説明

電気自動車用バッテリーパック火災防止器具

【課題】火災発生時に酸素供給を遮断して火災の拡散防止を可能にするとともに、車両の運行及びバッテリーの充電時にバッテリーの冷却性能が維持できる電気自動車用バッテリーパック火災防止器具を提供する。
【解決手段】本発明の電気自動車用バッテリーパック火災防止器具は、バッテリーパック10を覆い、吸気口12及び排気口13が設けられて、内部で空気が循環できるバッテリーパックハウジング11と、前記バッテリーパックハウジング11内部に設けられて、バッテリーパック10の火災発生時にガス感知する火災感知センサーと、前記吸気口12及び排気口13それぞれに設置され、吸気口12及び排気口13を選択的に開放または閉鎖するダンパと、前記火災感知センサーのガス感知可否によって前記ダンパに開放信号または閉鎖信号を伝達する制御部と、を含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気自動車用バッテリーパック火災防止器具に係り、より詳しくは、火災発生時に酸素供給を遮断して、火災の拡散を防止する一方、バッテリーの冷却性能を維持させる電気自動車用バッテリーパック火災防止器具に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ハイブリッド自動車を含めて電気自動車や燃料電池自動車には、車両駆動用の電気エネルギーを供給するために高電圧バッテリーが使用される。
このような、高電圧バッテリーは、複数の単位電池またはモジュールを連結して高電圧を得るバッテリーパックからなり、高い電力を発生させる。
すなわち、高電圧バッテリーに保存されたエネルギーを、インバーターを通じてモータに伝達して車両始動、加速、エンジン高効率運行などに使用し、エンジンで余剰エネルギーが発生すると、モータを発電機として利用しその余剰エネルギーを高電圧バッテリーに保存する。
【0003】
このような高電圧バッテリーは、使用電流量が大きく、そのために内部で発生する熱量が多いので、高電圧バッテリーが使用される自動車には、高電圧バッテリーを冷却するための冷却システムが設けられる。
また、これと別に過電流及びショートなどが原因でバッテリーに発生する火災を防止するための手段が設けられる。
図1は、従来技術によるバッテリーパックの断面図であり、複数の円筒状電池セル110の間の空間にチューブ130が挿入され、チューブ130には消火薬剤が充填されたカプセル150が収納される。
そして、電池の異常作動による火災発生時には、カプセルが熱膨脹して破裂し、カプセル内に収容された消火薬剤が広がり火災が抑えられる。
【0004】
しかし、前記従来のバッテリーパックは、火災発生時にカプセルが破裂するため、一回使用後再使用するためには、カプセルに消火薬剤を充填して再びバッテリーパック内に収納しなければならない煩わしさがある。
また、バッテリーパックの再使用のためには、バッテリーパック内に広がった消火薬剤をきれいに掃除した後再び使用しなければならないことで、再使用自体が容易でないという問題もある。
さらに、カプセルが決まった位置に収納された状態で破裂するため、カプセルに収容された消火薬剤が火災発生時に正確に散布できず、火災を確実に抑え込むことができない問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平09−161746号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、従来の問題点を解決するためになされたものであって、本発明の目的は、火災発生時に酸素供給を遮断して火災の拡散防止を可能にするとともに、車両の運行及びバッテリーの充電時にバッテリーの冷却性能が維持できる電気自動車用バッテリーパック火災防止器具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の電気自動車用バッテリーパック火災防止器具は、バッテリーパック(10)を覆い、吸気口(12)及び排気口(13)が設けられて、内部で空気が循環できるバッテリーパックハウジング(11)と、前記バッテリーパックハウジング(11)内部に設けられて、バッテリーパック(10)の火災発生時にガス感知する火災感知センサー(20)と、前記吸気口(12)及び排気口(13)それぞれに設置され、吸気口(12)及び排気口(13)を選択的に開放または閉鎖するダンパ(30)と、前記火災感知センサー(20)のガス感知可否によって前記ダンパ(30)に開放信号または閉鎖信号を伝達する制御部(40)と、を含むことを特徴とする。
