説明

電池

【課題】放電電圧が低下しにくくて長寿命である低コストのアルカリ一次電池およびアルカリ二次電池を提供すること。
【解決手段】正極集電器397、正極の粉体活物質と電解質溶液395、イオン透過性セパレーター391、負極の粉体活物質と電解質溶液394、および負極集電器396を、この順で配置したアルカリ一次電池において、負極活物質として、炭化金属または炭化金属とこの金属の混合物を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池及びその電池を構造の一部として有する機器または装置並びに地域分散型発電方法及びその発電装置に関し、さらに詳しくは、活物質を粉体にして構成した大電力の貯蔵が可能な三次元構造の電池およびその電池を構造の一部として有する機器または装置並びに放電電圧が低下しにくい長寿命のアルカリ一次電池およびアルカリ二次電池、ならびに自動二輪車、自動三輪車、自動四輪車、船舶等の移動・輸送手段の動力を利用した地域分散型発電方法及びその発電装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
本発明は電池に関するものであるが、本発明が解決しようとする課題は従来技術との関係において、次の5つの課題に大別することができる。
【0003】
すなわち、第一の課題は、板状あるいは円柱状や円筒状などの一定の容積を占める活物質を電解質溶液に浸漬した構造である従来型電池の欠点を改良した電池を提供すること、第二の課題は従来型電池では実質的に不可能である大電力容量の三次元電池を提供すること、第三の課題は第一または第二の課題の解決手段である三次元構造の電池の実用的な用途を提供すること、第四の課題は放電電圧が低下しにくい長寿命のアルカリ一次電池またはアルカリ二次電池を提供すること、そして、第五の課題は、三次元構造の電池を利用した地域分散型発電方法及びその発電装置を提供することにある。以下、第一〜第五の課題を従来技術との比較において、順次説明する。
1.従来技術と第一の課題
従来、電池は活物質を板状あるいは円柱状や円筒状にして電解質溶液に浸した構造をとってきた。そして、カソードとアノードとの間に板状の電解質板を挟み込み積層構造としている。例えば、特許文献1には、化石燃料の燃焼熱を利用することにより、放電後の電池物質を熱的又は化学的に再生して連続的に発電を行う方法及び装置が開示されている。
【0004】
ところが、従来の電池には下記のような問題点がある。
(1)スケールアップが不可能である。
【0005】
電池を流れる電流は膜の面積に比例している。例えば、膜の面積が1m2 で1Wの電池があるとすると、これを100万kWにするには10億m2 の面積が必要となる。これは正方形にすると約32km四方となり、フランジなどをつくることは現実的に不可能である。また、膜の枚数を増やして対応しても、同様にスケールアップは不可能である。
(2)活物質や触媒の劣化に対応できない。
【0006】
従来の電池では、活物質や触媒などを電池の構造材に兼用しているので、劣化した場合は電池全体を取り替えるしかないが、現実的には取り替えは不可能で、劣化した電池は廃却されている。
(3)充放電に伴う発熱と吸熱に対応する伝熱体が設置できない。
【0007】
電池の充放電に伴って発熱、吸熱があり、温度が高くなると電力変換効率が低下し、逆に温度が低くなると反応速度が遅くなるという電池特性から、電池の中に伝熱体を設けて適正な温度に調節する必要がある。しかし、従来の電池は構造が複雑なので、伝熱体は設置されていない。また、電池が小さく、出力に対して電池表面積が小さいので、自然放置により放冷するか又は吸熱する方式である。また、温度ヒューズなどを使って上限温度を設定している例もあるが、温度制御装置は設置されていない。
(4)エネルギー密度が小さい。
【0008】
従来の電池は、電流が膜の面積に比例している。従って、例えば、膜の面積が1m2 で1Wの電池では、1000kWの電池をつくる場合、膜の面積が1m2 で幅0.1mの膜状電池100万個が必要となって、100000m3 の大きさになり、エネルギー密度を大きくすることはできない。
【0009】
第一の発明は上述の諸点に鑑みなされたもので、第一の発明が解決しようとする第一の課題は、活物質を粉体にして容器の中に粉体を入れた電池を構成することにより、スケールアップが可能で、劣化した活物質・触媒の再生や取り替え等に対応でき、電池内に伝熱体を設置することができ、しかも、エネルギー密度を大きくすることができる電池を提供することにある。
2.従来技術と第二の課題
従来、電池は活物質を板状、円柱状あるいは円筒状などの所定形状に定形化して電解質溶液に浸漬した構造からなっており、正極と負極の間に電解質の板を挟み込ませて積層構造としている。つまり、ニッケル水素電池などの積層化は、図49に示すように、集電体431、正極432、セパレータ433、負極434、集電体435の順に密着させることにより行われている。この例は、例えば、特許文献2に記載されている。同文献に記載の電池は、水酸化ニッケルを主体とする正極と水素吸蔵合金を主体とする負極と高分子不織布からなるセパレーターとアルカリ水溶液からなる電解液を有する素電池(単位電池)を、複数個直列に接続して金属製の角形容器に収納し、開口部を可逆性べントを有する封口板で密閉した構造の電池である。
【0010】
上記した構造を含めて従来の電池430は膜構造(二次元)からなつており、電池430を大容量化する場合には、薄くするために図50のように延長して巻装したり、図51のように単位電池430を並列に接続するか、あるいは図52のように多数の単位電池430内に複数の電極板436を介装し、各電極板436に接続した配線437を電池の外へ抜き出し、これらの電極を別の単位電池の極性が異なる電極板438と繋いで積層構造にすることが一般的である。 しかしながら、図49〜図52に示す従来の電池では、下記のような不都合がある。
(1)スケールアップに限界がある。
【0011】
すなわち、従来の電池は膜構造(二次元)からなり、電池を流れる電流は膜の面積に比例するから、例えばlm2 の面積で1Wの電力が生じるとすると、10kWの電力を発生させるためには(100×100)m2 の面積が必要になる。そこで、膜の枚数を増やしたり、膜を拡大して巻いたりすることが考えられるが、いずれの場合にも膨大な大きさになり、実用化が困難である。したがって、結果的に電池を並列に接続しなければならなくなって、全体の構造が複雑になる。
(2)大容量化に伴う製造コストが極めて高い。
【0012】
すなわち、大容量化を図ろうとすると、膜構造の電池では膜の面積を比例して増大させる必要があり、製造コストが電池容量の増大化に伴い比例してアップする。このため、スケールアップすることによる、製造コスト上のメリットがなくなる。
(3)電池の劣化に対応できない。
【0013】
すなわち、活物質が電池の構成部材として板状や円柱状などに固定化されているので、劣化した場合には活物質のみを交換できないから、電池全体を交換する必要がある。
(4)電池を直列に接続した際に装置費用や接続部の抵抗エネルギーロスが大きい。すなわち、例えば1個当たり1.6V〜2.0Vの電池を複数個接続して100Vなどの高い電圧を得る場合、電線等で電池間を接続しなければならず、そのための作業費が高くなるだけでなく、接続部を通過する電流による発熱ロスが発生してエネルギーロスを生じる。
【0014】
第二の発明は上述の諸点に鑑みなされたもので、第二の発明が解決しようとする第二の課題は、電池の構造を三次元化することにより、電池容量を増大する場合に電池の容積(セル)を増大することによって対応でき、スケールアップに伴う種々のメリットが生じる積層型の三次元電池を提供することにある。
3.従来技術と第三の課題
一般的に各種機器および装置は、以下の発明の実施の形態で詳細に説明するように、機器または装置内の空間が有効に利用されていないことが多い。
【0015】
そこで、第三の発明が解決しようとする第三の課題は、第一または第二の発明に係る三次元構造の電池を各種の機器または装置の一部として構成する、三次元電池の実用的で有効な用途を提供することにある。
4.従来技術と第四の課題
実用電池は、充放電の繰り返しができない一次電池、充放電の繰り返しができる二次電池、物理電池(例えば、太陽電池)および生物電池(例えば、酵素電池)からなる特殊電池、ならびに燃料電池に大別できる。
【0016】
第四の課題は、これら実用電池の中のアルカリ一次電池およびアルカリ二次電池の欠点を改善することにある。
【0017】
電池は、3つの主要な構成要素である負極、正極および電解質からなる。そして、放電時において、負極においては、電気化学反応により外部回路に電子を放出し、それ自身は酸化され、正極においては、電気化学反応により外部回路から電子を受け入れ、それ自身は還元され、電解質はイオン伝導性のものであり、電気化学反応時の負極と正極間のイオン移動媒体となる。このように、放電時には負極で酸化反応が起こり、正極で還元反応が起こるので、負極材料としては、水素吸蔵合金、カドミウム、鉄、亜鉛、鉛などの還元物(非酸化物)が使用され、正極材料としては酸化物が使用されている。
【0018】
例えば、アルカリ一次電池の中のアルカリマンガン電池は、正極活物質として二酸化マンガンと炭素を用い、負極活物質として亜鉛を用い、電解液として、水酸化カリウムまたは水酸化ナトリウム溶液を用いるものが一般的である。このアルカリマンガン電池によれば、以下のように反応が進行する。
(負極) Zn+4OH-→Zn(OH)42-+2e-
(正極) MnO2+H2O+e-→MnOOH+OH-
また、代表的なアルカリ二次電池である、ニッケル−カドミウム蓄電地は、正極活物質として水酸化ニッケルと炭素を用い、負極活物質としてカドミウムを用い、電解液として水酸化カリウム溶液を用いるものが一般的である。このニッケル−カドミウム蓄電地によれば、以下のように反応が進行する。
【0019】
【化1】

【0020】
上式の中で、右方向の矢示は放電反応を示し、左方向の矢示は充電反応を示す。上式で明らかなように、負極における放電反応によって、水酸化亜鉛や水酸化カドミウムなどの水酸化物が生成する。電極に要求される機能としては、一定の機械的強度や使用電位領域における耐食性を備えることも重要であるが、特に重要な機能は導電性が優れていることである。
【0021】
しかし、金属酸化物や金属水酸化物は一般的に比抵抗が大きく、導電性が劣るので、従来より、金属酸化物を活物質とする正極材料には、炭素、亜鉛、コバルトなどの導電性材料を導電助剤として混合したものが使用されていた。しかし、負極活物質には、酸化反応を促進するために金属単体が用いられていたので、放電によってその金属が金属酸化物や金属水酸化物に化学変化することで導電性が低下する。そこで、導電性を高めるために、負極活物質である亜鉛等の金属に炭素粉、ニッケル粉またはコバルト粉などの導電性物質を混合したペレット状物を用いるか、または、亜鉛等の金属からなる負極集電体に上記導電性物質を圧着したものを用いることが提案されている。
【0022】
しかし、圧着処理やペレット状物を得るための造粒処理は煩雑であり、製造コストを上昇させる。
【0023】
第四の発明は上述の点に鑑みなされたもので、第四の発明が解決しようとする第四の課題は、放電が進行しても良好な放電特性を示し(放電電圧が低下しにくい)、長寿命である低コストのアルカリ一次電池およびアルカリ二次電池を提供することにある。
5.従来技術と第五の課題
従来の地域分散型発電システムは、発電によって副次的に発生する熱エネルギーを使用して温風や冷風、温水、蒸気を発生させ、蒸気エネルギーと熱エネルギーを供給する固定型のコージェネレーションシステムである。また、このような地域分散型コージェネレーション設備には、太陽光発電、風力発電等が利用されている。
【0024】
また、従来の技術としては、家屋に設置された太陽電池を利用して、電気自動車のバッテリーを充電することが知られている。
【0025】
また、特許文献3には、商用電源と系統連系運転される燃料電池発電システムにより電気自動車のバッテリーを充電する技術が開示されている。
【0026】
地域分散型コージェネレーションシステムを普及させるためには、各家庭や事務所に発電設備を設置する必要がある。しかし、発電設備は高価であり、家庭用等として購入した場合、電力の購買価格との差により経済効果を得るためには長い年月を必要とする。このように、家庭用、事務所用に発電設備を設置するのは設備費が高く、長時間使用しないと採算が取れず、地域分散型コージェネレーションシステムの普及を困難にしている。例えば、太陽光発電においては、設備費の半額を国家負担として普及を促そうとしたが、それでも経済的に成立せず、多額の予算が余るという結果になった。
【0027】
第五の発明は上述の諸点に鑑みなされたもので、第五の発明が解決しようとする第五の課題は、家庭用、事務所用に固定型の発電設備のみを設置するのを止めて、本来は移動、輸送手段として利用される自動車等に設けられた発電システムを家庭用、事務所用にも利用することにより、輸送設備と自家発電設備を共通の設備にすることによって設備費を大幅に削減することができ、家庭や事務所に発電設備がなくてもコージェネレーションを行うことが可能となる地域分散型発電方法及びその発電装置を提供することにある。
【0028】
なお、太陽光発電等の固定型発電設備を自動車等の移動・輸送手段の充電に利用するという技術は公知であるが、自動車等の移動・輸送手段で発生させた電力を家庭用等の固定型発電設備で利用するという技術は見あたらない。
【特許文献1】特開平7−169513号公報
【特許文献2】特開平9−298067号公報
【特許文献3】特開平6ー225406号公報
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0029】
1.第一の発明
第一の課題を解決するための第一の発明の電池は、イオンが通過するが電子を通過させない部材を介して接続された2つの容器の一方の容器に電解質溶液と電子を放出する活物質の粉体が装填され、他方の容器に電解質溶液と電子を吸収する活物質の粉体が装填され、2つの容器内に活物質である粉体と接触する導電体の集電装置が設けられてなる構成とされている(図1参照)。
【0030】
第一の発明の電池において、後記するように、活物質である粉体同士及び活物質の粉体と導電装置とが効率よく接触するように、2つの容器内で電解質溶液中の活物質の紛体を流動化させるための液体又は気体による流動化流体分散手段及び攪拌手段の少なくともいずれかの手段を、2つの容器に接続するか、又は2つの容器内に設けることが好ましい(図2〜図12参照)。
【0031】
第一の発明の電池において、活物質である粉体と接触する集電装置を、棒状、板状及び管状のいずれかの形状とすることができる(図1〜図4参照)。
【0032】
また、第一の発明の電池において、活物質である粉体と接触する集電装置を、容器内の活物質である粉体を流動化させる液体又は気体による流動化流体分散手段及び攪拌手段の少なくともいずれかの手段と兼用のものとすることができる(図5、図6参照)。
