説明

電池制御装置

【課題】複数の電池を保温する。
【解決手段】電池制御装置1は、構内電力網2に接続された複数の充放電器3を備える。充放電器3には、電動車両11の電池12が充電のために接続される。制御装置7は、電池12の温度を評価する温度評価部21を備える。温度評価部21は、保温が必要な保温電池を決定する。制御装置7は、電池12の充放電を制御する充放電制御部22を備える。充放電制御部22は、放電が可能な保温電池から放電させるように充放電器3を制御する。さらに、充放電制御部22は、充電が可能な保温電池へ充電するように充放電器3を制御する。この結果、保温電池の間の充電と放電とで、保温のために必要な保温電流を流し、自己発熱によって保温電池を保温することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池の温度を制御する電池制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、電池の蓄電量が過剰に低い状態を回避するために、電池を充電するシステムを開示している。さらに、この文献は、複数の電池の間において、放電と充電とを実行する技術を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−135727号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来技術の構成では、電池の温度を考慮することなく、電池の蓄電量が目標値になるように電池の充電と放電とが実施される。ところが、一般的に電池の放電能力、充電能力は、温度に依存する特性を有している。例えば、低温において放電能力が低下する電池が知られている。このような電池は、低温環境下に置かれることによって十分な能力を発揮できなくなるおそれがあった。
【0005】
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、電池の温度低下による性能低下を抑制することができる電池制御装置を提供することである。
【0006】
本発明の他の目的は、複数の電池の間の放電と充電とによって、複数の電池の温度低下を抑制することができる電池制御装置を提供することである。
【0007】
本発明のさらに他の目的は、車両に搭載された電池の低温に起因する性能低下を抑制することができる車両用の電池制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上記目的を達成するために以下の技術的手段を採用する。
【0009】
請求項1に記載の発明は、電池(12)の温度を評価し、保温が必要か否かを判定する温度評価部(21)と、電池の保温が必要なとき、電池から放電させ、または電池に充電することにより電池に自己発熱させる充放電制御部(22)とを備えることを特徴とする。
【0010】
この構成によると、電池の放電または充電によって、電池に電流を流すことができる。電池は、通電されることによって自己発熱する。よって、電池の温度低下が抑制される。この結果、電池の温度低下に起因する性能の低下を抑制することができる。
【0011】
請求項2に記載の発明は、温度評価部(21)は、複数の電池の温度を評価し、保温が必要な保温電池を決定し、充放電制御部(22)は、保温電池と他の電池との間で充放電させることにより保温電池に自己発熱させることを特徴とする。この構成によると、保温が必要な保温電池と、他の電池との間の放電と充電とによって、保温電池に電流を流し、自己発熱させることができる。
【0012】
請求項3に記載の発明は、充放電制御部(22)は、保温電池を放電電池と充電電池との一方とし、他の電池を放電電池と充電電池との他方として、放電電池から放電させた電力を充電電池に充電することを特徴とする。この構成によると、保温電池からの放電と他の電池への充電とにより、または他の電池からの放電と保温電池への充電とにより、保温電池に電流を流し、自己発熱させることができる。
【0013】
請求項4に記載の発明は、温度評価部(21)は、複数の保温電池を決定し、充放電制御部(22)は、保温電池の少なくともひとつを放電電池とし、複数の保温電池の他の少なくともひとつを充電電池として、放電電池から放電させた電力を充電電池に充電することを特徴とする。この構成によると、複数の保温電池の間の放電と充電とによって、それら複数の保温電池に電流を流し、自己発熱させることができる。
【0014】
