説明

電池応用機器

【課題】排気弁が作動したとき確実に電池機能を消失させ、過充電時等における安全性を向上することができる電池応用機器を提供する。
【解決手段】正極と負極とセパレータと電解液とを電池ケース3内に収容した電池2を1個若しくは複数個搭載した電池応用機器において、前記電池2は電池ケース3内の圧力上昇により開放される排気弁7を、電池応用機器への搭載状態で前記排気弁7が下方に位置するように配置した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電池の安全性向上を図った電池応用機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電池を電力源として使用している電池応用機器としては、例えばパソコンや携帯電子機器、各種家電製品、電動アシスト自転車、電動車椅子、バイク、自動車、特にハイブリッド車を含む電気自動車、ロボット、さらには電力供給用やバックアップ用の電源装置など広範な各種機器が知られている。
【0003】
近年は、これらの電池応用機器において用いられる二次電池は、高容量化、高出力化が進み、電池に蓄えられているエネルギーが増加してきている。そこで、制御回路により充放電制御を行うとともに温度管理を行うことにより安全性を担保するように構成されている。さらに、制御系の故障等に伴う万が一の場合を想定し、電池自体の破裂を防止するための排気弁を設けたものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。その排気弁の機能としては、例えば充電制御ができずに電池が過充電された場合、電解液の分解により電池内部で急激にガスが発生して電池内部に充満し、電池ケースが破裂する恐れがあるため、排気弁を設計動作圧で開弁させることで、電池ケースの破裂を防止するものである。
【0004】
このような排気弁を設けた電池として、図6(a)に示すように、電池ケース53の上壁54の一部の壁厚を2段に薄く形成して構成した排気弁55を設けた電池52が知られている(例えば、特許文献2参照。)。なお、図6(a)に示した電池においては、上壁54の両側部に正極と負極の外部端子56、57が突設されており、各電池52の出力電圧よりも高い電圧の出力を得る場合には、図6(b)に示すように、複数の電池52を並列配置し、隣接する正極と負極の外部端子56、57を接続板58で順次接続した電池群51を構成して電池応用機器に搭載される。
【0005】
また、図7に示すように、電池ケース62内に極板群63と電解液を収容するとともに上壁部64から正極端子65と負極端子66を突出させ、かつ電池ケース62の上壁部64に排気口68を突出形成し安全キャップ69を被せて成る排気弁67を設けた電池61において、上壁部64内面に排気口68に向けて上昇する傾斜部70を設けることで、発生したガスが大きな気泡となることなく円滑に排気口68から排気され、大きな気泡とともに電解液が外部に排出されるのを抑制したものも知られている(例えば、特許文献3参照。)。
【特許文献1】特開2003−132868号公報
【特許文献2】特開2003−297324号公報
【特許文献3】特開2005−19084号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、図6や図7に示した電池においては、排気弁55、67が電池ケース53、62の上壁54、64に配設されているので、排気弁55、67が開弁しても電池52、61内部にはガス化する前の電解液が依然存在し、その結果電池機能が継続して発現されて過充電が継続し、最悪の場合、発熱・発煙に至る恐れがある。これを回避するため、温度上昇すると電解液を流通する微細穴を閉じてしまうように構成された、シャットダウン機能を有するセパレータを用いたものもあるが、完全に充電電流を0にすることはできないため、長時間化充電を行うことにより、温度上昇が継続し、正極又は負極材料の熱暴走温度に到達すれば、同様に発煙や発火に至る危険性があるという問題がある。
【0007】
本発明は、上記従来の問題点に鑑み、排気弁が作動したとき確実に電池機能を消失させ、過充電時等における安全性を向上することができる電池応用機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の電池応用機器は、正極と負極とセパレータと電解液とを電池ケース内に収容した電池を1個若しくは複数個搭載した電池応用機器であって、前記電池は電池ケース内の圧力上昇により開放される排気弁を有しかつ電池応用機器への搭載状態で前記排気弁が下方に位置するように配置されているものである。
【0009】
