電池パック
【課題】隣接する角形電池セル同士の絶縁性を高めた電池パックを提供する。
【解決手段】複数の電池セル10を直列及び/又は並列に接続した電池パックであって、角形の外装缶に各々収納された複数の電池セル10と、電池セル10の電極端子12を除き、外装缶の外周を被覆する絶縁性及び断熱性を有する複数のセパレータ20とを備え、各セパレータ20は、その両面に電池セル10の外装缶を接触させるよう、電池セル10同士の間に介在され、セパレータ20で電池セル10の外装缶を被覆した状態で電極端子12を露出させ、この部分を連結している。これにより、電池セル10の外周を必要部位を残して被覆でき、意図せぬ短絡等を効果的に阻止できる。
【解決手段】複数の電池セル10を直列及び/又は並列に接続した電池パックであって、角形の外装缶に各々収納された複数の電池セル10と、電池セル10の電極端子12を除き、外装缶の外周を被覆する絶縁性及び断熱性を有する複数のセパレータ20とを備え、各セパレータ20は、その両面に電池セル10の外装缶を接触させるよう、電池セル10同士の間に介在され、セパレータ20で電池セル10の外装缶を被覆した状態で電極端子12を露出させ、この部分を連結している。これにより、電池セル10の外周を必要部位を残して被覆でき、意図せぬ短絡等を効果的に阻止できる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、角形電池を複数直列及び/又は並列に接続した電池パックに関し、特にハイブリッド自動車(HEV)、電気自動車(PEV)等のバッテリ駆動車両に使用される電池パックに関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車やハイブリッド自動車の電源として使用される電池パック(パック電池)あるいは組電池は、限られたスペースでの高出力化が求められており、円筒型電池よりもエネルギー密度に優れた角形電池が使用されることがある。一方でこのような角形電池を直列及び/又は並列に複数接続した電池パックでは、隣接する角形電池セルが密接するために、効率の良い放熱性が求められる。特に、リチウムイオン電池では何らかの原因で熱暴走することがあるため、隣接する電池セル同士を熱的に隔離するセパレータが使用される(例えば特許文献1、2)。またこのようなセパレータは、金属外装缶を使用した角型電池間に配置して絶縁する役目も果たしている。
【特許文献1】特開2006−48996号公報
【特許文献2】特開2004−362879号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来はセパレータで電池セル同士の接触面の間に介在されるのみであり、電池セルの外装缶の他の部分は露出している。このため、露出部分で隣接する電池セル同士が短絡する虞があった。特に、円筒型電池であれば、熱収縮チューブ等で電極端子部分のみを残して被覆することが比較的容易であるものの、角形電池で電極端子を残して外周全体を被覆することは容易でない。また角形電池は、内圧が異常上昇した際にガスを排出するための安全弁が設けられているため、電極端子以外にこのような安全弁を露出させる必要があり、被覆を更に困難にしている。
【0004】
このため、従来の角形電池では、電池セル同士が隣接する側面(広い面)のみがセパレータで隔離されるに過ぎず、電池セルの天面や底面、側面(狭い面)等は露出しており、例えば電池パックの組み立て時に工具や部品を誤って落下させたり不意に接触させることで、外装缶から露出した端子や金属面が接触して漏電、短絡が発生する虞があった。
【0005】
また一方、電池セルの電極端子の根元部分は、周辺の電池セルの外装缶と絶縁するために、樹脂あるいはゴム部材等の絶縁部材により封止されている。このような封止部材が経年劣化したり、あるいは封止部材に応力が印加された際に、電解液が漏洩する可能性もあった。この場合、漏洩した電解液を介して、隣接する電極間が接触すると液絡と呼ばれる状態となり、短絡する虞があった。
【0006】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものである。本発明の主な目的は、隣接する角形電池セル同士の絶縁性を高めた電池パックを提供することにある。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明の電池パックは、複数の電池セルを直列及び/又は並列に接続した電池パックであって、角形の外装缶に各々収納された複数の電池セルと、電池セルの電極端子を除き、外装缶の外周を被覆する絶縁性及び断熱性を有する複数のセパレータとを備え、各セパレータは、その両面に電池セルの外装缶を接触させるよう、電池セル同士の間に介在され、セパレータで電池セルの外装缶を被覆した状態で電極端子を露出させ、この部分を連結している。これにより、電池セルの外周を必要部位を残して被覆でき、意図せぬ短絡等を効果的に阻止できる。
【0008】
またセパレータは、隣接するセパレータと嵌合するための嵌合構造を備えることができ、嵌合構造によりセパレータ同士を嵌合することで、電池セルの収納空間が形成されるよう構成してもよい。これにより、セパレータ同士を嵌合して電池パックを構成し、セパレータ同士の間に電池セルを収納し、これらの連結構造を簡素化して螺子等の固定部材を削減すると共に、ネジ止め等の作業を不要として組み立て作業を省力化できる。さらに嵌合構造を設けることで、電池パックとしたときの各電池セルの位置ずれも防止できる。加えて、セパレータ同士を連結することで、セパレータの間で電池セルの収納空間を形成でき、各セパレータの構造を簡素化しつつ各電池セルの全面を被覆する構造を容易に実現できる。
【0009】
さらにセパレータを、一方を開口した略断面コ字状の有底箱形に形成して、この開口部を電池セルを収納できる大きさ及び形状に設計し、さらにセパレータ同士を嵌合構造で連結する際、開口部を他方の箱形の開口部底面を構成する底面板で閉塞する姿勢にて連結するよう構成することもできる。これにより、箱形としたセパレータで角型電池セルの底面、側面、天面を容易に被覆することができる。またセパレータ同士を同じ姿勢で順次連結して開口部を閉塞することにより、セパレータ同士の間で電池セルの収納空間を形成できるので、各セパレータの構造を簡素化しつつ各電池セルの全面を被覆する構造を容易に実現できる。
【0010】
さらにまた、セパレータに嵌合構造として、開口部の開口端縁に嵌合突起を形成すると共に、開口部底面の外部側で、嵌合突起と対応する位置に嵌合突起と嵌合する嵌合溝を形成してもよい。これにより、同一形状のセパレータを複数用意し、同じ姿勢で嵌合突起を嵌合溝に勘合させて多段に連結することが容易となる。また、上記と逆に開口端縁に嵌合溝を設け、底面外側に嵌合突起を設けても同様の効果を得られることはいうまでもない。また、嵌合構造を複数設ける場合は、開口端縁の一方に嵌合突起を、他方に嵌合溝を設け、底面外側の対応する位置に嵌合溝と嵌合突起をそれぞれ設けることも可能である。
【0011】
さらにまた、嵌合突起は、開口端縁の四隅、又は対角となる二隅に少なくとも形成することができる。これにより、隅部でセパレータ同士を連結し、連結箇所を少なくしても連結強度を維持できる。
【0012】
また嵌合構造は、嵌合突起をカギ状に形成し、嵌合溝をカギ状を挿入可能な嵌合スリットに形成してもよく、これによりカギ状を嵌合スリットに挿入して確実な連結を得ることができる。
【0013】
一方、セパレータの開口部底面であって、収納される電池セルの外装缶と接する面に、一定間隔で複数の凹部を形成することもできる。これにより、凹部を空気層として、電池セルの断熱性を高めることができる。
【0014】
また、セパレータの開口部底面であって、収納される電池セルの外装缶と接する面に、一定間隔で複数の凹状段差部を略平行に形成し、延長された凹状段差部の端部はセパレータの側面で開口することもできる。これにより、セパレータ側面で開口された凹状段差部に電池セルの冷却媒体を送出することで、セパレータに収納される電池セルを効率よく冷却できる。
【0015】
さらにセパレータの開口部底面を構成する底面板を、断面が連続した凹凸状となるように折曲させて、底面板の両面に凹状段差部を形成してもよい。これにより、底面板の両面に接する電池セルの両方に対して凹状段差部を設けることができ、各電池セルに対して個別に冷却媒体を送出してこれらを効果的に冷却できる。
【0016】
なお凹状段差部の方向は、電池セルの電極端子を設けた天面と平行に設けることで、電池セルの電極端子が設けられた面を避けて、電池パックの側面から冷却媒体を送出できるので、電極端子に冷却媒体が直接晒されず、埃や結露から保護でき、信頼性を高められる。
【0017】
あるいは、凹状段差部の方向を、電池セルの電極端子を設けた天面と垂直に設けることで、電池セルを縦置きにした状態で、冷却媒体を熱の対流方向と一致させて送出でき、より効率よく伝熱して冷却できる。
【0018】
