動車のバッテリパック車体支持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車のバッテリパック車体支持構造としては、ロア側バッテリケースの外周部からフランジを延長し、この延長フランジと車体側のサイドメンバをボルト締結することで、バッテリパックを車体に支持する構造としたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−193942号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の電気自動車のバッテリパック車体支持構造にあっては、延長フランジをサイドメンバに対し、直接、ボルト締結する構成である。このため、バッテリパック間寸法がサイドメンバ間寸法と合致する場合に限って適用することができ、バッテリパック間寸法がサイドメンバ間寸法よりも長い場合、あるいは、バッテリパック間寸法がサイドメンバ間寸法よりも短い場合には、バッテリパックをサイドメンバに支持することができない、という問題があった。
なお、バッテリパックケースの車幅方向寸法を「バッテリパック間寸法」といい、左右一対のサイドメンバの車幅方向離間寸法を「サイドメンバ間寸法」という。
【0005】
本発明は、上記問題に着目してなされたもので、バッテリパック間寸法とサイドメンバ間寸法に寸法差がある場合、寸法差を許容してバッテリパックを車体のサイドメンバに支持することができる電気自動車のバッテリパック車体支持構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の電気自動車のバッテリパック車体支持構造は、バッテリモジュールを収容したバッテリパックケースを、車体下面に車両前後方向に延びて設けられた一対のサイドメンバに対して支持するものを前提とする。
この電気自動車のバッテリパック車体支持構造において、
前記バッテリパックケースのロア側バッテリケースに、固定面を有するバッテリ側ブラケットを設けた。
前記一対のサイドメンバに、前記バッテリ側ブラケットの固定面と車幅方向に符合する位置に固定面を有するサイドメンバ側ブラケットを設けた。
前記バッテリ側ブラケットの固定面と前記サイドメンバ側ブラケットの固定面を互いに重ね合わせて固定した。
【発明の効果】
【0007】
よって、バッテリパックケースのロア側バッテリケースと、一対のサイドメンバが、バッテリ側ブラケットとサイドメンバ側ブラケットを介し、それぞれの固定面を互いに重ね合わせて固定される。
したがって、バッテリパック間寸法がサイドメンバ間寸法よりも長い場合には、サイドメンバ側ブラケットの固定面を、一対のサイドメンバより車両外側へオフセットさせた位置に配置する。一方、バッテリパック間寸法がサイドメンバ間寸法よりも短い場合には、サイドメンバ側ブラケットの固定面を、一対のサイドメンバより車両内側へオフセットさせた位置に配置する。このように、バッテリパック間寸法とサイドメンバ間寸法との間に寸法差があっても、寸法差の大小関係や寸法差の大きさにかかわらず、2つのブラケットを介在させることで高められた支持自由度により寸法差が許容される。
この結果、バッテリパック間寸法とサイドメンバ間寸法に寸法差がある場合、寸法差を許容してバッテリパックを車体のサイドメンバに支持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実施例1の車体支持構造を採用したバッテリパックBPが搭載されたワンボックスタイプの電気自動車を示す概略側面図である。
【図2】実施例1の車体支持構造を採用したバッテリパックBPが搭載されたワンボックスタイプの電気自動車を示す概略底面図である。
【図3】実施例1のバッテリパックBPを示す全体斜視図である。
【図4】実施例1のバッテリパックBPを示すアッパー側バッテリケースカバーを外した斜視図である。
【図5】実施例1のバッテリパックBPの内部構成と温調風の流れを示すアッパー側バッテリケースカバーを外した平面図である。
【図6】実施例1のバッテリパックBPの温調風ユニットの構成と温調風の流れを示す図5のK部拡大図である。
【図7】実施例1のバッテリパックBPが支持される車体下面を斜め下方から視たときの第1車体支持構造を示す図2のA部詳細斜視図である。
【図8】実施例1のバッテリパックBPの第1車体支持構造を示す図2のC−C線端面図である。
【図9】実施例1のバッテリパックBPが支持される車体下面を斜め下方から視たときの第2車体支持構造を示す図2のB部詳細斜視図である。
【図10】実施例1のバッテリパックBPの第2車体支持構造を示す図2のD−D線端面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の電気自動車のバッテリパック車体支持構造を実現する最良の形態を、図面に示す実施例1に基づいて説明する。
