説明

電気魚焼き器

【課題】焼成室を広く見渡すことができる電気魚焼き器を提供すること。
【解決手段】上部に開口部20を有する本体ケース3と下部に開口部28を有する蓋体4とで構成される焼成室Rにヒータ5を設け、前記蓋体4を構成する蓋本体23の上部の傾斜面30に窓孔31を形成し、取付部材としての枠体26を用いて前記窓孔31に窓板24を取り付け、前記下部開口部28の前縁28Aよりも前記焼成室Rを前方に膨出させるように、前記蓋本体23の前部に膨出部32を設けると共に、この膨出部32の内側に、前記枠体26の前枠体33の前端部である折曲部39を配置したことで、前記窓板24から前記焼成室Rを広く見通すことができるばかりでなく、前記膨出部32を前記前枠体33の重ね代として、前記窓孔31の前端31Aを前方に配置して、前記焼成室Rの前部が死角とならないようにすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、本体ケースと、この本体ケースの上方を覆う蓋体との間で魚を焼く、電気魚焼き器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の電気魚焼き器としては、上方が開放した本体ケースと、下方が開放した蓋とを有し、前記本体ケースの上方を前記蓋が開閉自在に覆うように構成し、これらの本体ケースと蓋との間に下ヒータと上ヒータとを設け、これらの両ヒータ間で魚を焼くものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。そして、これらの電気魚焼き器の蓋の前部には窓が設けられており、この窓を通して、加熱域(本願発明の焼成室に相当する)で焼かれている魚を確認することができるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−230488号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような電気魚焼き器は、前記ヒータから放出された熱が加熱域から逃げないように、前記窓が前記蓋の前部に小さく形成されている。この結果、前記本体ケースと蓋との間に収容された魚等が見えにくかった。特に、複数の魚等が前後に並べられて焼かれる場合、奥に置かれた魚等が前に置かれた魚等に遮られて見えにくかった。
【0005】
この問題を解決するものとして、蓋体の上部に広い窓を設ける構造が考えられる。しかしながら、窓板を前記蓋体に固定するためには、この蓋体に重ね代が必要となる。このため、前記窓の前端部が、前記蓋体の前端部よりも後方になることで、焼成室の前部が見えにくくなるという新たな問題が生ずる。
【0006】
本発明は以上の問題点を解決し、焼成室を広く見渡すことができる電気魚焼き器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の請求項1に記載の電気魚焼き器は、上部に開口部を有する本体ケースと、下部に開口部を有する蓋体と、これら本体ケースと蓋体とで構成される焼成室に設けられるヒータと、前記蓋体に形成される窓孔と、この窓孔に取付部材を用いて取り付けられる窓板とを有して構成される電気魚焼き器において、前記蓋体の上部に、前記窓孔を設け、前記蓋体の前部に、この蓋体の下部開口部の前縁よりも前記焼成室を前方に膨出させるように形成した膨出部を設けると共に、この膨出部の内側に、前記取付部材の前端部を配置したものである。
【0008】
また、本発明の請求項2に記載の電気魚焼き器は、請求項1において、前記窓板の内側に熱反射部材を設けると共に、この熱反射部材の前端部を、前記膨出部の内側に設けられた前記取付部材の前端部によって保持したものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の請求項1に記載の電気魚焼き器は、以上のように構成することにより、前記蓋体の上部に形成された前記窓孔に取り付けられた窓板を通して、前記焼成室を広く見通すことができる。そして、前記蓋体の前部に設けられた膨出部を前記取付部材の重ね代とすることで、前記窓孔の前端を前方に配置することができるので、前記焼成室の前部が死角とならないように、広く見通すことができる。
【0010】