【0008】
前記ダンパ(30)は、吸気口(12)及び排気口(13)それぞれの内部を横切って設置された回転軸(31)と、前記回転軸(31)に固定され、火災発生時に回転軸(31)とともに回転して外周部が前記吸気口(12)及び排気口(13)それぞれの内周に接触するように形成された遮断板32と、前記回転軸(31)に連結されて、制御部(40)から信号の伝達を受けて前記回転軸(31)に回転力を伝達するアクチュエータ(33)と、を含むことを特徴とする。
【0009】
前記制御部(40)は、火災感知センサー(20)でガスが感知された場合、ダンパ(30)に前記ダンパ(30)の閉鎖信号を伝達し、火災感知センサー(20)でガスが感知されない場合、ダンパ(30)に前記ダンパ(30)の開放信号を伝達することを特徴とする。
【0010】
前記制御部(40)は、バッテリーで車両駆動のための電流が消耗される場合、ダンパ(30)に前記ダンパ(30)開放信号を伝達してバッテリーパック(10)を冷却させ、バッテリーで車両駆動のための電流が消耗されない場合、ダンパ(30)に前記ダンパ(30)の閉鎖信号を伝達することを特徴とする。
【0011】
前記制御部(40)は、バッテリーが充電される場合、ダンパ(30)に開放信号を伝達してバッテリーパック10を冷却させることを特徴とする。
【0012】
前記吸入口(12)及び排出口(13)それぞれの上面には異物防止口(15)が設けられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、バッテリーパック内のショートや異常動作による火災発生時に、火災感知センサーのガス感知によってダンパが吸気口及び排気口を閉鎖することで、バッテリーパック内部への空気供給を遮断し、火災の拡散を防いで車両及び人命被害を防止できる効果がある。
また、バッテリーで車両駆動用の電流消耗がない場合にダンパが吸気口及び排気口を閉鎖して、バッテリーパック内部への空気及び異物の流入を遮断し、火災発生を予防することができる。
さらに、車両が運行状態であるか、またはバッテリーが充電されている状態では、ダンパが吸気口及び排気口を開放することで、バッテリーパック内部に空気が循環供給され、バッテリーの冷却性能を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】従来技術によるバッテリーパックの断面図である。
【図2】本発明による電気自動車用バッテリーパックの斜視図である。
【図3】本発明による電気自動車用バッテリーパックの吸入口に設置されたダンパの斜視図である。
【図4】本発明による電気自動車用バッテリーパックの排気口に設置されたダンパの斜視図である。
【図5】本発明によるバッテリーパック火災防止器具の回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の望ましい実施例を図面によって詳しく説明する。 図2ないし図5は、本発明の電気自動車用バッテリーパック火災防止器具に関するものであり、バッテリーパックハウジング11と、火災感知センサー20と、ダンパ30、及び制御部40を含んで構成される。
図2及び図5に示す通り、バッテリーパックハウジング11はバッテリーパック10を覆うように設置され、吸気口12及び排気口13が設けられて内部に空気が循環するようになっている。そして、火災感知センサー20はバッテリーパックハウジング11内部に設けられて、バッテリーパック10の火災発生時にガスを感知する。また、ダンパ30は吸気口12及び排気口13それぞれに設置されて、吸気口12及び排気口13を選択的に開放または閉鎖するように設けられる。制御部40は火災感知センサー20のガス感知可否によってダンパ30に開放信号または閉鎖信号を伝達する。
【0016】
火災感知センサー20は、火災時に発生するガスを感知するセンサーとして、煙センサーまたはCOセンサーなどが使用可能である。そして、制御部40にはバッテリー管理システム(BMS)を適用することができる。
