説明

電池モジュール用セルユニットの締結構造及び締結部材

【課題】部材数及び組立工数を増やすことなく扁平型電池ないしはスペーサ同士をより確実かつ強固に拘束できるようにする。
【解決手段】複数の扁平型電池1A〜1Dの一つ一つをスペーサ3A〜3Eなどにより上下から挟持して非接触状態に積層した積層体4を、前記各スペーサを締結部材2により拘束することにより一体化する電池モジュール用セルユニットの締結構造において、締結部材2は、縦断面略コ形状をなしているとともに、対向内面に設けられた係合部(25)を有しており、前記各スペーサを対向内面の間に配置した状態で、各スペーサを前記係合部とその係合部と対向している箇所(係合部26又は側部21)とで挟持して各スペーサの動きを規制することを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電極端子を有する扁平型電池を複数積層し、各電池の電極端子を電気的に接続して高出力及び/又は高容量化した電池モジュール用セルユニットの締結構造及び締結部材に関する。
【背景技術】
【0002】
図9及び図10は特許文献1に開示のセルユニット及びそれを用いた電池モジュールを示している。同図の電池モジュール100は、図9(a)に示されるごとく金属製のケース120(ロアケース122及びアッパケース124)に同(b)のセルユニット140を収納した構造であり、単一使用に限られず、複数を直列や並列に接続して目的の電流、電圧、容量に応じた組電池として作成される。ここで、セルユニット140は、複数の扁平型電池144A〜144D(144)、各扁平型電池の一つ一つを上下より挟持して非接触状態に積層する複数のスペーサ160A〜160E(160)と161A〜161E(161)、及び各スペーサを拘束する絶縁カバーである締結部材170
(スペーサ161側の締結部材は省略されている)などにより構成されている。
【0003】
各扁平型電池144は、電極端子147,148付きの発電素子、電極端子を除いて発電素子を封止している外装材などからなる。各スペーサ160は、図10のごとく窓部163、貫通孔164、電圧検出部169などを有し、積層体142の前側にあって各扁平型電池の電極端子147を上下より挟持するよう配置される。各スペーサ161は、貫通孔165を有し、積層体142の後側にあって各扁平型電池のもう一方の電極端子148を上下より挟持するよう配置される。
【0004】
スペーサ160において、窓部163は、電極端子の一部を露出し、各扁平型電池144を電気的に接続可能する。貫通孔164,165は、ケース122の四隅に設けられた貫通孔130と対応しており、不図示のボルトが挿通される。電圧検出部169は、挟持した電極端子の周縁部分を露出して、ケース前面123に設けられた開口部134に配置される。但し、電圧検出部169は専用端子によって構成されることもある。各スペーサ160のうち、最上段のスペーサ160Aの上面及び最下段のスペーサ160Eの下面は、締結部材嵌合用の凹部162に形成されている。スペーサ160Eはバスバー196を介して電極端子147に電気接合された出力端子166を有し、スペーサ160Bは電極端子147に電気接合された出力端子167を有している。各出力端子は、ケース前面123に設けられた開口部132,133より突出される。
【0005】
締結部材170は、図9(c)のごとく本体基部172及び上下の側面部190からなる縦断面コ字形であり、両側面部190によって積層体のスペーサ160を上下から挟む込む。本体基部172は、両側付近の開口部174,175及び中央部の差込口176を有する。開口部174,175は、出力端子166,167を突出可能となっており、縁部に延長している突出部184,185を有する。突出部184,185は、筒状壁部186及びその先端の拡張部188を有し、図9(a)のごとくケースの開口部132,133から突出される。
【0006】
