電池の製造方法およびナット締結装置
【課題】 締結箇所への異物の混入を検出するとともに締結を行うことのできる電池の製造方法およびナット締結装置を提供すること。
【解決手段】 ナットランナ200は,被締結部材3(バスバー190)と被締結部材4(正極端子172,負極端子182)との間の接触抵抗を測定しつつ,ボルト1(ボルト171,181)とナット2の締結を行う。少なくともナット2が被締結部材3(バスバー190)に着座してから締結が終了するまでの間に被締結部材3(バスバー190)と被締結部材4(正極端子172,負極端子182)との間の接触抵抗を測定する。そして,測定した被締結部材3(バスバー190)と被締結部材4(正極端子172,負極端子182)との間の接触抵抗の値に基づいて,被締結部材3(バスバー190)と被締結部材4(正極端子172,負極端子182)との間に異物があるか否かの判断を行う。
【解決手段】 ナットランナ200は,被締結部材3(バスバー190)と被締結部材4(正極端子172,負極端子182)との間の接触抵抗を測定しつつ,ボルト1(ボルト171,181)とナット2の締結を行う。少なくともナット2が被締結部材3(バスバー190)に着座してから締結が終了するまでの間に被締結部材3(バスバー190)と被締結部材4(正極端子172,負極端子182)との間の接触抵抗を測定する。そして,測定した被締結部材3(バスバー190)と被締結部材4(正極端子172,負極端子182)との間の接触抵抗の値に基づいて,被締結部材3(バスバー190)と被締結部材4(正極端子172,負極端子182)との間に異物があるか否かの判断を行う。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,電池の製造方法およびナット締結装置に関する。さらに詳細には,単電池の電極端子にバスバーを好適に締結することのできる電池の製造方法およびナット締結装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電池は,携帯電話やパーソナルコンピュータ等の電子機器,ハイブリッド車両や電気自動車等の車両など,多岐にわたる分野で利用されている。これらのうち,車両や大型電子機器類には,単電池を直列または並列につないだ組電池が搭載されることが一般的である。
【0003】
そして,組電池には,単電池同士を電気的に接続するために,バスバーを介して単電池の電極端子同士を接続されたものがある。このバスバーと電極端子との接続に,ボルトとナットとを用いて締結する方式が用いられることがある。この場合,ボルトとナットとの締結が好適になされていないと,ボルトとナットとの締結が経時的に緩むおそれがある。締結箇所の締結が緩んだ電池では,電気抵抗は大きい。したがって,確実に締結を行うことが好ましい。
【0004】
そのため,好適な締結を行うことのできる締結装置が開発されてきている。例えば,特許文献1には,第1の被締結部材と第2の被締結部材との間の導通を検出することにより,電動ドライバの回転を停止するビス締め装置が開示されている(特許文献1の段落[0037]等および図1等参照)。これにより,ビスの締め付けすぎを防止できるとしている(特許文献1の段落[0010]等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−069555号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで,ボルトとナットによりバスバーと電極端子とを締結して組電池を製造する場合,バスバーを電極端子との間に異物が混入することがある。異物が混入していると,ボルトとナットの締結が徐々に緩むおそれがある。また,大電流の放電時にその異物の周辺箇所が発熱するおそれがある。したがって,締結箇所にこれらの異物を含まないようにすることが望ましい。しかし,特許文献1に記載の技術では,締結箇所に異物が混入しているか否かを判断することは困難である。
【0007】
本発明は,前述した従来の技術が有する問題点を解決するためになされたものである。すなわちその課題とするところは,締結箇所への異物の混入を検出するとともに締結を行うことのできる電池の製造方法およびナット締結装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題の解決を目的としてなされた本発明の一態様における電池の製造方法は,発電要素である電極体を作成する電極体作成工程と,電池容器の内部に電極体を配置するとともに電解液を注入して封止する単電池作成工程と,単電池の電極端子間をバスバーで電気的に接続することにより組電池とする組電池作成工程とを有する方法である。そして,組電池作成工程では,ボルトとナットとによりバスバーと電極端子とを締結しつつ,少なくともナットがバスバーに着座してから締結が終了するまでの期間内にバスバーと電極端子との間の接触抵抗を測定するとともに,バスバーと電極端子との間の接触抵抗から接触抵抗判定値を算出し,接触抵抗判定値に基づいて,バスバーと電極端子との間に異物があるか否かの判断を行う。かかる電池の製造方法では,バスバーと電極端子との間に異物があるか否かの判断を行うことができる。また,締結工程と異物検査工程とが一体となっている。そのため,かかる電池の製造方法を用いることにより,工程数が増えることはない。
【0009】
上記に記載の電池の製造方法において,組電池作成工程では,締結箇所のいずれにも異物が混入されていないと判断した場合に,そのまま締結を継続して組電池を作成するとともに,締結箇所のいずれかに異物が混入されていると判断した場合に,締結を解除して1以上の部品を入れ替えた後に再度締結して組電池を作成するとよい。バスバーと電極端子との間に異物を混入させないで,組電池を製造することができることに変わりないからである。また,組電池の歩留まりはよい。
【0010】
上記に記載の電池の製造方法において,組電池作成工程では,接触抵抗判定値として,接触抵抗の値を用い,接触抵抗が予め定めた接触抵抗閾値以上である場合に,バスバーと電極端子との間に異物が混入されていると判断し,接触抵抗が予め定めた接触抵抗閾値未満である場合に,バスバーと電極端子との間に異物が混入されていないと判断するとよい。より確実に異物の有無を判断することができるからである。
【0011】
上記に記載の電池の製造方法において,組電池作成工程では,接触抵抗判定値として,着座時における接触抵抗と締結終了時における接触抵抗との差を用い,着座時における接触抵抗と締結終了時における接触抵抗との差が,予め定めた接触抵抗差閾値以上である場合に,バスバーと電極端子との間に異物が混入されていると判断し,着座時における接触抵抗と締結終了時における接触抵抗との差が,予め定めた接触抵抗差閾値未満である場合に,バスバーと電極端子との間に異物が混入されていないと判断してもよい。このようにしても,確実に異物の有無を判断することができることに変わりないからである。
【0012】
上記に記載の電池の製造方法において,組電池作成工程では,接触抵抗判定値として,着座時における締結トルクTiから締結終了時における締結トルクTfまでの積分区間について接触抵抗を積分した接触抵抗のトルク積分値K0
K0=∫R(T)dT
R(T):接触抵抗
T:締結トルク
を用い,接触抵抗のトルク積分値K0が,予め定めた接触抵抗トルク積分閾値以上である場合に,バスバーと電極端子との間に異物が混入されていると判断し,接触抵抗のトルク積分値K0が,予め定めた接触抵抗トルク積分閾値未満である場合に,バスバーと電極端子との間に異物が混入されていないと判断するとなおよい。測定誤差の影響を受けないで,より確実に異物の有無を判断することができるからである。
【0013】
上記に記載の電池の製造方法において,組電池作成工程では,接触抵抗判定値として,着座時における締結トルクTiから締結終了時における締結トルクTfまでの積分区間について接触抵抗を積分した接触抵抗のトルク積分値K1
K1=∫[R(T)−Ra]dT
R(T):接触抵抗
T:締結トルク
Ra:任意の定数
を用い,接触抵抗のトルク積分値K1が,予め定めた接触抵抗トルク積分閾値以上である場合に,バスバーと電極端子との間に異物が混入されていると判断し,接触抵抗のトルク積分値K1が,予め定めた接触抵抗トルク積分閾値未満である場合に,バスバーと電極端子との間に異物が混入されていないと判断してもよい。測定誤差の影響を受けないで,より確実に異物の有無を判断することができるからである。
【0014】
上記に記載の電池の製造方法において,組電池作成工程では,締結終了時における締結トルクの値が予め定めた最小トルク閾値未満であるか,または,最大トルク閾値より大きい場合に,締結に異常があると判断するとともに,締結に異常があると判断されなかった場合に,締結に異常がないと判断するものであるとよい。トルクの値により,締結そのものに異常があるか否かを判断することができるからである。
【0015】
上記に記載の電池の製造方法において,組電池作成工程では,着座時における回転量の値が,予め定めた着座時における最小回転量閾値未満であるか,もしくは,予め定めた着座時における最大回転量閾値より大きい場合,または,締結終了時における回転量の値が,予め定めた締結終了時における最小回転量閾値未満であるか,もしくは,予め定めた締結終了時における最大回転量閾値より大きい場合に,締結に異常があると判断するとともに,締結に異常があると判断されなかった場合に,締結に異常がないと判断するものであるとよい。回転量の値により,締結そのものに異常があるか否かを判断することができるからである。
【0016】
また,本発明の別の態様におけるナット締結装置は,ナットを嵌合するソケットと,ソケットを回転させるための回転駆動部と,ナットとボルトによる締結を予定されている第1の被締結部材と第2の被締結部材とにそれぞれ電気的に接続される第1被締結部材導通端子と第2被締結部材導通端子と,第1被締結部材導通端子と第2被締結部材導通端子とによる測定値に基づいて,第1の被締結部材と第2の被締結部材との間の接触抵抗から接触抵抗判定値を算出する接触抵抗算出部と,接触抵抗算出部により算出された接触抵抗判定値に基づいて,第1の被締結部材と第2の被締結部材との間の異物の有無を判断する接触抵抗判断部とを有するものである。そして,少なくともナットが第1の被締結部材に着座してから締結が終了するまでの期間内に,第1被締結部材導通端子および第2被締結部材導通端子は,それぞれ第1の被締結部材および第2の被締結部材に電気的に接続されるものである。かかるナット締結装置を用いることにより,第1の被締結部材と第2の被締結部材との間に異物があるか否かの判断を行うことができる。また,このナット締結装置を用いることで,締結工程と異物検査工程とを一体に行うことができる。
【0017】
上記に記載のナット締結装置において,接触抵抗判断部は,接触抵抗判定値として,接触抵抗の値を用い,接触抵抗が予め定めた接触抵抗閾値以上である場合に,第1の被締結部材と第2の被締結部材との間に異物があると判断するとともに,接触抵抗が予め定めた接触抵抗閾値未満である場合に,第1の被締結部材と第2の被締結部材との間に異物がないと判断するものであるとよい。より確実に異物の有無を判断することができるからである。
【0018】
上記に記載のナット締結装置において,接触抵抗判断部は,接触抵抗判定値として,着座時における接触抵抗と締結終了時における接触抵抗との差を用い,着座時における接触抵抗と締結終了時における接触抵抗との差が,予め定めた接触抵抗差閾値以上である場合に,第1の被締結部材と第2の被締結部材との間に異物があると判断するとともに,着座時における接触抵抗と締結終了時における接触抵抗との差が,予め定めた接触抵抗差閾値未満である場合に,第1の被締結部材と第2の被締結部材との間に異物がないと判断するものであるとよい。このようにしても,確実に異物の有無を判断することができることに変わりないからである。
【0019】
上記に記載のナット締結装置において,接触抵抗判断部は,接触抵抗判定値として,着座時における締結トルクTiから締結終了時における締結トルクTfまでの積分区間について接触抵抗を積分した接触抵抗のトルク積分値K0
K0=∫R(T)dT
R(T):接触抵抗
T:締結トルク
を用い,接触抵抗のトルク積分値K0が,予め定めた接触抵抗トルク積分閾値以上である場合に,第1の被締結部材と第2の被締結部材との間に異物があると判断するとともに,接触抵抗のトルク積分値K0が,予め定めた接触抵抗トルク積分閾値未満である場合に,第1の被締結部材と第2の被締結部材との間に異物がないと判断するものであるとなおよい。測定誤差の影響を受けないで,より確実に異物の有無を判断することができるからである。
【0020】
上記に記載のナット締結装置において,接触抵抗判断部は,接触抵抗判定値として,着座時における締結トルクTiから締結終了時における締結トルクTfまでの積分区間について接触抵抗を積分した接触抵抗のトルク積分値K1
K1=∫[R(T)−Ra]dT
R(T):接触抵抗
T:締結トルク
Ra:任意の定数
を用い,接触抵抗のトルク積分値K1が,予め定めた接触抵抗トルク積分閾値以上である場合に,第1の被締結部材と第2の被締結部材との間に異物があると判断するとともに,接触抵抗のトルク積分値K1が,予め定めた接触抵抗トルク積分閾値未満である場合に,第1の被締結部材と第2の被締結部材との間に異物がないと判断するものであってもよい。測定誤差の影響を受けないで,より確実に異物の有無を判断することができるからである。
【0021】
上記に記載のナット締結装置において,ソケットに加わる締結トルクを測定するトルクセンサと,トルクセンサにより検出された締結トルクの値に基づいて,締結の異常を判断するトルク判断部とを有するとよい。トルクの値により,締結そのものに異常があるか否かを判断することができるからである。
【0022】
上記に記載のナット締結装置において,トルク判断部は,締結終了時における締結トルクの値が予め定めた最小トルク閾値未満であるか,または,最大トルク閾値より大きい場合に,締結に異常があると判断するとともに,締結に異常があると判断されなかった場合に,締結に異常がないと判断するものであるとよい。より確実に締結そのものに異常があるか否かを判断することができるからである。
【0023】
上記に記載のナット締結装置において,ソケットの回転量を測定する回転量測定部と,回転量測定部により測定された回転量の値に基づいて,締結の異常を判断する回転量判断部とを有するとよい。回転量の値により,締結そのものに異常があるか否かを判断することができるからである。
【0024】
上記に記載のナット締結装置において,回転量判断部は,着座時における回転量の値が,予め定めた着座時における最小回転量閾値未満であるか,もしくは,予め定めた着座時における最大回転量閾値より大きい場合,または,締結終了時における回転量の値が,予め定めた締結終了時における最小回転量閾値未満であるか,もしくは,予め定めた締結終了時における最大回転量閾値より大きい場合に,締結に異常があると判断するとともに,締結に異常があると判断されなかった場合に,締結に異常がないと判断するものであるとよい。より確実に締結そのものに異常があるか否かを判断することができるからである。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば,締結箇所への異物の混入を検出するとともに締結を行うことのできる電池の製造方法およびナット締結装置が提供されている。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】第1の実施形態に係るナットランナを説明するための概略構成図である。
【図2】第1の実施形態に係るナットランナを用いて被締結部材を締結する直前を示す概念図である。
【図3】第1の実施形態に係るナットランナの制御系を示すブロック図である。
【図4】第1の実施形態に係るナットランナを用いて異物を検査する場合を説明するための図(その1)である。
【図5】第1の実施形態に係るナットランナを用いて異物を検査する場合を説明するための図(その2)である。
【図6】第1の実施形態に係るナットランナを用いて異物を検査する場合を説明するための図(その3)である。
【図7】第1の実施形態に係るナットランナを用いて被締結部材を締結するフローを説明するためのフローチャートである。
【図8】ナットランナにおけるソケットの回転量とトルクとの関係を示すグラフである。
【図9】ナットランナにおけるトルクと接触抵抗との関係を示すグラフである。
【図10】第1の実施形態に係る別の接触抵抗判定値の算出方法を説明するためのグラフである。
【図11】第1の実施形態に係る別のナットランナを用いて被締結部材を締結するフローを説明するためのフローチャート(その1)である。
【図12】第1の実施形態に係る別のナットランナを用いて被締結部材を締結するフローを説明するためのフローチャート(その2)である。
【図13】第2の実施形態に係る電池の製造方法により製造されるバッテリパックの概略構成を説明するための斜視図である。
【図14】第2の実施形態に係る電池の製造方法により製造されるバッテリパックからバッテリを抜き出して描いた断面図である。
【図15】第2の実施形態に係る電池の製造方法により製造されるバッテリパックのバッテリにおける捲回電極体を示す斜視図である。
【図16】第2の実施形態に係る電池の製造方法により製造されるバッテリパックのバッテリにおける捲回電極体の捲回構造を説明するための展開図である。
【図17】第2の実施形態に係る電池の製造方法におけるナットランナの各端子の接触位置を例示する平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下,本発明を具体化した実施の形態について,添付図面を参照しつつ詳細に説明する。第1の実施形態では,ナット締結装置について説明する。そして,第2の実施形態では,そのナット締結装置を用いることに特徴を有する電池の製造方法について,リチウムイオン二次電池を例に挙げて説明する。
