電池用電極群およびこれを用いた電池
【課題】両面で摩擦係数の異なるセパレータと正極板と負極板のうち摩擦係数の大きい方と接するように巻回するように構成したことによって、巻回時の巻ズレや合剤層の脱落を抑制し、この電極群を用いることでこれらに起因した内部短絡による発熱を抑制し安全性の高い非水系二次電池を提供するものである。
【解決手段】表裏で摩擦係数の異なるセパレータ14と正極板12と負極板13のうちの表面の摩擦係数の高い方と接するように巻回して構成した。
【解決手段】表裏で摩擦係数の異なるセパレータ14と正極板12と負極板13のうちの表面の摩擦係数の高い方と接するように巻回して構成した。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオン電池に代表される電池用電極群およびこれを用いた電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯用電子機器の電源として利用が広がっている非水系二次電池はリチウム二次電池に代表され、負極活物質にリチウムの吸蔵および放出が可能な炭素質材料等を用い、正極活物質にLiCoO2等の遷移金属とリチウムの複合酸化物を活物質として用いており、これによって、高電位で高放電容量の非水系二次電池を実現している。しかし、近年の電子機器および通信機器の多機能化や小型化に伴って、非水系二次電池の更なる小型高容量化が望まれている。
【0003】
ここで、高容量の非水系二次電池を実現するための発電要素である電極板としては、正極板および負極板ともに各々の構成材料を塗料化した合剤塗料を集電体の上に塗布し乾燥後、プレス等により規定の厚みまで圧縮する方法が用いられており、より多くの活物質を充填してプレスすることにより活物質密度が高くなり、一層の高容量化が可能となる。
【0004】
また、上述の正極板と負極板とを多孔質絶縁体としてのセパレータを介して渦巻状に巻回した電極群をステンレス製、ニッケルメッキを施した鉄製、またはアルミニウム製等の金属からなる電池ケースに収納し、次に非水電解液を電池ケース内に注液した後、電池ケースの開口端部に封口板を密封固着して非水系二次電池が構成される。また、金属ケースの代わりに、アルミニウムラミネートフィルムなどの外装体を用いた扁平形ラミネート電池の開発も進んでいる。
【0005】
ところで、高容量化が進む一方で重視すべきは安全対策であり、特に正極板と負極板との内部短絡などが原因で非水系二次電池の急激な温度上昇が起こり熱暴走に至る場合もあるため、非水系二次電池の安全性の向上が強く要求されている。特に、大型・高出力な非水系二次電池では、熱暴走の発生確率が高くなるためその発生確率を低くするなどの安全性を向上させる工夫が必要である。
【0006】
上述のように非水系二次電池が内部短絡する要因としては、非水系二次電池の内部に異物が混入する以外にも電極群を構成する際、さらには電池を充放電する際に電極板に加わる応力によって電極板が破断することが考えられる。より詳しくは、渦巻状に巻回して電極群を構成する際または扁平形に圧縮成形する際には構成要素である正極板、負極板、セパレータには曲率半径の小さい部分で大きな応力が加わり、合剤層の脱落またはこの際の各構成要素における伸び率の差によって最も伸び率が小さなものから破断することになる。
【0007】
また渦巻状に巻回する際、電極板とセパレータの位置関係にズレが生じ、電極板が露出することが考えられる。より詳しくは、電極板とセパレータを重ねて巻芯に巻きつけることで渦巻状に巻回した後、巻芯から抜く際、巻芯とセパレータの接触部分において摩擦が大きいために接触部のみが巻芯に残るため、その付近の電極板がセパレータで覆われなかったり、電極群の中心部分が巻回体からはみ出すという現象が起こり、電極群として体をなさないことになる。
【0008】
そこで、このような短絡による熱暴走を抑制するために、例えば負極板の表面との摩擦係数を定義して負極板が膨張してもセパレータの表層部のつぶれが発生せず、サイクル特
性の低下を抑制できるようなセパレータが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0009】
また、このような巻回の際の抜き時のズレを抑制するために、摩擦係数の小さい面を巻芯に接触させる巻回方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0010】
また、同様に巻回体をよりスムーズに巻芯から抜くために、巻芯の表面処理による摩擦係数を定義して最適値を選択する方法が提案されている(例えば、特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】国際公開第2008/059806号
【特許文献2】国際公開第2008/143005号
【特許文献3】特開2009−70726号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、上述した特許文献1の従来技術では、負極板とセパレータの相対摩擦係数を規定しているだけで、巻芯から抜き時のズレ等には何の対策も施していない。
【0013】
また、特許文献2の従来技術では、摩擦係数の小さい面を巻芯に接触させる巻回方法だが、相対的に摩擦係数の小さい面を巻芯に接触させても、抜き時の摩擦係数が十分に小さいとは言えず、課題は確実に解決できない。
【0014】
また、特許文献3では巻芯の表面処理による摩擦係数を定義しているが、接触するセパレータとの摩擦係数との関係が不明であり、課題が確実に解決できるとは限らない。
【0015】
本発明は、正極板と負極板とを両面で摩擦係数の異なるセパレータを介して巻回して電極群を構成する際に、セパレータの摩擦係数の大きい面を負極板と正極板のうち表面の摩擦係数の大きい方と接するように構成することで、製作時のズレや合剤の脱落を抑制し、また充放電を繰り返すことによる電極板の膨張収縮に起因した座屈を抑制して、信頼性の高い電池用電極群を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記従来の課題を解決するために本発明の電池用電極群は、表面の摩擦係数の異なる正極板と負極板とを備え、前記正極板と前記負極板を両面で摩擦係数の異なるセパレータを介して巻回してなる電池用電極群であって、前記セパレータの摩擦係数の大きい面を正極板と負極板のうち表面の摩擦係数の大きい方と接するように巻回して構成したことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明の電池用電極群によると、表面の摩擦係数の異なる正極板と負極板とを備え、前記正極板と前記負極板を両面で摩擦係数の異なるセパレータを介して巻回してなる電池用電極群において、前記セパレータの摩擦係数の大きい面を正極板と負極板のうち表面の摩擦係数の大きい方と接するように巻回して構成したことにより、製作時のセパレータのズレによる電極板の露出を抑制し、偏平形状に成形する際の合剤層の脱落を抑制することで内部短絡を抑制することが可能である。また、巻回状態の電極群において、電極板とセパレータの密着性が向上することにより、負極板にインターカレーションされるリチウムによって負極板の膨張による体積増加の際に電極群に加わる応力を抑制することができ、その結果、電極板の座屈を抑制し、電極板の破断を抑制することが可能である。また、この電極群を用いることで電極板の合剤脱落、破断または座屈に起因した内部短絡を抑制し安
全性の高い電池を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1の実施形態における角形非水系二次電池の一部切欠斜視図
【図2】本発明の第1の実施形態における電池用電極群の断面図
【図3】本発明の第1の実施形態における正極板と負極板とセパレータを示す概略図
【図4】本発明の第1の実施形態における扁平形状に成形する模式図
【図5】本発明の第1の実施形態における正極板と負極板とセパレータを巻芯に突入させて巻き込む模式図
【図6】(a)本発明の第1の実施形態における扁平形状に成形する模式図(b)従来の扁平形状に成形した電池用電極群の要部の拡大断面図(c)本発明の第1の実施形態における扁平形状に成形した電池用電極群の要部の拡大断面図
【図7】本発明の第2の実施形態における正極板と負極板とセパレータを示す概略図
【図8】本発明の第2の実施形態における正極板と負極板とセパレータを巻芯に突入させて巻き込む模式図
