説明

電池モジュール

【課題】単電池間の温度差を均一にでき、長時間にわたって冷却能力に優れ、かつ、モジュールの組立てが容易で、電池の運転中にもセルの面圧管理に優れた電池モジュールを提供する。
【解決手段】複数の平板状のラミネートセル2を積層して収容する筐体10と、積層されるラミネートセル2間に設けられ、良熱伝導性を有する熱伝導板20と、熱伝導板20の対向する一対の両端部20cに設けられるバネ部30Aと、を備え、筐体10の側板13の内壁13sには、バネ部30Aが支持される溝部13Aが設けられ、この溝部13Aには、バネ部30Aが密着して接触するように構成したことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、負荷電圧や負荷容量の増大に対しては、複数の単電池(二次電池)を直列接続や並列接続、またはそれらを組み合わせた接続を行って組電池を構成し、それを筺体に収納したモジュール構造をとることが多い。
【0003】
このような電池のモジュール構造としては、複数の単電池を密接配置させて緊締し、ハードケースに収納する方法が一般的である。しかし、これだけでは、電池自体の発熱による熱が放散せず、ハードケース内に蓄積し、電池が高温となるため、短寿命になってしまう。
【0004】
近年では、急速充電や高率放電にて使用される用途が増大し、電池温度が高温になり易く、一層寿命を縮める原因となっている。特に、扁平形または平板形単電池の広い面同士が接するように単電池を積層して組電池を構成した場合、放熱経路がタブリード以外ほとんど無く、積層方向の中央部に位置する単電池の温度が最も高くなり、他に位置する単電池よりも早期に寿命に至り、結果的に電池モジュールとしての寿命が短くなってしまう。このため積層間の単電池温度差をできるだけ均一にするモジュール冷却方法が種々提案されている。
【0005】
例えば、特許文献1には、段積みされた各電池セル間に、断熱性を有する断熱部材または熱伝導性が良好な放熱部材からなる層間部材を挟み込むことが記載されている。また、特許文献2には、積層された複数の電池と、電池の積層方向に沿って延びると共に熱伝導性を有する外装部材と、断熱部、断熱部の両側の伝熱部に連結された外側当接面部を有するスペーサと、を備え、伝熱部が電池の表面に面的に当接し、外側当接面部が外装部材に面的に当接する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−196230号公報
【特許文献2】特開2010−218716号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、前記特許文献1には、扁平板状の電池間に熱伝導性を有する層間部材とモジュール容器を形成する熱伝達部材とが、例えばアルミダイキャストなどで一体成形された構成が記載されている。このような一体成形により、層間部材とモジュール容器間に接触熱抵抗が存在しないことから、熱伝導性が良好となり、電池平面方向の放熱性が良くなり、かつ、各電池の温度が均一化される。
【0008】
また、熱伝導性の層間部材は扁平型のような電池の場合、密着性だけでなく、適切な面圧が層間部材を通して、電池に常時かかるようにすることが、伝熱性能のみならず電池の性能・寿命の面からも望ましいとされている。すなわち、長寿命を目指した扁平型の電池パックでは長期間にわたり適切な面圧が積層方向に掛かっていることが伝熱的にも性能的にも望ましい。
【0009】
しかし、特許文献1のアルミダイキャストの容器(電池パック)を備えた電池モジュールにおいては、予め、容器内に層間部材が固定されて設けられているため、組立時に各電池を定められた層間部材間に挿入することが必要になる。この際、各電池は単に挿入されるだけでなく適切な面圧設定が行わなければならない。挿入と面圧調整作業を同時に行うことは組立作業上、極めて難しいという問題がある。仮に、挿入後に適切な面圧を掛けようにも、層間部材が容器と固定されている構成では、思うような面圧を電池の平板面に均一に掛けることは難しい。特にモジュールの大容量化に伴い、数多い電池を扱う場合には、作業の効率性あるいは組立時の面圧管理に課題が残る。
【0010】
特許文献2には、中心部に断熱材、外側が熱伝導材で覆われたスペーサを各電池間に介在させ、さらに積層方向と直交する方向のスペーサ両端にコ字型部材を溶接し、このコ字型部材を筺体の熱伝達部とネジ止めで固定させ、該コ字型部材とスペーサ間に電池を収納する構成が記載されている。これにより、スペーサ間に挟まれた単電池に均一な圧力がかけられ、かつ、電池に発生する熱を効率よく外部に放熱できる構成となっている。
【0011】
しかし、このような構成では、構造や組立方法が非常に複雑となる。すなわち、組立方法に関しては、まず、スペーサが該スペーサに取り付けられたコ字型部材を介して筺体を形成する底板と天板とにネジで仮止めされる。そのあと電池が各スペーサ間に挿入され、適切な面圧で積層方向に加圧される。なお、面圧を掛けたことによる積層方向の厚み変化分のずれを吸収させるために移動可能なように底板および天板のネジ用穴は長孔とし、面圧調整および位置調整後、該ネジを本締めする。
【0012】
また、熱伝導板と筺体(外装ケース)とに介在するコ字型部材は熱伝導板側とは溶接で、筺体側とはネジ止めで接続されるため、特にモジュールの大容量化に伴い、数多い電池を扱う場合には、熱伝導板の位置決めも含めて組立作業の複雑化や工数増加、あるいは部品点数の増加に伴うコストアップなどの課題が残る。
【0013】
また、特許文献1および特許文献2のいずれも、熱伝導板と筺体とは完全に固定されている構造となっている。しかし、リチウムイオン電池の中でもラミネート型電池は充放電中に厚み方向に伸縮する特性を持つ場合がある。また、ガス発生などによっても膨らむことがある。