【0028】
(第1の実施形態)
1.ナットランナ
本形態のナットランナは,ナットをボルトに締結しつつ,被締結部材間の接触抵抗を測定するものである。そして,その被締結部材間の接触抵抗の値に基づいて,被締結部材間に異物があるか否かの判断を行うものである。
【0029】
本形態のナットランナ200は,図1に示すように,ソケット210と,駆動モータ220と,回転量測定部221と,トルクセンサ230と,制御部240と,測定端子部250とを有するナット締結装置である。また,上記の他に,カップリングや減速機などのその他の各部を有していてもよい。
【0030】
ソケット210は,ナットと嵌め合う嵌合部である。駆動モータ220は,ソケット210を回転させるための回転駆動部である。駆動モータ220は,例えば,サーボモータである。もちろん,その他のモータであってもよい。回転量測定部221は,レゾルバやエンコーダなどの駆動モータ220の回転量を計測できるものである。トルクセンサ230は,ソケット210に加わるトルクを測定するためのトルク測定部である。制御部240は,各部の動作を制御するためのものである。制御部240は,ナットランナ200の本体の内部にある。また,ナットランナ200の本体とは別体のコントローラの内部に制御部240が設けられていることとしてもよい。
【0031】
図2は,ナットランナ200が被締結部材3と被締結部材4との締結を行う場合を示す概念図である。図2に示すように,ボルト1とナット2により被締結部材3と被締結部材4とを締め付ける。被締結部材3は,ボルト1とナット2による締結を予定されている第1の被締結部材である。被締結部材4は,ボルト1とナット2による締結を予定されている第2の被締結部材である。この締結のために,ナットランナ200は,図2中の矢印Aの向きに動く。図2は,ボルト1に供給するナット2がボルトに接触する直前を示したものである。なお,図2では,ナット2とボルト1との位置関係を分かりやすくするために,ナット2をソケット210からはみ出すように描いてある。実際には,ナット2はソケット210にもっと深く嵌め合わされている。
【0032】
測定端子部250は,図1に示すように,電圧用端子251と,電流用端子252と,電圧用端子253と,電流用端子254とを有している。電圧用端子251と電圧用端子253とは,被締結部材3と被締結部材4との間にかかる電圧を測定するためのものである。電流用端子252と電流用端子254とは,被締結部材3と被締結部材4との間に流れる電流を測定するためのものである。
【0033】
電圧用端子251および電流用端子252は,図1に示すように,ナットランナ本体201に設けられている。電圧用端子253および電流用端子254は,図1に示すように,支持部260に設けられている。支持部260は,電圧用端子253および電流用端子254を支持するためのものである。支持部260は,ナットランナ本体201に対して図1の矢印Dの向きに動くことができるようになっている。
【0034】
測定端子部250は,ナットランナ200が締結を行っている間,被締結部材3と被締結部材4との間の電圧および電流を測定し続けるものである。そのため,電圧用端子251および電流用端子252は,締結を行う際に,被締結部材3に接触している。すなわち,電圧用端子251および電流用端子252は,被締結部材3と電気的に接続される第1被締結部材導通端子である。そして,電圧用端子253および電流用端子254は,締結を行う際に,被締結部材4に接触している。すなわち,電圧用端子253および電流用端子254は,被締結部材4と電気的に接続される第2被締結部材導通端子である。
【0035】
電圧用端子251と,電流用端子252と,電圧用端子253と,電流用端子254とは,それぞれ,図1および図2に示すように,ばね251aと,ばね252aと,ばね253aと,ばね254aとを有している。そして,電圧用端子251および電流用端子252は,図1中の矢印Bの向きに動くようになっている。電圧用端子253および電流用端子254も,図1中の矢印Cの向きに動くようになっている。
【0036】
図2では,電圧用端子251および電流用端子252は,被締結部材3に接触している。また,電圧用端子253および電流用端子254は,被締結部材4に接触している。
図2に示す時刻の後も,ソケット210は,図2の矢印Aの向きへの移動を続ける。その際に,ばね251a,252aは縮む。したがって,電圧用端子251および電流用端子252は,被締結部材3に接触したまま測定を続けることができる。そのため,この締結により,各端子251,252,253,254が破損するおそれはない。被締結部材3,4についても同様である。
【0037】
なお,電圧用端子251と,電流用端子252と,電圧用端子253と,電流用端子254との位置は,必ずしも図2に示す位置である必要はない。被締結部材3および被締結部材4の位置,形状等に応じて異なっていてよい。
【0038】
2.ナットランナの制御系
図3にナットランナ200の制御系を示すブロック図を示す。制御部240は,図3に示すように,モータ制御部241と,回転量判断部242と,トルク判断部243と,接触抵抗算出部244と,接触抵抗判断部245と,その他の制御部246とを有している。
【0039】
モータ制御部241は,駆動モータ220の回転の開始および停止,その回転の速度を制御するためのものである。回転量判断部242は,ソケット210の回転の開始から締結の終了までの駆動モータ220の回転量に基づいて,回転の異常,すなわち締結の異常の有無を判断するためのものである。そのために,回転量測定部221から駆動モータ220の回転量を入力されることとなる。トルク判断部243は,トルクセンサ230からのトルクの入力値に基づいて,トルクの異常,すなわち締結の異常の有無を判断するためのものである。
【0040】
接触抵抗算出部244は,被締結部材3と被締結部材4との間の接触抵抗から接触抵抗判定値を算出するためのものである。接触抵抗判定値として,後述するように種々の算出方法から算出された値を採用することができる。本形態では,接触抵抗判定値として,被締結部材3と被締結部材4との間の接触抵抗値そのものを採用する。その算出のために,電圧用端子251と電圧用端子253とから,被締結部材3と被締結部材4との間にかかる電圧の測定値を入力される。そして,電流用端子252と電流用端子254とから,被締結部材3と被締結部材4との間に流れる電流の測定値を入力される。接触抵抗算出部244は,これら電圧の測定値および電流の測定値に基づいて,被締結部材3と被締結部材4との間の接触抵抗を算出する。
【0041】
接触抵抗判断部245は,接触抵抗算出部244により算出された接触抵抗判定値に基づいて,被締結部材3と被締結部材4との間に異物が混入したか否かを判断するためのものである。その判断の詳細については,後述する。また,その他の制御部246は,上記以外のその他の制御を行うためのものである。
【0042】
3.異物の判断方法
3−1.異物が混入している場合
異物が混入しているか否かを判断する判断方法について説明する。まず,異物が混入している場合について説明する。ここで,図4に示すように,被締結部材3と被締結部材4との間に異物Xが入っているとする。図4は,被締結部材3と被締結部材4との間に異物Xがある場合における着座時を示す図である。ここで着座時とは,ナット2が被締結部材3に接触した直後の瞬間のことである。このとき,ナット2は,ボルト1にある程度締め付けられている。
【0043】
着座時には,被締結部材3と被締結部材4との接触状態は悪い。すなわち,被締結部材3と被締結部材4との接触面積は非常に小さい。これらの間に異物Xが入り込んでいるためである。したがって,被締結部材3と被締結部材4との間の接触抵抗は大きい。やがて,異物Xを押しつぶしながら,ナットランナ200はナット2をボルト1に締め付ける。
【0044】
図5は,被締結部材3と被締結部材4との間に異物Xがある場合における締結終了時を示す図である。ここで締結終了時とは,ナット2とボルト1とにより,被締結部材3と被締結部材4との締結が終了した時刻のことをいう。もちろん,このとき,ボルト1へのナット2の締め付けは完了している。
【0045】
この締結が終了した後には,図5に示すように,被締結部材3と被締結部材4との接触状態はよい。すなわち,被締結部材3と被締結部材4との間の接触抵抗は十分に小さい。なお,図5に示すように,被締結部材3と被締結部材4との間に押しつぶされた異物Xが残留している。しかし,この異物Xは十分に小さい。そのため接触抵抗は,異物Xのない場合における接触抵抗とほとんど変わらない。
【0046】
3−2.異物が混入していない場合
図6は,被締結部材3と被締結部材4との間に異物のない場合における着座時を示す図である。図6に示すように,被締結部材3と被締結部材4との接触状態はよい。つまり,被締結部材3と被締結部材4との間の接触抵抗は十分に小さい。また,締結終了後においても,同様である。
【0047】
3−3.判断方法
ナットランナ200がナット2をボルト1に締め付けている期間内に,測定端子部250は,被締結部材3と被締結部材4との間の電圧と電流を測定し続ける。そして,接触抵抗算出部244は,被締結部材3と被締結部材4との間の接触抵抗を算出し続ける。接触抵抗判断部245は,その接触抵抗の値に基づいて,被締結部材3と被締結部材4との間の異物の有無を判断するのである。
【0048】
具体的には,着座時における接触抵抗の値が予め定めた接触抵抗閾値以上である場合には,異物が混入していると判断する。着座時における接触抵抗の値が予め定めた接触抵抗閾値より小さい場合には,異物が混入していないと判断する。この接触抵抗閾値は,例えば,25μΩである(表2参照)。もちろん,これ以外の値を用いてもよい。
【0049】
なお,ここでは着座時に着目した。しかし,締結の開始から締結の終了までにわたって判断を行ってもよい。また,締結の開始から締結の終了までにおけるいくつかの時刻を選んで,判断を行うこととしてもよい。
【0050】
4.ナットランナの制御フロー
ナットランナ200におけるナット締結の際の制御フローを図7のフローチャートにより説明する。まず,ソケット210にナットを供給する。これは,外部のナット供給装置により行ってもよいし,ナットランナ200自身がソケット210にナットを供給するナット供給部を有することとしてもよい。
【0051】
S101:
次に,モータ制御部241が駆動モータ220の回転を開始する。そして,ナットランナ200は,ボルト1に近づく。そのため,ナット2はボルト1に近づく。そして,電圧用端子251および電流用端子252は,被締結部材3に接触する。一方,電圧用端子253および電流用端子254は,被締結部材4に接触する。これにより,被締結部材3と被締結部材4との間の接触抵抗の値を測定することができる。これらの接触以降,ばね251a,252a,253a,254aは縮む。しかし,これらの接触が解除されるおそれはない。
【0052】
続いて,ナット2はボルト1に接触する。これにより,ナット2のボルト1への締結が開始される(S101)。また,それと同時に,接触抵抗算出部244が被締結部材3と被締結部材4との間の接触抵抗の算出を開始する。
【0053】
S102:
これ以降,ナットランナ200は,ナット2のボルト1への締結を継続して行う。これにより,ナット2はボルト1に対して回転しながら,ナット2とボルト1のヘッドの距離は近づいていくこととなる。この締結の間,抵抗算出部244は被締結部材3と被締結部材4との間の接触抵抗を算出し続ける。そして,ナット2は被締結部材3に接触する。これがナット2の被締結部材3への着座である。
【0054】
やがて,ナットランナ200によるナット2のボルト1への締結が終了する。これは,トルクセンサ230により測定されたトルクの値が予め定めた閾値以上となったときに,締結を終了させることとすればよい。この締結の終了の時刻まで,抵抗算出部244は被締結部材3と被締結部材4との間の接触抵抗を算出し続ける。
【0055】
S103:
続いて,算出した抵抗値に基づいて,異物の有無を判断する(S103)。具体的には,着座時における接触抵抗値Riと,締結終了時における接触抵抗値Rfとを用いる。接触抵抗値Riと接触抵抗値Rfとのいずれもが予め定めた接触抵抗閾値R1未満である場合には(S103:Yes),S104に進む。接触抵抗値Riと接触抵抗値Rfとの少なくとも一方が予め定めた接触抵抗閾値R1以上である場合には(S103:No),S105に進む。
【0056】
S104:
S104では,その締結された被締結部材3と被締結部材4との間に異物は混入していないと判断する。
【0057】
S105:
S105では,その締結された被締結部材3と被締結部材4との間に異物が混入していると判断する。
【0058】
以上により,1箇所の締結箇所が締結される。それとともに,被締結部材3と被締結部材4との間に異物が混入しているか否かの判断もなされる。
【0059】
5.実験
5−1.評価項目
ここで,締結箇所に異物を混入させて行った実験について説明する。締結箇所に意図的に異物を混入させた場合と,異物を混入させなかった場合とで,各評価項目に違いがみられるのか否かを調べた。表1に示すように,異物として,鉄片,紙片,毛髪を混入した。
【0060】
異物を挟む箇所は,第2の実施形態で説明するバスバー190(図14参照)と正極端子172(図14参照)との間である。バスバー190は,被締結部材3(図2参照)に相当するものである。正極端子172は,被締結部材4(図2参照)に相当するものである。この実験における評価項目は,ソケット210にかかるトルク,締結の際のソケット210の回転量,バスバー190と正極端子172との接触抵抗の値である。
【0061】
【表1】
【0062】
5−2.実験結果
この実験の結果を,表2に示す。なお,回転量については,ソケット210の回転を開始してから締結を終了するまでにソケットが回転した回転量を角度で示している。
【0063】
【表2】
【0064】
ここで,測定値は以下のものである。
Ti:着座時における締結トルク
Tf:締結終了時における締結トルク
Di:着座時における回転量
Df:締結終了時における回転量
Ri:着座時における接触抵抗
Rf:締結終了時における接触抵抗
【0065】
また,異物の有無を判断するのに用いる閾値は以下のとおりである。
T1:締結終了時における最小トルク閾値
T2:締結終了時における最大トルク閾値
D1:着座時における最小回転量閾値
D2:着座時における最大回転量閾値
D3:締結終了時における最小回転量閾値
D4:締結終了時における最大回転量閾値
R1:接触抵抗閾値
【0066】
なお,表2では,D3,D4の値は,次式を満たすように決めた。
D3 = Di+13
D4 = D3+30
ただし,これはあくまで例示であり,これ以外の値を用いることもできる。
【0067】
表2に示すように,トルクや回転量については,いずれの異物を混入させた場合であっても,着座から締結終了までの期間内に大きな変化はみられなかった。一方,接触抵抗については,いずれの異物を混入させた場合であっても,着座時における接触抵抗の値に大きな変化がみられた。したがって,着座時における接触抵抗の値により,異物の混入の有無を判断することができる。
【0068】
5−3.ナットの着座時
図8は,ソケット210の回転量とトルクセンサ230の検出したトルクとの関係を示すグラフである。横軸は,ソケット210が回転を開始してから締結を終了するまでのソケット210の回転量である。縦軸は,ソケット210にかかるトルクである。表2に示すように,異物の有無にかかわらず,Dfの値は,ほとんど変わらない。したがって,見やすくするために,異物のある場合のそれぞれの線をあえて横軸方向にずらして描いてある。実際には,締結終了時のトルクの値が表2の値となるような位置に,それぞれの線はある。
【0069】
箇所Yでは,トルクの値が立ち上がっている。この立ち上がりは,ナット2が被締結部材3に着座したために生じたものである。すなわち,箇所Yは,着座時(図4参照)を示している。そして,箇所Zは,締結終了時(図5参照)を示している。着座時以降,回転量が大きくなるにしたがい,トルクの値は上昇する。図8では,トルクの値は,箇所Yから箇所Zに向けて上昇している。ここで,回転量の増大は,締結の進行を示している。したがって,締結の進行とともに,トルクの値は上昇する。
【0070】
図9は,トルクと接触抵抗との関係を示すグラフである。横軸は,ソケット210にかかるトルクの値である。縦軸は,バスバー190と正極端子172との接触抵抗の値である。接触抵抗は,トルクの上昇とともに減少している。すなわち,ナット2のボルト1への締め付けが進行するにしたがって,接触抵抗は減少するのである。
【0071】
図9に示すように,異物が混入している場合であっても,トルクが0.5N・mのときには,少なくともバスバー190と正極端子172とは接触していると考えられる。表2に示したように,接触抵抗閾値R1を25μΩとする。ここで例えば,トルクが0.5N・mとなった時刻を着座時であるとする。すると,図9に示すように,バスバー190と正極端子172との間に異物がない場合には,接触抵抗の値は,接触抵抗閾値R1未満である。バスバー190と正極端子172,182との間に異物がある場合には,接触抵抗の値は,接触抵抗閾値R1以上である。
【0072】
以上述べたように,着座時以降であって締結終了時までの接触抵抗を測定することにより,バスバー190と正極端子172との間の異物の有無を検出することができる。バスバー190と負極端子182(図14参照)との間の異物の有無についても同様である。また,表2に示したように,鉄片や紙片や毛髪といった異物を検出できる。そして,これら以外の異物についても同様である。
