説明

電池ホルダ

【課題】電池ホルダに過充電・過放電防止のための保護回路を組み込むことにより、対象機器への使用を容易にすることができる電池ホルダを提供する。
【解決手段】電池10の収納及び着脱が可能な電池ホルダ1であって、電池10の収納空間22を形成したホルダ本体20と、ホルダ本体20に組み込まれた内部回路30とを備えており、内部回路30は、過充電・過放電防止のための保護回路31を含んでおり、保護回路31は、電池10の電圧を監視する監視素子と、電池10の充電又は放電を遮断するスイッチ素子とを含んでいる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池の収納及び着脱が可能な電池ホルダに関する。
【背景技術】
【0002】
コイン形電池やボタン形電池と呼ばれる扁平形電池は、情報機器や映像機器等のメモリバックアップ用を中心とした電源として利用されている。扁平形電池は、電池ホルダに収納された状態で取引きされる場合がある。この場合、電池ホルダは別途対象機器に取り付けられた状態で使用されることになる。
【0003】
下記特許文献1には、瞬停防止のためのコンデンサと、過電流防止のための抵抗を備えた電池ホルダが提案されている。この構成によれば、使用電池に対応したコンデンサ及び抵抗があらかじめ電池ホルダに備えられているので、瞬停対策と過電流防止が有効に図れることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−198021号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、扁平形電池の大出力化が進むにつれて、大出力化した扁平形電池に必要な保護回路の仕様設計も重要になってくる。一方、前記特許文献1の電池ホルダでは、過充電・過放電防止のための保護回路は備えていない。
【0006】
また、前記特許文献1に提案されている電池ホルダは、コンデンサ及び抵抗を備えているが、これらの仕様決定に比べ保護回路の仕様決定は困難となる。
【0007】
このため、前記特許文献1に提案されている電池ホルダでは、この電池ホルダを組み込む機器を設計するユーザ側においては、電池ホルダに収納されている電池の種類毎に改めて保護回路の設計が必要になり、機器設計の負担が増すことになる。
【0008】
本発明は前記のような従来の問題を解決するものであり、電池ホルダに過充電・過放電防止のための保護回路を組み込むことにより、対象機器への使用を容易にすることができる電池ホルダを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するために、本発明の電池ホルダは、電池の収納及び着脱が可能な電池ホルダであって、前記電池の収納空間を形成したホルダ本体と、
前記ホルダ本体に取り付けられた過充電・過放電防止のための保護回路とを備えており、前記保護回路は、前記電池の電圧を監視する監視素子と、前記電池の充電又は放電を遮断するスイッチ素子とを含んでいることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、電池ホルダに過充電・過放電防止のための保護回路が組み込まれているので、対象機器への使用を容易にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施の形態1に係る電池ホルダ1の斜視図。
【図2】(a)図は、本発明の実施の形態1に係る内部回路30の回路構成及び素子の配置を示した概略図、(b)図は保護回路31の内部構成を示した概略図。
【図3】本発明の実施の形態2に係る電池ホルダ2の斜視図。
【図4】本発明の実施の形態2に係る内部回路30の回路構成及び素子の配置を示した概略図。
【図5】本発明の実施の形態3に係る電池ホルダ3の斜視図。
【図6】本発明の実施の形態3に係る内部回路30の回路構成及び素子の配置を示した概略図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は電池ホルダに、過充電・過放電防止のための保護回路が組み込まれている。このため、この保護回路を収納対象の電池に適したものとしておけば、電池ホルダを対象機器に取り付ける際には、対象機器側に保護回路に相当する回路を設ける必要はなくなる。このため、対象機器の設計の際に保護回路を設計することも不要になり、対象機器の設計の負担増を防止することができる。