【0014】
この場合、熱伝導板と筺体とが一体成形またはネジで固定されているということは、ラミネート型電池が挿入される熱伝導板間の隙間の間隔は常に一定であることを意味している。したがって、セル(単電池)が膨張したときには、厚み方向への余裕がないため、内部圧力が上昇してセル側面の熱圧着シール部が破れてガスや液が噴き出す恐れがある。逆にセルが収縮した時には、面圧が低下し、熱伝導板とセルとの接触熱抵抗が増加し、電池性能にも悪影響を及ぼす。
【0015】
これを防ぐには組立時の面圧管理も重要であるが、運転中にもセルの厚み方向の変化に対して熱伝導板が追従できるようにして、セル内部圧力の極端な上昇を防ぐことにより破損を防止することが望まれる。また、逆にセルが収縮した場合でも、セル平面と熱伝導板との接触性すなわち面圧を維持することが熱伝導の面から必要となる。
【0016】
本発明は、単電池間の温度差を均一にでき、長時間にわたって冷却能力に優れ、かつ、モジュールの組立てが容易で、電池の運転中にもセルの面圧管理に優れた電池モジュールを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、複数の平板状の二次電池を積層して収容する筐体と、積層される前記二次電池間に設けられ、良熱伝導性を有する熱伝導板と、前記熱伝導板の対向する一対または二対の両端部に設けられる良熱伝導性を有する弾性体と、を備え、前記筐体の内壁には、前記弾性体が支持される溝部が設けられ、前記溝部には、前記弾性体が密着して接触していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、単電池間の温度差を均一にでき、長時間にわたって冷却能力に優れ、かつ、モジュールの組立てが容易で、電池の運転中にもセルの面圧管理に優れた電池モジュール構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】第1実施形態に係る電池モジュールを示す縦断面図である。
【図2】第1実施形態に係る電池モジュールの筺体の構成要素を示す一部分解斜視図である。
【図3】第1実施形態に係る電池モジュールの筐体内に収容する際の単電池を積層した組電池の固定方法を示す側面図である。
【図4】第1実施形態に係る電池モジュールの熱伝導板およびバネ部を示す斜視図である。
【図5】第1実施形態に係る電池モジュールの筺体へのバネ部の支持構造を示す断面図である。
【図6】第1実施形態に係る電池モジュールの運転中の内部状態を示す縦断面図である。
【図7】第1実施形態に係る電池モジュールの筺体へのバネ部の支持構造の変形例を示す断面図である。
【図8】第2実施形態に係る電池モジュールを示す縦断面図である。
【図9】第3実施形態に係る電池モジュールの筺体へのバネ部の支持構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(第1実施形態)
図1に示すように、第1実施形態に係る電池モジュール1Aは、複数枚の四角平板状(平板型または扁平型)のラミネートセル2(2a〜2g)(二次電池)、熱伝導板20、バネ部30A(弾性体、バネ)、緩衝材40a,40b、これらラミネートセル2、熱伝導板20、バネ部30A、緩衝材40a,40bを収容する筺体10を含んで構成されている。また、本実施形態では、ラミネートセル2を7枚積層したものを例に挙げて説明するが、この枚数に限定されるものではなく、7枚より少ない構成であっても、7枚よりも多い構成であってもよい。
【0021】
ラミネートセル2は、例えば、リチウムイオン二次電池であり、複数のシート状正極と複数のシート状負極とがセパレータを介して積層された積層体が、平面視で矩形のラミネートフィルム内に電解液とともに収容、密閉されて構成されている(いずれも図示せず)。なお、ラミネートフィルムは、熱融着樹脂層を有する金属ラミネートフィルムにより構成され、その外周縁部が熱シールされることで密閉されている。
【0022】
また、図示していないが、各ラミネートセル2は、ラミネートフィルムの縁部から、正極端子部および負極端子部が引き出され、各ラミネートセル2が電気的に直列に接続されている。なお、前記した正極端子部および負極端子部は、図1の正面側(図示手前側)または背面側(図示奥側)、つまり後記するバネ部30Aが設けられていない縁部(辺部)から引き出されると、作業性やスペースの点において好ましい。
【0023】
筺体10は、四角箱型形状(図2参照)を呈する金属製のケースであり、積層したラミネートセル2の、上側を覆う天板11、下側を覆う底板12、側方を覆う側板13,13,14,14で構成されている。
【0024】
図2に示すように、側板13,13の内壁13sには、ラミネートセル2の積層方向(以下、Z方向と表記する)に直交するY方向(第2方向)に延びる溝部13Aが形成され、前記溝部13AがZ方向に間隔を置いて6本形成されている。この溝部13Aは、ラミネートセル2間の熱伝導板20と対向する位置に形成されている(図1参照)。
【0025】
なお、底板12と側板13との固定方法、天板11と側板13との固定方法は、ネジ止め、溶接などの方法を採用できる。ちなみに、底板12に側板13,13が固定され、緩衝材40bと後記する組電池2A(図3参照)とが収容され、緩衝材40aが積層され、天板11が側板13の上縁部13tにおいて接続、固定される。そして、天板11、底板12、側板13,13に対して、側板14(後ろ板:図示奥側)が接続、固定され、最後に側板14(正面前板:図示手前側)が接続、固定されることで、電池モジュール1A(図1参照)が組み立てられる。
【0026】
