説明

電気車制御装置

【課題】より安定して動作する電気車制御装置を提供する。
【解決手段】電気車制御装置100は、電気車を力行させる電動機8を駆動する電力変換部7と、電車線1から電力を集電し前記電力変換部7に供給する第1の集電部と、前記電力変換部7と前記第1の集電部との間に設けられる接触器5と、を備え、前記接触器5を投入した状態で惰行走行を開始する電気車制御装置であって、前記第1の集電部より前記電気車の進行方向において前方に設置され、前記電車線1から電力を集電する第2の集電部と、前記第2の集電部における停電を検知する停電検知部と、前記停電検知部により前記第2の集電部における停電を検知する場合、前記接触器5を開放する制御部15と、を具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、電気車制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電気車を駆動する電動機の制御装置として、第三軌条または架線などの電車線から直流電力を集電装置により集電し、誘導電動機を駆動する電気車制御装置がある。電気車制御装置は、第三軌条または架線などから集電した直流電力を電力変換器(インバータ)に送り、交流電力に変換する。電気車制御装置は、変換した交流電力により誘導電動機を駆動する。
【0003】
上記した電気車制御装置は、電気車を加速させる必要がなくなった場合、インバータを停止させ、惰行走行を行う。電気車制御装置は、インバータと第三軌条または架線などの電車線との間の電流を遮断する接触器を備える。電気車制御装置は、惰行走行を行う場合、この接触器をOFFし、送電路からの電流を遮断する。しかし、惰行走行を行う度に接触器を動作させる必要がある為、接触器の寿命が短くなる。そこで、接触器をOFFせずに、惰行走行を行う電気車制御装置が一般的に知られている。
【0004】
しかし、電力変換器の停止中も接触器の投入状態を維持する方式の場合、常に電車線と平滑用のフィルタコンデンサとが接続された状態となる。特に、電車線の停電区間(デッドセクション)を惰行走行にて通過した場合、フィルタコンデンサの電圧は、デッドセクション進入後も徐々に低下しながら保持される。このため、デッドセクション通過後、集電装置が電車線に再着線した際に、電車線の電圧とフィルタコンデンサの電圧の差電圧により、電車線からフィルタコンデンサに対して突入電流が発生する。
【0005】
これを防ぐ為に、集電装置に接続される電圧検出器により、集電装置がデッドセクションに進入することを検知する場合、接触器を開放することが考えられる。しかし、集電装置がデッドセクションに進入しても、電力を蓄えたフィルタコンデンサにより電圧検出装置が加圧される為、電圧検出装置によりデッドセクションを検知することが出来ない。この為、適切なタイミングで接触器を開放することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−166885号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
より安定して動作する電気車制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一実施形態に係る電気車制御装置は、電気車を力行させる電動機を駆動する電力変換部と、電車線から電力を集電し前記電力変換部に供給する第1の集電部と、前記電力変換部と前記第1の集電部との間に設けられる接触器と、を備え、前記接触器を投入した状態で惰行走行を開始する電気車制御装置であって、前記第1の集電部より前記電気車の進行方向において前方に設置され、前記電車線から電力を集電する第2の集電部と、前記第2の集電部における停電を検知する停電検知部と、前記停電検知部により前記第2の集電部における停電を検知する場合、前記接触器を開放する制御部と、を具備する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、一実施形態に係る電気車制御装置の構成例について説明するための説明図である。
【図2】図2は、一実施形態に係る電気車制御装置の構成例について説明するための説明図である。
【図3】図3は、一実施形態に係る電気車制御装置の構成例について説明するための説明図である。
【図4】図4は、一実施形態に係る電気車制御装置の構成例について説明するための説明図である。
【図5】図5は、一実施形態に係る電気車制御装置の構成例について説明するための説明図である。
【図6】図6は、一実施形態に係る電気車制御装置の構成例について説明するための説明図である。
【図7】図7は、一実施形態に係る電気車制御装置の構成例について説明するための説明図である。
【図8】図8は、一実施形態に係る電気車制御装置の構成例について説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら、一実施形態に係る電気車制御装置について詳細に説明する。
【0011】
(第1の実施形態)