一方でセパレータは、収納する電池セルに設けられた安全弁の位置に、安全弁開口部を形成することで、安全弁をセパレータで閉塞することなく、安全性が維持される。
【0019】
またセパレータを樹脂製の部材で構成すれば、電池セル間を電気的、温度的に絶縁できる。
【0020】
さらにまた、電池セルの電極端子の周囲に電解液吸収シートを配置してもよく、これにより電池セルから電解液が漏洩しても電解液吸収シートで吸収でき、電解液が端子周辺に広がらないようにして液絡を防止する。
【0021】
一方でセパレータは、電池セルの電極端子の周囲を囲む位置に端子壁を形成しても好ましい。これにより、電池セルから万一電解液が漏洩しても、端子壁で囲まれた貯液領域に溜めることができ、他の部分に電解液が流出して落液が生じる事態を効果的に阻止できる。
【0022】
また端子壁の一部を開口し、かつセパレータの側面まで延長されたドレイン壁を形成することもできる。これにより、電池セルから漏洩して端子壁で囲まれた貯液領域に溜められた電解液を、ドレイン壁で案内してセパレータの側面から安全に排出でき、電解液の拡散による液絡を回避しながら除去できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施の形態は、本発明の技術思想を具体化するための電池パックを例示するものであって、本発明は電池パックを以下のものに特定しない。また特許請求の範囲に示される部材を、実施の形態の部材に特定するものでは決してない。なお、各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため誇張していることがある。さらに以下の説明において、同一の名称、符号については同一もしくは同質の部材を示しており、詳細説明を適宜省略する。さらに、本発明を構成する各要素は、複数の要素を同一の部材で構成して一の部材で複数の要素を兼用する態様としてもよいし、逆に一の部材の機能を複数の部材で分担して実現することもできる。
(実施の形態1)
【0024】
図1に、本発明の実施の形態1に係る電池パック100の外観斜視図を、図2にこの電池パック100の分解斜視図を、図3に側面図を、図4にセパレータ20の斜視図を、図5にセパレータ20の三面図を、それぞれ示す。図4において、図4(a)は底面板の裏面側から見た斜視図、図4(b)は底面板の表面、すなわち開口部側から見た斜視図を、また図5(a)はセパレータ20の平面図、(b)は正面図、(c)は側面図を、それぞれ示している。これらの図に示す電池パック100は、複数の電池セル10とセパレータ20を交互に積層し、左右端面をエンドプレート30で被覆して構成される。具体的には、角形の電池セル10は箱形のセパレータ20を嵌合してこの間に形成される収納空間SKに収納され、表面を被覆された状態で多段に積層される。
(電池セル10)
【0025】
電池セル10は、角形の外装缶に被覆された略矩形の角形電池が利用される。角形電池セルは円筒型電池と比較して効率よく配置でき、単位体積当たりのエネルギー密度を高くできる。特に車載用途では省スペース化の要求が高く、好ましい。このような電池セルには、リチウムイオン二次電池等、角形の二次電池が利用できる。またニッケル電池等の他、一次電池としてもよい。電池セル10の電極端子12は、直列又は並列に結線される。さらに電池パック100の端部で制御回路(図示せず)に接続され、制御回路によって各電池セル10の電圧、電流、温度等を測定し、電池容量及び必要充放電量等を決定して、充放電等の制御が行われる。
【0026】
電池セル10は図2の分解斜視図に示すように、側面を面取りした角形の外装缶の上面から、正負の電極端子12を突出させている。電極端子12はそれぞれ断面L字状に折曲され、さらに折曲した片には連結穴を開口している。特に図2に示すように正負の電極端子12は互いに逆方向に折曲されており、隣接する電池セル10との間で電極端子12を直接接続可能な大きさ及び形状に形成される。これにより、隣接する電池セル10間で正極と負極を直接接続して、電池セル10を直列或いは並列に接続することが容易となる。またこの電池セル10は図2に示すように、電極端子12の周囲を囲むように直立された端子リブ14が形成されており、これにより電解液の拡散が防止される。
(セパレータ20)
【0027】
電池セル10は、図2に示すようにその両面からセパレータ20で挟み込むようにして外部を被覆される。セパレータ20は、図4の斜視図に示すように側面を開口した有底箱形に形成される。すなわち、電池セル10の側面とほぼ同形で若干大きい底面板21を開口部の底面とし、底面板21の左右から側面板22を、上下から上面板23と下面板24を、それぞれ垂直方向に延長して箱形に形成し、これらで区画された空間を電池セル10の収納空間SKの一部とする。さらに、他のセパレータ20を同一の姿勢で積み重ねた際に、底面板21の裏面で開口部が閉塞され、収納空間SKが形成される。複数のセパレータ20は、同一の姿勢で積み重ねられるよう、嵌合構造を設けている。このように、同一形状のセパレータ20を複数重ねて使用して、セパレータ20同士の間に電池セル10を収納する収納空間SKを形成する。このように、電池セル10同士の間に挿入するセパレータ20を箱形に形成し、セパレータ20同士を連結することでその間に収納空間SKが形成されるように設計することで、電池セル10間を絶縁するのみならず、最小限の部品点数で電池セル10の外部を被覆して安全性を高めることができる。また同一形状のセパレータ20で連結する構造とすることで、セパレータ20の製造コスト削減や製造工程の省力化を図ることもできる。また嵌合構造により電池セルの収納空間SKを形成することで、各電池セルの位置決めも同時に行える。このセパレータ20は、略断面コ字状の有底箱形に形成して、開口部に電池セルを収納できる大きさ及び形状に設計される。開口部は、セパレータ20同士を嵌合構造で連結する際、他のセパレータ20の開口部底面を構成する底面板21で閉塞される。これにより、収納空間SKを箱形として角形電池セルを効率よく収納でき、同時に電池セルの周囲を容易に被覆できる。
【0028】
一方、セパレータ20の上面板23には、電極端子12を突出させるための端子挿通口TSが形成される。端子挿通口TSは組み立て易さを考慮して、セパレータ20の天面を構成する上面板23の一部に略矩形状の切り欠き25を形成し、セパレータ20同士を嵌合することで切り欠き25同士が合わさって開口となるよう構成される。図4(a)、(b)の例では、上面板23の長手方向の端部近傍で、幅方向上下に2カ所、計4カ所の切り欠き25を形成している。これにより、電極端子12の端子挿通口TSの形成が容易に行える。
【0029】
またセパレータ20の上面板23は、切り欠き25により電池セル10の電極端子12両側から挟み込めるよう、オフセットして配置する。すなわち、上面板23の長手方向における端縁が電極端子12を設けた部位と交差するように、上面板23の位置を側面板22からずらして固定することにより、電極端子12を両側から挟み込む、端子挿通口TSを形成する切り欠き25の構成が可能となる。切り欠き25の大きさは、上面板23のオフセット量及び電池セル10から電極端子12が突出する位置に応じて設計される。図4(a)の例では、上面板23を側面板22よりも低い位置(開口部の底側、図において左側)にオフセットさせ、上方(図において右側)の切り欠き25を下方(図において左側)の切り欠き25よりも大きく形成している。そして2つのセパレータ20を嵌合することで、対向する上方、下方の切り欠き25を合わせて端子挿通口TSが開口される。したがって上方、下方の切り欠き25は、これらを合わせて電極端子12に応じた適切な大きさの端子挿通口TSが形成できる大きさ及び形状に設計される。
【0030】
なお図4等の例では、セパレータ20の上面板23を、側面板22に対して下方向(開口部の底側)にオフセットさせて固定しているが、これとは逆に上方向にオフセットさせても同様の作用効果を奏することができる。この場合は、上方の切り欠き25が小さく、下方の切り欠き25が大きくなるように形成される。また図4等の例では、セパレータ20の上面板23及び下面板24を、同じ方向にオフセットさせているが、これらを逆方向にオフセットさせることもできる。例えば図4(a)において、下面板24を上方向にオフセットさせて固定してもよい。
(安全弁開口部26)
【0031】
一方電池セル10は図2に示すように、その上面において、長手方向の端部近傍に電極端子12を各々設けると共に、中央近傍には安全弁16を設けている。安全弁16は、電池セル10の内圧が異常に上昇した際に開弁して、電池セル10内部のガスを外部に放出するための弁である。セパレータ20の上面板23には、収納される電池セル10の安全弁16の位置に応じて、安全弁16を外部に表出されるための安全弁開口部26が形成される。安全弁開口部26も、切り欠き状に形成できる。これにより、安全弁16を閉塞することなく電池セル10の外周を被覆でき、絶縁性及び断熱性を高めることができる。またセパレータ20は、端子挿通口TS及び安全弁開口部26を切り欠き状として形成できるので、成型を容易に行える利点も得られる。またセパレータ20を上面板23、側面板22、底面板21等を一体に成型することで、製造コストも安価に抑えられる。セパレータ20は耐熱性、断熱性に優れた部材で構成され、好ましくは軽量で安価な樹脂により形成される。例えば熱伝導率の小さい(望ましくは0.5W/m以下)、ポリプロピレン、ポリウレタン等の合成樹脂が利用できる。