【図9】(a)本発明の第2の実施形態における扁平形状に成形する模式図(b)従来の扁平形状に成形した電池用電極群の要部の拡大断面図(c)本発明の第2の実施形態における扁平形状に成形した電池用電極群の要部の拡大断面図
【図10】本発明の他の実施形態における正極板と負極板とセパレータを示す概略図
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の第1の発明においては、表面の摩擦係数の異なる正極板と負極板とを備え、前記正極板と前記負極板を両面で摩擦係数の異なるセパレータを介して巻回してなる電池用電極群であって、セパレータの摩擦係数の大きい面を正極板と負極板のうち表面の摩擦係数の大きい方と接するように巻回して構成したことにより、セパレータと電極板の密着性が上がることで巻回時の巻き始めに発生するセパレータのズレによる電極板の露出と偏平形状に成形する際の合剤層の脱落を抑制することで内部短絡を抑制することが可能となり信頼性の高い電池用電極群を提供することができる。
【0020】
本発明の第2の発明においては、セパレータとしてポリオレフィン微多孔膜の片面にアラミドからなる耐熱性多孔質層を形成したものを用いたことにより、両面の摩擦係数の異なるセパレータを用いた電極群を構成することが可能となり、信頼性の高い電池用電極群を提供することができる。
【0021】
本発明の第3の発明においては、セパレータの摩擦係数の大きい面を正極板と接するように巻回したことにより、正極板とセパレータとの密着性が向上することで、積層時または巻回時の巻き始めに発生するセパレータのズレによる電極板の露出が抑制でき、エネルギー密度の高い正極板が常にセパレータに覆われていることで、より安全性の高い電池用電極群を提供することができる。
【0022】
本発明の第4の発明においては、セパレータの摩擦係数の大きい面を負極板と接するように巻回したことにより、負極板とセパレータとの密着性が向上することで、扁平成形時に発生する特に負極合剤層の脱落を抑制することで、相対する正極合剤層に確実に負極合剤層を対向させることで、リチウム析出による内部短絡を抑制することで、より安全性の高い電池用電極群を提供することができる。
【0023】
本発明の第5の発明においては、電池用電極群として本発明の第1〜4のいずれか1つのものを用いて非水電解液とともに電池ケースに封入して構成したことによりセパレータのズレによる電極板の露出を抑制し、さらにこれらに起因する内部短絡を効果的に抑制することできる。また、負極板にインターカレーションされるリチウムによって負極板の膨
張による体積増加の際に電極群に加わる応力を抑制することができ、その結果、電極板の座屈を抑制し、電極板の破断を抑制することが可能となって、電極板の合剤脱落、破断または座屈に起因した内部短絡を抑制し安全性の高い電池を提供することが可能である。
【0024】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
(実施の形態1)
以下、本発明の一実施の形態について図面を参照しながら説明する。本発明の図1に示す電池の一例である角形非水系二次電池1は、電池用電極群2を有底偏平形の電池ケース3の内部に絶縁板4と共に収容し、電池用電極群2の上部より導出した負極リード5を絶縁ガスケット6を周縁に取り付けた端子7に接続し、次いで電池用電極群2の上部より導出した正極リード8を封口板9に接続し、電池ケース3の開口部に封口板9を挿入し、電池ケース3の開口部の外周に沿って、封口板9と電池ケース3を溶接して封口し、封栓口10から電池ケース3に所定量の非水溶媒からなる非水電解液(図示せず)を注液した後、封栓11を封口板9に溶接して構成している。
【0025】
ここで、電池用電極群2は、図2に示すように複合リチウム酸化物を活物質とする正極板12とリチウムを保持しうる材料を活物質とする負極板13とを間に多孔質絶縁層としてのセパレータ14を介して渦巻状に巻回して構成している。ここで、正極板12と負極板13の表面の摩擦係数は異なる。さらに詳しくは、図3に示すように、正極板12とセパレータ14と負極板13とセパレータ14とを配置してAに示す方向に巻芯(図示せず)に巻き付けて、渦巻状に巻回して構成することができる。その後、扁平形電池の場合には、図4で示すような工程で偏平形状に成形している。上記セパレータ14は、表裏で摩擦係数の異なる構成になっており、片面にアラミドからなる耐熱性多孔質層15aを形成し片面は微多孔フィルム層15bからなるセパレータ14を用いて構成したもので、正極板12と対向する面にセパレータ14の摩擦係数の大きい耐熱性多孔質層15aを配置して、負極板13とセパレータ14とともにAに示す方向に巻芯(図示せず)に巻き付けて渦巻状に巻回して構成している。セパレータ14の厚みは、10〜25μmとするのが良い。正極板12と、セパレータ14の摩擦係数の大きい面とが接するように巻回して構成することで、巻回時におけるセパレータと正極板12のずれによる露出が抑制でき、また偏平形状に成形する際の合剤層の脱落を抑制することで内部短絡を抑制することが可能となり信頼性の高い電池用電極群2を提供することができる。
【0026】
さらに詳しくは、巻回開始時には、正極板12と負極板13とセパレータ14は図5に示すような位置関係になっていて、セパレータ14で挟まれていない正極板12を巻芯20に突入させて巻き込む必要があるが、密着性が低いと巻き込み時にすべってしまい、正しい位置関係を維持して巻回することができないことになる、しかし、図3に示すように、表面の摩擦係数の大きい正極板12とそれに対向する面にセパレータ14の摩擦係数の大きい耐熱性多孔質層15a面を配置して巻回することによって、正極板12とセパレータ14の密着性があがるので、電極板との密着性が上がり、特に巻き始めでの電極板の突入時に滑ることなく巻き込むことができるので、ずれることなく電極板の露出が抑制できる。
【0027】
また巻回後扁平形状に成形する際には、図6(a)に示すように略円形状の巻回体を上下からはさんで圧縮するが、最内周の巻き始め部分は固定されていないため、従来は、圧縮による変形に伴いすべりが生じて内側へ移動する。そのため、図6(b)に示すように、湾曲部においてはセパレータが電極板に密着せず、押圧変形時に内側の合剤を保持できずに脱落をすることになる。一方で、本発明の実施の形態では、図6(c)に示すように、正極板12と、セパレータ14の摩擦係数の大きいとが密着しているため、圧縮による変形に伴いすべりが生じる事がないので、その結果湾曲部の形成時にも合剤層が保持でき
るため、合剤層の脱落を抑制できる。
【0028】
上記正極板12は、正極活物質、結着材を適切な分散媒中に入れ、プラネタリーミキサー等の分散機により混合分散し、アルミニウム箔などの正極集電体16への塗布に最適な粘度に調整しながら混練を行って正極合剤塗料を作製する。
【0029】
ここで、正極活物質としては、例えばコバルト酸リチウムおよびその変性体(コバルト酸リチウムにアルミニウムやマグネシウムを固溶させたものなど)、ニッケル酸リチウムおよびその変性体(一部ニッケルをコバルト置換させたものなど)、マンガン酸リチウムおよびその変性体などの複合酸化物を挙げることができる。
【0030】
このときの導電材種としては、例えばアセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラック等のカーボンブラック、各種グラファイトを単独、あるいは組み合わせて用いても良い。
【0031】
このときの正極用結着材としては、例えばポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリフッ化ビニリデンの変性体、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、アクリレート単位を有するゴム粒子結着材等を用いることができ、この際に反応性官能基を導入したアクリレートモノマー、またはアクリレートオリゴマーを結着材中に混入させることも可能である。
【0032】
次いで、正極集電体16に上述した正極合剤塗料を所定に厚みに塗布して正極合剤層17a、17bを形成し、乾燥したのちほぼ全面的に所定の厚みにプレスされる工程を経て、正極板12が作製される。
【0033】
一方、負極板13は、負極活物質、導電材、結着材を適切な分散媒中に入れ、プラネタリーミキサー等の分散機により混合分散し、銅箔などの負極集電体18への塗布に最適な粘度に調整しながら混練を行って負極合剤塗料を作製する。
ここで、負極用活物質としては、各種天然黒鉛および人造黒鉛、シリサイドなどのシリコン系複合材料、並びに各種合金組成材料を用いることができる。