請求項5に記載の発明は、充放電制御部(22)は、蓄電量(SOC)が所定値(SOCm、SOCe)を上回る電池を放電電池として決定する放電電池決定部(162、163、166、168)と、蓄電量(SOC)が所定値(SOCm、SOCe)を下回る電池を充電電池として決定する充電電池決定部(162、164、167、169)とを備えることを特徴とする。この構成によると、電池の蓄電量に基づいて放電電池と充電電池とが決定される。よって、電池を保温するときに、蓄電量の過剰な低下が抑制される。
【0015】
請求項6に記載の発明は、放電電池の蓄電量(SOC)が所定値(SOCe)を下回ると放電電池に充電する再充電部(175、176)を備えることを特徴とする。この構成によると、放電電池の蓄電量が保温のために過剰に低下することが回避される。
【0016】
請求項7に記載の発明は、放電電池の蓄電量の減少を補償する利益を放電電池の利用者に与える補償部(177)を備えることを特徴とする。この構成によると、放電電池の蓄電量が減少しても、蓄電量の減少に代替する補償を放電電池の利用者に付与することができる。
【0017】
請求項8に記載の発明は、さらに、電池(12)が接続される構内電力網(2)と、構内電力網と上位電力網(6)とを接続する系統連系器(5)とを備え、充放電制御部(22)は、構内電力網だけで放電または充電が可能か否かを判定する需給判定部(172)と、構内電力網だけで放電または充電が不可能なとき、上位電力網から構内電力網へ受電するように、または構内電力網から上位電力網へ送電するように系統連系器(5)を制御する連系制御部(173、174)とを備えることを特徴とする。この構成によると、構内電力網における電力需給で保温のための放電または充電が可能なときは、構内電力網だけで電池が保温される。一方、構内電力網の電力需給では保温が不可能なときには、上位電力網からの受電、または上位電力網への送電によって電池の保温のための放電または充電が可能となる。
【0018】
請求項9に記載の発明は、さらに、電池(12)の利用前に、電池から放電させ、または電池に充電することにより電池を暖機する暖機制御部(258)を備えることを特徴とする。この構成によると、保温制御に加えて、さらに暖機制御を提供することができる。
【0019】
なお、特許請求の範囲および上記手段の項に記載した括弧内の符号は、ひとつの態様として後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものであって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明を適用した第1実施形態に係る電池制御装置を示すブロック図である。
【図2】第1実施形態の制御を示すフローチャートである。
【図3】第1実施形態の制御を示すフローチャートである。
【図4】第1実施形態の制御を示すフローチャートである。
【図5】第1実施形態の作動状態の一例を示すブロック図である。
【図6】第1実施形態の作動状態の一例を示すブロック図である。
【図7】第1実施形態の作動状態の一例を示すブロック図である。
【図8】本発明を適用した第2実施形態の制御を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、図面を参照しながら本発明を実施するための複数の形態を説明する。各形態において先行する形態で説明した事項に対応する部分には同一の参照符号を付して重複する説明を省略する場合がある。各形態において構成の一部のみを説明している場合は、構成の他の部分については先行して説明した他の形態を適用することができる。また、後続の実施形態においては、先行する実施形態で説明した事項に対応する部分に百以上の位だけが異なる参照符号を付することにより対応関係を示し、重複する説明を省略する場合がある。各実施形態で具体的に組合せが可能であることを明示している部分同士の組合せばかりではなく、特に組合せに支障が生じなければ、明示してなくとも実施形態同士を部分的に組み合せることも可能である。
【0022】
(第1実施形態)
図1に基づいて本発明を適用した第1実施形態に係る電池制御装置1を説明する。電池制御装置1は、複数の車両のそれぞれに搭載された複数の電池への充電、およびそれら複数の電池からの放電を制御する。電池制御装置1は、空港施設、大型商業施設などの大規模施設に付随する駐車場に設けられた充電システムである。
【0023】