【0033】
また、これらの第一の発明の電池において、後記するように、2つの容器内に、電池内の反応温度をー定にするための伝熱体を設けることが好ましい。伝熱体としては、活物質である粉体と接触する管状の集電体及び板状の集電体のいずれかを用いることができる(図8、図9参照)。
【0034】
また、これらの第一の発明の電池において、後記するように、2つの容器にそれぞれ、劣化した活物質である粉体を容器から抜き出すための抜出手段及び活物質である粉体を容器に供給するための供給手段を接続することが好ましい(図10、図11参照)。
【0035】
この場合、抜出手段に、抜き出した活物質である粉体を再生する再生手段及び活物質である粉体の補充を行うメークアップ手段の少なくともいずれかの手段を接続し、再生されるか、又は新しく取り替えられた活物質の粉体が供給手段から容器内に供給されるようにすることができる(図10参照)。
【0036】
また、抜出手段に、抜き出した活物質である粉体を熱反応又は化学反応によって充電状態の粉体に変化させる反応手段を接続し、充電状態となった活物質の粉体が供給手段から容器内に供給されるようにすることができる(図11参照)。
【0037】
また、これらの第一の発明の電池において、負極側の活物質である粉体を水素吸蔵合金の粉体とし、正極側の活物貿である粉体を水酸化ニッケルの粉体とすることができる(図7参照)。
【0038】
また、これらの第一の発明の電池において、負極側の活物質である粉体を水素吸蔵合金の粉体とし、負極側の流動化流体分散手段に導入される気体を水素とし、正極側の活物質である粉体を水酸化ニッケルの粉体とし、正極側の流動化流体分散手段に導入される気体を酸素又は空気とすることができる(図12参照)。
【0039】
第一の発明の電池によれば、活物質粉体を流動化しなくても、あるいは活物質粉体を流動化する設備がなくても、従来の電池より優れた充放電特性を備えており、その特有の効果については後記する発明の実施の形態において詳細に説明するが、改良点のポイントは下記の通りである。
(1)スケールアップが可能である。
【0040】
電池を流れる電流は反応物質の表面積に比例している。そこで、活物質を粉体にして電池をつくると、容器の中に粉体を入れた電池が構成される。すなわち、活物質を粉体にして電池をつくると、電池構造は3次元的となり、例えば、1リットルで1Wの電池ならば、lm立方にすれは1kW、10m立方にすれば1000kW、100m立方にすれば100万kWの電池となり、スケールアップが可能となる。
【0041】
また、活物質を粉体にして電池をつくると、スケールメリットが発揮される。例えば、従来の電池が1kWで10万円とすれば、100万kWとするには100万個が必要となり1000億円になるが、本発明の電池では、スケールメリット、すなわち、スケールが大きくなると製作単価が減少する効果が発揮され、1億円程度で作ることができる。
(2)劣化した活物質・触媒の再生や取替え等が可能である。
【0042】
活物質と触媒の粉体が劣化した場合は抜き出し、再生するか、新しい活物質と触媒に取り替えるか、又は熱反応や化学反応で充電状態に戻して、再び供給する構造とする。例えば、活物質と触媒の粉体を容器から管によって電解液とともにスラリーとして抜き出し、粉体を電解液と分離して、再生又は新品の追加等を行って再び電解液と混合し、スラリーにしてスラリーポンプで電池に供給する。
【0043】
例えば、従来の電池は、小型のもので約500回の放充電が可能で、大型のもので連続8000時間程度の作動時間であったが、活物質と触媒の循環再生やメークアップ等によって、常に活物質と触媒が最高の状態に保たれるので、電池の寿命は電池設備の寿命となって、電池の寿命を約50倍から約100倍に延ばす効果がある。
(3)電池内に伝熱体が設置できる。
【0044】
活物質と触媒を粉体にして電解質溶液中に懸濁させるという簡単な構造であって、この中に伝熱体を設置しやすく、電池内に設置した伝熱体を経て伝達される熱によって電池内の反応温度を一定にすることができるようになり、温度が高くなると電力変換効率が低下し、逆に温度が低くなると反応速度が遅くなるという電池特性に対応して、電池内の温度を適正な温度に調節することができるようになる。また、伝熱体を経て回収した熱及び冷熱を冷暖房や発電に利用することができることになり、エネルギー発電効率、エネルギー利用率が増加する劾果がある。
(4)エネルギー密度を大きくすることができる。
【0045】
電池を流れる電流は反応物質の表面積に比例している。そこで、活物質を粉体にして電池を作る。活物質を粉体にして電池を作ると表面積が増えて、例えば、1m3 の粉体で約300000m2 の表面積になってエネルギー密度が大きくなる。また、例えば、従来の電池が膜の面積1m2 で1Wであれば、3000kWの電池をつくる場合、面積1m2 で幅0.1mの膜状電池300万個が必要となって、300000m3 の大きさになる。本発明の電池では、これと同じ出力の電池が粒子径1μmの粉体を使用すれは約10m3 の大きさになり、エネルギー密度が30000倍になって、エネルギー密度を飛躍的に大きくする効果がある。
2.第二の発明
第二の課題を解決するための第二の発明の三次元電池は、イオンは通過するが電子を通過させない部材を介して接続された一対のセル(容器)のうち、ー方のセル(容器)に電解質溶液と電子を放出する活物質の粉体を装填し、他方のセル(容器)に電解質溶液と電子を吸収する活物質の粉体を装填してなる単位電池の複数組を、前記セル間の隔壁を兼用し且つ前記粉体に接触する導電性の集電部材を介在させて直列に一体に連結し、両端のセルに粉体と接触し且つ正極電極又は負極電極を兼用した集電体を設けて積層型三次元電池を構成したことを特徴としている。
【0046】
上記の構成を有する第二の発明の三次元電池によれば、電池の容量(電力量)の増大は一対の各セルの容積を増やすことによって対応できる。つまり、1リットルの容積で1Wの電力を発生するとすれば、容積をlm3 に増やすことでlkWの電力が得られ、10m3 に増やすことで10kWの電力が得られる。このため、スケールアップによる製造コスト上のメリットが発揮される。すなわち、従来の電池が10Wで1万円とすれば、10kWでは1000万円になるが、本発明の電池はスケールアップをすればするほど、製造単価が減少するので、約1/10の100万円程度で製造できるようになる。
【0047】
一方、電圧は一対のセルに充填される活物質の粉体(従来の一般的な電極に相当)の種類(材料)によって決定され、例えば金属鉛粉と酸化鉛粉を用いる場合には2.4V前後の電圧になるから、12V以上の電圧が必要な場合には単位電池を5個〜6個直列に連結する必要がある。しかし、第二の発明によれば、中間に位置する(両端を除く)単位電池は両極とも集電部材の材質を共通にでき、しかも従来の電池とは違って正極や負極の電極を設ける必要がないから、一対のセル(単位電池)間の隔壁を導電性の集電部材で構成することによって電気的に且つ構造的に直列に連結することができる。また、隔壁は厚みをかなり薄く(例えば、0.5mmに)し、面積は広く(例えば、127mm×127mmに)することができ、しかも電流は隔壁の厚み方向に流れるので、大電流がほとんど抵抗なく流れ、電力ロスが極めて少ない。さらに2組の単位電池を隔壁を介して直接に連結(直結)できるので、複数組の単位電池を直列にかつ積層状に連結し、電池全体の容積を最小限に抑えて小型化を図ることができる。
【0048】
さらに、第二の発明の三次元電池では、活物質の粉体が膜構造の従来の電池の膜(電池本体)の作用をし、電池を流れる電流は活物質の表面積に比例することになるが、それらの粉体は電解質溶液中に混入されており、電池ケーシング内のほとんどの容積を占めるので、エネルギー密度が極めて大きくなる。また、活物質の粉体は電解質溶液(鉛電池では希硫酸)に投入して混合して使用しているため、劣化した場合には電解質溶液と分離あるいは電解質溶液とともに粉体を交換することにより再生化を図ることができ、電池の寿命が大幅に(ほぼ50倍から100倍に)延びる。
【0049】
第二の発明の三次元電池において、大きな出力が必要な場合には、前記各セルに電解質溶液中の活物質の粉体を流動化させるための攪拌手段を設けることが望ましい。攪拌手段には、セル内に攪拌羽根を備えた回転軸を回動自在に配装し、モーター等の駆動装置によって機械的に攪拌する手段か、電解質溶液中に液体又は気体をポンプあるいはブロワーなどにより供給し、あるいは循環させることにより、電解質溶液中の粉体を分散させ、かつ流動化させる手段がある。この三次元電池によれば、攪拌手段によって電解質溶液中の粉体を攪拌することにより、電界質溶液中で拡散され、活物質粉体間の接触効率が向上するとともに、粉体と集電部材あるいは集電体との接触が良好になって接触抵抗が低下し、導電性が高まるとともに電解質溶液中のイオン拡散速度が大きくなるので、大きな電流が流れ、大きな出力を引き出せる。また、この構成によって各セル間の距離(直列方向の間隔)を拡大でき、電池の容量を増大できる。
【0050】
また、第二の発明の三次元電池において、前記集電部材又は前記集電体から各セル内に向けて導電性のスタッドを一体に突設することができる。この三次元電池によれば、集電部材あるいは集電体と粉体との間の接触面積が大幅に増大し、接触抵抗が低減するので、各セル間の距離(直列方向の間隔)を拡大でき、電池の容量を大幅に増大できる。
【0051】
さらに、第二の発明の三次元電池において、電池から送られる送電量を低下させるために前記粉体の流動化を停止させる機能を、前記攪拌手段に付加することが望ましい。この三次元電池のように、粉体の攪拌手段に粉体の流動化を停止させる機能を付加することによって、粉体の流動化を任意に停止でき、その結果、電池からの送電量を減少させることができる。
【0052】
そして、第二の発明の三次元電池において、電子を放出する活物質が、水素吸蔵合金、カドミウム、鉄、亜鉛または鉛のいずれかであれば、これらの物質は低コストで実用的であるので好ましい。さらに、第二の発明の三次元電池において、電子を吸収する活物質が、オキシ水酸化ニッケル、二酸化鉛または二酸化マンガンでのいずれかであれば、これらの物質は低コストで実用的であるので好ましい。
3.第三の発明
第三の課題を解決するための第三の発明の機器または装置は、イオンは通過するが電子を通過させない部材を介して接続された2つの容器の一方の容器に電解質溶液と電子を放出する活物質の粉体が装填され、他方の容器に電解質溶液と電子を吸収する活物質の粉体が装填され、2つの容器に活物質である粉体と接触する導電体の集電装置を設けてなる三次元構造の電池を構造の一部として有する機器または装置であって、充放電の可能な電力貯蔵設備としての機能を備えていることを特徴としている。
【0053】
第三の発明を適用できる機器または装置としては、三次元電池に貯蔵された電力を動力源とする回転機器、三次元電池に貯蔵された電力を動力源とする移動物体、三次元電池に貯蔵され電力を他の設備に供給する電力搬送手段、三次元電池に貯蔵された電力を熱エネルギー、運動エネルギーまたは光エネルギーに変換する設備を挙げることができる。これらの機器または装置の具体的な例については、後述する発明の実施の形態において詳細に説明する。
【0054】
また、第三の発明の機器または装置には、2つの容器内で電解質溶液中の活物質の粉体を流動化させるための液体または気体による流動化流体分散手段および攪拌手段の少なくともいずれかの手段が、2つの容器に接続されるか、又は2つの容器内に設けられてなることが好ましい。流動化流体分散手段または攪拌手段を有すれば、活物質粉体間の接触効率が向上するとともに、活物質粉体と集電装置との接触が良好になって接触抵抗が低下し、導電性が向上するとともに電解質溶液中のイオンの拡散速度が大きくなり、大電流が流れ、大電力を貯蔵することができるようになるからである。
【0055】
また、第三の発明において、電子を放出する活物質が、水素吸蔵合金、カドミウム、鉄、亜鉛または鉛のいずれかであれば、これらの物質は低コストで実用的であるので好ましい。さらに、第三の発明において、電子を吸収する活物質が、オキシ水酸化ニッケル、二酸化鉛または二酸化マンガンでのいずれかであれば、これらの物質は低コストで実用的であるので好ましい。そして、第三の発明において、電解質溶液が水酸化カリウム溶液、水酸化ナトリウム溶液または希硫酸であれば、これらの溶液は低コストで実用的であるので好ましい。
4.第四の発明
第四の課題を解決するための第四の発明の電池は、正極集電体、正極の活物質と電解質溶液、イオンは通過するが電子を通過させないセパレーター、負極の活物質と電解質溶液、および負極集電体を、この順で配置したアルカリ一次電池において、負極活物質として、炭化金属または炭化金属とこの金属の混合物を用いることを特徴とするアルカリ一次電池と、正極集電体、正極の活物質と電解質溶液、イオンは通過するが電子を通過させないセパレーター、負極の活物質と電解質溶液、および負極集電体を、この順で配置したアルカリ二次電池において、負極活物質として、炭化金属または炭化金属とこの金属の混合物を用いることを特徴とするアルカリ二次電池よりなる。
【0056】
第四の発明のアルカリ一次電池およびアルカリ二次電池によれば、炭素は電気の良導体であるから、負極活物質の金属が酸化物や水酸化物に化学変化しても、良好な電気伝導性を確保することができ、放電特性の劣化(放電電圧の低下)を抑制し、しかも、負極活物質として炭化金属または炭化金属とこの金属の混合物を用いるという簡単な方法であって、高純度炭素等の高価な導電助剤を用いることなく、負極に導電性を付与するための特殊な処理が不要であり、製造コストを低く抑えることができる。
【0057】
そして、正極の活物質および負極の活物質が、ともに粉体であれば、電池構造は三次元的になってスケールメリット(スケールが大きくなると製作単価が減少する効果)を享受し、劣化した活物質の再生や取り替えが可能になり、電池内に伝熱体を設置できるので、電池特性に対応した操作が可能となってエネルギー発電効率が向上し、また、表面積が増えてエネルギー密度が大きくなるという効果を享受できるので好ましい。
【0058】
さらに、金属炭化物としては、例えば、炭化鉄を用いるのが好ましい。炭化鉄は、安価な素材であり、本出願人により出願された特開平9−48604号公報に開示されたように、還元ガスを用いて含鉄原料の還元反応の一部を行い、次いで、還元および炭化ガスを用いて残りの還元反応と炭化反応を行う方法により製造すれば、炭化鉄を迅速に且つ経済的に製造することができるので特に好ましい。
5.第五の発明