この構成によると、ガス発生により電池ケース内の圧力が上昇して排気弁が作動すると同時に、電池ケース内部で重力にて下方に溜まっている電解液が排気弁を通して確実に外部に流出され、電池ケース内の電解液が極めて少なくなる。これによって電池機能(電圧発生、電荷移動継続)が確実に消失し、電流を流すことができなくなるため、過充電を終了させることができる。また、正極及び負極の熱暴走は電解液の共存下で生じる発熱反応であることが分かっており、電池ケース内部からの電解液の排出により熱に対する安全性も向上することができる。かくして、排気弁作動後の過充電や耐熱性に関する安全性を飛躍的に向上させることができる。
【0010】
また、前記排気弁の作動圧は、50kPa以上、250kPa以下であるのが好適である。作動圧が50kPa未満では高温保存中にも開弁する場合があり、作動圧が250kPaを超えて高くなると、過充電時の温度上昇が高くなり、開弁時に沸点を超えた電解液が放出される場合があってあまり好ましくはない。
【0011】
また、電池は複数の電池が装填されパック化された電池パックの状態で搭載されたものであっても良い。
【0012】
また、少なくとも電池の排気弁の下方に、液体吸収材が配置されていると、排出された電解液が液体吸収材にて吸収されて周囲に飛散しないので好適である。特に、前記液体吸収材が、電解液を吸収すると凝固又はゲル化する材料からなると、より効果的である。また、前記電解液を吸収してゲル化する材料は、具体的には寒天、カラギーナン、キサンタンガム、ジェランガム、グアーガム、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸塩系増粘剤、水溶性セルロース類及びポリエチレンオキサイドから成る群より選択される少なくとも1つを含むものが好適である。
【発明の効果】
【0013】
本発明の電池応用機器によれば、排気弁が作動した場合、電解液を電池ケース外に確実に排出することができ、その結果電池機能が消失して過充電等に対する安全性を飛躍的に向上することができる。さらに、排気弁の作動によって電池機能が消失するので、従来設けられていた、内部圧力を利用して電流経路を物理的に遮断する電流遮断機能が必要でなくなり、コスト低下を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の電池応用機器の各実施形態について、図1〜図4を参照して説明する。
【0015】
(第1の実施形態)
まず、本発明の第1の実施形態の電池応用機器において搭載される電池群について、図1を参照して説明する。図1(a)、(b)において、電池群1はリチウムイオン電池などの複数の電池2から成り、各電池2は正極と負極とセパレータと電解液とを電池ケース3内に収容して構成されている。この電池群1は、図1(a)に示した姿勢で、任意の電池応用機器(図示せず)に搭載される。なお、電池応用機器(図示せず)が固定設置されるものや、移動体や可動体であっても上下姿勢が一定に保持されるものである場合には、電池群1の配置姿勢は図1(a)に示した姿勢で固定的であり、本発明が有効に発揮される。一方、移動体や可動体で姿勢が変わるものや可搬式のものである場合は、姿勢は一定しないが、主要な姿勢が決まっている場合は、その姿勢の時に本発明が有効に作用するため効果的に適用できる。
【0016】
電池2の電池ケース3は本実施形態では角形で、その上壁3aの両側部にそれぞれ正極と負極に接続された正極端子4と負極端子5が突設されている。電池ケース3は、樹脂製でも、 金属製でも良い。電池群1は、各電池2の左右の向きを交互に変えて並列配置し、隣接する正極端子4と負極端子5を接続板6で順次接続して構成されている。各電池2は、その電池ケース3の下壁3bの適所に排気弁7が設けられている。
【0017】
排気弁7の構成としては、電池ケース3の一部に薄膜部を形成し、あるいは電池ケース3に形成した排気口に薄膜材を溶接、圧着、接着等にて密閉固着して構成することができる。また、排気弁7の材質としては、金属箔、樹脂膜等を使用でき、金属材料としてはアルミニウム、ニッケル、ステンレス鋼、鉄、チタン等が好適であり、またこれらのクラッド材も使用できる。樹脂膜の材質としては、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン等を使用でき、またこれらの樹脂の複合材を使用することもできる。さらに、前記金属箔の両面に上記樹脂膜を接着したものも好適である。
【0018】
また、排気弁7の厚みと面積に関しては、電池設計、 材料選択、使用環境によって異なるが、作動圧が50kPa以上、250kPa以下になり、かつ開弁後円滑に内部の電解液が排出される面積であれば良く、作動圧や電解液や正極・負極の材料選択に応じて適宜選択設計される。
【0019】