電池制御装置1は、施設に設けられた構内電力網(LCPG)2を備える。構内電力網2は、施設内に敷設された交流電力網によって提供される。施設の駐車場には、複数の駐車ロットと、それら複数の駐車ロットのそれぞれに設けられた充放電器(CHDC)3とが設けられている。複数の充放電器3のそれぞれは、構内電力網2に接続されている。充放電器3は、構内電力網2からの受電と、構内電力網2への送電との両方が可能である。構内電力網2には、施設に属する電気機器(LCLD)4が接続されている。電気機器4は、発電機、および/または負荷である。電気機器4として、例えば、太陽光発電パネル、燃料電池などの小規模発電施設、および構内の照明機器、空調機器などの負荷を含むことができる。
【0024】
構内電力網2は、系統連系器(PWCD)5を介して上位電力網(WAPG)6に接続されている。上位電力網6は、例えば、地域の電力供給会社によって提供される商用の広域電力網である。系統連系器5は、上位電力網6から構内電力網2への受電と、構内電力網2から上位電力網6への送電との両方が可能である。
【0025】
電池制御装置1は、複数の充放電器3と系統連系器5とを制御する制御装置(CNTC)7を備える。制御装置7は、施設内に設置された情報センターに設置することができる。制御装置7は、構内電力網2に接続された機器の間における電力需給が平衡するように系統連系器5を制御する。制御装置7は、後述する電池12の蓄電量を調節するために、複数の充放電器3を制御する。さらに、制御装置7は、電池12の温度を保温するために、充放電器3を制御する。
【0026】
制御装置7は、コンピュータによって読み取り可能な記憶媒体を備えるマイクロコンピュータによって提供される。記憶媒体は、コンピュータによって読み取り可能なプログラムを非一時的に格納している。記憶媒体は、半導体メモリまたは磁気ディスクによって提供されうる。プログラムは、制御装置7によって実行されることによって、制御装置7をこの明細書に記載される装置として機能させ、この明細書に記載される制御方法を実行するように制御装置7を機能させる。制御装置7が提供する手段は、所定の機能を達成する機能的ブロック、またはモジュールとも呼ぶことができる。
【0027】
複数の駐車ロットには、車両が駐車可能である。駐車ロットには、電動車両11が駐車可能である。電動車両11は、電池12を搭載している。電動車両11は、電池12を動力源として走行可能な車両である。電動車両11には、電池12に加えて内燃機関を搭載したいわゆるハイブリッド車両と、電池12のみによって走行するいわゆる電気自動車とが含まれる。
【0028】
電池12は、充電と放電とが可能な二次電池である。電池12は、例えば、リチウムイオン電池によって提供することができる。電池12は、温度に応じて放電量が変化する温度依存特性を有している。電池12は、例えばマイナス20°Cを下回る低温下においては、放電量が顕著に低下する。電池12の温度依存特性は、寒冷地での冬期において電動車両11の利用を妨げるか、または電動車両11の性能を低下させることがある。
【0029】
制御装置7は、電池12の温度を評価するための温度評価部(TMPM)21を備える。温度評価部21は、電池12の温度が、所定の下限温度を下回るか否かを判定する。温度評価部21は、複数の電池12から、保温が必要な電池12を選び出す。保温が必要な電池12は、保温電池とも呼ばれる。温度評価部21は、電池12に設けられた温度センサによって電池温度を検出するように構成することができる。また、温度評価部21は、電池12が置かれる環境情報に基づいて電池温度を推定するように構成することができる。例えば、電池温度は、外気の温度が低くなるほど、低下する。また、電池温度は、電動車両11が駐車されてからの駐車時間が長くなるほど、外気温度に向かって減少する。このような電池温度の特性に基づいて、温度評価部21は、複数の電池12それぞれの電池温度を推定する。温度評価部21は、電池12の温度を評価し、保温が必要か否かを判定する。温度評価部21は、複数の電池12の温度を評価し、保温が必要な保温電池を決定する。さらに、温度評価部21は、複数の保温電池を決定することがある。
【0030】
制御装置7は、温度評価部21からの指令に応じて電池12の充電および/または放電を制御する充放電制御部(CDCM)22を備える。充放電制御部22は、温度評価部21によって特定された保温電池に電流が流れるように充放電器3を制御する。充放電制御部22は、自己発熱によって温度低下を阻止できる充電電流または放電電流が保温電池に流れるように充放電器3を制御する。充放電制御部22は、自己発熱によって保温電池の温度が下限温度を上回るように維持できる充電電流または放電電流を保温電池に流すように充放電器3を制御する。保温電池を保温するために流される電流は保温電流とも呼ばれる。