図3に示すように、各ラミネートセル2(2a〜2g)を筐体10に収容する場合には、ラミネートセル2と熱伝導板20とを積層してなる組電池2Aを、各ラミネートセル2がずれないよう固定するため、固定用冶具3,3を用いる。
【0027】
固定用冶具3は、組電池2Aの全周を覆うような絶縁バンドまたは絶縁テープで構成されている。この固定用治具3は、筺体10内に組み入れた後は取り外される。なお、このような固定用冶具3を用いないで電池モジュール1Aの組み立てを行うことも可能であるが、組立て作業性が悪くなる。
【0028】
図1に戻って、熱伝導板20は、例えば、高い熱伝導率(良熱伝導性)を有する銅やアルミニウム合金などの金属製の四角形状を呈するプレートで構成され、上下のラミネートセル2に対向する上面20aおよび下面20bを有し、ラミネートセル2(2a〜2g)間に挟まれている。また、熱伝導板20の上面20aおよび下面20bは、ラミネートセル2(2a〜2g)のZ方向に直交する面の全体が接触できる面積を有している。
【0029】
バネ部30Aは、各熱伝導板20の端部20cから側板13に向けて突出して形成され、その先部が側板13に形成された溝部13Aに挿入され、バネ部30Aが筐体10に支持されるように構成されている。
【0030】
図4に示すように、バネ部30Aは、Z方向(積層方向)に直交するX方向(第1方向)に伸縮し、かつ、Z方向(積層方向)に撓み変形する伸縮撓み部30aと、Z方向(積層方向)に平行な面を有する平板部30bとを有している。
【0031】
なお、本実施形態では、バネ部30A(伸縮撓み部30aおよび平板部30b)は、熱伝導板20と同様に、銅やアルミニウム合金などの高い熱伝導性を有する金属板により形成され、熱伝導板20と一体化された構造である。また、本実施形態では、バネ部30Aの板厚と熱伝導板20の板厚とが異なる構成の場合を例に挙げて説明しているが、これに限定されるものではなく、それぞれの板厚が同じであってもよい。なお、バネ部30Aの板厚は、このバネ部30Aに要求される適正な弾性力に応じて決定すればよい。
【0032】
伸縮撓み部30aは、Z方向に折り返しながらX方向に延びる波型形状を呈している。また、伸縮撓み部30aのY方向(奥行方向)の寸法は、熱伝導板20のY方向(奥行方向)の寸法dと同じに形成されている。
【0033】
平板部30bは、伸縮撓み部30aの先端に位置し、Z方向とY方向とで構成される四角形状の平面30b1を有し、伸縮撓み部30aと一体に形成されている。また、平板部30bのY方向(奥行方向)の寸法は、熱伝導板20および伸縮撓み部30aのY方向の寸法dと同じに形成されている。また、平板部30bのZ方向の寸法H1は、溝部13A内に挿入可能で、伸縮撓み部30aのZ方向の寸法H2よりも大きく形成されている。なお、寸法H2は、伸縮撓み部30aがZ方向に最大で撓んだとしても、伸縮撓み部30aが溝部13A内に接触しないように設定されている。
【0034】
緩衝材40a(図1参照)は、最上段に位置するラミネートセル2(2a)と天板11との間に挟まれるようにして設けられている。また、緩衝材40b(図1参照)も同様にして、最下段に位置するラミネートセル2(2g)と底板12との間に挟まれるようにして設けられている。なお、緩衝材40a,40bとしては、ウレタン、ゴムなどの弾性を有する材料が用いられる。
【0035】
なお、緩衝材40a,40bの厚さH3(図1参照)は、組電池2Aの各ラミネートセル2に掛かる面圧を適正な圧力になるように予め調整された厚さに設計されている。適正な圧力とは、運転中のラミネートセル2の厚さ方向(Z方向)の伸縮(膨張、収縮)に対して、前記熱伝導板20とラミネートセル2の密着性が良好に維持され、かつ、ラミネートセル2の内圧上昇によってラミネートフィルムの熱圧着のシール部分に破れが生じない程度にラミネートセル2の膨張に追従して内圧上昇を抑制できる面圧をいう。
【0036】
図5に示すように、熱伝導板20は、X方向の両端部20cにバネ部30Aを有している(一方は図示省略)。また、熱伝導板20は、ラミネートセル2a(2)とラミネートセル2b(2)との間に挟まれており、ラミネートセル2aの下面が熱伝導板20の上面20aと、またラミネートセル2bの上面が熱伝導板20の下面20bと、それぞれ密着して接している。
【0037】
一方、バネ部30Aは、ラミネートセル2からX方向にはみ出した熱伝導板20に一体に形成されている。さらに、バネ部30Aは、その先部が溝部13A内に挿入され、平板部30bの平面30b1(全面)が溝部13A内の垂直面13a(内壁面)と面同士で接触して当接している。
【0038】
このように、溝部13Aの垂直面13aに平板部30bが接しているが、垂直面13aにはバネ部30Aの弾性作用により平板部30bが有する平面30b1によって押し圧Pが作用するようになっている。この押し圧Pは、バネの弾性特性をもとにバネ部30A(伸縮撓み部30a)の長さLbによって定められ、電池モジュール1Aの組立時には図1に示す向かい合う二枚の側板13,13間の距離W(図2参照)で決められる。すなわち、電池モジュール1Aの組立時において、側板13,13の位置を定めることにより、前記バネ長さLbも決定される。
【0039】
また、溝部13Aを側板13の内壁13sに形成することにより、バネ部30Aを筐体10内においてしっかりと支持することが可能になる。また、溝部13Aは、組電池2Aを側板13に設置する際のガイドの役割も果たしている。すなわち、2枚の側板13,13に挟まれた組電池2A(図1および図3参照)に側面側から荷重をかける際、各熱伝導板20が位置ずれを起こして斜めになることなく水平性が保たれる。これにより、各熱伝導板20からバネ部30Aに均等な荷重が作用する。
