電気錠
【課題】右開き扉と左開き扉とのいずれの扉にも対応可能な電気錠を得る。
【解決手段】扉51の屋内側でこの扉51が備える施錠装置11の位置に取り付けられる電気錠構造体121に、施錠装置11のサムターン軸17を時計方向と反時計方向とに選択的に回転駆動する駆動部を設け、右吊り扉用の動作モードと左吊り扉用の動作モードに対応したサムターン軸17の施錠動作及び解錠動作の回転方向を選択的に設定可能とする制御部401を設ける。制御部401は、施錠信号と解錠信号とを択一的に無線受信し、無線受信したいずれか一方の信号に応じて設定中の動作モードに従い駆動部301を駆動制御し、施錠装置11を施錠及び解錠させる。
【解決手段】扉51の屋内側でこの扉51が備える施錠装置11の位置に取り付けられる電気錠構造体121に、施錠装置11のサムターン軸17を時計方向と反時計方向とに選択的に回転駆動する駆動部を設け、右吊り扉用の動作モードと左吊り扉用の動作モードに対応したサムターン軸17の施錠動作及び解錠動作の回転方向を選択的に設定可能とする制御部401を設ける。制御部401は、施錠信号と解錠信号とを択一的に無線受信し、無線受信したいずれか一方の信号に応じて設定中の動作モードに従い駆動部301を駆動制御し、施錠装置11を施錠及び解錠させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、扉に後付け可能な方式の電気錠に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、住宅等の扉に設置されている鍵装置がピッキングによって不正に解錠される事件が多発している。このため、既存の鍵装置をピッキング対策品に交換したり、既存の鍵装置とは別に補助錠を追加したり、という対策が講じられている。しかしながら、いずれの対策を採用するにしても、扉に加工を施さなければならなかったり、ユーザ自らが作業をすることができなかったりという不都合がある。とりわけ、賃貸住宅の場合には、扉に加工をしようとすると大家さんの了解を得なければならないこともあって、ユーザとしては心理的な困難性を感じ易い。
【0003】
そこで、従来、ユーザ自らが扉に後付け可能な方式の電気錠が開発され、実用化されている。一例として、特許文献1は、扉に一切の加工を加えることなくサムターンの摘み部分を覆うようにして扉に接着固定するようにした後付け方式の電気錠を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−248457公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
扉には右吊り扉と左吊り扉とがある。右吊り扉は、扉を外側から見たときに扉が右側を支点として吊られているものであり、一方、左吊り扉は、扉を外側から見たときに扉が左側を支点として吊られている扉である。いずれの扉も、扉を施錠すると扉内の戸先側に内蔵する錠装置から外方へデッドボルトが突出するようになっている。そのため、右吊り扉では、サムターンの摘み部を反時計回りに回せばデッドボルトが戸先より突出して施錠、時計回りに回せばデッドボルトが戸先内に引き込まれて解錠となる。これに対して、左吊り扉では、サムターンの摘み部を時計回りに回せばデッドボルトが戸先より突出して施錠、反時計回りに回せばデッドボルトが戸先内に引き込まれて解錠となるので、右吊り扉と左吊り扉とでは施解錠動作が反対となる。このような事情から、上述したような扉に後付け可能な方式の電気錠では、右吊り扉用と左吊り扉用とにそれぞれ対応できるようにするためには、右吊り扉用と左吊り扉用とをそれぞれ別個に用意しなければならない。このため、そのような扉に後付け可能な方式の電気錠を製造するに際して、部品点数及び部品コストが増加し、部品の管理工数が増大してしまうという問題がある。
【0006】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、右吊り扉と左吊り扉とのいずれの扉にも対応可能な電気錠を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様である電気錠は、扉の屋内側でこの扉が備える施錠装置の位置に取り付けられる電気錠構造体と、前記電気錠構造体の一部をなし、前記施錠装置のサムターン軸を時計方向と反時計方向とに選択的に回転駆動する駆動部と、前記電気錠構造体の一部をなし、右吊り扉用の動作モードと左吊り扉用の動作モードに対応した前記サムターン軸の施錠動作及び解錠動作の回転方向を選択的に設定可能とし、択一的に無線受信した施錠及び解錠のいずれか一方の信号に応じて前記設定中の動作モードに従い前記駆動部を駆動制御し、前記施錠装置を施錠及び解錠させる制御部と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、電気錠構造体を右吊り扉に取り付けた場合には動作モードを右吊り扉用に設定し、電気錠構造体を左吊り扉に取り付けた場合には動作モードを左吊り扉用に設定することで、択一的に無線受信した施錠及び解錠のいずれか一方の信号に応じて施錠装置を正しく施錠及び解錠させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施の一形態として、既存のサムターンの摘み部を取り外してベース部材を左吊り扉に固定する様子を示す分解斜視図である。
【図2】ベース部材を裏面側から示す斜視図である。
【図3】図1の扉に取り付けたベース部材に電気錠構造体を装着する様子を示す分解斜視図である。
【図4】バッテリケース、第1の端子部、電気的接続部材、及び回路基板を示す分解斜視図である。
【図5】バッテリケースの正面図である。
【図6】回転軸及びクラッチ板を分解して示す正面側から見た駆動部の斜視図である。
【図7】(a)はクラッチ機構の縦断正面図、(b)はクラッチ板が不適当な位置で止まった異常状態である場合のクラッチ機構の縦断正面図である。
【図8】現在位置が施錠位置か解錠位置かを検出する位置検出部を分解して示す背面側から見た駆動部の斜視図である。
【図9】駆動部の位置検出部が有する検出回路板にプリントされた配線パターンを示す正面図である。
【図10】駆動部の位置検出部が有する接点板を示す斜視図である。
【図11】バッテリケースの駆動部収納空間に駆動部を収納して組み付けた状態を示す正面図である。
【図12】その側面図である。
【図13】駆動部と回路基板とを組み付けたバッテリケースを示す正面図である。
【図14】駆動部と回路基板とを組み付けたバッテリケースにバッテリケースカバー及び摘み部を装着する様子を示す分解斜視図である。
【図15】回路基板に搭載されている制御部の回路構成を示すブロック図である。
【図16】制御部が実行する施錠処理の流れを示すフローチャートである。
【図17】制御部が実行する解錠処理の流れを示すフローチャートである。
【図18】制御部が実行する自動施錠処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施の一形態を図1ないし図18に基づいて説明する。
【0011】
図1は、既存の施錠装置11のサムターン12から摘み部13を取り外して本実施の形態の電気錠101(図3参照)が備えるベース部材111を左吊り扉51に固定する様子を示す分解斜視図である。本実施形態では左吊り扉用として説明する。本実施の形態の電気錠101は、既存の施錠装置11を利用して後付けすることができる電気錠101である。電気錠101を後付けするには、まず、扉51に装着されている施錠装置11の化粧カバー14を外す。化粧カバー14は、扉51の端面に二つのネジ15によってねじ止めされているので、ネジ15を緩めて脱落させることで、容易に取り外すことができる。
【0012】
化粧カバー14を取り外すと、扉51の室内側に配置されるサムターン12の摘み部13を固定している二本のピン16が露出する。これらのピン16は、サムターン12が有するサムターン軸17を収納するために扉51に形成された装着孔52内にまで延出し、摘み部13に形成された図示しない固定孔に圧入されている。サムターン12の摘み部13は、それらのピン16の圧入によって抜け止めされ、扉51に固定されている。そこで、それらのピン16を引っ張ると、装着孔52内で摘み部13からピン16が脱落し、摘み部13を取り外すことが可能となる。サムターン12の摘み部13を取り外すと、装着孔52が露出する。図1に示すように、装着孔52内にはサムターン軸17が覗いている。
【0013】
なお、図1中、符号18は、サムターン軸17の回動に応じて扉51から出没するデッドボルトである。
【0014】
図2は、ベース部材111を裏面側から示す斜視図である。ベース部材111は、板金をプレスして形成した平板状部材である。ベース部材111は、曲げ加工によって形成された一対の連結片112を上下縁に備え、打ち抜き加工によって形成されたベース部材挿通孔113を下方中央位置に備える(図1参照)。ベース部材挿通孔113は、後述する駆動部301が有する回転軸124(図3、図6、図11〜図14参照)を挿通させてサムターン軸17に連結させるための孔である。そして、図2に示すように、ベース部材111の裏面側、つまり、扉51に装着される側の面には、ピン連結体114が設けられている。このピン連結体114は、ベース部材挿通孔113に連通する連結体挿通孔115を備えると共に、前述したサムターン12のピン16を圧入するためのピン孔116を有している。ピン連結体114は、ベース部材111の表面側から二本のネジ117によってねじ止め固定されている(図1参照)。
【0015】
次いで、図1に示すように、扉51からサムターン12の摘み部13を取り外したならば、その位置にベース部材111を装着する。ベース部材111を装着するには、摘み部13を取り外すと露出する装着孔52に、ベース部材111のピン連結体114を挿入する。装着孔52にピン連結体114を挿入すると、いずれ、ベース部材111の裏面が扉51に当接する。この状態で、サムターン軸17はピン連結体114の連結体挿通孔115に嵌合し、ベース部材挿通孔113はサムターン軸17に連絡する。そして、ピン連結体114に形成されたピン孔116は、サムターン12のピン16の位置に位置合わせされている。そこで、サムターン12の摘み部13を取り外すために一旦は引き出したサムターン12のピン16を、再度押し込む。すると、ピン連結体114に形成されたピン孔116にピン16が圧入され、ベース部材111が扉51に確実に固定される。
【0016】
図3は、扉51に取り付けたベース部材111に電気錠構造体121を装着する様子を示す分解斜視図である。電気錠101を扉51に取り付けるには、扉51に取り付けたベース部材111にゴム製のパッキング118を介して電気錠構造体121を装着し、更に、ベース部材111に装着した電気錠構造体121にカバー131を被せる。
【0017】
パッキング118には、ベース部材111の連結片112を通すための通し孔118aが形成されている。電気錠構造体121には、連結片112に位置合わされた取付部122が設けられている。ベース部材111の連結片112にはネジ孔112aが形成され、電気錠構造体121の取付部122には取付孔122aが形成されている。そこで、パッキング118の通し孔118aを通った連結片112が有するネジ孔112aに、取付部122が有する取付孔122aを挿通させたネジ123を螺合させて締め付ける。これにより、ベース部材111に電気錠構造体121が強固に固定される。
【0018】
別の一例として、既設の摘み部13の取り付け構造として、キーシリンダの後部に雌ネジが切ってありサムターン側に突出する棒状の取付部材を設け(いずれも図示せず)、キーシリンダに切られている雌ネジを利用してネジ止めによりキーシリンダの後部と既設の摘み部13を連結する構造のものがある。このような構造を用いて摘み部13を扉51に固定的に取り付ける方式の場合、摘み部13と同様な構造でベース部材111を扉51に固定的に取り付けるようにしても良い。つまり、キーシリンダに切られている雌ネジを利用し、ベース部材111をネジ止めによりキーシリンダの後部と連結する。
【0019】
電気錠構造体121は、駆動部301を内蔵している(図6〜図14参照)。駆動部301は、前述したように、回転軸124を有している。図3中、電気錠構造体121の表面側に回転軸124(図6に示す124a)が位置付けられていることが分かる。この回転軸124は、図3には示されないが、電気錠構造体121の背面側にも位置付けられている。そこで、電気錠構造体121の背面側に位置する回転軸124(図6に示す124b)は、後述するアダプタAP(図12参照)を介してベース部材111のベース部材挿通孔113に臨んでいるサムターン軸17に形成されている異形孔17aに挿入され、サムターン軸17と連結されている。異形孔17aは、真円以外の形状の孔であり、連結している回転軸124の回転をサムターン軸17に伝達する。パッキング118は、通し孔118bによって回転軸124を通す。
【0020】
電気錠構造体121は、その上部に板バネ125を有している。この板バネ125は、電気錠構造体121の上面よりも僅かに飛び出ている。一方、カバー131には、その板バネ125に引っ掛かって止められる突起(図示せず)が内側面に突出形成されている。また、電気錠構造体121の下部とカバー131の内側面下部とには、互いに引っ掛かりあう突起(図示せず)が形成されている。そこで、電気錠構造体121の下部とカバー131の内側面下部とをそれらの突起(図示せず)によって引っ掛け、しかる後にカバー131の上部を電気錠構造体121に押し込む。すると、カバー131の内側面上部に形成されている突起(図示せず)が電気錠構造体121の板バネ125に引っ掛かり、カバー131がしっかりと電気錠構造体121に装着される。
【0021】
カバー131は、サムターン軸17を手動回転させるための摘み部132(図3、図14参照)を有している。摘み部132は、一般的に右吊り扉、左吊り扉に関わらず、長辺の把持部が縦方向(図1のサムターン12の摘み部13の状態)となっているときに解錠、横方向(図1の状態から90°回転した状態)となっているときに施錠となるように取り付けられる。この摘み部132は、電気錠構造体121の正面側に位置する回転軸124とネジで固定されて回り止め連結されており、回転軸124を手動で回転させることができる。回転軸124の回転がサムターン軸17に伝達されると、サムターン軸17が回転する。このようにサムターン軸17を手動回転させるために用いられる摘み部132は、通常は手動の操作を必要としないため、カバー131に着脱自在に取り付けられた透光性を有するキャップ133に覆われている。
【0022】
こうして、扉51に対する電気錠101の取り付け作業が終了する。
【0023】
ここで、電気錠構造体121の詳細について説明する。電気錠構造体121は、大別して、バッテリケース201と、駆動部301と、制御部401と、バッテリケースカバー501とから成り立っている。以下、これらの各部について説明する。
【0024】
図4は、バッテリケース201、第1の端子部402、電気的接続部材403、及び回路基板404を示す分解斜視図である。バッテリケース201は、一例として樹脂成形品であり、一対のバッテリ収納部202をブリッジ結合したような形状を有している。このため、一対のバッテリ収納部202の間に空間を形成している。この空間は、駆動部収納空間203である。駆動部収納空間203は、駆動部301を収納保持するために用いられる。
【0025】
バッテリ収納部202は、バッテリケース201の両側面を開口し、この開口部分からのバッテリ601の着脱を可能とする。本実施の形態では、バッテリ601として四本の単三電池が用いられる(図3参照)。うち二本は一方のバッテリ収納部202に収納され、別の二本はもう一方のバッテリ収納部202に収納される。このため、バッテリ収納部202は端子を必要とする。本実施の形態では、第1の端子部402及び電気的接続部材403がそのような端子の役割を果たす。第1の端子部402は、導電性及び復元力を有する金属線材によって形成された部材であり、バッテリ601である単三電池のマイナス側に接触するマイナス端子402aとプラス側に接触するプラス端子402bとを有している。電気的接続部材403は、二分割され、それぞれ一端に第2の端子部405を有して他端に固定接続部406を有している。これらの電気的接続部材403も、導電性及び復元力を有する金属線材によって形成された部材である。一方の電気的接続部材403の一端に形成されている第2の端子部405は、バッテリ601である単三電池のマイナス側に接触するマイナス端子405aを有している。もう一方の電気的接続部材403の一端に形成されている第2の端子部405は、バッテリ601である単三電池のプラス側に接触するプラス端子405bを有している。二つの電気的接続部材403の他端にそれぞれ形成されている固定接続部406は、回路基板404に固定されている。
【0026】
ここで、マイナス端子402a、405aは、渦巻き形状に形成されており、この渦巻き部分にバッテリ601である単三電池のマイナス側が弾性をもって接触する。プラス端子402b、405bは、U字形状に屈曲した形状を有しており、このU字部分にバッテリ601である単三電池のプラス側が接触する。バッテリ収納部202は、マイナス端子402a、405aを装着するための構造として、バッテリ収納部202の側端まで切れ込んだ取付溝204を用意し、プラス端子402b、405bを装着するための構造として、長孔形状の取付長孔205を用意している。そこで、第1の端子部402をバッテリ収納部202に装着するには、マイナス端子402aを取付溝204に横から挿入した後、プラス端子402bを取付長孔205に挿入し、マイナス端子402aとプラス端子402bとがバッテリ収納部202内に配備される。また、電気的接続部材403をバッテリ収納部202に装着するには、一方の電気的接続部材403が有するマイナス端子405aを取付溝204に横から挿入する。そして、もう一方のプラス端子405bを取付長孔205に挿入する。これにより、マイナス端子405aとプラス端子405bとがバッテリ収納部202内に配備される。