以上のセルユニット140は、各扁平型電池144A〜144Dが前後部においてスペーサ160及び161を介して非接触状態に積層され、その積層体142が締結部材170(スペーサ161側の締結部材は省略されている)により一体的に拘束される。すなわち、セルユニット140は、積層体142に対し締結部材170が開口部174,175に出力端子166,167を挿入した状態で、その上下側面部190を最上下段のスペーサ160A,160Eの外面側凹部162に嵌合することで拘束一体化される。なお、セルユニット140は、その拘束状態からケース120に収納されて電池モジュール100として作成される。電池モジュール100は、用途ないしは仕様に応じた必要数が積層され、かつ、四隅のケース側貫通孔130及びスペーサ側貫通孔164,165に挿通されるボルトなどの固定手段により連結されて組電池として構築される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−172893号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記したセルユニットにおいて、積層体はその前後部の各スペーサを締結部材により一体化した状態に拘束されるが、ケースに収納して電池モジュールとして作成したり、組電池として構築されるまでに、扁平型電池ないしはスペーサ同士が微量に動いて電気接続などの不良要因となることもある。この対策としては、例えば、締結部材に加えて、他の結合手段により積層体に対する拘束力を補強することが考えられるが、部材数及び組立工数が増えてコスト高となり採用し難い。
【0009】
本発明は以上のような課題から工夫されたものである。その目的は、部材数及び組立工数を増やすことなく扁平型電池ないしはスペーサ同士をより確実かつ強固に拘束でき、それにより電池モジュール用セルユニットの品質を向上することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため請求項1の発明は、複数の扁平型電池の一つ一つをスペーサにより上下から挟持して非接触状態に積層した積層体を、前記各スペーサを締結部材により拘束することにより一体化する電池モジュール用セルユニットの締結構造において、前記締結部材は、縦断面略コ形状をなしているとともに、対向内面に設けられた係合部を有しており、前記各スペーサを対向内面の間に配置した状態で、前記各スペーサを前記係合部とその係合部と対向している箇所とで挟持して前記各スペーサの動きを規制することを特徴としている。
【0011】
以上の本発明において、『対向内面に設けられた係合部』とは、図3の部分拡大図に示されるごとく対向内面にそれぞれ係合部25,26を設けた第1構成と、図8(b)に示されるごとく対向内面の一方にだけ係合部25を設けた第2構成とを含む。『前記各スペーサを前記係合部とその係合部と対向している箇所とで挟持し』とは、前記第1構成の場合は、各スペーサを係合部25と係合部26とで挟持する構成となる。前記第2構成の場合は、各スペーサを一方の係合部25と締結部材を構成しているコ形状の両側部のうち、係合部25を設けていない方の側部21とで挟持する構成となる。
【0012】
以上の本発明は請求項2〜6のように具体化されることがより好ましい。すなわち、
(ア)請求項2の発明は、前記スペーサのうち、最上下段に配置されるスペーサに被係合部を設け、前記締結部材に前記各スペーサを挟み込むのと同時に、前記係合部が前記被係合部に係合して、前記締結部材が前記各スペーサを前記係合部と前記被係合部との係合状態で挟持する構成である。
(イ)請求項3発明は、前記スペーサの外側を覆うように配置される絶縁カバーを兼ねている構成である。
(ウ)請求項4の発明は、前記スペーサと前記絶縁カバーとに設けられて、前記絶縁カバーを前記各スペーサに組み付けるとき、互いに嵌合する位置決め手段を有している構成である。
【0013】
(エ)請求項5の発明は、以上の電池モジュール用セルユニットの締結構造に用いられる締結部材を特定したものである。すなわち、複数の扁平型電池の一つ一つをスペーサにより上下から挟持して非接触状態に積層した積層体を、前記各スペーサを拘束することにより一体化する請求項1から4の何れかに記載の締結部材。
(オ)請求項6の発明は、長手方向の左右端に設けられて前記各スペーサの外端面と燐接する両側面の一部を覆う湾曲部を有している構成である。
【発明の効果】
【0014】
請求項1の発明では、締結部材がコ形状の内側に各スペーサを挟み込んだ状態において、対向内面の一方に設けられた係合部とその係合部と対向している箇所との間に各スペーサを更に挟持するため、各スペーサがより確実に位置規制できる。これにより、この構造では、部材数を増やしたり、組立工数を増やすことなく扁平型電池ないしはスペーサ同士をより確実かつ強固に拘束できる。
【0015】
請求項2の発明では、締結部材のコ形状内に各スペーサを挟み込むと同時に、最上下段のスペーサに設けられた被係合部と締結部材側係合部とが係合状態となるため、スペーサ同士を締結部材のコ形状内に挟持する規制力に加え、係合部と被係合部との係合による左右及び上下方向の規制力を付与でき、それにより電池モジュール用セルユニットの信頼性及び品質を向上できる。