【0040】
また、電池モジュール1Aの組み立て時には、組電池2Aのバネ部30Aが一方の側板13の溝部13Aに嵌め込まれる。他方の側板13にも同様にして溝部13Aにバネ部30Aの平板部30bを嵌め込んだ後、前記押し圧Pの調整のため設定された側板13間の距離W(図2参照)の位置において両側板13,13が底板12に固定される。
【0041】
また、バネ部30Aを有することにより、図3に示す固定用冶具3による組電池2Aの固定の仕方で溝部13Aと平板部30bとの間に位置ずれが生じたとしても、伸縮撓み部30aの撓み変形によりずれを吸収できるため、組電池2Aの筺体10内の取り付け作業が容易となる。
【0042】
ちなみに、天板11が固定される際には、前記固定用冶具3(図3参照)は不要となるので取り外される。そのあと、側板14(後ろ板)が取り付けられ、最後に側板14(正面前板)が取り付けられ、電池モジュール1Aの組み立てが完了する。
【0043】
次に、電池モジュール1Aにおけるラミネートセル2で発生する熱の伝熱経路について図1を参照して説明する。この伝熱経路は、第1伝達経路と第2伝達経路の大きく二つに分けられる。
【0044】
まず、第1伝熱経路について、例えば、ラミネートセル2c(2)で発生した熱は、熱伝導板20A(20),20B(20)とラミネートセル2cとの接触面S1,S2を通って熱伝導板20A,20Bに伝えられる。熱伝導板20A,20Bに伝わった熱は、それぞれ、バネ部30Aの伸縮撓み部30aから平板部30bに伝達される。そして、バネ部30Aの平板部30bと接触する筐体10の側板13に形成された溝部13Aの垂直面13a(内壁面)を介して、筐体10の側板13の外表面に熱が伝えられる。そして、側板13の外表面に伝えられた熱は、図示しない冷媒による強制対流伝熱や自然対流伝熱の冷却により放熱される。
【0045】
なお、本実施形態では、ラミネートセル2の熱がX方向に流れる場合、つまり熱伝導板20の対向する一対の両端部20c,20cにバネ部30A,30Aを有する場合を例に挙げて説明しているが、X方向と直交する方向(Y方向)にもラミネートセル2の熱を伝達する経路が追加して存在する構成、つまり熱伝導板20の対向する二対の両端部にバネ部30Aを有する場合においても、同様にしてラミネートセル2の熱が熱伝導板20、バネ部を介して筐体10の側板(後ろ板)14に伝達される。このときの作用、効果については、X方向の場合と同様である。
【0046】
第2伝熱経路は、ラミネートセル2の積層方向(Z方向)の経路であり、例えば、ラミネートセル2cで発生した熱が、積層された各ラミネートセル2および各熱伝導板20の厚み方向(Z方向)に伝わりながら筐体10の天板11および底板12に向かって流れる伝熱経路である。
【0047】
ところで、組電池2A全体の冷却効果を高めるだけであれば第1伝熱経路でも第2伝熱経路でも経路の熱伝導性を高める工夫をすればよいことになる。しかし、冷却効果と同時に各ラミネートセル2間の温度差をできるだけ均一に保つためには、第2伝熱経路よりも第1伝熱経路により熱が流れるようにすることが望ましい。
【0048】
一般的に、組電池2Aの温度分布は積層方向(Z方向)の中央に位置するラミネートセル2dの温度が最も高く、中央から積層方向に離れるにしたがって温度は低くなり、両端のラミネートセル2a,2gが最も低くなる傾向を示す。このため、側板13への第1伝熱経路よりも、第2伝熱経路に流れる伝熱量の割合が大きくなるほど、組電池2Aの温度分布(温度差)がより一層顕著になる。
【0049】
すなわち、ラミネートセル2の温度差は第2伝熱経路に流れる伝熱量の割合に比例して大きくなる。各ラミネートセル2の温度が異なると、特にラミネートセル2が電気的に直列に接続されている場合、長期的にみたときに充放電特性や劣化速度の差が大きくなり易くなる。その結果、例えば劣化速度の速いラミネートセル2dに電池モジュール1Aの全体が影響を受けることになり、長寿命化の面で不利となる。
【0050】
そこで、本実施形態では、ラミネートセル2間に熱伝導板20を備えることで、X方向(第1伝熱経路)の伝熱性に優れた構造を採用している。このような構造により、熱伝導板20と接している各ラミネートセル2自体の温度分布を均一化することが可能になる。しかし、最終的に熱を筐体10の側板13側へ効果的に伝えないとラミネートセル2の冷却効果としては小さくなり、温度が高くなってしまう。また、相対的に第2伝熱経路の伝熱量の割合が大きくなってしまい、ラミネートセル2間の温度差も低減できない。
【0051】
そこで、本実施形態では、さらに熱伝導板20にバネ部30Aを備えることで、このバネ部30Aの伸縮撓み部30aの弾性作用により、平板部30bが常に筐体10の溝部13Aの垂直面13aに対してある圧力(押し圧P)をもって密着させることができる。この結果、単に押し圧Pがゼロで接している場合に比べて、平板部30bと垂直面13aとの間の接触熱抵抗を小さくすることができる。したがって、第1伝熱経路において最も熱伝導で律速(ネック)となるバネ部30Aと垂直面13aとの間の熱抵抗の低減により、側板13への熱伝導性能を高めることが可能になる。
【0052】
また、第2伝熱経路に関しては、天板11とラミネートセル2aとの間に緩衝材40aが積層されている。同様に、底板12とラミネートセル2gの間にも緩衝材40bが積層されている。この緩衝材40a,40bは、機能の一つとして低い熱伝導性を有している。緩衝材40a,40bを前記した位置に積層することにより、天板11、底板12へ向かう熱抵抗が大きくなることから、伝熱量を第1伝熱経路からの伝熱量に比べて相対的に小さくすることが可能になる。
【0053】