(液絡防止構造)
【0032】
図6に、端子挿通口TS部分の拡大斜視図を示す。この図に示すように、端子挿通口TSの周囲には端子壁27が設けられる。端子壁27により電極端子12の周囲を保護すると共に、内部に貯液領域TRが形成される。端子壁27は、好ましくはセパレータ20と一体に樹脂等により成型され、絶縁性を備える。図6の例では、端子壁27は、電池セル10に設けられた端子リブ14を更に囲むように配置され、好ましくは端子リブ14よりも高く形成される。これにより、電池セル10の電極端子12根元の封止部から万が一電解液が漏洩することがあっても、端子壁27で区画された貯液領域TRに溜めることができ、他の部分に電解液が流出して落液が生じる事態が阻止される。
【0033】
また、電極端子12周辺に電解液吸収シートを配置することも好ましい。電解液吸収シートは、流出した電解液を吸収できる吸収性に優れたシート状の材質で構成でき、電解液の流出を防ぎ安全性を高めることができる。図6(b)に、貯液領域TRに電解液吸収シート18を配置した例を示す。この例では、リング状に形成した電解液吸収シート18を端子リブ14と端子壁27との間の貯液領域TRに挿入している。
(実施の形態2)
【0034】
また貯液領域から電解液を排出する構造を設けることもできる。図7及び図8に、実施の形態2に係る電池パック200の端子挿通口TS部分の拡大斜視図を示す。図8において、図8(a)はセパレータ20Bの平面図、(b)は正面図、(c)は側面図を、それぞれ示している。これらの図に示す端子壁27は、一部を開口して、セパレータ20Bの側面まで延長されたドレイン壁28を形成し、ドレイン壁28で電解液の排出経路を構成している。これにより、貯液領域TRに溜められた電解液を、ドレイン壁28で案内してセパレータ20Bの側面から安全に排出でき、電解液の拡散による液絡を回避しながら安全に排出できる。
(凹状段差部40)
【0035】
さらにセパレータ20は、電池セル10との接触面に凹状段差部40を形成する。凹状段差部40は、底面板21の両面に形成することにより、セパレータ20同士を嵌合して収納空間SKが形成された状態で、底面板21の表裏で接する電池セル10の両方を断熱する。図4の例では、底面板21自体を連続した凹凸状に折曲させて形成することで、両面の凹状段差部40を同時に形成している。またこの例では、水平方向に複数の凹状段差部40をほぼ平行に延長しており、端部は図4に示すように、凹状部分は開放され、凸状部分はセパレータ20の側面で開口させている。この状態でセパレータ20を積層すると、図3に示すように、凹状部分も閉塞されて、各凹状段差部40が側面でスリット状SLに開口される。スリット状SLから冷却媒体を導入することで、セパレータ20に収納される電池セル10を効率よく冷却できる。冷却媒体には、空気等が利用でき、ファン等で送風される。なお図4の例では、凹状段差部40は断面形状を長方形状に形成しているが、凹状段差部40の断面形状はこれに限られず、例えば蟻溝状に凹状段差部を形成してもよい。また凹状段差部に限られず、複数の個別の凹部をセパレータの底面板に形成してもよい。この場合は、凹部の空気層で電池セルを断熱できるが、凹部に冷却媒体を送出しない。
【0036】
複数の凹状段差部を水平方向に設けることで、電池セル10の電極端子12を設けた天面側にスリットが開口する事態を避けて、電池パック100の側面から冷却媒体を送風できるので、電極端子12に冷却空気が直接晒されず、埃や結露から電極端子12を保護でき、信頼性を高められる。冷却媒体としては、冷却空気やガス等の冷媒が利用でき、ファン等をダクトに連結して強制的に送風する。
(エンドプレート30)
【0037】
以上のようにしてセパレータ20と電池セル10を交互に重ねるようにして連結された状態で、端面をエンドプレート30で被覆して固定する。エンドプレート30は、端面で露出する電池セル10を被覆できる大きさに形成され、両側からこれを狭持する状態に固定する。また、車載用電池パック100として、固定のためのねじ穴を四隅部に設ける。エンドプレート30も好ましくは一体成形により成形可能な、金属製や樹脂製のものが使用できる。なお、端面に面する端子挿通口TSの切り欠き25には電極端子12が挿入されず、このため端部に位置する電池セル10が切り欠き25から表出するため、この部分を閉塞するための閉塞板をエンドプレート30の上面に設けることが好ましい。
(実施の形態3)
【0038】
嵌合構造は、上述した凸状嵌合と凹状嵌合の組み合わせに限られず、セパレータを連結可能な種々の構造が適宜採用できる。例えば、他の嵌合構造として、嵌合突起を開口部端縁から上下に交互に突出させ、嵌合溝をこれに対応させて上下に交互に突出させ、これらを係合させるフィンガー構造に形成してもよい。図9〜図13に、このような嵌合構造の例として、実施の形態3に係る電池パック300を示す。これらの図において、図9は電池パック300の斜視図、図10は分解斜視図、図11は側面図、図12はセパレータ20Cの斜視図、図13はセパレータ20Cの三面図を、それぞれ示している。これらの図に示す電池パック300も、実施の形態1と同様に複数の電池セル10とセパレータ20Cを交互に積層し、左右端面をエンドプレート30Cで被覆して構成される。セパレータ20C同士を嵌合させることで、電池セル10を電極端子12部分を除いて被覆することも同様である。また必要に応じて、安全弁開口部をセパレータ20Cに設けてもよい。
【0039】
図12に示すセパレータ20Cは、側面板22として、底面板21の端縁から垂直に、凸状突起42を交互に突出させ、凸状同士の間隔を凸状とほぼ等しい間隔として凹状窪み43を形成し、凸状突起42と凹状窪み43との凹凸形状を連続させている。凸状突起42と凹状窪み43の数は等しく、隣接するセパレータ20C同士の凹凸を嵌合させて連結できるよう設定される。このように凹凸の数を多くすることでセパレータ20C同士の連結強度を高めることができる。また、凸状突起42の裏面に凹状段差部40を、水平方向に形成し、図9に示すように端縁を側面板22から開口させて冷却媒体の経路を構成している。さらにエンドプレート30Cの形状も、フィンガー構造に応じた形状に設計される。
(実施の形態4)
【0040】
上述した実施の形態1〜3では、凹状段差部を水平方向に形成しているが、この構成に限られず、凹状段差部は垂直方向に形成してもよい。このような例を実施の形態4として、図14〜図18に示す。これらの図において、図14は実施の形態4に係る電池パック400を斜め上方から見た斜視図、図15は分解斜視図、図16は側面図、図17(a)はセパレータ20Dを裏面側から見た斜視図、図17(b)は表面側、すなわち開口部側から見た斜視図、図18はセパレータ20Dの三面図を、それぞれ示している。これらの図に示す電池パック400も、実施の形態1〜3と同様に複数の電池セル10とセパレータ20Dを交互に積層し、左右端面をエンドプレート30で被覆して構成される。なお図においては、エンドプレート30を省略している。
【0041】
凹状段差部40は、上面板23及び下面板24に開口される。このため凹状段差部40は底面板21の垂直方向に形成される。凹状段差部40を垂直方向に構成することで、電池セル10を縦置きにした状態で熱の対流が生じやすくなって放熱性が向上される利点が得られる。また冷却空気等の冷媒を熱の対流方向と一致させて送風でき、効率よく伝熱して冷却できる。一方、この方向に冷却空気を送風すると、凹状段差部40の開口と近接した電極端子12が冷却空気に晒され、冷却空気に含まれる埃によって結露や錆が生じる虞もあるので、凹状段差部40の開口と電極端子12とを離間させたり、隔壁等によって隔離することが好ましい。
【0042】
図17に示すセパレータ20Dは、嵌合構造として、嵌合突起をカギ状44に形成し、嵌合溝をカギ状44を挿入可能な嵌合スリット45に形成している。これによりカギ状44を嵌合スリット45に挿入して確実な連結を得ることができる。またこの例では、嵌合突起を開口端縁の四隅に設けているが、対角となる二隅のみに形成してもよい。嵌合突起の数を少なくすることで製造コストや工数を低減できる半面、連結強度が低下するので、要求される連結強度に応じて嵌合突起の数、位置、形状等が選択される。
(実施の形態5)
【0043】