【0016】
請求項3発明では、締結部材が各スペーサの外側を覆うように配置される絶縁カバーを兼ねているため部材数を増やすことなく容易に実施できる。
【0017】
請求項4の発明では、絶縁カバーを各スペーサに組み付けるとき、位置決め手段により互いに嵌合して位置ずれを防止して高精度に拘束一体化できる。
【0018】
請求項5発明では、電池モジュール用セルユニットを構成している扁平型電池の積層体ないしはスペーサ同士を拘束する締結部材として、請求項1から4の各発明に記載したような利点を具備できる。
【0019】
請求項6の発明では、締結部材が長手方向の左右端に設けられて各スペーサの両側面の一部を覆う湾曲部の存在によって、積層体ないしは各スペーサに対してより安定した組み付け状態が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明形態の電池モジュール用セルユニットを示し、(a)は同セルユニットの上面図、(b)は同セルユニットの前方より見た正面図である。
【図2】(a)、(b)、(c)は図1のA−A線、B−B線、C−C線に沿って断面した拡大断面図である。
【図3】図1のD−D線に沿って断面した拡大断面図とその部分拡大図である。
【図4】(a),(b)は電池モジュール用セルユニットを構成している積層体と締結部材との関係を模式的に示す要部分解図とその部分拡大図である。
【図5】上記積層体を構成しているスペーサを示す構成図である。
【図6】上記締結部材の細部を示し、(a)は背面側から見た斜視図、(b)はE−E線に沿って断面した拡大断面図である。
【図7】(a)及び(b)は変形例1を図2(a)と図6(b)に対応させて示す図である。
【図8】(a)は変形例2を、(b)は変形例3を図3の部分拡大図にそれぞれ対応させて示す図である。
【図9】特許文献1に開示の電池モジュール用セルユニットを示し、(a)と(b)は電池モジュールとセルユニットの斜視図、(c)は締結部材の斜視図である。
【図10】(a)は図8のセルユニットの分解図、(b)は扁平型電池の積層体の構成図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明形態を図面を参照しながら説明する。この説明では、図1〜図6に示した電池モジュール用セルユニットの概要、締結構造及びその利点、図7に示した変形例1、図8に示した変形例2と3の順に詳述する。なお、変形例1〜3の説明では、図1〜図6の構造と同じ部材及び部位に同じ符号を付し、変更点だけを詳述する。
【0022】
(概要)図1から図3に示した電池モジュール用セルユニット5は、複数の扁平型電池1A〜1Dの一つ一つを前側の各スペーサ3A〜3E、不図示の後側の各スペーサにより上下から挟持して非接触状態に積層した積層体4、及び前側の各スペーサ3A〜3E及び後側の各スペーサを拘束する絶縁カバーを兼ねる締結部材2A,2Bからなる点、図9のような金属製のケースに収納されて電池モジュールとして作成される点で従来と同じ。
【0023】
工夫点は、特に、図4の積層体4を、前記各スペーサを締結部材2A,2Bにより拘束して電池モジュール用セルユニット5として作成する際の締結構造にある。ここで、締結部材2A,2Bとしては、何れもが縦断面略コ形状をなしているとともに、対向内面に設けられた係合部25,26を有している点で同じ。この締結構造において、締結部材2Aは前側の各スペーサ3A〜3Eを、締結部材2Bは後側の各スペーサをそれぞれコ形の対向内面の間に挟み込んだ状態で、前記各スペーサを係合部としての片部25とその片部25と対向している箇所(図3の場合は片部26、図8(b)の場合は締結部材を構成しているコ形状の両側部21のうち、片部25を設けていない方の側部21)とで挟持して積層体4ないしは各スペーサの動きを規制するようにしたものである。
【0024】
各扁平型電池1A〜1D(1)は、リチウムイオン二次電池などであり、不図示の発電素子、及び該発電素子に接続された前後端側の電極端子10(図2を参照)、該発電素子を覆っている外装材11(図1を参照)などからなる。図4では各扁平型電池1A〜1Dを模式化し、図2と図7及び図8では外装材11を省略している。
【0025】