【0034】
このときの負極用の結着材としては、ポリフッ化ビニリデンおよびその変性体を用いることができる。しかしながら、リチウムイオンの受入れ性を向上させるという観点からは、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム粒子(SBR)またはその変性体とカルボキシメチルセルロース(CMC)をはじめとするセルロース系樹脂等とを併用したものや、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム粒子またはその変性体に上記セルロース系樹脂を少量添加したものを使用するのが好ましい。
【0035】
次いで、負極集電体18に上述した負極合剤塗料を所定に厚みに塗布して負極合剤層19a、19bを形成し、乾燥したのちほぼ全面的に所定の厚みにプレスされる工程を経て、負極板13が作製される。
【0036】
非水電解液は、電解質塩としてLiPF6およびLiBF4などの各種リチウム化合物を用いることができる。また溶媒としてエチレンカーボネート(EC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、メチルエチルカーボネート(MEC)を単独および組み合わせて用いることができる。また正極板12または負極板13上に良好な皮膜を形成させるため、および過充電時の安定性を保証するために、ビニレンカーボネート(VC)およびシクロヘキシルベンゼン(CHB)、並びにその変性体を用いるのが好ましい。
【0037】
(実施の形態2)
図7は、本発明の第2の実施形態における正極板12と負極板13とセパレータ14を示す概略図斜視図である。実施の形態1と同様の構成については、説明を割愛する。
【0038】
図7に示すように、両面に多孔質絶縁層21を形成した負極板13と片面にアラミドからなる耐熱性多孔質層15aを形成し片面は微多孔フィルム層15bからなるセパレータ14を用いたもので、負極板13とそれに対向する面にセパレータ14の摩擦係数の大きい耐熱性多孔質層15aを配置して、正極板12とセパレータ14とともにAに示す方向に渦巻状に巻回して構成している。
【0039】
さらに詳しくは、巻回開始時には、正極板12と負極板13とセパレータ14は図8に示すような位置関係になっていて、セパレータ14で挟まれない負極板13を巻芯20に突入させて巻き込む必要があるが、密着性が低いと巻き込み時にすべってしまい、正しい位置関係を維持して巻回することができないことになる、しかし、図7に示すように、負極板13とそれに対向する面にセパレータ14の摩擦係数の大きい耐熱性多孔質層15a面を配置して巻回することによって、負極板13とセパレータ14の密着性があがるので、電極板との密着性が上がり、特に巻き始めでの電極板の突入時に滑ることなく巻き込むことができるので、ずれることなく電極板の露出が抑制できる。
【0040】
また巻回後扁平形状に成形する際には、図9(a)に示すように略円形状の巻回体を上下からはさんで圧縮するが、最内周の巻き始め部分は固定されていないため、従来は、圧縮による変形に伴いすべりが生じて内側へ移動する。そのため、図9(b)に示すように、湾曲部においてはセパレータが電極板に密着せず、押圧変形時に内側の合剤を保持できずに脱落をすることになる。一方で、本発明の実施の形態では、図9(c)に示すように、負極板13と、セパレータ14の摩擦係数の大きいとが密着しているため、圧縮による変形に伴いすべりが生じる事がないので、その結果湾曲部の形成時にも合剤層が保持できるため、合剤層の脱落を抑制できる。
【0041】
これにより、偏平形状に成形する際の合剤層の脱落を抑制することで内部短絡を抑制することが可能となり信頼性の高い電池用電極群2を提供することができる。
【0042】
以上の様に、本発明の二次電池1は、電極板とセパレータ14との密着性が高いため、充電時に負極板13にインターカレーションされるリチウムイオンによる負極板13の膨張を抑制することができるため、電極板の体積膨張による電極群2の座屈を抑制し、座屈に起因した電極板の破断や内部短絡を抑制し安全性の高い二次電池1を提供できる。
【0043】
なお、本実施の形態のセパレータ14は、表裏で摩擦係数の異なる構成になっており、片面にアラミドからなる耐熱性多孔質層15aを形成し片面は微多孔フィルム層15bからなるセパレータ14を用いて表裏で摩擦係数の異なる構成にしているが、二次電池1の使用範囲に耐えうる組成であれば、図10に示すように、特にポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂の微多孔フィルムを、単一あるいは複合して用いてもよい。
【0044】
以下、具体的な実施例について、さらに詳しく説明する。
(実施例1)
以下のようにして、図3に示したのと同じ構造の正極板12と負極板13とセパレータ14を作製した。まず、正極板12においては、活物質としてコバルト酸リチウムを100重量部、導電材としてアセチレンブラックを活物質100重量部に対して2重量部、結着材としてポリフッ化ビニリデン(PVdF)を活物質100重量部に対して2重量部とを適量のN−メチル−2−ピロリドンと共に双腕式練合機にて攪拌し混練することで、正
極合剤塗料を作製した。
【0045】
次いで、この正極合剤塗料を厚み15μmのアルミニウム箔からなる正極集電体16の表面と裏面に塗布し、乾燥後に片面側の正極合剤層17a、17bの厚みがそれぞれ100μmとなる正極板12を作製した。
【0046】
さらに、この正極板12を、片面側の正極合剤層17a、17bの厚みがそれぞれ75μmで総厚みが165μmとなるようにプレスした後、角形非水系二次電池1に最適な幅にスリッタ加工して正極板12を作製した。
【0047】
一方、負極板13においては活物質として人造黒鉛を100重量部、結着材としてスチレン−ブタジエン共重合体ゴム粒子分散体(固形分40重量%)を活物質100重量部に対して2.5重量部(結着材の固形分換算で1重量部)、増粘剤としてカルボキシメチルセルロースを活物質100重量部に対して1重量部、および適量の水とともに双腕式練合機にて攪拌し、負極合剤塗料を作製した。
【0048】
次いで、この負極合剤塗料を厚み10μmの銅箔からなる負極集電体18の表面と裏面に塗布し、乾燥後に片面側の負極合剤層19a、19bの厚みがそれぞれ110μmとなる負極板13を作製した。
【0049】
さらに、この負極板13を片面側の負極合剤層19a、19bの厚みがそれぞれ85μm、総厚みが180μmとなるようにプレスした後、角形非水系二次電池1に最適な幅にスリッタ加工して負極板13を作製した。
【0050】
セパレータ14においては、主成分がポリオレフィンである多孔質フィルムを基材として、その片方の表面にアラミドからなる摩擦係数の大きい耐熱性多孔質層15aを厚み2μmに塗布して作成した。
【0051】
以上のようにして作製した正極板12と負極板13とセパレータ14を用いて、図1に示すような角形非水系二次電池1を作製した。より具体的には、図3に示したように、正極板12と負極板13とセパレータ14の耐熱性多孔質層15aを正極板12に面するように配置して図3のA方向に渦巻状に巻回して扁平に成形した電池用電極群2を100個作製した。この電池用電極群2の中から60個を抜き出し有底偏平形の電池ケース3の内部に絶縁板4と共に収容し、電池用電極群2の上部より導出した負極リード5を絶縁ガスケット6を周縁に取り付けた端子7に接続し、次いで電池用電極群2の上部より導出した正極リード8を封口板9に接続し、電池ケース3の開口部に封口板9を挿入し電池ケース3の開口部の外周に沿って電池ケース3と封口板9とを溶接して封口し、封栓口10から電池ケース3に所定量の非水溶媒からなる非水電解液(図示せず)を注液した後、封栓11を封口板9に溶接して作製した角形非水系二次電池1を実施例1とした。
(実施例2)
以下のようにして、図7で示したのと同じ構造の正極板12と負極板13とセパレータ14を作製した。まず、実施例1と同様に正極板12とセパレータ14を作成した。負極板13は、実施例1と同様に作成した後、その表面にフィラーとしてAl3O2を含む無機化合物を厚み2μmで塗工した。これらの正極板12、負極板13、セパレータ14を図1に示すような角形非水系二次電池1を作製した。
【0052】