また、前記窓板の内側に熱反射部材を設けると共に、この熱反射部材の前端部を、前記膨出部の内側に設けられた前記取付部材の前端部によって保持したことで、前記焼成室を視認する方向が限定される場合であっても、前記焼成室の前部が死角とならないようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態を示す電気魚焼き器の正面図である。
【図2】同、平面図である。
【図3】同、右側面図である。
【図4】同、A−A断面図である。
【図5】同、図4における要部の拡大図である。
【図6】本発明の他の実施形態を示す電気魚焼き器の要部の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について、図1乃至図5に基づいて説明する。なお、以下の説明において、上下、前後、及び左右は、正面図である図1に基づいて規定する。即ち、図2において、上は後、下は前である。また、図3において、右は後、左は前である。1は本発明の電気魚焼き器である。この電気魚焼き器1は、基台2と、本体ケース3と、蓋体4と、ヒータ5と、焼き皿6を有して構成される。そして、前記本体ケース3及び蓋体4は、前記基台2に対して着脱可能に取り付けられる。また、前記焼き皿6は、前記本体ケース3に対して着脱可能に取り付けられる。
【0013】
前記基台2は、基板7と、制御部8と、右把手9と、左把手10と、ヒンジ部11と、脚部12と、下カバー13とを有して構成される。前記基板7は、正面視で横長の略U字状に形成される。また、前記基板7の右端の垂直部分には、前記制御部8及び右把手9が取り付けられる。なお、本例では、前記制御部8のケーシング8Aと前記右把手9は、一体に形成される。前記制御部8の右側面にはダイヤル14が設けられる。そして、このダイヤル14の操作によって、前記ヒータ5への通電時間が設定される。一方、前記基板7の左端の垂直部分には、前記左把手10が取り付けられる。そして、前記右把手9と左把手10とを把持することで、前記電気魚焼き器1を持ち運ぶことができる。また、前記基板7の後部中央には、前記ヒンジ部11が取り付けられる。このヒンジ部11は、固定ヒンジ部15と、可動ヒンジ部16とを有して構成される。前記固定ヒンジ部15は、前記基板7に固定される。一方、前記可動ヒンジ部16は、前記固定ヒンジ部15の上端部に、回動軸17を介して揺動可能に取り付けられる。なお、前記回動軸17は、左右方向に水平に設けられる。そして、前記固定ヒンジ部15の正面側には、前記ヒータ5を構成する下ヒータ18が取り付けられる。また、前記可動ヒンジ部16の正面側には、前記ヒータ5を構成する上ヒータ19が取り付けられる。また、前記基板7の底面には、複数の前記脚部12が設けられる。更に、前記基板7の底面には、前記下カバー13が設けられる。なお、この下カバー13は、前記制御部8とヒンジ部11とを接続する図示しない配線を覆うものである。
【0014】
前記本体ケース3は、前記基台2の基板7上に、前方から設置される。前記本体ケース3は、上部に開口部20を有する。また、前記本体ケース3の開口部20を囲むように、フランジ部21が全周に亘って形成される。また、前記本体ケース3の後部には、貫通孔22が形成される。そして、前記本体ケース3を前記基台2に設置すると、前記下ヒータ18が、前記貫通孔22を通して前記本体ケース3の内側に挿入される。更に、前記本体ケース3には、前記下ヒータ18の上方に、前記焼き皿6が着脱可能に設置される。この焼き皿6は、焼かれる魚等を載せるためのものである。なお、前記焼き皿6の代わりに焼き網を用いても良い。
【0015】
前記蓋体4は、前記可動ヒンジ部16に取り付けられる。即ち、前記蓋体4は、前記可動ヒンジ部16に取り付けられた状態において、この可動ヒンジ部16と共に揺動可能に構成される。前記蓋体4は、蓋本体23と、窓板24と、熱反射部材25と、取付部材としての枠体26と、把手27とを有して構成される。前記蓋本体23は、下部に開口部28を有する。そして、前記蓋本体23の下端23Aは、前記本体ケース3のフランジ部21上に載置可能である。また、前記蓋本体23の後部には、貫通孔29が形成される。そして、前記蓋体4を前記可動ヒンジ部16に取り付けると、前記上ヒータ19が、前記貫通孔29を通して前記蓋体4の内側に挿入される。また、前記蓋本体23の上部には、前方が低くなる傾斜面30が形成される。そして、この傾斜面30には、長方形状の窓孔31が形成される。更に、前記蓋本体23の前部には、前方に突出した膨出部32が形成される。この膨出部32の内面の最前端32Aは、前記開口部28の前縁28Aよりも前方となる。従って、前記膨出部32は、前記本体ケース3と蓋体4とで構成される焼成室Rを、前記開口部28の前縁28Aよりも前方に膨出させるように形成される。なお、前記窓孔31の前縁31Aは、図5に示すように、前記蓋体4を閉じた状態で、前記開口部28の前縁よりも僅かに後方となる。