【実施例1】
【0010】
まず、構成を説明する。
実施例1の電気自動車のバッテリパック車体支持構造における構成を、「バッテリパックBPの車載構成」、「バッテリパックBPのパック構成要素」、「バッテリパックBPの第1車体支持構造」、「バッテリパックBPの第2車体支持構造」に分けて説明する。
【0011】
[バッテリパックBPの車載構成]
図1及び図2は、実施例1の車体支持構造を採用したバッテリパックBPが搭載されたワンボックスタイプの電気自動車を示す概略側面図及び概略底面図である。以下、図1及び図2に基づき、バッテリパックBPの車載構成を説明する。
【0012】
前記バッテリパックBPは、図1に示すように、フロアパネル100の下部のホイールベース中央部位置に配置される。フロアパネル100は、モータ室101と車室102を画成するダッシュパネル104との接続位置から、車室102に連通する荷室103を確保する車両後端位置まで設けられる。フロアパネル100の車両前方から車両後方までのフロア面は、段差を抑えたフラット形状としている。車室102には、インストルメントパネル105と、センターコンソールボックス106と、エアコンユニット107と、乗員シート108と、を有する。
【0013】
前記バッテリパックBPは、図2に示すように、車体強度部材である車体メンバに対して8点支持される。車体メンバは、車両前後方向に延びる一対のサイドメンバ109,109と、一対のサイドメンバ109,109を車幅方向に連結する複数のクロスメンバ110,110,…と、を有して構成される。バッテリパックBPの両側は、一対の第1サイドメンバ支持点S1,S1と一対の第1クロスメンバ支持点C1,C1と一対の第2サイドメンバ支持点S2,S2により6点支持される。バッテリパックBPの後側は、一対の第2クロスメンバ支持点C2,C2により2点支持されている。
【0014】
前記バッテリパックBPは、図1に示すように、ダッシュパネル104に沿って車両前後方向に直線状に配索した充放電ハーネス111を介し、モータ室101に配置されている強電モジュール112(DC/DCコンバータ+充電器)と接続される。このモータ室101には、強電モジュール112以外に、インバータ113と、モータ駆動ユニット114(走行用モータ+減速ギヤ+デファレンシャルギヤ)と、を有する。また、車両前面位置には、充電ポートリッドを有する急速充電ポート115と普通充電ポート116が設けられる。急速充電ポート115と強電モジュール112は、急速充電ハーネス117により接続される。普通充電ポート116と強電モジュール112は、普通充電ハーネス118により接続される。
【0015】
前記バッテリパックBPは、インストルメントパネル105内に配置されているエアコンユニット107を備えた空調システムと接続される。即ち、後述するバッテリモジュールが搭載されているバッテリパックBPの内部温度を温調風(冷風、温風)により管理する。なお、冷風は、空調システムから分岐冷媒管を介して冷媒をエバポレータに導入することで作り出す。温風は、空調システムからのPTCハーネスを介してPTCヒータを作動することで作り出す。
【0016】
前記バッテリパックBPは、図外のCANケーブル等の双方向通信線を介し、外部の電子制御システムと接続される。即ち、バッテリパックBPは、外部の電子制御システムと情報交換に基づく統合制御により、バッテリモジュールの放電制御(力行制御)や充電制御(急速充電制御・普通充電制御・回生制御)等が行われる。
【0017】
[バッテリパックBPのパック構成要素]
図3〜図6は、実施例1のバッテリパックBPの詳細を示す図である。以下、図3〜図6に基づき、バッテリパックBPのパック構成要素を説明する。
【0018】
実施例1のバッテリパックBPは、図3及び図4に示すように、バッテリパックケース1と、バッテリモジュール2と、温調風ユニット3と、サービス・ディスコネクト・スイッチ4(以下、「SDスイッチ」という。)と、ジャンクションボックス5と、リチウムイオン・バッテリ・コントローラ6(以下、「LBコントローラ」という。)と、を備えていている。
【0019】
前記バッテリパックケース1は、図3及び図4に示すように、ロア側バッテリケース11とアッパー側バッテリケースカバー12の2部品によって構成される。
【0020】
前記ロア側バッテリケース11は、図4に示すように、車体メンバに対し支持固定されるフレーム部材である。このロア側バッテリケース11には、バッテリモジュール2や他のパック構成要素3,4,5,6を搭載する方形凹部による搭載空間を有する。このロア側バッテリケース11のフレーム前端縁には、冷媒管コネクタ端子12と弱電コネクタ端子13と充放電コネクタ端子14と車室内空調用に強電を供給する強電コネクタ端子15が取り付けられている。