より具体的には、図7に示したように、正極板12と負極板13とセパレータ14の摩擦係数の大きい耐熱性多孔質層15aを摩擦係数の大きい負極板13に面するように配置して図7のA方向に渦巻状に巻回して扁平に成形した電池用電極群2を100個作製した。これらの電池用電極群2の中から60個を抜き出し、実施例1と同様にして作製した角
形非水系二次電池1を実施例2とした。
(比較例1)
正極板12および負極板13およびセパレータ14は、実施例1と同様に作製したものを用いた。電池用電極群2はセパレータ14の摩擦係数が低い方を摩擦係数が高い正極板12に対向するように配置して、渦巻状に巻回して扁平に成形した電池用電極群2を100個作製した。これらの電池用電極群2の中から60個を抜き出し、実施例1と同様にして作製した角形非水系二次電池1を比較例1とした。
(比較例2)
正極板12および負極板13は実施例1と同様に作製したものを用いた。セパレータ14としては、ポリエチレン単一材料としたもので、表裏の摩擦係数は同じである。これらの正極板12と負極板13およびセパレータ14を用いて、渦巻状に巻回して扁平に成形した電池用電極群2を100個作製した。これらの電池用電極群2の中から60個を抜き出し、実施例1と同様にして作製した角形非水系二次電池1を比較例2とした。
(比較例3)
正極板12および負極板13は実施例1と同様に作製したものを用いた。セパレータ14は、多孔質フィルムを基材として、その両面にアラミドからなる摩擦係数の大きい耐熱性多孔質層15aを厚み2μmに塗布して作成した。
【0053】
電池用電極群2はセパレータ14の摩擦係数が低い方を正極板12に対向するように配置して、渦巻状に巻回して扁平に成形した電池用電極群2を100個作製した。これらの電池用電極群2の中から60個を抜き出し、実施例1と同様にして作製した角形非水系二次電池1を比較例3とした。
【0054】
上記各実施例と比較例の所要内容を(表1)に示す。
【0055】
【表1】
【0056】
(表1)の条件で渦巻状に巻回した電極群2および角形非水系二次電池1において、以下の内容で評価を行った。実施例1〜2および比較例1〜3についてそれぞれ100個の中から40個を抜き出して電池用電極群2を解体して観察した結果を(表2)に示す。
【0057】
また、上述のようにして実施例1〜2および比較例1〜3について作製したそれぞれ60個の角形非水系二次電池1について、充放電を500サイクル繰り返したときの初期容量に対する容量維持率と電極板の厚みの変化率を(表2)に示す。
【0058】
さらに、この60個のうちの30個を500サイクル繰り返した後に角形非水系二次電
池1および電池用電極群2を解体し観察した結果を(表2)に示す。
【0059】
【表2】
【0060】
(表2)の結果より、実施例1〜2においては、いずれも正極板12、負極板13ともに電極板の破断や合剤層の脱落などの不具合は認められなかった。また500サイクル後の初期容量に対する容量維持率および500サイクル後に分解し観察した結果、リチウム析出、電極板の破断、電極板の座屈、合剤層の脱落などの不具合は認められなかった。
【0061】
また、500サイクル後の厚み増加量も小さく座屈が抑制されており、このため良好な電池特性が維持できたと考えられる。
【0062】
一方、比較例1〜3においては500サイクル後の初期容量に対する容量維持率は低下しており、500サイクル後に分解し観察した結果からリチウム析出、電極板の破断、電極板の座屈、合剤層の脱落などの不具合が認められた。
【0063】
加えて、これらの500サイクル繰り返した後の残りの30個について、次のような試験を行った。
【0064】
まず、落下試験として上述の角形非水系二次電池1を上限電圧4.2V、電流2Aの条件で2時間充電を行った後に、1.5mの高さからコンクリート面上に、角形非水系二次電池1の6面に対し各10回落下試験を行い、室温25℃にて10個の発熱温度を測定し、10個の平均値を求めた結果を(表3)に示す。また落下試験後の発熱の有無を確認した結果を(表3)に示す。
【0065】
また、丸棒圧壊試験として上述の角形非水系二次電池1を上限電圧4.2V、電流2Aの条件で2時間充電を行った後、電池を寝かせた状態で長さ方向に対し垂直方向に直径10mmの丸棒で圧壊試験を実施し、室温25℃にて10個の発熱温度を測定し、10個の平均値を求めた結果を(表3)に示す。
【0066】
さらに、150℃加熱試験として上述の角形非水系二次電池1を上限電圧4.2V、電流2Aの条件で2時間充電を行った後、電池を恒温層に挿入し、常温から5℃/分の条件で恒温層の温度を150℃まで昇温させて、そのときの電池発熱温度を測定し10個の平均値を求めた結果を(表3)に示す。
【0067】
【表3】
【0068】
(表3)の結果より、実施例1〜2では500サイクル後の落下試験、丸棒圧壊試験、150℃加熱試験については、不具合は認められなかった。
【0069】
これは、座屈が抑制されており、それらに起因する内部短絡を抑制することができたために、良好な安全性を維持できたものと考えられる。
【0070】
一方、比較例1〜3で示した非水系二次電池1は、500サイクル後に分解し観察した結果、リチウム析出、電極板の破断、電極板の座屈、合剤層の脱落などの不具合が認められた。
【0071】
また、落下試験、丸棒圧壊試験、釘刺し試験、150℃加熱試験のいずれの試験においても、発熱温度が高いことより、巻回時の合剤層の脱落や電極板の破断に起因する内部短絡や座屈が発生していることが原因と考えられる。
【0072】
以上の結果より、両面で摩擦係数のことなるセパレータ14の摩擦係数の大きい面を正極板12と負極板13のうち表面の摩擦係数の大きいほうと接するように構成したことにより、電極板との密着性が上がり、特に巻き始めでの電極板の突入時に滑ることなく巻き込むことで、ずれることなく電極板の露出を抑制したり、扁平に変形させる際の合剤層の脱落を抑制することで、それに伴う内部短絡を抑制することができた。
【0073】
なお、実施例1〜2においては、渦巻状に巻回した電池用電極群2を作成したが、つづら折れ状に積層した電池用電極群2においても同様の効果が得られるのは言うまでもない。
【0074】
さらに、これら実施例においては角形非水系二次電池1を用いて説明したが、円筒形非水系二次電池についても同様の効果が得られるのは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明に係る電池用電極群は、正極板と負極板とを両面で摩擦係数の異なるセパレータを介して巻回してなる電池用電極群において、セパレータの摩擦係数の大きい面を正極板と負極板のうち表面の摩擦係数の大きい方と接するように構成することによって、巻回時の電極板のずれによる電極板の露出を抑制し、扁平形状に成形する際の合剤の脱落を抑制することで内部短絡を抑制することが可能である。また、この電池用電極群を用いることで内部短絡による発熱を抑制し安全性の高い電池を提供することが可能であるため電子機
器および通信機器の多機能化に伴って高容量化が望まれている携帯用電源等として有用である。
【符号の説明】
【0076】
1 角形非水系二次電池
2 電池用電極群
3 電池ケース
4 絶縁板
5 負極リード
6 絶縁ガスケット
7 端子
8 正極リード
9 封口板
10 封栓口
11 封栓
12 正極板
13 負極板
14 セパレータ
15a 耐熱性多孔質層
15b 微多孔フィルム層
16 正極集電体
17a、17b 正極合剤層
18 負極集電体
19a、19b 負極合剤層
20 巻芯
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオン電池に代表される電池用電極群およびこれを用いた電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯用電子機器の電源として利用が広がっている非水系二次電池はリチウム二次電池に代表され、負極活物質にリチウムの吸蔵および放出が可能な炭素質材料等を用い、正極活物質にLiCoO2等の遷移金属とリチウムの複合酸化物を活物質として用いており、これによって、高電位で高放電容量の非水系二次電池を実現している。しかし、近年の電子機器および通信機器の多機能化や小型化に伴って、非水系二次電池の更なる小型高容量化が望まれている。
【0003】
ここで、高容量の非水系二次電池を実現するための発電要素である電極板としては、正極板および負極板ともに各々の構成材料を塗料化した合剤塗料を集電体の上に塗布し乾燥後、プレス等により規定の厚みまで圧縮する方法が用いられており、より多くの活物質を充填してプレスすることにより活物質密度が高くなり、一層の高容量化が可能となる。
【0004】