上述した実施の形態1〜4では、セパレータ同士の嵌合構造と端子挿通口TSを設ける位置を、セパレータの異なる面にそれぞれ設けていた。すなわち図1等に示すように、嵌合構造を電池パック100の側面、端子挿通口TSを電池パック100の上面に配置していた。ただ、このような構成に限られず、嵌合構造と端子挿通口TSをセパレータの同じ面上に位置させることもできる。このような例を実施の形態5として、図19〜図22に示す。これらの図において、図19は実施の形態5に係る電池パック500を斜め上方から見た斜視図、図20は平面図及び底面図、図21は側面図、図22(a)はセパレータ20Eを裏面側から見た斜視図、図22(b)は表面側、すなわち開口部側から見た斜視図を、それぞれ示している。これらの図に示す電池パック500も、実施の形態1〜4と同様に複数の電池セル10とセパレータ20Eを交互に積層し、左右端面をエンドプレート30で被覆して構成される。
【0044】
この電池パック500の嵌合構造は、セパレータ20Eの上面板23及び下面板24を、長手方向の中央部分で一方の端縁を凸状に突出させた凸状嵌合部とすると共に、他方の端縁を凹状に窪ませた凹状嵌合部、他のセパレータ20Eとの間でこれらの凸状嵌合部及び凹状嵌合部が嵌合するように設計される。図22(a)の例では、上面板23の上方(図において右側)に凸状嵌合部、下方(図において左側)に凹状嵌合部を形成している。この例ではこれらの嵌合構造と電極端子12用の切り欠き25とを分離させるため、凸状嵌合部の立ち上がり部分及び凹状嵌合部の立ち下がり部分を電極端子12用の切り欠き25と近接させている。
【0045】
また図4に示した実施の形態1では、側面板22に凹状段差部40の端縁を開口させるため、側面板22の端縁を底面板21と一致させていたが、実施の形態5では側面板22に凹状段差部40を開口させる必要がないため、底面板21を側面板22の中間位置に固定している。一方で、上面板23の凹状嵌合部の底面部分で凹状段差部40の端縁を開口させるため、凹状嵌合部の高さと一致させるように底面板21を固定している。凹状嵌合部の深さ(及び凸状嵌合部の高さ)は、上面板23の高さの1/2よりも低く設計している。このため、図22(a)、(b)の例では底面板21を固定する側面板22の位置を、中間よりも下方側(図22(a)において左側)に固定している。底面板21の固定位置は、上面板23の凸状嵌合部及び凹状嵌合部の高さによって決定される。このようにして、嵌合構造と端子挿通口TSをセパレータ20Eの上面板23側に纏め、側面板22側を簡素化して、幅方向の小型化を図ることができる。
【0046】
このように、本実施の形態に係る電池パックは、セパレータに嵌合構造を設けてセパレータの位置決めを容易にすると共に、セパレータで電池セルの周囲を被覆することにより、電池セルを保護して短絡等を回避できる。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明の電池パックは、電気自動車やハイブリッド自動車等の車両用電源装置として好適に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の実施の形態1に係る電池パックの外観斜視図である。
【図2】図1の電池パックの分解斜視図である。
【図3】図1の電池パックの側面図である。
【図4】セパレータの斜視図であって、図4(a)は底面板の裏面側から見た状態、図4(b)は底面板の表面側から見た状態の斜視図である。5
【図5】セパレータの三面図であって、図5(a)はセパレータの平面図、図5(b)は正面図、図5(c)は側面図である。
【図6】図1の電池パックの端子挿通口部分を示す拡大斜視図である。
【図7】実施の形態2に係る電池パックの端子挿通口部分を示す拡大斜視図である。
【図8】セパレータの三面図であって、図8(a)はセパレータの平面図、図8(b)は正面図、図8(c)は側面図である。
【図9】実施の形態3に係る電池パックの斜視図である。
【図10】図9の電池パックの分解斜視図である。
【図11】図9の電池パックの側面図である。
【図12】図10のセパレータの斜視図である。
【図13】セパレータの三面図であって、図13(a)はセパレータの平面図、図13(b)は正面図、図13(c)は側面図である。
【図14】実施の形態4に係る電池パックを斜め上方から見た斜視図である。
【図15】図14の電池パックの分解斜視図である。
【図16】図14の電池パックの側面図である。
【図17】図17(a)はセパレータを裏面側から見た斜視図、図17(b)は表面側から見た斜視図である。
【図18】セパレータの三面図であって、図18(a)はセパレータの平面図、図18(b)は正面図、図18(c)は側面図である。
【図19】実施の形態5に係る電池パックを斜め上方から見た斜視図である。
【図20】図19の電池パックの平面図及び底面図である。
【図21】図19の電池パックの側面図である。
【図22】図22(a)はセパレータを裏面側から見た斜視図、図22(b)は表面側から見た斜視図である。
【符号の説明】
【0049】
100〜500…電池パック
10…電池セル
12…電極端子
14…端子リブ
16…安全弁
18…電解液吸収シート
20、20B、20C、20D、20E…セパレータ
21…底面板
22…側面板
23…上面板
24…下面板
25…切り欠き
26…安全弁開口部
27…端子壁
28…ドレイン壁
30、30C…エンドプレート
40…凹状段差部
42…凸状突起
43…凹状窪み
44…カギ状
45…嵌合スリット
SK…収納空間
TS…端子挿通口
TR…貯液領域
SL…スリット状
【技術分野】
【0001】
本発明は、角形電池を複数直列及び/又は並列に接続した電池パックに関し、特にハイブリッド自動車(HEV)、電気自動車(PEV)等のバッテリ駆動車両に使用される電池パックに関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車やハイブリッド自動車の電源として使用される電池パック(パック電池)あるいは組電池は、限られたスペースでの高出力化が求められており、円筒型電池よりもエネルギー密度に優れた角形電池が使用されることがある。一方でこのような角形電池を直列及び/又は並列に複数接続した電池パックでは、隣接する角形電池セルが密接するために、効率の良い放熱性が求められる。特に、リチウムイオン電池では何らかの原因で熱暴走することがあるため、隣接する電池セル同士を熱的に隔離するセパレータが使用される(例えば特許文献1、2)。またこのようなセパレータは、金属外装缶を使用した角型電池間に配置して絶縁する役目も果たしている。
【特許文献1】特開2006−48996号公報
【特許文献2】特開2004−362879号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来はセパレータで電池セル同士の接触面の間に介在されるのみであり、電池セルの外装缶の他の部分は露出している。このため、露出部分で隣接する電池セル同士が短絡する虞があった。特に、円筒型電池であれば、熱収縮チューブ等で電極端子部分のみを残して被覆することが比較的容易であるものの、角形電池で電極端子を残して外周全体を被覆することは容易でない。また角形電池は、内圧が異常上昇した際にガスを排出するための安全弁が設けられているため、電極端子以外にこのような安全弁を露出させる必要があり、被覆を更に困難にしている。
【0004】
このため、従来の角形電池では、電池セル同士が隣接する側面(広い面)のみがセパレータで隔離されるに過ぎず、電池セルの天面や底面、側面(狭い面)等は露出しており、例えば電池パックの組み立て時に工具や部品を誤って落下させたり不意に接触させることで、外装缶から露出した端子や金属面が接触して漏電、短絡が発生する虞があった。
【0005】
また一方、電池セルの電極端子の根元部分は、周辺の電池セルの外装缶と絶縁するために、樹脂あるいはゴム部材等の絶縁部材により封止されている。このような封止部材が経年劣化したり、あるいは封止部材に応力が印加された際に、電解液が漏洩する可能性もあった。この場合、漏洩した電解液を介して、隣接する電極間が接触すると液絡と呼ばれる状態となり、短絡する虞があった。
【0006】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものである。本発明の主な目的は、隣接する角形電池セル同士の絶縁性を高めた電池パックを提供することにある。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明の電池パックは、複数の電池セルを直列及び/又は並列に接続した電池パックであって、角形の外装缶に各々収納された複数の電池セルと、電池セルの電極端子を除き、外装缶の外周を被覆する絶縁性及び断熱性を有する複数のセパレータとを備え、各セパレータは、その両面に電池セルの外装缶を接触させるよう、電池セル同士の間に介在され、セパレータで電池セルの外装缶を被覆した状態で電極端子を露出させ、この部分を連結している。これにより、電池セルの外周を必要部位を残して被覆でき、意図せぬ短絡等を効果的に阻止できる。
【0008】