第五の課題を解決するための第五の発明の地域分散型発電方法は、ガソリンエンジン、ディーゼルエンジン及びガスタービン等のエンジンのいずれかを使用して発電機を作動させ電力を発生させる装置と、発生した電力を貯蔵するための電池として、イオンは通過するが電子を通過させない部材を介して接続された2つの容器の一方の容器に電解質溶液と電子を放出する活物質の粉体が装填され、他方の容器に電解質溶液と電子を吸収する活物質の粉体が装填され、2つの容器に活物質である粉体と接触する導電体の集電装置を設けてなる三次元構造の電池を使用し、上記した電力を発生させる装置と当該三次元構造の電池を搭載した、エンジンと電池からの電力で駆動する電動機の力によって走行する自動二輪車、自動三輪車、自動四輪車及び船舶のいずれかの移動・輸送手段が停車又は停船しているときに、移動・輸送手段に搭載された上記三次元構造の電池を住居又は事務所に設置されたインバータに接続して、移動・輸送手段の発電機で発電した電力を住居又は事務所の負荷にて使用し、停車又は停船している移動・輸送手段を家庭用又は事務所用の固定発電設備として利用するように構成されている。
【0059】
上記の第五の発明の方法において、エンジンを使用して発電機を作動させ電力を発生させる装置と、電力を貯蔵するための電池とを搭載した移動・輸送手段の代わりに、燃料電池により発電を行う装置と、電力を貯蔵するための電池とを搭載した移動・輸送手段を用いることができる。
【0060】
また、上記の第五の発明の方法において、住居又は事務所に太陽光発電及び風力発電の少なくともいずれかの設備を設置し、該設備で発生させた電力を貯蔵するための固定電池として、イオンは通過するが電子を通過させない部材を介して接続された2つの容器の一方の容器に電解質溶液と電子を放出する活物質の粉体が装填され、他方の容器に電解質溶液と電子を吸収する活物質の粉体が装填され、2つの容器に活物質である粉体と接触する導電体の集電装置を設けてなる三次元構造の電池を使用し、該固定電池に停車又は停船している移動・輪送手段に搭載された三次元構造の電池を接続してその固定電池を充電し、該固定電池からの電力をインバータで交流に変換し電圧を調整して住居又は事務所の負荷にて使用することができる。
【0061】
この場合、太陽光発電及び風力発電の少なくともいずれかの設備で発生させた電力を用いて、停車又は停船している移動・輸送手段の電池を充電することも可能である。
【0062】
また、これらの第五の発明の方法において、停車又は停船している移動・輸送手段で発生する温熱又は/及び冷熱を住居又は事務所に供給してコージェネレーションを行うことが好ましい。
【0063】
また、これらの第五の発明の方法において、自動二輪車、自動三輪車及び自動四輪車のいずれかの移動・輸送手段の停車中にエンジンを使用して発電機を作動させ往居又は事務所所に電力を供給する際に、エンジン排気音を下げるために、移動・輸送手段に外付け消音器を取り付けても良い。
【0064】
そして、これらの第五の発明の方法において、イオンは通過するが電子を通過させない部材を介して接続された2つの容器の一方の容器に電解質溶液と電子を放出する活物質の粉体が装填され、他方の容器に電解質溶液と電子を吸収する活物質の粉体が装填され、2つの容器に活物質である粉体と接触する導電体の集電装置を設けてなる三次元構造の電池を使用するのが好ましい。というのは、劣化した活物質粉体の一部または全部を廃棄して、劣化した粉体を再生し且つ廃棄された粉体分に相当する量の新しい粉体を容器に供給すれば、直ちに充電を開始することができるからである。
【0065】
第五の課題を解決するための第五の発明の地域分散型発電装置は、ガソリンエンジン、ディーゼルエンジン及びガスタービン等のエンジンのいずれかを使用して発電機を作動させ電力を発生させる装置と、発生した電力を貯蔵するための電池として、イオンは通過するが電子を通過させない部材を介して接続された2つの容器の一方の容器に電解質溶液と電子を放出する活物質の粉体が装填され、他方の容器に電解質溶液と電子を吸収する活物質の粉体が装填され、2つの容器に活物質である粉体と接触する導電体の集電装置を設けてなる三次元構造の電池を使用し、上記した電力を発生させる装置と当該三次元構造の電池を搭載した、エンジンと電池からの電力で駆動する電動機の力によって走行する自動二輪車、自動三輪車、自動四輪車及び船舶のいずれかの移動・輸送手段と、住居又は事務所の各負荷に交流の電圧調整された電力を供給するための住居又は事務所に設置されたインバータと、停車又は停船中の移動・輸送手段に搭載された上記三次元構造の電池と住居又は事務所に設置されたインバータとを接続するためのコネクタとを備え、移動・輸送手段の発電機で発電した電力が住居又は事務所の負荷にて使用できるようにしたことを特徴としている。
【0066】
上記の第五の発明の装置においては、移動・輸送手段として、燃料電池により発電を行う装置と、電力を貯蔵するための電池とを搭載した移動・輸送手段を用いることができる。
【0067】
また、上記の第五の発明の装置において、住居又は事務所に太陽光発電及び風力発電の少なくともいずれかの設備が設置され、該設備で発生した電力を貯蔵するための固定電池として、イオンは通過するが電子を通過させない部材を介して接続された2つの容器の一方の容器に電解質溶液と電子を放出する活物質の粉体が装填され、他方の容器に電解質溶液と電子を吸収する活物質の粉体が装填され、2つの容器に活物質である粉体と接触する導電体の集電装置を設けてなる三次元構造の電池を使用し、上記設備で発生した電力が該固定電池に接続されたインバータを介して負荷にて使用されるようになっており、停車又は停舶中の移動・輸送手段に設載された三次元構造の電池と上記固定電池とがコネクタにより接続され、固定電池に移動・輸送手段の発電機で発電させた電力が供給されるようになった構成とすることができる。
【0068】
この場合、太陽光発電及び風力発電の少なくともいずれかの設備で発生し電力力が貯蔵された固定電池から、停車又は停船中の移動・輪送手段の電池に電力を供給することも可能である。
【0069】
また、これらの第五の発明の装置において、停車又は停船中の移動・輸送手段で発生する温熱又は/及び冷熱が住居又は事務所に供給できるように、移動・輸送手段の熱源を住居又は事務所とダクトを介して連通させ、コージェネレーションシステムを構築することが好ましい。
【0070】
そして、これらの第五の発明の装置において、イオンは通過するが電子を通過させない部材を介して接続された2つの容器の一方の容器に電解質溶液と電子を放出する活物質の粉体が装填され、他方の容器に電解質溶液と電子を吸収する活物質の粉体が装填され、2つの容器に活物質である粉体と接触する導電体の集電装置を設けてなる三次元構造の電池を使用するのが好ましい。というのは、劣化した活物質粉体の一部または全部を廃棄して、劣化した粉体を再生し且つ廃棄された粉体分に相当する量の新しい粉体を容器に供給すれば、直ちに充電を開始することができるからである。
【発明の効果】
【0071】
本発明は上記のように構成されているので、次のような効果を奏する。
1.第一の発明によれば、以下のような顕著な効果がある。
(1)活物質を粉体にして容器の中に粉体を入れた電池を構成することにより、電池構造は3次元的となり、スケールアップが可能になる。また、活物質を粉体にして電池を構成することにより、スケールが大きくなると製作単価が減少することになり、スケールメリットが発揮される。
(2)活物質と触媒の粉体が劣化した場台は抜き出し、再生するか、新しい活物質と触媒に取り替えるか、又は熱反応や化学反応で充電状態に戻して、再び供給する構成とすることにより、常に活物質と触媒が最高の状態に保たれるので、電池の寿命は電池設備の寿命となって、電池寿命を大幅に延ばすことができる。
(3)電池内に伝熱体を設置することができ、電池内に設置した伝熱体によって電池内の反応温度を一定にすることができるようになり、温度が高くなると電力変換効率が低下し、逆に温度が低くなると反応速度が遅くなるという電池特性に対応して電池内の温度を適正に調節することができる。また、回収した熱及び冷熱を冷暖房や発電に利用することができることになり、エネルギー発電効率およびエネルギー利用率が増加する。
(4)活物質を粉体にして電池を構成することにより、反応物質の表面積が増えてエネルギー密度が飛躍的に大きくなる。
(5)活物質である粉体同士及び活物質の粉体と集電装置とが効率よく接触するように、2つの容器内で電解質溶液中の活物質の粉体を流動化させるための液体又は気体による流動化流体分散手段及び攪拌手段の少なくともいずれかの手段を、2つの容器に接続するか、又は2つの容器内に設ければ、活物質粉体間の接触効率が向上するとともに、粉体と集電装置との接触が良好になって接触抵抗が低下し、活物質と集電装置または活物質同士の導電性が向上し、電解質溶液中でのイオン拡散速度が高められるので、大電流が流れ、粉体を流動化しない場合に比べてより大きな出力を取り出すことができる。
2.第二の発明によれば、以下のような顕著な効果がある。
(1)電池の容量(電力量)の増大が一対の各セルの容積を増やすことによって対応できるため、スケールアップによる製造コスト上のメリットが発揮される。また、電圧は一対のセルに充填される活物質の粉体の種類(材料)によって決定され、大きな電圧が必要な場合には単位電池を複数個直列に連結する必要があるが、単位電池の両極とも集電部材の材質は共通にでき、しかも従来の電池とは違って正極や負極の電極を構成しないから、一対のセル(単位電池)間の隔壁を導電性の集電部材で構成することにより、電気的に且つ構造的に直列に接続することができ、厚みを薄くできるので、電池全体がコンパクトに仕上がり小型化が可能なうえに、電流は厚み方向に流れるので、大電流がほとんど抵抗なく流れる。 さらに、活物質の粉体は、膜構造の従来の電池の膜(電池本体)の作用をし、電池を流れる電流は活物質の表面積に比例することになるが、粉体は電解質溶液中に混入されており、全粉体の総表面積は従来の膜構造の電池に比べて数千倍から数万倍になるので、エネルギー密度が数千倍から数万倍になるとともに、活物質の粉体は電解質溶液(鉛電池では希硫酸)に投入して混合して使用しているため、劣化した場合には電解質溶液とともに粉体を交換することにより再生化を図ることができ、電池の寿命を大幅に延長できる。
(2)各セルに電解質溶液中に懸濁された粉体を流動化させるための攪拌手段を設ければ、攪拌手段によって電解質溶液中の粉体を攪拌することにより、電極としての粉体が自重により沈降することが防止され、電界質溶液中で拡散され、各粉体間の接触効率が向上するとともに、粉体と集電部材あるいは集電体との接触が良好になって接触抵抗が低下し、電力がアップする。また、各セル間の距離(直列方向の間隔)を拡大でき、電池の容量を増大できる。
(3)集電部材または集電体から各セル内に向けて導電性のスタッドを一体に突設すれば、集電部材あるいは集電体と粉体との間の接触面積が大幅に増大し、接触抵抗が低減するので、各セル間の距離(直列方向の間隔)を拡大でき、電池の容量を大幅に増大できる。
(4)電池から送られる送電量を低下させるために粉体の流動化を停止させる機能を攪拌手段に付加すれば、粉体の流動化を任意に停止でき、これにより電池からの送電量を減少させることができる。
3.第三の発明によれば、以下のような顕著な効果がある。
(1)各種の機器または装置の一部としての三次元電池の実用的で有効な用途を提供することができる。すなわち、当該機器及び装置としての本来の機能に加えて、充放電の可能な電力貯蔵設備としての機能を付加することにより、遊休空間を利用して大電力を貯蔵し、しかも、電力貯蔵効率が極めて高くなり、さらに、電池反応に伴う吸放熱を冷暖房や物質の加熱、冷却などに利用することができる。
(2)電解質溶液中の活物質である粉体と接触する導電体の集電装置を設けてなる2つの容器から構成される三次元電池において、2つの容器内で電解質溶液中の活物質の粉体を流動化させるための液体または気体による流動化流体分散手段および攪拌手段の少なくともいずれかの手段を、2つの容器に接続するか、又は2つの容器内に設ければ、活物質粉体と集電装置との接触が良好になって接触抵抗が低下し、導電性が向上するとともに電解質溶液中でのイオン拡散速度が大きくなり、大電流が流れて大電力を貯蔵できるようになる。
(3)さらに、三次元電池に貯蔵された電力を電力搬送手段で搬送して、回転機器の回転動力として、あるいは、移動物体の移動動力として、または光エネルギー、運動エネルギーまたは熱エネルギーとして利用することができる。
4.第四の発明によれば、以下のような顕著な効果がある。
(1)陰極活物質に高純度炭素等の高価な導電助剤を添加することなく、負極に導電性を付与するための特殊な処理が不要であり、放電電圧が低下しにくくて長寿命である低コストのアルカリ一次電池およびアルカリ二次電池を提供することができる。
(2)正極の活物質および負極の活物質が、ともに粉体であれば、電池構造は三次元的になってスケールメリット(スケールが大きくなると製作単価が減少する効果)を享受し、劣化した活物質の再生や取り替えが可能になり、電池内に伝熱体を設置できるので、電池特性に対応した操作が可能となってエネルギー発電効率が向上し、また、表面積が増えてエネルギー密度が大きくなるという効果を享受できるので好ましい。
(3)炭化金属として炭化鉄は安価であり、負極活物質として特に好ましい。
5.第五の発明によれば、以下のような顕著な効果がある。
(1)本来は移動、輸送手段として利用される自動車等に設けられた発電システムを家庭用、事務所用に利用することにより、設備費を大幅に削減することができ、家庭や事務所に発電設備がなくてもコージェネレーションを行うことが可能となる。
(2)発電設備コストが大幅に低減され経済的に成立するので、地域分散型コージェネレーションシステムを普及させることが可能になる。
(3)地域分散型コージェネレーション設備が廉価になって普及することにより、エネルギーの有効利用が促進されて、経済効果、二酸化炭素発生量削減効果が得られる。
(4)特に、移動手段および輸送手段に搭載する電池と、住居または事務所に固定する電池を、正極側および負極側の活物質を粉体とする三次元構造の電池で構成すれば、劣化した活物質粉体の一部または全部を廃棄して、劣化した粉体を再生し且つ廃棄された粉体分に相当する量の新しい粉体を容器に供給すれば、直ちに充電を開始することができるという効果がある
【発明を実施するための最良の形態】
【0072】
以下、本発明の実施の形熊について説明するが、本発明は下記の実施の形態に何ら限定されるものではなく、適宜変更して実施することが可能である。
1.第一の発明の実施の形態
(第1実施形態)
図1(a)は、第一の発明の第1実施形態による電池を示している。図1(a)に示すように、セパレーター1を介して負極セル2、正極セル3が設けられ、負極セル2には負極の粉体活物質及び電解質溶液4が充填され、正極セル3には正極の粉体活物質及び電解質溶液5が充填されている。負極と正極の粉体活物質の組み合わせとしては、例えば、水素吸蔵合金と水酸化ニッケル、力ドミウムと水酸化ニッケルの組み合わせ等を用いることができる。水素吸蔵合金の具体例としては、一例として、La0.3(Ce,Nd)0.15Zr0.05Ni3.8Co0.8 Al0.5 等が挙げられる。また、電解質溶液としては、例えば、KOH水溶液等が用いられる。なお、セパレーター1は、イオンを通すためのもので、粉体は通過しない膜であり、例えば、素焼、イオン交換樹脂膜、金属繊維等が用いられる。