【0027】
前述したように、二つの電気的接続部材403の固定接続部406は、回路基板404に固定されている。固定接続部406は、U字形状に屈曲形成されており、回路基板404にはその屈曲形状部分を挿入可能な長孔形状の固定孔407が形成されている。これらの固定孔407は、回路基板404において、プリント配線された給電ライン(図示せず)に接続している。そこで、固定孔407に固定接続部406を挿入した上で給電ラインに半田付けすることで、二つの電気的接続部材403の固定接続部406を回路基板404に固定することができ、かつ、給電ラインに接続することもできる。
【0028】
以上の構成によって、二分割された二つのバッテリ収納部202に収納されたバッテリ601である単三電池は、第1の端子部402によって直列接続される。こうして直列接続された四個のバッテリ601は、電気的接続部材403によって回路基板404の給電ラインに接続される。回路基板404はバッテリケース201と重なるように配置する(図13、図14も参照)ため、電気錠101の部品配置スペースを有効活用でき、また後述するようにバッテリ601を横方向から装着するスペースを確保できる。
【0029】
図5は、バッテリケース201の正面図である。バッテリケース201は、一対のバッテリ収納部202の間の駆動部収納空間203を、駆動部301を収納保持するのに適した形状に形成している(図4も参照のこと)。そして、この駆動部収納空間203をなすバッテリケース201の底部には、前述した駆動部301の回転軸124bを挿通させるための回転軸挿通孔206が形成されている。
【0030】
また、バッテリケース201は、駆動部収納空間203をなす底部に位置させて二つの固定片207を形成し、駆動部収納空間203を外れた位置に一つの固定スタッド208を形成している。固定片207は、駆動部収納空間203に収納した駆動部301をバッテリケースカバー501と共に固定するために用いられ、固定スタッド208は、バッテリケースカバー501を固定するために用いられる。そこで、これらの固定片207及び固定スタッド208には、取付孔207a、208aが形成されている。
【0031】
更に、バッテリケース201は、二つのバッテリ収納部202のそれぞれに、基板用固定スタッド209を形成している(図4も参照のこと)。基板用固定スタッド209は、制御部401を搭載する回路基板404をねじ止め固定するために用いられる。そこで、基板用固定スタッド209には、ネジ孔209aが形成されている。また、回路基板404には、それらの基板用固定スタッド209に位置合わせされて取付孔408が形成されている(図4参照)。
【0032】
図6は、クラッチ機構302を分解して示す正面側から見た駆動部301の斜視図である。駆動部301は、回転軸124が位置する側が変形円筒状に形成され、その反対側が三角形に形成されたハウジング303に各部を収納する。ハウジング303は、一例として、樹脂製品である。このようなハウジング303は、二分割されて内部を開閉可能である。二分割された一方に位置付けられる部材は背面側部材303a、もう一方に位置付けられる部材は表面側部材303bである。背面側部材303aは、変形円筒状の部分に後述する位置検出部304(図8〜図10参照)を有している。表面側部材303bは、変形円筒状の部分にクラッチ機構302を有している。そして、ハウジング303は、その左右両側の表裏面に位置させて凹状の嵌合溝306を有し、これらの嵌合溝306に挿通孔306aを有している(図6、図8参照)。これらの嵌合溝306は、バッテリケース201に形成されている固定片207を嵌合させ、バッテリケース201内に駆動部301を位置ずれなく保持するために用いられる。そして、それらの嵌合溝306に形成されている挿通孔306aは、固定片207の取付孔207aに位置合わせされて形成され、駆動部301をバッテリケースカバー501と共にバッテリケース201に固定するために用いられる。
【0033】
駆動部301は、変形円筒状の部分に駆動軸307を回転自在に有している。この駆動軸307は、サムターン軸17(図1、図3参照)に連結する回転軸124に回転駆動力を付与するためのものであり、ハウジング303に内蔵されたモータM(図15参照)を駆動源として回転する。つまり、ハウジング303にはモータMの他に、モータMのロータ軸の回転力を最適な減速比に落として駆動軸307に伝達する動力伝達機構を内蔵している(いずれも図示せず)。そして、モータMは、通電方向に応じて正逆回転自在に回転する。
【0034】
図7(a)は、クラッチ機構302の縦断正面図である。クラッチ機構302は、モータM(図示せず)によって回転駆動される駆動軸307の回転を所定角度だけ回転軸124に伝達するよう、駆動軸307と回転軸124との間の回転力伝達を断続するための構造である。この場合の所定角度というのは、サムターン12においてデッドボルト18の出没のために必要とするサムターン軸17の回動角度である(図1参照)。駆動軸307と回転軸124との間の回転力伝達を断続するために、クラッチ機構302は、それらの駆動軸307と回転軸124とをクラッチ板308で連結する。つまり、駆動軸307は、その外面が断面十字形状をしており、その中心に上下に貫通する貫通孔309を有している。クラッチ板308は、駆動軸307の外面形状と同一形状を有してこの駆動軸307を回り止め嵌合させる嵌合孔308aを備えており、この嵌合孔308aに嵌合する駆動軸307の回転に従い回転する。一方の回転軸124は、円筒状をした一面開口の回転体310の表裏両面に設けられている。回転体310の表面側に設けられた回転軸124は、四角柱形状に形成された回転軸124aであり、回転体310の開口面である裏面側に設けられた回転軸124は、円柱形状で先端が略矩形に形成された回転軸124bである。一方の回転軸124aは、前述した摘み部132(図3参照)に回り止め連結され、この摘み部132の手動による回転操作に応じて回転する。もう一方の回転軸124bは、駆動軸307に形成された貫通孔309に挿入されて貫通し、駆動部301の背面から飛び出す。そして、そのもう一方の回転軸124bは、バッテリケース201に形成された回転軸挿通孔206(図4、図5参照)とパッキング118に形成された通し孔118b(図3参照)とを通って、扉51の装着孔52から覗くサムターン軸17の異形孔17aに嵌合して連結される。回転軸124bの先端部には、サムターン軸17の異形孔17aに嵌合する真円以外の異形形状に形成されたアダプタAPが着脱自在に取り付けられている(図12参照)。つまり、個々相違するサムターン軸17の異形孔17aに適合するアダプタAPに交換するだけで、回転軸124bを各種のサムターン軸17に連結することができるようになっている。
【0035】
図7(a)に示すように、駆動軸307にクラッチ板308が取り付けられ、駆動軸307の貫通孔309に回転軸124bが挿入されて回転体310が取り付けられた状態では、回転体310が有する側壁310aの内側に隙間を開けてクラッチ板308が配置される。したがって、クラッチ板308と回転体310とは、ここでは非接触状態を維持している。そこで、クラッチ板308の回転を回転体310に伝達するための構造として、クラッチ板308の外周面に設けられた突部311と回転体310の側壁310aに設けられたベアリング312とからなる回転伝達のための機構が設けられている(図6も参照のこと)。つまり、回転体310は、その軸心を間に挟んで相対面する側壁310aの二箇所に二個一組のベアリング孔313を有しており(合計四個)、これらのベアリング孔313には、回転体310の内周面側からベアリング312が嵌り込んでいる。ベアリング312は、ベアリング孔313よりも僅かに小径に形成されている。その一方で、駆動部301のハウジング303は、回転体310の側壁310aを取り囲む包囲壁314を表面側部材303bに突出形成しており、回転体310の外周面は、その包囲壁314に僅かな隙間を開けて対面している(図6も参照のこと)。そこで、回転体310のベアリング孔313に嵌り込んだベアリング312は、クラッチ板308の外周面と包囲壁314の内周面との間に、僅かな隙間を開けて配置されており、クラッチ板308の外周面に設けられた突部311がベアリング312を乗り越えないように各部の寸法が定められている。したがって、駆動軸307の回転に従いクラッチ板308が回転すると、その外周面に設けられた突部311がベアリング312を押して回転体310を回転させる。この限りにおいて、駆動軸307の回転が回転体310に伝達され、回転体310が有する回転軸124が回転駆動される。
【0036】
図7(a)を参照してクラッチ機構302の構造及び動作をより詳細に説明する。包囲壁314は、移動規制部315を形成している。移動規制部315は、回転体310の側壁310aを含む円周上に位置付けている。そこで、回転体310の側壁310aの一部は、移動規制部315と干渉しない領域である回動許容切欠310bとなっている。この回動許容切欠310bは、90度の角度範囲で形成されている。これにより、回転体310は、90度の角度範囲でのみ回転自在となり、それ以上の回転は移動規制部315によって移動規制される。こうして回転体310が移動規制部315に移動規制されると、クラッチ板308の突部311はベアリング312を押して回転体310を回転させているので、クラッチ板308の回転も阻止される。すると、ハウジング303に内蔵されたモータM(図示せず)を脱調させることになるし、モータMに無理な力を与えることにもなる。そこで、包囲壁314は、移動規制部315の両側に、移動規制部315に向けて回転体310と包囲壁314との間の隙間を徐々に拡大する逃げ空間317を形成している。逃げ空間317は、二個一組のベアリング312のうち、一方のみを位置付け、もう一方のベアリング312を進入させない寸法に形成されている。そこで、図7(a)に示した状態から、駆動軸307が反時計方向に回転するのであれば、二個一組のベアリング312のうちの一方が逃げ空間317に逃げているので、クラッチ板308の突部311は一方のベアリング312を素通りして乗り越え、さらに回転して逃げ空間317に退避していない方のベアリング312に達すると、クラッチ板308が有する突部311がベアリング312を押す。これにより、その押されたベアリング312が図7(a)の下方左側に位置する逃げ空間317に達して外方へ逃げるまで、回転体310とこれに一体の回転軸124とが反時計方向に回転駆動される。そして、回転体310は移動規制部315と当接してその回転を停止し、今まで当接していた前述のベアリング312は逃げ空間317に入るため、突部311はベアリング312を乗り越え、少し進んだ位置で停止する。
【0037】
この状態から、今度は駆動軸307が時計方向に逆回転すると、クラッチ板308の突部311は、上述の説明で逃げ空間317に逃げている二個一組のベアリング312のうちの一方を素通りして乗り越え、さらに回転して逃げ空間317に退避していない方のベアリング312に達すると、クラッチ板308が有する突部311がベアリング312を押す。これにより、その押されたベアリング312が図7(a)の上方左側に位置する逃げ空間317に達して外方へ逃げるまで、回転体310とこれに一体の回転軸124とが時計方向に回転駆動される。そして、回転体310は移動規制部315と当接してその回転を停止し、突部311は前述のベアリング312を乗り越えてから少し進んだ位置で停止する。こうして、モータMにより電気錠を駆動させると、駆動軸307に取り付けられるクラッチ板308は180°の角度範囲で反転を繰り返し、クラッチ板308に連動して回転体310は90°の角度範囲で反転を繰り返す。また、前述のようにクラッチ板308の突部311が逃げ空間317にあるベアリング312を乗り越えてから停止するため、回転体310に取り付けられる摘み部132を手動で操作する場合は、クラッチ板308の突部311とベアリング312とは干渉せずに施錠位置から解錠位置、解錠位置から施錠位置への往復動作を繰り返すことが可能となる。こうして、クラッチ機構302は、駆動軸307と回転軸124との間の回転力伝達を断続する。
【0038】
図7(b)は、クラッチ板308が不適当な位置で止まった異常状態である場合のクラッチ機構302の縦断正面図である。ここで、図7(b)に示す位置でクラッチ板308が止まって動かなくなった場合の作動について説明する。このような場合でも、手動で摘み部132の操作ができるよう、クラッチ板308は、その回転中心に向けて突部311を移動自在とし、移動自在な突部311を付勢部材316で外周方向に向けて付勢するようにしている。図7(b)の状態から、摘み部132と連結している回転体310を反時計方向に回転すると、回転体310と共に移動するベアリング312の一方がクラッチ板308の突部311と当接するが、この状態からさらに摘み部132を反時計方向に操作すると、クラッチ板308が有する突部311は、クラッチ板308の中心部に向けて引っ込み、そのベアリング312を乗り越える。このように、クラッチ板308がその回転途中の位置で止まってしまった場合でも、ベアリング312が突部311を乗り越えるため、摘み部132の回動操作を行うことができる構造となっている。
【0039】
図8は、現在、摘み部132の位置が施錠位置か解錠位置かを検出する位置検出部304を分解して示す背面側から見た駆動部301の斜視図である。位置検出部304は、ハウジング303をなす一方の背面側部材303aに取り付けられている。背面側部材303aは、変形円筒状の部分に一段低くなった段部318を有し、この段部318に、検出回路板319と接点板320とを内蔵させて蓋部321を開閉自在に取り付けている。段部318は、三つのスタッド322を三点支持位置に形成している。こうして形成されたスタッド322には、検出回路板319が嵌め込み状態で位置固定され、蓋部321がネジ323によって締め込み固定されている。
【0040】
段部318には、駆動軸307が露出している。この駆動軸307に形成された貫通孔309からは、回転体310に固定された回転軸124bが飛び出る(図6、図12参照)。そこで、このような124bを通すために、検出回路板319には基板孔319aが形成され、蓋部321には蓋孔321aが形成されている。また、接点板320は、検出回路板319に形成された基板孔319aを挿通して段部318に露出する駆動軸307を嵌合させる嵌合筒324を有しており(図10参照)、この嵌合筒324には、貫通孔309から飛び出た回転軸124bが回り止め連結される(図6、図12参照)。
【0041】
図9は、駆動部301の位置検出部304が有する検出回路板319にプリントされた配線パターン325を示す正面図である。検出回路板319は、基板孔319aの周囲を取り囲むようにプリントされた配線パターン325と、三本のリード線326を半田付けによって配線パターン325に接続させる接続部327とを有している。これらの三本のリード線326は、リード線326R1、リード線326R2、及びリード線326Bであり、全て位置検出用コネクタC1に接続されている(図8参照)。この位置検出用コネクタC1は、回路基板404に設けられた位置検出信号取り込み用のコネクタ(図示せず)に連結され(図4、図13、図14参照)、三本のリード線326を回路基板404に搭載された制御部401に接続させる。
【0042】
配線パターン325は、一端が接続部327に接続されて他端が基板孔319aの周囲を取り囲むように形成されて終端で途切れている内周パターン328と、一端が接続部327に接続されて時計回りで内周パターン328の外周側に回り込む第1の外周パターン329と、一端が接続部327に接続されて反時計回りで内周パターン328の外周側に回り込む第2の外周パターン330とを有している。接続部327においては、リード線326Bが内周パターン328に接続され、リード線326R1は第1の外周パターン329に接続され、リード線326R2は第2の外周パターン330に接続されている。
【0043】
内周パターン328と第1の外周パターン329と第2の外周パターン330とには、接点板320が有している後述する接点331(図10参照)の摺動を許容する内周摺接板328aと第1の外周摺接板329aと第2の外周摺接板330aとがそれぞれ積層配置されている。これらの内周摺接板328a、第1の外周摺接板329a、及び第2の外周摺接板330aは、全体的に導電性を有する部材によって形成されている。また、第1の外周摺接板329aと第2の外周摺接板330aとの間には、絶縁体による絶縁板332が配置されている。これらの内周摺接板328aの配置範囲及び第1の外周摺接板329aと第2の外周摺接板330aとを結ぶ範囲は、前述したクラッチ機構302によって定められる回転軸124の回動範囲に相当する。
【0044】