以上のことから、本実施形態によれば、第1伝熱経路からの伝熱量の割合を第2伝熱経路からの伝熱量の割合よりも大きくすることができるため、各ラミネートセル2間の温度差をより均一化することが可能になる。なお、冷却効果および温度均一化効果をさらに高めるために、側板13の外表面にヒートシンク(図示せず)を備える筐体としてもよい。
【0054】
ところで、ラミネートセル2は、構造上、シート状正極、シート状負極、セパレータを収容して密閉する外装部として薄いアルミ板をラミネート樹脂で覆っただけのものである。このため、ラミネートセル2は、強度的に弱く、充放電の際にラミネートセル2が厚さ方向(Z方向)に膨張、収縮し、これに伴い外装部も変形する。
【0055】
図6は、第1実施形態に係る電池モジュールの運転中の内部状態を示す縦断面図である。すなわち、図6はラミネートセル2が厚さ方向(Z方向)に膨張した時の電池モジュール1Aの状態を示す。このように、各ラミネートセル2の厚さLsが増加すると、組電池2Aの全体の高さHも増加することになる。このとき、緩衝材40a,40bが厚さ方向(Z方向)に縮むことによって組電池2Aの伸び差(伸び代)を吸収することができ、各ラミネートセル2に対して適度な面圧が維持されることになる。
【0056】
仮に、この伸び差(伸び代)が吸収できないとすると、ラミネートセル2の内圧が上昇し、ラミネートセル2の熱圧着のシール部分が破れてしまう恐れがあるが、本実施形態では緩衝材40a,40bを設けることで、緩衝材40a,40bの弾性作用がこれを防ぐ働きをする。一方、ラミネートセル2が収縮するときには、緩衝材40a,40bが逆に膨張して、各ラミネートセル2に対して適度な面圧を維持することになる。
【0057】
また、例えば、ラミネートセル2が膨張するときには、当然に熱伝導板20と熱伝導板20との間隔も広がらなければならない。例えば、積層方向の中央に位置するラミネートセル2dの上側の熱伝導板20A(20)は、膨張前の位置よりΔd1だけ持ち上がるが、ラミネートセル2bでは、ラミネートセル2d,2cの各ラミネートセル2d,2cの伸び差(伸び代)が加算されるため、熱伝導板20C(20)ではΔd1よりも大きいΔd2だけ持ち上がる。ラミネートセル2の膨張によるこれらの熱伝導板20の位置ずれに対しては、例えば熱伝導板20Cのバネ部30Aは角度αだけZ方向の上側に曲げられる。
【0058】
一方、中央のラミネートセル2dの下側についても同様で、例えばラミネートセル2fの下側に位置する熱伝導板20E(20)ではバネ部30Aは角度αだけ下側に曲げられる。また、中央のラミネートセル2dを起点に、積層方向(Z方向)に向かってバネ部30A(伸縮撓み部30a)の撓み量も大きくなるため、曲がる角度も大きくなる。各バネ部30Aはこれらの変形に追従できる弾性特性を有するように構成されている。
【0059】
このように緩衝材40a,40bの伸縮性とバネ部30Aの弾性作用により、ラミネートセル2の厚さが変化しても各ラミネートセル2の積層方向に適切な面圧が維持されることになる。しかも、その間、バネ部30A(伸縮撓み部30a)のX方向への伸縮作用によって、側板13の垂直面13aへの押し圧P(図5参照)も維持されるため、ラミネートセル2から発生する熱が熱伝導板20、バネ部30Aを通って側版13への熱伝導性が良好に保たれることになる。
【0060】
以上説明したように、第1実施形態に係る電池モジュール1Aでは、ラミネートセル2間に設けられる良熱伝導性を有する熱伝導板20と、熱伝導板20の対向する一対の両端部20c,20cに設けられるバネ部30A(弾性体)と、を備え、筐体10の内壁13sにバネ部30Aを支持する溝部13Aが形成され、この溝部13Aにバネ部30Aが密着して接触する構成にしたものである。これによれば、各ラミネートセル2からの熱をそれぞれのラミネートセル2に接した熱伝導板20、そしてバネ部30A(弾性体)を介して筐体10の溝部13Aに伝達して放熱することができる。また、バネ部30Aの弾性作用により、バネ部30Aが常に溝部13Aに対してある圧力(押し圧P)をもって密着させることができるので、単に押し圧Pがゼロで接している場合に比べて、バネ部30Aと溝部13Aとの間の接触熱抵抗を小さくすることができ、熱伝導板20から溝部13Aへの伝熱経路において最も熱伝導で律速(ネック)となるバネ部30Aと溝部13Aとの間の熱抵抗を低減することができ、側板13への熱伝導性能を高めることが可能になる。さらに、バネ部30Aの弾性作用により、ラミネートセル2の厚さが変化しても各ラミネートセル2の積層方向に適切な面圧が維持されることになり、しかも、バネ部30AのX方向への伸縮作用によって、溝部13Aへの押し圧Pも維持されるため、ラミネートセル2から発生する熱が熱伝導板20、バネ部30Aを通って溝部13Aへの熱伝導性能が良好に保たれる。したがって、ラミネートセル2間の温度差を均一にでき、長時間にわたって冷却能力に優れ、かつ、電池モジュール1Aの運転中にもラミネートセル2の面圧管理に優れる。また、前記したように、電池モジュール1Aの組立てが容易である。
【0061】
また、第1実施形態では、バネ部30Aの先端部に平板部30bが形成され、平板部30bの全面(平面30b1)と溝部13Aの垂直面13a(内壁面)とが密着するように構成され、バネ部30Aと熱伝導板20とが良熱伝導性を有し、かつ、一体化された構造である。これによれば、平板部30bと垂直面13aとを面同士で接触させることにより、伝熱面積を広く確保できるので、ラミネートセル2の熱を、バネ部30Aから筐体10に伝達する際の熱伝導性能をさらに向上させることができる。また、バネ部30Aと熱伝導板20とを良熱伝導性を有する材料で一体化することにより、バネ部30Aと熱伝導板20との接触熱抵抗を無くすことができる(または低減できる)ことから、熱伝導性が良好となり、かつ、各ラミネートセル2間の温度差の均一化を向上できる。