【0073】
また、負極セル2、正極セル3の中には、それぞれ導電体からなる負極集電器6、正極集電器7が設けられており、集電器6、7が負荷手段(放電の場合)又は発電手段(充電の場合)8と接続される。なお、10は電解液界面である。
【0074】
つぎに、本実施形態の電池について充電及び放電の詳細を説明する。
(充電)
電池が発電手段8と接続されると、発電手段8から放出された電子は負極集電器6に到達し、この電子は負極集電器6より負極の粉体活物質と直接または粉体活物質を介して移動しつつ反応する。負極粉体活物質が電子を受容することによって発生した陰イオンは、セパレーター1を通過して正極セル3に入り、正極の粉体活物質と反応して電子を放出する。この電子は、粉体活物質を介して、あるいは直接正極集電器7に移動して、発電手段8に供給される。
(放電)
電池が負荷手段8と接続されると、負極集電器6は外部回路に電子を放出し、放出された電子は負荷手段8を経て正極集電器7に到達し、この電子は正極集電器7より正極の粉体活物質と直接または粉体活物質を介して移動しつつ反応する。正極粉体活物質が電子を受容することによって発生した陰イオンは、セパレーター1を通過して負極セル2に入り、負極の粉体活物質と反応して電子を放出する。この電子は、粉体活物質を介して、あるいは直接負極集電器6に移動して、負荷手段8に供給される。
【0075】
図1(b)は、公称容量がともに5Ahである本発明に係る電池と、従来の電池の放電曲線を比較して示す図である。図1(b)において、黒丸(●)は本発明に係る電池の放電曲線を示し、白丸(○)は従来の電池の放電曲線を示す。本発明に係る電池は、正極セルに水酸化ニッケル粉と電解質溶液を充填し、陰極セルに水素吸蔵合金粉と電解質溶液を充填した三次元構造の電池(図1(a)参照)である。従来の電池は、正極として水酸化ニッケルの板状電極を用い、負極として水素吸蔵合金の板状電極を用い、これらの電極を電解質溶液に浸漬した二次元構造の電池である。図1(b)は、縦軸は端子電圧(V)を表し、横軸は放電容量(Ah)を表す。放電中の電圧の変化は電解液(本比較実験においては水酸化カリウム溶液)の濃度の変化による濃度分極の影響を受けやすいので、本発明の電池と従来の電池の放電中の電解液の濃度はともに同じになるように調節した。電池を放電する場合において、一定電圧以下にまで放電を継続することは電極の劣化などの点から好ましくないので、放電を終えるべき放電終止電圧が存在する。この放電終止電圧が低いほど長時間の放電が可能である。この点において、本発明に係る電池は、電極活物質が粉体である三次元構造をしているので、粉体を流動化しなくても、板状電極である二次元構造の従来の電池に比べて飛躍的にエネルギー密度が向上し、図1(b)の「●」のように、放電電圧が急激に低下することはない。
【0076】
一方、従来の電池は、図1(b)の「○」に示すように、約4.5時間で放電電圧が急激に低下している。従って、例えば、放電終止電圧を1.0Vとすれば、電池設備の保護の点から、従来の電池では約4時間で放電を終わらなければならないが、本発明の電池では約5時間放電を継続することができる。
(第2実施形態)
図2は、第一の発明の第2実施形態による電池を示している。図2は、粉体どうしの、あるいは粉体と集電器6、7との接触効率を上げるために、気体又は液体による流動化流体分散手段9により各セル2、3内の粉体を流動化(攪拌)させるものである。このように流動化することで、活物質粉体どうしの接触効率が向上するとともに、活物質粉体と集電器との接触が良好になって接触抵抗が低下し、活物質粉体と集電器または活物質粉体どうしの導電性が高まり、電解質溶液中でのイオン拡散速度が大きくなるので、大きな電力が流れ、粉体を流動化させない場合に比べてより大きな出力を取り出すことが可能である。
【0077】
流動化流体分散手段9の代わりに、あるいは流動化流体分散手段9とともに、各セル2、3内に羽状の攪拌機等の攪拌手段を設けて粉体を流動化(攪拌)することもできる。なお、図2では図示を簡略化しているが、流動化流体分散手段9としては、気体又は液体をセル内水平断面において均一に分散する分散板やスプレーノズル等の装置を用いることができる。また、流動化流体分散手段9に導入される気体(又は液体)としては、例えは、窒素、アルゴン(または水酸化カリウム水溶液等の電解液)等が用いられる。気体により粉体を流動化させる場合、流動化流体分散手段9に導入された気体は、各セル2、3の上部から抜き出される。また、液体により粉体を流動化させる場合、流動化流体分散手段9に導入された液体は、各セル2、3の底部から抜き出される。
【0078】
流動化手段が付加された点を除いて、他の構成及び作用は、第1実施形態の場合と同様である。
(第3実施形態)
図3、図4は、第一の発明の第3実施形態による電池を示している。図3は、集電器と活物質の粉体との接触効率を良くするために、負極集電器及び正極集電器を、それぞれ、板状負極集電器11、板状正極集電器12として接触面積を大きくしたものである。また、図4は、集電器と活物質の粉体との接触効率を良くするために、負極集電器及び正極集電器を、それぞれ、管状負極集電器13、管状正極集電器14として接触面積を大きくしたものである。なお、集電器の表面積が大きくなる構成であれば、板状及び管状以外の形状を採用することも可能である。
【0079】
他の構成及び作用は、第2実施形態の場合と同様である。
(第4実施形態)
図5、図6は、第一の発明の第4実施形態による電池を示している。図5は、負極集電器及び正極集電器を、それそれ、液体又は気体による流動化流体分散器としたものである。また、図6は、負極集電器及び正極集電器を、それぞれ、モー夕等(図示略)により回転駆動される攪拌機としたものである。
【0080】
図5に示すように、負極集電器兼分散器15、正極集電器兼分散器16は、気体又は液体を各セル2、3内水平断面において均一に分散する分散板やスプレーノズル等の装置である。なお、各セル2、3内に羽状の攪拌機等の攪拌手段を設けることも可能である。
【0081】
また、図6に示すように、負極集電器兼攪拌機17、正極集電器兼攪拌機18は、活物質の粉体を攪拌(流動化)するとともに粉体と直流的に接触する機能を兼ねている。負極集電器兼攪拌機17、正極集電器兼攪拌機18としては、モータ等(図示略)により回転駆動される羽状の攪拌機等が用いられるが、攪拌手段の構成は限定されるものではない。なお、図6では、液体又は気体による流動化流体分散器19も併用しているが、流動化流体分散器19を設けない構成とすることも可能である。
【0082】
他の構成及び作用は、第2実施形態の場合と同様である。
(第5実施形態)
図7は、第一の発明の第5実施形態による電池を示している。本実施形態は、活物質である粉体として、負極側に水素吸蔵合金、正極側に水酸化ニッケルを用いたものである。図7に示すように、負極セル2には水素吸蔵合金粉及び電解質溶液20が充填され、正極セル3には水酸化ニッケル粉及び電解質溶液21が充填されている。水素吸蔵合金としては、例えば、La0.3(Ce,Nd)0.15 Zr0.05Ni3.8Co0.8Al0.5等が用いられる。 また、電解質溶液としては、例えば、6規定のKOH水溶液等が用いられる。
【0083】
本実施形態の電池について充電及び放電の詳細を説明する。
(充電)
電池が発電手段8と接続されると、発電手段8から放出された電子は負極集電器6に到達し、この電子は負極集電器6より負極の粉体状の水素吸蔵合金と直接又は水素吸蔵合金粉を介して移動しつつ次の反応が起こる。Mは水素吸蔵合金、MHxは水素化金属である。
【0084】
M+xH20+xe-→MHx+xOH-
反応によって発生した水酸基イオンはセパレーター1を通過して正極セル3に入り、ここで水酸化ニッケル粉と反応して次の反応が起こり電子を放出する。
【0085】
Ni(OH)2+OH-→NiOOH+H2O+e-
発生した電子は水酸化ニッケル粉またはオキシ水酸化ニッケル粉を介して、あるいは直接、正極集電器7に移動して発電手段8に供給される。
(放電)
電池が負荷手段8と接続されると、負極集電器6より外部回路に電子を放出し、放出された電子は負荷手段8を経て正極集電器7に到達し、この電子は正極集電器7からオキシ水酸化ニッケル粉に移動し、オキシ水酸化ニッケル粉を介して、又は直接移動して水と反応し、水酸化ニッケルと水酸基が生成される。水酸基はセパレーター1を通過して負極セル2に導かれ、水素化金属と反応して電子を放出する。この電子は水素吸蔵合金粉を介して、または直接負極集電器6に移動して、負荷手段8に供給される。
【0086】
他の構成及び作用は、第2実施形態の場合と同様である。なお、本実施形態の電池は、第3、第4実施形態及び後述する第6、第7実施形態の構成で実施することも勿論可能である。
(第6実施形態)
図8、図9は、第一の発明の第6実施形態による電池を示している。本実施形態は、電池内に伝熱体を設置するとともに、伝熱体が集電器の機能を兼ねるようにしたものである。なお、伝熱体と集電器とを別個に設ける構成とすることも可能である。図8に示すように、負極セル2内には負極集電器兼伝熱管22が設けられ、正極セル3内には正極集電器兼伝熱管23が設けられる。また、図9に示すように、負極セル2内は負極集電器兼伝熱板24が設けられ、正極セル3内には正極集電器兼伝熱板25が設けられる。
【0087】
図8を参照しながら、本実施形態の電池について充電及び放電の詳細を説明する。
(充電)
電池が発電手段8と接続されると、発電手段8から放出された電子は負極集電器22に到達し、この電子は負極集電器22より負極の粉体活物質と直接または粉体活物質を介して移動しつつ反応する。負極粉体活物質が電子を受容することによって発生した陰イオンは、セパレーター1を通過して正極セル3に入り、正極の粉体活物質と反応して電子を放出する。この電子は、粉体活物質を介して、あるいは直接正極集電器23に移動して、発電手段8に供給される。
【0088】
上述したように、集電器は負極、正極とも伝熱管と兼用であり、粉体との接触によって電子と熱を同時に伝達する。負極集電器兼伝熱管22、正極集電器兼伝熱管23には水や空気等の熱媒体が流され、熱回収、熱供給が行われる。
(放電)
電池が負荷手段8と接続されると、負極集電器22は外部回路に電子を放出し、放出された電子は負荷手段8を経て正極集電器23に到達し、この電子は正極集電器23より正極の粉体活物質と直接または粉体活物質を介して移動しつつ反応する。正極粉体活物質が電子を受容することによって発生した陰イオンは、セパレーター1を通過して負極セル2に入り、負極の粉体活物質と反応して電子を放出する。この電子は、粉体活物質を介して、あるいは直接負極集電器22に移動して、負荷手段8に供給される。
【0089】
図9の場合は、集電器が負極、正極とも中が空洞になった伝熱板と兼用であり、粉体との接触によって電子と熱を同時に伝達する。負極集電器兼伝熱板24、正極集電器兼伝熱板25には水や空気等の熱媒体が流され、熱回収、熱供給が行われる。充電及び放電の詳細は図8と同じである。なお、伝熱体の形状は管状及び板状に限定されるものではなく、他の形状を採用しても良い。
【0090】
他の構成及び作用は、第2実施形態の場合と同様である。なお、本実施形態の構成を、第3、第4実施形態及び後述する第7実施形態の構成と組み合わせることも可熊である。
(第7実施形態)
図10、図11は、第一の発明の第7実施形態による電池を示している。本実施形態は、活物質である粉体を容器から抜き出す抜出装置及び活物質である粉体を容器に供給する供給装置を設け、さらに、抜き出した粉体を再生する装置、粉体のメークアップ(補充)を行う装置、抜き出した粉体を熱反応又は化学反応によって充電状態の粉体に変化させる装置等を設けたものである。
【0091】
まず、本実施形態の電池について充電及び放電の詳細を説明する。
(充電)
電池が発電手段8と接続されると、発電手段8から放出された電子は負極集電器6に到達し、この電子は負極集電器6より負極の粉体活物質と直接または粉体活物質を介して移動しつつ反応する。負極粉体活物質が電子を受容することによって発生した陰イオンは、セパレーター1を通過して正極セル3に入り、正極の粉体活物質と反応して電子を放出する。この電子は、粉体活物質を介して、あるいは直接正極集電器7に移動して、発電手段8に供給される。
(放電)
電池が負荷手段8と接続されると、負極集電器6は外部回路に電子を放出し、放出された電子は負荷手段8を経て正極集電器7に到達し、この電子は正極集電器7より正極の粉体活物質と直接または粉体活物質を介して移動しつつ反応する。正極粉体活物質が電子を受容することによって発生した陰イオンは、セパレーター1を通過して負極セル2に入り、負極の粉体活物質と反応して電子を放出する。この電子は、粉体活物質を介して、あるいは直接負極集電器6に移動して、負荷手段8に供給される。
【0092】
他の構成及び作用は、第2実施形態の場合と同様である。
(活物質の再生とメークアップ)
つぎに、図10を参照しなから、本実施形態の電池について活物質(触媒)の再生、メークアップの詳細を説明する。なお、図10では、負極側の構成のみを図示しているが、同様の装置等が正極側にも設置されている。
【0093】
図10に示すように、充放電によって劣化した活物質である粉体は、電解質溶液(電解液)とともにスラリーとして負極セル2から抜き出され、分離機26で、必要な場合は一部又は全部が廃棄される。電解液が分離され、分離機26から再生機27に供給された粉体は、再生機27で塩酸による洗浄等の酸処理などが行われる。再生機27で再生処理された粉体は、混合機28に供給されて、ここで分離機26から廃棄された粉体分に相当する量の新しい粉体がメークアップ用粉体ホッパー29から供給される。再生・メークアップされた粉体は、混合機28で再び電解液と混合され、スラリーとしてスラリーポンプ(図示略)から負極セル2に供給される。なお、電解液を分離・混合する構成は、図示を省略している。
【0094】
また、図11を参照しながら、本実施形態の電池について反応による再生、メークアップの詳細を説明する。なお、図11では、負極側の構成のみを図示しているが、同様の装置等が正極側にも設置されている。
【0095】
図11に示すように、充放電によって生成された粉体は電解液とともにスラリーとして負極セル2から抜き出され、分離機26で、必要な場合は一部又は全部が廃棄される。電解液が分離され、分離機26から反応器30に供給された粉体は、反応器30で、燃料供給管31から供給された燃料と反応して、再び放電できる活物質となる。反応器30で充電状態となった粉体は、混合機28に供給されて、ここで分離機26から廃棄された粉体分に相当する量の新しい粉体がメークアップ用紛体ホッパー29から供給される。再生・メークアップされた粉体は、混合機28で再び電解液と混合され、スラリーとしてスラリーポンプ(図示略)から負極セル2に供給される。なお、電解液を分離・混合する構成は、図示を省略している。
【0096】