以下の説明において、締結部材2A,2B(2)は、締結構造としては同じため締結部材2Bの細部を省略し、締結部材2Aの方で細部構成を明らかにする。また、前側の各スペーサ3A〜3E(3)と後側の各スペーサは、出力端子の有無などよって形状的に異なっているが、締結構造としては同じため後側の各スペーサについては省略し、前側の各スペーサ3A〜3Eの方で細部構成を明らかにする。なお、符号1は、扁平型電池1A、1B、1C、1Dであるかを特に問わず何れにも当てはまるときに使用する。符号2は、締結部材2Aか締結部材2Bかを特に問わず何れにも当てはまるときに使用する。符号3は、スペーサ3A、3B、3C、3D、3Eであるかを特に問わず何れにも当てはまるときに使用する。
【0026】
(締結構造)図4の積層体4は、各扁平型電池1A〜1Dを前側の各スペーサ3、不図示の後側の各スペーサにより一つづつ上下から挟持して非接触状態に積層されている。締結部材2A,2Bは、前後の各スペーサに対し押し込み操作により組み付けられて、前後の各スペーサを拘束することにより積層体4を一体化し電池モジュール用セルユニット5として作成可能にする。
【0027】
図5はスペーサ3A〜3Eの細部を示している。各スペーサ3は、樹脂の射出成成形品であり、長さが扁平型電池1の幅に対応した寸法となっている。最上段のスペーサ3A及びその下のスペーサ3Bは扁平型電池1Aの電極端子10を上下より挟持し、スペーサ3B及びその下のスペーサ3Cは扁平型電池1Bの電極端子10を上下より挟持し、スペーサ3C及びその下のスペーサ3Dは扁平型電池1Cの電極端子10を上下より挟持し、スペーサ3D及び最下段のスペーサ3Eは扁平型電池1Dの電極端子10を上下より挟持している。
【0028】
各スペーサ3には、手前部分を切り欠いて電極端子10の一部を露出する切欠部33又は33aが複数箇所に設けられている。スペーサ3A,3Eの両端部30、及びスペーサ3B〜3Dの両端部31には、図3に示されるごとく上下に連続する貫通孔34が設けられている。この構造では、スペーサ3Aの貫通孔34に対応して下設された筒部30aをスペーサ3Bの貫通孔34の上側径大孔部34aに嵌合し、スペーサ3Bの貫通孔34に対応して下設された筒部31aをスペーサ3Cの貫通孔34の上側径大孔部34aに嵌合し、スペーサ3Cの貫通孔34に対応して下設された筒部30aをスペーサ3Dの貫通孔34の上側径大孔部34aに嵌合し、スペーサ3Dの貫通孔34に対応して下設された筒部31aをスペーサ3Eの径大孔部34aに嵌合した状態で連続した貫通孔34となっている。また、各スペーサ3は、両側が筒部30aと径大孔部34aとの嵌合を介して積層されるため上下・左右の動きが一応規制されるようになっている。
【0029】
また、スペーサ3A,3Eは、外面中央部に設けられて位置決め手段と係止手段とを兼ねる凹部39と、同じく両端部30の外側に設けられて位置決め手段と係止手段とを兼ねる凹部38とを有している。なお、スペーサ3E側の凹部39と、両端部30のうち図5の左側の凹部38は作図上省略されている。スペーサ3Bには出力端子14を位置決めする配置部37aが設けられている。出力端子14は、スペーサ3A,3B同士の間に配置される扁平型電池1Aの電極端子10と、スペーサ3B,3C同士の間に配置される扁平電池1Bの電極端子10と接続される接続部13a,13bを形成している。スペーサ3Dには出力端子12を位置決めする配置部38a及び開口38bが設けられている。出力端子12は、スペーサ3C,3D同士の間に配置される扁平型電池1Cの電極端子10と、スペーサ3D,3E同士の間に配置される扁平電池1Dの電極端子10に接続される接続部11a,11bを形成している。スペーサ3B〜3Eにはバスバー16が左側の切欠部33又は33aに沿って配置される。バスバー16は、扁平型電池1A〜1Dの各電極端子10に接続可能となるよう階段状に形成されており、最上段の平板部がスペーサ3A,3B同士の間に配置された状態で位置決め係止され、最下段の平板部16aがスペーサ3Eの左側の切欠部33上に配置される。これらは特許文献1に開示のスペーサ構成と類似している。
【0030】
従来と最も異なる点は、スペーサ3Aが両端部30の内側に設けられた被係合部としての受け部35を有しているとともに、スペーサ3Eが両端部30の内側に設けられた被係合部としての受け部36を有していることである。受け部35と受け部36とはほぼ同軸線上に設けられている。また、両側の受け部35は、側面視で略凹字形であり所定距離を保って対向している。両側の受け部36は、側面視で逆凹字形であり所定距離を保って対向している。各受け部35の長さは、図3に示されるごとくスペーサ3Bの切欠部33aを通って中間のスペーサ3Cの上側対応部に当接する寸法である。各受け部36の長さは、スペーサ3Dの切欠部33aを通って中間のスペーサ3Cの下側対応部に当接する寸法である。
【0031】