【0031】
充放電制御部22は、施設内、すなわち構内電力網2に属する機器の間だけで、保温電流を通電可能か否かを検討する。このとき、第1に、複数の電池12の間での放電と充電とによって保温電流を流すことが可能か否かを検討する。これが可能である場合、充放電制御部22は、そのように充放電器3を制御する。次に、電気機器4を含めた施設内の機器だけで、保温電流を流すことが可能か否かを検討する。これが可能である場合、充放電制御部22は、そのように充放電器3を制御する。施設内だけで保温電流を流せない場合、充放電制御部22は、上位電力網6からの受電または上位電力網6への送電を併用して、保温電流を流すように充放電器3と系統連系器5とを制御する。
【0032】
充放電制御部22は、電池12の保温が必要なとき、電池12から放電させ、または電池12に充電することにより電池12に自己発熱させる。充放電制御部22は、保温電池と他の電池との間で充放電させることにより保温電池に自己発熱させる。充放電制御部22は、保温電池を放電電池と充電電池との一方とし、他の電池を放電電池と充電電池との他方として、放電電池から放電させた電力を充電電池に充電する。充放電制御部22は、保温電池の少なくともひとつを放電電池とし、複数の保温電池の他の少なくともひとつを充電電池として、放電電池から放電させた電力を充電電池に充電することがある。
【0033】
図2、図3、および図4に基づいて、制御装置7の制御を詳細に説明する。図2において、制御装置7は、電池制御処理150を実行する。ステップ151では、充放電器3に接続された電池12を制御するために必要な多数の情報が入力される。情報には、季節、外気温度、天候、電池12の蓄電量SOC、電池に設けられた温度センサの検出温度、電池12の容量、電動車両11の出発予定時刻、電動車両11の目的地などを含むことができる。
【0034】
ステップ152では、充放電器3に接続された電池12への通常の充電が実行される。ここでは、電池12が満充電状態、または所定の高位充電状態になるように充放電器3が制御される。この実施形態では、後述する保温制御を実行するために、電池12は、所定の高位充電状態に充電される。
【0035】
ステップ153では、電池12を保温するための保温制御が実行される。保温制御は、冬期など、電池12の温度が所定の下限温度を下回るおそれがあるときに実行することができる。保温制御では、保温電池に保温電流が流される。
【0036】
ステップ154では、電池温度を評価する。ここでは、電池12の現在の温度、電池の温度の低下傾向などに基づいて、保温が必要な電池12を決定する。例えば、現在の電池温度が、所定の下限温度を下回っている電池12を保温電池として決定する。ステップ155では、保温電池があるか否かを判定する。保温電池が無い場合、以下の処理をスキップする。保温電池がある場合、ステップ156へ進む。
【0037】
ステップ156では、複数の電池12から、充電される電池と、放電される電池とを決定する。ここでは、まず、複数の保温電池がある場合、それらを充電電池と放電電池とに分類する。複数の保温電池の間において充電と放電との需給が平衡しない場合、他の電池12が充電電池および/または放電電池に追加される。次に、保温電池として選択されていない他の電池12から、充電可能な電池、および/または放電可能な電池を選び出し、それらを充電電池および/または放電電池に追加する。これにより、構内電力網2の中で充電と放電との需給平衡が図られる。この処理は、構内電力網2に接続された複数の電池12から、保温電池に保温電流を流すために利用可能な電池12を選び出す処理でもある。
【0038】
ステップ157では、充電電池に充電し、放電電池から放電させるように複数の充放電器3が制御される。このとき、すべての保温電池は、充電電池または放電電池に分類されているから、保温電池には保温電流が流される。保温電流は、保温電池内において自己発熱を生じさせ、保温電池の温度低下を阻止する。さらに、保温電流は、保温電池の温度を上昇させる。この結果、保温電池の温度が下限温度を下回ることが回避される。
【0039】