【0073】
6.変形例
6−1.接触抵抗判定値
本形態では,被締結部材3と被締結部材4との間の異物の有無を検出する接触抵抗判定値として,着座時の接触抵抗値Riと締結終了時の接触抵抗値Rfとを採用した。しかし,接触判定抵抗値として,これ以外のものを用いてもよい。その場合であっても,接触抵抗算出部244が接触抵抗判定値を算出し,接触抵抗判断部245が接触抵抗判定値に応じた閾値を用いて,被締結部材3と被締結部材4との間の異物の有無を判断することに
変わりない。
【0074】
6−1−1.着座時の接触抵抗値のみで判断
また,接触抵抗判定値として,着座時の接触抵抗値Riのみを用いてもよい。この場合であっても,異物の有無については検出することができるからである。ただし,締結終了時の接触抵抗値Rfをも判断基準とするほうがより確実な判断をすることができる。
【0075】
6−1−2.着座時から締結終了時までの間の接触抵抗値
また,接触抵抗判定値として,着座時から締結終了時まで測定した接触抵抗のうちから,任意の時刻における接触抵抗値を選び出して用いてもよい。異物の有無を検出することができることに変わりないからである。
【0076】
例えば,図9に示したように,異物が入っている場合には,着座時以降,バスバー190と正極端子172,182との間の接触抵抗はなだらかに減少する。そこで,着座時から締結終了時までの期間内における,前述した時点とは別の時点での接触抵抗の値により,異物の有無を判断することができる。つまり,別のトルクの値を採用することができる。すなわち,着座時から締結終了時までの任意の時刻における接触抵抗値Rmを用いてよい。
【0077】
また,着座時から締結終了時までの間に算出した複数の算出値を用いてもよい。これらの算出値のうちいずれか一つでも予め定めた接触抵抗閾値よりも大きい場合には,異物ありと判断すればよい。そうでなければ,異物なしと判断する。
【0078】
そのために,電圧用端子251および電流用端子252は,少なくともナット2が被締結部材3に着座してから締結が終了するまでの期間内に,被締結部材3に電気的に接続されていることが好ましい。また,電圧用端子253および電流用端子254は,少なくともナット2が被締結部材3に着座してから締結が終了するまでの期間内に,被締結部材4に電気的に接続されていることが好ましい。
【0079】
6−1−3.着座時の接触抵抗値と締結終了時の接触抵抗値との差
また,接触抵抗判定値として,着座時における接触抵抗値Riと締結終了時における接触抵抗値Rfとの差(Rf−Ri)を用いてもよい。被締結部材3と被締結部材4との間に異物が挟まっていた場合,着座時から締結終了時までの間に被締結部材3と被締結部材4とが異物Xを押しつぶしながら締結が進行する。したがって,締結の進行にともなって,接触抵抗の値は小さくなる。表2に示したように,異物がある場合には,接触抵抗差(Rf−Ri)の値は大きい。逆に,異物がない場合には,接触抵抗差(Rf−Ri)の値は小さい。
【0080】
したがって,接触抵抗差(Rf−Ri)が予め定めた接触抵抗差閾値R2未満である場合に,被締結部材3と被締結部材4との間に異物が混入されていないと判断すればよい。逆に,接触抵抗差(Rf−Ri)が予め定めた接触抵抗差閾値R2以上である場合に,被締結部材3と被締結部材4との間に異物が混入されていると判断する。この接触抵抗差閾値R2は,例えば,10μΩである(表2参照)。もちろん,これ以外の値を用いてもよい。以上により,接触抵抗差(Rf−Ri)に基づいて,異物の有無を判断することができる。
【0081】
6−1−4.接触抵抗のトルク積分値(1)
接触抵抗判定値として,接触抵抗のトルク積分値を用いてもよい。この場合,接触抵抗のトルク積分値K0は,次式で表される。
K0=∫R(T)dT
R(T):接触抵抗
T:締結トルク
積分区間はTiからTfまで
Ti:着座時における締結トルク
Tf:締結終了時における締結トルク
接触抵抗のトルク積分値K0は,図10に示すように,ドットのハッチングで表した領域K1の面積とスラッシュのハッチングで表した領域K2の面積との和である。
【0082】
前述したように,被締結部材3と被締結部材4との間に異物が混入している場合には,接触抵抗の値が大きい値をとる。測定される接触抵抗の値が大きいほど,接触抵抗のトルク積分値K0は大きくなる。したがって,接触抵抗のトルク積分値K0が,予め定めた接触抵抗トルク積分閾値以上である場合に,被締結部材3と被締結部材4との間に異物が混入されていると判断する。一方,測定される接触抵抗の値が小さいほど,接触抵抗のトルク積分値K0は小さくなる。したがって,接触抵抗のトルク積分値K0が,予め定めた接触抵抗トルク積分閾値未満である場合に,被締結部材3と被締結部材4との間に異物が混入されていないと判断する。
【0083】
このように積分値を用いた場合には,接触抵抗判定値として一つの接触抵抗の値を用いた場合に比べて,測定誤差の影響を受けにくい。したがって,より確実に異物の有無の判断を行うことができる。なお,各端子251,252,253,254は,十分に短いサンプリング周期ごとに測定を行っている。したがって,積分を行うにあたって問題とはならない。
【0084】
6−1−5.接触抵抗のトルク積分値(2)
また,接触抵抗判定値として,接触抵抗のトルク積分値K1を用いることもできる。接触抵抗のトルク積分値K1は,次式で表される。
K1=∫[R(T)−Rf]dT
R(T):接触抵抗
T:締結トルク
Rf:締結終了時における接触抵抗
積分区間はTiからTfまで
Ti:着座時における締結トルク
Tf:締結終了時における締結トルク
接触抵抗のトルク積分値K1は,図10の領域K1の面積に該当する。前述の実験で示したとおり,被締結部材3と被締結部材4との間に異物が混入している場合であっても,Rfの値はほぼ一定である。したがって,Rfを予め一定の定数Raとおいてもよい。
【0085】
この場合においても,測定される接触抵抗の値が大きいほど,接触抵抗のトルク積分値K1は大きくなる。したがって,接触抵抗のトルク積分値K1が,予め定めた接触抵抗トルク積分閾値以上である場合に,被締結部材3と被締結部材4との間に異物が混入されていると判断する。一方,測定される接触抵抗の値が小さいほど,接触抵抗のトルク積分値K1は小さくなる。したがって,そして,接触抵抗のトルク積分値K1が,予め定めた接触抵抗トルク積分閾値未満である場合に,被締結部材3と被締結部材4との間に異物が混入されていないと判断する。もちろん,接触抵抗判定値として,接触抵抗のトルク積分値K0を採用する場合と,接触抵抗のトルク積分値K1を採用する場合とでは,設定する接触抵抗トルク積分閾値の値は一般に異なっていてよい。
【0086】
6−2.フローチャート
6−2−1.トルク
本形態では,ナット2の着座時から締結終了時までの被締結部材3と被締結部材4との間の接触抵抗の測定により,被締結部材3と被締結部材4との間に異物が混入されているか否かを判断した。しかし,この判断基準に加えて,駆動モータ220にかかるトルクを判断基準として加えてもよい。締結そのものが好適になされているか否かを判断することができるからである。
【0087】
図11は,電気抵抗に加えてトルクを判断基準として採用した場合の制御フローを示すフローチャートである。図11に示すフローチャートと図7に示したフローチャートとの相違点は,S201からS203までの処理である。したがって,その異なるS201からS203までの処理についてのみ説明する。
【0088】
S201:
S201では,トルクの値により,締結が好適に行われたか否かを判断する。つまり,締結終了時におけるトルクTfが,最小トルク閾値T1以上であるとともに,最大トルク閾値T2以下であるという条件を満たす場合には(S201:Yes),S103に進む。締結終了時におけるトルクTfが,最小トルク閾値T1未満であるか,最大トルク閾値T2より大きい場合には(S201:No),S202に進む。
【0089】
S202:
S202では,その締結箇所の締結に異常があると判断する。
【0090】
S203:
S203のステップに到達する場合は,トルクにおいても,回転量においても,締結に異常がないと判断された場合である。さらに,接触抵抗においても,異物はないと判断された場合である。したがってS203では,締結された被締結部材3と被締結部材4との間に異物はないと判断するとともに,締結そのものに異常がないと判断する。すなわち,好適に締結がなされたと判断するのである。
【0091】
なお,S201とS103の順序は入れ替えても構わない。トルクと接触抵抗との少なくとも一方に異常があれば,少なくとも好適に締結がなされていないことが分かるからである。
【0092】
6−2−2.回転量
また,締結そのものが好適になされているか否かの判断基準として,トルクに加えて,ソケット210の回転量を判断基準として加えてもよい。締結が好適になされているか否かをより正確に判断することができるからである。
【0093】
図12は,接触抵抗およびトルクに加えて回転量を判断基準として採用した場合の制御フローを示すフローチャートである。図12に示すフローチャートと図11に示したフローチャートとの相違点は,S301の処理である。したがって,その異なるS301の処理についてのみ説明する。
【0094】
S301:
S301では,ソケット210の回転量の値により,締結が好適に行われたか否かを判断する。つまり,着座時における回転量Diおよび締結終了時における回転量Dfが,以下の式を満たすか否かを判断する。
D1 ≦ Di ≦ D2 ………(1)
D3 ≦ Df ≦ D4 ………(2)
D1:着座時における最小回転量閾値
D2:着座時における最大回転量閾値
D3:締結終了時における最小回転量閾値
D4:締結終了時における最大回転量閾値
上記の式(1)(2)の両方を満たす場合に(S301:Yes),S103に進む。上記の式(1)(2)のうちの少なくとも一方を満たさない場合に(S301:No),S202に進む。
【0095】
なお,S201とS301とS103の順序は相互に入れ替えても構わない。トルクと回転量と接触抵抗の少なくとも一つに異常があれば,好適な締結がなされていないことが分かるからである。
【0096】
6−3.測定端子部
本形態では,電圧用端子251,253および電流用端子252,254の4本の端子を用いた。しかし,1本で電圧と電流を測定する端子を用いてもよい。電圧用端子251および電流用端子252の代わりに,一つの端子が,被締結部材3に接触する。電圧用端子253および電流用端子254の代わりに,別の端子が,被締結部材4に接触する。このように,2本の端子により,接触抵抗を測定することもできる。
【0097】
6−4.3部材以上
本形態では,被締結部材3と被締結部材4との2つの部材をボルト1とナット2により締結することとした。しかし,3以上の部材を締結する場合であっても,同様に本実施の形態を適用することができる。その場合には,その被締結部材の数に応じた数の端子を要する。これにより,各被締結部材間の異物の有無を判断することができる。
【0098】
6−5.回転量測定部
回転量測定部221は,レゾルバやエンコーダなどの駆動モータ220の回転数を計測できるものであるとした。しかし,モータ制御部241から駆動モータ220の回転数を計測することとしてもよい。その場合の回転量測定部は,制御部240の内部に配置されていてもよい。
【0099】
6−6.組み合わせ
もちろん,本形態および前述の変形例を自由に組み合わせてもよい。被締結部材3と被締結部材4との締結をより好適に行うことができるからである。
【0100】
7.まとめ
以上,詳細に説明したように,本実施の形態に係るナットランナ200は,被締結部材3と被締結部材4との間の接触抵抗を測定しつつ,ボルト1とナット2の締結を行うものである。これにより,被締結部材3と被締結部材4との間に異物が混入しているか否かを判断することができる。これにより,検査工程と一体化している締結工程を行うことのできるナット締結装置が実現されている。
【0101】
なお,本実施の形態は単なる例示にすぎず,本発明を何ら限定するものではない。したがって本発明は当然に,その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良,変形が可能である。接触抵抗算出部244は,締結開始時から締結終了時までにわたって,接触抵抗を算出し続けることとした。しかし,締結が終了した後に,算出することとしてもよい。その際に,異物の有無の判断に用いる時点における接触抵抗のみを算出することとしてもよい。トルクがある値となった時点における接触抵抗が分かればよいからである。
【0102】
(第2の実施形態)
第2の実施形態について説明する。本形態では,第1の実施形態で説明したナットランナ200(図1等参照)を用いてバッテリパックを製造する。ナットランナ200は,バッテリパックの製造に好適に用いることができるからである。
【0103】
1.バッテリパックの基本構造
本形態のバッテリパックBPは,図13に示すように,バッテリ100を直列に接続した組電池である。バッテリ100は,角型の単電池である。バッテリパックBPでは,図13に示すように,バッテリ100の正極端子と,そのバッテリ100に隣り合うバッテリ100の負極端子とが,バスバー190を介して締結されている。この締結は,ボルトとナットによりなされている。
【0104】
バッテリ100の概略構成を図14の断面図に示す。図14は,バッテリパックBPからバッテリ100を取り出して描いた断面図である。バッテリ100は,電池容器110の内部に図15に示すような扁平形状の捲回電極体10を有するものである。電池容器110は,図14に示すように,電池容器本体111と,蓋体112とを備えるものである。電池容器本体111の内部には,捲回電極体10が配置されている。この捲回電極体10は,実際に発電に寄与する発電要素である。蓋体112は,電池容器本体111に接合されている。
【0105】
また,電池容器110の内部には,電解液が注入されている。電池容器110の内部に注入された電解液は,有機溶媒に電解質を溶解させたものである。有機溶媒として例えば,プロピレンカーボネート(PC)やエチレンカーボネート(EC),ジメチルカーボネート(DMC),エチルメチルカーボネート(EMC)等のエステル系溶媒や,エステル系溶媒にγ−ブチロラクトン(γ−BL),ジエトキシエタン(DEE)等のエーテル系溶媒等を配合した有機溶媒が挙げられる。また,電解質である塩として,過塩素酸リチウム(LiClO4)やホウフッ化リチウム(LiBF4),六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)などのリチウム塩を用いることができる。
【0106】
図14中の左側には,捲回電極体10から突出している正極端部30が表れている。この突出している部材は,正極板の正極芯材である。図14中の右側には,捲回電極体10から突出している負極端部40が表れている。この突出している部材は,負極板の負極芯材である。
【0107】
正極端部30には,正極内部端子50が溶接されている。正極内部端子50は,正極集電部51と,台座52と,極柱53とを有する電極内部端子である。正極集電部51は,正極端部30から集電するための電極集電部である。そのため,正極集電部51は,正極端部30に溶接により接合されている。すなわち,正極集電部51は,正極端部30に電気的に接続されている。極柱53は,その頂部54と台座52とで正極端子172等の各部材を挟み込むためのものである。そのため,正極内部端子50と正極端子172とは電気的に接続されている。正極集電部51は,正極端部30に溶接されている箇所である。台座52は,正極集電部51の一方の端部に設けられている。極柱53は,台座52の一方の面から突出している。
【0108】
バスバー190と正極端子172とは,ボルト171とナット2により締結されている。そのため,バスバー190は,正極端子172と電気的に接続されている。したがって,バスバー190は,正極内部端子50とも電気的に接続されている。負極側も同様である。ただし,正極側と負極側とで,その材質が異なっている。正極端部30となる正極芯材と,正極内部端子50と,正極端子172の材質はアルミニウムである。負極端部40となる負極芯材と,負極内部端子60と,負極端子182の材質は銅である。
【0109】
図16は,捲回電極体10の捲回構造を示す展開図である。捲回電極体10は,図16に示すように,内側から正極板P,セパレータS,負極板N,セパレータTの順に積み重ねた状態で捲回されたものである。すなわち,捲回電極体10は,正極板Pと負極板Nとをこれらの間にセパレータS,Tを介在させて交互に配置したものである。
【0110】
正極板Pは,正極芯材であるアルミ箔にリチウムイオンを吸蔵・放出可能な正極活物質を含む合材を塗布したものである。正極活物質として,ニッケル酸リチウム(LiNiO2),マンガン酸リチウム(LiMnO2),コバルト酸リチウム(LiCoO2)等のリチウム複合酸化物などが用いられる。負極板Nは,負極芯材である銅箔にリチウムイオンを吸蔵・放出可能な負極活物質を含む合材を塗布したものである。負極活物質として,非晶質炭素,難黒鉛化炭素,易黒鉛化炭素,黒鉛等の炭素系物質が用いられる。
【0111】
図16に示すように正極板Pには,正極塗工部P1と,正極非塗工部P2とがある。正極塗工部P1は,正極芯材に正極活物質等を含む正極合材層を形成した箇所である。正極非塗工部P2は,正極芯材に正極合材層を形成していない箇所である。負極板Nには,負極塗工部N1と,負極非塗工部N2とがある。負極塗工部N1は,負極芯材に負極活物質等を含む負極合材層を形成した箇所である。負極非塗工部N2は,負極芯材に負極合材層を形成していない箇所である。
【0112】