すなわち、火災感知センサー20によるガス感知可否によって制御部40からダンパ30に開放信号または閉鎖信号が伝達され、ダンパ30が回動することで、吸気口12及び排気口13が開放または閉鎖される。従って、火災事発生時にダンパ30が吸気口12及び排気口13を閉鎖してバッテリーパック10内部への空気供給を遮断し、火災の拡散が防止される。
【0017】
次に、図3と図4によりダンパ30の構成を具体的に説明する。
ダンパ30は、吸気口12及び排気口13それぞれの内部を横断して設置される回転軸31と、遮断板32、及びアクチュエータ33から構成されっる。
遮断板32は回転軸31に固定され、回転軸31とともに回転し、火災発生時に遮断板32外周部が吸気口12及び排気口13の内周に接触するようになっている。また、アクチュエータ33は回転軸31に連結されて、制御部40から信号の伝達を受けて回転軸31に回転力を伝達する。
【0018】
制御部40から開放信号または閉鎖信号がアクチュエータ33に伝達されると、アクチュエータ33が駆動されて回転軸31が回転し、回転軸31に取り付けられた遮断板32が回転軸31と共に回転して、火災発生時には吸気口12及び排気口13が閉鎖される。
吸気口12及び排気口13は図2に示す通り、円形または四角形をなしバッテリーパックハウジング11の上部に突出形成されるが、吸気口12及び排気口13の形状は前記形状に制限されるものではない。
遮断板32は、火災発生時に吸気口12及び排気口13それぞれの内周面に密着するよう形状は吸気口12及び排気口13と同一形状で、遮断板32の外周部は吸気口12及び排気口13の内周面より少し小さいか、または同じ大きさに形成される。
【0019】
そして、遮断板32は、回転軸31を中心に両側が垂直または水平状態になるよう及びヒンジ回転するように構成され、回転軸31は、吸気口12及び排気口13それぞれの内部中心に位置するように設置されるが、吸気口12及び排気口13それぞれの内部で一側に偏心して設置されることもできる。
吸気口12及び排気口13それぞれの上面には異物防止口15が設置される。異物防止口15は小さなホール多数個から形成されたもので、空気を通過させて異物は取り除くフィルターの役割を有する。
すなわち、異物防止口15を通じて吸気口12及び排気口13内部に異物が流入することを防止しながら、空気は通過できるようになっている。
【0020】
制御部40は、火災感知センサー20でガスが感知される場合ダンパ30に閉鎖信号を伝達して、火災感知センサー20でガスが感知されない場合ダンパ30に開放信号を伝達する。
すなわち、車両の運行状態で火災感知センサー20から火災感知信号が感知されない状態では、制御部40はアクチュエータ33に開放信号を伝達し、アクチュエータ33が駆動されて回転軸31と共に遮断板32を開放モードで回転させる。このため、吸気口12及び排気口13が開放されて、バッテリーパック10内部に空気が流入しバッテリーの冷却性能を維持させることができる。
【0021】
反面、車両の運行可否にかかわらずバッテリーパック10内部にショートや高電流による異常動作などによる火災が発生し、火災感知センサー20でガスが感知されれば、火災感知センサー20から制御部40に火災感知信号が伝達され、アクチュエータ33に閉鎖信号を伝達する。これにより、アクチュエータ33が駆動されて回転軸31と共に遮断板32を閉鎖モードで回転させ、遮断板32が吸気口12及び排気口13を閉鎖させる。
したがって、バッテリーパック10内部への空気流入を遮断して、火災の拡散を防止することはもちろん、バッテリーパック10内に発生した火災を初期に抑えることができる。
【0022】
併せて、制御部40は、バッテリーで車両駆動のための電流を消耗する場合ダンパ30に開放信号を伝達してバッテリーパック10を冷却させ、バッテリーで車両運行のための電流を消耗しない場合、ダンパ30に閉鎖信号を伝達する。
すなわち、バッテリーで車両運行のための電流を消耗する場合には制御部40ではアクチュエータ33に開放信号を伝達し、アクチュエータ33が駆動されて回転軸31と遮断板32を開放モードで回転させ、これにより吸気口12及び排気口13が開放されて、バッテリーパック10内部に空気が流入しバッテリーの冷却性能が維持できる。
【0023】
反面、バッテリーで車両運行のための電流を消耗しない場合には、制御部40はアクチュエータ33に閉鎖信号を伝達し、アクチュエータ33が駆動されて回転軸31と遮断板32を閉鎖モードで回転させる。これにより、吸気口12及び排気口13が閉鎖され、バッテリーパック10内部への空気及び異物の流入を遮断して、火災発生を予防することができる。