【0021】
前記アッパー側バッテリケースカバー12は、図3に示すように、ロア側バッテリケース11の外周部位置にボルト固定されるカバー部材である。このアッパー側バッテリケースカバー12には、ロア側バッテリケース11に搭載される各パック構成要素2,3,4,5,6のうち、特にバッテリモジュール2の凹凸高さ形状に対応した凹凸段差面形状によるカバー面を有する。
【0022】
前記バッテリモジュール2は、図4及び図5に示すように、ロア側バッテリケース11に搭載され、第1バッテリモジュール21と第2バッテリモジュール22と第3バッテリモジュール23との3分割モジュールにより構成される。各バッテリモジュール21,22,23は、二次電池(リチウムイオンバッテリ等)による複数のバッテリセルを積み重ねた集合体構造であり、各バッテリモジュール21,22,23の詳しい構成は、下記の通りである。
【0023】
前記第1バッテリモジュール21は、図4及び図5に示すように、ロア側バッテリケース11のうち車両後部領域に搭載される。この第1バッテリモジュール21は、厚みが薄い直方体形状のバッテリセルを構成単位とし、複数個のバッテリセルを厚み方向に積み重ねたものを用意しておく。そして、バッテリセルの積み重ね方向と車幅方向を一致させて搭載する縦積み(例えば、20枚縦積み)により構成している。
【0024】
前記第2バッテリモジュール22と前記第3バッテリモジュール23のそれぞれは、図4に示すように、ロア側バッテリケース11のうち、第1バッテリモジュール21より前側の車両中央部領域に車幅方向に左右分かれて一対搭載される。この第2バッテリモジュール22と第3バッテリモジュール23は、全く同じパターンによる平積み構成としている。即ち、厚みが薄い直方体形状のバッテリセルを構成単位とし、複数枚(例えば、4枚と5枚)のバッテリセルを厚み方向に積み重ねたものを複数個(例えば、4枚積みを1組、5枚積みを2組)用意しておく。そして、バッテリセルの積み重ね方向と車両上下方向を一致させた平積み状態としたものを、例えば、車両後方から車両前方に向かって順に4枚平積み・5枚平積み・5枚平積みというように、車両前後方向に複数個整列させることで構成している。
【0025】
前記温調風ユニット3は、図5に示すように、ロア側バッテリケース11のうち車両前側空間の右側領域に配置され、バッテリパックBPの温調風通路に温調風(冷風、温風)を送風する。温調風ユニット3は、図6に示すように、ユニットケース31と、送風ファン32と、エバポレータ33と、PTCヒータ34と、温調風ダクト35と、を有して構成される。なお、エバポレータ33には、フレーム前端縁に取り付けられた冷媒管コネクタ端子12を介して冷媒が導入される。
【0026】
前記SDスイッチ4は、図3及び図4に示すように、ロア側バッテリケース11のうち車両前側空間の中央部領域に配置され、手動操作によりバッテリ強電回路を機械的に遮断するスイッチである。このSDスイッチ4は、強電モジュール112やインバータ113等の点検や修理や部品交換等を行う際、手動操作によりスイッチ入とスイッチ断が切り替えられる。
【0027】
前記ジャンクションボックス5は、図3及び図4に示すように、ロア側バッテリケース11のうち車両前側空間の左側領域に配置され、リレー回路により強電の供給/遮断/分配を集中的に行う。このジャンクションボックス5には、温調風ユニット3の制御を行う温調用リレー51と温調用コントローラ52が併設されている。
【0028】
前記LBコントローラ6は、図4及び図5に示すように、第1バッテリモジュール21の左側端面位置に配置され、各バッテリモジュール21,22,23の容量管理・温度管理・電圧管理を行う。このLBコントローラ6は、温度検出信号線からの温度検出信号、バッテリ電圧検出線からのバッテリ電圧検出値、バッテリ電流検出信号線からのバッテリ電流検出信号に基づく演算処理により、バッテリ容量情報やバッテリ温度情報やバッテリ電圧情報を取得する。
【0029】
[バッテリパックBPの第1車体支持構造]
図7は、実施例1のバッテリパックBPが支持される車体下面を斜め下方から視たときの第1車体支持構造を示す図2のA部詳細斜視図である。図8は、実施例1のバッテリパックBPの第1車体支持構造を示す図2のC−C線端面図である。以下、図7及び図8に基づいて、バッテリパックBPの第1車体支持構造7を説明する。
【0030】
前記バッテリパックBPの第1車体支持構造7は、電気自動車のリアドアにスライドドアを採用したことに伴い、図2に示すように、サイドメンバ109,109によるサイドメンバ間寸法が狭くなっている一対の第1サイドメンバ支持点S1,S1に適用される。
【0031】