温度が十分に上昇した保温電池は、ステップ154において保温電池から除外される。この結果、保温電流の通電は遮断される。やがて、再び電池温度が低下すると、その電池12は再び保温電池として決定され、保温電流が通電される。この結果、複数の電池12の温度が下限温度を上回るように保温される。
【0040】
図3において、ステップ156では、ステップ161−169が実行される。ステップ161では、保温電池が充電電池と放電電池とに分類される。ステップ162では、保温電池が放電可能か否かを判定する。ここでは、保温電池の蓄電量SOCが所定の閾値SOCmを上回るか否かを判定する。閾値SOCmは、電池12が保持すべき最低限の蓄電量とすることができる。蓄電量SOCが閾値SOCmを上回る場合(SOC>SOCm)、その保温電池は、放電によって保温電流を流すことができると判定できる。一方、蓄電量SOCが閾値SOCm以下の場合(SOC≦SOCm)、その保温電池は、充電によって保温電流を流す必要があると判定できる。ステップ163では、保温電池を放電電池に決定する。ステップ164では、保温電池を充電電池に決定する。ステップ161の処理は、すべての保温電池に対して繰り返して実行される。
【0041】
ステップ165では、すべての充電電池に充電可能な合計の充電電力CGと、すべての放電電池から放電可能な合計の放電電力DGとを比較する。充電電力CGと放電電力DGとがほぼ等しい場合(CG=DG)、ステップ156を終了する。充電電力CGが放電電力DGを上回る場合(CG>DG)、ステップ166へ進む。充電電力CGが放電電力DGを下回る場合(CG<DG)、ステップ167へ進む。
【0042】
ステップ166では、保温電池以外の電池12に、蓄電量SOCに余裕がある電池12があるか否かを判定する。ここでは、保温電池以外の電池12に関して、その蓄電量SOCが、必要蓄電量SOCeより十分に多いか否かを判定する。ここでは、余裕量SCを用いることができる。蓄電量SOCに余裕がない場合(SOC≦SOCe+SC)、ステップ156を終了する。蓄電量SOCに余裕がある場合(SOC>SOCe+SC)、ステップ168へ進む。ステップ168では、この蓄電量SOCに余裕がある電池12を放電電池として追加する。この後、ステップ165に戻る。したがって、充電電力CGが放電電力DGと平衡するまで、放電電池が追加される。
【0043】
ステップ167では、保温電池以外の電池12に、蓄電量SOCが不足している電池12があるか否かを判定する。ここでは、保温電池以外の電池12に関して、その蓄電量SOCが、必要蓄電量SOCeより大幅に少ないか否かを判定する。ここでは、余裕量SCを用いることができる。蓄電量SOCが不足していない場合(SOC≧SOCe−SC)、ステップ156を終了する。蓄電量SOCが大幅に不足している場合(SOC<SOCe−SC)、ステップ169へ進む。ステップ169では、この蓄電量SOCが大幅に不足の電池12を充電電池として追加する。この後、ステップ165に戻る。したがって、充電電力CGが放電電力DGと平衡するまで、充電電池が追加される。
【0044】
ステップ161−169の処理により、複数の電池12の中だけで、保温電池に保温電流を流すための充電電池と放電電池とが決定される。この実施形態によると、少なくともひとつの保温電池が決定される。この保温電池は、放電電池および充電電池の一方とされる。さらに、放電電池および充電電池の他方として利用可能な他の電池が決定される。この他の電池は、保温電池である場合と、保温が必要ない電池である場合とがある。ステップ162、163、166、168は、蓄電量SOCが所定値SOCm、SOCeを上回る電池12を放電電池として決定する放電電池決定部を提供する。ステップ162、164、167、169は、蓄電量SOCが所定値SOCm、SOCeを下回る電池を充電電池として決定する充電電池決定部を提供する。この構成によると、電池の蓄電量に基づいて放電電池と充電電池とが決定される。よって、電池を保温するときに、蓄電量の過剰な低下が抑制される。
【0045】
図4において、ステップ157では、ステップ171−177が実行される。ステップ171では、ひとつまたは複数の電池12において充放電が実行される。ここでは、ステップ156で決定された構内電力網2から受電し、充電電池へ充電するように充放電器3が制御される。また、ステップ156で決定された放電電池から放電するように充放電器3が制御される。ステップ156で決定された充電電池へ充電するように充放電器3が制御される。
【0046】