本実施形態によれば、電池群1の各電池2に対する充電時に過充電状態となり、電解液が分解してガスが発生し、電池ケース3内の圧力が上昇すると、圧力が所定圧力に到達した時点で排気弁7が作動して発生したガスが外部に放出されることで電池ケース3が破裂する恐れがなく、それと同時に、排気弁7が重力方向に対して下方に配置されていることで、電池ケース3内部で重力にて下方に溜まっている電解液が排気弁7を通して確実に外部に流出され、電池ケース3内の電解液が極めて少なくなる。これによって電池機能(電圧発生、電荷移動継続)が確実に消失し、電流を流すことができなくなるため、排気弁7が開弁すると同時に、過充電自体を確実に終了させることができる。また、特にリチウムイオン電池などに見られ易い、電池2内の正極及び負極の熱暴走は電解液の共存下で生じる発熱反応であることが分かっており、電池ケース3内部からの電解液の排出により熱に対する安全性も向上することができる。かくして、排気弁7作動後の過充電や耐熱性に関する安全性を飛躍的に向上させることができる。
【0020】
また、排気弁7の作動圧を50kPa以上、250kPa以下に設定することで、65℃の温度環境下で、30日間保存するというような過酷な条件での高温保存中においても開弁する恐れがなく、かつ過充電時の温度上昇を電解液の沸点未満の低い温度に確実に抑えることができ、開弁時に沸点を超えた電解液が放出されるというような恐れを無くすことができる。
【0021】
(第2の実施形態)
次に、本発明をハイブリッド自動車に搭載される電池パックに適用した第2の実施形態について、図2〜図4を参照して説明する。
【0022】
電池応用機器としてのハイブリッド自動車10は、図4に示すように、エンジン11とモータ12の何れか若しくは両方にて車輪13を駆動するように構成され、モータ12はインバータ14を介して電池パック15を電源として駆動され、電池パック15に対してはエンジン11にて駆動される発電機16にてインバータ14を介して充電を行うように構成されている。
【0023】
電池パック15は、図2、図3に示すように、複数の角形の電池22を並列配置した電池群21を備えており、各電池22の長手方向両端面の上部に正極端子24と負極端子25が設けられるとともに、各電池22が左右に交互に反対向きにして並列配置され、互いに隣接する正極端子24と負極端子25を接続することにより各電池22が直列に接続され、所定の出力電圧が得られるように構成されている。各電池22の電池ケース23の上面23aには電池温度を検出する温度センサ26が配設され、下面23bには排気弁27が配設されている。
【0024】
また、電池ケース23の互いに対向する両側面には、それらの間に冷却通路28を形成するための上下方向の通路形成突条29が適当間隔置きに突設され、各電池22はそれらの間に冷却通路28を形成した状態で拘束ロッド30にて上面上部と下面下部の複数箇所が拘束されて一体化されて前記電池群21が構成されている。
【0025】
電池群21は、下部ケース31の両側の支持部32に各電池22の両端部下面を載置固定されて下部ケース31にて支持されている。下部ケース31の支持部32、32間は下方に凹入形成され、各電池22、22間の冷却通路28に対して冷却流体を供給又は排出する冷却流体流通空間33が形成されている。また、電池群21の両側及び上部は上部ケース34にて覆われ、電池群21の上面上に冷却流体を排出又は供給する冷却流体流通空間35が形成されている。上記下部ケース31と上部ケース34とによって電池パック15の外装が構成されている。
【0026】
冷却流体流通空間33の底部には、排気弁27から排出された電解液を吸収すると凝固又はゲル化する材料からなる液体吸収材36が配置されている。液体吸収材36としては、寒天、カラギーナン、キサンタンガム、ジェランガム、グアーガム、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸塩系増粘剤、水溶性セルロース類及びポリエチレンオキサイドから成る群より選択される少なくとも1つを含むものが好適である。
【0027】
本実施形態の電池パック15によれば、電池22の下部に排気弁27を配設したことにより、上記第1の実施形態において説明した作用効果が同様に得られるとともに、電池22の排気弁27の下方に液体吸収材36を配置しているので、排出された電解液がこの液体吸収材36にて吸収されるため、電池群21の周辺に配置された電池パック15の制御回路部や電池パック15の外部に、有害な有機溶剤を含む電解液が漏液したり、飛散したりする恐れがなく、周辺機器の破損や人体や環境の汚染を防ぐことができる。
【0028】
以上の実施形態の説明では、電池が角形の例についてのみ説明したが、本発明は円筒形電池であっても、さらにラミネート電池であっても良く、要するに排気弁を有する各種電池に適用することができる。また、複数の電池から成る電池群を搭載する例を説明したが、単体の電池であっても良く、また電池又は電池群のみの状態ではなく、安全・制御回路とともにパック化された電池パックの状態で搭載されたものであっても良い。
【実施例】
【0029】
(実施例1)
非水電解液二次電池を用いた具体的な実施例について説明する。
【0030】
(i)正極の作製