反応器30では、例えば、ニッケル水素型電池の場合、次の反応が行われる。
【0097】
M+(x/2)H2→MHx
これによって充電時に行われる以下の反応で生成されるMHX と同じ活物質が生成される。
【0098】
M+xH2O+xe-→MHx+xOH-
正極の反応器では、ニッケル水素型電池の場合、酸素又は空気により次の反応が行われる。
【0099】
Ni(OH)2+(1/4)O2→NiOOH+1/2H2
これによって充電時に行われる以下の反応で生成されるNiOOHと同じ活物質が生成される。
【0100】
Ni(OH)2+OH-→NiOOH+H2O+e-
なお、本実施形態の構成を、第3、第4、第6実施形態の構成と適宜組み合わせることも可能である。
(第8実施形態)
図12は、第一の発明の第8実施形態による電池を示している。本実施形態は、負極の活物質である粉体を水素吸蔵合金とし、負極の攪拌(流動化)用気体を水素及び水素含有ガスまたは炭化水素ガスまたはアルコール類またはエーテル類とし、正極の活物質である粉体を水酸化ニッケルとし、正極の攪拌(流動化)用気体を酸素又は空気としたものである。図12に示すように、負極セル2には水素吸蔵合金粉及び電解質溶液20が充填され、正極セル3には水酸化ニッケル粉及び電解質溶液21が充填されている。また、流動化流体分散手段9により、負極セル2には水素が供給され、正極セル3には酸素又は空気が供給されている。なお、水素吸蔵合金としては、例えば、La0.8(Ce,Nd)0.15Zr0.05 Ni3.8Co0.8Al0.5 等が用いられる。また、電解質溶液としては、例えば、KOH水溶液等が用いられる。
【0101】
負極セル2では、水素吸蔵合金粉及び電解質溶液20の中に水素が供給されて次の反応が起こる。
【0102】
M+(x/2)H2→MHx
負荷手段8と電池が接続されると、水素吸蔵合金に吸蔵されている水素は、電解質溶液中の水酸基と次式のように反応して電子と水を放出する。
【0103】
MHx+xOH-→M+xH2O+xe-
放出された電子は、負極集電器6に直接又は水素吸蔵合金粉を介して移動する。電子は負極集電器6より負荷手段8を通り、正極集電器7に移動する。電子は、正極集電器7からオキシ水酸化ニッケル粉に移動し、オキシ水酸化ニッケル粉を介して、又は直接移動して次式のように反応し、水酸化ニッケルと水酸基が生成される。水酸基はセパレーター1を通過して負極セル2に導かれ、水素化金属と反応する。
【0104】
NiOOH+H2O+e-→Ni(OH)2+OH-
正極セル3では、ニッケル水素型電池の場合、酸素又は空気により次の反応が行われる。
【0105】
Ni(OH)2+(1/4)O2→NiOOH+(1/2)H2
これによって充電時に行われる以下の反応で生成されるNiOOHと同じ活物質が生成される。
【0106】
Ni(OH)2+OH-→NiOOH+H2O+e-
他の構成及び作用は、第2実施形態の場合と同様である。なお、本実施形態の電池は、第3、第4、第6、第7実施形態の構成で実施することも勿論可能である。
2.第二の発明の実施の形態
(第1実施形態)
図13は、第二の発明の第1実施形態に係る積層型三次元電池の実証試験器の一例を示す斜視図と概要断面図、図14は同組立前(分解状態)の主要部品の一部を示す斜視図である。図13に示すように、本例の積層型三次元電池41はメタハイ電池(ニッケル水素電池)で、図14のように正方形状の中央開ロ部42aを厚み方向に貫通して設けたセル(容器)部材42を2個で一対として構成されており、図13の例では二対(合計4個)のセル部材42を備えている。図14に示すように、各セル部材42の開口部42aの周囲には、浅い(本例では深さが0.5mm)の凹状部42bが環状に形成され、セル部材42、42間に略正方形の耐アルカリ性のイオン透過性セパレーター(本例ではテフロン〔登録商標〕性セパレーター)43が凹状部42b内に嵌装されている。セパレーター43はイオンのみを通過させるが、電極粉体n,hや電気は通過させない膜状体で、上記以外にも素焼き板、イオン交換樹脂膜、ガラスなどが用いられる。また各セル部材42の上面には、開ロ部42a内に臨ませて上下に貫通して2つの注液ロ42cが幅方向に間隔をあけて形成され、各注液ロ42cにはゴム栓44が着脱自在に装着される。
【0107】
各組のセル部材42、42間の凹状部42bには、略正方形で耐アルカリ性および導電性の板状の集電部材(本例ではニッケル板)45が嵌挿されている。また、2組のセル部材42の全組の両端には、耐アルカリ性で導電性の集電体(本例ではニッケル板)46と47を備えている。開口部42aと同一形状の開ロ部48aを中央部に有し外形がセル部材42と同じゴム製パッキン48が、セル部材42と42の間ならびにセル部材42と集電体46および47の間に介装されている。セル部材42、パッキン48および集電体46と47には、厚み方向に貫通する複数の挿通孔42d、48d、46d、47dが開ロ部42aと48aの周囲に周方向に間隔をあけて一連に穿設されている。そして、複数の挿通孔42d、48d、46d、47dに非導電性のボルト49が一連に挿通され、ボルト49の先端ネジ部49aにナット(図示せず)を螺合して締め付けてある。また、左端(正極)と右端(負極)の集電体46と47の上端部には、幅方向に間隔をあけて小孔46eと47eが穿設され、本例では左端と右端の集電体46と47の両端の小孔46eと47eに正極端子50、負極端子51が取り付けられ、配線52と53の一端が接続されている。
【0108】
各セル部材42内には、注液口42cより電解質溶液としての水酸化カリウム水溶液kが注入され、図13(b)の左端側セル部材42から順に正極の粉体活物質としての水酸化ニッケル粉n、負極の粉体活物質としての水素吸蔵合金粉h、正極の粉体活物質としての水酸化ニッケル粉n、負極の粉体活物質としての水素吸蔵合金粉hが水酸化カリウム水溶液kに投入され懸濁されている。この結果、図13(b)の左端から右端にかけて正極セル54、負極セル55、正極セル54、負極セル55が順に形成される。
【0109】
上記のようにして積層型三次元電池41が構成されるが、本例の電池41は、ニッケル水素の単位電池(二次電池)56が2個直列に接続された構造からなり、約2.4vの電圧の電池からなる。そこで、電池41の正極端子50と負極端子51間に2.4v用電球などの負荷手段57を配線52と53により接続する。充電された状態で放電時には、正極端子50を備えた左側の第1単位電池56の正極集電体46に接触している正極セル54内のオキシ水酸化ニッケル粉nは、正極集電体46から電子(e-) を受け取り、一連に接触しているオキシ水酸化ニッケル粉nに電子(e-) が水素イオンとともに供給されて水酸化ニッケルになる。そして、負極セル55内では水素吸蔵合金粉hが電子(e-)と水素イオン(H+)を放出して、この水素イオンがイオン透過性セパレーター43を通って正極セルに行く。つまり、正極セル54内では、
NiOOH+H++e-→Ni(OH)2 の反応が行われ、
一方、負極セル55内では、
MHx→M+xH++xe- の反応が行われる(M:水素吸蔵合金(粉))。
【0110】
続いて、負極セル55内で水素吸蔵合金粉hが放出した電子(e-) は、水素吸蔵合金粉hを介して移動しつつ右側の第2単位電池56の正極セル54との隔壁を構成する集電部材45に集められ(集電され)、第2単位電池の正極セル54内のオキシ水酸化ニッケル粉nは集電部材45から電子(e-) を受け取り、一連に接触しているオキシ水酸化ニッケル粉nに電子(e-) が水素イオンとともに供給されて水酸化ニッケルになる。そして、右側の第2単位電池56の負極セル55内では水素吸蔵合金粉hが電子(e-)と水素イオン(H+)を放出し、この水素イオンはイオン透過性セパレーター43を通って正極セル54にいく。そして、負極セル55内に放出された電子(e-) は負極集電体47に集電され、負極端子51から配線53を通って負荷手段57へ移動し、配線52より正極集電体46へ移動する。これにより、正極集電体46の正極端子50より負荷手段57を経て負極集電体47の負極端子51へ電流が流れる。このようにして、1.2V×2(2.4V)の電圧が発生する(放電が行われる)。
【0111】
一方、三次元電池41への充電は、次のような態様で行われる。電池41に充電器58によって所定の電圧をかけて、負極集電体47の負極端子51から右側の第2単位電池56の負極セル55へ電子(e-)を供給する。電子(e-)は水素吸蔵合金粉h内を移動しつつ、これにより次の反応が生じ、水酸基イオンが発生する。
【0112】
M+xH2O+xe-→MHx+xOH- M:水素吸蔵合金(粉)
負極セル55内に発生した水酸基イオン(OH-) は、イオン透過性セパレーター43を通って左側の正極セル54内に移動し、水酸化ニッケル粉nと次式のように反応して電子(e-)を放出する。
【0113】
Ni(OH)2+OH-→NiOOH+H2O+e-
正極セル54内に放出された電子(e-)は 集電部材45に集電され、左隣の負極セル55内の水素吸蔵合金粉hに移動し、これにより上式に示した反応が生じ、水酸基イオンが発生する。負極セル55内に発生した水酸基イオン(OH-)は、イオン透過性セパレーター43を通って左側の第1単位電池56の正極セル54内に移動し、水酸化ニッケル粉nと上式のように反応して電子(e-) を放出する。電子(e-)は 正極集電体46の正極端子50に集電され、充電器58へ送られる。
(第2実施形態)
図15は、第二の発明の第2実施形態に係る積層型三次元電池を概念的に示す中央縦断面図である。
【0114】
図15に示すように、本例の三次元電池41−1は鉛電池で、単位鉛電池56を6組直列に連結した構造からなる。単位鉛電池56は、中間部を耐酸性のイオン透過性セパレーター43で仕切った正極セル54と負極セル55を備えている。左端(第1組)の単位電池56の正極セル54の左端壁および右端(第6組)の単位電池56の負極セル55の右端壁は、それぞれ集電体46、47としての耐酸性導電体(白金板あるいは鉛板)の側壁からなり、第1組の単位電池56の負極セル55の右側壁および第6組の単位電池56の正極セル54の左側壁は集電部材45としての耐酸性導電体の側壁(白金板あるいは鉛板)からなる。また中間に位置する4組の単位電池56は、各組の単位電池56の間に隔壁を兼ねた集電部材45としての耐酸性導電体(白金板あるいは鉛板)を介して直列に接続されるとともに、左端(第1組)および右端(第6組)の単位電池56とも集電部材45としての耐酸性導電体の側壁(白金板あるいは鉛板)を介して直列に接続されている。
【0115】
各セル54、55内には、共通の電解質溶液として本例では希硫酸溶液(硫酸水溶液)rが充填されている。そして、正極セル54内の希硫酸溶液には二酸化鉛(PbO2) の粉体Aが投入され、懸濁されている。ー方、負極セル55内の希硫酸溶液には金属鉛(Pb)の粉体Bが投入され、懸濁されている。
【0116】
上記の構成からなる第2実施形態に係る三次元電池41−1は、次のように放電する。すなわち、左端の正極集電体46に接触している正極セル54が、集電体46から電子を受け取り、二酸化鉛粉Aに電子(e-) が供給され、次式のように反応して、硫酸鉛(PbSO4) になり、イオンが発生する。
【0117】
PbO2+4H++SO42-+2e-→PbSO4+2H2
次に、正極セル54内の陰イオンがイオン透過性セパレーター43より負極セル55内に移動し、金属鉛粉Bと次式のように反応して電子(e-) を放出し、酸化されて硫酸鉛粉が生成する。
【0118】
Pb+SO42-→PbSO4+2e-
負極セル55内の電子は集電部材45に集電され、集電部材45から右隣の正極セル54内の二酸化鉛粉Aに電子が供給され、上式のように反応して硫酸鉛(PbSO4) になり、イオンが発生する。そして、正極セル54内の陰イオンがイオン透過性セパレーター43より負極セル55内に移動し、金属鉛粉Bと上式のように反応して電子を放出し、硫酸鉛粉が生成する。この電子は集電部材45に集電される。この反応が各単位電池56で順次繰り返され、右端の負極集電体47から電子が負荷手段(図示せず)を介して左端の正極集電体46へ移動し、逆に正極集電体46から電流が負荷手段(図示せず)を介して右端の負極集電体47へ流れる。本例の場合には、約13.6Vの電圧が生じる。なお、集電体や電極には耐酸性の導電体ならば何でも使用することができ、例えば炭素や導電性ポリマーでもよい。
(第3実施形態)
図16は第二の発明の第3実施形態に係る積層型三次元電池を概念的に示す中央縦断面図である。
【0119】
図16に示すように、本例の三次元電池41−2は図15の第2実施形態と同様に鉛電池であるが、電池41−2を軸方向に貫通する回転軸59を回転自在に配設し、手動若しくは回転駆動装置(図示せず)により回転させる。回転軸59上の、各セル54、55内に対応する位置には、複数枚の攪拌羽根59aを回転軸59に対して直交する方向に突設し、回転軸59の回転により各セル54、55内の希硫酸溶液rを懸濁されている二酸化鉛粉A又は金属鉛粉Bとともに撹伴できるように構成しているところが、第2実施形態の電池41−1と相違している。
【0120】
したがって、本例の三次元電池41−2によれば、電極粉体としての二酸化鉛粉Aおよび金属鉛粉Bを攪拌することによって、各電極粉体A、Bと集電体46、47あるいは集電部材45との接触が良好になるので、各セル54、55の(セル部材42:図13参照)の容量を大きくすることができ、電力量の増大が図れる。また、電極粉体としての二酸化鉛粉Aおよび金属鉛粉Bを攪拌することによって、集電体や集電部材への硫酸鉛粒子の付着を防止できるので、集電体46と47および集電部材45に鉛板を使用することができる。なお、攪拌手段59を備えた点を除き、第2実施形態に係る電池41−1と共通するので、第2実施形態と共通する部材は同一の符号を用いて表し説明を省略する。
(第4実施形態)
図17は第二の発明の第4実施形態に係る積層型三次元電池を概念的に示す中央縦断面図である。
【0121】
図17に示すように、本例の三次元電池41−3は第16図の第3実施形態と同様に攪拌手段を備えた鉛電池であるが、攪拌手段が第3実施形態の電池41−2とは相違している。すなわち、本例の攪拌手段は正極セル54用の攪拌手段60と、負極セル55用の攪拌手段61とからなり、各攪拌手段60、61は循環ポンプ62、63を備えており、硫酸水溶液rの循環管64、65の注入口に分散ノズル66、67を装着し、吸出口に電極粉体A、Bの濾過フイルター68、69を装着して硫酸水溶液rを循環させるようにしている。本例の電池41−3では、正極セル54あるいは負極セル55にそれぞれ硫酸水溶液rを分散ノズル66、67から噴射して電極粉体A、Bを攪拌させるものである。なお、ポンプと電解質溶液間はトラップなどで絶縁されている。
【0122】