ステップ172では、構内電力網2に接続された機器における電力需給が平衡しているか否かを判定する。ここでは、構内電力網2における電力供給量PWSPと、構内電力網2における電力消費量PWCSとを対比する。電力供給量PWSPには、放電電池からの放電電力が含まれている。電力供給量PWSPには、電気機器4から供給される電力を含むことができる。電力消費量PWCSには充電電池への充電量が含まれている。電力消費量PWCSには、電気機器4が消費する電力を含むことができる。
【0047】
構内において電力供給量PWSPと電力消費量PWCSとがほぼ等しい場合(PWSP=PWCS)、ステップ175へ進む。この場合、構内の機器3、4、12において電力需給が平衡している。このとき、構内の機器3、4、12だけによって保温電池に保温電流を流すことができる。
【0048】
電力供給量PWSPが電力消費量PWCSを上回る場合(PWSP>PWCS)、ステップ173へ進む。ステップ173では、上位電力網6へ送電する。電力供給量PWSPが電力消費量PWCSを下回る場合(PWSP<PWCS)、ステップ174へ進む。ステップ174では、上位電力網6から受電する。これらの場合、上位電力網6も含めた全体のシステムによって保温電池に保温電流を流すことができる。ステップ172は、構内電力網2だけで放電または充電が可能か否かを判定する需給判定部を提供する。ステップ173およびステップ174は、構内電力網2だけで放電または充電が不可能なとき、上位電力網6から構内電力網2へ受電するように、または構内電力網2から上位電力網6へ送電するように系統連系器5を制御する連系制御部を提供する。
【0049】
ステップ175では、放電電池に必要蓄電量SOCeが残存しているか否かを判定する。放電電池の蓄電量SOCが必要蓄電量SOCe以上の場合(SOC≧SOCe)、ステップ176をスキップしてステップ177へ進む。放電電池の蓄電量SOCが必要蓄電量SOCeを下回る場合(SOC<SOCe)、ステップ176へ進む。必要蓄電量SOCeは、予め設定された固定値とすることができる。例えば、電動車両11に必要な一般的な蓄電量とすることができる。また、必要蓄電量SOCeは、放電電池が搭載された電動車両11の走行予定情報に基づいて算出することができる。例えば、電動車両11の目的地に基づいて、目的地までの走行距離を実現するための蓄電量とすることができる。ステップ176では、放電電池を再充電する。ステップ176の再充電は、放電電池の蓄電量SOCが必要蓄電量SOCeを上回るように実行することができる。ステップ175およびステップ176は、放電電池の蓄電量SOCが所定値SOCeを下回ると放電電池に充電する再充電部を提供する。これにより、放電電池の蓄電量が保温のために過剰に低下することが回避される。
【0050】
ステップ177では、保温制御において蓄電量SOCが減少した放電電池を搭載している電動車両に対して、減少した蓄電量に応じて特典を付与する。例えば、駐車料金の値引きなどの特典が付与される。付与された特典は、電動車両の利用者によって行使される。ステップ177は、放電電池の蓄電量の減少を補償する利益を放電電池の利用者に与える補償部を提供する。これにより、放電電池の蓄電量が減少しても、蓄電量の減少に代替する補償を放電電池の利用者に付与することができる。ステップ175−ステップ177の処理は、すべての放電電池に対して実行される。
【0051】
図5は、電池12a、12bが保温電池として決定され、さらに電池12aが放電電池、電池12bが充電電池に決定された場合の保温電流を示している。この場合、電池12aから放電された電力は、電池12bに充電される。これにより、構内電力網2に接続される電池12の間だけで、電池12aと電池12bとの両方に保温電流を流すことができる。
【0052】
図6は、電池12a、12bが保温電池として決定され、さらに電池12aが放電電池、電池12bが充電電池に決定され、さらに電池12cが充電電池に追加された場合の保温電流を示している。この場合、電池12aから放電された電力は、電池12b、12cに充電される。さらに、電池12b、12cに充電するための電力が不足する場合、上位電力網6から系統連系器5を経由して電力が受電される。これにより、電池12aと電池12bとの両方に保温電流を流すことができる。さらに、蓄電量が少ない電池12cを充電することができる。
【0053】