セパレータS,Tは,ポリエチレンやポリプロピレン等の多孔性フィルムである。セパレータS,Tの厚みは,10〜50μm程度である。ここで,セパレータSとセパレータTとは同じ材質のものである。上記の捲回順の理解のために符号をS,Tとして区別しただけである。
【0113】
2.電池の製造方法
続いて,バッテリパックBPの製造方法について説明する。本形態の電池の製造方法は,前述したように,第1の実施形態で説明したナットランナ200(図1参照)を用いることに特徴のあるものである。
【0114】
2−1.電極板作成工程
まず,正極芯材であるアルミニウム箔に正極用塗工液を塗工して正極用ペースト層とする。この正極用塗工液は,溶媒に上記の正極活物質等を混練したものである。次に,正極用ペースト層の形成された正極芯材を乾燥炉の内部に搬送しつつその正極用ペースト層を乾燥させる。これにより,正極芯材に正極合材層が形成される。正極合材層は,正極活物質を含む層である。なお,正極芯材の両面に正極合材層を形成することが好ましい。これにより,正極板Pが作成される。負極板Nについても同様である。
【0115】
2−2.電極体作成工程
続いて,正極板Pおよび負極板Nに,これらの間にセパレータS,Tを介在させて捲回する。これらの捲回順序は,図16に示したように,内側から正極板P,セパレータS,負極板N,セパレータTの順序である。これにより,円筒形状の捲回電極体が作成される。そして,この円筒形状の捲回電極体に円筒側面方向からプレスを施すことにより,図15の扁平形状の捲回電極体10が作成される。
【0116】
2−3.単電池作成工程
続いて,電池容器本体111の内部に捲回電極体10を配置する。そして電池容器本体111の内部に電解液を注入する。そして蓋体112により封止する。もしくは,蓋をした後に,蓋体112に形成した注入口(図示せず)から電解液を注入することとしてもよい。これにより,バッテリ100が組み立てられる。このバッテリ100には,正極端子172,負極端子182を被締結部材とするようにボルト171,181が固定されている。この後,コンディショニングやエージングなどの処理や,各種の検査工程を行うとよい。以上の工程を経ることにより,バッテリ100が作成される。
【0117】
2−4.組電池作成工程
続いて,複数のバッテリ100を電気的に接続してバッテリパックBPを作成する。具体的には,図13に示すように,1つのバッテリ100の正極端子172と,それと隣り合うバッテリ100の負極端子182とをバスバー190を介して連結するのである。これにより,正極端子172と負極端子182とがバスバー190を介して電気的に接続される。
【0118】
そのために,ボルト171とナット2とにより,バスバー190と正極端子172とを締結しつつ,異物の有無を検査する。もちろん負極端子182とバスバー190との締結についても同様である。この際に,荷重部材191,192でこれらの複数のバッテリ100を挟んで加重した状態で行う。
【0119】
ここで,電圧用端子251と,電流用端子252と,電圧用端子253と,電流用端子254とが接触する位置は,図2あるいは図17に示す位置である。電圧用端子251と,電流用端子252と,電圧用端子253と,電流用端子254とは,バスバー190と正極端子172(もしくは負極端子182)との間の接触抵抗を測定するためのものである。したがって,これらバスバー190と正極端子172(もしくは負極端子182)とに接触すれば,図2や図17に示した位置以外の位置であってもよい。
【0120】
そして,ボルト171,181とナットの締結には,第1の実施形態で説明したナットランナ200が用いられる。これにより,ボルト171,181とナットの締結の際に,異物が混入したか否かを判断することができる。その判断は,第1の実施形態で説明したとおりである。
【0121】
締結箇所に異物が混入している場合には,そのボルト171,181とナットの締結を解除する。そして,ボルト171(181)と正極端子172(負極端子182)の周囲を清掃するとともに,バスバー190およびナットを交換して再度締結しなおすこととすればよい。再度締結しなおすことで,締結箇所に異物が混入していなければそれでよいからである。
【0122】
何度締結しなおしても,好適に締結できない場合には,そのバッテリ100を取り除けばよい。そして,その取り除いたバッテリ100の代わりに,新たなバッテリ100を補充して再びバッテリパックBPを作成することとすればよい。すなわち,1以上の部品を交換した後に締結しなおすのである。
【0123】
締結箇所に異物が混入していない場合には,他の締結箇所の締結を続ける。そして,すべての締結が終了すると,バッテリパックBPが作成される。このバッテリパックBPの締結箇所には,異物は混入していない。なお,第1の実施形態の変形例で説明したナットランナを用いても構わない。以上により,バッテリパックBPが製造される。もちろん,この後に各種検査を行ってもよい。
【0124】
3.変形例
3−1.電極体の形状
本形態では,扁平形状の捲回電極体10を備えるリチウムイオン二次電池の製造方法について説明した。しかし,扁平形状の電極体を有する電池に限らない。円筒形状の電極体を有する円筒型電池にも適用することができる。また,捲回しないで正極板と負極板とを平積みした電極体を用いる電池にも適用することができる。平積みした電極体を用いる場合には,電極板等を捲回する工程や,捲回した円筒形状の電極体を扁平形状にするプレス工程等も必須ではない。
【0125】
3−2.電池の種類
また,リチウムイオン二次電池に限らない。ニッケル水素電池やその他の二次電池にも適用することができる。その場合には,電極体の構成はもちろん,リチウムイオン二次電池の電極体の構成と異なっている。そのため,塗工液作成工程や電極板作成工程は必ずしも必要ではない場合がある。しかし,これらの電池であっても,発電要素である電極体は必要である。
【0126】
4.まとめ
以上,詳細に説明したように,本実施の形態に係る電池の製造方法は,第1の実施形態で説明したナットランナ200を用いてバッテリパックBPを製造する方法である。つまり,ボルト171,181とナット2とによりバスバー190と電極端子172,182とを締結しつつ,少なくともナット2がバスバー190に着座してから締結が終了するまでの間にバスバー190と電極端子172,182との間の接触抵抗を測定する。そして,測定したバスバー190と電極端子172,182との間の接触抵抗の値に基づいて,バスバーと電極端子172,182との間に異物があるか否かの判断を行う。そのため,締結箇所に異物が混入されているか否かを検出することができる。
【0127】
そして,締結箇所のいずれにも異物が混入されていない場合に,そのまま締結を継続して組電池を作成する。一方,締結箇所のいずれかに異物が混入されている場合には,締結を解除して1以上の部品を入れ替えた後に再度締結して組電池を作成する。したがって,本形態の電池の製造方法により製造されたバッテリパックBPの締結箇所には,異物が混入しているおそれがない。そのため,締結箇所の緩みや発熱のおそれのほとんどない電池を製造することのできる電池の製造方法が実現されている。
【0128】
なお,本実施の形態は単なる例示にすぎず,本発明を何ら限定するものではない。したがって本発明は当然に,その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良,変形が可能である。例えば,電池であれば,二次電池に限らず,一次電池にも適用することができる。
【符号の説明】
【0129】
10…捲回電極体
50…正極内部端子
52…台座
53…極柱
54…頂部
100…バッテリ
110…電池容器
111…電池容器本体
112…蓋体
171…ボルト
172…正極端子
181…ボルト
182…負極端子
BP…バッテリパック
P…正極板
P1…正極塗工部
P2…正極非塗工部
N…負極板
N1…負極塗工部
N2…負極非塗工部
S,T…セパレータ
【技術分野】
【0001】
本発明は,電池の製造方法およびナット締結装置に関する。さらに詳細には,単電池の電極端子にバスバーを好適に締結することのできる電池の製造方法およびナット締結装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電池は,携帯電話やパーソナルコンピュータ等の電子機器,ハイブリッド車両や電気自動車等の車両など,多岐にわたる分野で利用されている。これらのうち,車両や大型電子機器類には,単電池を直列または並列につないだ組電池が搭載されることが一般的である。
【0003】
そして,組電池には,単電池同士を電気的に接続するために,バスバーを介して単電池の電極端子同士を接続されたものがある。このバスバーと電極端子との接続に,ボルトとナットとを用いて締結する方式が用いられることがある。この場合,ボルトとナットとの締結が好適になされていないと,ボルトとナットとの締結が経時的に緩むおそれがある。締結箇所の締結が緩んだ電池では,電気抵抗は大きい。したがって,確実に締結を行うことが好ましい。
【0004】
そのため,好適な締結を行うことのできる締結装置が開発されてきている。例えば,特許文献1には,第1の被締結部材と第2の被締結部材との間の導通を検出することにより,電動ドライバの回転を停止するビス締め装置が開示されている(特許文献1の段落[0037]等および図1等参照)。これにより,ビスの締め付けすぎを防止できるとしている(特許文献1の段落[0010]等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−069555号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで,ボルトとナットによりバスバーと電極端子とを締結して組電池を製造する場合,バスバーを電極端子との間に異物が混入することがある。異物が混入していると,ボルトとナットの締結が徐々に緩むおそれがある。また,大電流の放電時にその異物の周辺箇所が発熱するおそれがある。したがって,締結箇所にこれらの異物を含まないようにすることが望ましい。しかし,特許文献1に記載の技術では,締結箇所に異物が混入しているか否かを判断することは困難である。
【0007】
本発明は,前述した従来の技術が有する問題点を解決するためになされたものである。すなわちその課題とするところは,締結箇所への異物の混入を検出するとともに締結を行うことのできる電池の製造方法およびナット締結装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題の解決を目的としてなされた本発明の一態様における電池の製造方法は,発電要素である電極体を作成する電極体作成工程と,電池容器の内部に電極体を配置するとともに電解液を注入して封止する単電池作成工程と,単電池の電極端子間をバスバーで電気的に接続することにより組電池とする組電池作成工程とを有する方法である。そして,組電池作成工程では,ボルトとナットとによりバスバーと電極端子とを締結しつつ,少なくともナットがバスバーに着座してから締結が終了するまでの期間内にバスバーと電極端子との間の接触抵抗を測定するとともに,バスバーと電極端子との間の接触抵抗から接触抵抗判定値を算出し,接触抵抗判定値に基づいて,バスバーと電極端子との間に異物があるか否かの判断を行う。かかる電池の製造方法では,バスバーと電極端子との間に異物があるか否かの判断を行うことができる。また,締結工程と異物検査工程とが一体となっている。そのため,かかる電池の製造方法を用いることにより,工程数が増えることはない。
【0009】
上記に記載の電池の製造方法において,組電池作成工程では,締結箇所のいずれにも異物が混入されていないと判断した場合に,そのまま締結を継続して組電池を作成するとともに,締結箇所のいずれかに異物が混入されていると判断した場合に,締結を解除して1以上の部品を入れ替えた後に再度締結して組電池を作成するとよい。バスバーと電極端子との間に異物を混入させないで,組電池を製造することができることに変わりないからである。また,組電池の歩留まりはよい。
【0010】
上記に記載の電池の製造方法において,組電池作成工程では,接触抵抗判定値として,接触抵抗の値を用い,接触抵抗が予め定めた接触抵抗閾値以上である場合に,バスバーと電極端子との間に異物が混入されていると判断し,接触抵抗が予め定めた接触抵抗閾値未満である場合に,バスバーと電極端子との間に異物が混入されていないと判断するとよい。より確実に異物の有無を判断することができるからである。
【0011】
上記に記載の電池の製造方法において,組電池作成工程では,接触抵抗判定値として,着座時における接触抵抗と締結終了時における接触抵抗との差を用い,着座時における接触抵抗と締結終了時における接触抵抗との差が,予め定めた接触抵抗差閾値以上である場合に,バスバーと電極端子との間に異物が混入されていると判断し,着座時における接触抵抗と締結終了時における接触抵抗との差が,予め定めた接触抵抗差閾値未満である場合に,バスバーと電極端子との間に異物が混入されていないと判断してもよい。このようにしても,確実に異物の有無を判断することができることに変わりないからである。
【0012】
上記に記載の電池の製造方法において,組電池作成工程では,接触抵抗判定値として,着座時における締結トルクTiから締結終了時における締結トルクTfまでの積分区間について接触抵抗を積分した接触抵抗のトルク積分値K0
K0=∫R(T)dT
R(T):接触抵抗
T:締結トルク
を用い,接触抵抗のトルク積分値K0が,予め定めた接触抵抗トルク積分閾値以上である場合に,バスバーと電極端子との間に異物が混入されていると判断し,接触抵抗のトルク積分値K0が,予め定めた接触抵抗トルク積分閾値未満である場合に,バスバーと電極端子との間に異物が混入されていないと判断するとなおよい。測定誤差の影響を受けないで,より確実に異物の有無を判断することができるからである。
【0013】
上記に記載の電池の製造方法において,組電池作成工程では,接触抵抗判定値として,着座時における締結トルクTiから締結終了時における締結トルクTfまでの積分区間について接触抵抗を積分した接触抵抗のトルク積分値K1
K1=∫[R(T)−Ra]dT
R(T):接触抵抗
T:締結トルク
Ra:任意の定数
を用い,接触抵抗のトルク積分値K1が,予め定めた接触抵抗トルク積分閾値以上である場合に,バスバーと電極端子との間に異物が混入されていると判断し,接触抵抗のトルク積分値K1が,予め定めた接触抵抗トルク積分閾値未満である場合に,バスバーと電極端子との間に異物が混入されていないと判断してもよい。測定誤差の影響を受けないで,より確実に異物の有無を判断することができるからである。
【0014】
上記に記載の電池の製造方法において,組電池作成工程では,締結終了時における締結トルクの値が予め定めた最小トルク閾値未満であるか,または,最大トルク閾値より大きい場合に,締結に異常があると判断するとともに,締結に異常があると判断されなかった場合に,締結に異常がないと判断するものであるとよい。トルクの値により,締結そのものに異常があるか否かを判断することができるからである。
【0015】
上記に記載の電池の製造方法において,組電池作成工程では,着座時における回転量の値が,予め定めた着座時における最小回転量閾値未満であるか,もしくは,予め定めた着座時における最大回転量閾値より大きい場合,または,締結終了時における回転量の値が,予め定めた締結終了時における最小回転量閾値未満であるか,もしくは,予め定めた締結終了時における最大回転量閾値より大きい場合に,締結に異常があると判断するとともに,締結に異常があると判断されなかった場合に,締結に異常がないと判断するものであるとよい。回転量の値により,締結そのものに異常があるか否かを判断することができるからである。
【0016】
また,本発明の別の態様におけるナット締結装置は,ナットを嵌合するソケットと,ソケットを回転させるための回転駆動部と,ナットとボルトによる締結を予定されている第1の被締結部材と第2の被締結部材とにそれぞれ電気的に接続される第1被締結部材導通端子と第2被締結部材導通端子と,第1被締結部材導通端子と第2被締結部材導通端子とによる測定値に基づいて,第1の被締結部材と第2の被締結部材との間の接触抵抗から接触抵抗判定値を算出する接触抵抗算出部と,接触抵抗算出部により算出された接触抵抗判定値に基づいて,第1の被締結部材と第2の被締結部材との間の異物の有無を判断する接触抵抗判断部とを有するものである。そして,少なくともナットが第1の被締結部材に着座してから締結が終了するまでの期間内に,第1被締結部材導通端子および第2被締結部材導通端子は,それぞれ第1の被締結部材および第2の被締結部材に電気的に接続されるものである。かかるナット締結装置を用いることにより,第1の被締結部材と第2の被締結部材との間に異物があるか否かの判断を行うことができる。また,このナット締結装置を用いることで,締結工程と異物検査工程とを一体に行うことができる。
【0017】
上記に記載のナット締結装置において,接触抵抗判断部は,接触抵抗判定値として,接触抵抗の値を用い,接触抵抗が予め定めた接触抵抗閾値以上である場合に,第1の被締結部材と第2の被締結部材との間に異物があると判断するとともに,接触抵抗が予め定めた接触抵抗閾値未満である場合に,第1の被締結部材と第2の被締結部材との間に異物がないと判断するものであるとよい。より確実に異物の有無を判断することができるからである。
【0018】
上記に記載のナット締結装置において,接触抵抗判断部は,接触抵抗判定値として,着座時における接触抵抗と締結終了時における接触抵抗との差を用い,着座時における接触抵抗と締結終了時における接触抵抗との差が,予め定めた接触抵抗差閾値以上である場合に,第1の被締結部材と第2の被締結部材との間に異物があると判断するとともに,着座時における接触抵抗と締結終了時における接触抵抗との差が,予め定めた接触抵抗差閾値未満である場合に,第1の被締結部材と第2の被締結部材との間に異物がないと判断するものであるとよい。このようにしても,確実に異物の有無を判断することができることに変わりないからである。