図10は、駆動部301の位置検出部304が有する接点板320を示す斜視図である。接点板320は、前述の接点331を有している。接点331は、内周摺接板328aと第1の外周摺接板329a及び第2の外周摺接板330aとを跨る幅に形成されている。したがって、接点331は、回転軸124と共に回動する接点板320の位置に応じて、内周摺接板328aと第1の外周摺接板329aとを導通接続させる位置(図9中、aとして示す)と、内周摺接板328aと第2の外周摺接板330aとを導通接続させる位置(図9中、bとして示す)とに、択一的に位置付けられる。そこで、回路基板404に搭載された制御部401(図4、図13、図14参照)は、内周摺接板328aと第1の外周摺接板329aとが導通接続しているのか、内周摺接板328aと第2の外周摺接板330aとが導通接続しているのかを検出することで、回転軸124の回転位置を検出することが可能となる。そして、回転軸124の回転位置が分かれば、この回転軸124に連結されるサムターン軸17の回転位置も分かり、制御部401においてサムターン12が施錠状態であるか解錠状態であるかを認識することができる。
【0045】
より詳細には、内周摺接板328aと第1の外周摺接板329aとが導通接続している状態は、駆動部301の正面側(図6中で見えている側)から見て、回転軸124が時計方向に一杯に回った状態である。ということは、電気錠101の正面側(図3中の見えている側)から見て、サムターン軸17も時計方向に一杯に回った状態である。説明の便宜上、この位置を第1の回転位置という。回転軸124及びサムターン軸17が第1の回転位置に位置しているかどうかを検知するための位置検出部304の機構、つまり、検出回路板319の内周摺接板328aと第1の外周摺接板329aとを接点板320の接点331が断続する機構を、ここでは第1検出スイッチ304aと呼ぶ。
【0046】
これに対して、内周摺接板328aと第2の外周摺接板330aとが導通接続している状態は、駆動部301の上面側(図6中で見えている側)から見て、回転軸124が反時計方向に一杯に回った状態である。ということは、電気錠101の正面側(図3中の見えている側)から見て、サムターン軸17も反時計方向に一杯に回った状態である。説明の便宜上、この位置を第2の位置という。回転軸124及びサムターン軸17が第2の回転位置に位置しているかどうかを検知するための位置検出部304の機構、つまり、検出回路板319の内周摺接板328aと第2の外周摺接板330aとを接点板320の接点331が断続する機構を、ここでは第2検出スイッチ304bと呼ぶ。
【0047】
このように、本実施の形態によれば、駆動部301のクラッチ機構302の裏側にサムターン12の位置検出部304を設けため、別途、位置検出部304を設けるためのスペースを確保する必要がなく、電気錠101を小型にすることができる。
【0048】
図11は、バッテリケース201の駆動部収納空間203に駆動部301を収納して組み付けた状態を示す斜視図である。図12は、その側面図である。図11及び図12に示すように、駆動部301は、バッテリケース201に形成されている駆動部収納空間203にきっちりと収まる。バッテリケース201は、駆動部収納空間203に収納した駆動部301を三点で押さえる三つの爪部210を有しており、これらの爪部210によって駆動部301を保持する。爪部210は、駆動部301の挿入側が傾斜面となり、駆動部収納空間203に入れられる駆動部301に押されて弾性変形する。そして、爪部210は、駆動部301が駆動部収納空間203に収納されたら復元し、駆動部301を駆動部収納空間203に確実に保持する。この際、駆動部301のハウジング303は、バッテリケース201に形成されている固定片207を前述した嵌合溝306に嵌合させる(図4、図5、図8参照)。これにより、駆動部301はハウジング303に対して位置ずれなく保持されている。
【0049】
図11及び図12に示すように、バッテリケース201に装着された駆動部301からは、前述したリード線326及び位置検出用コネクタC1が引き出され、また、給電用の給電コネクタC2を先端に接続する給電線PLも引き出される。
【0050】
駆動部301に形成されている挿通孔306aは、バッテリケース201に形成されている固定片207が有する取付孔207a(図4参照)と位置合わせされ、固定スタッド208の取付孔208aは、駆動部301に覆われることなく露出している。
【0051】
図13は、駆動部301と回路基板404とを組み付けたバッテリケース201を示す正面図である。図13に示すように、駆動部301が装着されたバッテリケース201には、回路基板404が固定される。回路基板404は、基板用固定スタッド209が有するネジ孔209a(図4参照)にネジSを利用してねじ止めされる。また、回路基板404をバッテリケース201に取り付けるに際しては、回路基板404から引き出されている位置検出用コネクタC1と給電コネクタC2とを予め回路基板404に接続しておく。これらの位置検出用コネクタC1及び給電コネクタC2を接続すべき回路基板404上のコネクタ(図示せず)は、回路基板404の裏面側に配置されている。
【0052】
ここで、回路基板404には、一方の固定片207を露出させてその取付孔207aを開放するために、露出孔409が形成されている(図4も参照のこと)。そして、回路基板404は、もう一方の固定片207と固定スタッド208とを覆うことなく取り付けられている。
【0053】
図13に示すように、回路基板404は、その表面側に、設定スイッチSSWとリモコン登録スイッチRSWとを搭載している(図4も参照のこと)。設定スイッチSSWは、各種の動作モード設定をするために切り替え操作されるディップスイッチであり、リモコン登録スイッチRSWは、施錠信号と解錠信号とを無線出力するリモコン701(図15参照)を登録するためにプッシュ操作されるプッシュスイッチである。また、回路基板404は、無線信号受信部410(図15参照)も搭載している。無線信号受信部は、リモコンから無線送信された施錠信号及び解錠信号を受信し、これを制御部401に出力する。
【0054】
図14は、駆動部301と回路基板404とを組み付けたバッテリケース201にバッテリケースカバー501を装着する様子を示す分解斜視図である。バッテリケースカバー501は、一例として樹脂成形品であり、駆動部301と回路基板404とを組み付けたバッテリケース201に取り付けられた後、バッテリケース201の裏面側から三箇所でねじ止めされる。この場合に使用される二本のネジ(図示せず)は、バッテリケース201に形成されている二つの固定片207の取付孔207aと、これらに位置合わせして駆動部301に形成されている二つの挿通孔306aとを挿通してバッテリケースカバー501に螺合し、締め付けられる。また、もう一本のネジ(図示せず)は、バッテリケース201に形成されている固定スタッド208の取付孔208aを挿通してバッテリケースカバー501に螺合し、締め付けられる。そこで、バッテリケースカバー501には、それらのネジ(図示せず)を螺合させるネジ孔(図示せず)が形成されている。
【0055】
バッテリケースカバー501は、バッテリ収納部202の入口を開口させるための切欠部502と、回転軸124を露出させるための回転軸孔503と、設定スイッチSSW及びリモコン登録スイッチRSWを露出させるためのスイッチ孔504とを備えている。更に、バッテリケースカバー501の表面には、バッテリ収納部202に対応する位置に、バッテリ601の収納向きをユーザに知らせるための親切表示505が示されている。よって、電気錠101のバッテリ601を交換する際に、カバー131(図3参照)を外すだけで容易に交換することができる。
【0056】
図15は、回路基板404に搭載されている制御部401の回路構成を示すブロック図である。制御部401は、プロセッサ901を主体として構成されている。プロセッサ901は、一例として、メモリ機能を有する集積回路によって構成され、予め決められたデジタル処理を実行するように構成されている。このようなプロセッサ901には、リモコン701から無線送信された施錠信号及び解錠信号を受信する前述の無線信号受信部410と、前述した設定スイッチSSW及びリモコン登録スイッチRSWとが接続されている。また、プロセッサ901には、検出回路902と駆動回路903と報知回路904とが接続されている。
【0057】
ここで、設定スイッチSSWは、前述したように、各種の動作モード設定をするために切り替え操作されるディップスイッチである。設定スイッチSSWは、1〜4までの四つの切替スイッチを有している。
【0058】
切替スイッチ1は、施錠装置11の施錠方向をサムターン軸17の反時計回り方向とする右吊り扉用と時計回り方向とする左吊り扉用とに動作モードを選択的に切り替え設定するためのスイッチである。
【0059】
切替スイッチ2は、自動施錠のオンオフを選択的に切り替え設定するためのスイッチである。自動施錠というのは、リモコン701から電気錠101に解錠信号を送信して施錠装置11を解錠した後、所定時間の経過という予め決められたイベントの発生があると、解錠された施錠装置11を自動施錠することを意味する。
【0060】
切替スイッチ3は、そのような自動施錠に際して判定される所定時間の長さを設定するためのスイッチである。本発明の実施形態では、切替スイッチ3は、所定時間として、30秒と15秒との二種類の時間を選択的に切り替え設定する。
【0061】
切替スイッチ4は、ブザーBの鳴動のオンオフを選択的に切り替え設定するためのスイッチである。ブザーBの鳴動は、施錠装置11を施錠及び解錠するための駆動部の動作に対応させている。
【0062】
次いで、リモコン登録スイッチRSWは、前述したように、施錠信号と解錠信号とを無線出力するリモコン701(図15参照)を登録するためにプッシュ操作されるプッシュスイッチである。リモコン701は、無線出力する施錠信号又は解錠信号にそのリモコン701の識別コードを伴わせる。そこで、リモコン登録スイッチRSWを押した状態でリモコン701を操作して施錠信号又は解錠信号を無線送信させると、制御部401は、無線信号受信部410によって受信した施錠信号又は解錠信号に伴われているリモコン701の識別コードをプロセッサ901が記憶保存し、登録する。
【0063】
検出回路902は、駆動部301が内蔵する位置検出部304が出力する位置信号を取り込み、位置検出部304が有している第1検出スイッチ304a及び第2検出スイッチ304bのオンオフ状態を検出することで、回転軸124及びこれに連結されるサムターン軸17が第1の回転位置に位置するか第2の回転位置に位置するかを検出する。
【0064】
駆動回路903は、駆動部301が内蔵するモータMを駆動するための回路である。
【0065】
報知回路904は、回路基板404に搭載されているブザーBを駆動するための回路である。
【0066】
以上説明した制御部401における各部は、バッテリ601を電源として動作する。
【0067】
電気錠101を扉51に取り付けた後、電気錠101を使用する前に、扉51が右吊り扉であるか左吊り扉であるかを切替スイッチ1を操作して設定しておく。この設定に合わせてプロセッサ901は、扉のタイプに対応した施解錠制御を行う。
【0068】
図16は、制御部401のプロセッサ901が実行する施錠処理の流れを示すフローチャートである。まず、プロセッサ901は、待機状態(ステップS1001)で、登録されたリモコン701から電波の形態で無線出力された信号を無線信号受信部410が受信すると(ステップS1002のY)、受信した信号が施錠信号なのか(ステップS1003のY)、解錠信号なのか(図17のステップS2001のY)を判定する。
【0069】
プロセッサ901は、施錠信号の受信を判定すると(ステップS1003のY)、現在設定中の動作モードが右吊り扉用なのか左吊り扉用なのかを判定する(ステップS1004)。この判定は、予め切替操作しておいた設定スイッチSSWにおける切替スイッチ1の状態を検知することでなされる。
【0070】
プロセッサ901は、設定中の動作モードが右開き扉用であると判定した場合(ステップS1004のY)、駆動部301の位置検出部304が有している第2検出スイッチ304bの状態を検出回路902によって検出する。
【0071】
回転軸124及びこれに連結されているサムターン軸17は、第2検出スイッチ304bがオンの場合には反時計方向に一杯に回った回転位置に位置し、第2検出スイッチ304bがオフの場合には反時計方向に一杯に回った回転位置から外れた状態にある。このため、右吊り扉の場合、第2検出スイッチ304bがオンの場合には施錠状態、オフの場合には施錠状態ではないことになる。そこで、プロセッサ901は、第2検出スイッチ304bがオフとなって施錠状態ではないことを確認したならば(ステップS1005のY)、駆動回路903に駆動信号を出力してモータMを駆動し、サムターン軸17を反時計方向に回転させる(ステップS1006)。そして、第2検出スイッチ304bがオンとなって施錠状態であることを確認したならば(ステップS1007のY)、モータMの駆動を停止するように駆動回路903に駆動停止信号を出力する(ステップS1011)。こうして、施錠装置11が施錠される。
【0072】
これに対して、プロセッサ901は、ステップS1005の判定処理において、第2検出スイッチ304bがオフではないこと、つまり施錠状態であることを確認したならば(ステップS1005のN)、ステップS1006〜ステップS1007、ステップS1011の処理をスキップする。このような事態は、施錠装置11が施錠中であるにもかかわらず、リモコン701から施錠信号を送信した場合に発生する。プロセッサ901は、こうした状況で無駄にモータMを駆動することを防止し、バッテリ601の消耗を抑制する。
【0073】
ステップS1004の判定処理の説明に戻る。プロセッサ901は、設定中の動作モードが右吊り扉用ではない、つまり左吊り扉用であると判定した場合(ステップS1004のN)、駆動部301の位置検出部304が有している第1検出スイッチ304aの状態を検出回路902によって検出する。
【0074】
回転軸124及びこれに連結されているサムターン軸17は、第1検出スイッチ304aがオンの場合には時計方向に一杯に回った回転位置に位置し、第1検出スイッチ304aがオフの場合には時計方向に一杯に回った回転位置から外れた状態にある。このため、左吊り扉の場合、第1検出スイッチ304aがオンの場合には施錠状態、オフの場合には施錠状態ではないことになる。そこで、プロセッサ901は、第1検出スイッチ304aがオフとなって施錠状態ではないことを確認したならば(ステップS1008のY)、駆動回路903に駆動信号を出力してモータMを駆動し、サムターン軸17を時計方向に回転させる(ステップS1009)。そして、第1検出スイッチ304aがオンとなって施錠状態となったことを確認したならば(ステップS1010のY)、モータMの駆動を停止するように駆動回路903に駆動停止信号を出力する(ステップS1011)。こうして、施錠装置11が施錠される。
【0075】
これに対して、プロセッサ901は、ステップS1008の判定処理において、第1検出スイッチ304aがオフではないこと、つまり施錠状態であることを確認したならば(ステップS1008のN)、ステップS1009〜ステップS1011の処理をスキップする。このような事態は、施錠装置11が施錠中であるにもかかわらずに、リモコン701から施錠信号を送信した場合に発生する。プロセッサ901は、こうした状況で無駄にモータMを駆動することを防止し、バッテリ601の消耗を抑制する。
【0076】
ステップS1011の処理の後、プロセッサ901は、設定スイッチSSWにおける切替スイッチ4の状態を検知し、施錠又は解錠動作時にブザーBを鳴動させる鳴動モードに設定されているかどうかを判定する(ステップS1012)。プロセッサ901は、鳴動モードに設定されていると判定した場合には(ステップS1012のY)、ブザーBを鳴動させるように報知回路904に報知信号を出力し(ステップS1013)、ステップS1001の待機状態にリターンする。これにより、施錠動作に応じてブザーBが鳴動する。これに対して、プロセッサ901は、鳴動モードに設定されていると判定しない場合には(ステップS1012のN)、ステップS1013でのブザーBの鳴動処理をスキップして、ステップS1001の待機状態にリターンする。
【0077】
なお、報知回路904は、ブザーBの鳴動音を施錠の場合と解錠の場合とで変更するようにしても良く、この場合、ステップS1013での処理として、施錠を示唆する鳴動音でブザーBを駆動する。これにより、施錠動作に応じてブザーBが施錠を示唆する鳴動音を発する。
【0078】
図17は、制御部401のプロセッサ901が実行する解錠処理の流れを示すフローチャートである。プロセッサ901は、解錠信号の受信を判定すると(ステップS2001のY)、現在設定中の動作モードが右吊り扉用なのか左吊り扉用なのかを判定する(ステップS2002)。この判定は、設定スイッチSSWにおける切替スイッチ1の状態を検知することでなされる。
【0079】
プロセッサ901は、設定中の動作モードが右吊り扉用であると判定した場合(ステップS2002のY)、駆動部301の位置検出部304が有している第1検出スイッチ304aの状態を検出回路902によって検出する。
【0080】
前述したように、右吊り扉の場合、第1検出スイッチ304aがオンの場合には解錠状態、オフの場合には解錠状態ではないことになる。そこで、プロセッサ901は、第1検出スイッチ304aがオフとなって解錠状態ではないことを確認したならば(ステップS2003のY)、駆動回路903に駆動信号を出力してモータMを駆動し、サムターン軸17を時計方向に回転させる(ステップS2004)。そして、第1検出スイッチ304aがオンとなって解錠状態であることを確認したならば(ステップS2005のY)、モータMの駆動を停止するように駆動回路903に駆動停止信号を出力する(ステップS2009)。こうして、施錠装置11が解錠される。