前記第1車体支持構造7は、バッテリモジュール2を収容したバッテリパックケース1を、車体下面に車両前後方向に延びて設けられた一対のサイドメンバ109,109に対して支持する。この第1車体支持構造7は、図7及び図8に示すように、バッテリパックケース1と、フロアパネル100と、サイドメンバ109と、シル91と、第1バッテリ側ブラケット71(バッテリ側ブラケット)と、第1サイドメンバ側ブラケット72(サイドメンバ側ブラケット)と、締結ボルト92と、を備えている。
【0032】
前記バッテリパックケース1は、図8に示すように、ロア側バッテリケース11と、アッパー側バッテリケースカバー12と、を有する。ロア側バッテリケース11は、バッテリモジュール2等を搭載する方形凹部による搭載空間が形成される。アッパー側バッテリケースカバー12は、ロア側バッテリケース11の外周部位置にボルト固定され、バッテリモジュール2等の搭載空間を覆う。そして、アッパー側バッテリケースカバー12のうち、サイドメンバ109と干渉する部位に、図8に示すように、サイドメンバ109との干渉を回避する凹部12aを設けている。
【0033】
前記フロアパネル100は、図8に示すように、サイドメンバ109と、シル91と、を有する。サイドメンバ109は、フロアパネル100の下面に車両前後方向に延びて設けられる。シル91は、車体の両サイドを構成するフレームであり、フロアパネル100の両側端部のうち、左右ドアの真下部分に車両前後方向に延びて設けられる。
【0034】
前記第1バッテリ側ブラケット71は、図7及び図8に示すように、バッテリパックケース1のロア側バッテリケース11の側面と、ロア側バッテリケース11の下面に車幅方向に設けられた補強プレート93の上面と、に溶接等により固定される。この第1バッテリ側ブラケット71は、図7に示すように、プレート材を台形形状に成形したものであり、ブラケット上面を固定面71aとする。
【0035】
前記第1サイドメンバ側ブラケット72は、図7及び図8に示すように、サイドメンバ109の外側面と底面に対し溶接等により固定される。この第1サイドメンバ側ブラケット72は、図7に示すように、プレート材をL字形状に成形したものであり、ブラケット下面を固定面72aとする。この固定面72aは、図8に示すように、サイドメンバ109より車両外側(シル91側)へオフセットさせた位置に配置することで、第1バッテリ側ブラケット71の固定面71aと車幅方向に符合する位置としている。
【0036】
前記締結ボルト92は、図8に示すように、第1バッテリ側ブラケット71の固定面71aと、第1サイドメンバ側ブラケット72の固定面72aと、を互いに重ね合わせ、車両下側から真上に向かってねじ込むことで締結固定する。
【0037】
[バッテリパックBPの第2車体支持構造]
図9は、実施例1のバッテリパックBPが支持される車体下面を斜め下方から視たときの第2車体支持構造を示す図2のB部詳細斜視図である。図10は、実施例1のバッテリパックBPの第2車体支持構造を示す図2のD−D線端面図である。以下、図9及び図10に基づいて、バッテリパックBPの第2車体支持構造を説明する。
【0038】
前記バッテリパックBPの第2車体支持構造8は、電気自動車のリアドアにスライドドアを採用したことに伴い、図2に示すように、サイドメンバ109,109によるサイドメンバ間寸法が広くなっている一対の第2サイドメンバ支持点S2,S2に適用される。
【0039】
前記第2車体支持構造8は、図9及び図10に示すように、バッテリパックケース1と、フロアパネル100と、サイドメンバ109と、シル91と、第2バッテリ側ブラケット81(バッテリ側ブラケット)と、第2サイドメンバ側ブラケット82(サイドメンバ側ブラケット)と、締結ボルト92と、を備えている。
【0040】
前記バッテリパックケース1と前記フロアパネル100の構成については、図8に示すように、第1車体支持構造7で説明した構成と同様である。但し、第1車体支持構造7では、アッパー側バッテリケースカバー12に凹部12aを設けたが、第2車体支持構造8には、この凹部12aの構成が無い。
【0041】
前記第2バッテリ側ブラケット81は、図9及び図10に示すように、バッテリパックケース1のロア側バッテリケース11の側面と、ロア側バッテリケース11の下面に車幅方向に設けられた補強プレート93の上面と、に溶接等により固定される。この第2バッテリ側ブラケット81は、図9に示すように、プレート材を台形形状に成形したものであり、ブラケット上面を固定面81aとする。すなわち、第2バッテリ側ブラケット81の構成は、第1バッテリ側ブラケット71と全く同じ構成である。
【0042】
前記第2サイドメンバ側ブラケット82は、図9及び図10に示すように、サイドメンバ109の外側面と底面に対し溶接等により固定される。この第2サイドメンバ側ブラケット82は、図8に示すように、プレート材をJ字形状に成形したものであり、ブラケット下面を固定面82aとする。この固定面82aは、図10に示すように、サイドメンバ109より車両内側(バッテリパックBP側)へオフセットさせた位置に配置することで、第2バッテリ側ブラケット81の固定面81aと車幅方向に符合する位置としている。