【0019】
上記に記載のナット締結装置において,接触抵抗判断部は,接触抵抗判定値として,着座時における締結トルクTiから締結終了時における締結トルクTfまでの積分区間について接触抵抗を積分した接触抵抗のトルク積分値K0
K0=∫R(T)dT
R(T):接触抵抗
T:締結トルク
を用い,接触抵抗のトルク積分値K0が,予め定めた接触抵抗トルク積分閾値以上である場合に,第1の被締結部材と第2の被締結部材との間に異物があると判断するとともに,接触抵抗のトルク積分値K0が,予め定めた接触抵抗トルク積分閾値未満である場合に,第1の被締結部材と第2の被締結部材との間に異物がないと判断するものであるとなおよい。測定誤差の影響を受けないで,より確実に異物の有無を判断することができるからである。
【0020】
上記に記載のナット締結装置において,接触抵抗判断部は,接触抵抗判定値として,着座時における締結トルクTiから締結終了時における締結トルクTfまでの積分区間について接触抵抗を積分した接触抵抗のトルク積分値K1
K1=∫[R(T)−Ra]dT
R(T):接触抵抗
T:締結トルク
Ra:任意の定数
を用い,接触抵抗のトルク積分値K1が,予め定めた接触抵抗トルク積分閾値以上である場合に,第1の被締結部材と第2の被締結部材との間に異物があると判断するとともに,接触抵抗のトルク積分値K1が,予め定めた接触抵抗トルク積分閾値未満である場合に,第1の被締結部材と第2の被締結部材との間に異物がないと判断するものであってもよい。測定誤差の影響を受けないで,より確実に異物の有無を判断することができるからである。
【0021】
上記に記載のナット締結装置において,ソケットに加わる締結トルクを測定するトルクセンサと,トルクセンサにより検出された締結トルクの値に基づいて,締結の異常を判断するトルク判断部とを有するとよい。トルクの値により,締結そのものに異常があるか否かを判断することができるからである。
【0022】
上記に記載のナット締結装置において,トルク判断部は,締結終了時における締結トルクの値が予め定めた最小トルク閾値未満であるか,または,最大トルク閾値より大きい場合に,締結に異常があると判断するとともに,締結に異常があると判断されなかった場合に,締結に異常がないと判断するものであるとよい。より確実に締結そのものに異常があるか否かを判断することができるからである。
【0023】
上記に記載のナット締結装置において,ソケットの回転量を測定する回転量測定部と,回転量測定部により測定された回転量の値に基づいて,締結の異常を判断する回転量判断部とを有するとよい。回転量の値により,締結そのものに異常があるか否かを判断することができるからである。
【0024】
上記に記載のナット締結装置において,回転量判断部は,着座時における回転量の値が,予め定めた着座時における最小回転量閾値未満であるか,もしくは,予め定めた着座時における最大回転量閾値より大きい場合,または,締結終了時における回転量の値が,予め定めた締結終了時における最小回転量閾値未満であるか,もしくは,予め定めた締結終了時における最大回転量閾値より大きい場合に,締結に異常があると判断するとともに,締結に異常があると判断されなかった場合に,締結に異常がないと判断するものであるとよい。より確実に締結そのものに異常があるか否かを判断することができるからである。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば,締結箇所への異物の混入を検出するとともに締結を行うことのできる電池の製造方法およびナット締結装置が提供されている。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】第1の実施形態に係るナットランナを説明するための概略構成図である。
【図2】第1の実施形態に係るナットランナを用いて被締結部材を締結する直前を示す概念図である。
【図3】第1の実施形態に係るナットランナの制御系を示すブロック図である。
【図4】第1の実施形態に係るナットランナを用いて異物を検査する場合を説明するための図(その1)である。
【図5】第1の実施形態に係るナットランナを用いて異物を検査する場合を説明するための図(その2)である。
【図6】第1の実施形態に係るナットランナを用いて異物を検査する場合を説明するための図(その3)である。
【図7】第1の実施形態に係るナットランナを用いて被締結部材を締結するフローを説明するためのフローチャートである。
【図8】ナットランナにおけるソケットの回転量とトルクとの関係を示すグラフである。
【図9】ナットランナにおけるトルクと接触抵抗との関係を示すグラフである。
【図10】第1の実施形態に係る別の接触抵抗判定値の算出方法を説明するためのグラフである。
【図11】第1の実施形態に係る別のナットランナを用いて被締結部材を締結するフローを説明するためのフローチャート(その1)である。
【図12】第1の実施形態に係る別のナットランナを用いて被締結部材を締結するフローを説明するためのフローチャート(その2)である。
【図13】第2の実施形態に係る電池の製造方法により製造されるバッテリパックの概略構成を説明するための斜視図である。
【図14】第2の実施形態に係る電池の製造方法により製造されるバッテリパックからバッテリを抜き出して描いた断面図である。
【図15】第2の実施形態に係る電池の製造方法により製造されるバッテリパックのバッテリにおける捲回電極体を示す斜視図である。
【図16】第2の実施形態に係る電池の製造方法により製造されるバッテリパックのバッテリにおける捲回電極体の捲回構造を説明するための展開図である。
【図17】第2の実施形態に係る電池の製造方法におけるナットランナの各端子の接触位置を例示する平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下,本発明を具体化した実施の形態について,添付図面を参照しつつ詳細に説明する。第1の実施形態では,ナット締結装置について説明する。そして,第2の実施形態では,そのナット締結装置を用いることに特徴を有する電池の製造方法について,リチウムイオン二次電池を例に挙げて説明する。
【0028】
(第1の実施形態)
1.ナットランナ
本形態のナットランナは,ナットをボルトに締結しつつ,被締結部材間の接触抵抗を測定するものである。そして,その被締結部材間の接触抵抗の値に基づいて,被締結部材間に異物があるか否かの判断を行うものである。
【0029】
本形態のナットランナ200は,図1に示すように,ソケット210と,駆動モータ220と,回転量測定部221と,トルクセンサ230と,制御部240と,測定端子部250とを有するナット締結装置である。また,上記の他に,カップリングや減速機などのその他の各部を有していてもよい。
【0030】
ソケット210は,ナットと嵌め合う嵌合部である。駆動モータ220は,ソケット210を回転させるための回転駆動部である。駆動モータ220は,例えば,サーボモータである。もちろん,その他のモータであってもよい。回転量測定部221は,レゾルバやエンコーダなどの駆動モータ220の回転量を計測できるものである。トルクセンサ230は,ソケット210に加わるトルクを測定するためのトルク測定部である。制御部240は,各部の動作を制御するためのものである。制御部240は,ナットランナ200の本体の内部にある。また,ナットランナ200の本体とは別体のコントローラの内部に制御部240が設けられていることとしてもよい。
【0031】
図2は,ナットランナ200が被締結部材3と被締結部材4との締結を行う場合を示す概念図である。図2に示すように,ボルト1とナット2により被締結部材3と被締結部材4とを締め付ける。被締結部材3は,ボルト1とナット2による締結を予定されている第1の被締結部材である。被締結部材4は,ボルト1とナット2による締結を予定されている第2の被締結部材である。この締結のために,ナットランナ200は,図2中の矢印Aの向きに動く。図2は,ボルト1に供給するナット2がボルトに接触する直前を示したものである。なお,図2では,ナット2とボルト1との位置関係を分かりやすくするために,ナット2をソケット210からはみ出すように描いてある。実際には,ナット2はソケット210にもっと深く嵌め合わされている。
【0032】
測定端子部250は,図1に示すように,電圧用端子251と,電流用端子252と,電圧用端子253と,電流用端子254とを有している。電圧用端子251と電圧用端子253とは,被締結部材3と被締結部材4との間にかかる電圧を測定するためのものである。電流用端子252と電流用端子254とは,被締結部材3と被締結部材4との間に流れる電流を測定するためのものである。
【0033】
電圧用端子251および電流用端子252は,図1に示すように,ナットランナ本体201に設けられている。電圧用端子253および電流用端子254は,図1に示すように,支持部260に設けられている。支持部260は,電圧用端子253および電流用端子254を支持するためのものである。支持部260は,ナットランナ本体201に対して図1の矢印Dの向きに動くことができるようになっている。
【0034】
測定端子部250は,ナットランナ200が締結を行っている間,被締結部材3と被締結部材4との間の電圧および電流を測定し続けるものである。そのため,電圧用端子251および電流用端子252は,締結を行う際に,被締結部材3に接触している。すなわち,電圧用端子251および電流用端子252は,被締結部材3と電気的に接続される第1被締結部材導通端子である。そして,電圧用端子253および電流用端子254は,締結を行う際に,被締結部材4に接触している。すなわち,電圧用端子253および電流用端子254は,被締結部材4と電気的に接続される第2被締結部材導通端子である。
【0035】
電圧用端子251と,電流用端子252と,電圧用端子253と,電流用端子254とは,それぞれ,図1および図2に示すように,ばね251aと,ばね252aと,ばね253aと,ばね254aとを有している。そして,電圧用端子251および電流用端子252は,図1中の矢印Bの向きに動くようになっている。電圧用端子253および電流用端子254も,図1中の矢印Cの向きに動くようになっている。
【0036】
図2では,電圧用端子251および電流用端子252は,被締結部材3に接触している。また,電圧用端子253および電流用端子254は,被締結部材4に接触している。
図2に示す時刻の後も,ソケット210は,図2の矢印Aの向きへの移動を続ける。その際に,ばね251a,252aは縮む。したがって,電圧用端子251および電流用端子252は,被締結部材3に接触したまま測定を続けることができる。そのため,この締結により,各端子251,252,253,254が破損するおそれはない。被締結部材3,4についても同様である。
【0037】
なお,電圧用端子251と,電流用端子252と,電圧用端子253と,電流用端子254との位置は,必ずしも図2に示す位置である必要はない。被締結部材3および被締結部材4の位置,形状等に応じて異なっていてよい。
【0038】
2.ナットランナの制御系
図3にナットランナ200の制御系を示すブロック図を示す。制御部240は,図3に示すように,モータ制御部241と,回転量判断部242と,トルク判断部243と,接触抵抗算出部244と,接触抵抗判断部245と,その他の制御部246とを有している。
【0039】
モータ制御部241は,駆動モータ220の回転の開始および停止,その回転の速度を制御するためのものである。回転量判断部242は,ソケット210の回転の開始から締結の終了までの駆動モータ220の回転量に基づいて,回転の異常,すなわち締結の異常の有無を判断するためのものである。そのために,回転量測定部221から駆動モータ220の回転量を入力されることとなる。トルク判断部243は,トルクセンサ230からのトルクの入力値に基づいて,トルクの異常,すなわち締結の異常の有無を判断するためのものである。
【0040】
接触抵抗算出部244は,被締結部材3と被締結部材4との間の接触抵抗から接触抵抗判定値を算出するためのものである。接触抵抗判定値として,後述するように種々の算出方法から算出された値を採用することができる。本形態では,接触抵抗判定値として,被締結部材3と被締結部材4との間の接触抵抗値そのものを採用する。その算出のために,電圧用端子251と電圧用端子253とから,被締結部材3と被締結部材4との間にかかる電圧の測定値を入力される。そして,電流用端子252と電流用端子254とから,被締結部材3と被締結部材4との間に流れる電流の測定値を入力される。接触抵抗算出部244は,これら電圧の測定値および電流の測定値に基づいて,被締結部材3と被締結部材4との間の接触抵抗を算出する。
【0041】
接触抵抗判断部245は,接触抵抗算出部244により算出された接触抵抗判定値に基づいて,被締結部材3と被締結部材4との間に異物が混入したか否かを判断するためのものである。その判断の詳細については,後述する。また,その他の制御部246は,上記以外のその他の制御を行うためのものである。
【0042】
3.異物の判断方法
3−1.異物が混入している場合
異物が混入しているか否かを判断する判断方法について説明する。まず,異物が混入している場合について説明する。ここで,図4に示すように,被締結部材3と被締結部材4との間に異物Xが入っているとする。図4は,被締結部材3と被締結部材4との間に異物Xがある場合における着座時を示す図である。ここで着座時とは,ナット2が被締結部材3に接触した直後の瞬間のことである。このとき,ナット2は,ボルト1にある程度締め付けられている。
【0043】
着座時には,被締結部材3と被締結部材4との接触状態は悪い。すなわち,被締結部材3と被締結部材4との接触面積は非常に小さい。これらの間に異物Xが入り込んでいるためである。したがって,被締結部材3と被締結部材4との間の接触抵抗は大きい。やがて,異物Xを押しつぶしながら,ナットランナ200はナット2をボルト1に締め付ける。
【0044】
図5は,被締結部材3と被締結部材4との間に異物Xがある場合における締結終了時を示す図である。ここで締結終了時とは,ナット2とボルト1とにより,被締結部材3と被締結部材4との締結が終了した時刻のことをいう。もちろん,このとき,ボルト1へのナット2の締め付けは完了している。
【0045】
この締結が終了した後には,図5に示すように,被締結部材3と被締結部材4との接触状態はよい。すなわち,被締結部材3と被締結部材4との間の接触抵抗は十分に小さい。なお,図5に示すように,被締結部材3と被締結部材4との間に押しつぶされた異物Xが残留している。しかし,この異物Xは十分に小さい。そのため接触抵抗は,異物Xのない場合における接触抵抗とほとんど変わらない。
【0046】
3−2.異物が混入していない場合
図6は,被締結部材3と被締結部材4との間に異物のない場合における着座時を示す図である。図6に示すように,被締結部材3と被締結部材4との接触状態はよい。つまり,被締結部材3と被締結部材4との間の接触抵抗は十分に小さい。また,締結終了後においても,同様である。
【0047】
3−3.判断方法
ナットランナ200がナット2をボルト1に締め付けている期間内に,測定端子部250は,被締結部材3と被締結部材4との間の電圧と電流を測定し続ける。そして,接触抵抗算出部244は,被締結部材3と被締結部材4との間の接触抵抗を算出し続ける。接触抵抗判断部245は,その接触抵抗の値に基づいて,被締結部材3と被締結部材4との間の異物の有無を判断するのである。
【0048】
具体的には,着座時における接触抵抗の値が予め定めた接触抵抗閾値以上である場合には,異物が混入していると判断する。着座時における接触抵抗の値が予め定めた接触抵抗閾値より小さい場合には,異物が混入していないと判断する。この接触抵抗閾値は,例えば,25μΩである(表2参照)。もちろん,これ以外の値を用いてもよい。
【0049】
なお,ここでは着座時に着目した。しかし,締結の開始から締結の終了までにわたって判断を行ってもよい。また,締結の開始から締結の終了までにおけるいくつかの時刻を選んで,判断を行うこととしてもよい。
【0050】
4.ナットランナの制御フロー
ナットランナ200におけるナット締結の際の制御フローを図7のフローチャートにより説明する。まず,ソケット210にナットを供給する。これは,外部のナット供給装置により行ってもよいし,ナットランナ200自身がソケット210にナットを供給するナット供給部を有することとしてもよい。
【0051】
S101:
次に,モータ制御部241が駆動モータ220の回転を開始する。そして,ナットランナ200は,ボルト1に近づく。そのため,ナット2はボルト1に近づく。そして,電圧用端子251および電流用端子252は,被締結部材3に接触する。一方,電圧用端子253および電流用端子254は,被締結部材4に接触する。これにより,被締結部材3と被締結部材4との間の接触抵抗の値を測定することができる。これらの接触以降,ばね251a,252a,253a,254aは縮む。しかし,これらの接触が解除されるおそれはない。
【0052】
続いて,ナット2はボルト1に接触する。これにより,ナット2のボルト1への締結が開始される(S101)。また,それと同時に,接触抵抗算出部244が被締結部材3と被締結部材4との間の接触抵抗の算出を開始する。
【0053】
S102:
これ以降,ナットランナ200は,ナット2のボルト1への締結を継続して行う。これにより,ナット2はボルト1に対して回転しながら,ナット2とボルト1のヘッドの距離は近づいていくこととなる。この締結の間,抵抗算出部244は被締結部材3と被締結部材4との間の接触抵抗を算出し続ける。そして,ナット2は被締結部材3に接触する。これがナット2の被締結部材3への着座である。