図1は、一実施形態に係る電気車制御装置100の構成例について説明するための説明図である。
図1に示すように、電気車制御装置100は、線路と平行して設置される第三軌条または架線などの電車線1から電力を受けて動作する。なお、電車線1には、送電所からの電力の供給が途絶える区間(デッドセクション)10が存在する。
【0012】
電気車制御装置100は、集電装置2a、2b、及び2c、電圧検出器(DCPT)3a及び3b、高速度遮断器4、開放接触器5、フィルタコンデンサ6、電力変換器(インバータ)7、主電動機(MM)8、接地ブラシ9、母線引き通し11、母線接触器12、並びに制御部15を備える。
【0013】
集電装置2a、2b、及び2cは、電車線1から電力を集電する。電圧検出器3a及び3bは、供給される電圧の電圧値を検出する。高速度遮断器4は、問題発生時に電車線1からの電力の供給を遮断する保全装置である。開放接触器5は、制御部15の制御に基づいて、フィルタコンデンサ6及び電力変換器7と電車線1との間の回路を開放する。フィルタコンデンサ6は、電力を保持し、電力変換器7に安定して平滑な電力を供給する。
【0014】
電力変換器7は、供給される直流電力を交流電力(例えば三相交流)に変換する。主電動機8は、電力変換器7によって変換された交流電力に応じて動作し、軸を回転させる。接地ブラシ9は、電気車制御装置100を異常電圧から保護するアースである。
【0015】
集電装置2a及び2bは、電車線1から電力を集電する。集電装置2aは、車両の進行方向において集電装置2bと離隔されて設置される。例えば、集電装置2aは、車両の進行方向において集電装置2bより前方に離隔されて設置される。集電装置2aは、集電した電力を電圧検出器3aに供給する。電圧検出器3aは、供給される電圧の値を検出する。電圧検出器3aは、検出した電圧値を制御部15に伝送する。
【0016】
集電装置2bは、集電した直流電力を電力変換器7及び電圧検出器3bに供給する。電圧検出器3bは、供給される電圧の値を検出する。電圧検出器3bは、検出した電圧値を制御部15に伝送する。
【0017】
電力変換器7は、集電装置2bから供給される直流電力を交流電力に変換する。電力変換器7は、変換した交流電力を主電動機8に供給する。主電動機8は、電力変換器7によって変換された交流電力に応じて動作し、軸を回転させる。
【0018】
制御部15は、電気車制御装置100の全体の制御を司るものである。制御部15は、例えば、CPU、バッファメモリ、プログラムメモリ、不揮発性メモリ、及び種々の演算を行う各種のハードウエアなどを備える。CPUは、種々の演算処理を行う。バッファメモリは、CPUにより演算結果を一時的に記憶する。プログラムメモリ及び不揮発性メモリは、CPUが実行する種々のプログラム及び制御データなどを記憶する。
【0019】
制御部15は、CPUによりプログラムメモリに記憶されているプログラムを実行することにより、種々の処理を行うことができる。
【0020】
制御部15は、電圧検出器3aから伝送される電圧値と、予め設定される閾値とを比較する。電圧値が予め設定される閾値未満である場合、制御部15は、集電装置2aが設置されている位置における電車線1がデッドセクション10であると判定する。即ち、制御部15は、電圧検出器3aにより集電装置2aの設置位置における電車線1の停電を検知する。
【0021】
また、制御部15は、電圧検出器3bから伝送される電圧値と、予め設定される閾値とを比較する。電圧値が予め設定される閾値未満である場合、制御部15は、集電装置2bが設置されている位置における電車線1がデッドセクション10であると判定する。即ち、制御部15は、電圧検出器3bにより集電装置2bの設置位置における電車線1の停電を検知する。
【0022】
電気車制御装置100は、電車線1が途切れても電力変換器7へ電力の供給を継続するために、母線引き通し11、母線接触器12、及び母線引き通し11に接続される集電装置2cを備える。
【0023】
集電装置2cは、車両の進行方向において集電装置2bと離隔されて設置される集電装置である。例えば、集電装置2cは、車両の進行方向において集電装置2bより後方に離隔されて設置される。母線引き通し11は、集電装置2cと集電装置2bとを電気的に接続する。これにより、集電装置2bの位置において電車線1が途切れても、集電装置2cの位置において電車線1に電力が供給されていれば、電気車制御装置100は、電力変換器7への電力の供給を継続することができる。
【0024】
また、母線接触器12は、集電装置2cと集電装置2bとの間の回路、即ち母線引き通し11を開放する。例えば、デッドセクション10の手前の電車線1bが電力が供給されている加圧区間であり、デッドセクション10の先の電車線1aが電力が供給されていない停電区間である場合、電気車制御装置100は、母線引通し11を介して電車線1bの電圧により電車線1aを加圧する。
【0025】
これを避ける為に、制御部15は、電圧検出器3aにより停電区間(デッドセクション)10を検知する場合、母線接触器12を開放する。これにより、電気車制御装置100は、停電区間である電車線1aに対する加圧を防止することができる。