【0043】
前記締結ボルト92は、図10に示すように、第2バッテリ側ブラケット81の固定面81aと、第2サイドメンバ側ブラケット82の固定面82aと、を互いに重ね合わせ、車両下側から真上に向かってねじ込むことで締結固定する。
【0044】
次に、作用を説明する。
実施例1の電気自動車のバッテリパック車体支持構造における作用を、「バッテリパックBPの充放電作用」、「バッテリパックBPの車体支持作用」に分けて説明する。
【0045】
[バッテリパックBPの充放電作用]
リチウムイオンバッテリ等の二次電池を搭載したバッテリパックBPは、エンジン車にとっての燃料タンクに相当し、バッテリ容量を増加させる充電とバッテリ容量を減少させる放電が繰り返される。以下、バッテリパックBPの充放電作用を説明する。
【0046】
急速充電スタンドに停車して急速充電を行う時には、車両前面位置の充電ポートリッドを開き、スタンド側の急速充電用コネクタを車両側の急速充電ポート115に差し込む。この急速充電操作を行うと、急速充電ハーネス117を介して強電モジュール112のDC/DCコンバータに直流急速充電電圧が送電され、DC/DCコンバータでの電圧変換により直流充電電圧とされる。この直流充電電圧は、充放電ハーネス111を介してバッテリパックBPに送電され、バッテリパックBP内のジャンクションボックス5及びバスバーを経過し、各バッテリモジュール21,22,23のバッテリセルに充電される。
【0047】
家庭等で駐車して普通充電を行う時には、車両前面位置の充電ポートリッドを開き、家庭電源側の普通充電用コネクタを車両側の普通充電ポート116に差し込む。この普通充電操作を行うと、普通充電ハーネス118を介して強電モジュール112の充電器に交流普通充電電圧が送電され、充電器での電圧変換及び交流/直流変換により直流充電電圧とされる。この直流充電電圧は、充放電ハーネス111を介してバッテリパックBPに送電され、バッテリパックBP内のジャンクションボックス5及びバスバーを経過し、各バッテリモジュール21,22,23のバッテリセルに充電される。
【0048】
モータ駆動力により走行するモータ力行時には、各バッテリモジュール21,22,23からの直流バッテリ電圧が、バスバー及びジャンクションボックス5を介してバッテリパックBPから放電される。この放電された直流バッテリ電圧は、充放電ハーネス111を介して強電モジュール112のDC/DCコンバータに送電され、DC/DCコンバータでの電圧変換により直流駆動電圧とされる。この直流駆動電圧は、インバータ113での直流/交流変換により交流駆動電圧とされる。この交流駆動電圧は、モータ駆動ユニット114の走行用モータに印加され、走行用モータを回転駆動する。
【0049】
減速要求時に走行用モータをジェネレータとして用いるモータ回生時には、走行用モータがジェネレータ機能を発揮し、駆動タイヤから入力された回転エネルギーを発電エネルギーに変換する。この発電エネルギーにより発電された交流発電電圧は、インバータ113での交流/直流変換により直流発電電圧とされ、強電モジュール112のDC/DCコンバータでの電圧変換により直流充電電圧とされる。この直流充電電圧は、充放電ハーネス111を介してバッテリパックBPに送電され、バッテリパックBP内のジャンクションボックス5及びバスバーを経過し、各バッテリモジュール21,22,23のバッテリセルに充電される。
【0050】
[バッテリパックBPの車体支持作用]
上記のように、バッテリモジュール2を収容したバッテリパックBPは、支持剛性を確保するために、車体強度部材である一対のサイドメンバ109,109に支持することが必要である。以下、これを反映するバッテリパックBPの車体支持作用を説明する。
【0051】
バッテリパックBPを車体に支持する際には、図2に示すように、バッテリパックBPの両側を、一対の第1サイドメンバ支持点S1,S1と一対の第1クロスメンバ支持点C1,C1と一対の第2サイドメンバ支持点S2,S2により6点支持する。そして、バッテリパックBPの後側を、一対の第2クロスメンバ支持点C2,C2により2点支持する。
【0052】
このうち、サイドメンバ109,109に対する一対の第1サイドメンバ支持点S1,S1と一対の第2サイドメンバ支持点S2,S2に関しては、電気自動車のリアドアにスライドドアを採用したことに伴いサイドメンバ間寸法が異なる。つまり、サイドメンバ109,109の形状は、図2に示すように、車両前方側のサイドメンバ間寸法が狭く一定であるが、途中から車両後方に向かって徐々にサイドメンバ間寸法が広くなり、車両後方側のサイドメンバ間寸法が広く一定になっている。