また、上述の正極板と負極板とを多孔質絶縁体としてのセパレータを介して渦巻状に巻回した電極群をステンレス製、ニッケルメッキを施した鉄製、またはアルミニウム製等の金属からなる電池ケースに収納し、次に非水電解液を電池ケース内に注液した後、電池ケースの開口端部に封口板を密封固着して非水系二次電池が構成される。また、金属ケースの代わりに、アルミニウムラミネートフィルムなどの外装体を用いた扁平形ラミネート電池の開発も進んでいる。
【0005】
ところで、高容量化が進む一方で重視すべきは安全対策であり、特に正極板と負極板との内部短絡などが原因で非水系二次電池の急激な温度上昇が起こり熱暴走に至る場合もあるため、非水系二次電池の安全性の向上が強く要求されている。特に、大型・高出力な非水系二次電池では、熱暴走の発生確率が高くなるためその発生確率を低くするなどの安全性を向上させる工夫が必要である。
【0006】
上述のように非水系二次電池が内部短絡する要因としては、非水系二次電池の内部に異物が混入する以外にも電極群を構成する際、さらには電池を充放電する際に電極板に加わる応力によって電極板が破断することが考えられる。より詳しくは、渦巻状に巻回して電極群を構成する際または扁平形に圧縮成形する際には構成要素である正極板、負極板、セパレータには曲率半径の小さい部分で大きな応力が加わり、合剤層の脱落またはこの際の各構成要素における伸び率の差によって最も伸び率が小さなものから破断することになる。
【0007】
また渦巻状に巻回する際、電極板とセパレータの位置関係にズレが生じ、電極板が露出することが考えられる。より詳しくは、電極板とセパレータを重ねて巻芯に巻きつけることで渦巻状に巻回した後、巻芯から抜く際、巻芯とセパレータの接触部分において摩擦が大きいために接触部のみが巻芯に残るため、その付近の電極板がセパレータで覆われなかったり、電極群の中心部分が巻回体からはみ出すという現象が起こり、電極群として体をなさないことになる。
【0008】
そこで、このような短絡による熱暴走を抑制するために、例えば負極板の表面との摩擦係数を定義して負極板が膨張してもセパレータの表層部のつぶれが発生せず、サイクル特
性の低下を抑制できるようなセパレータが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0009】
また、このような巻回の際の抜き時のズレを抑制するために、摩擦係数の小さい面を巻芯に接触させる巻回方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0010】
また、同様に巻回体をよりスムーズに巻芯から抜くために、巻芯の表面処理による摩擦係数を定義して最適値を選択する方法が提案されている(例えば、特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】国際公開第2008/059806号
【特許文献2】国際公開第2008/143005号
【特許文献3】特開2009−70726号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、上述した特許文献1の従来技術では、負極板とセパレータの相対摩擦係数を規定しているだけで、巻芯から抜き時のズレ等には何の対策も施していない。
【0013】
また、特許文献2の従来技術では、摩擦係数の小さい面を巻芯に接触させる巻回方法だが、相対的に摩擦係数の小さい面を巻芯に接触させても、抜き時の摩擦係数が十分に小さいとは言えず、課題は確実に解決できない。
【0014】
また、特許文献3では巻芯の表面処理による摩擦係数を定義しているが、接触するセパレータとの摩擦係数との関係が不明であり、課題が確実に解決できるとは限らない。
【0015】
本発明は、正極板と負極板とを両面で摩擦係数の異なるセパレータを介して巻回して電極群を構成する際に、セパレータの摩擦係数の大きい面を負極板と正極板のうち表面の摩擦係数の大きい方と接するように構成することで、製作時のズレや合剤の脱落を抑制し、また充放電を繰り返すことによる電極板の膨張収縮に起因した座屈を抑制して、信頼性の高い電池用電極群を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記従来の課題を解決するために本発明の電池用電極群は、表面の摩擦係数の異なる正極板と負極板とを備え、前記正極板と前記負極板を両面で摩擦係数の異なるセパレータを介して巻回してなる電池用電極群であって、前記セパレータの摩擦係数の大きい面を正極板と負極板のうち表面の摩擦係数の大きい方と接するように巻回して構成したことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明の電池用電極群によると、表面の摩擦係数の異なる正極板と負極板とを備え、前記正極板と前記負極板を両面で摩擦係数の異なるセパレータを介して巻回してなる電池用電極群において、前記セパレータの摩擦係数の大きい面を正極板と負極板のうち表面の摩擦係数の大きい方と接するように巻回して構成したことにより、製作時のセパレータのズレによる電極板の露出を抑制し、偏平形状に成形する際の合剤層の脱落を抑制することで内部短絡を抑制することが可能である。また、巻回状態の電極群において、電極板とセパレータの密着性が向上することにより、負極板にインターカレーションされるリチウムによって負極板の膨張による体積増加の際に電極群に加わる応力を抑制することができ、その結果、電極板の座屈を抑制し、電極板の破断を抑制することが可能である。また、この電極群を用いることで電極板の合剤脱落、破断または座屈に起因した内部短絡を抑制し安
全性の高い電池を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1の実施形態における角形非水系二次電池の一部切欠斜視図
【図2】本発明の第1の実施形態における電池用電極群の断面図
【図3】本発明の第1の実施形態における正極板と負極板とセパレータを示す概略図
【図4】本発明の第1の実施形態における扁平形状に成形する模式図
【図5】本発明の第1の実施形態における正極板と負極板とセパレータを巻芯に突入させて巻き込む模式図
【図6】(a)本発明の第1の実施形態における扁平形状に成形する模式図(b)従来の扁平形状に成形した電池用電極群の要部の拡大断面図(c)本発明の第1の実施形態における扁平形状に成形した電池用電極群の要部の拡大断面図
【図7】本発明の第2の実施形態における正極板と負極板とセパレータを示す概略図
【図8】本発明の第2の実施形態における正極板と負極板とセパレータを巻芯に突入させて巻き込む模式図
【図9】(a)本発明の第2の実施形態における扁平形状に成形する模式図(b)従来の扁平形状に成形した電池用電極群の要部の拡大断面図(c)本発明の第2の実施形態における扁平形状に成形した電池用電極群の要部の拡大断面図
【図10】本発明の他の実施形態における正極板と負極板とセパレータを示す概略図
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の第1の発明においては、表面の摩擦係数の異なる正極板と負極板とを備え、前記正極板と前記負極板を両面で摩擦係数の異なるセパレータを介して巻回してなる電池用電極群であって、セパレータの摩擦係数の大きい面を正極板と負極板のうち表面の摩擦係数の大きい方と接するように巻回して構成したことにより、セパレータと電極板の密着性が上がることで巻回時の巻き始めに発生するセパレータのズレによる電極板の露出と偏平形状に成形する際の合剤層の脱落を抑制することで内部短絡を抑制することが可能となり信頼性の高い電池用電極群を提供することができる。
【0020】
本発明の第2の発明においては、セパレータとしてポリオレフィン微多孔膜の片面にアラミドからなる耐熱性多孔質層を形成したものを用いたことにより、両面の摩擦係数の異なるセパレータを用いた電極群を構成することが可能となり、信頼性の高い電池用電極群を提供することができる。
【0021】
本発明の第3の発明においては、セパレータの摩擦係数の大きい面を正極板と接するように巻回したことにより、正極板とセパレータとの密着性が向上することで、積層時または巻回時の巻き始めに発生するセパレータのズレによる電極板の露出が抑制でき、エネルギー密度の高い正極板が常にセパレータに覆われていることで、より安全性の高い電池用電極群を提供することができる。
【0022】