【0013】
前記本発明の電池ホルダにおいては、前記電池ホルダは、少なくとも一つの角部を形成しており、前記角部に前記保護回路を構成する複数の素子が配置されていることが好ましい。この構成によれば、素子同士が近接するので、素子間を接続する配線の長さを短くでき、配線の抵抗値を抑えることができる。
【0014】
また、前記ホルダ本体は矩形形状であり、前記ホルダ本体の4つの角部のそれぞれに、前記保護回路を構成する素子の少なくとも一つが配置されていることが好ましい。この構成によれば、ホルダ本体を矩形形状とした場合に、角部を素子の収納部として有効活用することができる。
【0015】
また、前記ホルダ本体は、外形形状を前記電池の形状に合わせた電池収納部と、前記電池収納部から延出した素子収納部とを備えており、前記素子収納部に前記保護回路を構成する素子が収納されていることが好ましい。この構成によれば、電池及び保護回路の収納には用いていない余分な部分を排除でき、電池ホルダを最小限の大きさにすることができる。
【0016】
また、前記監視素子と前記スイッチ素子とが一体になっていることが好ましい。この構成によれば、保護回路の小型化に有利になり、電池ホルダの小型化にも有利になる。
【0017】
以下、本発明の一実施の形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。
【0018】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係る電池ホルダ1の斜視図を示している。図2(a)は、電池ホルダ1に組み込まれた内部回路30の回路構成及び素子の配置を示している。図2(b)は、内部回路30に含まれる保護回路31の内部構成を示している。
【0019】
電池ホルダ1は、電池10の収納用のホルダである。ホルダ本体20は、絶縁性材料で形成されており、例えば絶縁性の樹脂材料による射出成形品である。ホルダ本体20は、内部空間21及び電池収納部22を形成している。内部空間21内に内部回路30が収納されている。図1、2(a)に示したように、内部回路30は、保護回路31に加え、抵抗34、充電素子35及び電流制限素子36を備えている。なお、内部空間21を形成せず、ホルダ本体20と内部回路30とを一体モールド成形し、ホルダ本体20内に内部回路30を埋設させてもよい。
【0020】
電池収納部22は、電池10を収納でき、電池10の着脱も可能である。電池収納部22は、一端が円形に開口した凹部であり、底部23と底部23から立設した内壁面24とを形成している。内壁面24が電池10の外周面を囲むようにして、電池10は電池収納部22に収納されることになる。
【0021】
電池10は、充電可能な二次電池であり、コイン形電池やボタン形電池と呼ばれる扁平形電池である。電池10は図1の図示では、表面側が正極缶である外装缶11であり、裏面側が負極缶である封口缶12であり、これらがガスケットを介して組み合わされている。電池10内には、発電要素を収納し、非水電解液を充填している。
【0022】
電池収納部22の底面23に沿って負極電極40が内壁面24から延出している。電池収納部22の内周部には正極電極41が立設している。電池収納部22に電池10を収納した状態では、電池10の底面すなわち封口缶12が負極電極40に当接し、外装缶11の側面が正極電極41に当接する。
【0023】
ホルダ本体20の外周面25から負極端子42が延出し、外周面26から正極端子43が延出している。負極端子42及び正極端子43は、機器側に接続するための端子である。負極電極40と負極端子42との間、及び正極電極41と正極端子43とには、内部回路30を構成する素子が接続されている。
【0024】
図2(a)に示したように、負極電極40と負極端子42との間には、保護回路31及び抵抗34が接続されている。保護回路31は、過充電・過放電防止のためのものである。抵抗34は過電流を制限するためのものである。
【0025】
図2(a)では、保護回路31は保護回路モジュールの例を示している。保護回路モジュールは、複数の素子が一つのモジュールとして一体になっている。図2(b)に示したように、保護回路31は、監視素子である監視IC32とスイッチ素子33とを備えている。スイッチ素子は例えばFET(電解効果型トランジスタ)である。
【0026】