【0054】
やがて,ナットランナ200によるナット2のボルト1への締結が終了する。これは,トルクセンサ230により測定されたトルクの値が予め定めた閾値以上となったときに,締結を終了させることとすればよい。この締結の終了の時刻まで,抵抗算出部244は被締結部材3と被締結部材4との間の接触抵抗を算出し続ける。
【0055】
S103:
続いて,算出した抵抗値に基づいて,異物の有無を判断する(S103)。具体的には,着座時における接触抵抗値Riと,締結終了時における接触抵抗値Rfとを用いる。接触抵抗値Riと接触抵抗値Rfとのいずれもが予め定めた接触抵抗閾値R1未満である場合には(S103:Yes),S104に進む。接触抵抗値Riと接触抵抗値Rfとの少なくとも一方が予め定めた接触抵抗閾値R1以上である場合には(S103:No),S105に進む。
【0056】
S104:
S104では,その締結された被締結部材3と被締結部材4との間に異物は混入していないと判断する。
【0057】
S105:
S105では,その締結された被締結部材3と被締結部材4との間に異物が混入していると判断する。
【0058】
以上により,1箇所の締結箇所が締結される。それとともに,被締結部材3と被締結部材4との間に異物が混入しているか否かの判断もなされる。
【0059】
5.実験
5−1.評価項目
ここで,締結箇所に異物を混入させて行った実験について説明する。締結箇所に意図的に異物を混入させた場合と,異物を混入させなかった場合とで,各評価項目に違いがみられるのか否かを調べた。表1に示すように,異物として,鉄片,紙片,毛髪を混入した。
【0060】
異物を挟む箇所は,第2の実施形態で説明するバスバー190(図14参照)と正極端子172(図14参照)との間である。バスバー190は,被締結部材3(図2参照)に相当するものである。正極端子172は,被締結部材4(図2参照)に相当するものである。この実験における評価項目は,ソケット210にかかるトルク,締結の際のソケット210の回転量,バスバー190と正極端子172との接触抵抗の値である。
【0061】
【表1】
【0062】
5−2.実験結果
この実験の結果を,表2に示す。なお,回転量については,ソケット210の回転を開始してから締結を終了するまでにソケットが回転した回転量を角度で示している。
【0063】
【表2】
【0064】
ここで,測定値は以下のものである。
Ti:着座時における締結トルク
Tf:締結終了時における締結トルク
Di:着座時における回転量
Df:締結終了時における回転量
Ri:着座時における接触抵抗
Rf:締結終了時における接触抵抗
【0065】
また,異物の有無を判断するのに用いる閾値は以下のとおりである。
T1:締結終了時における最小トルク閾値
T2:締結終了時における最大トルク閾値
D1:着座時における最小回転量閾値
D2:着座時における最大回転量閾値
D3:締結終了時における最小回転量閾値
D4:締結終了時における最大回転量閾値
R1:接触抵抗閾値
【0066】
なお,表2では,D3,D4の値は,次式を満たすように決めた。
D3 = Di+13
D4 = D3+30
ただし,これはあくまで例示であり,これ以外の値を用いることもできる。
【0067】
表2に示すように,トルクや回転量については,いずれの異物を混入させた場合であっても,着座から締結終了までの期間内に大きな変化はみられなかった。一方,接触抵抗については,いずれの異物を混入させた場合であっても,着座時における接触抵抗の値に大きな変化がみられた。したがって,着座時における接触抵抗の値により,異物の混入の有無を判断することができる。
【0068】
5−3.ナットの着座時
図8は,ソケット210の回転量とトルクセンサ230の検出したトルクとの関係を示すグラフである。横軸は,ソケット210が回転を開始してから締結を終了するまでのソケット210の回転量である。縦軸は,ソケット210にかかるトルクである。表2に示すように,異物の有無にかかわらず,Dfの値は,ほとんど変わらない。したがって,見やすくするために,異物のある場合のそれぞれの線をあえて横軸方向にずらして描いてある。実際には,締結終了時のトルクの値が表2の値となるような位置に,それぞれの線はある。
【0069】
箇所Yでは,トルクの値が立ち上がっている。この立ち上がりは,ナット2が被締結部材3に着座したために生じたものである。すなわち,箇所Yは,着座時(図4参照)を示している。そして,箇所Zは,締結終了時(図5参照)を示している。着座時以降,回転量が大きくなるにしたがい,トルクの値は上昇する。図8では,トルクの値は,箇所Yから箇所Zに向けて上昇している。ここで,回転量の増大は,締結の進行を示している。したがって,締結の進行とともに,トルクの値は上昇する。
【0070】
図9は,トルクと接触抵抗との関係を示すグラフである。横軸は,ソケット210にかかるトルクの値である。縦軸は,バスバー190と正極端子172との接触抵抗の値である。接触抵抗は,トルクの上昇とともに減少している。すなわち,ナット2のボルト1への締め付けが進行するにしたがって,接触抵抗は減少するのである。
【0071】
図9に示すように,異物が混入している場合であっても,トルクが0.5N・mのときには,少なくともバスバー190と正極端子172とは接触していると考えられる。表2に示したように,接触抵抗閾値R1を25μΩとする。ここで例えば,トルクが0.5N・mとなった時刻を着座時であるとする。すると,図9に示すように,バスバー190と正極端子172との間に異物がない場合には,接触抵抗の値は,接触抵抗閾値R1未満である。バスバー190と正極端子172,182との間に異物がある場合には,接触抵抗の値は,接触抵抗閾値R1以上である。
【0072】
以上述べたように,着座時以降であって締結終了時までの接触抵抗を測定することにより,バスバー190と正極端子172との間の異物の有無を検出することができる。バスバー190と負極端子182(図14参照)との間の異物の有無についても同様である。また,表2に示したように,鉄片や紙片や毛髪といった異物を検出できる。そして,これら以外の異物についても同様である。
【0073】
6.変形例
6−1.接触抵抗判定値
本形態では,被締結部材3と被締結部材4との間の異物の有無を検出する接触抵抗判定値として,着座時の接触抵抗値Riと締結終了時の接触抵抗値Rfとを採用した。しかし,接触判定抵抗値として,これ以外のものを用いてもよい。その場合であっても,接触抵抗算出部244が接触抵抗判定値を算出し,接触抵抗判断部245が接触抵抗判定値に応じた閾値を用いて,被締結部材3と被締結部材4との間の異物の有無を判断することに
変わりない。
【0074】
6−1−1.着座時の接触抵抗値のみで判断
また,接触抵抗判定値として,着座時の接触抵抗値Riのみを用いてもよい。この場合であっても,異物の有無については検出することができるからである。ただし,締結終了時の接触抵抗値Rfをも判断基準とするほうがより確実な判断をすることができる。
【0075】
6−1−2.着座時から締結終了時までの間の接触抵抗値
また,接触抵抗判定値として,着座時から締結終了時まで測定した接触抵抗のうちから,任意の時刻における接触抵抗値を選び出して用いてもよい。異物の有無を検出することができることに変わりないからである。
【0076】
例えば,図9に示したように,異物が入っている場合には,着座時以降,バスバー190と正極端子172,182との間の接触抵抗はなだらかに減少する。そこで,着座時から締結終了時までの期間内における,前述した時点とは別の時点での接触抵抗の値により,異物の有無を判断することができる。つまり,別のトルクの値を採用することができる。すなわち,着座時から締結終了時までの任意の時刻における接触抵抗値Rmを用いてよい。
【0077】
また,着座時から締結終了時までの間に算出した複数の算出値を用いてもよい。これらの算出値のうちいずれか一つでも予め定めた接触抵抗閾値よりも大きい場合には,異物ありと判断すればよい。そうでなければ,異物なしと判断する。
【0078】
そのために,電圧用端子251および電流用端子252は,少なくともナット2が被締結部材3に着座してから締結が終了するまでの期間内に,被締結部材3に電気的に接続されていることが好ましい。また,電圧用端子253および電流用端子254は,少なくともナット2が被締結部材3に着座してから締結が終了するまでの期間内に,被締結部材4に電気的に接続されていることが好ましい。
【0079】
6−1−3.着座時の接触抵抗値と締結終了時の接触抵抗値との差
また,接触抵抗判定値として,着座時における接触抵抗値Riと締結終了時における接触抵抗値Rfとの差(Rf−Ri)を用いてもよい。被締結部材3と被締結部材4との間に異物が挟まっていた場合,着座時から締結終了時までの間に被締結部材3と被締結部材4とが異物Xを押しつぶしながら締結が進行する。したがって,締結の進行にともなって,接触抵抗の値は小さくなる。表2に示したように,異物がある場合には,接触抵抗差(Rf−Ri)の値は大きい。逆に,異物がない場合には,接触抵抗差(Rf−Ri)の値は小さい。
【0080】
したがって,接触抵抗差(Rf−Ri)が予め定めた接触抵抗差閾値R2未満である場合に,被締結部材3と被締結部材4との間に異物が混入されていないと判断すればよい。逆に,接触抵抗差(Rf−Ri)が予め定めた接触抵抗差閾値R2以上である場合に,被締結部材3と被締結部材4との間に異物が混入されていると判断する。この接触抵抗差閾値R2は,例えば,10μΩである(表2参照)。もちろん,これ以外の値を用いてもよい。以上により,接触抵抗差(Rf−Ri)に基づいて,異物の有無を判断することができる。
【0081】
6−1−4.接触抵抗のトルク積分値(1)
接触抵抗判定値として,接触抵抗のトルク積分値を用いてもよい。この場合,接触抵抗のトルク積分値K0は,次式で表される。
K0=∫R(T)dT
R(T):接触抵抗
T:締結トルク
積分区間はTiからTfまで
Ti:着座時における締結トルク
Tf:締結終了時における締結トルク
接触抵抗のトルク積分値K0は,図10に示すように,ドットのハッチングで表した領域K1の面積とスラッシュのハッチングで表した領域K2の面積との和である。
【0082】
前述したように,被締結部材3と被締結部材4との間に異物が混入している場合には,接触抵抗の値が大きい値をとる。測定される接触抵抗の値が大きいほど,接触抵抗のトルク積分値K0は大きくなる。したがって,接触抵抗のトルク積分値K0が,予め定めた接触抵抗トルク積分閾値以上である場合に,被締結部材3と被締結部材4との間に異物が混入されていると判断する。一方,測定される接触抵抗の値が小さいほど,接触抵抗のトルク積分値K0は小さくなる。したがって,接触抵抗のトルク積分値K0が,予め定めた接触抵抗トルク積分閾値未満である場合に,被締結部材3と被締結部材4との間に異物が混入されていないと判断する。
【0083】
このように積分値を用いた場合には,接触抵抗判定値として一つの接触抵抗の値を用いた場合に比べて,測定誤差の影響を受けにくい。したがって,より確実に異物の有無の判断を行うことができる。なお,各端子251,252,253,254は,十分に短いサンプリング周期ごとに測定を行っている。したがって,積分を行うにあたって問題とはならない。
【0084】
6−1−5.接触抵抗のトルク積分値(2)
また,接触抵抗判定値として,接触抵抗のトルク積分値K1を用いることもできる。接触抵抗のトルク積分値K1は,次式で表される。
K1=∫[R(T)−Rf]dT
R(T):接触抵抗
T:締結トルク
Rf:締結終了時における接触抵抗
積分区間はTiからTfまで
Ti:着座時における締結トルク
Tf:締結終了時における締結トルク
接触抵抗のトルク積分値K1は,図10の領域K1の面積に該当する。前述の実験で示したとおり,被締結部材3と被締結部材4との間に異物が混入している場合であっても,Rfの値はほぼ一定である。したがって,Rfを予め一定の定数Raとおいてもよい。
【0085】
この場合においても,測定される接触抵抗の値が大きいほど,接触抵抗のトルク積分値K1は大きくなる。したがって,接触抵抗のトルク積分値K1が,予め定めた接触抵抗トルク積分閾値以上である場合に,被締結部材3と被締結部材4との間に異物が混入されていると判断する。一方,測定される接触抵抗の値が小さいほど,接触抵抗のトルク積分値K1は小さくなる。したがって,そして,接触抵抗のトルク積分値K1が,予め定めた接触抵抗トルク積分閾値未満である場合に,被締結部材3と被締結部材4との間に異物が混入されていないと判断する。もちろん,接触抵抗判定値として,接触抵抗のトルク積分値K0を採用する場合と,接触抵抗のトルク積分値K1を採用する場合とでは,設定する接触抵抗トルク積分閾値の値は一般に異なっていてよい。
【0086】
6−2.フローチャート
6−2−1.トルク
本形態では,ナット2の着座時から締結終了時までの被締結部材3と被締結部材4との間の接触抵抗の測定により,被締結部材3と被締結部材4との間に異物が混入されているか否かを判断した。しかし,この判断基準に加えて,駆動モータ220にかかるトルクを判断基準として加えてもよい。締結そのものが好適になされているか否かを判断することができるからである。
【0087】
図11は,電気抵抗に加えてトルクを判断基準として採用した場合の制御フローを示すフローチャートである。図11に示すフローチャートと図7に示したフローチャートとの相違点は,S201からS203までの処理である。したがって,その異なるS201からS203までの処理についてのみ説明する。
【0088】
S201:
S201では,トルクの値により,締結が好適に行われたか否かを判断する。つまり,締結終了時におけるトルクTfが,最小トルク閾値T1以上であるとともに,最大トルク閾値T2以下であるという条件を満たす場合には(S201:Yes),S103に進む。締結終了時におけるトルクTfが,最小トルク閾値T1未満であるか,最大トルク閾値T2より大きい場合には(S201:No),S202に進む。
【0089】
S202:
S202では,その締結箇所の締結に異常があると判断する。
【0090】
S203:
S203のステップに到達する場合は,トルクにおいても,回転量においても,締結に異常がないと判断された場合である。さらに,接触抵抗においても,異物はないと判断された場合である。したがってS203では,締結された被締結部材3と被締結部材4との間に異物はないと判断するとともに,締結そのものに異常がないと判断する。すなわち,好適に締結がなされたと判断するのである。
【0091】
なお,S201とS103の順序は入れ替えても構わない。トルクと接触抵抗との少なくとも一方に異常があれば,少なくとも好適に締結がなされていないことが分かるからである。
【0092】
6−2−2.回転量
また,締結そのものが好適になされているか否かの判断基準として,トルクに加えて,ソケット210の回転量を判断基準として加えてもよい。締結が好適になされているか否かをより正確に判断することができるからである。
【0093】
図12は,接触抵抗およびトルクに加えて回転量を判断基準として採用した場合の制御フローを示すフローチャートである。図12に示すフローチャートと図11に示したフローチャートとの相違点は,S301の処理である。したがって,その異なるS301の処理についてのみ説明する。
【0094】
S301:
S301では,ソケット210の回転量の値により,締結が好適に行われたか否かを判断する。つまり,着座時における回転量Diおよび締結終了時における回転量Dfが,以下の式を満たすか否かを判断する。
D1 ≦ Di ≦ D2 ………(1)
D3 ≦ Df ≦ D4 ………(2)
D1:着座時における最小回転量閾値
D2:着座時における最大回転量閾値
D3:締結終了時における最小回転量閾値
D4:締結終了時における最大回転量閾値
上記の式(1)(2)の両方を満たす場合に(S301:Yes),S103に進む。上記の式(1)(2)のうちの少なくとも一方を満たさない場合に(S301:No),S202に進む。
【0095】
なお,S201とS301とS103の順序は相互に入れ替えても構わない。トルクと回転量と接触抵抗の少なくとも一つに異常があれば,好適な締結がなされていないことが分かるからである。
【0096】
6−3.測定端子部
本形態では,電圧用端子251,253および電流用端子252,254の4本の端子を用いた。しかし,1本で電圧と電流を測定する端子を用いてもよい。電圧用端子251および電流用端子252の代わりに,一つの端子が,被締結部材3に接触する。電圧用端子253および電流用端子254の代わりに,別の端子が,被締結部材4に接触する。このように,2本の端子により,接触抵抗を測定することもできる。
【0097】
6−4.3部材以上
本形態では,被締結部材3と被締結部材4との2つの部材をボルト1とナット2により締結することとした。しかし,3以上の部材を締結する場合であっても,同様に本実施の形態を適用することができる。その場合には,その被締結部材の数に応じた数の端子を要する。これにより,各被締結部材間の異物の有無を判断することができる。
【0098】
6−5.回転量測定部
回転量測定部221は,レゾルバやエンコーダなどの駆動モータ220の回転数を計測できるものであるとした。しかし,モータ制御部241から駆動モータ220の回転数を計測することとしてもよい。その場合の回転量測定部は,制御部240の内部に配置されていてもよい。
【0099】
6−6.組み合わせ
もちろん,本形態および前述の変形例を自由に組み合わせてもよい。被締結部材3と被締結部材4との締結をより好適に行うことができるからである。
【0100】
7.まとめ