【0053】
そして、一対の第1サイドメンバ支持点S1,S1では、図8に示すように、バッテリパック間寸法Lb>サイドメンバ間寸法Ls1という寸法差がある。一方、一対の第2サイドメンバ支持点S2,S2では、図8に示すように、バッテリパック間寸法Lb<サイドメンバ間寸法Ls2という寸法差がある。なお、バッテリパックBPの車幅寸法であるバッテリパック間寸法Lbは、車両前後方向で一定としている。
【0054】
このため、一対の第1サイドメンバ支持点S1,S1と一対の第2サイドメンバ支持点S2,S2では、寸法差を許容する車体支持構造により対応する必要がある。以下、図7及び図8に基づいて第1車体支持構造7による車体支持作用を説明し、図9及び図10に基づいて第2車体支持構造8による車体支持作用を説明する。
【0055】
(第1車体支持構造7による車体支持作用)
第1車体支持構造7により車体に支持する際は、図8に示すように、ロア側バッテリケース11に設けた第1バッテリ側ブラケット71の固定面71aと、サイドメンバ109に設けた第1サイドメンバ側ブラケット72の固定面72aを互いに重ね合わせる。そして、両固定面71a,72aを互いに重ね合わせた状態で、締結ボルト92を車両下側から差し込み、車両上側に向かってねじ込むことにより、両ブラケット71,72が固定される。
【0056】
このとき、バッテリパック間寸法Lbがサイドメンバ間寸法Ls1よりも長いため、第1サイドメンバ側ブラケット72の固定面72aを、サイドメンバ109より車両外側(シル91側)へオフセットさせた位置に配置する。これにより、第1バッテリ側ブラケット71の固定面71aの位置に、第1サイドメンバ側ブラケット72の固定面72aの位置を合致させることができる。
【0057】
このように、バッテリパック間寸法Lbとサイドメンバ間寸法Ls1との間に、Lb>Ls1という関係の寸法差があっても、さらに、寸法差の大きさが異なったとしても、両ブラケット71,72を介在させることで高められた支持自由度により寸法差が許容される。
【0058】
したがって、バッテリパック間寸法Lbとサイドメンバ間寸法Ls1の間に、Lb>Ls1という関係の寸法差がある場合、この寸法差関係と寸法差の大きさを許容してバッテリパックBPが車体のサイドメンバ109に支持される。
【0059】
実施例1では、アッパー側バッテリケースカバー12のうち、サイドメンバ109と干渉する部位に、図8に示すように、サイドメンバ109との干渉を回避する凹部12aを設けた構成を採用した。
この構成より、バッテリパックBPを、図8に示すように、サイドメンバ109と車両上下方向にオーバーラップする位置まで押し上げることができ、フロアパネル100の地上高が低く抑えられる。つまり、地上からバッテリパックBPの底面までは、最低地上高により決まっている。また、バッテリパックBPの高さ寸法も決まっている。したがって、フロアパネル100の地上高は、最低地上高+バッテリパック高さ寸法+隙間で決まる。このとき、アッパー側バッテリケースカバー12に凹部12aを設けたことで、フロアパネル100の下面に対し、バッテリパックBPの上面を、最小限の隙間まで近づけることができる。
したがって、フロアパネル100の地上高が低く抑えられ、車室102や荷室103の空間が広く確保される。
【0060】
(第2車体支持構造8による車体支持作用)
第2車体支持構造8により車体に支持する際は、図10に示すように、ロア側バッテリケース11に設けた第2バッテリ側ブラケット81の固定面81aと、サイドメンバ109に設けた第2サイドメンバ側ブラケット82の固定面82aを互いに重ね合わせる。そして、両固定面81a,82aを互いに重ね合わせた状態で、締結ボルト92を車両下側から差し込み、車両上側に向かってねじ込むことにより、両ブラケット81,82が固定される。
【0061】
このとき、バッテリパック間寸法Lbがサイドメンバ間寸法Ls2よりも短いため、第2サイドメンバ側ブラケット82の固定面82aを、サイドメンバ109より車両内側(バッテリパックBP側)へオフセットさせた位置に配置する。これにより、第2バッテリ側ブラケット81の固定面81aの位置に、第2サイドメンバ側ブラケット82の固定面82aの位置を合致させることができる。
【0062】
このように、バッテリパック間寸法Lbとサイドメンバ間寸法Ls2との間に、Lb<Ls2という関係の寸法差があっても、さらに、寸法差の大きさが異なったとしても、両ブラケット81,82を介在させることで高められた支持自由度により寸法差が許容される。
【0063】
したがって、バッテリパック間寸法Lbとサイドメンバ間寸法Ls2の間に、Lb<Ls2という関係の寸法差がある場合、この寸法差関係と寸法差の大きさを許容してバッテリパックBPが車体のサイドメンバ109に支持される。