【0016】
前記窓孔31には、前記窓板24が配置される。なお、この窓板24は、板状の透明な耐熱ガラスによって構成されると共に、その外周に前記枠体26が設けられる。この枠体26は、前枠体33、後枠体34、及び左右一対の横枠体35によって構成される。そして、これらの前枠体33、後枠体34、横枠体35は、それぞれビス36,37,38によって、前記窓本体23に固定される。更に、前記前枠体33の前部には、下方に折り曲げられた折曲部39が形成される。また、前記窓板24の内側には、前記熱反射部材25が配置される。この熱反射部材25は、複数の羽板25Aを有するルーバー状に形成される。そして、前記熱反射部材25の前端部25Bは、前記折曲部39によって保持される。なお、前記熱反射部材25の前端部25B及び前記折曲部39は、前記膨出部32によって形成される空間S内に位置する。更に、前記把手27は、前記蓋本体23の両側面の前方寄りに一対設けられている。そして、前記把手27を掴むことで、前記蓋体4を開閉することができる。なお、40は前記蓋体4を前記可動ヒンジ部16に保持させるための摘みである。
【0017】
次に、本実施形態の作用について説明する。まず使用者は、前記把手27を把持して持ち上げることで、前記蓋体4を開く。そして、前記本体ケース3に設置された前記焼き皿6上に、図示しない魚等の被焼成物を載せる。なお、前記焼き皿6上には、被焼成物の大きさにもよるが、複数の被焼成物を載せることが可能である。そして、前記把手27を把持して前記蓋体4を閉じ、前記制御部8のダイヤル14を操作する。これによって、前記下ヒータ18及び上ヒータ19に電力が供給される。なお、前記各ヒータ18,19への通電時間は、前記ダイヤル14を回す角度によって設定される。そして、前記各ヒータ18,19に電力が供給されると、これらのヒータ18,19が発熱して赤外線が放射される。これによって、前記焼成室Rが高温になり、前記被焼成物が焼かれる。
【0018】
前記焼成室Rにおいて、被焼成物が焼成される様子は、前記窓板24を通して視認することが可能である。前記焼成室Rは、ルーバー状に形成された前記熱反射部材25の複数の羽板25Aと略平行な方向Vから視認することができる。そして、前述したように、前記蓋本体23の上面である広い傾斜面30に前記窓孔31が形成されるので、この窓孔31を大きくすることができる。従って、この広い窓孔31に取り付けられた広い前記窓板24から、前記焼成室Rの広い範囲を視認することができる。特に、前記焼成室Rの後部は、従来の構造に比べて大幅に見易くすることができる。なお、前記窓板24が広くなるということは、前記ヒータ5から放射された赤外線が前記焼成室Rの外に逃げやすいことに繋がる虞がある。しかしながら、前述した通り、前記窓板24の内側に前記熱反射部材25が設けられていることで、前記ヒータ5、特に上ヒータ19から上方に放射された赤外線は、前記熱反射部材25で下方に反射されて、前記被焼成物を加熱する。これによって、前記窓板24から逃げる赤外線を少なく抑えることができる。
【0019】
なお、前記蓋本体23の上面である傾斜面30に前記窓孔31を設けるためには、取付部材である前記枠体26と前記蓋本体23との重ね代が必要になる。特に、前記蓋本体23の前部では、前記前枠体33のための重ね代が必要になる。即ち、前記窓孔31の前縁31Aは、最低でも重ね代の分だけ、前記蓋本体23の前端よりも後方となる。従って、前記焼成室Rの前部が死角となる虞が生じる。特に、前述した通り、前記熱反射部材25を通して方向Vから視認する構造とした場合、前記焼成室Rの前部が更に視認しにくくなる。しかしながら、前述した通り、前記蓋本体23の前部に、前方に突出した前記膨出部32を形成することで、この膨出部32が重ね代となる。また、前述した通り、前記熱反射部材25の前端部25Bも、前記膨出部32によって形成される空間S内に位置する。このため、前記前枠体33の重ね代及び前記熱反射部材25の前端部25Bを前方に配置することが可能となるので、その分、前記窓孔31の前縁31Aを前方に形成することができる。従って、前記窓孔31の前縁31Aは、前記蓋体4が載せられる前記本体ケース3、ひいては、この本体ケース3に設置される前記焼き皿6に対し、相対的に前方に形成される。これによって、前記焼成室Rは、その前方の死角が減ぜられるので、前記焼成室Rの前部も比較的視認しやすくすることができる。