本例の三次元電池41−3も電極粉体としての二酸化鉛粉Aおよび金属鉛粉Bを攪拌することによって、各電極粉体A、Bと集電体46、47あるいは集電部材45との接触が良好になるので、各セル54、55(セル部材42:第13図参照)の容量を大きくすることができ、電力量の増大が図れるとともに、硫酸鉛粒子の集電体や集電部材への付着を防止できるので、集電体46、47および集電部材45に鉛板を使用することができる。なお、攪拌手段が相違するだけで、その他の点については第3実施形態に係る電池41−2と共通するので、第3実施形態と共通する部材は同一の符号を用いて表し説明を省略する。
(第5実施形態)
図18は第二の発明の第5実施形態に係る積層型三次元電池を概念的に示す中央縦断面図である。
【0123】
図18に示すように、本例の三次元電池41−4は図17の第4実施形態と同種構造の攪拌手段を備えた鉛電池であるが、攪拌手段が第4実施形態の電池41−3とは相違している。すなわち、本例の攪拌手段は正極セル54と負極セル55とに窒素、アルゴンなどの不活性ガスを、不活性ガス源70からブロワー71、72により配管73、74を介して分散ノズル75、76より水酸化カリウム水溶液k中に供給し、電極粉体n、hを攪拌流動化させるものである。一方、正極セル54と負極セル55とに供給した窒素、アルゴンなどの不活性ガスは、別の配管77、78により濾過フィルター79、80を介して大気中へ開放して抜き出される。
【0124】
ところで、本例の三次元電池41−4については、正極セル54に水酸化ニッケル粉nを、負極セル55に水素吸蔵合金粉hをそれぞれ投入し、電解質溶液としての水酸化カリウム水溶液kに懸濁させて、ニッケル水素型三次元二次電池を構成する。そして、正極セル54の攪拌流動化用気体に酸素又は空気を使用し、負極セル55の攪拌流動化用気体に水素を使用する。そこで、次のような反応が生じる。すなわち、負極セル55では、水素吸蔵合金粉hに水素が反応して、
M+(x/2)H2 →MHxの反応が起こる。
【0125】
ここで、負荷手段57(図13参照)と電池を接続すると、水素吸蔵合金粉hに吸蔵されている水素は、電解質溶液k中の水酸基イオンと反応して、次式のように電子と水を放出する。
【0126】
MHx+xOH-→M+xH2O+xe-
放出された電子は、負極集電体47に集電され、負荷手段57(第13図参照)を通って正極集電体46へ移動し、正極セル46内でオキシ水酸化ニッケル粉nに移動し、以下の式のように、水と反応して水酸化ニツケルと水酸基イオンが生成される。
【0127】
NiOOH+H2O+e-→Ni(OH)2+OH-
水酸基イオンはセパレーター43を透過して負極セル55へ移動し、水素化金属と反応し、電子と水を放出する。
【0128】
一方、正極セル54では、酸素又は空気の供給により次の反応が起こる。
【0129】
Ni(OH)2+(1/4)O2→NiOOH+1/2H2
この結果、充電時に行われる以下の式に示すような反応によって生成されるNiOOHが生成され、発電されることになる。
【0130】
Ni(OH)2+OH-→NiOOH+H2O+e-
(第6実施形態)
図19は第二の発明の第6実施形態に係る積層型三次元電池を概念的に示す中央縦断面図である。
【0131】
図19に示すように、本例の三次元電池41−5は第13図の第1実施形態と同様にニッケル水素二次電池からなるが、正極セル54および負極セル55の容量をかなり大きくしている。その代わりに、集電体46、47および集電部材45から正極セル54あるいは負極セル55内へ向けて多数のスタッド81、82、83をそれぞれ間隔をあけて張出して設けている。本例の場合、集電体46、47および集電部材45にはニッケル板を用いたので、スタッド81、82、83もニッケル板で一体に形成している。本例の電池41−5においては、各セル54、55の容積を大幅に拡大したが、電極粉体n、hは集電体46、47および集電部材45に対して確実に接触するので、電気(電子と電流)を十分に伝えることができる。なお、本例の電池41−5に第3実施形態あるいは第4実施形態の攪拌手段59または60と61を組み合わせて使用することもできる。
(別の実施形態)
以上、第二の発明の三次元電池の実施形態を説明したが、下記のように実施することもできる。
1) 正極と負極の活物質粉体としては、上記以外にも例えば、水酸化ニッケルとカドミウムや、水酸化ニッケルと水酸化鉄を使用することができる。
2) 上記実施形態では、単位二次電池56を導電性(耐酸性又は耐アルカリ性)の導電部材45を介して2個〜6個直列に連結した構造を示したが、要求される電圧に応じて何個でも直列に連結することができる。
3) 電池の容量についても、要求される電力容量に応じてセル部材42の容積を増大し、必要に応じて攪拌手段やスタッドを設けることにより対応することができる。
3.第三の発明の実施の形態
次に、第三の発明の実施形態について、三次元構造の電池(三次元電池)を構造の一部として有し、充放電の可能な電力貯蔵設備としての機能を備えている機器または装置、三次元電池に貯蔵された電力を動力源とする回転機器、三次元電池に貯蔵された電力を動力源とする移動物体、三次元電池に貯蔵された電力を他の設備に供給する電力搬送手段および三次元電池に貯蔵された電力を光エネルギー、運動エネルギーまたは熱エネルギーに変換する設備の具体例について、以下に詳細に説明する。
〔3次元電池を構造の一部として有し、充放電の可能な電力貯蔵設備としての機能を備えている機器または装置〕
(ドア)
建物のドアや自動車のドア等のドアは、断熱および強度向上の目的のために、二重構造とされていることが多いが、内部の空間は有効に利用されていない。 そこで、ドアの内部空間を充放電の可能な三次元電池のセルとして利用する。 すなわち、上記したような機構で三次元電池に充電し、ドアの内部空間を電力貯蔵庫として利用する。
【0132】
その結果、本実施例を建物のドアに適用した場合は、商用電源の停電によるトラブルで電力の供給が停止しても、ドア内の三次元電池に貯蔵した電力を非常用電源として利用することができ、また、自動車のドアに適用した場合は、別に蓄電池を搭載する必要がない。しかも、電池活物質は金属粒子が主流であり、自動車事故による衝突時の衝撃にも強く、さらに吸音作用があって防音性が優れているという特徴がある。
【0133】
図20は、内部空間に充放電の可能な三次元電池を有するドアの縦断面図である。図20において、91はドアハウジングであり、92はヒンジを利用した正極端子、93はヒンジを利用した負極端子、94は導電性の集電部材であり、集電部材94および非導電性のセパレーター95で仕切られて複数のセルが形成され、各セルはイオン透過性セパレーター96によって2分割され、分割された一方の側のセルには、正極の粉体活物質および電解質溶液97が充填され、分割された他方の側のセルには、負極の粉体活物質および電解質溶液98が充填されている。99は鍵装置、100はノブである。
(橋脚)
橋脚は一般的に鋼製またはコンクリート製のものが多く、鋼製の橋脚は中空構造のものが多い。ところが、中空の内部空間は有効に利用されていない。
【0134】
そこで、中空鋼製の橋脚の内部を充放電の可能な三次元電池のセルとして利用する。
【0135】
すなわち、上記したような機構で三次元電池に充電し、橋脚の内部空間を電力貯蔵庫として利用する。
【0136】
その結果、橋脚空洞部に活物質となる鉄粉などを充填することによって、座屈破壊に強くなる一方、例えば、橋脚の近くに海洋があれば、海洋温度差を利用して発電した電力や潮流を利用して発電した電力を貯蔵したり、風力発電の電力を貯蔵することもできる。
【0137】
図21は、内部空間に充放電の可能な三次元電池を有する橋脚の縦断面図である。図21において、101は橋脚ブロック、102は分岐フランジ、103は導電性の集電部材であり、集電部材103で仕切られた各セルはイオン透過性セパレーター104で2分割されており、分割された一方の側のセルには、正極の粉体活物質および電解質溶液105が充填され、分割された他方の側のセルには、負極の粉体活物質および電解質溶液106が充填されている。
【0138】
例えば、20m角で5m高さのブロックを80段積み重ねた橋脚4本で橋桁を形成し、橋脚ブロック101は鉄合金製とし、内部にニッケルメッキを施し、セパレーター104は酸化金属焼結体など不導体で強度が高い材料を使用し、正極の粉体活物質として水酸化ニッケル粉末に金属ニッケル粉を混合した活物質を使用し、負極の粉体活物質として水酸化鉄粉と金属ニッケル粉を混合した活物質を使用し、電解質溶液として6規定の水酸化カリウム溶液を使用した場合、700億kWhrの電力を貯蔵することができる。この電力は日本全国で使用される商用電力の約1箇月分である。
(ダム)
ダムは、一般的にコンクリートの充填構造の巨大構造物であるにも拘わらず、その巨大な容積が水の位置エネルギーを電力に変換する手段としてしか利用されていない。
【0139】
そこで、外殻を鋼製のダムとして、その内部空間を充放電の可能な三次元電池の巨大セルとして利用する。
【0140】
すなわち、ダムを、水の位置エネルギーを電力に変換する設備としてだけでなく、上記したような機構で三次元電池に充電し、ダムの内部空間を電力貯蔵庫として利用する。
【0141】
その結果、揚水発電効率が60%であるのに比べて、電力貯蔵効率が95%と高くなる。
【0142】
図22は、内部空間に充放電の可能な三次元電池を有するダムの斜視図である。図22において、111は正極集電体、112は負極集電体、113は導電性の集電部材であり、集電部材113によって仕切られた各セルはイオン透過性セパレーター114によって2分割されており、分割されたセルの中で正極集電体に近いセル部分には、正極の粉体活物質および電解質溶液115が充填され、分割されたセルの中で負極集電体に近いセル部分には、負極の粉体活物質および電解質溶液116が充填されている。
(ラジエーター)
液冷式のラジエーターは、冷却媒体として水やオイルが使用されているが、この冷却媒体は燃料等への転用は困難で、クーラントとしてしか使用されていない。
【0143】
そこで、ラジエーターを充放電の可能な三次元電池で構成し、電解液を冷却媒体とする。
【0144】
すなわち、電池の充放電に必要な熱を電解液を介して受け入れ、ラジエーターを電力貯蔵器として利用する。
【0145】
その結果、例えば、自動車に蓄電地を搭載することが不要になり、電池の電力貯蔵効率も向上する。特に、外気温が低い場合の電池の反応速度は、電解液を加熱することによって促進することができる。
【0146】
図23は、電力貯蔵器としてのラジエーターの概略構成図である。図23において、121はラジエーター本体、122はフィンであり、ラジエーター本体121はイオン透過性セパレーター123によって2分割されており、分割された一方の側には、正極の粉体活物質および電解質溶液124が充填され、分割された他方の側には、負極の粉体活物質および電解質溶液125が充填されている。126は正極集電体、127は負極集電体である。128a、128bは活物質を再生するための活物質分離フィルターであり、活物質分離フィルター128bは熱源に通じている。また、ラジエーター本体121にも熱源からの熱が伝達される。
(屋根)
一般住宅の屋根には、断熱性と撥水性に優れた瓦、茅、セラミックス等が使用されているが、屋根自身にエネルギー変換機能がなく、屋根と天井の間の大きな空間を無駄にしているとも言える。
【0147】
そこで、屋根と天井の空間を利用して充放電の可能な三次元電池を形成する。 すなわち、断熱材兼重りとして屋根裏に封入されていた土に代わって、三次元電池の粉体活物質を封入し、屋根裏を電力貯蔵庫として利用する。
【0148】
その結果、例えば、屋根上に設置した太陽電池セルや風力発電で得られた電力を三次元電池に貯蔵し、さらに、三次元電池に熱交換機能をもたせれば、夏場においては、室内の温風を吸引して三次元電池の電池反応に利用し、冬場においては、三次元電池の電池反応の結果生成する熱を室内に放出するようにすれば、夏場においては室内が涼しく、冬場においては室内が温かくなり、三次元電池を電力貯蔵装置として使用するだけでなく、空調機器としても使用することができる。また、自動車の天井部分に熱交換機能を有する三次元電池を設置しても、同様の空調効果が得られる。
【0149】
図24は、天井部分に充放電の可能な三次元電池を有する家屋の縦断面図である。図24において、131は屋根であり、132a、132bは壁であり、屋根131と壁132a、132bと梁133で囲まれた天井部分に複数の集電部材134を一方の壁132aから他方の壁132bに向けて配し、集電部材134で仕切られた各セルはイオン透過性セパレーター135で2分割されており、分割されたセルの中で正極集電体136に近い部分には、正極の粉体活物質および電解質溶液137が充填され、分割されたセルの中で負極集電体138に近いセル部分には、負極の粉体活物質および電解質溶液139が充填されている。
(自動車のボンネットとトランクカバー)
自動車のボンネットとトランクカバーは、エンジンその他の内容物の覆い及び強度部材として使用されているが、その内面部分は利用されていない。
【0150】
そこで、ボンネットまたはトランクカバーを三次元電池のケーシングとして利用し、ボンネットまたはトランクカバーの内面側に充放電の可能な三次元電池を形成する。
【0151】
すなわち、ボンネットまたはトランクカバーに電池機能を持たる。
【0152】
その結果、いままで、ボンネット内に搭載されていた蓄電池が不要になり、さらに、三次元電池が強度部材としての機能を果たし、ボンネットまたはトランクカバーの強度が増す。
【0153】
図25は、内面側に充放電の可能な三次元電池を有するボンネットの一部を示す断面図である。図25において、141はボンネット、142は導電性の集電部材であり、集電部材142によって仕切られた各セルは、イオン透過性セパレーター143によって2分割されており、分割された一方の側のセルには、正極の粉体活物質および電解質溶液144が充填され、分割された他方の側のセルには、負極の粉体活物質および電解質溶液145が充填されている。
(道路)
一般的に、道路は下層路盤材を施工し、その下層路盤材の上に上層路盤材を施工し、表層部をアスファルト舗装しているが、路盤材は道路の基礎としての用途以外、特に利用されていない。
【0154】
そこで、現在一般的に使用されている路盤材に代えて粉体活物質を使用し、地表面付近に充放電の可能な三次元電池を形成する。
【0155】
すなわち、上記したような機構によって三次元電池に充電し、道路に大電力を貯蔵する。
【0156】
その結果、電池反応に伴う発熱によって道路の凍結を防止することが可能になり、また、粉体活物質を再生することによって路盤材のリサイクルが可能になる。
【0157】
図26は、充放電の可能な三次元電池を形成する地表面付近の断面図である。図26において、151はアスファルト舗装、152は正極集電体、153は負極集電体、154は導電性の集電部材であり、集電部材154によって仕切られたセルは、イオン透過性セパレーター155によって2分割されており、分割されたセルの中で正極集電体に近いセル部分には、正極の粉体活物質および電解質溶液156が充填され、分割されたセルの中で負極集電体に近いセル部分には、負極の粉体活物質および電解質溶液157が充填されている。