またセパレータは、隣接するセパレータと嵌合するための嵌合構造を備えることができ、嵌合構造によりセパレータ同士を嵌合することで、電池セルの収納空間が形成されるよう構成してもよい。これにより、セパレータ同士を嵌合して電池パックを構成し、セパレータ同士の間に電池セルを収納し、これらの連結構造を簡素化して螺子等の固定部材を削減すると共に、ネジ止め等の作業を不要として組み立て作業を省力化できる。さらに嵌合構造を設けることで、電池パックとしたときの各電池セルの位置ずれも防止できる。加えて、セパレータ同士を連結することで、セパレータの間で電池セルの収納空間を形成でき、各セパレータの構造を簡素化しつつ各電池セルの全面を被覆する構造を容易に実現できる。
【0009】
さらにセパレータを、一方を開口した略断面コ字状の有底箱形に形成して、この開口部を電池セルを収納できる大きさ及び形状に設計し、さらにセパレータ同士を嵌合構造で連結する際、開口部を他方の箱形の開口部底面を構成する底面板で閉塞する姿勢にて連結するよう構成することもできる。これにより、箱形としたセパレータで角型電池セルの底面、側面、天面を容易に被覆することができる。またセパレータ同士を同じ姿勢で順次連結して開口部を閉塞することにより、セパレータ同士の間で電池セルの収納空間を形成できるので、各セパレータの構造を簡素化しつつ各電池セルの全面を被覆する構造を容易に実現できる。
【0010】
さらにまた、セパレータに嵌合構造として、開口部の開口端縁に嵌合突起を形成すると共に、開口部底面の外部側で、嵌合突起と対応する位置に嵌合突起と嵌合する嵌合溝を形成してもよい。これにより、同一形状のセパレータを複数用意し、同じ姿勢で嵌合突起を嵌合溝に勘合させて多段に連結することが容易となる。また、上記と逆に開口端縁に嵌合溝を設け、底面外側に嵌合突起を設けても同様の効果を得られることはいうまでもない。また、嵌合構造を複数設ける場合は、開口端縁の一方に嵌合突起を、他方に嵌合溝を設け、底面外側の対応する位置に嵌合溝と嵌合突起をそれぞれ設けることも可能である。
【0011】
さらにまた、嵌合突起は、開口端縁の四隅、又は対角となる二隅に少なくとも形成することができる。これにより、隅部でセパレータ同士を連結し、連結箇所を少なくしても連結強度を維持できる。
【0012】
また嵌合構造は、嵌合突起をカギ状に形成し、嵌合溝をカギ状を挿入可能な嵌合スリットに形成してもよく、これによりカギ状を嵌合スリットに挿入して確実な連結を得ることができる。
【0013】
一方、セパレータの開口部底面であって、収納される電池セルの外装缶と接する面に、一定間隔で複数の凹部を形成することもできる。これにより、凹部を空気層として、電池セルの断熱性を高めることができる。
【0014】
また、セパレータの開口部底面であって、収納される電池セルの外装缶と接する面に、一定間隔で複数の凹状段差部を略平行に形成し、延長された凹状段差部の端部はセパレータの側面で開口することもできる。これにより、セパレータ側面で開口された凹状段差部に電池セルの冷却媒体を送出することで、セパレータに収納される電池セルを効率よく冷却できる。
【0015】
さらにセパレータの開口部底面を構成する底面板を、断面が連続した凹凸状となるように折曲させて、底面板の両面に凹状段差部を形成してもよい。これにより、底面板の両面に接する電池セルの両方に対して凹状段差部を設けることができ、各電池セルに対して個別に冷却媒体を送出してこれらを効果的に冷却できる。
【0016】
なお凹状段差部の方向は、電池セルの電極端子を設けた天面と平行に設けることで、電池セルの電極端子が設けられた面を避けて、電池パックの側面から冷却媒体を送出できるので、電極端子に冷却媒体が直接晒されず、埃や結露から保護でき、信頼性を高められる。
【0017】
あるいは、凹状段差部の方向を、電池セルの電極端子を設けた天面と垂直に設けることで、電池セルを縦置きにした状態で、冷却媒体を熱の対流方向と一致させて送出でき、より効率よく伝熱して冷却できる。
【0018】
一方でセパレータは、収納する電池セルに設けられた安全弁の位置に、安全弁開口部を形成することで、安全弁をセパレータで閉塞することなく、安全性が維持される。
【0019】
またセパレータを樹脂製の部材で構成すれば、電池セル間を電気的、温度的に絶縁できる。
【0020】
さらにまた、電池セルの電極端子の周囲に電解液吸収シートを配置してもよく、これにより電池セルから電解液が漏洩しても電解液吸収シートで吸収でき、電解液が端子周辺に広がらないようにして液絡を防止する。
【0021】
一方でセパレータは、電池セルの電極端子の周囲を囲む位置に端子壁を形成しても好ましい。これにより、電池セルから万一電解液が漏洩しても、端子壁で囲まれた貯液領域に溜めることができ、他の部分に電解液が流出して落液が生じる事態を効果的に阻止できる。
【0022】
また端子壁の一部を開口し、かつセパレータの側面まで延長されたドレイン壁を形成することもできる。これにより、電池セルから漏洩して端子壁で囲まれた貯液領域に溜められた電解液を、ドレイン壁で案内してセパレータの側面から安全に排出でき、電解液の拡散による液絡を回避しながら除去できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施の形態は、本発明の技術思想を具体化するための電池パックを例示するものであって、本発明は電池パックを以下のものに特定しない。また特許請求の範囲に示される部材を、実施の形態の部材に特定するものでは決してない。なお、各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため誇張していることがある。さらに以下の説明において、同一の名称、符号については同一もしくは同質の部材を示しており、詳細説明を適宜省略する。さらに、本発明を構成する各要素は、複数の要素を同一の部材で構成して一の部材で複数の要素を兼用する態様としてもよいし、逆に一の部材の機能を複数の部材で分担して実現することもできる。
(実施の形態1)
【0024】
図1に、本発明の実施の形態1に係る電池パック100の外観斜視図を、図2にこの電池パック100の分解斜視図を、図3に側面図を、図4にセパレータ20の斜視図を、図5にセパレータ20の三面図を、それぞれ示す。図4において、図4(a)は底面板の裏面側から見た斜視図、図4(b)は底面板の表面、すなわち開口部側から見た斜視図を、また図5(a)はセパレータ20の平面図、(b)は正面図、(c)は側面図を、それぞれ示している。これらの図に示す電池パック100は、複数の電池セル10とセパレータ20を交互に積層し、左右端面をエンドプレート30で被覆して構成される。具体的には、角形の電池セル10は箱形のセパレータ20を嵌合してこの間に形成される収納空間SKに収納され、表面を被覆された状態で多段に積層される。
(電池セル10)
【0025】
電池セル10は、角形の外装缶に被覆された略矩形の角形電池が利用される。角形電池セルは円筒型電池と比較して効率よく配置でき、単位体積当たりのエネルギー密度を高くできる。特に車載用途では省スペース化の要求が高く、好ましい。このような電池セルには、リチウムイオン二次電池等、角形の二次電池が利用できる。またニッケル電池等の他、一次電池としてもよい。電池セル10の電極端子12は、直列又は並列に結線される。さらに電池パック100の端部で制御回路(図示せず)に接続され、制御回路によって各電池セル10の電圧、電流、温度等を測定し、電池容量及び必要充放電量等を決定して、充放電等の制御が行われる。
【0026】
電池セル10は図2の分解斜視図に示すように、側面を面取りした角形の外装缶の上面から、正負の電極端子12を突出させている。電極端子12はそれぞれ断面L字状に折曲され、さらに折曲した片には連結穴を開口している。特に図2に示すように正負の電極端子12は互いに逆方向に折曲されており、隣接する電池セル10との間で電極端子12を直接接続可能な大きさ及び形状に形成される。これにより、隣接する電池セル10間で正極と負極を直接接続して、電池セル10を直列或いは並列に接続することが容易となる。またこの電池セル10は図2に示すように、電極端子12の周囲を囲むように直立された端子リブ14が形成されており、これにより電解液の拡散が防止される。
(セパレータ20)
【0027】