【0081】
これに対して、プロセッサ901は、ステップS2003の判定処理において、第1検出スイッチ304aがオフではないこと、つまり解錠状態であることを確認したならば(ステップS2003のN)、ステップS2004〜ステップS2005、ステップS2009の処理をスキップする。このような事態は、施錠装置11が解錠中であるにもかかわらずに、リモコン701から解錠信号を送信した場合に発生する。プロセッサ901は、こうした状況で無駄にモータMを駆動することを防止し、バッテリ601の消耗を抑制する。
【0082】
ステップS2002の判定処理の説明に戻る。プロセッサ901は、設定中の動作モードが右吊り扉用ではない、つまり左吊り扉用であると判定した場合(ステップS2002のN)、駆動部301の位置検出部304が有している第2検出スイッチ304bの状態を検出回路902によって検出する。
【0083】
前述したように、左吊り扉の場合、第2検出スイッチ304bがオンの場合には解錠状態、オフの場合には解錠状態ではないことになる。そこで、プロセッサ901は、第2検出スイッチ304bがオフとなって解錠状態ではないことを確認したならば(ステップS2006のY)、駆動回路903に駆動信号を出力してモータMを駆動し、サムターン軸17を反時計方向に回転させる(ステップS2007)。そして、第2検出スイッチ304bがオンとなって解錠状態であることを確認したならば(ステップS2008のY)、モータMの駆動を停止するように駆動回路903に駆動停止信号を出力する(ステップS2009)。こうして、施錠装置11が解錠される。
【0084】
これに対して、プロセッサ901は、ステップS2006の判定処理において、第2検出スイッチ304bがオフではないこと、つまり解錠状態であることを確認したならば(ステップS2006のN)、ステップS2007〜ステップS2009の処理をスキップする。このような事態は、施錠装置11が解錠中であるにもかかわらずに、リモコン701から解錠信号を送信した場合に発生する。プロセッサ901は、こうした状況で無駄にモータMを駆動することを防止し、バッテリ601の消耗を抑制する。
【0085】
ステップS2009の処理の後、プロセッサ901は、設定スイッチSSWにおける切替スイッチ4の状態を検知し、施錠又は解錠動作時にブザーBを鳴動させる鳴動モードに設定されているかどうかを判定する(ステップS2010)。プロセッサ901は、鳴動モードに設定されていると判定した場合には(ステップS2010のY)、ブザーBを鳴動させるように報知回路904に報知信号を出力する(ステップS2011)。これにより、解錠動作に応じてブザーBが鳴動する。これに対して、プロセッサ901は、鳴動モードに設定されていると判定しない場合には(ステップS2010のN)、ステップS2011でのブザーBの鳴動処理をスキップする。
【0086】
なお、報知回路904は、ブザーBの鳴動音を施錠の場合と解錠の場合とで変更するようにしても良く、この場合、ステップS2011での処理として、解錠を示唆する鳴動音でブザーBを駆動する。これにより、解錠動作に応じてブザーBが解錠を示唆する鳴動音を発する。
【0087】
続いて、プロセッサ901は、設定スイッチSSWにおける切替スイッチ2の状態を検知し、自動施錠モードに設定されているかどうかを判定する(ステップS2012)。この判定の結果、自動施錠モードに設定されていない場合には(ステップS2012のN)、ステップS1001の待機状態(図16参照)にリターンする。これに対して、自動施錠モードに設定されている場合には(ステップS2012のY)、図18に示すフローチャートの処理に進む。
【0088】
図18は、制御部401のプロセッサ901が実行する自動施錠処理の流れを示すフローチャートである。プロセッサ901は、図17中のステップS2012で自動施錠モードに設定されていると判定した場合(ステップS2012のY)、予め決められたイベントの発生である所定時間の経過の有無を監視する(ステップS3003)。この場合の所定時間は、設定スイッチSSWにおける切替スイッチ3の状態に応じて、30秒又は15秒に設定されている。その間、プロセッサ901は、登録されたリモコン701から電波の形態で無線出力された信号を無線信号受信部410が受信したことを判定すると(ステップS3001のY)、ステップS1001の待機状態(図16参照)にリターンし、図16に示す施錠処理又は図17に示す解錠処理を実行する。また、プロセッサ901は、所定時間が経過する前に手動施錠を判定すると(ステップS3002のY)、ステップS1001の待機状態(図16参照)にリターンする。ステップS3002での手動施錠の有無の判定は、位置検出部304における第1検出スイッチ304a又は第2検出スイッチ304bのオンオフ状態を検出回路902で取り込んで検知することで、容易に実行される。
【0089】
プロセッサ901は、解錠後(図17のステップS2004〜ステップS2005、ステップS2009)、所定時間の経過を判定すると(ステップS3003のY)、現在設定中の動作モードが右吊り扉用なのか左吊り扉用なのかを判定する(ステップS3004)。この判定は、設定スイッチSSWにおける切替スイッチ1の状態を検知することでなされる。
【0090】
プロセッサ901は、設定中の動作モードが右吊り扉用であると判定した場合(ステップS3004のY)、駆動部301の位置検出部304が有している第2検出スイッチ304bの状態を検出回路902によって検出する。
【0091】
前述したように、回転軸124及びこれに連結されているサムターン軸17は、第2検出スイッチ304bがオンの場合には反時計方向に一杯に回った回転位置に位置し、第2検出スイッチ304bがオフの場合には反時計方向に一杯に回った回転位置から外れた状態にある。このため、右側を支点として左側から右側に開く右開きの扉51の場合、第2検出スイッチ304bがオンの場合には施錠状態、オフの場合には施錠状態ではないことになる。そこで、プロセッサ901は、第2検出スイッチ304bがオフとなって施錠状態ではないことを確認したならば(ステップS3005のY)、駆動回路903に駆動信号を出力してモータMを駆動し、サムターン軸17を反時計方向に回転させる(ステップS3006)。そして、第2検出スイッチ304bがオンとなって施錠状態であることを確認したならば(ステップS3007のY)、モータMの駆動を停止するように駆動回路903に駆動停止信号を出力する(ステップS3011)。こうして、施錠装置11が自動施錠される。
【0092】
これに対して、プロセッサ901は、ステップS3005の判定処理において、第2検出スイッチ304bがオフではないこと、つまり施錠状態であることを確認したならば(ステップS3005のN)、ステップS3006〜ステップS3007、ステップS3011の処理をスキップする。
【0093】
ステップS3004の判定処理の説明に戻る。プロセッサ901は、設定中の動作モードが右開き扉用ではない、つまり左開き扉用であると判定した場合(ステップS3004のN)、駆動部301の位置検出部304が有している第1検出スイッチ304aの状態を検出回路902によって検出する。
【0094】
前述したように、回転軸124及びこれに連結されているサムターン軸17は、第1検出スイッチ304aがオンの場合には時計方向に一杯に回った回転位置に位置し、第1検出スイッチ304aがオフの場合には時計方向に一杯に回った回転位置から外れた状態にある。このため、左側を支点として右側から左側に開く左開きの扉51の場合、第1検出スイッチ304aがオンの場合には施錠状態、オフの場合には施錠状態ではないことになる。そこで、プロセッサ901は、第1検出スイッチ304aがオフとなって施錠状態ではないことを確認したならば(ステップS3008のY)、駆動回路903に駆動信号を出力してモータMを駆動し、サムターン軸17を時計方向に回転させる(ステップS3009)。そして、第1検出スイッチ304aがオンとなって施錠状態であることを確認したならば(ステップS3010のY)、モータMの駆動を停止するように駆動回路903に駆動停止信号を出力する(ステップS3011)。こうして、施錠装置11が自動施錠される。
【0095】
これに対して、プロセッサ901は、ステップS3008の判定処理において、第1検出スイッチ304aがオフではないこと、つまり施錠状態であることを確認したならば(ステップS3008のN)、ステップS3009〜ステップS3011の処理をスキップする。
【0096】
ステップS3011の処理の後、プロセッサ901は、設定スイッチSSWにおける切替スイッチ4の状態を検知し、施錠又は解錠動作時にブザーBを鳴動させる鳴動モードに設定されているかどうかを判定する(ステップS3012)。プロセッサ901は、鳴動モードに設定されていると判定した場合には(ステップS3012のY)、ブザーBを鳴動させるように報知回路904に報知信号を出力し(ステップS3013)、ステップS1001の待機状態(図16参照)にリターンする。これにより、施錠動作に応じてブザーBが鳴動する。これに対して、プロセッサ901は、鳴動モードに設定されていると判定しない場合には(ステップS3012のN)、ステップS3013でのブザーBの鳴動処理をスキップして、ステップS1001の待機状態(図16参照)にリターンする。
【0097】
なお、報知回路904は、ブザーBの鳴動音を施錠の場合と解錠の場合とで変更するようにしても良く、この場合、ステップS3013での処理として、施錠を示唆する鳴動音でブザーBを駆動する。これにより、施錠動作に応じてブザーBが施錠を示唆する鳴動音を発する。
【0098】
以上説明したように、本実施の形態の電気錠101では、施錠装置11の施錠及び解錠に際して、設定スイッチSSWが有している切替スイッチ1の状態から、現在設定中の動作モードが右吊り扉用なのか左吊り扉用なのかを判定し(図16のステップS1004、図17のステップS2002、図18のステップS3004)、リモコン701から択一的に無線受信した施錠及び解錠のいずれか一方の信号に応じて施錠装置11を正しく施錠及び解錠させることができる。したがって、電気錠101を右吊り扉用と左吊り扉用とにそれぞれ別個に用意する必要がなくなり、そのような電気錠101を製造するに際して、部品点数及び部品コストの減少を図ることができ、また、部品の管理工数を激減させることができる。
【0099】
また、本実施の形態によれば、動作モードが右吊り扉用の場合と左吊り扉用の場合とで位置検出部304が出力する位置信号を反転して施錠中か解錠中かを判定し(図16のステップS1005とステップS1008、図17のステップS2003とステップS2006、図18のステップS3005とステップS3008)、施錠信号を無線受信した際の判定結果が解錠中であり、また、解錠信号を無線受信した際の判定結果が施錠中である場合にのみ当該施錠信号及び解錠信号に応じて駆動部301を駆動制御するようにしている(図16のステップS1005のN、ステップS1008のN、図17のステップS2003のN、ステップS2006のN)。したがって、解錠中であるにもかかわらずに更に解錠動作をさせたり、反対に、施錠中であるにもかかわらずに更に施錠動作をさせたりすることで無駄にモータMを駆動することを防止し、バッテリ601の消耗を抑制することができる。
【0100】
また、本実施の形態によれば、リモコン701から無線受信した解錠信号に応じて施錠装置11を解錠するように駆動部301を駆動制御した後(図17のステップS2004〜ステップS2005、ステップS2009)、予め決められたイベントの発生に従い(ステップS3003のY)、判定結果が解錠中であることを条件に(図18のステップS3005のN、ステップS3008のN)、施錠装置11を施錠するように駆動部301を駆動制御する。したがって、解錠後、所定時間が経過したら電気錠101を施錠するので、電気錠101の解錠状態が続いてしまうということがなく、セキュリティ性を向上することができる。
【0101】
また、本実施の形態によれば、動作モードを切り替えるための設定スイッチSSWの切り替え状態に応じて動作モードを設定するようにしたので、手軽に動作モードを設定することができる。しかも、この設定スイッチSSWは、カバー131を取り外すことによって露出するため、動作モードの設定作業をより一層容易にすることができる。
【0102】
また、本実施の形態によれば、バッテリ601を電源として正逆回転自在のモータMと、モータMに駆動されて回転してサムターン軸17に回転駆動力を伝達する回転軸124と、回転軸124の周囲に配置された位置検出部304とによって、駆動部301をコンパクトに形成している。したがって、電気錠101を全体として小型かつ薄型に形成することができる。とりわけ、装置の薄型化という側面において、本実施の形態の電気錠101は、バッテリケース201と駆動部301とをサムターン軸17の軸方向と直交する方向に並列配置しているので、電気錠101が扉51から出っ張る高さを抑制することができ、後付け方式の電気錠101であっても、扉51の開閉に支障を来たさないようにすることができる。
【0103】
また、本実施の形態の電気錠101は、駆動部301を収納する駆動部収納空間203を開けて二箇所のバッテリ収納部202を左右に離間配置し、これらのバッテリ収納部202に互いの長手方向が対面する向きでバッテリ601を収納する。これにより、電気錠101の左右方向寸法を小さくすることができ、後付け方式の電気錠101であっても、扉51の開閉に支障を来たさないようにすることができる。
【0104】
しかも、このようなレイアウトは重量バランスを左右均等にするので、扉51に固定されたベース部材111に無理な力がかからず、扉51に対して電気錠101を安定的に取り付けることができる。
【0105】
これに加えて、駆動部301の回転軸124はバッテリケース201の中央位置に配置されているので、扉51の開閉方向が左右いずれであっても、電気錠101の端部から扉51の端面までの距離を同一にすることができる。これにより、左右いずれに開閉する扉51に使用しても、扉51の開閉に支障を来たさないようにすることができる。
【0106】
更に、本実施の形態では、第1の端子部402という簡単な構造物によって、離間配置されたバッテリ601を容易に直接接続することができる。しかも、第1の端子部402は、バッテリ収納部202に形成された取付溝204及び取付長孔205を利用して簡単にバッテリケース201に取り付けることができるので、組立作業の作業性を良好にすることができる。この作用効果は、第2の端子部405を有する一対の電気的接続部材403が回路基板404に固定されていることによっても、それらの電気的接続部材403をバッテリ収納部202に形成された取付溝204及び取付長孔205を利用して簡単にバッテリケース201に取り付けることができることによっても、同様に奏される。なお、本実施の形態の電気錠101を扉51に取り付けると、回路基板404は駆動部301より垂直方向の上方に位置することになるため、例えば駆動部301の回転軸124周辺から万一ゴミや水が入り込んだとしても、回路基板404に到達するおそれがない。
【符号の説明】
【0107】
11 施錠装置
17 サムターン軸
51 扉
121 電気錠構造体
124 回転軸
201 バッテリケース
301 駆動部
304 位置検出部
401 制御部
601 バッテリ
701 リモコン
M モータ
SSW 設定スイッチ
【技術分野】
【0001】
本発明は、扉に後付け可能な方式の電気錠に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、住宅等の扉に設置されている鍵装置がピッキングによって不正に解錠される事件が多発している。このため、既存の鍵装置をピッキング対策品に交換したり、既存の鍵装置とは別に補助錠を追加したり、という対策が講じられている。しかしながら、いずれの対策を採用するにしても、扉に加工を施さなければならなかったり、ユーザ自らが作業をすることができなかったりという不都合がある。とりわけ、賃貸住宅の場合には、扉に加工をしようとすると大家さんの了解を得なければならないこともあって、ユーザとしては心理的な困難性を感じ易い。
【0003】
そこで、従来、ユーザ自らが扉に後付け可能な方式の電気錠が開発され、実用化されている。一例として、特許文献1は、扉に一切の加工を加えることなくサムターンの摘み部分を覆うようにして扉に接着固定するようにした後付け方式の電気錠を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−248457公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
扉には右吊り扉と左吊り扉とがある。右吊り扉は、扉を外側から見たときに扉が右側を支点として吊られているものであり、一方、左吊り扉は、扉を外側から見たときに扉が左側を支点として吊られている扉である。いずれの扉も、扉を施錠すると扉内の戸先側に内蔵する錠装置から外方へデッドボルトが突出するようになっている。そのため、右吊り扉では、サムターンの摘み部を反時計回りに回せばデッドボルトが戸先より突出して施錠、時計回りに回せばデッドボルトが戸先内に引き込まれて解錠となる。これに対して、左吊り扉では、サムターンの摘み部を時計回りに回せばデッドボルトが戸先より突出して施錠、反時計回りに回せばデッドボルトが戸先内に引き込まれて解錠となるので、右吊り扉と左吊り扉とでは施解錠動作が反対となる。このような事情から、上述したような扉に後付け可能な方式の電気錠では、右吊り扉用と左吊り扉用とにそれぞれ対応できるようにするためには、右吊り扉用と左吊り扉用とをそれぞれ別個に用意しなければならない。このため、そのような扉に後付け可能な方式の電気錠を製造するに際して、部品点数及び部品コストが増加し、部品の管理工数が増大してしまうという問題がある。