図6は締結部材2Aの細部を示している。締結部材2Aは、樹脂の射出形成品であり、図4の積層体4の各スペーサ3に対応した大きさの容器状となっている。すなわち、締結部材2Aは、縦断面が中間部20及び上下の両側部21からなる略コ形状であるとともに、長手方向の左右端に設けられた湾曲部22を有しており、図4の積層体4を構成している各スペーサ3のほぼ全体を内側に収容可能となっている。中間部20の外面は、上記スペーサ3の各出力端子12,14に応じて突設された略矩形の筒部23を有し、出力端子12,14が対応する筒部23より外へ突出可能となっている。対向した上下の側部21には、同軸線上に貫通された貫通孔24が左右の湾曲部22付近に設けられている。各貫通孔24は、締結部材2Aが各スペーサ3に装着されたセルユニット5の状態で各スペーサの貫通孔34と重ねられる。
【0032】
上下の側部21の内面には、左右の貫通孔24より少し中央よりに係合部としての矩形片部25,26が設けられている。片部25及び片部26は、上下に対向しており、後面と上又は下面が中間部内面と側部内面とに接合した状態で側部21の前後略中間まで延びている。片部25,26は、手前側のコーナー部が傾斜面25a,26aに形成されており、締結部材2Aが各スペーサ3に装着されるとき、スペーサ側の対応する受け部35,36に差し込まれ易くなっている。
【0033】
また、中間部20の内面には、一方側の片部25,26より少し中央よりに縦リブ27が設けられている。この縦リブ27は、スペーサ3Eの左側の切欠部33の真上に延びて、図3の部分拡大図に示したごとくバスバー16の自由端である最下段の平板部16aに当接してバスバー16の揺動を規制する。更に、左右の各湾曲部22には、図6(b)に示されるごとく凸部28が内面にあって上下の側部21の少し下側に設けられている。同じく、上下の各側面21には、爪部29が内面にあって左右中間に設けられている。各凸部28は、スペーサ3A,3Eの対応する凹部38とで位置決め手段ないしは係止手段を構成している。各爪部29は、スペーサ3A,3Eの対応する凹部39とで位置決め手段ないしは係止手段を構成している。
【0034】
(利点)以上の締結部材2Aは、図4の積層体4を構成している各スペーサ3に対し同図の矢印方向への押し操作により組み付けられて、各スペーサ3を電池モジュール用セルユニット5として拘束一体化する。この操作自体は従来と同じであるが、上記の締結構造では、従来構造に比べて以下のような利点を実現している。
【0035】
第1に、この締結構造では、締結部材2Aを押し込み操作により各スペーサ3ないしは積層体4に装着するとき、最終段階で両側の各凸部28がスペーサ側の対応する凹部38と、中間部の各爪部29がスペーサ側の対応する凹部39と弾性係合するため、電池モジュール用セルユニット5の幅寸法が大きなっても締結部材2Aを各スペーサ3に高精度に装着できる。また、各爪部29は、対応する凹部39と弾性係合するときクリック音を伴うため各スペーサ3に対する締結部材2Aの装着完了をその音で判断できる。
【0036】
第2に、加えて、この締結構造では、締結部材2Aが各スペーサ3に装着される過程で、締結部材左右に設けられた上下の片部25,26がスペーサ側の対応する受け部35,36に嵌入される。これにより、両側の各上下の片部25,26は、図3の部分拡大図から推察されるごとく対応する左右の受け部35,36とそれぞれ嵌合した状態となる。このため、最上段のスペーサ3Aと最下段のスペーサ3Eとは、受け部35,36に嵌合した片部25,26により確実に位置規制される。同時に、他のスペーサ3B〜3Dは、その位置規制された最上下段のスペーサ3A,3Eにより上下から挟み込まれ左右及び上下の動きが確実に位置規制される。この結果、この締結構造では、部材数を増やしたり、組立工数を増やすことなく扁平型電池ないしはスペーサ同士をより確実かつ強固に拘束できる。
【0037】
(変形例1)図7の変形例1は、上記した係合部である片部25の形状を変更した一例である。この片部25Aは、図7(b)に示されるごとく片部26と対向している面を傾斜面25bに形成されている。傾斜面25bは、中間部20から離れるに従って次第に片部26の対向面との距離を大きくするテーパーに設定されている。このため、この締結構造では、締結部材2Aを各スペーサ3に装着した状態において、図7(a)から分かるように片部25が受け部35に対し傾斜面25bのうち最も下方にある中間部20に近い箇所が局所的に押圧することになる。この結果、この締結構造では、片部25が受け部35に押圧することにより片部26との間の挟持力を増大して、スペーサ同士をより一層強固に拘束できる。なお、他の例としては、片部26にも同様な傾斜面を形成したり、受け部35や36側に同様な傾斜面を形成することである。