【0064】
次に、効果を説明する。
実施例1の電気自動車のバッテリパック車体支持構造にあっては、下記に列挙する効果を得ることができる。
【0065】
(1) バッテリモジュール2を収容したバッテリパックケース1を、車体下面に車両前後方向に延びて設けられた一対のサイドメンバ109,109に対して支持する電気自動車のバッテリパック車体支持構造において、
前記バッテリパックケース1のロア側バッテリケース11に、固定面71a,81aを有するバッテリ側ブラケット(第1バッテリ側ブラケット71,第2バッテリ側ブラケット81)を設け、
前記一対のサイドメンバ109,109に、前記バッテリ側ブラケット(第1バッテリ側ブラケット71,第2バッテリ側ブラケット81)の固定面71a,81aと車幅方向に符合する位置に固定面72a,82aを有するサイドメンバ側ブラケット(第1サイドメンバ側ブラケット72,第2サイドメンバ側ブラケット82)を設け、
前記バッテリ側ブラケット(第1バッテリ側ブラケット71,第2バッテリ側ブラケット81)の固定面71a,81aと前記サイドメンバ側ブラケット(第1サイドメンバ側ブラケット72,第2サイドメンバ側ブラケット82)の固定面72a,82aを互いに重ね合わせて固定した。
このため、バッテリパック間寸法Lbとサイドメンバ間寸法Ls1,Ls2に寸法差がある場合、寸法差を許容してバッテリパックBPを車体のサイドメンバ109,109に支持することができる。
【0066】
(2) 前記サイドメンバ側ブラケット(第1サイドメンバ側ブラケット72)の固定面72aを、前記一対のサイドメンバ109,109より車両外側へオフセットさせた位置に配置した。
このため、(1)の効果に加え、バッテリパック間寸法Lbとサイドメンバ間寸法Ls1の間に、Lb>Ls1という関係の寸法差がある場合、この寸法差関係と寸法差の大きさを許容してバッテリパックBPを車体のサイドメンバ109に支持することができる。
【0067】
(3) 前記一対のサイドメンバ109,109を、フロアパネル100の下面に設け、
前記バッテリパックケース1のアッパー側バッテリケースカバー12のうち、前記一対のサイドメンバ109,109と干渉する部位に凹部12aを設けた。
このため、(2)の効果に加え、フロアパネル100の地上高が低く抑えられ、車室102や荷室103の空間を広く確保することができる。
【0068】
(4) 前記サイドメンバ側ブラケット(第2サイドメンバ側ブラケット82)の固定面82aを、前記一対のサイドメンバ109,109より車両内側へオフセットさせた位置に配置した。
このため、(1)の効果に加え、バッテリパック間寸法Lbとサイドメンバ間寸法Ls2の間に、Lb<Ls2という関係の寸法差がある場合、この寸法差関係と寸法差の大きさを許容してバッテリパックBPを車体のサイドメンバ109に支持することができる。
【0069】
以上、本発明の電気自動車のバッテリパック車体支持構造を実施例1に基づき説明してきたが、具体的な構成については、この実施例1に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
【0070】
実施例1では、一対のサイドメンバ109,109として、サイドメンバ間寸法が車両前後方向で変化する例を示した。しかし、一対のサイドメンバとして、サイドメンバ間寸法が車両前後方向で変化せず一定寸法の場合にも適用できる。特に、同じ寸法規格のバッテリパックを共有化し、車種が異なる電気自動車に搭載する場合、バッテリパック車体支持構造を採用することで、サイドメンバ間寸法が様々に異なっても対応できる。
【0071】
実施例1では、サイドメンバ側ブラケットとして、L字形状の第1サイドメンバ側ブラケット72とJ字形状の第2サイドメンバ側ブラケット82を用いる例を示した。しかし、サイドメンバ側ブラケットの形状は、これらの形状に限られるものではなく、様々な形状を用いても良い。
【0072】
実施例1では、ブラケット固定面として、車両上下方向に対向する水平面による固定面71a,72a,81a,82aの例を示した。しかし、ブラケット固定面としては、傾斜面としても良いし、また、垂直面としても良い。さらに、固定部材として、締結ボルト92を用いる例を示したが、締結ボルト以外の固定部材を用いても良い。
【0073】
実施例1では、本発明のバッテリパック構造を走行用駆動源として走行用モータのみを搭載したワンボックスタイプの電気自動車に適用する例を示した。しかし、本発明の電気自動車のバッテリパック車体支持構造は、ワンボックスタイプ以外に、セダンタイプやワゴンタイプやSUVタイプ等の様々な電気自動車に適用できるのは勿論である。さらに、走行用駆動源として走行用モータとエンジンを搭載したハイブリッドタイプの電気自動車(ハイブリッド電気自動車)に対しても適用することができる。要するに、バッテリパックを一対のサイドメンバに支持する電気自動車であれば適用できる。