(食器)
一般的に、食器は保温性をよくするために、断熱性の高い陶器や金属製の二重構造のものが使用されていることが多い。しかし、断熱性が高く、熱容量が大きいので、食品を食器に入れる前に、その食品の温度に併せて予め容器を加熱したり、または冷却して、良好な保温性を確保する必要がある。
【0158】
そこで、食器の底または側部を二重構造にして、その二重構造内の内部空間を利用して充放電の可能な三次元電池を形成し、その内部空間内に発熱素子または冷却素子を埋設する。
【0159】
すなわち、その三次元電池に貯蔵された電力を電源として、発熱素子または冷却素子を作動させ、温かい食品を加熱保持し、冷たい食品を冷却保持する。
【0160】
その結果、温かい食品を食器に入れる前に食器を加熱する必要はなく、その食品がさめることもない。また、冷たい食品を食器に注ぐ前に食器を冷却する必要はなく、その食品がなま暖かくなることもない。
【0161】
図27は、側部に充放電の可能な三次元電池を有する食器の縦断面図である。図27において、161は食器の取っ手であり、食器本体162は内部空間を有する二重構造になっている。食器本体162の側部の内部空間はイオン透過性セパレーター163によって2分割されており、分割された一方の空間には、正極の粉体活物質および電解質溶液164が充填され、分割された他方の空間には、負極の粉体活物質および電解質溶液165が充填されている。食器の底部には、発熱素子(または冷却素子)166が埋設されている。167は電源スイッチ、168は充電ジャックである。そして、充電ジャック168から上記構成の食器側部の3次元電池に充電し、食品を食器に入れるときに電源スイッチ167を投入して、側部の三次元電池に充電された電力で発熱素子(または冷却素子)166を作動させて、食器内の食品を加熱保持または冷却保持する。
(バランスウエイト)
パワーショベル、フォークリフト、クレーンなどの揚重機は、取り扱う重量物とのバランスをとるために、一般的にバランスウエイトを必須付属物としているが、このバランスウエイトは金属の塊であり、重量のバランスをとる以外の用途としては利用されていない。
【0162】
そこで、バランスウエイトの内部に、正極集電体と負極集電体を備え、この正極集電体と負極集電体の間にイオン透過性セパレーターを介装し、正極集電体とイオン透過性セパレーターの間に正極の粉体活物質および電解質溶液を充填し、負極集電体とイオン透過性セパレーターの間に負極の粉体活物質および電解質溶液を充填してなる充放電の可能な三次元電池を形成する。
【0163】
すなわち、バランスウエイトを単なる重りとしてだけでなく、電力貯蔵器として利用する。
【0164】
その結果、内蔵した三次元電池の電力を、パワーショベル、フォークリフト、クレーンなどの揚重機の作動電源として利用することができる。
(床)
住宅によっては、床下に高温の燃焼排ガスを通入したり、電気ヒーターを設置することによって、室内の暖房源として利用されている場合がある。しかし、それらの熱を冷房に利用するのは困難であり、床下の空間が充分に利用されているとはいえない。
【0165】
そこで、床下に充放電の可能な三次元電池を形成する。
【0166】
すなわち、床下が電力貯蔵庫になり、充放電時に一方の電極が放熱し、他方の電極が吸熱をするので、室内の冷暖房に利用できる。
【0167】
このように、冷暖房用の電力源として電池の吸放熱を直接利用するので、圧縮性伝熱媒体の膨脹、圧縮に伴う気化熱や放散熱を利用して冷暖房を行う方式の一般的な空調機器に比べてエネルギー変換効率が向上する。
【0168】
図28は、充放電の可能な三次元電池を有する住宅の床の断面図である。図28において、171は床、172は正極、173は負極、174は導電性の集電部材であり、正極から負極に向けて配された集電部材174により仕切られた各セルはイオン透過性セパレーター175によって2分割されており、分割されたセルの中で正極に近いセル部分には正極の粉体活物質および電解質溶液176が充填され、分割されたセルの中で負極に近いセル部分には負極の粉体活物質および電解質溶液177が充填されている。178は熱媒体供給冷暖切り替え器、179は熱媒体回収冷暖切り替え器である。熱媒体供給冷暖切り替え器178から床下の熱媒体流通空間180を通過した熱媒体は、熱媒体回収冷暖切り替え器179に回収され、正極熱交換器熱媒体供給パイプ181から各正極セル内熱交換器182に供給されて正極熱交換器熱媒体排出パイプ183を経て熱媒体供給冷暖切り替え器178に至る。また、熱媒体回収冷暖切り替え器179に回収された熱媒体は、負極熱交換器熱媒体供給パイプ184から各負極セル内熱交換器185に供給されて負極熱交換器熱媒体排出パイプ186を経て熱媒体供給冷暖切り替え器178に至る。従って、熱媒体供給冷暖切り替え器178と熱媒体回収冷暖切り替え器179を、冷房または暖房に切り替えておくことにより、充放電時の電池反応による化学反応熱を、冷房源として、または暖房源として利用することができる。
(ベッド)
一般的にベッドは断熱性がよく、冬は温かいが、夏は暑い。
【0169】
そこで、ベッド表面下のスプリング体等の弾性手段が介装されている部分を利用してベッド内に充放電の可能な三次元電池を形成する。
【0170】
すなわち、ベッドが電力貯蔵器になり、充放電時に一方の電極が放熱し、他方の電極が吸熱をするので、その放熱反応を暖房に利用し、その吸熱反応を冷房に利用する。
【0171】
このように、冷暖房用の電力源として電池の吸放熱を直接利用するので、圧縮性伝熱媒体の膨脹、圧縮に伴う気化熱や放散熱を利用して冷暖房を行う方式の一般的な空調機器に比べてエネルギー変換効率が向上する。
【0172】
具体的な図示例は、図28と同様であるので省略する(床171をベッド表面に代えればよい)。
(工事用電源)
各種工事用電源として、一般的に商用電源を利用できない場所では、エンジン発電器を利用しているが、騒音や排ガスといった公害が発生する。
【0173】
そこで、充放電の可能な三次元電池を車両に搭載して工事現場に設置する。そして、工事において必要なときには、その三次元電池から電力を供給する。
【0174】
このように、低騒音で低排ガスの電源供給手段を提供できる。特に、住宅密集地やトンネルなどの閉鎖空間で工事用電源を必要とする場合にその効果が大きい。
【0175】
図29は、充放電の可能な三次元電池を搭載したトレーラーの側面図である。図29において、191は動力車、192は三次元電池を搭載したトレーラーである。
〔3次元電池に貯蔵された電力を動力源とする回転機器〕
(電動機)
一般的に、電動機は、外部電源から電力を供給しないと作動せず、起動時には定格以上の電流が流れるという欠点がある。
【0176】
そこで、電動機のケーシングまたは台座を電池ハウジングとして充放電の可能な三次元電池を形成する。
【0177】
すなわち、電動機の内部に電力貯蔵装置を有することにより、外部電源から電力を供給しなくても電動機を作動させることができる。
【0178】
このように、電動機と電池を組み合わせることで、装置全体の容積が減少する。起動時には、外部電源に加えて三次元電池からも電力を供給することで、過大な給電設備が不要になり、外部電力使用量を抑えることができる。そして、電動機の通常運転時には、三次元電池からのみ電力を供給することで外部電力が不要になり、停電時にも電動機は作動する。
【0179】
図30(a)は、ケーシングに充放電の可能な三次元電池を組み込んだ電動機の縦断面図である。図30(a)において、201は回転軸、202は回転子、203は界磁コイル、204は正極集電体、205はイオン透過性セパレーター、206は負極集電体である。正極集電体204とイオン透過性セパレーター205との間には正極の粉体活物質および電解質溶液207が充填され、負極集電体206とイオン透過性セパレーター205との間には負極の粉体活物質および電解質溶液208が充填されている。図30(a)においては、電池は一つであるが、円周方向に沿って積層するか軸長手方向に積層すれば、高い電圧を得ることができる。また、負極集電体206は、円形のものとして示されているが、矩形として軸長手方向に積層すれば、電動機の体積効率を向上することができる。
【0180】
図30(b)は、台座に充放電の可能な三次元電池を組み込ん電動機の縦断面図である。図30(b)において、209は電動機215の台座、210は正極集電体、211はイオン透過性セパレーター、212は負極集電体である。正極集電体210とセパレーター211との間には正極の粉体活物質および電解質溶液213が充填され、負極集電体212とセパレーター211との間には負極の粉体活物質および電解質溶液214が充填されている。
【0181】
本発明の三次元電池を小型の電動機で作動する物品、例えば、ポータブルテープレコーダーに採用すれば、現在用いられている電池のスペースを省略でき、電動機を僅かに大きくするだけでよいので、ポータブルテープレコーダー全体として、小型化が可能である。また、本発明の三次元電池を大型の電動機に採用すれば、電動機の起動時に必要な大電流を三次元電池からも供給できるため、起動時にのみ必要となる過大な電源装置が不要となり、外部電力使用量も大幅に低減することができる。
(エンジン)
一般的に、レシプロエンジン、ターボエンジンなどのエンジンのケーシングには冷却媒体を流通させる外套が付設されており、係るエンジンを始動するには電動機が必要であり、この電動機を作動するには外部電源から電力を供給しなければならないという。
【0182】
そこで、エンジンのケーシングを電池ハウジングとして充放電の可能な三次元電池を形成する。
【0183】
すなわち、電池となったケーシングがエンジンの熱を吸収して効率よく電力に変換し、エンジンケーシング外側に電力を貯蔵する。
【0184】
このように、エンジンに蓄電作用があるので、外部電源が不要となる。また、エンジンの熱を利用して蓄電することにより、従来は外部に廃棄されていた熱エネルギーを電気エネルギーに変換して貯蔵できるので、全体のエネルギー効率を向上させることができる。
【0185】
図31は、ケーシングに充放電の可能な三次元電池を組み込んだターボエンジンの縦断面図である。図31において、221は回転軸、222はタービン、223はケーシング、224は正極集電体、225はイオン透過性セパレーター、226は負極集電体である。正極集電体224とセパレーター225との間には正極の粉体活物質および電解質溶液227が充填され、負極集電体226とセパレーター225との間には負極の粉体活物質および電解質溶液228が充填されている。
【0186】
図31に示す電池の構造は、エンジンの作動温度に合わせて比較的高い温度で作動する電池(例えば、炭酸リチウム、炭酸カリウムなどの炭酸塩を電解質とし、約650℃程度の高温で作動する溶融炭酸塩型燃料電池)の構造を採用し、充電によって吸熱する側の電極をケーシング223と共用するのが好ましい。第31図は、ターボエンジンの場合を示しているが、レシプロエンジンの場合は、シリンダー外周の冷却二重ジャケットを電池のケーシングとすることができる。
〔3次元電池に貯蔵された電力を動力源とする移動物体〕
(二重構造船)
タンカーなど、洩れた場合に海水が汚染される液体を運搬する船はその液体が事故等により海に流れないように、二重構造を採用していることが多いが、二重構造部分が有効に利用されていない。
【0187】
そこで、二重構造部分に海水やアルカリなどを電解液とする充放電の可能な三次元電池を形成する。
【0188】
すなわち、船の二重構造部分を電力貯蔵庫として利用する。
【0189】
その結果、貯蔵した電力を船の航行中の動力源として利用することができる。
【0190】
図32は、充放電の可能な三次元電池を組み込んだ二重構造船の一部を示す斜視図である。図32において、231は正極集電体としてのタンク壁、232はイオン透過性セパレーター、233は負極集電体としての船外壁である。正極集電体231とセパレーター232との間には正極の粉体活物質および電解質溶液234が充填され、負極集電体233とセパレーター232との間には負極の粉体活物質および電解質溶液235が充填されている。本実施例の場合、電解液としては、海水を利用することもできる。このように、二重構造船の二重構造部分を三次元電池として有効に利用することにより、例えば、100万トンタンカーの重量中の5%部分を電池として利用すると、10万馬力の出力で60時間程度航行することが可能である。
(船)
エネルギーとなる石油や天然ガスや核燃料や石炭等は、運搬コストを低減するために大排水量の大型船により大量に運搬されているが、電力を直接運搬する手段はない。
【0191】
そこで、船倉の一部または全部を充放電の可能な三次元電池のセルとする。
【0192】
すなわち、船倉を電力貯蔵庫として利用する。
【0193】
その結果、貯蔵した電力を船の航行中の動力源として利用することができる。
【0194】
図33は、充放電の可能な三次元電池を組み込んだ船の長手方向の一部の縦断面図である。図33において、241は正極集電体としての船隔壁、242は負極集電体としての船外壁である。正極集電体241と負極集電体242との間には隔壁を兼用する導電性の複数の集電部材243を介在させ、集電部材243で仕切られた各セルはイオン透過性セパレーター244により2分割されており、分割されたセルの中で正極集電体に近いセル部分には、正極の粉体活物質および電解質溶液245が充填され、分割されたセルの中で負極集電体に近いセル部分には、負極の粉体活物質および電解質溶液246が充填されている。
【0195】
仮に、100万トンの排水量の船で三次元電池を作ると、1億kWhrの電力を貯蔵することができる。もし、1kWhrが単価10円であるとすれば、10億円相当の電力を運搬できることになり、天然ガスや石炭を運搬するより運搬効率が向上するので好ましい。
(飛行機)
飛行機の胴体は耐圧の関係で、翼は強度の関係で二重構造になっており、翼の内部空間の一部には燃料が入っているが、残りの内部空間は有効に利用されていない。
【0196】
そこで、翼の内部空間を利用して充放電の可能な三次元電池のセルを形成する。
【0197】
すなわち、翼内の三次元電池に貯蔵された電力を飛行機のエンジン起動時の電力および航行中の機内用電力源として利用する。
【0198】
その結果、電力用ガスタービンおよび専用バッテリーが不要となり、飛行機の全体重量が軽くなる。
【0199】
図34は、充放電の可能な三次元電池を組み込んだ飛行機の翼の断面図である。図34において、251は正極集電体としての翼内隔壁、252は負極集電体としての翼外壁である。正極集電体251と負極集電体252との間には隔壁を兼用する導電性の複数の集電部材253を介在させ、集電部材253で仕切られた各セルはイオン透過性セパレーター254により2分割されており、分割されたセルの中で正極集電体に近いセル部分には、正極の粉体活物質および電解質溶液255が充填され、分割されたセルの中で負極集電体近いセル部分には、負極の粉体活物質および電解質溶液256が充填されている。