以上,詳細に説明したように,本実施の形態に係るナットランナ200は,被締結部材3と被締結部材4との間の接触抵抗を測定しつつ,ボルト1とナット2の締結を行うものである。これにより,被締結部材3と被締結部材4との間に異物が混入しているか否かを判断することができる。これにより,検査工程と一体化している締結工程を行うことのできるナット締結装置が実現されている。
【0101】
なお,本実施の形態は単なる例示にすぎず,本発明を何ら限定するものではない。したがって本発明は当然に,その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良,変形が可能である。接触抵抗算出部244は,締結開始時から締結終了時までにわたって,接触抵抗を算出し続けることとした。しかし,締結が終了した後に,算出することとしてもよい。その際に,異物の有無の判断に用いる時点における接触抵抗のみを算出することとしてもよい。トルクがある値となった時点における接触抵抗が分かればよいからである。
【0102】
(第2の実施形態)
第2の実施形態について説明する。本形態では,第1の実施形態で説明したナットランナ200(図1等参照)を用いてバッテリパックを製造する。ナットランナ200は,バッテリパックの製造に好適に用いることができるからである。
【0103】
1.バッテリパックの基本構造
本形態のバッテリパックBPは,図13に示すように,バッテリ100を直列に接続した組電池である。バッテリ100は,角型の単電池である。バッテリパックBPでは,図13に示すように,バッテリ100の正極端子と,そのバッテリ100に隣り合うバッテリ100の負極端子とが,バスバー190を介して締結されている。この締結は,ボルトとナットによりなされている。
【0104】
バッテリ100の概略構成を図14の断面図に示す。図14は,バッテリパックBPからバッテリ100を取り出して描いた断面図である。バッテリ100は,電池容器110の内部に図15に示すような扁平形状の捲回電極体10を有するものである。電池容器110は,図14に示すように,電池容器本体111と,蓋体112とを備えるものである。電池容器本体111の内部には,捲回電極体10が配置されている。この捲回電極体10は,実際に発電に寄与する発電要素である。蓋体112は,電池容器本体111に接合されている。
【0105】
また,電池容器110の内部には,電解液が注入されている。電池容器110の内部に注入された電解液は,有機溶媒に電解質を溶解させたものである。有機溶媒として例えば,プロピレンカーボネート(PC)やエチレンカーボネート(EC),ジメチルカーボネート(DMC),エチルメチルカーボネート(EMC)等のエステル系溶媒や,エステル系溶媒にγ−ブチロラクトン(γ−BL),ジエトキシエタン(DEE)等のエーテル系溶媒等を配合した有機溶媒が挙げられる。また,電解質である塩として,過塩素酸リチウム(LiClO4)やホウフッ化リチウム(LiBF4),六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)などのリチウム塩を用いることができる。
【0106】
図14中の左側には,捲回電極体10から突出している正極端部30が表れている。この突出している部材は,正極板の正極芯材である。図14中の右側には,捲回電極体10から突出している負極端部40が表れている。この突出している部材は,負極板の負極芯材である。
【0107】
正極端部30には,正極内部端子50が溶接されている。正極内部端子50は,正極集電部51と,台座52と,極柱53とを有する電極内部端子である。正極集電部51は,正極端部30から集電するための電極集電部である。そのため,正極集電部51は,正極端部30に溶接により接合されている。すなわち,正極集電部51は,正極端部30に電気的に接続されている。極柱53は,その頂部54と台座52とで正極端子172等の各部材を挟み込むためのものである。そのため,正極内部端子50と正極端子172とは電気的に接続されている。正極集電部51は,正極端部30に溶接されている箇所である。台座52は,正極集電部51の一方の端部に設けられている。極柱53は,台座52の一方の面から突出している。
【0108】
バスバー190と正極端子172とは,ボルト171とナット2により締結されている。そのため,バスバー190は,正極端子172と電気的に接続されている。したがって,バスバー190は,正極内部端子50とも電気的に接続されている。負極側も同様である。ただし,正極側と負極側とで,その材質が異なっている。正極端部30となる正極芯材と,正極内部端子50と,正極端子172の材質はアルミニウムである。負極端部40となる負極芯材と,負極内部端子60と,負極端子182の材質は銅である。
【0109】
図16は,捲回電極体10の捲回構造を示す展開図である。捲回電極体10は,図16に示すように,内側から正極板P,セパレータS,負極板N,セパレータTの順に積み重ねた状態で捲回されたものである。すなわち,捲回電極体10は,正極板Pと負極板Nとをこれらの間にセパレータS,Tを介在させて交互に配置したものである。
【0110】
正極板Pは,正極芯材であるアルミ箔にリチウムイオンを吸蔵・放出可能な正極活物質を含む合材を塗布したものである。正極活物質として,ニッケル酸リチウム(LiNiO2),マンガン酸リチウム(LiMnO2),コバルト酸リチウム(LiCoO2)等のリチウム複合酸化物などが用いられる。負極板Nは,負極芯材である銅箔にリチウムイオンを吸蔵・放出可能な負極活物質を含む合材を塗布したものである。負極活物質として,非晶質炭素,難黒鉛化炭素,易黒鉛化炭素,黒鉛等の炭素系物質が用いられる。
【0111】
図16に示すように正極板Pには,正極塗工部P1と,正極非塗工部P2とがある。正極塗工部P1は,正極芯材に正極活物質等を含む正極合材層を形成した箇所である。正極非塗工部P2は,正極芯材に正極合材層を形成していない箇所である。負極板Nには,負極塗工部N1と,負極非塗工部N2とがある。負極塗工部N1は,負極芯材に負極活物質等を含む負極合材層を形成した箇所である。負極非塗工部N2は,負極芯材に負極合材層を形成していない箇所である。
【0112】
セパレータS,Tは,ポリエチレンやポリプロピレン等の多孔性フィルムである。セパレータS,Tの厚みは,10〜50μm程度である。ここで,セパレータSとセパレータTとは同じ材質のものである。上記の捲回順の理解のために符号をS,Tとして区別しただけである。
【0113】
2.電池の製造方法
続いて,バッテリパックBPの製造方法について説明する。本形態の電池の製造方法は,前述したように,第1の実施形態で説明したナットランナ200(図1参照)を用いることに特徴のあるものである。
【0114】
2−1.電極板作成工程
まず,正極芯材であるアルミニウム箔に正極用塗工液を塗工して正極用ペースト層とする。この正極用塗工液は,溶媒に上記の正極活物質等を混練したものである。次に,正極用ペースト層の形成された正極芯材を乾燥炉の内部に搬送しつつその正極用ペースト層を乾燥させる。これにより,正極芯材に正極合材層が形成される。正極合材層は,正極活物質を含む層である。なお,正極芯材の両面に正極合材層を形成することが好ましい。これにより,正極板Pが作成される。負極板Nについても同様である。
【0115】
2−2.電極体作成工程
続いて,正極板Pおよび負極板Nに,これらの間にセパレータS,Tを介在させて捲回する。これらの捲回順序は,図16に示したように,内側から正極板P,セパレータS,負極板N,セパレータTの順序である。これにより,円筒形状の捲回電極体が作成される。そして,この円筒形状の捲回電極体に円筒側面方向からプレスを施すことにより,図15の扁平形状の捲回電極体10が作成される。
【0116】
2−3.単電池作成工程
続いて,電池容器本体111の内部に捲回電極体10を配置する。そして電池容器本体111の内部に電解液を注入する。そして蓋体112により封止する。もしくは,蓋をした後に,蓋体112に形成した注入口(図示せず)から電解液を注入することとしてもよい。これにより,バッテリ100が組み立てられる。このバッテリ100には,正極端子172,負極端子182を被締結部材とするようにボルト171,181が固定されている。この後,コンディショニングやエージングなどの処理や,各種の検査工程を行うとよい。以上の工程を経ることにより,バッテリ100が作成される。
【0117】
2−4.組電池作成工程
続いて,複数のバッテリ100を電気的に接続してバッテリパックBPを作成する。具体的には,図13に示すように,1つのバッテリ100の正極端子172と,それと隣り合うバッテリ100の負極端子182とをバスバー190を介して連結するのである。これにより,正極端子172と負極端子182とがバスバー190を介して電気的に接続される。
【0118】
そのために,ボルト171とナット2とにより,バスバー190と正極端子172とを締結しつつ,異物の有無を検査する。もちろん負極端子182とバスバー190との締結についても同様である。この際に,荷重部材191,192でこれらの複数のバッテリ100を挟んで加重した状態で行う。
【0119】
ここで,電圧用端子251と,電流用端子252と,電圧用端子253と,電流用端子254とが接触する位置は,図2あるいは図17に示す位置である。電圧用端子251と,電流用端子252と,電圧用端子253と,電流用端子254とは,バスバー190と正極端子172(もしくは負極端子182)との間の接触抵抗を測定するためのものである。したがって,これらバスバー190と正極端子172(もしくは負極端子182)とに接触すれば,図2や図17に示した位置以外の位置であってもよい。
【0120】
そして,ボルト171,181とナットの締結には,第1の実施形態で説明したナットランナ200が用いられる。これにより,ボルト171,181とナットの締結の際に,異物が混入したか否かを判断することができる。その判断は,第1の実施形態で説明したとおりである。
【0121】
締結箇所に異物が混入している場合には,そのボルト171,181とナットの締結を解除する。そして,ボルト171(181)と正極端子172(負極端子182)の周囲を清掃するとともに,バスバー190およびナットを交換して再度締結しなおすこととすればよい。再度締結しなおすことで,締結箇所に異物が混入していなければそれでよいからである。
【0122】
何度締結しなおしても,好適に締結できない場合には,そのバッテリ100を取り除けばよい。そして,その取り除いたバッテリ100の代わりに,新たなバッテリ100を補充して再びバッテリパックBPを作成することとすればよい。すなわち,1以上の部品を交換した後に締結しなおすのである。
【0123】
締結箇所に異物が混入していない場合には,他の締結箇所の締結を続ける。そして,すべての締結が終了すると,バッテリパックBPが作成される。このバッテリパックBPの締結箇所には,異物は混入していない。なお,第1の実施形態の変形例で説明したナットランナを用いても構わない。以上により,バッテリパックBPが製造される。もちろん,この後に各種検査を行ってもよい。
【0124】
3.変形例
3−1.電極体の形状
本形態では,扁平形状の捲回電極体10を備えるリチウムイオン二次電池の製造方法について説明した。しかし,扁平形状の電極体を有する電池に限らない。円筒形状の電極体を有する円筒型電池にも適用することができる。また,捲回しないで正極板と負極板とを平積みした電極体を用いる電池にも適用することができる。平積みした電極体を用いる場合には,電極板等を捲回する工程や,捲回した円筒形状の電極体を扁平形状にするプレス工程等も必須ではない。
【0125】
3−2.電池の種類
また,リチウムイオン二次電池に限らない。ニッケル水素電池やその他の二次電池にも適用することができる。その場合には,電極体の構成はもちろん,リチウムイオン二次電池の電極体の構成と異なっている。そのため,塗工液作成工程や電極板作成工程は必ずしも必要ではない場合がある。しかし,これらの電池であっても,発電要素である電極体は必要である。
【0126】
4.まとめ
以上,詳細に説明したように,本実施の形態に係る電池の製造方法は,第1の実施形態で説明したナットランナ200を用いてバッテリパックBPを製造する方法である。つまり,ボルト171,181とナット2とによりバスバー190と電極端子172,182とを締結しつつ,少なくともナット2がバスバー190に着座してから締結が終了するまでの間にバスバー190と電極端子172,182との間の接触抵抗を測定する。そして,測定したバスバー190と電極端子172,182との間の接触抵抗の値に基づいて,バスバーと電極端子172,182との間に異物があるか否かの判断を行う。そのため,締結箇所に異物が混入されているか否かを検出することができる。
【0127】
そして,締結箇所のいずれにも異物が混入されていない場合に,そのまま締結を継続して組電池を作成する。一方,締結箇所のいずれかに異物が混入されている場合には,締結を解除して1以上の部品を入れ替えた後に再度締結して組電池を作成する。したがって,本形態の電池の製造方法により製造されたバッテリパックBPの締結箇所には,異物が混入しているおそれがない。そのため,締結箇所の緩みや発熱のおそれのほとんどない電池を製造することのできる電池の製造方法が実現されている。
【0128】
なお,本実施の形態は単なる例示にすぎず,本発明を何ら限定するものではない。したがって本発明は当然に,その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良,変形が可能である。例えば,電池であれば,二次電池に限らず,一次電池にも適用することができる。
【符号の説明】
【0129】
10…捲回電極体
50…正極内部端子
52…台座
53…極柱
54…頂部
100…バッテリ
110…電池容器
111…電池容器本体
112…蓋体
171…ボルト
172…正極端子
181…ボルト
182…負極端子
BP…バッテリパック
P…正極板
P1…正極塗工部
P2…正極非塗工部
N…負極板
N1…負極塗工部
N2…負極非塗工部
S,T…セパレータ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発電要素である電極体を作成する電極体作成工程と,
電池容器の内部に前記電極体を配置するとともに電解液を注入して封止する単電池作成工程と,
単電池の電極端子間をバスバーで電気的に接続することにより組電池とする組電池作成工程とを有する電池の製造方法であって,
前記組電池作成工程では,
ボルトとナットとにより前記バスバーと前記電極端子とを締結しつつ,少なくとも前記ナットが前記バスバーに着座してから締結が終了するまでの期間内に前記バスバーと前記電極端子との間の接触抵抗を測定するとともに,
前記バスバーと前記電極端子との間の接触抵抗から接触抵抗判定値を算出し,
前記接触抵抗判定値に基づいて,前記バスバーと前記電極端子との間に異物があるか否かの判断を行うことを特徴とする電池の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の電池の製造方法であって,
前記組電池作成工程では,
締結箇所のいずれにも異物が混入されていないと判断した場合に,
そのまま締結を継続して組電池を作成するとともに,
締結箇所のいずれかに異物が混入されていると判断した場合に,
締結を解除して1以上の部品を入れ替えた後に再度締結して組電池を作成することを特徴とする電池の製造方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の電池の製造方法であって,
前記組電池作成工程では,
前記接触抵抗判定値として,接触抵抗の値を用い,
前記接触抵抗が予め定めた接触抵抗閾値以上である場合に,
前記バスバーと前記電極端子との間に異物が混入されていると判断し,
前記接触抵抗が予め定めた接触抵抗閾値未満である場合に,
前記バスバーと前記電極端子との間に異物が混入されていないと判断することを特徴とする電池の製造方法。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載の電池の製造方法であって,
前記組電池作成工程では,
前記接触抵抗判定値として,着座時における接触抵抗と締結終了時における接触抵抗との差を用い,
着座時における接触抵抗と締結終了時における接触抵抗との差が,予め定めた接触抵抗差閾値以上である場合に,
前記バスバーと前記電極端子との間に異物が混入されていると判断し,
着座時における接触抵抗と締結終了時における接触抵抗との差が,予め定めた接触抵抗差閾値未満である場合に,
前記バスバーと前記電極端子との間に異物が混入されていないと判断することを特徴とする電池の製造方法。
【請求項5】
請求項1または請求項2に記載の電池の製造方法であって,
前記組電池作成工程では,
前記接触抵抗判定値として,着座時における締結トルクTiから締結終了時における締結トルクTfまでの積分区間について接触抵抗を積分した接触抵抗のトルク積分値K0
K0=∫R(T)dT
R(T):接触抵抗
T:締結トルク
を用い,
接触抵抗のトルク積分値K0が,予め定めた接触抵抗トルク積分閾値以上である場合に,
前記バスバーと前記電極端子との間に異物が混入されていると判断し,
接触抵抗のトルク積分値K0が,予め定めた接触抵抗トルク積分閾値未満である場合に,
前記バスバーと前記電極端子との間に異物が混入されていないと判断することを特徴とする電池の製造方法。
【請求項6】
請求項1または請求項2に記載の電池の製造方法であって,
前記組電池作成工程では,
前記接触抵抗判定値として,着座時における締結トルクTiから締結終了時における締結トルクTfまでの積分区間について接触抵抗を積分した接触抵抗のトルク積分値K1
K1=∫[R(T)−Ra]dT
R(T):接触抵抗
T:締結トルク
Ra:任意の定数
を用い,
接触抵抗のトルク積分値K1が,予め定めた接触抵抗トルク積分閾値以上である場合に,