正極の作製に関して、LiNi1/3 Mn1/3 Co1/3 2 を正極活物質とした。正極材料は、原材料として炭酸リチウム(LiCO3 )とニッケル・マンガン・コバルト共晶の水酸化物((NiMnCo)OH2 )を所定のモル数で混合し、950℃空気雰囲気下において10時間焼成することで得た正極活物質を使用した。この正極活物質100重量部に、導電材としてアセチレンブラック3重量部、結着材としてポリフッ化ビニリデンが5重量部となるように、ポリフッ化ビニリデンのN−メチルピロリドン溶液を調製し、攪拌混合してペースト状の正極合剤を得た。次に、厚さ15μmのアルミニウム箔を集電体とし、その両面に前記ペースト状正極合剤を塗布し、乾燥後圧延ローラで圧延を行い、所定寸法に裁断して正極とした。
【0031】
(ii)負極の作製
負極は次のように作製した。まず、平均粒径が約20μmになるように粉砕、 分級した塊状黒鉛100重量部に対し、結着剤のスチレン/ブタジエンゴム3重量部を混合した後、カルボキシメチルセルロース水溶液を固形分が1重量部となるように加え、攪拌混合しペースト状負極合剤とした。厚さ10μmの銅箔を集電体とし、その両面に前記ペースト状負極合剤を塗布し、乾燥後圧延ローラで圧延を行い、所定寸法に裁断して負極とした。
【0032】
(iii)非水電解液の作製
非水電解液にはECとエチルメチルカーボネートを30:70の割合で調整した溶液に1.0mol/lのLiPF6 を溶解したものを用いた。
【0033】
(iv) 非水電解液二次電池の作製
所定の正極と、上記負極(幅70mm、長さ3400mm、厚み0.07mm、設計容量4.2A)を用いて円筒形非水電解液二次電池を組み立てた。手順を以下に説明する。上記帯状の正負極を、微孔性ポリエチレンフィルムからなるセパレータを介して積層した後、長手方向に多数回巻回してなる渦巻型の電極体を作製し、アルミニウム製の電池缶に収納した。続いて、ニッケルからなるリードの一端を負極に圧着させ、他端を封口板に溶接することにより、負極の外部端子とした。一方、アルミニウムからなる正極リードの一端を正極に取り付け、他端を電池ケースに接続することにより電池ケースを正極の外部端子とした。ここで、封口板に、アルミニウム・ニッケルのクラッド材質で、 厚み15μmであり、その作動圧が50kPaであることが事前に確認されている排気弁を配した。この電池缶の中に非水電解液を注入した後、ブロンを塗布した絶縁封口ガスケットを介して電池缶をレーザー封口した。最後にポリエチレンテレフタレートを主成分とする絶縁チューブを熱収縮させることにより、外装缶と一体化し、円筒型の非水電解液二次電池を作製した。
【0034】
(v)非水電解液二次電池パックの作製
図5に示すように、上記非水電解液二次電池41を5個、2mm厚みのポリプロピレンからなる隔壁板(図示せず)を用いてセル間絶縁を確保して横方向に並列配置するとともに、電池41、41同士を直列に接続して組電池を構成した。電池41、41間の接続に関しては、ニッケル製の接続板43を用い、抵抗溶接により接続を行った。また、中央部に配置した電池41に熱電対42を設置し、試験中の電池温度を観測できるようにした。次に、組電池の両端の電池41に正・負極端子44、45を接続し、最後にこの組電池をABS樹脂製の外装ケース46でカバーし、非水電解液二次電池パック40を作製した。その際、パック40内における各電池41の排気弁(図示せず)を下方に配置するようにし、かつポリビニルアルコールからなるゲル化剤を排気弁(図示せず)に接触させて配置した。これを実施例1の非水電解液二次電池パックとする。
【0035】
(vi) 過充電試験
上記非水電解液二次電池パックを40℃環境下において、5Aの定電流で30時間連続過充電試験を行った。
【0036】
(vii)保存試験
上記非水電解液二次電池パックを、4.2Vまで1Aで定電流で充電し、その後4.2Vの定電圧で電流値が50mAになるまで充電を行った。その後電池パックを65℃環境下において、60日間保存試験を行い、排気弁の作動を確認した。
【0037】
(実施例2)
排気弁を、アルミニウム箔の両面にポリプロピレンからなるラミネート樹脂(各厚み70μm)を配し、作動圧を30kPaにした以外は実施例と同じにした。
【0038】
(実施例3)
排気弁のクラッド材の厚みを45μmにし、作動圧を150kPaにした以外は実施例と同じにした。
【0039】
(実施例4)
排気弁のクラッド材の厚みを75μmにし、作動圧を250kPaにした以外は実施例と同じにした。
【0040】
(実施例5)
排気弁のクラッド材の厚みを90μmにし、作動圧を300kPaにした以外は実施例と同じにした。
【0041】
(実施例6)
非水電解液二次電池パック内に液吸収ゲル化材を配置しなかった以外は、実施例1と同じにした。
【0042】
(比較例)
非水電解液二次電池パック内における非水電解液二次電池の排気弁を上方になるように配置した以外は実施例と同じにした。
【0043】
【表1】

表1に上記各実施例1〜6と比較例について、排気弁の向きと、排気弁の作動圧と、過充電試験の結果と、保存試験中の排気弁の作動の有無と、液吸収材の配置の有無と、パック外への漏液の有無を示した。
【0044】