電池セル10は、図2に示すようにその両面からセパレータ20で挟み込むようにして外部を被覆される。セパレータ20は、図4の斜視図に示すように側面を開口した有底箱形に形成される。すなわち、電池セル10の側面とほぼ同形で若干大きい底面板21を開口部の底面とし、底面板21の左右から側面板22を、上下から上面板23と下面板24を、それぞれ垂直方向に延長して箱形に形成し、これらで区画された空間を電池セル10の収納空間SKの一部とする。さらに、他のセパレータ20を同一の姿勢で積み重ねた際に、底面板21の裏面で開口部が閉塞され、収納空間SKが形成される。複数のセパレータ20は、同一の姿勢で積み重ねられるよう、嵌合構造を設けている。このように、同一形状のセパレータ20を複数重ねて使用して、セパレータ20同士の間に電池セル10を収納する収納空間SKを形成する。このように、電池セル10同士の間に挿入するセパレータ20を箱形に形成し、セパレータ20同士を連結することでその間に収納空間SKが形成されるように設計することで、電池セル10間を絶縁するのみならず、最小限の部品点数で電池セル10の外部を被覆して安全性を高めることができる。また同一形状のセパレータ20で連結する構造とすることで、セパレータ20の製造コスト削減や製造工程の省力化を図ることもできる。また嵌合構造により電池セルの収納空間SKを形成することで、各電池セルの位置決めも同時に行える。このセパレータ20は、略断面コ字状の有底箱形に形成して、開口部に電池セルを収納できる大きさ及び形状に設計される。開口部は、セパレータ20同士を嵌合構造で連結する際、他のセパレータ20の開口部底面を構成する底面板21で閉塞される。これにより、収納空間SKを箱形として角形電池セルを効率よく収納でき、同時に電池セルの周囲を容易に被覆できる。
【0028】
一方、セパレータ20の上面板23には、電極端子12を突出させるための端子挿通口TSが形成される。端子挿通口TSは組み立て易さを考慮して、セパレータ20の天面を構成する上面板23の一部に略矩形状の切り欠き25を形成し、セパレータ20同士を嵌合することで切り欠き25同士が合わさって開口となるよう構成される。図4(a)、(b)の例では、上面板23の長手方向の端部近傍で、幅方向上下に2カ所、計4カ所の切り欠き25を形成している。これにより、電極端子12の端子挿通口TSの形成が容易に行える。
【0029】
またセパレータ20の上面板23は、切り欠き25により電池セル10の電極端子12両側から挟み込めるよう、オフセットして配置する。すなわち、上面板23の長手方向における端縁が電極端子12を設けた部位と交差するように、上面板23の位置を側面板22からずらして固定することにより、電極端子12を両側から挟み込む、端子挿通口TSを形成する切り欠き25の構成が可能となる。切り欠き25の大きさは、上面板23のオフセット量及び電池セル10から電極端子12が突出する位置に応じて設計される。図4(a)の例では、上面板23を側面板22よりも低い位置(開口部の底側、図において左側)にオフセットさせ、上方(図において右側)の切り欠き25を下方(図において左側)の切り欠き25よりも大きく形成している。そして2つのセパレータ20を嵌合することで、対向する上方、下方の切り欠き25を合わせて端子挿通口TSが開口される。したがって上方、下方の切り欠き25は、これらを合わせて電極端子12に応じた適切な大きさの端子挿通口TSが形成できる大きさ及び形状に設計される。
【0030】
なお図4等の例では、セパレータ20の上面板23を、側面板22に対して下方向(開口部の底側)にオフセットさせて固定しているが、これとは逆に上方向にオフセットさせても同様の作用効果を奏することができる。この場合は、上方の切り欠き25が小さく、下方の切り欠き25が大きくなるように形成される。また図4等の例では、セパレータ20の上面板23及び下面板24を、同じ方向にオフセットさせているが、これらを逆方向にオフセットさせることもできる。例えば図4(a)において、下面板24を上方向にオフセットさせて固定してもよい。
(安全弁開口部26)
【0031】
一方電池セル10は図2に示すように、その上面において、長手方向の端部近傍に電極端子12を各々設けると共に、中央近傍には安全弁16を設けている。安全弁16は、電池セル10の内圧が異常に上昇した際に開弁して、電池セル10内部のガスを外部に放出するための弁である。セパレータ20の上面板23には、収納される電池セル10の安全弁16の位置に応じて、安全弁16を外部に表出されるための安全弁開口部26が形成される。安全弁開口部26も、切り欠き状に形成できる。これにより、安全弁16を閉塞することなく電池セル10の外周を被覆でき、絶縁性及び断熱性を高めることができる。またセパレータ20は、端子挿通口TS及び安全弁開口部26を切り欠き状として形成できるので、成型を容易に行える利点も得られる。またセパレータ20を上面板23、側面板22、底面板21等を一体に成型することで、製造コストも安価に抑えられる。セパレータ20は耐熱性、断熱性に優れた部材で構成され、好ましくは軽量で安価な樹脂により形成される。例えば熱伝導率の小さい(望ましくは0.5W/m以下)、ポリプロピレン、ポリウレタン等の合成樹脂が利用できる。
(液絡防止構造)
【0032】
図6に、端子挿通口TS部分の拡大斜視図を示す。この図に示すように、端子挿通口TSの周囲には端子壁27が設けられる。端子壁27により電極端子12の周囲を保護すると共に、内部に貯液領域TRが形成される。端子壁27は、好ましくはセパレータ20と一体に樹脂等により成型され、絶縁性を備える。図6の例では、端子壁27は、電池セル10に設けられた端子リブ14を更に囲むように配置され、好ましくは端子リブ14よりも高く形成される。これにより、電池セル10の電極端子12根元の封止部から万が一電解液が漏洩することがあっても、端子壁27で区画された貯液領域TRに溜めることができ、他の部分に電解液が流出して落液が生じる事態が阻止される。
【0033】
また、電極端子12周辺に電解液吸収シートを配置することも好ましい。電解液吸収シートは、流出した電解液を吸収できる吸収性に優れたシート状の材質で構成でき、電解液の流出を防ぎ安全性を高めることができる。図6(b)に、貯液領域TRに電解液吸収シート18を配置した例を示す。この例では、リング状に形成した電解液吸収シート18を端子リブ14と端子壁27との間の貯液領域TRに挿入している。
(実施の形態2)
【0034】
また貯液領域から電解液を排出する構造を設けることもできる。図7及び図8に、実施の形態2に係る電池パック200の端子挿通口TS部分の拡大斜視図を示す。図8において、図8(a)はセパレータ20Bの平面図、(b)は正面図、(c)は側面図を、それぞれ示している。これらの図に示す端子壁27は、一部を開口して、セパレータ20Bの側面まで延長されたドレイン壁28を形成し、ドレイン壁28で電解液の排出経路を構成している。これにより、貯液領域TRに溜められた電解液を、ドレイン壁28で案内してセパレータ20Bの側面から安全に排出でき、電解液の拡散による液絡を回避しながら安全に排出できる。
(凹状段差部40)
【0035】
さらにセパレータ20は、電池セル10との接触面に凹状段差部40を形成する。凹状段差部40は、底面板21の両面に形成することにより、セパレータ20同士を嵌合して収納空間SKが形成された状態で、底面板21の表裏で接する電池セル10の両方を断熱する。図4の例では、底面板21自体を連続した凹凸状に折曲させて形成することで、両面の凹状段差部40を同時に形成している。またこの例では、水平方向に複数の凹状段差部40をほぼ平行に延長しており、端部は図4に示すように、凹状部分は開放され、凸状部分はセパレータ20の側面で開口させている。この状態でセパレータ20を積層すると、図3に示すように、凹状部分も閉塞されて、各凹状段差部40が側面でスリット状SLに開口される。スリット状SLから冷却媒体を導入することで、セパレータ20に収納される電池セル10を効率よく冷却できる。冷却媒体には、空気等が利用でき、ファン等で送風される。なお図4の例では、凹状段差部40は断面形状を長方形状に形成しているが、凹状段差部40の断面形状はこれに限られず、例えば蟻溝状に凹状段差部を形成してもよい。また凹状段差部に限られず、複数の個別の凹部をセパレータの底面板に形成してもよい。この場合は、凹部の空気層で電池セルを断熱できるが、凹部に冷却媒体を送出しない。
【0036】
複数の凹状段差部を水平方向に設けることで、電池セル10の電極端子12を設けた天面側にスリットが開口する事態を避けて、電池パック100の側面から冷却媒体を送風できるので、電極端子12に冷却空気が直接晒されず、埃や結露から電極端子12を保護でき、信頼性を高められる。冷却媒体としては、冷却空気やガス等の冷媒が利用でき、ファン等をダクトに連結して強制的に送風する。
(エンドプレート30)
【0037】
以上のようにしてセパレータ20と電池セル10を交互に重ねるようにして連結された状態で、端面をエンドプレート30で被覆して固定する。エンドプレート30は、端面で露出する電池セル10を被覆できる大きさに形成され、両側からこれを狭持する状態に固定する。また、車載用電池パック100として、固定のためのねじ穴を四隅部に設ける。エンドプレート30も好ましくは一体成形により成形可能な、金属製や樹脂製のものが使用できる。なお、端面に面する端子挿通口TSの切り欠き25には電極端子12が挿入されず、このため端部に位置する電池セル10が切り欠き25から表出するため、この部分を閉塞するための閉塞板をエンドプレート30の上面に設けることが好ましい。
(実施の形態3)
【0038】