【符号の説明】
【0074】
BP バッテリパック
1 バッテリパックケース
11 ロア側バッテリケース
12 アッパー側バッテリケースカバー
12a 凹部
2 バッテリモジュール
21 第1バッテリモジュール
22 第2バッテリモジュール
23 第3バッテリモジュール
3 温調風ユニット
4 SDスイッチ
5 ジャンクションボックス
6 LBコントローラ
7 第1車体支持構造
71 第1バッテリ側ブラケット(バッテリ側ブラケット)
71a 固定面
72 第1サイドメンバ側ブラケット(サイドメンバ側ブラケット)
72a 固定面
8 第2車体支持構造
81 第2バッテリ側ブラケット(バッテリ側ブラケット)
81a 固定面
82 第2サイドメンバ側ブラケット(サイドメンバ側ブラケット)
82a 固定面
91 シル
92 締結ボルト
93 補強プレート
100 フロアパネル
109,109 サイドメンバ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリモジュールを収容したバッテリパックケースを、車体下面に車両前後方向に延びて設けられた一対のサイドメンバに対して支持する電気自動車のバッテリパック車体支持構造において、
前記バッテリパックケースのロア側バッテリケースに、固定面を有するバッテリ側ブラケットを設け、
前記一対のサイドメンバに、前記バッテリ側ブラケットの固定面と車幅方向に符合する位置に固定面を有するサイドメンバ側ブラケットを設け、
前記バッテリ側ブラケットの固定面と前記サイドメンバ側ブラケットの固定面を互いに重ね合わせて固定した
ことを特徴とする電気自動車のバッテリパック車体支持構造。
【請求項2】
請求項1に記載された電気自動車のバッテリパック車体支持構造において、
前記サイドメンバ側ブラケットの固定面を、前記一対のサイドメンバより車両外側へオフセットさせた位置に配置した
ことを特徴とする電気自動車のバッテリパック車体支持構造。
【請求項3】
請求項2に記載された電気自動車のバッテリパック車体支持構造において、
前記一対のサイドメンバを、フロアパネルの下面に設け、
前記バッテリパックケースのアッパー側バッテリケースカバーのうち、前記一対のサイドメンバと干渉する部位に凹部を設けた
ことを特徴とする電気自動車のバッテリパック車体支持構造。
【請求項4】
請求項1に記載された電気自動車のバッテリパック車体支持構造において、
前記サイドメンバ側ブラケットの固定面を、前記一対のサイドメンバより車両内側へオフセットさせた位置に配置した
ことを特徴とする電気自動車のバッテリパック車体支持構造。
【請求項1】
バッテリモジュールを収容したバッテリパックケースを、車体下面に車両前後方向に延びて設けられた一対のサイドメンバに対して支持する電気自動車のバッテリパック車体支持構造において、
前記バッテリパックケースのロア側バッテリケースに、固定面を有するバッテリ側ブラケットを設け、
前記一対のサイドメンバに、前記バッテリ側ブラケットの固定面と車幅方向に符合する位置に固定面を有するサイドメンバ側ブラケットを設け、
前記バッテリ側ブラケットの固定面と前記サイドメンバ側ブラケットの固定面を互いに重ね合わせて固定した
ことを特徴とする電気自動車のバッテリパック車体支持構造。
【請求項2】
請求項1に記載された電気自動車のバッテリパック車体支持構造において、
前記サイドメンバ側ブラケットの固定面を、前記一対のサイドメンバより車両外側へオフセットさせた位置に配置した
ことを特徴とする電気自動車のバッテリパック車体支持構造。
【請求項3】
請求項2に記載された電気自動車のバッテリパック車体支持構造において、
前記一対のサイドメンバを、フロアパネルの下面に設け、
前記バッテリパックケースのアッパー側バッテリケースカバーのうち、前記一対のサイドメンバと干渉する部位に凹部を設けた
ことを特徴とする電気自動車のバッテリパック車体支持構造。
【請求項4】
請求項1に記載された電気自動車のバッテリパック車体支持構造において、
前記サイドメンバ側ブラケットの固定面を、前記一対のサイドメンバより車両内側へオフセットさせた位置に配置した
ことを特徴とする電気自動車のバッテリパック車体支持構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2013−67255(P2013−67255A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−206693(P2011−206693)
【出願日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]