【0038】
(変形例2)図8(a)の変形例2は、上記した受け部35,36の形状を変更した一例である。変形例2において、両側の受け部35aは、側面視で略L字形であり所定距離を保って対向している。両側の受け部36aは、側面視で逆L字形であり所定距離を保って対向している。そして、この締結構造は、各受け部35a,36aを上記図1〜図6に比べ単純な形状にしても、両側の片部25がスぺーサ3A,3Eに設けられた左右の受け部35aに対し内側よりそれぞれ嵌合するため、スペーサ同士の左右方向への微動を上記形態と同程度に規制できる。
【0039】
(変形例3)図8(b)の変形例3は、上記した片部25,26の一方と、それ対応する受け部35,36の一方を省略した一例である。変形例3において、両側の片部25及びそれら嵌合する受け部35は上記形態と同じ。上記形態の両側の片部26及びそれと嵌合する受け部35は省略されている。また、スペーサ3Eには、上記形態の受け部36に代えて張出部36bを形成している。そして、この締結構造は、片部25,26の一方及びそれと対応する受け部35,36の一方を省いて簡略化しても、各スペーサ3が受け部35に嵌合されている片部25と、片部25と対向している締結部材を構成している側部21との間に挟持されるため、部材数を増やしたり、組立工数を増やすことなく扁平型電池ないしはスペーサ同士を確実かつ強固に拘束できる。以上のように、本発明は、請求項で特定される構成を備えておればよく、細部は必要に応じて種々変更可能なものである。
【符号の説明】
【0040】
1A〜1D…扁平型電池(10は電極端子、11は外装材)
2A,2B…締結部材(20は中間部、21は側部、22は湾曲部、24は貫通孔)
3A〜3E…スペーサ(30,31は端部、34は貫通孔)
4…積層体
5…電池モジュール用セルユニット
25,26…片部(係合部)
25A…片部(係合部)
35,36…受け部(被係合部)
35a,36a…受け部(被係合部)
38,39…凹部(位置決め手段と係止手段を兼用)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の扁平型電池の一つ一つをスペーサにより上下から挟持して非接触状態に積層した積層体を、前記各スペーサを締結部材により拘束することにより一体化する電池モジュール用セルユニットの締結構造において、
前記締結部材は、縦断面略コ形状をなしているとともに、対向内面に設けられた係合部を有しており、前記各スペーサを対向内面の間に配置した状態で、前記各スペーサを前記係合部とその係合部と対向している箇所とで挟持して前記各スペーサの動きを規制することを特徴とする電池モジュール用セルユニットの締結構造。
【請求項2】
前記スペーサのうち、最上下段に配置されるスペーサに被係合部を設け、前記締結部材に前記各スペーサを挟み込むのと同時に、前記係合部が前記被係合部に係合して、前記締結部材が前記各スペーサを前記係合部と前記被係合部との係合状態で挟持することを特徴とする請求項1に記載の電池モジュール用セルユニットの締結構造。
【請求項3】
前記締結部材は、前記スペーサの外側を覆うように配置される絶縁カバーを兼ねていることを特徴とする請求項1又は2に記載の電池モジュール用セルユニットの締結構造。
【請求項4】
前記スペーサと前記絶縁カバーとに設けられて、前記絶縁カバーを前記各スペーサに組み付けるとき、互いに嵌合する位置決め手段を有していることを特徴とする請求項3に記載の電池モジュール用セルユニットの締結構造。
【請求項5】
複数の扁平型電池の一つ一つをスペーサにより上下から挟持して非接触状態に積層した積層体を、前記各スペーサを拘束することにより一体化する請求項1から4の何れかに記載の締結部材。
【請求項6】
長手方向の左右端に設けられて前記スペーサの外端面と燐接する両側面の一部を覆う湾曲部を有していることを特徴とする請求項5に記載の締結部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−79543(P2012−79543A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−223653(P2010−223653)
【出願日】平成22年10月1日(2010.10.1)
【出願人】(000135209)株式会社ニフコ (972)
【Fターム(参考)】