説明

電気融着継手の通電制御装置

【課題】電気融着継手に通電する通電制御装置に原動機式発電機から電源を供給する場合、この発電機の発動機不調で電源電圧または電源周波数が大幅に変動する。また、発電機のブラシの不具合によりノイズの発生、発電コイルのインダクタンスにより異常高電圧の発生の問題がある。この結果、融着作業において発動機式発電機の使用に起因する融着不良の発生、または、通電制御装置が故障する問題がある。
【解決手段】電気融着継手に通電する通電制御装置に供給される交流電源の周波数、または、周期を検出し、検出した周波数、または、周期が予め設定した範囲を外れる場合は発動機式発電機による交流電源と判断し通電を開始させない。または、通電中の場合は通電を中止させる。この結果、融着作業で使用する交流電源は商用電源、または、インバータタイプの発電機に限定されるので、発電機に起因する融着不良の発生、通電制御装置の故障発生を防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気融着継手と樹脂パイプを融着作業する時に使用する、電気融着継手の通電制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電気融着継手の通電制御装置(以降、通電制御装置と言う)に供給する交流電源の種類は、国内の電力会社が供給する商用電源(以降、商用電源と言う)、発動機を駆動源とする発電機(以降、発動機式発電機と言う)などがある。特に、発動機式発電機の場合、発動機の不調により発電する電圧が大幅に低下、変動する可能性がある。通電制御装置に供給する電源電圧が大幅に低下すると、通電制御装置の出力も規定の出力よりも低下し、電気融着継手の発熱量不測により融着不良が発生する問題がある。この問題に対し、従来の通電制御装置は電源電圧検出機能を持たせ、電源電圧が大幅に低下したことを検出すると異常を通知し、電気融着継手へ通電開始を禁止している。また、電気融着継手へ通電中に電源電圧の大幅な低下を検出した場合、通電を中断し、異常を通知している。
【0003】
特開平11−291355に於いては、通電制御装置に供給される交流電源の電圧を検出し、電源電圧が低下したことを検出すると通電を中断し、電源電圧が正常に復旧すると停電した時間を考慮した時間を加算した通電を再開するようになっている。この方法により、電源電圧の低下による融着不良の発生を防止している。ただし、電源周波数、または、電源周期の検出を行うことによる電源の異常検出、および、その対応は行っていない。
【0004】
特開2000−171493に於いては、交流電源の周波数、または、周期を検出し、その検出値が予め設定した範囲内にあるかどうかの確認をしている。この電源の異常検出の目的は停電したことの高速検出にある。電車のパンタグラフが架線と接触不良が発生した場合、架線からの電源供給は絶たれるが、モーターの回生、発電などにより電源電圧はすぐに低下しない問題がある。従って、電源電圧の低下による高速な停電検出は不可能であり、この問題を解決するために電源周波数、または、周期を検出することにより、高速な停電検出を実現している。
【0005】
特開2000−339233に於いては、商用電源の電圧をパルス幅に変換し、電源電圧を検出すると共に、商用電源の瞬時停電の検出、商用電源の50/60Hz判定を兼用している。商用電源の異常検出を目的とするものであり、発電機による電源を対象としていない。
【0006】
【特許文献1】特開平11−291355
【特許文献2】特開2000−171498
【特許文献3】特開2000−339233
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
通電制御装置に供給する電源として、商用電源以外に発動機式発電機がある。発動機式発電機の問題は出力する電源電圧が大幅に低下、変動する以外に、急激な供給電流低下による異常高電圧の発生、ブラシの接触不良によるノイズの発生、磁気回路の非直線性による電源波形歪の発生、発電機の回転数変動による電源周波数の変動などがある。異常高電圧は通電制御装置を故障させる可能性がある。ノイズの発生は通電制御装置を制御しているマイコンの誤動作を発生させる可能性がある。電源波形歪は通電制御装置が出力する電圧、または、電流の実効値制御に誤差を発生させる可能性がある。電源周波数に依存する制御方法を採用している通電制御装置に於いて、電源周波数が変動すると制御誤差が発生する可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
信頼性の高い融着作業を実現するためには、問題発生の危険性が高い発動機式発電機の使用を禁止することで、融着作業の信頼性が大幅に改善できることが期待できる。
【0009】
商用電源の電源周波数は50Hzまたは60Hzであり、その電源周波数の精度は極めて高い。これに反して、発動機式発電機が供給する電源周波数は、発動機式発動機の回転数に依存する。発動機式発電機の回転数は吸入部にあるスロットで発動機に吸入する燃料の混合気が制御されるため、回転数を高精度に維持することは困難である。この結果、発動機式発電機が供給する交流電源の周波数は変動することになる。従って、通電制御装置に供給される電源周波数を検出し、その周波数が50Hz、または、60Hzとの誤差が大きいことで発動機式発電機による交流電源と判断できる。
【0010】
ただし、高級、高性能なインバータタイプの発動機式発電機の場合、発動機の回転数が変動しても供給する交流電源の周波数は高精度に維持されるので、この方法では検出不可能である。しかし、インバータタイプの発動機式発電機は、一般的な発動機式発電機が持つ殆どの問題点は解決されているので、発動機式発電機として検出し、使用禁止にする必要はない。
【0011】
一般的な発動機式発電機の使用を禁止するためには、通電制御装置が交流電源を監視し、検出した交流電源の周波数により電源の種類を発動機式発電機と判断した場合、通電制御装置の通電機能を停止するとともに電源異常を警報すればよい。