本発明の第4の発明においては、セパレータの摩擦係数の大きい面を負極板と接するように巻回したことにより、負極板とセパレータとの密着性が向上することで、扁平成形時に発生する特に負極合剤層の脱落を抑制することで、相対する正極合剤層に確実に負極合剤層を対向させることで、リチウム析出による内部短絡を抑制することで、より安全性の高い電池用電極群を提供することができる。
【0023】
本発明の第5の発明においては、電池用電極群として本発明の第1〜4のいずれか1つのものを用いて非水電解液とともに電池ケースに封入して構成したことによりセパレータのズレによる電極板の露出を抑制し、さらにこれらに起因する内部短絡を効果的に抑制することできる。また、負極板にインターカレーションされるリチウムによって負極板の膨
張による体積増加の際に電極群に加わる応力を抑制することができ、その結果、電極板の座屈を抑制し、電極板の破断を抑制することが可能となって、電極板の合剤脱落、破断または座屈に起因した内部短絡を抑制し安全性の高い電池を提供することが可能である。
【0024】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
(実施の形態1)
以下、本発明の一実施の形態について図面を参照しながら説明する。本発明の図1に示す電池の一例である角形非水系二次電池1は、電池用電極群2を有底偏平形の電池ケース3の内部に絶縁板4と共に収容し、電池用電極群2の上部より導出した負極リード5を絶縁ガスケット6を周縁に取り付けた端子7に接続し、次いで電池用電極群2の上部より導出した正極リード8を封口板9に接続し、電池ケース3の開口部に封口板9を挿入し、電池ケース3の開口部の外周に沿って、封口板9と電池ケース3を溶接して封口し、封栓口10から電池ケース3に所定量の非水溶媒からなる非水電解液(図示せず)を注液した後、封栓11を封口板9に溶接して構成している。
【0025】
ここで、電池用電極群2は、図2に示すように複合リチウム酸化物を活物質とする正極板12とリチウムを保持しうる材料を活物質とする負極板13とを間に多孔質絶縁層としてのセパレータ14を介して渦巻状に巻回して構成している。ここで、正極板12と負極板13の表面の摩擦係数は異なる。さらに詳しくは、図3に示すように、正極板12とセパレータ14と負極板13とセパレータ14とを配置してAに示す方向に巻芯(図示せず)に巻き付けて、渦巻状に巻回して構成することができる。その後、扁平形電池の場合には、図4で示すような工程で偏平形状に成形している。上記セパレータ14は、表裏で摩擦係数の異なる構成になっており、片面にアラミドからなる耐熱性多孔質層15aを形成し片面は微多孔フィルム層15bからなるセパレータ14を用いて構成したもので、正極板12と対向する面にセパレータ14の摩擦係数の大きい耐熱性多孔質層15aを配置して、負極板13とセパレータ14とともにAに示す方向に巻芯(図示せず)に巻き付けて渦巻状に巻回して構成している。セパレータ14の厚みは、10〜25μmとするのが良い。正極板12と、セパレータ14の摩擦係数の大きい面とが接するように巻回して構成することで、巻回時におけるセパレータと正極板12のずれによる露出が抑制でき、また偏平形状に成形する際の合剤層の脱落を抑制することで内部短絡を抑制することが可能となり信頼性の高い電池用電極群2を提供することができる。
【0026】
さらに詳しくは、巻回開始時には、正極板12と負極板13とセパレータ14は図5に示すような位置関係になっていて、セパレータ14で挟まれていない正極板12を巻芯20に突入させて巻き込む必要があるが、密着性が低いと巻き込み時にすべってしまい、正しい位置関係を維持して巻回することができないことになる、しかし、図3に示すように、表面の摩擦係数の大きい正極板12とそれに対向する面にセパレータ14の摩擦係数の大きい耐熱性多孔質層15a面を配置して巻回することによって、正極板12とセパレータ14の密着性があがるので、電極板との密着性が上がり、特に巻き始めでの電極板の突入時に滑ることなく巻き込むことができるので、ずれることなく電極板の露出が抑制できる。
【0027】
また巻回後扁平形状に成形する際には、図6(a)に示すように略円形状の巻回体を上下からはさんで圧縮するが、最内周の巻き始め部分は固定されていないため、従来は、圧縮による変形に伴いすべりが生じて内側へ移動する。そのため、図6(b)に示すように、湾曲部においてはセパレータが電極板に密着せず、押圧変形時に内側の合剤を保持できずに脱落をすることになる。一方で、本発明の実施の形態では、図6(c)に示すように、正極板12と、セパレータ14の摩擦係数の大きいとが密着しているため、圧縮による変形に伴いすべりが生じる事がないので、その結果湾曲部の形成時にも合剤層が保持でき
るため、合剤層の脱落を抑制できる。
【0028】
上記正極板12は、正極活物質、結着材を適切な分散媒中に入れ、プラネタリーミキサー等の分散機により混合分散し、アルミニウム箔などの正極集電体16への塗布に最適な粘度に調整しながら混練を行って正極合剤塗料を作製する。
【0029】
ここで、正極活物質としては、例えばコバルト酸リチウムおよびその変性体(コバルト酸リチウムにアルミニウムやマグネシウムを固溶させたものなど)、ニッケル酸リチウムおよびその変性体(一部ニッケルをコバルト置換させたものなど)、マンガン酸リチウムおよびその変性体などの複合酸化物を挙げることができる。
【0030】
このときの導電材種としては、例えばアセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラック等のカーボンブラック、各種グラファイトを単独、あるいは組み合わせて用いても良い。
【0031】
このときの正極用結着材としては、例えばポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリフッ化ビニリデンの変性体、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、アクリレート単位を有するゴム粒子結着材等を用いることができ、この際に反応性官能基を導入したアクリレートモノマー、またはアクリレートオリゴマーを結着材中に混入させることも可能である。
【0032】
次いで、正極集電体16に上述した正極合剤塗料を所定に厚みに塗布して正極合剤層17a、17bを形成し、乾燥したのちほぼ全面的に所定の厚みにプレスされる工程を経て、正極板12が作製される。
【0033】
一方、負極板13は、負極活物質、導電材、結着材を適切な分散媒中に入れ、プラネタリーミキサー等の分散機により混合分散し、銅箔などの負極集電体18への塗布に最適な粘度に調整しながら混練を行って負極合剤塗料を作製する。
ここで、負極用活物質としては、各種天然黒鉛および人造黒鉛、シリサイドなどのシリコン系複合材料、並びに各種合金組成材料を用いることができる。
【0034】
このときの負極用の結着材としては、ポリフッ化ビニリデンおよびその変性体を用いることができる。しかしながら、リチウムイオンの受入れ性を向上させるという観点からは、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム粒子(SBR)またはその変性体とカルボキシメチルセルロース(CMC)をはじめとするセルロース系樹脂等とを併用したものや、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム粒子またはその変性体に上記セルロース系樹脂を少量添加したものを使用するのが好ましい。
【0035】
次いで、負極集電体18に上述した負極合剤塗料を所定に厚みに塗布して負極合剤層19a、19bを形成し、乾燥したのちほぼ全面的に所定の厚みにプレスされる工程を経て、負極板13が作製される。
【0036】
非水電解液は、電解質塩としてLiPF6およびLiBF4などの各種リチウム化合物を用いることができる。また溶媒としてエチレンカーボネート(EC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、メチルエチルカーボネート(MEC)を単独および組み合わせて用いることができる。また正極板12または負極板13上に良好な皮膜を形成させるため、および過充電時の安定性を保証するために、ビニレンカーボネート(VC)およびシクロヘキシルベンゼン(CHB)、並びにその変性体を用いるのが好ましい。
【0037】
(実施の形態2)
図7は、本発明の第2の実施形態における正極板12と負極板13とセパレータ14を示す概略図斜視図である。実施の形態1と同様の構成については、説明を割愛する。
【0038】