保護回路31として保護回路モジュールを用いた場合は、それぞれ独立した素子を用いる場合と比べて、保護回路31の素子間の距離が短くなり、電力ロスが抑制できる。またノイズの影響を抑え、素子の誤動作を抑制できるとともに、小型化に有利になり、電池ホルダ1の小型化にも有利になる。
【0027】
保護回路31の監視素子32は、電池10の充電時に、電池10の電圧を監視する。そして、電池10の電圧が規定値以上になると、スイッチ素子33により充電電流が遮断されることになる。電池10の放電時にも監視素子32は電池10の電圧を監視し、電池10の電圧が規定値以下になると、スイッチ素子33により放電電流が遮断されることになる。
【0028】
正極電極41と正極端子43との間には、充電素子である充電IC35及び電流制限素子36が接続されている。充電IC35は、充電開始から充電完了までの間の充電を制御するためのものである。この制御は、例えば充電の初期では流す電流を小さくし、一定の電圧に達すると定電流充電し、満充電近くになると定電圧充電にするというものである。
【0029】
電流制限素子36は、過電流保護のための素子であり、例えばPTC(Positive Temperature Coefficient)サーミスタである。
【0030】
ここで、電池10の出力が大きくなるほど、過充電・過放電防止のための保護回路の重要性も大きくなる。これに伴って、対象機器の設計の際における負担も増加することになる。本実施の形態の電池ホルダ1は、内部回路30に過充電・過放電防止のための保護回路31が含まれている。このため、保護回路31を収納対象の電池に適した設計としておけば、電池ホルダ1を対象機器に取り付ける際には、対象機器側に保護回路31に相当する回路を設ける必要はなくなる。このため、対象機器の設計の際に保護回路を設計することも不要になり、対象機器の設計の負担増を抑えることができる。
【0031】
また、本実施の形態の例では、内部回路30は保護回路31に加え、抵抗34、充電素子35及び電流制限素子36を備えている。充電素子35についても電池10の保護に関係する素子であり、抵抗34及び電流制限素子36は電池10の保護に直接関係する素子である。そして、これらの素子についても、保護回路31と同様に、収納対象の電池に適した設計が必要となる。したがって、本実施の形態の例のように、保護回路31に各種素子を追加した内部回路30の構成は、対象機器の設計の負担増の防止に一層有利になる。
【0032】
次に、図1、2(a)を参照しながら、内部回路30を構成する素子の配置について説明する。図1、2(a)に示したように、ホルダ本体1は略矩形状であり、角部を形成している。角部27aには、保護回路31及び抵抗34を配置している。角部27bは、充電素子35及び電流制限素子36が配置されている。
【0033】
すなわち、ホルダ本体1の角部27a及び角部28aには、それぞれ複数の素子が配置されていることになる。この構成では素子同士が近接するので、素子間を接続する配線の長さを短くでき、配線の抵抗値を抑えることができる。
【0034】
(実施の形態2)
図3は、本発明の実施の形態2に係る電池ホルダ2の斜視図を示している。図4は、電池ホルダ2に組み込まれた内部回路30の回路構成及び素子の配置を示している。実施の形態1と同一又は対応する部分には同一符号を付して説明は省略する。
【0035】
実施の形態2は、実施形態1の内部回路30における各素子の配置を変更したものである。図3、4に示したように、ホルダ本体1の角部27aには保護回路31、角部27bには充電素子35、角部27cには電流制限素子36、角27dには抵抗34が配置されている。
【0036】
本実施の形態は、ホルダ本体1の外形が矩形状に制限される場合に、特に有効になる。本実施の形態によれば、ホルダ本体1の4つの各角部に、それぞれ素子を配置することにより、角部を有効活用することができる。
【0037】
(実施の形態3)
図5は、本発明の実施の形態3に係る電池ホルダ3の斜視図を示している。図6は、電池ホルダ3に組み込まれた内部回路30の回路構成及び素子の配置を示している。実施の形態1と同一又は対応する部分には同一符号を付して説明は省略する。
【0038】
実施の形態3は、実施の形態1、2に比べホルダ20の外形形状が異なっている。本実施の形態の電池ホルダ3は、電池収納部21は電池10を収納するための最小限の大きさとし、かつ素子収納部27、28は内部回路30を構成する素子をするための最小限の大きさとしたものである。