【0012】
請求項1に係わる発明は、通電制御装置が電気融着継手へ通電を開始する前に、通電制御装置に供給される交流電源の周波数、または、周期を検出し、その検出値が予め設定した範囲外にある場合、警報を行い、かつ、または、通電開始を禁止することを特徴とする。
【0013】
請求項2に係わる発明は、通電制御装置が電気融着継手へ通電中に、通電制御装置に供給される交流電源の周波数、または、周期を検出し、その検出値が予め設定した範囲外にある場合、警報を行い、かつ、または、通電を中断することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本考案を適用した通電制御装置は、一般的な発動機式発電機を電源とした融着作業が不可能となる。融着作業で使用する交流電源が商用電源、または、高級、高性能なインバータタイプの発動機式発電機に制限されるので、融着作業の信頼性を高めることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1に本考案を適用した通電制御装置のブロック図を示す。通電制御装置本体1は交流電源を電源ケーブル2により供給し、出力制御部11で所定の出力電圧、または出力電流に制御され、出力ケーブル3に接続された電気融着継手21に電気エネルギーを供給するように構成されている。表示装置15には通電制御装置の状態、操作手順、異常発生時には異常内容などが表示される。電気融着継手21に融着接続する樹脂パイプ31、樹脂パイプ32を挿入した後、出力ケーブル3を電気融着継手21に接続する。この後、操作スイッチ14を操作すると電気融着継手21への通電が開始される。電気融着継手21は供給された電気エネルギーにより発熱し、電気融着継手21とこれに挿入された樹脂パイプ31、樹脂パイプ32の接合面の樹脂を溶融させ電気融着継手21と樹脂パイプ31、樹脂パイプ32を融着接合する。設定した時間が経過すると、融着が完了したと判断し通電を停止し融着作業は完了する。
【0016】
本発明を適用した通電制御装置は、従来の通電制御装置に、供給される交流電源の周波数、または、周期の検出回路12を追加し、この検出回路の出力をマイコン13に入力する。この追加した回路構成により、通電制御装置本体1を制御しているマイコン13は、通電制御装置に供給される交流電源の周波数、または、周期を検出することが可能となる。
【0017】
通電制御装置が電気融着継手21に通電を開始する前に検出した交流電源の周波数、または、周期が予め規定した範囲外になった場合、使用している交流電源を発動機式発電機と判断し、通電を開始することを禁止するとともに表示装置15、または、かつ、警報ブザー16により異常の通知を行う。これが請求項1である。
【0018】
通電制御装置が電気融着継手21に通電中に検出した交流電源の周波数、または、周期が予め規定した範囲外になった場合、使用している交流電源を発動機式発電機と判断し、通電を中断するとともに表示装置15、または、かつ、警報ブザー16により異常の通知を行う。これが請求項2である。
【0019】
通電制御装置が交流電源の周波数を検出して交流電源の種類を判断する実施例を図2に示すフローチャートに基づいて説明する。マイコンは供給される交流電源の周波数を定期的に検出する。商用電源の周波数は50Hzまたは60Hzであり、その周波数精度は極めて高い。通電制御装置が検出した交流電源の周波数が50Hz±1Hz以内、または、60Hz±1Hz以内の場合、供給される交流電源の種類を商用電源と判断する。もし、検出した交流電源の周波数が予め設定した範囲外の場合、供給される交流電源の種類を発動機式発電機と判断し、通電制御装置の通電機能を禁止または中止し表示器、または、かつ、警報ブザーにより交流電源の種類が不適である内容の警報を行う。
【0020】
実施例では通電制御装置に供給される交流電源の周波数を検出することで交流電源の種類を判断しているが、供給される交流電源の周期を検出することにより同様の交流電源の種類の判断を行ってよい。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明を実施した電気融着装置のブロック図
【図2】本発明の実施方法の一例を示すフローチャート
【符号の説明】
【0022】
1 通電制御装置本体
2 電源ケーブル
3 出力ケーブル
11 出力制御部
12 周波数、または、周期検出回路
13 マイコン
14 操作スイッチ
15 表示装置
16 警報ブザー
21 電気融着継手
31 樹脂パイプ
32 樹脂パイプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気融着継手に通電する通電制御装置であって、電気融着継手に通電を開始する前にこの通電制御装置に供給される交流電源の周波数、または、周期を検出し、検出した周波数、または、周期が予め設定した範囲内にない場合、異常を警報し、または、かつ、電気融着継手への通電開始を禁止することを特徴とする電気融着継手の通電制御装置の異常検知および異常対応方法。
【請求項2】
電気融着継手に通電する通電制御装置であって、電気融着継手に通電中にこの通電制御装置に供給される交流電源の周波数、または、周期を検出し、検出した周波数、または、周期が予め設定した範囲内にない場合、通電を停止し、または、かつ、異常を警報することを特徴とする電気融着継手の通電制御装置の異常検知および異常対応方法。
【請求項3】
請求項1、または、かつ、請求項2を適用した電気融着継手の通電制御装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−155564(P2008−155564A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−349252(P2006−349252)
【出願日】平成18年12月26日(2006.12.26)
【出願人】(306043482)
【Fターム(参考)】