図7に示すように、両面に多孔質絶縁層21を形成した負極板13と片面にアラミドからなる耐熱性多孔質層15aを形成し片面は微多孔フィルム層15bからなるセパレータ14を用いたもので、負極板13とそれに対向する面にセパレータ14の摩擦係数の大きい耐熱性多孔質層15aを配置して、正極板12とセパレータ14とともにAに示す方向に渦巻状に巻回して構成している。
【0039】
さらに詳しくは、巻回開始時には、正極板12と負極板13とセパレータ14は図8に示すような位置関係になっていて、セパレータ14で挟まれない負極板13を巻芯20に突入させて巻き込む必要があるが、密着性が低いと巻き込み時にすべってしまい、正しい位置関係を維持して巻回することができないことになる、しかし、図7に示すように、負極板13とそれに対向する面にセパレータ14の摩擦係数の大きい耐熱性多孔質層15a面を配置して巻回することによって、負極板13とセパレータ14の密着性があがるので、電極板との密着性が上がり、特に巻き始めでの電極板の突入時に滑ることなく巻き込むことができるので、ずれることなく電極板の露出が抑制できる。
【0040】
また巻回後扁平形状に成形する際には、図9(a)に示すように略円形状の巻回体を上下からはさんで圧縮するが、最内周の巻き始め部分は固定されていないため、従来は、圧縮による変形に伴いすべりが生じて内側へ移動する。そのため、図9(b)に示すように、湾曲部においてはセパレータが電極板に密着せず、押圧変形時に内側の合剤を保持できずに脱落をすることになる。一方で、本発明の実施の形態では、図9(c)に示すように、負極板13と、セパレータ14の摩擦係数の大きいとが密着しているため、圧縮による変形に伴いすべりが生じる事がないので、その結果湾曲部の形成時にも合剤層が保持できるため、合剤層の脱落を抑制できる。
【0041】
これにより、偏平形状に成形する際の合剤層の脱落を抑制することで内部短絡を抑制することが可能となり信頼性の高い電池用電極群2を提供することができる。
【0042】
以上の様に、本発明の二次電池1は、電極板とセパレータ14との密着性が高いため、充電時に負極板13にインターカレーションされるリチウムイオンによる負極板13の膨張を抑制することができるため、電極板の体積膨張による電極群2の座屈を抑制し、座屈に起因した電極板の破断や内部短絡を抑制し安全性の高い二次電池1を提供できる。
【0043】
なお、本実施の形態のセパレータ14は、表裏で摩擦係数の異なる構成になっており、片面にアラミドからなる耐熱性多孔質層15aを形成し片面は微多孔フィルム層15bからなるセパレータ14を用いて表裏で摩擦係数の異なる構成にしているが、二次電池1の使用範囲に耐えうる組成であれば、図10に示すように、特にポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂の微多孔フィルムを、単一あるいは複合して用いてもよい。
【0044】
以下、具体的な実施例について、さらに詳しく説明する。
(実施例1)
以下のようにして、図3に示したのと同じ構造の正極板12と負極板13とセパレータ14を作製した。まず、正極板12においては、活物質としてコバルト酸リチウムを100重量部、導電材としてアセチレンブラックを活物質100重量部に対して2重量部、結着材としてポリフッ化ビニリデン(PVdF)を活物質100重量部に対して2重量部とを適量のN−メチル−2−ピロリドンと共に双腕式練合機にて攪拌し混練することで、正
極合剤塗料を作製した。
【0045】
次いで、この正極合剤塗料を厚み15μmのアルミニウム箔からなる正極集電体16の表面と裏面に塗布し、乾燥後に片面側の正極合剤層17a、17bの厚みがそれぞれ100μmとなる正極板12を作製した。
【0046】
さらに、この正極板12を、片面側の正極合剤層17a、17bの厚みがそれぞれ75μmで総厚みが165μmとなるようにプレスした後、角形非水系二次電池1に最適な幅にスリッタ加工して正極板12を作製した。
【0047】
一方、負極板13においては活物質として人造黒鉛を100重量部、結着材としてスチレン−ブタジエン共重合体ゴム粒子分散体(固形分40重量%)を活物質100重量部に対して2.5重量部(結着材の固形分換算で1重量部)、増粘剤としてカルボキシメチルセルロースを活物質100重量部に対して1重量部、および適量の水とともに双腕式練合機にて攪拌し、負極合剤塗料を作製した。
【0048】
次いで、この負極合剤塗料を厚み10μmの銅箔からなる負極集電体18の表面と裏面に塗布し、乾燥後に片面側の負極合剤層19a、19bの厚みがそれぞれ110μmとなる負極板13を作製した。
【0049】
さらに、この負極板13を片面側の負極合剤層19a、19bの厚みがそれぞれ85μm、総厚みが180μmとなるようにプレスした後、角形非水系二次電池1に最適な幅にスリッタ加工して負極板13を作製した。
【0050】
セパレータ14においては、主成分がポリオレフィンである多孔質フィルムを基材として、その片方の表面にアラミドからなる摩擦係数の大きい耐熱性多孔質層15aを厚み2μmに塗布して作成した。
【0051】
以上のようにして作製した正極板12と負極板13とセパレータ14を用いて、図1に示すような角形非水系二次電池1を作製した。より具体的には、図3に示したように、正極板12と負極板13とセパレータ14の耐熱性多孔質層15aを正極板12に面するように配置して図3のA方向に渦巻状に巻回して扁平に成形した電池用電極群2を100個作製した。この電池用電極群2の中から60個を抜き出し有底偏平形の電池ケース3の内部に絶縁板4と共に収容し、電池用電極群2の上部より導出した負極リード5を絶縁ガスケット6を周縁に取り付けた端子7に接続し、次いで電池用電極群2の上部より導出した正極リード8を封口板9に接続し、電池ケース3の開口部に封口板9を挿入し電池ケース3の開口部の外周に沿って電池ケース3と封口板9とを溶接して封口し、封栓口10から電池ケース3に所定量の非水溶媒からなる非水電解液(図示せず)を注液した後、封栓11を封口板9に溶接して作製した角形非水系二次電池1を実施例1とした。
(実施例2)
以下のようにして、図7で示したのと同じ構造の正極板12と負極板13とセパレータ14を作製した。まず、実施例1と同様に正極板12とセパレータ14を作成した。負極板13は、実施例1と同様に作成した後、その表面にフィラーとしてAl3O2を含む無機化合物を厚み2μmで塗工した。これらの正極板12、負極板13、セパレータ14を図1に示すような角形非水系二次電池1を作製した。
【0052】
より具体的には、図7に示したように、正極板12と負極板13とセパレータ14の摩擦係数の大きい耐熱性多孔質層15aを摩擦係数の大きい負極板13に面するように配置して図7のA方向に渦巻状に巻回して扁平に成形した電池用電極群2を100個作製した。これらの電池用電極群2の中から60個を抜き出し、実施例1と同様にして作製した角
形非水系二次電池1を実施例2とした。
(比較例1)
正極板12および負極板13およびセパレータ14は、実施例1と同様に作製したものを用いた。電池用電極群2はセパレータ14の摩擦係数が低い方を摩擦係数が高い正極板12に対向するように配置して、渦巻状に巻回して扁平に成形した電池用電極群2を100個作製した。これらの電池用電極群2の中から60個を抜き出し、実施例1と同様にして作製した角形非水系二次電池1を比較例1とした。
(比較例2)
正極板12および負極板13は実施例1と同様に作製したものを用いた。セパレータ14としては、ポリエチレン単一材料としたもので、表裏の摩擦係数は同じである。これらの正極板12と負極板13およびセパレータ14を用いて、渦巻状に巻回して扁平に成形した電池用電極群2を100個作製した。これらの電池用電極群2の中から60個を抜き出し、実施例1と同様にして作製した角形非水系二次電池1を比較例2とした。
(比較例3)
正極板12および負極板13は実施例1と同様に作製したものを用いた。セパレータ14は、多孔質フィルムを基材として、その両面にアラミドからなる摩擦係数の大きい耐熱性多孔質層15aを厚み2μmに塗布して作成した。
【0053】
電池用電極群2はセパレータ14の摩擦係数が低い方を正極板12に対向するように配置して、渦巻状に巻回して扁平に成形した電池用電極群2を100個作製した。これらの電池用電極群2の中から60個を抜き出し、実施例1と同様にして作製した角形非水系二次電池1を比較例3とした。
【0054】
上記各実施例と比較例の所要内容を(表1)に示す。
【0055】
【表1】
【0056】