【0024】
そして、制御部40は、バッテリーが充電される場合ダンパ30に開放信号を伝達してバッテリーパック10を冷却させる。
すなわち、バッテリーの緩速充填モードまたは急速充電モードにかかわらずバッテリーが充電される場合、制御部40ではアクチュエータ33に開放信号を伝達して、アクチュエータ33が駆動され、回転軸31と遮断板32を開放モードで回転させる。これにより、吸気口12及び排気口13が開放されて、バッテリーパック10内部に空気が流入しバッテリーの冷却性能が維持される。
【0025】
以上、本発明に関する好ましい実施形態を説明したが、本発明は前記実施形態に限定されず、本発明の属する技術範囲を逸脱しない範囲での全ての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0026】
10 バッテリーパック
11 バッテリーパックハウジング
12 吸気口
13 排気口
15 異物防止口
20 火災感知センサー
30 ダンパ
31 回転軸
32 遮断板
33 アクチュエータ
40 制御部



【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリーパック(10)を覆い、吸気口(12)及び排気口(13)が設けられて、内部で空気が循環できるバッテリーパックハウジング(11)と、
前記バッテリーパックハウジング(11)内部に設けられて、バッテリーパック(10)の火災発生時にガス感知する火災感知センサー(20)と、
前記吸気口(12)及び排気口(13)に設置され、吸気口(12)及び排気口(13)を選択的に開放または閉鎖するダンパ(30)と、
前記火災感知センサー(20)のガス感知可否によって前記ダンパ(30)に開放信号または閉鎖信号を伝達する制御部(40)と、
を含むことを特徴とする電気自動車用バッテリーパック火災防止器具。
【請求項2】
前記ダンパ(30)は、
吸気口(12)及び排気口(13)それぞれの内部を横切って設置された回転軸(31)と、
前記回転軸(31)に固定され、火災発生時に回転軸(31)とともに回転して外周部が前記吸気口(12)及び排気口(13)それぞれの内周に接触するように形成された遮断板32と、
前記回転軸(31)に連結されて、制御部(40)から信号の伝達を受けて前記回転軸(31)に回転力を伝達するアクチュエータ(33)と、
を含むことを特徴とする請求項1に記載の電気自動車用バッテリーパック火災防止器具。
【請求項3】
前記制御部(40)は、
火災感知センサー(20)でガスが感知された場合、ダンパ(30)に前記ダンパ(30)の閉鎖信号を伝達し、火災感知センサー(20)でガスが感知されない場合、ダンパ(30)に前記ダンパ(30)の開放信号を伝達することを特徴とする請求項1に記載の電気自動車用バッテリーパック火災防止器具。
【請求項4】
前記制御部(40)は、
バッテリーで車両駆動のための電流が消耗される場合、ダンパ(30)に前記ダンパ(30)開放信号を伝達してバッテリーパック(10)を冷却させ、バッテリーで車両駆動のための電流が消耗されない場合、ダンパ(30)に前記ダンパ(30)の閉鎖信号を伝達することを特徴とする請求項1に記載の電気自動車用バッテリーパック火災防止器具。
【請求項5】
前記制御部(40)は、
バッテリーが充電される場合、ダンパ(30)に開放信号を伝達してバッテリーパック10を冷却させることを特徴とする請求項1に記載の電気自動車用バッテリーパック火災防止器具。
【請求項6】
前記吸入口(12)及び排出口(13)それぞれの上面には異物防止口(15)が設けられることを特徴とする請求項1に記載の電気自動車用バッテリーパック火災防止器具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−70992(P2013−70992A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−247322(P2011−247322)
【出願日】平成23年11月11日(2011.11.11)
【出願人】(591251636)現代自動車株式会社 (1,064)
【出願人】(500518050)起亞自動車株式会社 (449)
【Fターム(参考)】