【0006】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、右吊り扉と左吊り扉とのいずれの扉にも対応可能な電気錠を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様である電気錠は、扉の屋内側でこの扉が備える施錠装置の位置に取り付けられる電気錠構造体と、前記電気錠構造体の一部をなし、前記施錠装置のサムターン軸を時計方向と反時計方向とに選択的に回転駆動する駆動部と、前記電気錠構造体の一部をなし、右吊り扉用の動作モードと左吊り扉用の動作モードに対応した前記サムターン軸の施錠動作及び解錠動作の回転方向を選択的に設定可能とし、択一的に無線受信した施錠及び解錠のいずれか一方の信号に応じて前記設定中の動作モードに従い前記駆動部を駆動制御し、前記施錠装置を施錠及び解錠させる制御部と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、電気錠構造体を右吊り扉に取り付けた場合には動作モードを右吊り扉用に設定し、電気錠構造体を左吊り扉に取り付けた場合には動作モードを左吊り扉用に設定することで、択一的に無線受信した施錠及び解錠のいずれか一方の信号に応じて施錠装置を正しく施錠及び解錠させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施の一形態として、既存のサムターンの摘み部を取り外してベース部材を左吊り扉に固定する様子を示す分解斜視図である。
【図2】ベース部材を裏面側から示す斜視図である。
【図3】図1の扉に取り付けたベース部材に電気錠構造体を装着する様子を示す分解斜視図である。
【図4】バッテリケース、第1の端子部、電気的接続部材、及び回路基板を示す分解斜視図である。
【図5】バッテリケースの正面図である。
【図6】回転軸及びクラッチ板を分解して示す正面側から見た駆動部の斜視図である。
【図7】(a)はクラッチ機構の縦断正面図、(b)はクラッチ板が不適当な位置で止まった異常状態である場合のクラッチ機構の縦断正面図である。
【図8】現在位置が施錠位置か解錠位置かを検出する位置検出部を分解して示す背面側から見た駆動部の斜視図である。
【図9】駆動部の位置検出部が有する検出回路板にプリントされた配線パターンを示す正面図である。
【図10】駆動部の位置検出部が有する接点板を示す斜視図である。
【図11】バッテリケースの駆動部収納空間に駆動部を収納して組み付けた状態を示す正面図である。
【図12】その側面図である。
【図13】駆動部と回路基板とを組み付けたバッテリケースを示す正面図である。
【図14】駆動部と回路基板とを組み付けたバッテリケースにバッテリケースカバー及び摘み部を装着する様子を示す分解斜視図である。
【図15】回路基板に搭載されている制御部の回路構成を示すブロック図である。
【図16】制御部が実行する施錠処理の流れを示すフローチャートである。
【図17】制御部が実行する解錠処理の流れを示すフローチャートである。
【図18】制御部が実行する自動施錠処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施の一形態を図1ないし図18に基づいて説明する。
【0011】
図1は、既存の施錠装置11のサムターン12から摘み部13を取り外して本実施の形態の電気錠101(図3参照)が備えるベース部材111を左吊り扉51に固定する様子を示す分解斜視図である。本実施形態では左吊り扉用として説明する。本実施の形態の電気錠101は、既存の施錠装置11を利用して後付けすることができる電気錠101である。電気錠101を後付けするには、まず、扉51に装着されている施錠装置11の化粧カバー14を外す。化粧カバー14は、扉51の端面に二つのネジ15によってねじ止めされているので、ネジ15を緩めて脱落させることで、容易に取り外すことができる。
【0012】
化粧カバー14を取り外すと、扉51の室内側に配置されるサムターン12の摘み部13を固定している二本のピン16が露出する。これらのピン16は、サムターン12が有するサムターン軸17を収納するために扉51に形成された装着孔52内にまで延出し、摘み部13に形成された図示しない固定孔に圧入されている。サムターン12の摘み部13は、それらのピン16の圧入によって抜け止めされ、扉51に固定されている。そこで、それらのピン16を引っ張ると、装着孔52内で摘み部13からピン16が脱落し、摘み部13を取り外すことが可能となる。サムターン12の摘み部13を取り外すと、装着孔52が露出する。図1に示すように、装着孔52内にはサムターン軸17が覗いている。
【0013】
なお、図1中、符号18は、サムターン軸17の回動に応じて扉51から出没するデッドボルトである。
【0014】
図2は、ベース部材111を裏面側から示す斜視図である。ベース部材111は、板金をプレスして形成した平板状部材である。ベース部材111は、曲げ加工によって形成された一対の連結片112を上下縁に備え、打ち抜き加工によって形成されたベース部材挿通孔113を下方中央位置に備える(図1参照)。ベース部材挿通孔113は、後述する駆動部301が有する回転軸124(図3、図6、図11〜図14参照)を挿通させてサムターン軸17に連結させるための孔である。そして、図2に示すように、ベース部材111の裏面側、つまり、扉51に装着される側の面には、ピン連結体114が設けられている。このピン連結体114は、ベース部材挿通孔113に連通する連結体挿通孔115を備えると共に、前述したサムターン12のピン16を圧入するためのピン孔116を有している。ピン連結体114は、ベース部材111の表面側から二本のネジ117によってねじ止め固定されている(図1参照)。
【0015】
次いで、図1に示すように、扉51からサムターン12の摘み部13を取り外したならば、その位置にベース部材111を装着する。ベース部材111を装着するには、摘み部13を取り外すと露出する装着孔52に、ベース部材111のピン連結体114を挿入する。装着孔52にピン連結体114を挿入すると、いずれ、ベース部材111の裏面が扉51に当接する。この状態で、サムターン軸17はピン連結体114の連結体挿通孔115に嵌合し、ベース部材挿通孔113はサムターン軸17に連絡する。そして、ピン連結体114に形成されたピン孔116は、サムターン12のピン16の位置に位置合わせされている。そこで、サムターン12の摘み部13を取り外すために一旦は引き出したサムターン12のピン16を、再度押し込む。すると、ピン連結体114に形成されたピン孔116にピン16が圧入され、ベース部材111が扉51に確実に固定される。
【0016】
図3は、扉51に取り付けたベース部材111に電気錠構造体121を装着する様子を示す分解斜視図である。電気錠101を扉51に取り付けるには、扉51に取り付けたベース部材111にゴム製のパッキング118を介して電気錠構造体121を装着し、更に、ベース部材111に装着した電気錠構造体121にカバー131を被せる。
【0017】
パッキング118には、ベース部材111の連結片112を通すための通し孔118aが形成されている。電気錠構造体121には、連結片112に位置合わされた取付部122が設けられている。ベース部材111の連結片112にはネジ孔112aが形成され、電気錠構造体121の取付部122には取付孔122aが形成されている。そこで、パッキング118の通し孔118aを通った連結片112が有するネジ孔112aに、取付部122が有する取付孔122aを挿通させたネジ123を螺合させて締め付ける。これにより、ベース部材111に電気錠構造体121が強固に固定される。
【0018】
別の一例として、既設の摘み部13の取り付け構造として、キーシリンダの後部に雌ネジが切ってありサムターン側に突出する棒状の取付部材を設け(いずれも図示せず)、キーシリンダに切られている雌ネジを利用してネジ止めによりキーシリンダの後部と既設の摘み部13を連結する構造のものがある。このような構造を用いて摘み部13を扉51に固定的に取り付ける方式の場合、摘み部13と同様な構造でベース部材111を扉51に固定的に取り付けるようにしても良い。つまり、キーシリンダに切られている雌ネジを利用し、ベース部材111をネジ止めによりキーシリンダの後部と連結する。
【0019】
電気錠構造体121は、駆動部301を内蔵している(図6〜図14参照)。駆動部301は、前述したように、回転軸124を有している。図3中、電気錠構造体121の表面側に回転軸124(図6に示す124a)が位置付けられていることが分かる。この回転軸124は、図3には示されないが、電気錠構造体121の背面側にも位置付けられている。そこで、電気錠構造体121の背面側に位置する回転軸124(図6に示す124b)は、後述するアダプタAP(図12参照)を介してベース部材111のベース部材挿通孔113に臨んでいるサムターン軸17に形成されている異形孔17aに挿入され、サムターン軸17と連結されている。異形孔17aは、真円以外の形状の孔であり、連結している回転軸124の回転をサムターン軸17に伝達する。パッキング118は、通し孔118bによって回転軸124を通す。
【0020】
電気錠構造体121は、その上部に板バネ125を有している。この板バネ125は、電気錠構造体121の上面よりも僅かに飛び出ている。一方、カバー131には、その板バネ125に引っ掛かって止められる突起(図示せず)が内側面に突出形成されている。また、電気錠構造体121の下部とカバー131の内側面下部とには、互いに引っ掛かりあう突起(図示せず)が形成されている。そこで、電気錠構造体121の下部とカバー131の内側面下部とをそれらの突起(図示せず)によって引っ掛け、しかる後にカバー131の上部を電気錠構造体121に押し込む。すると、カバー131の内側面上部に形成されている突起(図示せず)が電気錠構造体121の板バネ125に引っ掛かり、カバー131がしっかりと電気錠構造体121に装着される。
【0021】
カバー131は、サムターン軸17を手動回転させるための摘み部132(図3、図14参照)を有している。摘み部132は、一般的に右吊り扉、左吊り扉に関わらず、長辺の把持部が縦方向(図1のサムターン12の摘み部13の状態)となっているときに解錠、横方向(図1の状態から90°回転した状態)となっているときに施錠となるように取り付けられる。この摘み部132は、電気錠構造体121の正面側に位置する回転軸124とネジで固定されて回り止め連結されており、回転軸124を手動で回転させることができる。回転軸124の回転がサムターン軸17に伝達されると、サムターン軸17が回転する。このようにサムターン軸17を手動回転させるために用いられる摘み部132は、通常は手動の操作を必要としないため、カバー131に着脱自在に取り付けられた透光性を有するキャップ133に覆われている。
【0022】
こうして、扉51に対する電気錠101の取り付け作業が終了する。
【0023】
ここで、電気錠構造体121の詳細について説明する。電気錠構造体121は、大別して、バッテリケース201と、駆動部301と、制御部401と、バッテリケースカバー501とから成り立っている。以下、これらの各部について説明する。
【0024】
図4は、バッテリケース201、第1の端子部402、電気的接続部材403、及び回路基板404を示す分解斜視図である。バッテリケース201は、一例として樹脂成形品であり、一対のバッテリ収納部202をブリッジ結合したような形状を有している。このため、一対のバッテリ収納部202の間に空間を形成している。この空間は、駆動部収納空間203である。駆動部収納空間203は、駆動部301を収納保持するために用いられる。
【0025】
バッテリ収納部202は、バッテリケース201の両側面を開口し、この開口部分からのバッテリ601の着脱を可能とする。本実施の形態では、バッテリ601として四本の単三電池が用いられる(図3参照)。うち二本は一方のバッテリ収納部202に収納され、別の二本はもう一方のバッテリ収納部202に収納される。このため、バッテリ収納部202は端子を必要とする。本実施の形態では、第1の端子部402及び電気的接続部材403がそのような端子の役割を果たす。第1の端子部402は、導電性及び復元力を有する金属線材によって形成された部材であり、バッテリ601である単三電池のマイナス側に接触するマイナス端子402aとプラス側に接触するプラス端子402bとを有している。電気的接続部材403は、二分割され、それぞれ一端に第2の端子部405を有して他端に固定接続部406を有している。これらの電気的接続部材403も、導電性及び復元力を有する金属線材によって形成された部材である。一方の電気的接続部材403の一端に形成されている第2の端子部405は、バッテリ601である単三電池のマイナス側に接触するマイナス端子405aを有している。もう一方の電気的接続部材403の一端に形成されている第2の端子部405は、バッテリ601である単三電池のプラス側に接触するプラス端子405bを有している。二つの電気的接続部材403の他端にそれぞれ形成されている固定接続部406は、回路基板404に固定されている。
【0026】
ここで、マイナス端子402a、405aは、渦巻き形状に形成されており、この渦巻き部分にバッテリ601である単三電池のマイナス側が弾性をもって接触する。プラス端子402b、405bは、U字形状に屈曲した形状を有しており、このU字部分にバッテリ601である単三電池のプラス側が接触する。バッテリ収納部202は、マイナス端子402a、405aを装着するための構造として、バッテリ収納部202の側端まで切れ込んだ取付溝204を用意し、プラス端子402b、405bを装着するための構造として、長孔形状の取付長孔205を用意している。そこで、第1の端子部402をバッテリ収納部202に装着するには、マイナス端子402aを取付溝204に横から挿入した後、プラス端子402bを取付長孔205に挿入し、マイナス端子402aとプラス端子402bとがバッテリ収納部202内に配備される。また、電気的接続部材403をバッテリ収納部202に装着するには、一方の電気的接続部材403が有するマイナス端子405aを取付溝204に横から挿入する。そして、もう一方のプラス端子405bを取付長孔205に挿入する。これにより、マイナス端子405aとプラス端子405bとがバッテリ収納部202内に配備される。
【0027】
前述したように、二つの電気的接続部材403の固定接続部406は、回路基板404に固定されている。固定接続部406は、U字形状に屈曲形成されており、回路基板404にはその屈曲形状部分を挿入可能な長孔形状の固定孔407が形成されている。これらの固定孔407は、回路基板404において、プリント配線された給電ライン(図示せず)に接続している。そこで、固定孔407に固定接続部406を挿入した上で給電ラインに半田付けすることで、二つの電気的接続部材403の固定接続部406を回路基板404に固定することができ、かつ、給電ラインに接続することもできる。
【0028】
以上の構成によって、二分割された二つのバッテリ収納部202に収納されたバッテリ601である単三電池は、第1の端子部402によって直列接続される。こうして直列接続された四個のバッテリ601は、電気的接続部材403によって回路基板404の給電ラインに接続される。回路基板404はバッテリケース201と重なるように配置する(図13、図14も参照)ため、電気錠101の部品配置スペースを有効活用でき、また後述するようにバッテリ601を横方向から装着するスペースを確保できる。
【0029】
図5は、バッテリケース201の正面図である。バッテリケース201は、一対のバッテリ収納部202の間の駆動部収納空間203を、駆動部301を収納保持するのに適した形状に形成している(図4も参照のこと)。そして、この駆動部収納空間203をなすバッテリケース201の底部には、前述した駆動部301の回転軸124bを挿通させるための回転軸挿通孔206が形成されている。
【0030】
また、バッテリケース201は、駆動部収納空間203をなす底部に位置させて二つの固定片207を形成し、駆動部収納空間203を外れた位置に一つの固定スタッド208を形成している。固定片207は、駆動部収納空間203に収納した駆動部301をバッテリケースカバー501と共に固定するために用いられ、固定スタッド208は、バッテリケースカバー501を固定するために用いられる。そこで、これらの固定片207及び固定スタッド208には、取付孔207a、208aが形成されている。
【0031】
更に、バッテリケース201は、二つのバッテリ収納部202のそれぞれに、基板用固定スタッド209を形成している(図4も参照のこと)。基板用固定スタッド209は、制御部401を搭載する回路基板404をねじ止め固定するために用いられる。そこで、基板用固定スタッド209には、ネジ孔209aが形成されている。また、回路基板404には、それらの基板用固定スタッド209に位置合わせされて取付孔408が形成されている(図4参照)。
【0032】