図7は、電池12aだけが保温電池として決定され、さらに電池12aが放電電池に決定された場合の保温電流を示している。この場合、電池12aから放電された電力は、電気機器4および上位電力網6に送電される。これにより、放電電池だけが保温電池の場合にも、保温電池に保温電流を流すことができる。また、充電電池だけが保温電池の場合にも、保温電池に保温電流を流すことができる。
【0054】
以上に述べたように、この実施形態によると、電池12の充電または放電を利用して、電池12を保温することができる。この結果、電池12の性能低下を抑制することができる。また、複数の電池12の間の充電と放電とを利用して、複数の電池12を保温することができる。すなわち、構内電力網2における電力需給で保温のための放電または充電が可能なときは、構内電力網2だけで電池が保温される。このとき、上位電力網6からの受電に依存することなく、複数の電池12だけで、それら電池12の保温を図ることができる。一方、構内電力網2の電力需給では保温が不可能なときには、上位電力網6からの受電、または上位電力網6への送電によって電池12の保温のための放電または充電が可能となる。
【0055】
(第2実施形態)
図8は、本発明を適用した第2実施形態の制御装置7が実行する電池制御処理250を示す。上記実施形態では、制御装置7は、電池12の温度を下限温度を上回るように制御するための保温制御だけを実行した。この実施形態では、上記実施形態に加えて、さらに暖機制御を実行する。
【0056】
ステップ151−153は、上述の実施形態と同じである。ステップ153の保温制御においては、電池12の温度が、電動車両11の性能に大幅な低下をもたらさない程度の温度に維持される。
【0057】
ステップ258では、複数の電池12のうち、電動車両11を走行させるために利用される電池を選択して暖機制御を実行する。暖機制御においては、電池12の温度が、電動車両11の性能を十分に引き出すことができる活性温度に維持される。ステップ281では、複数の電池12の暖機開始時刻を設定する。暖機開始時刻は、電動車両11に設定された出発予定時刻に基づいて設定することができる。また、暖機開始時刻は、電動車両11の利用履歴に基づいて推定されてもよい。ステップ258は、電池12の利用前に、電池12から放電させ、または電池12に充電することにより電池12を暖機する暖機制御部を提供する。
【0058】
ステップ282では、暖機開始時刻が到来したか否かを判定する。暖機開始時刻が到来するまで、後続のステップをスキップする。暖機開始時刻が到来すると、ステップ283へ進む。暖機開始時刻が到来した電池12は、暖機電池として決定される。ステップ283では、ステップ156と同様の処理によって、暖機電池を充電電池、または放電電池に決定する。ステップ284では、ステップ157と同様の処理によって、暖機電池に充電するように、または暖機電池から放電させるように充放電器3を制御する。この結果、暖機電気には、自己発熱によって、暖機電池の温度を活性温度まで上昇させるための暖機電流が流される。
【0059】
この実施形態によると、複数の電池12に対して保温制御が実行されることにより、電池12の性能低下が抑制される。さらに、複数の電池12に対して暖機制御が実行されることにより、電池12を搭載した機器である電動車両11が利用されるときには、電動車両11の性能を十分に発揮させることができる。
【0060】
(他の実施形態)
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に何ら制限されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において種々変形して実施することが可能である。上記実施形態の構造は、あくまで例示であって、本発明の範囲はこれらの記載の範囲に限定されるものではない。本発明の範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲の記載と均等の意味及び範囲内での全ての変更を含むものである。
【0061】
例えば、制御装置が提供する手段と機能は、ソフトウェアのみ、ハードウェアのみ、あるいはそれらの組合せによって提供することができる。例えば、制御装置をアナログ回路によって構成してもよい。
【0062】
また、上記実施形態では、2つ以上の多数の電池12が接続されるシステムに本発明を適用した。これに代えて、2つの電池12だけが接続されるシステムに本発明を適用してもよい。例えば、住宅に設置された定置型電池と、電動車両に搭載された移動型電池とを含む住宅内の電力網に本発明を適用してもよい。この場合、例えば、戸外に置かれた移動型電池を保温するために、移動型電池と定置型電池との間で充放電が実施される。