【0062】
また、第1実施形態では、バネ部30Aがラミネートセル2の積層方向(Z方向)と直交する第1方向(X方向)に伸縮し、かつ、積層方向(Z方向)に撓むように構成され、平板部30bが積層方向に延びる面を有している。これによれば、各熱伝導板20が位置ずれを起こして斜めになることなく水平性が保たれ、各熱伝導板20からバネ部30Aに均等な荷重が作用するようにできる。また、平板部30bが積層方向(Z方向)に延びる面(平面30b1)を有することにより、第1方向(X方向)に伸縮するバネ部30Aによって、平板部30bと溝部13Aとを常に安定して密着させることができ、また、ラミネートセル2が膨張収縮してバネ部30Aが積層方向に撓んだとしても、平板部30bと溝部13Aとを確実に密着させることができる。
【0063】
また、第1実施形態では、溝部13Aが、筐体10においてラミネートセル2の積層方向に備わる4つの側面のうちの対向する2面に設けられ、かつ、熱伝導板20の数だけ積層方向と直交する第2方向(Y方向)に延びて形成されている。これによれば、バネ部30Aが溝部13Aによって支持されることにより、それぞれの熱伝導板20をしっかりと支持することが可能になる。
【0064】
また、第1実施形態では、平板部30bが、溝部13Aの積層方向に延びる垂直面13a(内壁面)と密着するように接している。これによれば、バネ部30Aの弾性力を安定して受けることができ、しかも平板部30bと垂直面13aとの密着性を高めることができる。
【0065】
図7は、第1実施形態に係る電池モジュールの筺体へのバネ部の支持構造の変形例を示す断面図である。
この変形例に係る電池モジュール1Aは、前記した溝部13Aの構造を変形したものである。なお、図7では、ひとつの熱伝導板20の一端側のバネ部30Aが挿入される溝部13Aのみを図示しているが、他端のバネ部が挿入される溝部、さらにその他の位置に配置される溝部についても同様に形成されているものとし、その説明を省略する。
【0066】
溝部13Aは、側板13の内壁13sに形成され、断面視略T字形状を呈し、バネ部30Aが挿入される溝13bと、平板部30bの一部(上端部および下端部)が挿入される溝13c,13cとで構成されている。
【0067】
溝13bは、平板部30bが当接する垂直面13b1(内壁面)と、伸縮撓み部30aの一部が配置される水平面13b2,13b3とを有している。
【0068】
溝13c,13cは、それぞれ溝13bの奥側(図示左端)に形成されている。一方(上側)の溝13cは、水平面13b2に上向きに凸となるように形成され、他方(下側)の溝13cは、水平面13b3に下向きに凸となるように形成されている。
【0069】
また、溝13bの垂直面13b1と、各溝13cの一方の側面を構成する垂直面13c1とは、同一平面となるようにZ方向に直線状に延びて形成されている。これにより、垂直面13b1,13c1,13c1(内壁面)には、バネ部30Aの平板部30bが面同士で接触するように構成されている。
【0070】
また、溝13c,13cには、押バネ部30cが設けられている。この押バネ部30cは、皿バネにより構成され、各溝13cの他方の側面13c2に設けられている。これにより、平板部30bが押バネ部30cの付勢力によって、平板部30bの先端の平面30b1が押圧され、垂直面13b1,13c1,13c1側に押し付けられている。なお、押バネ部30cは、皿バネに限定されるものではなく、コイルばね等の別の種類のバネ材であってもよい。
【0071】
このような変形例によれば、図5に示す構造に比べて、熱伝導板20が上下に移動し、それに伴いバネ部30Aが上下方向に撓んでも、押バネ部30c,30cによる押し圧効果により平板部30bが常に垂直面13b1,13c1,13c1に面同士で密着して接するため、接触熱抵抗を低くできる。この結果、ラミネートセル2の伸縮変化に対しても高い熱伝導性を維持でき、長期間にわたってラミネートセル2間の温度差を均一化でき、かつ、高い冷却能力を発揮することが可能になる。
【0072】
(第2実施形態)
図8は、第2実施形態に係る電池モジュールを示す縦断面図である。なお、第2実施形態については、第1実施形態に係る電池モジュール1Aと同様の構成および効果については同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0073】
電池モジュール1Bは、各熱伝導板20の一端(他端)のバネ部30B(伸縮撓み部)の群が一枚の平板状の平板部30tで一体化された構造である。すなわち、電池モジュール1Bは、積層されたラミネートセル2(2a〜2g)間に挿入されている各熱伝導板20のX方向の両端部20c,20cにバネ部30Bを備えている。X方向の一端側の各バネ部30Bは、積層方向(Z方向)の一端(上端)から他端(下端)まで延びる一枚の平板部30tに接続されている。同様に、X方向の他端側の各バネ部30Bも、平板部30tに接続されている。
【0074】
平板部30tは、アルミニウム合金や銅といった良好な熱伝導性を有する材料で形成されており、バネ部30Bと溶接などで一体化されている。また、平板部30tは、筐体10の側板13の内壁13sに設けられた溝部13Bに収容されるように構成されている。この平板部30tは、各バネ部30Bの弾性作用により、筐体10の側板13の垂直面13d(内壁面)に押し圧を与えられながら強く密着して接している。
【0075】