図6は、クラッチ機構302を分解して示す正面側から見た駆動部301の斜視図である。駆動部301は、回転軸124が位置する側が変形円筒状に形成され、その反対側が三角形に形成されたハウジング303に各部を収納する。ハウジング303は、一例として、樹脂製品である。このようなハウジング303は、二分割されて内部を開閉可能である。二分割された一方に位置付けられる部材は背面側部材303a、もう一方に位置付けられる部材は表面側部材303bである。背面側部材303aは、変形円筒状の部分に後述する位置検出部304(図8〜図10参照)を有している。表面側部材303bは、変形円筒状の部分にクラッチ機構302を有している。そして、ハウジング303は、その左右両側の表裏面に位置させて凹状の嵌合溝306を有し、これらの嵌合溝306に挿通孔306aを有している(図6、図8参照)。これらの嵌合溝306は、バッテリケース201に形成されている固定片207を嵌合させ、バッテリケース201内に駆動部301を位置ずれなく保持するために用いられる。そして、それらの嵌合溝306に形成されている挿通孔306aは、固定片207の取付孔207aに位置合わせされて形成され、駆動部301をバッテリケースカバー501と共にバッテリケース201に固定するために用いられる。
【0033】
駆動部301は、変形円筒状の部分に駆動軸307を回転自在に有している。この駆動軸307は、サムターン軸17(図1、図3参照)に連結する回転軸124に回転駆動力を付与するためのものであり、ハウジング303に内蔵されたモータM(図15参照)を駆動源として回転する。つまり、ハウジング303にはモータMの他に、モータMのロータ軸の回転力を最適な減速比に落として駆動軸307に伝達する動力伝達機構を内蔵している(いずれも図示せず)。そして、モータMは、通電方向に応じて正逆回転自在に回転する。
【0034】
図7(a)は、クラッチ機構302の縦断正面図である。クラッチ機構302は、モータM(図示せず)によって回転駆動される駆動軸307の回転を所定角度だけ回転軸124に伝達するよう、駆動軸307と回転軸124との間の回転力伝達を断続するための構造である。この場合の所定角度というのは、サムターン12においてデッドボルト18の出没のために必要とするサムターン軸17の回動角度である(図1参照)。駆動軸307と回転軸124との間の回転力伝達を断続するために、クラッチ機構302は、それらの駆動軸307と回転軸124とをクラッチ板308で連結する。つまり、駆動軸307は、その外面が断面十字形状をしており、その中心に上下に貫通する貫通孔309を有している。クラッチ板308は、駆動軸307の外面形状と同一形状を有してこの駆動軸307を回り止め嵌合させる嵌合孔308aを備えており、この嵌合孔308aに嵌合する駆動軸307の回転に従い回転する。一方の回転軸124は、円筒状をした一面開口の回転体310の表裏両面に設けられている。回転体310の表面側に設けられた回転軸124は、四角柱形状に形成された回転軸124aであり、回転体310の開口面である裏面側に設けられた回転軸124は、円柱形状で先端が略矩形に形成された回転軸124bである。一方の回転軸124aは、前述した摘み部132(図3参照)に回り止め連結され、この摘み部132の手動による回転操作に応じて回転する。もう一方の回転軸124bは、駆動軸307に形成された貫通孔309に挿入されて貫通し、駆動部301の背面から飛び出す。そして、そのもう一方の回転軸124bは、バッテリケース201に形成された回転軸挿通孔206(図4、図5参照)とパッキング118に形成された通し孔118b(図3参照)とを通って、扉51の装着孔52から覗くサムターン軸17の異形孔17aに嵌合して連結される。回転軸124bの先端部には、サムターン軸17の異形孔17aに嵌合する真円以外の異形形状に形成されたアダプタAPが着脱自在に取り付けられている(図12参照)。つまり、個々相違するサムターン軸17の異形孔17aに適合するアダプタAPに交換するだけで、回転軸124bを各種のサムターン軸17に連結することができるようになっている。
【0035】
図7(a)に示すように、駆動軸307にクラッチ板308が取り付けられ、駆動軸307の貫通孔309に回転軸124bが挿入されて回転体310が取り付けられた状態では、回転体310が有する側壁310aの内側に隙間を開けてクラッチ板308が配置される。したがって、クラッチ板308と回転体310とは、ここでは非接触状態を維持している。そこで、クラッチ板308の回転を回転体310に伝達するための構造として、クラッチ板308の外周面に設けられた突部311と回転体310の側壁310aに設けられたベアリング312とからなる回転伝達のための機構が設けられている(図6も参照のこと)。つまり、回転体310は、その軸心を間に挟んで相対面する側壁310aの二箇所に二個一組のベアリング孔313を有しており(合計四個)、これらのベアリング孔313には、回転体310の内周面側からベアリング312が嵌り込んでいる。ベアリング312は、ベアリング孔313よりも僅かに小径に形成されている。その一方で、駆動部301のハウジング303は、回転体310の側壁310aを取り囲む包囲壁314を表面側部材303bに突出形成しており、回転体310の外周面は、その包囲壁314に僅かな隙間を開けて対面している(図6も参照のこと)。そこで、回転体310のベアリング孔313に嵌り込んだベアリング312は、クラッチ板308の外周面と包囲壁314の内周面との間に、僅かな隙間を開けて配置されており、クラッチ板308の外周面に設けられた突部311がベアリング312を乗り越えないように各部の寸法が定められている。したがって、駆動軸307の回転に従いクラッチ板308が回転すると、その外周面に設けられた突部311がベアリング312を押して回転体310を回転させる。この限りにおいて、駆動軸307の回転が回転体310に伝達され、回転体310が有する回転軸124が回転駆動される。
【0036】
図7(a)を参照してクラッチ機構302の構造及び動作をより詳細に説明する。包囲壁314は、移動規制部315を形成している。移動規制部315は、回転体310の側壁310aを含む円周上に位置付けている。そこで、回転体310の側壁310aの一部は、移動規制部315と干渉しない領域である回動許容切欠310bとなっている。この回動許容切欠310bは、90度の角度範囲で形成されている。これにより、回転体310は、90度の角度範囲でのみ回転自在となり、それ以上の回転は移動規制部315によって移動規制される。こうして回転体310が移動規制部315に移動規制されると、クラッチ板308の突部311はベアリング312を押して回転体310を回転させているので、クラッチ板308の回転も阻止される。すると、ハウジング303に内蔵されたモータM(図示せず)を脱調させることになるし、モータMに無理な力を与えることにもなる。そこで、包囲壁314は、移動規制部315の両側に、移動規制部315に向けて回転体310と包囲壁314との間の隙間を徐々に拡大する逃げ空間317を形成している。逃げ空間317は、二個一組のベアリング312のうち、一方のみを位置付け、もう一方のベアリング312を進入させない寸法に形成されている。そこで、図7(a)に示した状態から、駆動軸307が反時計方向に回転するのであれば、二個一組のベアリング312のうちの一方が逃げ空間317に逃げているので、クラッチ板308の突部311は一方のベアリング312を素通りして乗り越え、さらに回転して逃げ空間317に退避していない方のベアリング312に達すると、クラッチ板308が有する突部311がベアリング312を押す。これにより、その押されたベアリング312が図7(a)の下方左側に位置する逃げ空間317に達して外方へ逃げるまで、回転体310とこれに一体の回転軸124とが反時計方向に回転駆動される。そして、回転体310は移動規制部315と当接してその回転を停止し、今まで当接していた前述のベアリング312は逃げ空間317に入るため、突部311はベアリング312を乗り越え、少し進んだ位置で停止する。
【0037】
この状態から、今度は駆動軸307が時計方向に逆回転すると、クラッチ板308の突部311は、上述の説明で逃げ空間317に逃げている二個一組のベアリング312のうちの一方を素通りして乗り越え、さらに回転して逃げ空間317に退避していない方のベアリング312に達すると、クラッチ板308が有する突部311がベアリング312を押す。これにより、その押されたベアリング312が図7(a)の上方左側に位置する逃げ空間317に達して外方へ逃げるまで、回転体310とこれに一体の回転軸124とが時計方向に回転駆動される。そして、回転体310は移動規制部315と当接してその回転を停止し、突部311は前述のベアリング312を乗り越えてから少し進んだ位置で停止する。こうして、モータMにより電気錠を駆動させると、駆動軸307に取り付けられるクラッチ板308は180°の角度範囲で反転を繰り返し、クラッチ板308に連動して回転体310は90°の角度範囲で反転を繰り返す。また、前述のようにクラッチ板308の突部311が逃げ空間317にあるベアリング312を乗り越えてから停止するため、回転体310に取り付けられる摘み部132を手動で操作する場合は、クラッチ板308の突部311とベアリング312とは干渉せずに施錠位置から解錠位置、解錠位置から施錠位置への往復動作を繰り返すことが可能となる。こうして、クラッチ機構302は、駆動軸307と回転軸124との間の回転力伝達を断続する。
【0038】
図7(b)は、クラッチ板308が不適当な位置で止まった異常状態である場合のクラッチ機構302の縦断正面図である。ここで、図7(b)に示す位置でクラッチ板308が止まって動かなくなった場合の作動について説明する。このような場合でも、手動で摘み部132の操作ができるよう、クラッチ板308は、その回転中心に向けて突部311を移動自在とし、移動自在な突部311を付勢部材316で外周方向に向けて付勢するようにしている。図7(b)の状態から、摘み部132と連結している回転体310を反時計方向に回転すると、回転体310と共に移動するベアリング312の一方がクラッチ板308の突部311と当接するが、この状態からさらに摘み部132を反時計方向に操作すると、クラッチ板308が有する突部311は、クラッチ板308の中心部に向けて引っ込み、そのベアリング312を乗り越える。このように、クラッチ板308がその回転途中の位置で止まってしまった場合でも、ベアリング312が突部311を乗り越えるため、摘み部132の回動操作を行うことができる構造となっている。
【0039】
図8は、現在、摘み部132の位置が施錠位置か解錠位置かを検出する位置検出部304を分解して示す背面側から見た駆動部301の斜視図である。位置検出部304は、ハウジング303をなす一方の背面側部材303aに取り付けられている。背面側部材303aは、変形円筒状の部分に一段低くなった段部318を有し、この段部318に、検出回路板319と接点板320とを内蔵させて蓋部321を開閉自在に取り付けている。段部318は、三つのスタッド322を三点支持位置に形成している。こうして形成されたスタッド322には、検出回路板319が嵌め込み状態で位置固定され、蓋部321がネジ323によって締め込み固定されている。
【0040】
段部318には、駆動軸307が露出している。この駆動軸307に形成された貫通孔309からは、回転体310に固定された回転軸124bが飛び出る(図6、図12参照)。そこで、このような124bを通すために、検出回路板319には基板孔319aが形成され、蓋部321には蓋孔321aが形成されている。また、接点板320は、検出回路板319に形成された基板孔319aを挿通して段部318に露出する駆動軸307を嵌合させる嵌合筒324を有しており(図10参照)、この嵌合筒324には、貫通孔309から飛び出た回転軸124bが回り止め連結される(図6、図12参照)。
【0041】
図9は、駆動部301の位置検出部304が有する検出回路板319にプリントされた配線パターン325を示す正面図である。検出回路板319は、基板孔319aの周囲を取り囲むようにプリントされた配線パターン325と、三本のリード線326を半田付けによって配線パターン325に接続させる接続部327とを有している。これらの三本のリード線326は、リード線326R1、リード線326R2、及びリード線326Bであり、全て位置検出用コネクタC1に接続されている(図8参照)。この位置検出用コネクタC1は、回路基板404に設けられた位置検出信号取り込み用のコネクタ(図示せず)に連結され(図4、図13、図14参照)、三本のリード線326を回路基板404に搭載された制御部401に接続させる。
【0042】
配線パターン325は、一端が接続部327に接続されて他端が基板孔319aの周囲を取り囲むように形成されて終端で途切れている内周パターン328と、一端が接続部327に接続されて時計回りで内周パターン328の外周側に回り込む第1の外周パターン329と、一端が接続部327に接続されて反時計回りで内周パターン328の外周側に回り込む第2の外周パターン330とを有している。接続部327においては、リード線326Bが内周パターン328に接続され、リード線326R1は第1の外周パターン329に接続され、リード線326R2は第2の外周パターン330に接続されている。
【0043】
内周パターン328と第1の外周パターン329と第2の外周パターン330とには、接点板320が有している後述する接点331(図10参照)の摺動を許容する内周摺接板328aと第1の外周摺接板329aと第2の外周摺接板330aとがそれぞれ積層配置されている。これらの内周摺接板328a、第1の外周摺接板329a、及び第2の外周摺接板330aは、全体的に導電性を有する部材によって形成されている。また、第1の外周摺接板329aと第2の外周摺接板330aとの間には、絶縁体による絶縁板332が配置されている。これらの内周摺接板328aの配置範囲及び第1の外周摺接板329aと第2の外周摺接板330aとを結ぶ範囲は、前述したクラッチ機構302によって定められる回転軸124の回動範囲に相当する。
【0044】
図10は、駆動部301の位置検出部304が有する接点板320を示す斜視図である。接点板320は、前述の接点331を有している。接点331は、内周摺接板328aと第1の外周摺接板329a及び第2の外周摺接板330aとを跨る幅に形成されている。したがって、接点331は、回転軸124と共に回動する接点板320の位置に応じて、内周摺接板328aと第1の外周摺接板329aとを導通接続させる位置(図9中、aとして示す)と、内周摺接板328aと第2の外周摺接板330aとを導通接続させる位置(図9中、bとして示す)とに、択一的に位置付けられる。そこで、回路基板404に搭載された制御部401(図4、図13、図14参照)は、内周摺接板328aと第1の外周摺接板329aとが導通接続しているのか、内周摺接板328aと第2の外周摺接板330aとが導通接続しているのかを検出することで、回転軸124の回転位置を検出することが可能となる。そして、回転軸124の回転位置が分かれば、この回転軸124に連結されるサムターン軸17の回転位置も分かり、制御部401においてサムターン12が施錠状態であるか解錠状態であるかを認識することができる。
【0045】
より詳細には、内周摺接板328aと第1の外周摺接板329aとが導通接続している状態は、駆動部301の正面側(図6中で見えている側)から見て、回転軸124が時計方向に一杯に回った状態である。ということは、電気錠101の正面側(図3中の見えている側)から見て、サムターン軸17も時計方向に一杯に回った状態である。説明の便宜上、この位置を第1の回転位置という。回転軸124及びサムターン軸17が第1の回転位置に位置しているかどうかを検知するための位置検出部304の機構、つまり、検出回路板319の内周摺接板328aと第1の外周摺接板329aとを接点板320の接点331が断続する機構を、ここでは第1検出スイッチ304aと呼ぶ。
【0046】
これに対して、内周摺接板328aと第2の外周摺接板330aとが導通接続している状態は、駆動部301の上面側(図6中で見えている側)から見て、回転軸124が反時計方向に一杯に回った状態である。ということは、電気錠101の正面側(図3中の見えている側)から見て、サムターン軸17も反時計方向に一杯に回った状態である。説明の便宜上、この位置を第2の位置という。回転軸124及びサムターン軸17が第2の回転位置に位置しているかどうかを検知するための位置検出部304の機構、つまり、検出回路板319の内周摺接板328aと第2の外周摺接板330aとを接点板320の接点331が断続する機構を、ここでは第2検出スイッチ304bと呼ぶ。
【0047】
このように、本実施の形態によれば、駆動部301のクラッチ機構302の裏側にサムターン12の位置検出部304を設けため、別途、位置検出部304を設けるためのスペースを確保する必要がなく、電気錠101を小型にすることができる。
【0048】
図11は、バッテリケース201の駆動部収納空間203に駆動部301を収納して組み付けた状態を示す斜視図である。図12は、その側面図である。図11及び図12に示すように、駆動部301は、バッテリケース201に形成されている駆動部収納空間203にきっちりと収まる。バッテリケース201は、駆動部収納空間203に収納した駆動部301を三点で押さえる三つの爪部210を有しており、これらの爪部210によって駆動部301を保持する。爪部210は、駆動部301の挿入側が傾斜面となり、駆動部収納空間203に入れられる駆動部301に押されて弾性変形する。そして、爪部210は、駆動部301が駆動部収納空間203に収納されたら復元し、駆動部301を駆動部収納空間203に確実に保持する。この際、駆動部301のハウジング303は、バッテリケース201に形成されている固定片207を前述した嵌合溝306に嵌合させる(図4、図5、図8参照)。これにより、駆動部301はハウジング303に対して位置ずれなく保持されている。