【0039】
具体的には、図5に示した電池ホルダ20は、外形が略円形の電池収納部21と電池収納部21から延出した素子収納部28、29とを備えている。素子収納部28には、保護回路31及び抵抗34が収納されており、素子収納部29には、充電素子35及びは電流制限素子36が収納されている。
【0040】
この構成によれば、電池10及び内部回路30の収納には用いていない余分な部分を排除でき、電池ホルダ20を最小限の大きさにすることができる。
【0041】
なお、前記各実施の形態においては、保護回路31は、図2(b)に示したように、監視素子32とスイッチ素子33とが一体になった保護素子モジュールを用いた例で説明したが、それぞれ別個に用意した監視素子32及びスイッチ素子33を接続して配置してもよい。
【0042】
また、内部回路30を構成する素子は、適宜選択することが可能である。例えば、内部回路30を構成する素子は、監視素子及びスイッチ素子のみとしてもよい。この構成では、監視素子及びスイッチ素子以外の素子は機器側に設けることになる。しかしながら、過充電・過放電防止のため主要部である監視素子及びスイッチ素子は、電池ホルダ側にあるので、機器側の設計の負担を軽減できることには変りない。したがって、内部回路30は少なくとも監視素子及びスイッチ素子を備えた構成とし、充電素子、電流制限素子、抵抗について適宜選択して採用すればよい。
【0043】
また、内部回路30を構成する各素子は、着脱可能としてもよい。この構成によれば、素子の交換や不要な素子の取り外しが可能になる。
【0044】
また、前記各実施の形態においては、電池収納部への収納対象が扁平形電池の例で説明したが、電池形状は筒形等の他の形状であってもよい。この場合、各実施の形態における電池収納部22の形状は電池形状に合わせた形状になる。
【産業上の利用可能性】
【0045】
以上のように本発明の電池ホルダは、過充電・過放電防止のための保護回路を組み込むことにより、対象機器への使用を容易にすることができるので、充電可能な二次電池用の電池ホルダとして有用である。
【符号の説明】
【0046】
1,2,3 電池ホルダ
10 電池
20 ホルダ本体
21 電池収納部
27a,27b,27c,27d 角部
28,29 素子収納部
30 内部回路
31 保護回路
32 監視素子
33 スイッチ素子
34 抵抗
35 充電素子
36 電流制限素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池の収納及び着脱が可能な電池ホルダであって、
前記電池の収納空間を形成したホルダ本体と、
前記ホルダ本体に組み込まれた内部回路とを備えており、
前記内部回路は、過充電・過放電防止のための保護回路を含んでおり、
前記保護回路は、前記電池の電圧を監視する監視素子と、前記電池の充電又は放電を遮断するスイッチ素子とを含んでいることを特徴とする電池ホルダ。
【請求項2】
前記内部回路は、さらに充電素子、電流制限素子及び抵抗のうち少なくともいずれかを含んでいる請求項1に記載の電池ホルダ。
【請求項3】
前記電池ホルダは、少なくとも一つの角部を形成しており、前記角部に前記内部回路を構成する複数の素子が配置されている請求項1又は2に記載の電池ホルダ。
【請求項4】
前記ホルダ本体は矩形形状であり、前記ホルダ本体の4つの角部のそれぞれに、前記内部回路を構成する素子の少なくとも一つが配置されている請求項1又は2に記載の電池ホルダ。
【請求項5】
前記ホルダ本体は、外形形状を前記電池の形状に合わせた電池収納部と、前記電池収納部から延出した素子収納部とを備えており、前記素子収納部に前記内部回路を構成する素子が収納されている請求項1から4のいずれかに記載の電池ホルダ。
【請求項6】
前記監視素子と前記スイッチ素子とが一体になっている請求項1から5のいずれかに記載の電池ホルダ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−159395(P2011−159395A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−17767(P2010−17767)
【出願日】平成22年1月29日(2010.1.29)
【出願人】(511084555)日立マクセルエナジー株式会社 (212)
【Fターム(参考)】