【0026】
制御部15は、図示しない運転台端末からの信号(操作者による操作に応じた制御信号)などに基づいて、電力変換器7、開放接触器5、母線接触器12、及び他のモジュールを制御する。
【0027】
例えば、惰行走行を行う制御信号が運転台端末から入力される場合、制御部15は、電力変換器7を停止させ、惰行走行を行う。また、開放接触器5を開放する制御信号が運転台端末から入力される場合、制御部15は、開放接触器5を開放する。
【0028】
なお、本実施形態に係る電気車制御装置100は、惰行走行を行う場合、開放接触器5を開放(OFF)せずに、惰行走行を行う。即ち、電気車制御装置100は、惰行走行を行う制御信号が運転台端末から入力される場合、自動的に開放接触器5を開放しないように動作する。
【0029】
図2、図3、及び図4は、電気車制御装置100を搭載する車両がデッドセクション10を通過する例について示す説明図である。
図2は、電気車制御装置100の集電装置2aがデッドセクション10に進入した例を示す図である。図3は、電気車制御装置100の集電装置2bがデッドセクション10に進入した例を示す図である。図4は、電気車制御装置100の集電装置2cがデッドセクション10に進入した例を示す図である。
【0030】
図5は、一実施形態に係る電気車制御装置100の制御部15の動作について説明する為の説明図である。
図5に示すように、制御部15は、開放を要する回路動作21と、電圧検出器3aから伝送される電圧値による停電検知22との論理和23に基づいて、開放接触器5の開放指令24を出力する。
【0031】
即ち、制御部15は、例えば電力変換器7を構成する半導体スイッチの故障の検知など、開放接触器5を開放する必要があることが図示しないセンサなどにより検知される場合、または、電圧検出器3aから伝送される電圧値により停電を検知する場合、開放接触器5を開放するように制御する。なお、電圧検出器3aが観測する電圧は、集電装置2aの電圧であり、電力変換器7が電源として使用する集電装置2bとは異なる。また、集電装置2a及び電圧検出器3aは、母線接触器12の開放用として用いられるものを兼用することができる。
【0032】
また、集電装置2a及び2bは、電車線1aまたは1bを介して接続される。この為、図2に示すように、集電装置2aが電車線1bから離線する場合、集電装置2aは、フィルタコンデンサ6から回路的に切り離される。
【0033】
この構成によると、車両がデッドセクション10を惰行にて通過する場合、集電装置2aが無加圧となる為、電圧検出器3aにより検出する電圧値に基づいて制御部15により停電が検知される。この場合、制御部15は、開放接触器5を開放する。これにより、電気車制御装置100は、集電装置2bがデッドセクション10を通過する前に、フィルタコンデンサ6と集電装置2bとを切り離すことができる。
【0034】
即ち、集電装置2bがデッドセクション10を通過し、電車線1aに再着線する場合であっても、開放接触器5が開放されているため、電気車制御装置100は、フィルタコンデンサ6への突入電流の発生を防ぐことができる。
【0035】
上記したように、電気車制御装置100は、開放接触器5の投入を維持したまま惰行走行を行う場合であっても離線後の再着線時に突入電流が発生することを防ぐことができる。これにより、突入電流による高速度遮断器トリップ及び誘導障害などの防止と、開放接触器5の動作頻度の低減とを両立することができる。この結果、より安定して動作する電気車制御装置を提供することができる。
【0036】
(第2の実施形態)
第1の実施形態において開放接触器5が開放された後、集電装置2bがデッドセクション10を通過している間に、力行指令、または電気ブレーキ指令が運転台端末から制御部15に入力される場合、制御部15は、開放接触器5を再び投入してしまう。
【0037】
この場合、集電装置2aは、既に電車線1aに再着線している。このため、電圧検出器3aにより停電検知22が行われない為、制御部15は、開放接触器5の開放を行わない。この結果、電車線1aからフィルタコンデンサ6への突入電流が発生する。
【0038】
これを防止するために、電気車制御装置100は、惰行運転中に集電装置2bが電車線1bを離線してから所定時間、開放接触器5を開放させる構成であってもよい。
【0039】
図6は、第2の実施形態に係る電気車制御装置100の制御部15の動作について説明する為の説明図である。なお、第1の実施形態と同じ構成には同じ参照符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0040】
図6に示すように、制御部15は、図5に示す回路動作21と、停電検知22と、さらに論理積28の出力との論理和23に基づいて、開放接触器5の開放指令24を出力する。
【0041】