【0020】
そして、設定された前記各ヒータ18,19への通電時間が経過すると、これら各ヒータ18,19への通電が遮断される。これによって、前記焼成室Rに収容された前記被焼成物の焼成が終了する。そして、前記把手27を把持して持ち上げることで、前記蓋体4を開き、前記本体ケース3に設置された前記焼き皿6上の被焼成物を取り出すことができる。
【0021】
以上のように、本発明は、上部に開口部20を有する本体ケース3と、下部に開口部28を有する蓋体4と、これら本体ケース3と蓋体4とで構成される焼成室Rに設けられるヒータ5と、前記蓋体4の蓋本体23に形成される窓孔31と、この窓孔31に取付部材としての枠体26を用いて取り付けられる窓板24とを有して構成される電気魚焼き器1において、前記蓋本体23の上部の傾斜面30に前記窓孔31を設け、前記蓋本体23の前部に、この蓋本体23の下部開口部28の前縁28Aよりも前記焼成室R空間を前方に膨出させるように形成した膨出部32を設けると共に、この膨出部32の内側に、枠体26の前枠体33の前端部である折曲部39を配置したことで、前記窓板24を通して、前記焼成室R内を広く見通すことができるばかりでなく、前記膨出部32を前記前枠体33の重ね代とすることで、前記窓孔31の前端31Aを前方に配置することができるので、前記焼成室R内の前部が死角とならないように、広く見通すことができるものである。
【0022】
また、前記窓板24の内側に熱反射部材25を設けると共に、この熱反射部材25の前端部25Bを、前記膨出部32の内側に設けられた前記前枠体33の折曲部39によって保持したことで、前記焼成室R内を視認する方向が限定される場合であっても、前記焼成室Rの前部が死角とならないようにすることができる。
【0023】
なお、本発明は以上の実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨の範囲内で種々の変形実施が可能である。例えば、上記実施形態では、熱反射部材として、複数の羽板を平行に設けたルーバー状の構造体を用いたが、図6に示すように、前方の羽板ほど水平に対する傾斜角度が大きくなり、後方の羽板ほど水平に対する傾斜角度が小さくなるようにした構造体としてもよい。このように構成すれば、焼成室の前部の死角を、より小さくすることができる。また、前記窓板の表面に、赤外線反射層を設けてもよい。
【符号の説明】
【0024】
1 電気魚焼き器
3 本体ケース
4 蓋体
5 ヒータ
18 下ヒータ
19 上ヒータ
20 開口部
24 窓板
25 熱反射部材
25B 前端部
26 枠体(取付部材)
28 開口部
28A 前縁
30 傾斜面(蓋体の上部)
31 窓孔
32 膨出部
33 前枠体(取付部材)
39 折曲部(取付部材の前端部)
R 焼成室
S 空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部に開口部を有する本体ケースと、
下部に開口部を有する蓋体と、
これら本体ケースと蓋体とで構成される焼成室に設けられるヒータと、
前記蓋体に形成される窓孔と、
この窓孔に取付部材を用いて取り付けられる窓板とを有して構成される電気魚焼き器において、
前記蓋体の上部に、前記窓孔を設け、
前記蓋体の前部に、この蓋体の下部開口部の前縁よりも前記焼成室を前方に膨出させるように形成した膨出部を設けると共に、
この膨出部の内側に、前記取付部材の前端部を配置したことを特徴とする電気魚焼き器。
【請求項2】
前記窓板の内側に熱反射部材を設けると共に、
この熱反射部材の前端部を、前記膨出部の内側に設けられた前記取付部材の前端部によって保持したことを特徴とする請求項1記載の電気魚焼き器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−85903(P2012−85903A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−236337(P2010−236337)
【出願日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【出願人】(000109325)ツインバード工業株式会社 (176)
【Fターム(参考)】