【0049】
図11及び図12に示すように、バッテリケース201に装着された駆動部301からは、前述したリード線326及び位置検出用コネクタC1が引き出され、また、給電用の給電コネクタC2を先端に接続する給電線PLも引き出される。
【0050】
駆動部301に形成されている挿通孔306aは、バッテリケース201に形成されている固定片207が有する取付孔207a(図4参照)と位置合わせされ、固定スタッド208の取付孔208aは、駆動部301に覆われることなく露出している。
【0051】
図13は、駆動部301と回路基板404とを組み付けたバッテリケース201を示す正面図である。図13に示すように、駆動部301が装着されたバッテリケース201には、回路基板404が固定される。回路基板404は、基板用固定スタッド209が有するネジ孔209a(図4参照)にネジSを利用してねじ止めされる。また、回路基板404をバッテリケース201に取り付けるに際しては、回路基板404から引き出されている位置検出用コネクタC1と給電コネクタC2とを予め回路基板404に接続しておく。これらの位置検出用コネクタC1及び給電コネクタC2を接続すべき回路基板404上のコネクタ(図示せず)は、回路基板404の裏面側に配置されている。
【0052】
ここで、回路基板404には、一方の固定片207を露出させてその取付孔207aを開放するために、露出孔409が形成されている(図4も参照のこと)。そして、回路基板404は、もう一方の固定片207と固定スタッド208とを覆うことなく取り付けられている。
【0053】
図13に示すように、回路基板404は、その表面側に、設定スイッチSSWとリモコン登録スイッチRSWとを搭載している(図4も参照のこと)。設定スイッチSSWは、各種の動作モード設定をするために切り替え操作されるディップスイッチであり、リモコン登録スイッチRSWは、施錠信号と解錠信号とを無線出力するリモコン701(図15参照)を登録するためにプッシュ操作されるプッシュスイッチである。また、回路基板404は、無線信号受信部410(図15参照)も搭載している。無線信号受信部は、リモコンから無線送信された施錠信号及び解錠信号を受信し、これを制御部401に出力する。
【0054】
図14は、駆動部301と回路基板404とを組み付けたバッテリケース201にバッテリケースカバー501を装着する様子を示す分解斜視図である。バッテリケースカバー501は、一例として樹脂成形品であり、駆動部301と回路基板404とを組み付けたバッテリケース201に取り付けられた後、バッテリケース201の裏面側から三箇所でねじ止めされる。この場合に使用される二本のネジ(図示せず)は、バッテリケース201に形成されている二つの固定片207の取付孔207aと、これらに位置合わせして駆動部301に形成されている二つの挿通孔306aとを挿通してバッテリケースカバー501に螺合し、締め付けられる。また、もう一本のネジ(図示せず)は、バッテリケース201に形成されている固定スタッド208の取付孔208aを挿通してバッテリケースカバー501に螺合し、締め付けられる。そこで、バッテリケースカバー501には、それらのネジ(図示せず)を螺合させるネジ孔(図示せず)が形成されている。
【0055】
バッテリケースカバー501は、バッテリ収納部202の入口を開口させるための切欠部502と、回転軸124を露出させるための回転軸孔503と、設定スイッチSSW及びリモコン登録スイッチRSWを露出させるためのスイッチ孔504とを備えている。更に、バッテリケースカバー501の表面には、バッテリ収納部202に対応する位置に、バッテリ601の収納向きをユーザに知らせるための親切表示505が示されている。よって、電気錠101のバッテリ601を交換する際に、カバー131(図3参照)を外すだけで容易に交換することができる。
【0056】
図15は、回路基板404に搭載されている制御部401の回路構成を示すブロック図である。制御部401は、プロセッサ901を主体として構成されている。プロセッサ901は、一例として、メモリ機能を有する集積回路によって構成され、予め決められたデジタル処理を実行するように構成されている。このようなプロセッサ901には、リモコン701から無線送信された施錠信号及び解錠信号を受信する前述の無線信号受信部410と、前述した設定スイッチSSW及びリモコン登録スイッチRSWとが接続されている。また、プロセッサ901には、検出回路902と駆動回路903と報知回路904とが接続されている。
【0057】
ここで、設定スイッチSSWは、前述したように、各種の動作モード設定をするために切り替え操作されるディップスイッチである。設定スイッチSSWは、1〜4までの四つの切替スイッチを有している。
【0058】
切替スイッチ1は、施錠装置11の施錠方向をサムターン軸17の反時計回り方向とする右吊り扉用と時計回り方向とする左吊り扉用とに動作モードを選択的に切り替え設定するためのスイッチである。
【0059】
切替スイッチ2は、自動施錠のオンオフを選択的に切り替え設定するためのスイッチである。自動施錠というのは、リモコン701から電気錠101に解錠信号を送信して施錠装置11を解錠した後、所定時間の経過という予め決められたイベントの発生があると、解錠された施錠装置11を自動施錠することを意味する。
【0060】
切替スイッチ3は、そのような自動施錠に際して判定される所定時間の長さを設定するためのスイッチである。本発明の実施形態では、切替スイッチ3は、所定時間として、30秒と15秒との二種類の時間を選択的に切り替え設定する。
【0061】
切替スイッチ4は、ブザーBの鳴動のオンオフを選択的に切り替え設定するためのスイッチである。ブザーBの鳴動は、施錠装置11を施錠及び解錠するための駆動部の動作に対応させている。
【0062】
次いで、リモコン登録スイッチRSWは、前述したように、施錠信号と解錠信号とを無線出力するリモコン701(図15参照)を登録するためにプッシュ操作されるプッシュスイッチである。リモコン701は、無線出力する施錠信号又は解錠信号にそのリモコン701の識別コードを伴わせる。そこで、リモコン登録スイッチRSWを押した状態でリモコン701を操作して施錠信号又は解錠信号を無線送信させると、制御部401は、無線信号受信部410によって受信した施錠信号又は解錠信号に伴われているリモコン701の識別コードをプロセッサ901が記憶保存し、登録する。
【0063】
検出回路902は、駆動部301が内蔵する位置検出部304が出力する位置信号を取り込み、位置検出部304が有している第1検出スイッチ304a及び第2検出スイッチ304bのオンオフ状態を検出することで、回転軸124及びこれに連結されるサムターン軸17が第1の回転位置に位置するか第2の回転位置に位置するかを検出する。
【0064】
駆動回路903は、駆動部301が内蔵するモータMを駆動するための回路である。
【0065】
報知回路904は、回路基板404に搭載されているブザーBを駆動するための回路である。
【0066】
以上説明した制御部401における各部は、バッテリ601を電源として動作する。
【0067】
電気錠101を扉51に取り付けた後、電気錠101を使用する前に、扉51が右吊り扉であるか左吊り扉であるかを切替スイッチ1を操作して設定しておく。この設定に合わせてプロセッサ901は、扉のタイプに対応した施解錠制御を行う。
【0068】
図16は、制御部401のプロセッサ901が実行する施錠処理の流れを示すフローチャートである。まず、プロセッサ901は、待機状態(ステップS1001)で、登録されたリモコン701から電波の形態で無線出力された信号を無線信号受信部410が受信すると(ステップS1002のY)、受信した信号が施錠信号なのか(ステップS1003のY)、解錠信号なのか(図17のステップS2001のY)を判定する。
【0069】
プロセッサ901は、施錠信号の受信を判定すると(ステップS1003のY)、現在設定中の動作モードが右吊り扉用なのか左吊り扉用なのかを判定する(ステップS1004)。この判定は、予め切替操作しておいた設定スイッチSSWにおける切替スイッチ1の状態を検知することでなされる。
【0070】
プロセッサ901は、設定中の動作モードが右開き扉用であると判定した場合(ステップS1004のY)、駆動部301の位置検出部304が有している第2検出スイッチ304bの状態を検出回路902によって検出する。
【0071】
回転軸124及びこれに連結されているサムターン軸17は、第2検出スイッチ304bがオンの場合には反時計方向に一杯に回った回転位置に位置し、第2検出スイッチ304bがオフの場合には反時計方向に一杯に回った回転位置から外れた状態にある。このため、右吊り扉の場合、第2検出スイッチ304bがオンの場合には施錠状態、オフの場合には施錠状態ではないことになる。そこで、プロセッサ901は、第2検出スイッチ304bがオフとなって施錠状態ではないことを確認したならば(ステップS1005のY)、駆動回路903に駆動信号を出力してモータMを駆動し、サムターン軸17を反時計方向に回転させる(ステップS1006)。そして、第2検出スイッチ304bがオンとなって施錠状態であることを確認したならば(ステップS1007のY)、モータMの駆動を停止するように駆動回路903に駆動停止信号を出力する(ステップS1011)。こうして、施錠装置11が施錠される。
【0072】
これに対して、プロセッサ901は、ステップS1005の判定処理において、第2検出スイッチ304bがオフではないこと、つまり施錠状態であることを確認したならば(ステップS1005のN)、ステップS1006〜ステップS1007、ステップS1011の処理をスキップする。このような事態は、施錠装置11が施錠中であるにもかかわらず、リモコン701から施錠信号を送信した場合に発生する。プロセッサ901は、こうした状況で無駄にモータMを駆動することを防止し、バッテリ601の消耗を抑制する。
【0073】
ステップS1004の判定処理の説明に戻る。プロセッサ901は、設定中の動作モードが右吊り扉用ではない、つまり左吊り扉用であると判定した場合(ステップS1004のN)、駆動部301の位置検出部304が有している第1検出スイッチ304aの状態を検出回路902によって検出する。
【0074】
回転軸124及びこれに連結されているサムターン軸17は、第1検出スイッチ304aがオンの場合には時計方向に一杯に回った回転位置に位置し、第1検出スイッチ304aがオフの場合には時計方向に一杯に回った回転位置から外れた状態にある。このため、左吊り扉の場合、第1検出スイッチ304aがオンの場合には施錠状態、オフの場合には施錠状態ではないことになる。そこで、プロセッサ901は、第1検出スイッチ304aがオフとなって施錠状態ではないことを確認したならば(ステップS1008のY)、駆動回路903に駆動信号を出力してモータMを駆動し、サムターン軸17を時計方向に回転させる(ステップS1009)。そして、第1検出スイッチ304aがオンとなって施錠状態となったことを確認したならば(ステップS1010のY)、モータMの駆動を停止するように駆動回路903に駆動停止信号を出力する(ステップS1011)。こうして、施錠装置11が施錠される。
【0075】
これに対して、プロセッサ901は、ステップS1008の判定処理において、第1検出スイッチ304aがオフではないこと、つまり施錠状態であることを確認したならば(ステップS1008のN)、ステップS1009〜ステップS1011の処理をスキップする。このような事態は、施錠装置11が施錠中であるにもかかわらずに、リモコン701から施錠信号を送信した場合に発生する。プロセッサ901は、こうした状況で無駄にモータMを駆動することを防止し、バッテリ601の消耗を抑制する。
【0076】
ステップS1011の処理の後、プロセッサ901は、設定スイッチSSWにおける切替スイッチ4の状態を検知し、施錠又は解錠動作時にブザーBを鳴動させる鳴動モードに設定されているかどうかを判定する(ステップS1012)。プロセッサ901は、鳴動モードに設定されていると判定した場合には(ステップS1012のY)、ブザーBを鳴動させるように報知回路904に報知信号を出力し(ステップS1013)、ステップS1001の待機状態にリターンする。これにより、施錠動作に応じてブザーBが鳴動する。これに対して、プロセッサ901は、鳴動モードに設定されていると判定しない場合には(ステップS1012のN)、ステップS1013でのブザーBの鳴動処理をスキップして、ステップS1001の待機状態にリターンする。
【0077】
なお、報知回路904は、ブザーBの鳴動音を施錠の場合と解錠の場合とで変更するようにしても良く、この場合、ステップS1013での処理として、施錠を示唆する鳴動音でブザーBを駆動する。これにより、施錠動作に応じてブザーBが施錠を示唆する鳴動音を発する。
【0078】
図17は、制御部401のプロセッサ901が実行する解錠処理の流れを示すフローチャートである。プロセッサ901は、解錠信号の受信を判定すると(ステップS2001のY)、現在設定中の動作モードが右吊り扉用なのか左吊り扉用なのかを判定する(ステップS2002)。この判定は、設定スイッチSSWにおける切替スイッチ1の状態を検知することでなされる。
【0079】
プロセッサ901は、設定中の動作モードが右吊り扉用であると判定した場合(ステップS2002のY)、駆動部301の位置検出部304が有している第1検出スイッチ304aの状態を検出回路902によって検出する。
【0080】
前述したように、右吊り扉の場合、第1検出スイッチ304aがオンの場合には解錠状態、オフの場合には解錠状態ではないことになる。そこで、プロセッサ901は、第1検出スイッチ304aがオフとなって解錠状態ではないことを確認したならば(ステップS2003のY)、駆動回路903に駆動信号を出力してモータMを駆動し、サムターン軸17を時計方向に回転させる(ステップS2004)。そして、第1検出スイッチ304aがオンとなって解錠状態であることを確認したならば(ステップS2005のY)、モータMの駆動を停止するように駆動回路903に駆動停止信号を出力する(ステップS2009)。こうして、施錠装置11が解錠される。
【0081】
これに対して、プロセッサ901は、ステップS2003の判定処理において、第1検出スイッチ304aがオフではないこと、つまり解錠状態であることを確認したならば(ステップS2003のN)、ステップS2004〜ステップS2005、ステップS2009の処理をスキップする。このような事態は、施錠装置11が解錠中であるにもかかわらずに、リモコン701から解錠信号を送信した場合に発生する。プロセッサ901は、こうした状況で無駄にモータMを駆動することを防止し、バッテリ601の消耗を抑制する。
【0082】
ステップS2002の判定処理の説明に戻る。プロセッサ901は、設定中の動作モードが右吊り扉用ではない、つまり左吊り扉用であると判定した場合(ステップS2002のN)、駆動部301の位置検出部304が有している第2検出スイッチ304bの状態を検出回路902によって検出する。
【0083】
前述したように、左吊り扉の場合、第2検出スイッチ304bがオンの場合には解錠状態、オフの場合には解錠状態ではないことになる。そこで、プロセッサ901は、第2検出スイッチ304bがオフとなって解錠状態ではないことを確認したならば(ステップS2006のY)、駆動回路903に駆動信号を出力してモータMを駆動し、サムターン軸17を反時計方向に回転させる(ステップS2007)。そして、第2検出スイッチ304bがオンとなって解錠状態であることを確認したならば(ステップS2008のY)、モータMの駆動を停止するように駆動回路903に駆動停止信号を出力する(ステップS2009)。こうして、施錠装置11が解錠される。
【0084】
これに対して、プロセッサ901は、ステップS2006の判定処理において、第2検出スイッチ304bがオフではないこと、つまり解錠状態であることを確認したならば(ステップS2006のN)、ステップS2007〜ステップS2009の処理をスキップする。このような事態は、施錠装置11が解錠中であるにもかかわらずに、リモコン701から解錠信号を送信した場合に発生する。プロセッサ901は、こうした状況で無駄にモータMを駆動することを防止し、バッテリ601の消耗を抑制する。
【0085】
ステップS2009の処理の後、プロセッサ901は、設定スイッチSSWにおける切替スイッチ4の状態を検知し、施錠又は解錠動作時にブザーBを鳴動させる鳴動モードに設定されているかどうかを判定する(ステップS2010)。プロセッサ901は、鳴動モードに設定されていると判定した場合には(ステップS2010のY)、ブザーBを鳴動させるように報知回路904に報知信号を出力する(ステップS2011)。これにより、解錠動作に応じてブザーBが鳴動する。これに対して、プロセッサ901は、鳴動モードに設定されていると判定しない場合には(ステップS2010のN)、ステップS2011でのブザーBの鳴動処理をスキップする。
【0086】
なお、報知回路904は、ブザーBの鳴動音を施錠の場合と解錠の場合とで変更するようにしても良く、この場合、ステップS2011での処理として、解錠を示唆する鳴動音でブザーBを駆動する。これにより、解錠動作に応じてブザーBが解錠を示唆する鳴動音を発する。