嵌合構造は、上述した凸状嵌合と凹状嵌合の組み合わせに限られず、セパレータを連結可能な種々の構造が適宜採用できる。例えば、他の嵌合構造として、嵌合突起を開口部端縁から上下に交互に突出させ、嵌合溝をこれに対応させて上下に交互に突出させ、これらを係合させるフィンガー構造に形成してもよい。図9〜図13に、このような嵌合構造の例として、実施の形態3に係る電池パック300を示す。これらの図において、図9は電池パック300の斜視図、図10は分解斜視図、図11は側面図、図12はセパレータ20Cの斜視図、図13はセパレータ20Cの三面図を、それぞれ示している。これらの図に示す電池パック300も、実施の形態1と同様に複数の電池セル10とセパレータ20Cを交互に積層し、左右端面をエンドプレート30Cで被覆して構成される。セパレータ20C同士を嵌合させることで、電池セル10を電極端子12部分を除いて被覆することも同様である。また必要に応じて、安全弁開口部をセパレータ20Cに設けてもよい。
【0039】
図12に示すセパレータ20Cは、側面板22として、底面板21の端縁から垂直に、凸状突起42を交互に突出させ、凸状同士の間隔を凸状とほぼ等しい間隔として凹状窪み43を形成し、凸状突起42と凹状窪み43との凹凸形状を連続させている。凸状突起42と凹状窪み43の数は等しく、隣接するセパレータ20C同士の凹凸を嵌合させて連結できるよう設定される。このように凹凸の数を多くすることでセパレータ20C同士の連結強度を高めることができる。また、凸状突起42の裏面に凹状段差部40を、水平方向に形成し、図9に示すように端縁を側面板22から開口させて冷却媒体の経路を構成している。さらにエンドプレート30Cの形状も、フィンガー構造に応じた形状に設計される。
(実施の形態4)
【0040】
上述した実施の形態1〜3では、凹状段差部を水平方向に形成しているが、この構成に限られず、凹状段差部は垂直方向に形成してもよい。このような例を実施の形態4として、図14〜図18に示す。これらの図において、図14は実施の形態4に係る電池パック400を斜め上方から見た斜視図、図15は分解斜視図、図16は側面図、図17(a)はセパレータ20Dを裏面側から見た斜視図、図17(b)は表面側、すなわち開口部側から見た斜視図、図18はセパレータ20Dの三面図を、それぞれ示している。これらの図に示す電池パック400も、実施の形態1〜3と同様に複数の電池セル10とセパレータ20Dを交互に積層し、左右端面をエンドプレート30で被覆して構成される。なお図においては、エンドプレート30を省略している。
【0041】
凹状段差部40は、上面板23及び下面板24に開口される。このため凹状段差部40は底面板21の垂直方向に形成される。凹状段差部40を垂直方向に構成することで、電池セル10を縦置きにした状態で熱の対流が生じやすくなって放熱性が向上される利点が得られる。また冷却空気等の冷媒を熱の対流方向と一致させて送風でき、効率よく伝熱して冷却できる。一方、この方向に冷却空気を送風すると、凹状段差部40の開口と近接した電極端子12が冷却空気に晒され、冷却空気に含まれる埃によって結露や錆が生じる虞もあるので、凹状段差部40の開口と電極端子12とを離間させたり、隔壁等によって隔離することが好ましい。
【0042】
図17に示すセパレータ20Dは、嵌合構造として、嵌合突起をカギ状44に形成し、嵌合溝をカギ状44を挿入可能な嵌合スリット45に形成している。これによりカギ状44を嵌合スリット45に挿入して確実な連結を得ることができる。またこの例では、嵌合突起を開口端縁の四隅に設けているが、対角となる二隅のみに形成してもよい。嵌合突起の数を少なくすることで製造コストや工数を低減できる半面、連結強度が低下するので、要求される連結強度に応じて嵌合突起の数、位置、形状等が選択される。
(実施の形態5)
【0043】
上述した実施の形態1〜4では、セパレータ同士の嵌合構造と端子挿通口TSを設ける位置を、セパレータの異なる面にそれぞれ設けていた。すなわち図1等に示すように、嵌合構造を電池パック100の側面、端子挿通口TSを電池パック100の上面に配置していた。ただ、このような構成に限られず、嵌合構造と端子挿通口TSをセパレータの同じ面上に位置させることもできる。このような例を実施の形態5として、図19〜図22に示す。これらの図において、図19は実施の形態5に係る電池パック500を斜め上方から見た斜視図、図20は平面図及び底面図、図21は側面図、図22(a)はセパレータ20Eを裏面側から見た斜視図、図22(b)は表面側、すなわち開口部側から見た斜視図を、それぞれ示している。これらの図に示す電池パック500も、実施の形態1〜4と同様に複数の電池セル10とセパレータ20Eを交互に積層し、左右端面をエンドプレート30で被覆して構成される。
【0044】
この電池パック500の嵌合構造は、セパレータ20Eの上面板23及び下面板24を、長手方向の中央部分で一方の端縁を凸状に突出させた凸状嵌合部とすると共に、他方の端縁を凹状に窪ませた凹状嵌合部、他のセパレータ20Eとの間でこれらの凸状嵌合部及び凹状嵌合部が嵌合するように設計される。図22(a)の例では、上面板23の上方(図において右側)に凸状嵌合部、下方(図において左側)に凹状嵌合部を形成している。この例ではこれらの嵌合構造と電極端子12用の切り欠き25とを分離させるため、凸状嵌合部の立ち上がり部分及び凹状嵌合部の立ち下がり部分を電極端子12用の切り欠き25と近接させている。
【0045】
また図4に示した実施の形態1では、側面板22に凹状段差部40の端縁を開口させるため、側面板22の端縁を底面板21と一致させていたが、実施の形態5では側面板22に凹状段差部40を開口させる必要がないため、底面板21を側面板22の中間位置に固定している。一方で、上面板23の凹状嵌合部の底面部分で凹状段差部40の端縁を開口させるため、凹状嵌合部の高さと一致させるように底面板21を固定している。凹状嵌合部の深さ(及び凸状嵌合部の高さ)は、上面板23の高さの1/2よりも低く設計している。このため、図22(a)、(b)の例では底面板21を固定する側面板22の位置を、中間よりも下方側(図22(a)において左側)に固定している。底面板21の固定位置は、上面板23の凸状嵌合部及び凹状嵌合部の高さによって決定される。このようにして、嵌合構造と端子挿通口TSをセパレータ20Eの上面板23側に纏め、側面板22側を簡素化して、幅方向の小型化を図ることができる。
【0046】
このように、本実施の形態に係る電池パックは、セパレータに嵌合構造を設けてセパレータの位置決めを容易にすると共に、セパレータで電池セルの周囲を被覆することにより、電池セルを保護して短絡等を回避できる。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明の電池パックは、電気自動車やハイブリッド自動車等の車両用電源装置として好適に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の実施の形態1に係る電池パックの外観斜視図である。
【図2】図1の電池パックの分解斜視図である。
【図3】図1の電池パックの側面図である。
【図4】セパレータの斜視図であって、図4(a)は底面板の裏面側から見た状態、図4(b)は底面板の表面側から見た状態の斜視図である。5
【図5】セパレータの三面図であって、図5(a)はセパレータの平面図、図5(b)は正面図、図5(c)は側面図である。
【図6】図1の電池パックの端子挿通口部分を示す拡大斜視図である。
【図7】実施の形態2に係る電池パックの端子挿通口部分を示す拡大斜視図である。
【図8】セパレータの三面図であって、図8(a)はセパレータの平面図、図8(b)は正面図、図8(c)は側面図である。
【図9】実施の形態3に係る電池パックの斜視図である。
【図10】図9の電池パックの分解斜視図である。
【図11】図9の電池パックの側面図である。
【図12】図10のセパレータの斜視図である。
【図13】セパレータの三面図であって、図13(a)はセパレータの平面図、図13(b)は正面図、図13(c)は側面図である。
【図14】実施の形態4に係る電池パックを斜め上方から見た斜視図である。
【図15】図14の電池パックの分解斜視図である。
【図16】図14の電池パックの側面図である。
【図17】図17(a)はセパレータを裏面側から見た斜視図、図17(b)は表面側から見た斜視図である。
【図18】セパレータの三面図であって、図18(a)はセパレータの平面図、図18(b)は正面図、図18(c)は側面図である。
【図19】実施の形態5に係る電池パックを斜め上方から見た斜視図である。
【図20】図19の電池パックの平面図及び底面図である。
【図21】図19の電池パックの側面図である。
【図22】図22(a)はセパレータを裏面側から見た斜視図、図22(b)は表面側から見た斜視図である。
【符号の説明】
【0049】
100〜500…電池パック
10…電池セル
12…電極端子
14…端子リブ
16…安全弁
18…電解液吸収シート
20、20B、20C、20D、20E…セパレータ