(表1)の条件で渦巻状に巻回した電極群2および角形非水系二次電池1において、以下の内容で評価を行った。実施例1〜2および比較例1〜3についてそれぞれ100個の中から40個を抜き出して電池用電極群2を解体して観察した結果を(表2)に示す。
【0057】
また、上述のようにして実施例1〜2および比較例1〜3について作製したそれぞれ60個の角形非水系二次電池1について、充放電を500サイクル繰り返したときの初期容量に対する容量維持率と電極板の厚みの変化率を(表2)に示す。
【0058】
さらに、この60個のうちの30個を500サイクル繰り返した後に角形非水系二次電
池1および電池用電極群2を解体し観察した結果を(表2)に示す。
【0059】
【表2】
【0060】
(表2)の結果より、実施例1〜2においては、いずれも正極板12、負極板13ともに電極板の破断や合剤層の脱落などの不具合は認められなかった。また500サイクル後の初期容量に対する容量維持率および500サイクル後に分解し観察した結果、リチウム析出、電極板の破断、電極板の座屈、合剤層の脱落などの不具合は認められなかった。
【0061】
また、500サイクル後の厚み増加量も小さく座屈が抑制されており、このため良好な電池特性が維持できたと考えられる。
【0062】
一方、比較例1〜3においては500サイクル後の初期容量に対する容量維持率は低下しており、500サイクル後に分解し観察した結果からリチウム析出、電極板の破断、電極板の座屈、合剤層の脱落などの不具合が認められた。
【0063】
加えて、これらの500サイクル繰り返した後の残りの30個について、次のような試験を行った。
【0064】
まず、落下試験として上述の角形非水系二次電池1を上限電圧4.2V、電流2Aの条件で2時間充電を行った後に、1.5mの高さからコンクリート面上に、角形非水系二次電池1の6面に対し各10回落下試験を行い、室温25℃にて10個の発熱温度を測定し、10個の平均値を求めた結果を(表3)に示す。また落下試験後の発熱の有無を確認した結果を(表3)に示す。
【0065】
また、丸棒圧壊試験として上述の角形非水系二次電池1を上限電圧4.2V、電流2Aの条件で2時間充電を行った後、電池を寝かせた状態で長さ方向に対し垂直方向に直径10mmの丸棒で圧壊試験を実施し、室温25℃にて10個の発熱温度を測定し、10個の平均値を求めた結果を(表3)に示す。
【0066】
さらに、150℃加熱試験として上述の角形非水系二次電池1を上限電圧4.2V、電流2Aの条件で2時間充電を行った後、電池を恒温層に挿入し、常温から5℃/分の条件で恒温層の温度を150℃まで昇温させて、そのときの電池発熱温度を測定し10個の平均値を求めた結果を(表3)に示す。
【0067】
【表3】
【0068】
(表3)の結果より、実施例1〜2では500サイクル後の落下試験、丸棒圧壊試験、150℃加熱試験については、不具合は認められなかった。
【0069】
これは、座屈が抑制されており、それらに起因する内部短絡を抑制することができたために、良好な安全性を維持できたものと考えられる。
【0070】
一方、比較例1〜3で示した非水系二次電池1は、500サイクル後に分解し観察した結果、リチウム析出、電極板の破断、電極板の座屈、合剤層の脱落などの不具合が認められた。
【0071】
また、落下試験、丸棒圧壊試験、釘刺し試験、150℃加熱試験のいずれの試験においても、発熱温度が高いことより、巻回時の合剤層の脱落や電極板の破断に起因する内部短絡や座屈が発生していることが原因と考えられる。
【0072】
以上の結果より、両面で摩擦係数のことなるセパレータ14の摩擦係数の大きい面を正極板12と負極板13のうち表面の摩擦係数の大きいほうと接するように構成したことにより、電極板との密着性が上がり、特に巻き始めでの電極板の突入時に滑ることなく巻き込むことで、ずれることなく電極板の露出を抑制したり、扁平に変形させる際の合剤層の脱落を抑制することで、それに伴う内部短絡を抑制することができた。
【0073】
なお、実施例1〜2においては、渦巻状に巻回した電池用電極群2を作成したが、つづら折れ状に積層した電池用電極群2においても同様の効果が得られるのは言うまでもない。
【0074】
さらに、これら実施例においては角形非水系二次電池1を用いて説明したが、円筒形非水系二次電池についても同様の効果が得られるのは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明に係る電池用電極群は、正極板と負極板とを両面で摩擦係数の異なるセパレータを介して巻回してなる電池用電極群において、セパレータの摩擦係数の大きい面を正極板と負極板のうち表面の摩擦係数の大きい方と接するように構成することによって、巻回時の電極板のずれによる電極板の露出を抑制し、扁平形状に成形する際の合剤の脱落を抑制することで内部短絡を抑制することが可能である。また、この電池用電極群を用いることで内部短絡による発熱を抑制し安全性の高い電池を提供することが可能であるため電子機
器および通信機器の多機能化に伴って高容量化が望まれている携帯用電源等として有用である。
【符号の説明】
【0076】
1 角形非水系二次電池
2 電池用電極群
3 電池ケース
4 絶縁板
5 負極リード
6 絶縁ガスケット
7 端子
8 正極リード
9 封口板
10 封栓口
11 封栓
12 正極板
13 負極板
14 セパレータ
15a 耐熱性多孔質層
15b 微多孔フィルム層
16 正極集電体
17a、17b 正極合剤層
18 負極集電体
19a、19b 負極合剤層
20 巻芯
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面の摩擦係数の異なる正極板と負極板を備え、前記正極板と前記負極板を両面で摩擦係数の異なるセパレータを介して巻回してなる電池用電極群において、前記セパレータの摩擦係数の大きい面を正極板と負極板のうち表面の摩擦係数の大きい方と接するように巻回して構成した電池用電極群。
【請求項2】
前記セパレータとしてポリオレフィン微多孔膜の片面にアラミドからなる耐熱性多孔質層を形成したものを用いた請求項1に記載の電池用電極群。
【請求項3】
前記セパレータの摩擦係数の大きい面を正極板と接するように巻回した請求項1または2のいずれかに記載の電池用電極群。
【請求項4】
前記負極板として表面に多孔質絶縁層を形成しセパレータの摩擦係数の大きい面と負極板が接するように巻回した請求項1に記載の電池用電極群。
【請求項5】
正極板と負極板とをセパレータを介して巻回してなる電極群を電解液とともに電池外装体内に封入してなる電池において、前記電極群として請求項1〜4のいずれか1つに記載の電池用電極群を用いたことを特徴とする電池。
【請求項1】
表面の摩擦係数の異なる正極板と負極板を備え、前記正極板と前記負極板を両面で摩擦係数の異なるセパレータを介して巻回してなる電池用電極群において、前記セパレータの摩擦係数の大きい面を正極板と負極板のうち表面の摩擦係数の大きい方と接するように巻回して構成した電池用電極群。
【請求項2】
前記セパレータとしてポリオレフィン微多孔膜の片面にアラミドからなる耐熱性多孔質層を形成したものを用いた請求項1に記載の電池用電極群。
【請求項3】
前記セパレータの摩擦係数の大きい面を正極板と接するように巻回した請求項1または2のいずれかに記載の電池用電極群。
【請求項4】
前記負極板として表面に多孔質絶縁層を形成しセパレータの摩擦係数の大きい面と負極板が接するように巻回した請求項1に記載の電池用電極群。
【請求項5】
正極板と負極板とをセパレータを介して巻回してなる電極群を電解液とともに電池外装体内に封入してなる電池において、前記電極群として請求項1〜4のいずれか1つに記載の電池用電極群を用いたことを特徴とする電池。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2013−89441(P2013−89441A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−228594(P2011−228594)
【出願日】平成23年10月18日(2011.10.18)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月18日(2011.10.18)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
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