実施例1と比較例より、排気弁を下方にすることにより、開弁後電解液が電池内より流出し電池機能が停止されるため、過充電が停止され、温度上昇が極めて少なく、一方排気弁を上方にした場合は、開弁した後も一部の電解液が液状で電池内部に存在することにより過充電状態が継続し、30時間までに電池温度が上昇し続けることになり、電解液の沸点を超え、気化した電解液が確認された。
【0045】
実施例1〜5から排気弁の作動圧が50kPa〜250kPaでは、過充電試験で、温度上昇が50℃未満という低い温度に抑えられ、保存試験では排気弁が作動せず、好適な結果が得られる。一方、作動圧が50kPa未満の30kPa(実施例2)では過充電に関する安全性は確保されるが、高温保存時に排気弁が作動することが確認され、実使用範囲を想定した場合には信頼性に課題がある。また、作動圧が250kPaを超える300kPa(実施例5)になると、開弁後の過充電は電解液の放出により電池機能が停止することで停止し、本発明の機構を実現できるが、作動圧が高いために,過充電時の温度上昇が99℃と高くなって、開弁直後に電解液の沸点を超えた気化した電解液が確認され、好ましい範囲ではない。
【0046】
実施例1と実施例6から、液吸収材を配置することにより、排気弁の作動後にも流出した電解液をパック外に漏液することがないことが確認され、その結果周辺機器、人体や環境への汚染の危険性を回避できることが判明した。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明の電池応用機器は、排気弁が作動した場合、電解液を電池ケース外に確実に排出することができ、その結果電池機能が消失して過充電等に対する安全性を飛躍的に向上することができるので、パソコンや携帯電子機器、各種家電製品、電動アシスト自転車、電動車椅子、バイク、自動車、特にハイブリッド車を含む電気自動車、ロボット、さらには電力供給用やバックアップ用の電源装置など広範な各種機器に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の電池応用機器の第1の実施形態における電池群の構成を示し、(a)は斜め上方から見た斜視図、(b)は斜め下方から見た斜視図。
【図2】本発明の電池応用機器の第2の実施形態であるハイブリッド車における電池パックの要部構成を示す縦断側面図。
【図3】同電池パックにおける電池群の斜視図。
【図4】同実施形態のハイブリッド車の全体概略構成を示す斜視図。
【図5】実施例の電池パックの構成を示す断面図。
【図6】従来例の電池と電池群の構成を示す斜視図。
【図7】他の従来例の電池の要部構成を示す縦断面図。
【符号の説明】
【0049】
1、21 電池群
2、22 電池
3、23 電池ケース
7、27 排気弁
10 ハイブリッド自動車(電池応用機器)
15 電池パック
36 液体吸収材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極と負極とセパレータと電解液とを電池ケース内に収容した電池を1個若しくは複数個搭載した電池応用機器であって、前記電池は電池ケース内の圧力上昇により開放される排気弁を有しかつ電池応用機器への搭載状態で前記排気弁が下方に位置するように配置されていることを特徴とする電池応用機器。
【請求項2】
前記排気弁の作動圧が、50kPa以上、250kPa以下であることを特徴とする請求項1記載の電池応用機器。
【請求項3】
電池は、複数の電池が装填されパック化された電池パックの状態で搭載されていることを特徴とする請求項1記載の電池応用機器。
【請求項4】
少なくとも電池の排気弁の下方に、液体吸収材が配置されていることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の電池応用機器。
【請求項5】
前記液体吸収材は、電解液を吸収すると凝固又はゲル化する材料からなることを特徴とする請求項4記載の電池応用機器。
【請求項6】
前記電解液を吸収してゲル化する材料は、寒天、カラギーナン、キサンタンガム、ジェランガム、グアーガム、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸塩系増粘剤、水溶性セルロース類及びポリエチレンオキサイドから成る群より選択される少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項5記載の電池応用機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−194001(P2007−194001A)
【公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−9366(P2006−9366)
【出願日】平成18年1月18日(2006.1.18)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】