前記バスバーと前記電極端子との間に異物が混入されていると判断し,
接触抵抗のトルク積分値K1が,予め定めた接触抵抗トルク積分閾値未満である場合に,
前記バスバーと前記電極端子との間に異物が混入されていないと判断することを特徴とする電池の製造方法。
【請求項7】
請求項1から請求項6までのいずれかに記載の電池の製造方法であって,
前記組電池作成工程では,
締結終了時における締結トルクの値が予め定めた最小トルク閾値未満であるか,または,最大トルク閾値より大きい場合に,
締結に異常があると判断するとともに,
締結に異常があると判断されなかった場合に,
締結に異常がないと判断するものであることを特徴とする電池の製造方法。
【請求項8】
請求項1から請求項7までのいずれかに記載の電池の製造方法であって,
前記組電池作成工程では,
着座時における回転量の値が,予め定めた着座時における最小回転量閾値未満であるか,もしくは,予め定めた着座時における最大回転量閾値より大きい場合,または,
締結終了時における回転量の値が,予め定めた締結終了時における最小回転量閾値未満であるか,もしくは,予め定めた締結終了時における最大回転量閾値より大きい場合に,
締結に異常があると判断するとともに,
締結に異常があると判断されなかった場合に,
締結に異常がないと判断するものであることを特徴とする電池の製造方法。
【請求項9】
ナットを嵌合するソケットと,
前記ソケットを回転させるための回転駆動部と,
ナットとボルトによる締結を予定されている第1の被締結部材と第2の被締結部材とにそれぞれ電気的に接続される第1被締結部材導通端子と第2被締結部材導通端子と,
前記第1被締結部材導通端子と前記第2被締結部材導通端子とによる測定値に基づいて,前記第1の被締結部材と前記第2の被締結部材との間の接触抵抗から接触抵抗判定値を算出する接触抵抗算出部と,
前記接触抵抗算出部により算出された接触抵抗判定値に基づいて,前記第1の被締結部材と前記第2の被締結部材との間の異物の有無を判断する接触抵抗判断部とを有し,
少なくともナットが前記第1の被締結部材に着座してから締結が終了するまでの期間内に,
前記第1被締結部材導通端子および前記第2被締結部材導通端子は,それぞれ前記第1の被締結部材および前記第2の被締結部材に電気的に接続されるものであることを特徴とするナット締結装置。
【請求項10】
請求項9に記載のナット締結装置であって,
前記接触抵抗判断部は,
前記接触抵抗判定値として,接触抵抗の値を用い,
接触抵抗が予め定めた接触抵抗閾値以上である場合に,
前記第1の被締結部材と前記第2の被締結部材との間に異物があると判断するとともに,
接触抵抗が予め定めた接触抵抗閾値未満である場合に,
前記第1の被締結部材と前記第2の被締結部材との間に異物がないと判断するものであることを特徴とするナット締結装置。
【請求項11】
請求項9に記載のナット締結装置であって,
前記接触抵抗判断部は,
前記接触抵抗判定値として,着座時における接触抵抗と締結終了時における接触抵抗との差を用い,
着座時における接触抵抗と締結終了時における接触抵抗との差が,予め定めた接触抵抗差閾値以上である場合に,
前記第1の被締結部材と前記第2の被締結部材との間に異物があると判断するとともに,
着座時における接触抵抗と締結終了時における接触抵抗との差が,予め定めた接触抵抗差閾値未満である場合に,
前記第1の被締結部材と前記第2の被締結部材との間に異物がないと判断するものであることを特徴とするナット締結装置。
【請求項12】
請求項9に記載のナット締結装置であって,
前記接触抵抗判断部は,
前記接触抵抗判定値として,着座時における締結トルクTiから締結終了時における締結トルクTfまでの積分区間について接触抵抗を積分した接触抵抗のトルク積分値K0
K0=∫R(T)dT
R(T):接触抵抗
T:締結トルク
を用い,
接触抵抗のトルク積分値K0が,予め定めた接触抵抗トルク積分閾値以上である場合に,
前記第1の被締結部材と前記第2の被締結部材との間に異物があると判断するとともに,
接触抵抗のトルク積分値K0が,予め定めた接触抵抗トルク積分閾値未満である場合に,
前記第1の被締結部材と前記第2の被締結部材との間に異物がないと判断するものであることを特徴とするナット締結装置。
【請求項13】
請求項9に記載のナット締結装置であって,
前記接触抵抗判断部は,
前記接触抵抗判定値として,着座時における締結トルクTiから締結終了時における締結トルクTfまでの積分区間について接触抵抗を積分した接触抵抗のトルク積分値K1
K1=∫[R(T)−Ra]dT
R(T):接触抵抗
T:締結トルク
Ra:任意の定数
を用い,
接触抵抗のトルク積分値K1が,予め定めた接触抵抗トルク積分閾値以上である場合に,
前記第1の被締結部材と前記第2の被締結部材との間に異物があると判断するとともに,
接触抵抗のトルク積分値K1が,予め定めた接触抵抗トルク積分閾値未満である場合に,
前記第1の被締結部材と前記第2の被締結部材との間に異物がないと判断するものであることを特徴とするナット締結装置。
【請求項14】
請求項9から請求項13までのいずれかに記載のナット締結装置であって,
前記ソケットに加わる締結トルクを測定するトルクセンサと,
前記トルクセンサにより検出された締結トルクの値に基づいて,締結の異常を判断するトルク判断部とを有することを特徴とするナット締結装置。
【請求項15】
請求項14に記載のナット締結装置であって,
前記トルク判断部は,
締結終了時における締結トルクの値が予め定めた最小トルク閾値未満であるか,または,最大トルク閾値より大きい場合に,
締結に異常があると判断するとともに,
締結に異常があると判断されなかった場合に,
締結に異常がないと判断するものであることを特徴とするナット締結装置。
【請求項16】
請求項9から請求項15までのいずれかに記載のナット締結装置であって,
前記ソケットの回転量を測定する回転量測定部と,
前記回転量測定部により測定された回転量の値に基づいて,締結の異常を判断する回転量判断部とを有することを特徴とするナット締結装置。
【請求項17】
請求項16に記載のナット締結装置であって,
前記回転量判断部は,
着座時における回転量の値が,予め定めた着座時における最小回転量閾値未満であるか,もしくは,予め定めた着座時における最大回転量閾値より大きい場合,または,
締結終了時における回転量の値が,予め定めた締結終了時における最小回転量閾値未満であるか,もしくは,予め定めた締結終了時における最大回転量閾値より大きい場合に,
締結に異常があると判断するとともに,
締結に異常があると判断されなかった場合に,
締結に異常がないと判断するものであることを特徴とするナット締結装置。
【請求項1】
発電要素である電極体を作成する電極体作成工程と,
電池容器の内部に前記電極体を配置するとともに電解液を注入して封止する単電池作成工程と,
単電池の電極端子間をバスバーで電気的に接続することにより組電池とする組電池作成工程とを有する電池の製造方法であって,
前記組電池作成工程では,
ボルトとナットとにより前記バスバーと前記電極端子とを締結しつつ,少なくとも前記ナットが前記バスバーに着座してから締結が終了するまでの期間内に前記バスバーと前記電極端子との間の接触抵抗を測定するとともに,
前記バスバーと前記電極端子との間の接触抵抗から接触抵抗判定値を算出し,
前記接触抵抗判定値に基づいて,前記バスバーと前記電極端子との間に異物があるか否かの判断を行うことを特徴とする電池の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の電池の製造方法であって,
前記組電池作成工程では,
締結箇所のいずれにも異物が混入されていないと判断した場合に,
そのまま締結を継続して組電池を作成するとともに,
締結箇所のいずれかに異物が混入されていると判断した場合に,
締結を解除して1以上の部品を入れ替えた後に再度締結して組電池を作成することを特徴とする電池の製造方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の電池の製造方法であって,
前記組電池作成工程では,
前記接触抵抗判定値として,接触抵抗の値を用い,
前記接触抵抗が予め定めた接触抵抗閾値以上である場合に,
前記バスバーと前記電極端子との間に異物が混入されていると判断し,
前記接触抵抗が予め定めた接触抵抗閾値未満である場合に,
前記バスバーと前記電極端子との間に異物が混入されていないと判断することを特徴とする電池の製造方法。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載の電池の製造方法であって,
前記組電池作成工程では,
前記接触抵抗判定値として,着座時における接触抵抗と締結終了時における接触抵抗との差を用い,
着座時における接触抵抗と締結終了時における接触抵抗との差が,予め定めた接触抵抗差閾値以上である場合に,
前記バスバーと前記電極端子との間に異物が混入されていると判断し,
着座時における接触抵抗と締結終了時における接触抵抗との差が,予め定めた接触抵抗差閾値未満である場合に,
前記バスバーと前記電極端子との間に異物が混入されていないと判断することを特徴とする電池の製造方法。
【請求項5】
請求項1または請求項2に記載の電池の製造方法であって,
前記組電池作成工程では,
前記接触抵抗判定値として,着座時における締結トルクTiから締結終了時における締結トルクTfまでの積分区間について接触抵抗を積分した接触抵抗のトルク積分値K0
K0=∫R(T)dT
R(T):接触抵抗
T:締結トルク
を用い,
接触抵抗のトルク積分値K0が,予め定めた接触抵抗トルク積分閾値以上である場合に,
前記バスバーと前記電極端子との間に異物が混入されていると判断し,
接触抵抗のトルク積分値K0が,予め定めた接触抵抗トルク積分閾値未満である場合に,
前記バスバーと前記電極端子との間に異物が混入されていないと判断することを特徴とする電池の製造方法。
【請求項6】
請求項1または請求項2に記載の電池の製造方法であって,
前記組電池作成工程では,
前記接触抵抗判定値として,着座時における締結トルクTiから締結終了時における締結トルクTfまでの積分区間について接触抵抗を積分した接触抵抗のトルク積分値K1
K1=∫[R(T)−Ra]dT
R(T):接触抵抗
T:締結トルク
Ra:任意の定数
を用い,
接触抵抗のトルク積分値K1が,予め定めた接触抵抗トルク積分閾値以上である場合に,
前記バスバーと前記電極端子との間に異物が混入されていると判断し,
接触抵抗のトルク積分値K1が,予め定めた接触抵抗トルク積分閾値未満である場合に,
前記バスバーと前記電極端子との間に異物が混入されていないと判断することを特徴とする電池の製造方法。
【請求項7】
請求項1から請求項6までのいずれかに記載の電池の製造方法であって,
前記組電池作成工程では,
締結終了時における締結トルクの値が予め定めた最小トルク閾値未満であるか,または,最大トルク閾値より大きい場合に,
締結に異常があると判断するとともに,
締結に異常があると判断されなかった場合に,
締結に異常がないと判断するものであることを特徴とする電池の製造方法。
【請求項8】
請求項1から請求項7までのいずれかに記載の電池の製造方法であって,
前記組電池作成工程では,
着座時における回転量の値が,予め定めた着座時における最小回転量閾値未満であるか,もしくは,予め定めた着座時における最大回転量閾値より大きい場合,または,
締結終了時における回転量の値が,予め定めた締結終了時における最小回転量閾値未満であるか,もしくは,予め定めた締結終了時における最大回転量閾値より大きい場合に,
締結に異常があると判断するとともに,
締結に異常があると判断されなかった場合に,
締結に異常がないと判断するものであることを特徴とする電池の製造方法。
【請求項9】
ナットを嵌合するソケットと,
前記ソケットを回転させるための回転駆動部と,
ナットとボルトによる締結を予定されている第1の被締結部材と第2の被締結部材とにそれぞれ電気的に接続される第1被締結部材導通端子と第2被締結部材導通端子と,
前記第1被締結部材導通端子と前記第2被締結部材導通端子とによる測定値に基づいて,前記第1の被締結部材と前記第2の被締結部材との間の接触抵抗から接触抵抗判定値を算出する接触抵抗算出部と,
前記接触抵抗算出部により算出された接触抵抗判定値に基づいて,前記第1の被締結部材と前記第2の被締結部材との間の異物の有無を判断する接触抵抗判断部とを有し,
少なくともナットが前記第1の被締結部材に着座してから締結が終了するまでの期間内に,
前記第1被締結部材導通端子および前記第2被締結部材導通端子は,それぞれ前記第1の被締結部材および前記第2の被締結部材に電気的に接続されるものであることを特徴とするナット締結装置。
【請求項10】
請求項9に記載のナット締結装置であって,
前記接触抵抗判断部は,
前記接触抵抗判定値として,接触抵抗の値を用い,
接触抵抗が予め定めた接触抵抗閾値以上である場合に,
前記第1の被締結部材と前記第2の被締結部材との間に異物があると判断するとともに,
接触抵抗が予め定めた接触抵抗閾値未満である場合に,
前記第1の被締結部材と前記第2の被締結部材との間に異物がないと判断するものであることを特徴とするナット締結装置。
【請求項11】
請求項9に記載のナット締結装置であって,
前記接触抵抗判断部は,
前記接触抵抗判定値として,着座時における接触抵抗と締結終了時における接触抵抗との差を用い,
着座時における接触抵抗と締結終了時における接触抵抗との差が,予め定めた接触抵抗差閾値以上である場合に,
前記第1の被締結部材と前記第2の被締結部材との間に異物があると判断するとともに,
着座時における接触抵抗と締結終了時における接触抵抗との差が,予め定めた接触抵抗差閾値未満である場合に,
前記第1の被締結部材と前記第2の被締結部材との間に異物がないと判断するものであることを特徴とするナット締結装置。
【請求項12】
請求項9に記載のナット締結装置であって,
前記接触抵抗判断部は,
前記接触抵抗判定値として,着座時における締結トルクTiから締結終了時における締結トルクTfまでの積分区間について接触抵抗を積分した接触抵抗のトルク積分値K0
K0=∫R(T)dT
R(T):接触抵抗
T:締結トルク
を用い,
接触抵抗のトルク積分値K0が,予め定めた接触抵抗トルク積分閾値以上である場合に,
前記第1の被締結部材と前記第2の被締結部材との間に異物があると判断するとともに,
接触抵抗のトルク積分値K0が,予め定めた接触抵抗トルク積分閾値未満である場合に,
前記第1の被締結部材と前記第2の被締結部材との間に異物がないと判断するものであることを特徴とするナット締結装置。
【請求項13】
請求項9に記載のナット締結装置であって,
前記接触抵抗判断部は,
前記接触抵抗判定値として,着座時における締結トルクTiから締結終了時における締結トルクTfまでの積分区間について接触抵抗を積分した接触抵抗のトルク積分値K1
K1=∫[R(T)−Ra]dT
R(T):接触抵抗
T:締結トルク
Ra:任意の定数
を用い,
接触抵抗のトルク積分値K1が,予め定めた接触抵抗トルク積分閾値以上である場合に,
前記第1の被締結部材と前記第2の被締結部材との間に異物があると判断するとともに,
接触抵抗のトルク積分値K1が,予め定めた接触抵抗トルク積分閾値未満である場合に,
前記第1の被締結部材と前記第2の被締結部材との間に異物がないと判断するものであることを特徴とするナット締結装置。
【請求項14】
請求項9から請求項13までのいずれかに記載のナット締結装置であって,
前記ソケットに加わる締結トルクを測定するトルクセンサと,
前記トルクセンサにより検出された締結トルクの値に基づいて,締結の異常を判断するトルク判断部とを有することを特徴とするナット締結装置。
【請求項15】
請求項14に記載のナット締結装置であって,
前記トルク判断部は,
締結終了時における締結トルクの値が予め定めた最小トルク閾値未満であるか,または,最大トルク閾値より大きい場合に,
締結に異常があると判断するとともに,
締結に異常があると判断されなかった場合に,
締結に異常がないと判断するものであることを特徴とするナット締結装置。
【請求項16】
請求項9から請求項15までのいずれかに記載のナット締結装置であって,
前記ソケットの回転量を測定する回転量測定部と,
前記回転量測定部により測定された回転量の値に基づいて,締結の異常を判断する回転量判断部とを有することを特徴とするナット締結装置。
【請求項17】
請求項16に記載のナット締結装置であって,
前記回転量判断部は,
着座時における回転量の値が,予め定めた着座時における最小回転量閾値未満であるか,もしくは,予め定めた着座時における最大回転量閾値より大きい場合,または,
締結終了時における回転量の値が,予め定めた締結終了時における最小回転量閾値未満であるか,もしくは,予め定めた締結終了時における最大回転量閾値より大きい場合に,
締結に異常があると判断するとともに,
締結に異常があると判断されなかった場合に,
締結に異常がないと判断するものであることを特徴とするナット締結装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2012−169244(P2012−169244A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−105384(P2011−105384)
【出願日】平成23年5月10日(2011.5.10)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年5月10日(2011.5.10)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
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