第2実施形態によれば、第1実施形態の電池モジュール1Aの構造と比べて、筐体10の側板13の内壁13sと接する平板部30tの面積が大きくなることから、伝熱面積を増加させることができ、X方向の熱伝導性を増すことができる。また、前記伝熱面積が増加することにより、平板部30tと側板13とをねじ止めなどで固定する方法も簡単に採用でき、バネ部30Bによる押し圧効果に加え、さらに接触抵抗を低減できることから伝熱性能が向上し、より一層の温度均一化および温度上昇を抑制できる。
【0076】
また、第2実施形態によれば、第1実施形態で説明したように、筐体10内へ組電池2Aをセッティングする際に複数の溝部13Aに合わせて組電池2Aを挿入する必要がなくなり、ひとつの溝部13Bに一枚の平板部30tを挿入するだけで済むので、組立て作業性も向上する。
【0077】
(第3実施形態)
図9は、第3実施形態に係る電池モジュールの筺体へのバネ部の支持構造を示す断面図である。なお、図9では、ひとつの熱伝導板21の一端のバネ部31C,32Cが挿入される溝部13Cのみを図示しているが、他端のバネ部が挿入される溝部、さらにその他の位置に配置される溝部についても同様に形成されているものとし、その説明を省略する。また、第1実施形態と同様の構成および効果については、重複する説明を省略する。
【0078】
電池モジュール1Cは、熱伝導板21、バネ部31C,32C、溝部13Cを含むものである。その他の構成については、第1実施形態と同様である。
【0079】
溝部13Cは、筐体10の側板13の内壁13sに形成され、溝部13C内に熱伝導板21の端部が挿入されるように構成されている。なお、本実施形態において、熱伝導板21の端部は、溝部13CのZ方向に平行な面を有する垂直面13c1に接触していない状態が図示されているが、熱伝導板21の上下動を妨げない範囲において熱伝導板21と溝部13Cとが接するようにしてもよい。
【0080】
バネ部31Cは、熱伝導板21と溝部13Cの上面(一方の側面)13c3との間に挿入され、バネ部32Cは、熱伝導板21と溝部13Cの下面(他方の側面)13c4との間に挿入されている。また、バネ部31C,32Cは、例えば銅やアルミニウム合金のような良好な熱伝導性を有する部材で形成されるとともに、ラミネートセル2の積層方向(Z方向)に伸縮する機能を有している。
【0081】
また、バネ部31C,32Cは、各端部30d,30eがそれぞれ平板形状を呈している。バネ部31Cは、一方の端部30dが熱伝導板21の上面20aと接し、他の端部30eが溝部13Cの上面13c3と接している。また、バネ部32Cは、一方の端部30dが熱伝導板20Cの下面20bと接し、他方の端部30eが溝部13Cの下面13c4と接している。
【0082】
これにより、バネ部31Cの積層方向の弾性作用によって押し圧を与えられながら、バネ部31Cが熱伝導板21の上面20aと溝部13Cの上面13c3とに強く密着して接触し、バネ部32Cの積層方向の弾性作用によって押し圧を与えながら、バネ部32Cが熱伝導板21の下面20bと溝部13Cの下面13c4に強く密着して接触している。
【0083】
なお、バネ部31C,32Cは、側板13と熱伝導板21から、物理的に独立していてもよいし、溝部13C内の上面13c3、下面13c4にそれぞれ固定されていてもよく、また熱伝導板21の両端部の上面20a、下面20bにそれぞれ固定されていてもよい。
【0084】
このような電池モジュール1Cでは、ラミネートセル2で発生した熱は熱伝導板21をX1方向に流れ、熱伝導板21の端部の上面20aおよび下面20bからバネ部31C,32Cに伝えられ、さらにそれぞれのバネ部31C,32Cの中を熱が流れ、溝部13Cの上面13c3および溝部13Cの下面13c4を通って側板13の外表面に流れる。
【0085】
第3実施形態によれば、熱伝導板21から筐体10の側板13に至る伝熱経路に存在するバネ部31C,32Cの両端部30d,30eの接触熱抵抗成分がバネによる押し圧の効果により低減されるため、高い熱伝導性を維持できる。
【0086】
また、第3実施形態によれば、前記したラミネートセル2の膨張、収縮に対しても、バネ部31C,32Cの弾性作用によりラミネートセル2に接する熱伝導板21もラミネートセル2の伸縮方向に動くことができる。したがって、各ラミネートセル2の積層方向(Z方向)に適切な面圧が維持されることになる。
【0087】
なお、組電池2Aの中央のラミネートセル2から積層方向に向うに従って、熱伝導板21の位置ずれの変化量が大きくなるため、熱伝導板21から溝部13Cの上面13c3までの高さH4およびバネ部31Cの伸縮長さを前記中央から積層方向に向かうにしたがって大きくする構成にしてもよい。
【0088】
ちなみに、第3実施形態は、第1実施形態の電池モジュール1Aの構造と異なり、バネ部31C,32Cの両端部30d,30eの熱伝導板21および溝部13Cの上面13c3および下面13c4との接触面における押し圧方向とラミネートセル2の伸縮方向が同じ方向であるため、ラミネートセル2の伸縮時に、熱伝導板21が動いても、前記接触面がずれたり、バネ部31C,32Cの端部30d,30eが浮き上がったりすることがなく、接触面積が変化しないため、簡便にてより良好な熱伝導性が維持される。
【0089】
なお、前記した熱伝導板21に設けられるバネ部31C,32Cの配置は、前記した各実施形態に見られるような筐体10の側板13,13の2面に溝部13A,13B,13Cを設けた場合を例に挙げて説明したが、これに限定されるものではなく、側板13,13,14,14の4面に溝部を設けることも可能である。その結果、熱伝導板21から側板13への伝熱経路が増えることにより、さらに伝熱性が増し、温度均一化効果もさらに高まる。
【0090】