制御部15は、予め設定される時素27を備える。時素27は、例えば、時間を示す情報が格納されるメモリなどにより構成される。シングルショット26は、1パルスの信号を出力する。シングルショット26には、停電検知22と、時素27とが入力される。即ち、シングルショット26は、停電検知22が入力される場合、時素27から入力される時間に対応した長さのパルスを出力する。
【0042】
論理積28は、シングルショット26の出力と、運転台端末から入力される惰行運転(惰行走行指令)25との論理積の結果を出力する。
【0043】
即ち、電気車制御装置100は、惰行運転中に電圧検出器3aにより停電が検知される場合、時素27により設定される所定時間の間、開放接触器5を強制的に開放するように制御する。制御部15は、電圧検出器3aにより停電を検知してから、時素27が示す時間が経過する場合、開放接触器5を再び投入するように制御する。
【0044】
これにより、デッドセクション10通過中に開放接触器5が投入されても、上記の制御によりすぐに開放接触器5が開放される。この為、電気車制御装置100は、フィルタコンデンサ6への突入電流の発生を防ぐことができる。この結果、より安定して動作する電気車制御装置を提供することができる。
【0045】
(第3の実施形態)
開放接触器5の開放を維持する時間を短くする為に、電気車制御装置100は、走行速度に応じて開放接触器5の開放を維持する時間を変更する構成であってもよい。
【0046】
図7は、第3の実施形態に係る電気車制御装置100の制御部15の動作について説明する為の説明図である。なお、第1及び第2の実施形態と同じ構成には同じ参照符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0047】
図7に示すように、制御部15は、時素27の代わりとして、関数30を備える。また、制御部15は、車両の車輪の回転、または、主電動機8の軸の回転に応じて車両速度29を検出する速度検出器を備える。
【0048】
関数30は、予め設定される論理に基づいて演算を行う処理部である。関数30は、例えば、速度と時間とが対応付けられているテーブル、一次関数、または他の関数を記憶する。関数30は、速度検出器により検出される車両速度29に応じて演算を行い、時間を出力する。
【0049】
シングルショット26には、停電検知22と、関数30から出力される時素27とが入力される。即ち、シングルショット26は、停電検知22が入力される場合、関数30から出力される時素27が示す時間に対応した長さのパルスを出力する。
【0050】
論理積28は、シングルショット26の出力と、運転台端末から入力される惰行運転(惰行走行指令)25との論理積の結果を出力する。
【0051】
即ち、電気車制御装置100は、惰行運転中に電圧検出器3aにより停電が検知される場合、関数30により算出される時間の間、開放接触器5を強制的に開放するように制御する。制御部15は、電圧検出器3aにより停電を検知してから、時素27が示す時間が経過する場合、開放接触器5を再び投入するように制御する。
【0052】
車両速度29が速いほど、集電装置2bがデッドセクション10に入ってから電車線1aに再着線するまでの時間が短くなる。即ち、関数30により車両速度29に応じて時素27を算出することにより、論理積28が成立する時間を短くすることができる。これにより、電気車制御装置100は、開放接触器5の動作を最小限に抑え、且つフィルタコンデンサ6への突入電流の発生を防ぐことができる。この結果、より安定して動作する電気車制御装置を提供することができる。
【0053】
(第4の実施形態)
開放接触器5の開放を維持する時間を短くする為に、電気車制御装置100は、電圧検出器3bによる停電検知に応じて開放接触器5を制御する構成であってもよい。
【0054】
図8は、第4の実施形態に係る電気車制御装置100の制御部15の動作について説明する為の説明図である。なお、第1乃至第3の実施形態と同じ構成には同じ参照符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0055】
図8に示すように、制御部15は、図5に示す回路動作21と、停電検知22と、さらに論理積28の出力との論理和23に基づいて、開放接触器5の開放指令24を出力する。
【0056】
上記したように、開放接触器5が投入されて間に集電装置2bがデッドセクション10に進入する場合、フィルタコンデンサ6に保持された電圧により電圧検出器3bが加圧される。この為、制御部15は、電圧検出器3bにより集電装置2bがデッドセクション10に進入したことを検知することが出来ない。
【0057】
しかし、本実施形態によると、集電装置2aがデッドセクション10に進入した場合、制御部15は、電圧検出器3aにより検出する電圧値に基づいて停電を検知する。この場合、図5に示したように、制御部15は、開放接触器5を開放する。これにより、フィルタコンデンサ6と電圧検出器3bとが電気的に切り離される。この結果、制御部15は、電圧検出器3bにより検出電圧値に基づいて、集電装置2bがデッドセクション10に進入することを検知することができる。
【0058】