【0087】
続いて、プロセッサ901は、設定スイッチSSWにおける切替スイッチ2の状態を検知し、自動施錠モードに設定されているかどうかを判定する(ステップS2012)。この判定の結果、自動施錠モードに設定されていない場合には(ステップS2012のN)、ステップS1001の待機状態(図16参照)にリターンする。これに対して、自動施錠モードに設定されている場合には(ステップS2012のY)、図18に示すフローチャートの処理に進む。
【0088】
図18は、制御部401のプロセッサ901が実行する自動施錠処理の流れを示すフローチャートである。プロセッサ901は、図17中のステップS2012で自動施錠モードに設定されていると判定した場合(ステップS2012のY)、予め決められたイベントの発生である所定時間の経過の有無を監視する(ステップS3003)。この場合の所定時間は、設定スイッチSSWにおける切替スイッチ3の状態に応じて、30秒又は15秒に設定されている。その間、プロセッサ901は、登録されたリモコン701から電波の形態で無線出力された信号を無線信号受信部410が受信したことを判定すると(ステップS3001のY)、ステップS1001の待機状態(図16参照)にリターンし、図16に示す施錠処理又は図17に示す解錠処理を実行する。また、プロセッサ901は、所定時間が経過する前に手動施錠を判定すると(ステップS3002のY)、ステップS1001の待機状態(図16参照)にリターンする。ステップS3002での手動施錠の有無の判定は、位置検出部304における第1検出スイッチ304a又は第2検出スイッチ304bのオンオフ状態を検出回路902で取り込んで検知することで、容易に実行される。
【0089】
プロセッサ901は、解錠後(図17のステップS2004〜ステップS2005、ステップS2009)、所定時間の経過を判定すると(ステップS3003のY)、現在設定中の動作モードが右吊り扉用なのか左吊り扉用なのかを判定する(ステップS3004)。この判定は、設定スイッチSSWにおける切替スイッチ1の状態を検知することでなされる。
【0090】
プロセッサ901は、設定中の動作モードが右吊り扉用であると判定した場合(ステップS3004のY)、駆動部301の位置検出部304が有している第2検出スイッチ304bの状態を検出回路902によって検出する。
【0091】
前述したように、回転軸124及びこれに連結されているサムターン軸17は、第2検出スイッチ304bがオンの場合には反時計方向に一杯に回った回転位置に位置し、第2検出スイッチ304bがオフの場合には反時計方向に一杯に回った回転位置から外れた状態にある。このため、右側を支点として左側から右側に開く右開きの扉51の場合、第2検出スイッチ304bがオンの場合には施錠状態、オフの場合には施錠状態ではないことになる。そこで、プロセッサ901は、第2検出スイッチ304bがオフとなって施錠状態ではないことを確認したならば(ステップS3005のY)、駆動回路903に駆動信号を出力してモータMを駆動し、サムターン軸17を反時計方向に回転させる(ステップS3006)。そして、第2検出スイッチ304bがオンとなって施錠状態であることを確認したならば(ステップS3007のY)、モータMの駆動を停止するように駆動回路903に駆動停止信号を出力する(ステップS3011)。こうして、施錠装置11が自動施錠される。
【0092】
これに対して、プロセッサ901は、ステップS3005の判定処理において、第2検出スイッチ304bがオフではないこと、つまり施錠状態であることを確認したならば(ステップS3005のN)、ステップS3006〜ステップS3007、ステップS3011の処理をスキップする。
【0093】
ステップS3004の判定処理の説明に戻る。プロセッサ901は、設定中の動作モードが右開き扉用ではない、つまり左開き扉用であると判定した場合(ステップS3004のN)、駆動部301の位置検出部304が有している第1検出スイッチ304aの状態を検出回路902によって検出する。
【0094】
前述したように、回転軸124及びこれに連結されているサムターン軸17は、第1検出スイッチ304aがオンの場合には時計方向に一杯に回った回転位置に位置し、第1検出スイッチ304aがオフの場合には時計方向に一杯に回った回転位置から外れた状態にある。このため、左側を支点として右側から左側に開く左開きの扉51の場合、第1検出スイッチ304aがオンの場合には施錠状態、オフの場合には施錠状態ではないことになる。そこで、プロセッサ901は、第1検出スイッチ304aがオフとなって施錠状態ではないことを確認したならば(ステップS3008のY)、駆動回路903に駆動信号を出力してモータMを駆動し、サムターン軸17を時計方向に回転させる(ステップS3009)。そして、第1検出スイッチ304aがオンとなって施錠状態であることを確認したならば(ステップS3010のY)、モータMの駆動を停止するように駆動回路903に駆動停止信号を出力する(ステップS3011)。こうして、施錠装置11が自動施錠される。
【0095】
これに対して、プロセッサ901は、ステップS3008の判定処理において、第1検出スイッチ304aがオフではないこと、つまり施錠状態であることを確認したならば(ステップS3008のN)、ステップS3009〜ステップS3011の処理をスキップする。
【0096】
ステップS3011の処理の後、プロセッサ901は、設定スイッチSSWにおける切替スイッチ4の状態を検知し、施錠又は解錠動作時にブザーBを鳴動させる鳴動モードに設定されているかどうかを判定する(ステップS3012)。プロセッサ901は、鳴動モードに設定されていると判定した場合には(ステップS3012のY)、ブザーBを鳴動させるように報知回路904に報知信号を出力し(ステップS3013)、ステップS1001の待機状態(図16参照)にリターンする。これにより、施錠動作に応じてブザーBが鳴動する。これに対して、プロセッサ901は、鳴動モードに設定されていると判定しない場合には(ステップS3012のN)、ステップS3013でのブザーBの鳴動処理をスキップして、ステップS1001の待機状態(図16参照)にリターンする。
【0097】
なお、報知回路904は、ブザーBの鳴動音を施錠の場合と解錠の場合とで変更するようにしても良く、この場合、ステップS3013での処理として、施錠を示唆する鳴動音でブザーBを駆動する。これにより、施錠動作に応じてブザーBが施錠を示唆する鳴動音を発する。
【0098】
以上説明したように、本実施の形態の電気錠101では、施錠装置11の施錠及び解錠に際して、設定スイッチSSWが有している切替スイッチ1の状態から、現在設定中の動作モードが右吊り扉用なのか左吊り扉用なのかを判定し(図16のステップS1004、図17のステップS2002、図18のステップS3004)、リモコン701から択一的に無線受信した施錠及び解錠のいずれか一方の信号に応じて施錠装置11を正しく施錠及び解錠させることができる。したがって、電気錠101を右吊り扉用と左吊り扉用とにそれぞれ別個に用意する必要がなくなり、そのような電気錠101を製造するに際して、部品点数及び部品コストの減少を図ることができ、また、部品の管理工数を激減させることができる。
【0099】
また、本実施の形態によれば、動作モードが右吊り扉用の場合と左吊り扉用の場合とで位置検出部304が出力する位置信号を反転して施錠中か解錠中かを判定し(図16のステップS1005とステップS1008、図17のステップS2003とステップS2006、図18のステップS3005とステップS3008)、施錠信号を無線受信した際の判定結果が解錠中であり、また、解錠信号を無線受信した際の判定結果が施錠中である場合にのみ当該施錠信号及び解錠信号に応じて駆動部301を駆動制御するようにしている(図16のステップS1005のN、ステップS1008のN、図17のステップS2003のN、ステップS2006のN)。したがって、解錠中であるにもかかわらずに更に解錠動作をさせたり、反対に、施錠中であるにもかかわらずに更に施錠動作をさせたりすることで無駄にモータMを駆動することを防止し、バッテリ601の消耗を抑制することができる。
【0100】
また、本実施の形態によれば、リモコン701から無線受信した解錠信号に応じて施錠装置11を解錠するように駆動部301を駆動制御した後(図17のステップS2004〜ステップS2005、ステップS2009)、予め決められたイベントの発生に従い(ステップS3003のY)、判定結果が解錠中であることを条件に(図18のステップS3005のN、ステップS3008のN)、施錠装置11を施錠するように駆動部301を駆動制御する。したがって、解錠後、所定時間が経過したら電気錠101を施錠するので、電気錠101の解錠状態が続いてしまうということがなく、セキュリティ性を向上することができる。
【0101】
また、本実施の形態によれば、動作モードを切り替えるための設定スイッチSSWの切り替え状態に応じて動作モードを設定するようにしたので、手軽に動作モードを設定することができる。しかも、この設定スイッチSSWは、カバー131を取り外すことによって露出するため、動作モードの設定作業をより一層容易にすることができる。
【0102】
また、本実施の形態によれば、バッテリ601を電源として正逆回転自在のモータMと、モータMに駆動されて回転してサムターン軸17に回転駆動力を伝達する回転軸124と、回転軸124の周囲に配置された位置検出部304とによって、駆動部301をコンパクトに形成している。したがって、電気錠101を全体として小型かつ薄型に形成することができる。とりわけ、装置の薄型化という側面において、本実施の形態の電気錠101は、バッテリケース201と駆動部301とをサムターン軸17の軸方向と直交する方向に並列配置しているので、電気錠101が扉51から出っ張る高さを抑制することができ、後付け方式の電気錠101であっても、扉51の開閉に支障を来たさないようにすることができる。
【0103】
また、本実施の形態の電気錠101は、駆動部301を収納する駆動部収納空間203を開けて二箇所のバッテリ収納部202を左右に離間配置し、これらのバッテリ収納部202に互いの長手方向が対面する向きでバッテリ601を収納する。これにより、電気錠101の左右方向寸法を小さくすることができ、後付け方式の電気錠101であっても、扉51の開閉に支障を来たさないようにすることができる。
【0104】
しかも、このようなレイアウトは重量バランスを左右均等にするので、扉51に固定されたベース部材111に無理な力がかからず、扉51に対して電気錠101を安定的に取り付けることができる。
【0105】
これに加えて、駆動部301の回転軸124はバッテリケース201の中央位置に配置されているので、扉51の開閉方向が左右いずれであっても、電気錠101の端部から扉51の端面までの距離を同一にすることができる。これにより、左右いずれに開閉する扉51に使用しても、扉51の開閉に支障を来たさないようにすることができる。
【0106】
更に、本実施の形態では、第1の端子部402という簡単な構造物によって、離間配置されたバッテリ601を容易に直接接続することができる。しかも、第1の端子部402は、バッテリ収納部202に形成された取付溝204及び取付長孔205を利用して簡単にバッテリケース201に取り付けることができるので、組立作業の作業性を良好にすることができる。この作用効果は、第2の端子部405を有する一対の電気的接続部材403が回路基板404に固定されていることによっても、それらの電気的接続部材403をバッテリ収納部202に形成された取付溝204及び取付長孔205を利用して簡単にバッテリケース201に取り付けることができることによっても、同様に奏される。なお、本実施の形態の電気錠101を扉51に取り付けると、回路基板404は駆動部301より垂直方向の上方に位置することになるため、例えば駆動部301の回転軸124周辺から万一ゴミや水が入り込んだとしても、回路基板404に到達するおそれがない。
【符号の説明】
【0107】
11 施錠装置
17 サムターン軸
51 扉
121 電気錠構造体
124 回転軸
201 バッテリケース
301 駆動部
304 位置検出部
401 制御部
601 バッテリ
701 リモコン
M モータ
SSW 設定スイッチ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
扉の屋内側でこの扉が備える施錠装置の位置に取り付けられる電気錠構造体と、
前記電気錠構造体の一部をなし、前記施錠装置のサムターン軸を時計方向と反時計方向とに選択的に回転駆動する駆動部と、
前記電気錠構造体の一部をなし、右吊り扉用の動作モードと左吊り扉用の動作モードに対応した前記サムターン軸の施錠動作及び解錠動作の回転方向を選択的に設定可能とし、択一的に無線受信した施錠及び解錠のいずれか一方の信号に応じて前記設定中の動作モードに従い前記駆動部を駆動制御し、前記施錠装置を施錠及び解錠させる制御部と、
を備える電気錠。
【請求項2】
前記サムターン軸の回転位置を検出してその検出結果に応じた位置信号を出力する位置検出部を備え、
前記制御部は、動作モードが右吊り扉用の場合と左吊り扉用の場合とで前記位置検出部が出力する位置信号を反転して施錠中か解錠中かを判定し、前記施錠信号を無線受信した際の前記判定結果が解錠中であり前記解錠信号を無線受信した際の前記判定結果が施錠中である場合にのみ当該施錠信号及び解錠信号に応じて前記駆動部を駆動制御する、
請求項1記載の電気錠。
【請求項3】
前記制御部は、リモコンから無線受信した解錠信号に応じて前記施錠装置を解錠するように前記駆動部を駆動制御した後、予め決められたイベントの発生に従い、前記判定結果が解錠中であることを条件に前記施錠装置を施錠するように前記駆動部を駆動制御する、請求項2記載の電気錠。
【請求項4】
前記駆動部は、
バッテリを電源として正逆回転自在のモータと、
前記モータに駆動されて回転して前記サムターン軸に回転駆動力を伝達する回転軸と、
前記回転軸の周囲に配置された前記位置検出部と、
を有する、請求項2又は3記載の電気錠。
【請求項5】
前記制御部は、前記動作モードを切り替える設定スイッチを備え、この設定スイッチの切り替え状態に応じて前記動作モードを設定する、請求項1ないし4のいずれか一記載の電気錠。
【請求項6】
前記電気錠構造体は、前記駆動部を中心としてその両側に前記バッテリを互いの長手方向が対面する向きにして着脱自在に収納するバッテリケースを有している、請求項1ないし5のいずれか一記載の電気錠。
【請求項1】
扉の屋内側でこの扉が備える施錠装置の位置に取り付けられる電気錠構造体と、
前記電気錠構造体の一部をなし、前記施錠装置のサムターン軸を時計方向と反時計方向とに選択的に回転駆動する駆動部と、
前記電気錠構造体の一部をなし、右吊り扉用の動作モードと左吊り扉用の動作モードに対応した前記サムターン軸の施錠動作及び解錠動作の回転方向を選択的に設定可能とし、択一的に無線受信した施錠及び解錠のいずれか一方の信号に応じて前記設定中の動作モードに従い前記駆動部を駆動制御し、前記施錠装置を施錠及び解錠させる制御部と、
を備える電気錠。
【請求項2】
前記サムターン軸の回転位置を検出してその検出結果に応じた位置信号を出力する位置検出部を備え、
前記制御部は、動作モードが右吊り扉用の場合と左吊り扉用の場合とで前記位置検出部が出力する位置信号を反転して施錠中か解錠中かを判定し、前記施錠信号を無線受信した際の前記判定結果が解錠中であり前記解錠信号を無線受信した際の前記判定結果が施錠中である場合にのみ当該施錠信号及び解錠信号に応じて前記駆動部を駆動制御する、
請求項1記載の電気錠。
【請求項3】
前記制御部は、リモコンから無線受信した解錠信号に応じて前記施錠装置を解錠するように前記駆動部を駆動制御した後、予め決められたイベントの発生に従い、前記判定結果が解錠中であることを条件に前記施錠装置を施錠するように前記駆動部を駆動制御する、請求項2記載の電気錠。
【請求項4】
前記駆動部は、
バッテリを電源として正逆回転自在のモータと、
前記モータに駆動されて回転して前記サムターン軸に回転駆動力を伝達する回転軸と、
前記回転軸の周囲に配置された前記位置検出部と、
を有する、請求項2又は3記載の電気錠。
【請求項5】
前記制御部は、前記動作モードを切り替える設定スイッチを備え、この設定スイッチの切り替え状態に応じて前記動作モードを設定する、請求項1ないし4のいずれか一記載の電気錠。
【請求項6】
前記電気錠構造体は、前記駆動部を中心としてその両側に前記バッテリを互いの長手方向が対面する向きにして着脱自在に収納するバッテリケースを有している、請求項1ないし5のいずれか一記載の電気錠。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2011−26813(P2011−26813A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−172524(P2009−172524)
【出願日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【出願人】(000138462)株式会社ユーシン (241)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【出願人】(000138462)株式会社ユーシン (241)
【Fターム(参考)】
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