また、温度均一化、冷却効果以外に、前記した各実施形態についての共通の効果としては、電池モジュール1A,1B,1Cの構造にバネ部30A,30B,31C,32Cを取り入れて、バネ部30A,30B,31C,32Cによって各ラミネートセル2が支持されているので、電池モジュール1A,1B,1Cに衝撃が加えられたときでも、その衝撃力を緩和できる。この結果、電池モジュール1A,1B,1Cの信頼性も向上する。
【0091】
また、最上段に位置するラミネートセル2a(2)の上面と緩衝材40aとの間、および、最下段に位置するラミネートセル2g(2)の下面と緩衝材40bとの間に、第1実施形態での熱伝導板20、バネ部30A、溝部13Aからなる構成を追加してもよい(第2実施形態、第3実施形態を適用してもよい)。これにより、すべてのラミネートセル2(2a〜2g)に対して、上下から熱伝導板20で挟むことができ、全ラミネートセル2間の温度差の均一化をさらに向上させることができる。
【0092】
また、本実施形態では、バネ部30A,30B,30Cについて、金属板を波型に折り曲げたものを例に挙げて説明したが、例えば、複数のコイルバネをY方向に配置し、コイルバネの先端(一端)の溝部13Aの垂直面13aと対向する部分に積層方向に平行な面を有する平板部を取り付けた構成であってもよい。
【0093】
なお、本発明に係る実施形態は、単電池としてラミネートセルを対象とした場合を例に挙げて説明したが、ラミネートセルに限定されるものではなく、薄い金属缶内に電極等が収容された単電池にも適用可能であり、本実施形態と同様な作用、効果を有するものである。さらに、本発明は前記した各実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、前記した実施形態は本発明をわかり易く説明するために、詳細に説明したものであり、必ずしも説明したすべての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることも可能である。また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。
【符号の説明】
【0094】
1A,1B,1C 電池モジュール
2(2a,2b,2c,2d,2e,2f,2g) ラミネートセル(二次電池)
10 筐体
13,14 側板
13A,13B,13C 溝部
13a,13b1,13c1,13d 垂直面(内壁面)
13c3 上面
13c4 下面
13s 内壁
20,21 熱伝導板
20a 上面
20b 下面
30A,30B,31C,32C バネ部(弾性体、ばね)
30a 伸縮撓み部
30b,30t 平板部
40a,40b 緩衝材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の平板状の二次電池を積層して収容する筐体と、
積層される前記二次電池間に設けられ、良熱伝導性を有する熱伝導板と、
前記熱伝導板の対向する一対または二対の両端部に設けられる良熱伝導性を有する弾性体と、を備え、
前記筐体の内壁には、前記弾性体が支持される溝部が設けられ、
前記溝部には、前記弾性体が密着して接触していることを特徴とする電池モジュール。
【請求項2】
前記弾性体は、先端部に平板部を有するバネであり、
前記バネが前記熱伝導板の両端部に位置し、前記平板部の全面と前記溝部の内壁面とが密着して接触するように構成され、
前記バネと前記熱伝導板とが良熱伝導性を有し、かつ、一体化された構造であることを特徴とする請求項1に記載の電池モジュール。
【請求項3】
前記バネは、前記二次電池の積層方向と直交する第1方向に伸縮し、かつ、前記積層方向に撓むように構成され、
前記平板部は、前記積層方向に延びる面を有していることを特徴とする請求項2に記載の電池モジュール。
【請求項4】
前記溝部は、前記筐体において前記二次電池の積層方向に備わる4つの側板のうちの対向する2面、または4面の内壁に設けられ、かつ、前記熱伝導板の数だけ前記積層方向と直交する第2方向、または前記第2方向および前記第1方向に延びて形成されていることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の電池モジュール。
【請求項5】
前記平板部は、前記溝部の前記積層方向に延びる内壁面と密着するように接していることを特徴とする請求項4に記載の電池モジュール。
【請求項6】
前記弾性体は、前記積層方向に伸縮するバネであり、
前記熱伝導板の両端部は、前記溝部の内部に挿入され、
前記バネが、前記熱伝導板の両端部近傍において、前記熱伝導板の前記積層方向に対峙する前記溝部の上面および下面との間にそれぞれ挿入されていることを特徴とする請求項1に記載の電池モジュール。
【請求項7】
前記バネの両先端部がそれぞれ平板形状を有し、
一方の先端部が前記熱伝導板の前記上面および下面と、他方の先端部が前記溝部内に形成される前記積層方向に直交する上面および下面とそれぞれ密着して接していることを特徴とする請求項6に記載の電池モジュール。
【請求項8】
前記平板部は、前記二次電池の前記積層方向の一端から他端まで延びる一枚の平板形状であり、
前記バネが前記熱伝導板に対応する数だけ前記平板部に接続されていることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の電池モジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−248374(P2012−248374A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−118514(P2011−118514)
【出願日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】