さらに、制御部15は、電圧検出器3bにより検出電圧値に基づいて、集電装置2bがデッドセクション10を通過して加圧区間である電車線1aに着線することを検知することができる。即ち、制御部15は、集電装置2bが加圧区間に再着線することを検知することができる。
【0059】
論理積28は、電圧検出器3bから伝送される電圧値による停電検知31と、運転台端末から入力される惰行運転(惰行走行指令)25との論理積の結果を出力する。
【0060】
即ち、制御部15は、運転台端末から入力される惰行運転(惰行走行指令)25が入力されており、且つ、電圧検出器3bから伝送される電圧値により停電を検知する場合、開放接触器5を開放するように制御する。
【0061】
ここで、集電装置2bが電車線1aに再着線する場合、電車線1aから電圧が電圧検出器3bに印加される。この場合、論理積28の出力が切り替わる為、制御部15は、開放接触器5を再び投入するように制御する。
【0062】
即ち、電気車制御装置100は、電圧検出器3bにより停電を検知している間、開放接触器5を開放するように制御することができる。この為、論理積28が成立する時間を短くすることができる。これにより、電気車制御装置100は、開放接触器5の動作を最小限に抑え、且つフィルタコンデンサ6への突入電流の発生を防ぐことができる。この結果、より安定して動作する電気車制御装置を提供することができる。
【0063】
なお、さらに時素27を組み合わせてもよい。即ち、図8に示す論理積28の出力と、図6または図7に示す論理積28の出力とを論理和23に入力することにより、電気車制御装置100は、さらに安定して動作することができる。この構成によると、電圧検出器3aにより停電を検知してから、電圧検出器3bにより停電を検知するまでの間に力行指令、または電気ブレーキ指令が運転台端末から制御部15に入力される場合であっても、制御部15は、時素27が示す時間の間、開放接触器5を強制的に開放することができる。この結果、さらに安定して動作する電気車制御装置を提供することができる。
【0064】
なお、上述の各実施の形態で説明した機能は、ハードウエアを用いて構成するに留まらず、ソフトウエアを用いて各機能を記載したプログラムをコンピュータに読み込ませて実現することもできる。また、各機能は、適宜ソフトウエア、ハードウエアのいずれかを選択して構成するものであっても良い。
【0065】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。
【符号の説明】
【0066】
1…電車線、2a…集電装置、2b…集電装置、2c…集電装置、3a…電圧検出器、3b…電圧検出器、4…高速度遮断器、5…開放接触器、6…フィルタコンデンサ、7…電力変換器、8…主電動機、9…接地ブラシ、10…デッドセクション、11…母線引き通し、12…母線接触器、15…制御部、100…電気車制御装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気車を力行させる電動機を駆動する電力変換部と、電車線から電力を集電し前記電力変換部に供給する第1の集電部と、前記電力変換部と前記第1の集電部との間に設けられる接触器と、を備え、前記接触器を投入した状態で惰行走行を開始する電気車制御装置であって、
前記第1の集電部より前記電気車の進行方向において前方に設置され、前記電車線から電力を集電する第2の集電部と、
前記第2の集電部における停電を検知する停電検知部と、
前記停電検知部により前記第2の集電部における停電を検知する場合、前記接触器を開放する制御部と、
を具備する電気車制御装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記接触器を開放してから予め設定される時間が経過するまで、惰行走行中は前記接触器を開放する、請求項1に記載の電気車制御装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記電気車の走行速度を検出し、検出した速度に応じて時間を決定し、前記接触器を開放してから前記決定した時間が経過するまで、惰行走行中は前記接触器を開放する、請求項1に記載の電気車制御装置。
【請求項4】
前記第1の集電部が停電区間に進入し、加圧区間に再着線することを検知する再着線検知部をさらに具備し、
前記制御部は、前記停電検知部により前記第2の集電部における停電を検知する場合、前記接触器を開放し、前記再着線検知部により前記第2の集電部が加圧区間に再着線することを検知するまで、惰行走行中は前記接触器を開放する、請求項1に記載の電気車制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−110075(P2012−110075A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−254985(P2010−254985)
【出願日】平成22年11月15日(2010.11.15)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】