21…底面板
22…側面板
23…上面板
24…下面板
25…切り欠き
26…安全弁開口部
27…端子壁
28…ドレイン壁
30、30C…エンドプレート
40…凹状段差部
42…凸状突起
43…凹状窪み
44…カギ状
45…嵌合スリット
SK…収納空間
TS…端子挿通口
TR…貯液領域
SL…スリット状
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電池セルを直列及び/又は並列に接続した電池パックであって、
角形の外装缶に各々収納された複数の電池セルと、
電池セルの電極端子を除き、外装缶の外周を被覆する絶縁性及び断熱性を有する複数のセパレータと、
を備え、
各セパレータは、その両面に電池セルの外装缶を接触させるよう、電池セル同士の間に介在され、
前記セパレータで電池セルの外装缶を被覆した状態で電極端子を露出させ、この部分を連結してなることを特徴とする電池パック。
【請求項2】
請求項1に記載の電池パックであって、
前記セパレータが、隣接するセパレータと嵌合するための嵌合構造を備え、
前記嵌合構造によりセパレータ同士を嵌合することで、電池セルの収納空間が形成されるよう構成されてなることを特徴とする電池パック。
【請求項3】
請求項2に記載の電池パックであって、
前記セパレータは、一方を開口した略断面コ字状の有底箱形に形成されてなり、開口部は電池セルを収納できる大きさ及び形状に設計され、
さらにセパレータ同士を前記嵌合構造で連結する際、開口部を他方の箱形の開口部底面を構成する底面板で閉塞する姿勢にて連結するよう構成してなることを特徴とする電池パック。
【請求項4】
請求項3に記載の電池パックであって、
前記セパレータは、前記嵌合構造として、
前記開口部の開口端縁に嵌合突起を形成すると共に、
開口部底面の外部側で、前記嵌合突起と対応する位置に嵌合突起と嵌合する嵌合溝を形成してなることを特徴とする電池パック。
【請求項5】
請求項4に記載の電池パックであって、
前記嵌合突起は、開口端縁の四隅、又は対角となる二隅に少なくとも形成されてなることを特徴とする電池パック。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一に記載の電池パックであって、
前記セパレータの開口部底面であって、収納される電池セルの外装缶と接する面に、一定間隔で複数の凹状段差部を略平行に形成してなり、延長された凹状段差部の端部は前記セパレータの側面で開口されてなることを特徴とする電池パック。
【請求項7】
請求項6に記載の電池パックであって、
前記セパレータの開口部底面を構成する底面板を、断面が連続した凹凸状となるように折曲させて、底面板の両面に凹状段差部を形成してなることを特徴とする電池パック。
【請求項8】
請求項6又は7に記載の電池パックであって、
前記凹状段差部の方向が、電池セルの電極端子を設けた天面と平行に設けられていることを特徴とする電池パック。
【請求項9】
請求項6又は7に記載の電池パックであって、
前記凹状段差部の方向が、電池セルの電極端子を設けた天面と垂直に設けられていることを特徴とする電池パック。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一に記載の電池パックであって、
前記セパレータは、収納する電池セルに設けられた安全弁の位置に、安全弁開口部を形成してなることを特徴とする電池パック。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか一に記載の電池パックであって、
前記セパレータが、樹脂製の部材で構成されてなることを特徴とする電池パック。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか一に記載の電池パックであって、
前記セパレータが、電池セルの電極端子の周囲に電解液吸収シートを配置してなることを特徴とする電池パック。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか一に記載の電池パックであって、
前記セパレータが、電池セルの電極端子の周囲を囲む位置に端子壁を形成してなることを特徴とする電池パック。
【請求項14】
請求項13に記載の電池パックであって、
前記端子壁の一部を開口し、かつ前記セパレータの側面まで延長されたドレイン壁を形成してなることを特徴とする電池パック。
【請求項1】
複数の電池セルを直列及び/又は並列に接続した電池パックであって、
角形の外装缶に各々収納された複数の電池セルと、
電池セルの電極端子を除き、外装缶の外周を被覆する絶縁性及び断熱性を有する複数のセパレータと、
を備え、
各セパレータは、その両面に電池セルの外装缶を接触させるよう、電池セル同士の間に介在され、
前記セパレータで電池セルの外装缶を被覆した状態で電極端子を露出させ、この部分を連結してなることを特徴とする電池パック。
【請求項2】
請求項1に記載の電池パックであって、
前記セパレータが、隣接するセパレータと嵌合するための嵌合構造を備え、
前記嵌合構造によりセパレータ同士を嵌合することで、電池セルの収納空間が形成されるよう構成されてなることを特徴とする電池パック。
【請求項3】
請求項2に記載の電池パックであって、
前記セパレータは、一方を開口した略断面コ字状の有底箱形に形成されてなり、開口部は電池セルを収納できる大きさ及び形状に設計され、
さらにセパレータ同士を前記嵌合構造で連結する際、開口部を他方の箱形の開口部底面を構成する底面板で閉塞する姿勢にて連結するよう構成してなることを特徴とする電池パック。
【請求項4】
請求項3に記載の電池パックであって、
前記セパレータは、前記嵌合構造として、
前記開口部の開口端縁に嵌合突起を形成すると共に、
開口部底面の外部側で、前記嵌合突起と対応する位置に嵌合突起と嵌合する嵌合溝を形成してなることを特徴とする電池パック。
【請求項5】
請求項4に記載の電池パックであって、
前記嵌合突起は、開口端縁の四隅、又は対角となる二隅に少なくとも形成されてなることを特徴とする電池パック。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一に記載の電池パックであって、
前記セパレータの開口部底面であって、収納される電池セルの外装缶と接する面に、一定間隔で複数の凹状段差部を略平行に形成してなり、延長された凹状段差部の端部は前記セパレータの側面で開口されてなることを特徴とする電池パック。
【請求項7】
請求項6に記載の電池パックであって、
前記セパレータの開口部底面を構成する底面板を、断面が連続した凹凸状となるように折曲させて、底面板の両面に凹状段差部を形成してなることを特徴とする電池パック。
【請求項8】
請求項6又は7に記載の電池パックであって、
前記凹状段差部の方向が、電池セルの電極端子を設けた天面と平行に設けられていることを特徴とする電池パック。
【請求項9】
請求項6又は7に記載の電池パックであって、
前記凹状段差部の方向が、電池セルの電極端子を設けた天面と垂直に設けられていることを特徴とする電池パック。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一に記載の電池パックであって、
前記セパレータは、収納する電池セルに設けられた安全弁の位置に、安全弁開口部を形成してなることを特徴とする電池パック。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか一に記載の電池パックであって、
前記セパレータが、樹脂製の部材で構成されてなることを特徴とする電池パック。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか一に記載の電池パックであって、
前記セパレータが、電池セルの電極端子の周囲に電解液吸収シートを配置してなることを特徴とする電池パック。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか一に記載の電池パックであって、
前記セパレータが、電池セルの電極端子の周囲を囲む位置に端子壁を形成してなることを特徴とする電池パック。
【請求項14】
請求項13に記載の電池パックであって、
前記端子壁の一部を開口し、かつ前記セパレータの側面まで延長されたドレイン壁を形成してなることを特徴とする電池パック。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【公開番号】特開2008−166191(P2008−166191A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−356318(P2006−356318)
【出願日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】
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