【0063】
また、上記実施形態では、複数の電池12を構内電力網2に接続した。これに代えて、充電電池と放電電池との間に独立した通電経路が形成されるように配電網を構成してもよい。
【0064】
また、上記実施形態では、複数の電池の温度情報に基づいて、保温が必要な保温電池を決定した。これに代えて、例えば、外気温度が所定温度を下回る場合には、すべての電池を保温電池としてもよい。
【符号の説明】
【0065】
1 電池制御装置、
2 構内電力網、
3 充放電器、
4 機器、
5 系統連系器、
6 上位電力網、
7 制御装置、
11 電動車両、
12 電池、
21 温度評価部、
22 充放電制御部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池(12)の温度を評価し、保温が必要か否かを判定する温度評価部(21)と、
前記電池の保温が必要なとき、前記電池から放電させ、または前記電池に充電することにより前記電池に自己発熱させる充放電制御部(22)とを備えることを特徴とする電池制御装置。
【請求項2】
前記温度評価部(21)は、複数の前記電池の温度を評価し、保温が必要な保温電池を決定し、
前記充放電制御部(22)は、前記保温電池と他の前記電池との間で充放電させることにより前記保温電池に自己発熱させることを特徴とする請求項1に記載の電池制御装置。
【請求項3】
前記充放電制御部(22)は、前記保温電池を放電電池と充電電池との一方とし、他の前記電池を前記放電電池と前記充電電池との他方として、前記放電電池から放電させた電力を前記充電電池に充電することを特徴とする請求項2に記載の電池制御装置。
【請求項4】
前記温度評価部(21)は、複数の前記保温電池を決定し、
前記充放電制御部(22)は、前記保温電池の少なくともひとつを放電電池とし、複数の前記保温電池の他の少なくともひとつを充電電池として、前記放電電池から放電させた電力を前記充電電池に充電することを特徴とする請求項2に記載の電池制御装置。
【請求項5】
前記充放電制御部(22)は、
蓄電量(SOC)が所定値(SOCm、SOCe)を上回る前記電池を前記放電電池として決定する放電電池決定部(162、163、166、168)と、
蓄電量(SOC)が所定値(SOCm、SOCe)を下回る前記電池を前記充電電池として決定する充電電池決定部(162、164、167、169)とを備えることを特徴とする請求項3または請求項4に記載の電池制御装置。
【請求項6】
前記放電電池の蓄電量(SOC)が所定値(SOCe)を下回ると前記放電電池に充電する再充電部(175、176)を備えることを特徴とする請求項3から請求項5のいずれかに記載の電池制御装置。
【請求項7】
前記放電電池の蓄電量の減少を補償する利益を前記放電電池の利用者に与える補償部(177)を備えることを特徴とする請求項3から請求項6のいずれかに記載の電池制御装置。
【請求項8】
さらに、前記電池(12)が接続される構内電力網(2)と、
前記構内電力網と上位電力網(6)とを接続する系統連系器(5)とを備え、
前記充放電制御部(22)は、
前記構内電力網だけで前記放電または前記充電が可能な否かを判定する需給判定部(172)と、
前記構内電力網だけで前記放電または前記充電が不可能なとき、前記上位電力網から前記構内電力網へ受電するように、または前記構内電力網から前記上位電力網へ送電するように前記系統連系器(5)を制御する連系制御部(173、174)とを備えることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれかに記載の電池制御装置。
【請求項9】
さらに、前記電池(12)の利用前に、前記電池から放電させ、または前記電池に充電することにより前記電池を暖機する暖機制御部(258)を備えることを特徴とする請求項1から請求項8のいずれかに記載の電池制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−109859(P2013−109859A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−251917(P2011−251917)
【出願日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】