(ロードローラー)
ロードローラーは一般的にタイヤを大きく重くしており、タイヤは重りとして作用するので、タイヤの内部には重量物としての鉄の塊が充填されているだけで、充填物の有効利用がされていない。
【0200】
そこで、ロードローラーのタイヤの内部の鉄塊を活物質の粉体に代えて、充放電の可能な三次元電池を形成する。
【0201】
すなわち、ロードローラーのタイヤを移動用電源として利用する。
【0202】
その結果、タイヤを重り以外に移動用電源として有効に利用できる。
【0203】
図35は、充放電の可能な三次元電池を組み込んだロードローラーのタイヤの断面図である。図35において、261は正極集電体としての回転軸、262は負極集電体としての外壁である。正極集電体261と負極集電体262との間には隔壁を兼用する導電性集電部材263を介在させ、集電部材263によって仕切られた各セルはイオン透過性セパレーター264により2分割されており、分割されたセルの中で正極集電体に近いセル部分には、正極の粉体活物質および電解質溶液265が充填され、分割されたセルの中で負極集電体に近いセル部分には、負極の粉体活物質および電解質溶液266が充填されている。
(電車)
電車は、一般的にパンタグラフを介して送電線から電力を供給されているが、架線に費用と時間がかかり、パンタグラフと送電線との摩擦は騒音発生の原因ともなる。
【0204】
そこで、電車の車体底部を充放電の可能な三次元電池のセルとする。
【0205】
すなわち、車体底部に三次元電池の電力を貯蔵し、走行用の電力として利用する。
【0206】
その結果、架線が不要になる。
【0207】
図36は、電車の車体底部に設置する充放電の可能な三次元電池の断面の概略構成図である。図36において、271は正極集電体、272は負極集電体であり、正極集電体271と負極集電体272との間には隔壁を兼用する導電性の複数の集電部材273を介在させ、集電部材273によって仕切られた各セルはイオン透過性セパレーター274により2分割されており、分割されたセルの中で正極集電体に近いセル部分には、正極の粉体活物質および電解質溶液275が充填され、分割されたセルの中で負極集電体に近いセル部分には、負極の粉体活物質および電解質溶液276が充填されている。
【0208】
例えば、1トンの三次元電池を作ると、100kWhrの電力を貯蔵し、この貯蔵電力で都市近郊を走行する電車では、数十分間走行することができ、停車時の僅かな時間(数分間)で充電することも可能である。しかし、新幹線の16車両を走行させるには、15000kWの最大電力が必要で、各車両に4トンの三次元電池を搭載しないと2時間程度走行することはできないので、三次元電池の容量を2トン程度に小さくして、エンジン発電器や燃料電池をともに搭載するのが好ましい。
(電気機関車)
電気機関車は、エンジン発電器で発電し、その電力で電動機を駆動して走行しているが、負荷の変動に対して追従性が悪いので、フライホイールを搭載している。しかし、エンジン発電器のエネルギー貯蔵量は少なく、角運動量の変動による走行性能への悪影響もある。
【0209】
そこで、発電器と電動機の間に充放電の可能な三次元電池を設置する。
【0210】
すなわち、三次元電池に貯蔵した電力で電動機を駆動し、走行用の電力として利用する。
【0211】
その結果、負荷変動に対する追従性がよくなり、エンジンの効率が向上するので最大出力が増加し、同時に公害物質の排出量も減少するという利点がある。
【0212】
図37(a)は充放電の可能な三次元電池を有する電気機関車の断面図である。図37(a)において、281は運転席、282はエンジン発電器、283は三次元電池、284は電動機、285は制御装置、286は駆動輪である。図37(b)は、ターボエンジンに適用した場合において、発電器から充放電の可能な三次元電池を介して電動機を駆動する機構の一実施例の概略構成図であり、287は圧縮機、288は燃料タンク、289は燃焼器であり、外部から導入した空気290を圧縮機287で圧縮して、この高圧空気と燃料タンク288内の燃料を燃焼器289で燃焼させて高温高圧のガスを生成し、この高温高圧ガスの運動エネルギーを膨脹機291、発電器292を経て三次元電池293に供給して電力に変換して貯蔵し、この電力を制御装置294を経て電動機295に供給する。
(電源車)
電気機関車や電車は、一般的にパンタグラフを介して送電線から電力を供給されているので、電化されていない路線は走行できず、停電時にも走行できない。 そこで、発電器と充放電の可能な三次元電池または充放電の可能な三次元電池のみを搭載した車両からなる電源車を牽引する。
【0213】
すなわち、電源車の電力で電動機を駆動し、電気機関車や電車の走行用の電力として利用する。
【0214】
その結果、非電化路線でも電気機関車や電車が走行できる。
【0215】
図38(a)は電源車を牽引する電気機関車の断面図であり、図38(b)はターボエンジンに適用した場合において、発電器から充放電の可能な三次元電池に至る電力貯蔵システムの一実施例の概略構成図である。図38(a)において、301は電気機関車、302は電源車であり、図37と共通の構成要素については、同一参照番号を付して説明を省略する。図38図(b)は、図37(b)における制御装置294と電動機295が含まれていない点が図37(b)と異なる。
(低騒音電車)
電車は、一般的にパンタグラフを介して送電線から電力を供給されているので、パンタグラフと送電線との摩擦により騒音が発生する。そのため、住宅密集地を走行するときには、その騒音を下げるため、低速走行をする場合がある。しかし、高速輸送手段である電車が徐行することは大きな時間の損失になり、目的地に希望する時間に到着することができなくなる。
【0216】
そこで、発電器と充放電の可能な三次元電池または充放電の可能な三次元電池のみを搭載した車両からなる電源車を牽引して電源にし、各車両には三次元電池を搭載する。
【0217】
すなわち、高速走行時にはパンタグラフを格納して、三次元電池に貯蔵した電力で走行する。
【0218】
その結果、高速走行時の騒音を低減することができる。
【0219】
図39は、充放電の可能な三次元電池を有する低騒音電車の断面図であり、図38(a)の電気機関車301にパンタグラフ311を付加した点が図38(a)と異なる。
〔3次元電池に貯蔵された電力を他の設備に供給する電力搬送手段〕
(電線)
従来、高周波電力輸送には同軸ケーブル、低周波電力輸送には並行型ケーブルが使われているが、電源からの電力の瞬停または短期の停電が発生すると、電力の供給が停止し、瞬時の作動停止も許されない機器では、重大な事故につながることがある。
【0220】
そこで、送電線を集電体とし、その周囲に粉体活物質を充填し、送電線に充放電の可能な3次元電池の機能をもたせる。
【0221】
すなわち、電力が必要な機器の電圧に適応させて三次元電池を形成し、短時間の間、三次元電池に貯蔵した電力を供給する。
【0222】
その結果、比較的小電力の直流で作動する機器において、短時間の瞬停時には、3次元電池から必要な電力を供給することができ、商用電源の瞬停や電源の切り替え時や電源プラグの抜き替え時においても、電気機器の作動が停止しない。特に、パソコンや電気時計などの小電力で作動する機器の電気トラブルに充分対応することができる。
【0223】
図40(a)は現状の送電線の断面図、図40(b)は充放電の可能な三次元電池を組み込んだ送電線の断面図、図40(c)は充放電の可能な三次元電池を組み込んだ送電線から末端機器に電力を供給する一実施例の概略フロー図である。
【0224】
図40(a)において、321、322は送電線である。図40(b)において、323は正極集電体としての電線であり、324は負極集電体としての電線である。正極集電体323と負極集電体324の間には、複数の導電性の集電部材325を介装して複数のセルを形成し、各セルはイオン透過性のセパレーター326で2分割されており、分割されたセルの中で正極集電体に近いセル部分には正極の粉体活物質および電解質溶液327が充填されており、分割されたセルの中で負極集電体に近いセル部分には負極の粉体活物質および電解質溶液328が充填されている。
【0225】
図40(c)において、329は交流100ボルト電源、330は交流100ボルト送電線、331は整流器、332は三次元電池を内蔵した送電線、333はパソコンである。例えば、送電線332に10grの粉体活物質を封入すれば、ニッケル水素電池の場合、7.2Vで1Aの直流を400秒間給電することができる。
(電柱)
電力を輸送するために、電柱の高所にケーブルを配しているが、電柱の構造物自体は有効に利用されていない。
【0226】
そこで、電柱を充放電の可能な三次元電池の構造にする。
【0227】
すなわち、通常時は商用電源から電力を供給し、停電時には、電柱の三次元電池から電力を供給する。
【0228】
その結果、商用電源の停電時にも中断することなく電力を供給できる。
【0229】
図41は、充放電の可能な三次元電池を組み込んだ電柱の断面図である。図41において、341は地表面、342は正極、343は負極であり、これら正極と負極の間には複数の集電部材344が介装されており、集電部材344で仕切られた各セルはイオン透過性セパレーター345で2分割されており、分割されたセルの中で正極に近いセル部分には正極の粉体活物質および電解質溶液346が充填されており、分割されたセルの中で負極に近いセル部分には負極の粉体活物質および電解質溶液347が充填されている。
〔三次元電池に貯蔵された電力を光エネルギー、運動エネルギーまたは熱エネルギーに変換する設備〕
(電球)
一般的に電球は金属容器にガラス容器を接続して、そのガラス容器中にフィラメントを配し、金属容器を経てフィラメントに電力を供給して点灯させている。このように、電球を点灯させるには外部電源が必要である。
【0230】
そこで、電球の金属容器部に粉体活物質を充填して、充放電の可能な三次元電池を形成する。
【0231】
すなわち、三次元電池の端子と電球のフィラメント端子を短絡することで、点灯させる。
【0232】
その結果、外部電源によらずに電球を点灯することができる。
【0233】
図42は、充放電の可能な三次元電池を組み込んだ電球の断面図である。図42において、351は正極集電体、352は負極集電体、353はイオン透過性セパレーターであり、正極集電体351とセパレーター353の間には、正極の粉体活物質および電解質溶液354が充填されており、負極集電体352とセパレーター353の間には、負極の粉体活物質および電解質溶液355が充填されている。356はフィラメント、357はフィラメント端子、358は電池正極端子、359は充電ジャックである。フィラメント356の一端は電池の負極集電体352と内部で接続されているので、フィラメント端子357と電池正極端子358を短絡させることで、電球を点灯させることができる。
(懐中電灯)
懐中電灯は、一般的に電源スイッチの付いた筒状容器に電池を入れて電球を点灯させているが、懐中電灯の容器の中にさらに電池容器を入るという二重の容器構造であるから、大きく重いものとなっている。
【0234】
そこで、懐中電灯の容器を集電体として利用し、容器内に粉体活物質と電解液を入れて充放電の可能な三次元電池を形成する。
【0235】
すなわち、懐中電灯の容器を三次元電池のハウジングとして利用する。
【0236】
その結果、従来の懐中電灯内に入れていた電池が不要となるので、懐中電灯の軽量化と小形化を図ることができる。
【0237】
図43は、充放電の可能な三次元電池を組み込んだ懐中電灯の断面図である。図43において、361は電球、362はスイッチ、363は正極集電体、364は負極集電体、365はイオン透過性セパレーターであり、正極集電体363とセパレーター365の間には、正極の粉体活物質および電解質溶液366が充填されており、負極集電体364とセパレーター365の間には、負極の粉体活物質および電解質溶液367が充填されている。
(巨大隕石軌道変更装置)
巨大隕石の軌道を変更するための装置としては、鉛バッテリーの電力をエネルギーとして2本のレールに配した金属弾丸を発射し、その金属弾丸を巨大隕石中に打ち込んで隕石の軌道を変更する方法が提案されているが、隕石に打ち込むエネルギーが不足している。
【0238】
そこで、地表面付近に大電流で、充放電の可能な三次元電池を形成する。
【0239】
すなわち、三次元電池に貯蔵した大電流を運動エネルギーに変換し、レールガンから発射する金属弾丸の隕石打ち込みエネルギーを大幅に増加させる。
【0240】
図44(a)は、地表面付近に形成した充放電の可能な三次元電池の縦断面図である。図44(a)において、371は地表面、372は正極、373は負極であり、正極371と負極372の間には複数の導電性の集電部材374を介装し、集電部材374で仕切られた各セルはイオン透過性セパレーター375で2分割されており、分割されたセルの中で正極に近いセル部分には、正極の粉体活物質および電解質溶液376が充填されており、分割されたセルの中で負極に近いセル部分には負極の粉体活物質および電解質溶液377が充填されている。
【0241】
図44(b)は、レールガンによる金属弾丸発射装置の一実施例の概略構成図である。図44(b)において、378は充放電の可能な三次元電池、379は金属弾丸、380は正極であるH型鋼のブラシ、381は負極であるH型鋼のブラシである。例えば、図44(a)に示す構成の三次元電池を10km四方にわたって形成すると、105ボルト×1013アンペアの電力を貯蔵することが可能になる。この電力によって、0.5×1018ワットの磁場を天空から地表面に向けて形成し、その電磁力を金属弾丸に付与する。すなわち、ブラシ380と381からなる10m幅のレールには、1035Nの力が加わり、直径50mで長さ100mのニッケル製の弾丸を光速の1/10000程度に加速して発射することができ、殆どの隕石の撃墜が可能になる。
(溶融装置)
各種物質を溶融する溶融炉には、大電力の給電設備を設けており、給電設備の設備コストが大きなものとなっている。
【0242】
そこで、高出力低容量の充放電の可能な三次元電池を溶融炉に付設する。
【0243】
すなわち、適切な発電手段で三次元電池に充電し、物質溶融時に三次元電池に貯蔵されている高出力低容量の電力を溶融炉に供給し、その電気エネルギーを熱エネルギーに変換して物質を溶融する。
【0244】
このように、比較的小さな電力供給設備で物質の溶融が可能になる。
4.第四の発明の実施の形態
(第1実施形態)
図45は、第四の発明の第1実施形態に係るアルカリ一次電池の概略構成図である。図45に示すように、イオン透過性セパレーター391を介して負極セル392、正極セル393が設けられ、負極セル392には、負極の粉体活物質および電解質溶液394が充填され、正極セル393には、正極の粉体活物質および電解質溶液395が充填されている。負極の粉体活物質としては、炭化鉄の粉体が用いられているが、炭化鉄と鉄の粉体混合物を用いることもできる。この炭化鉄とは、当該炭化鉄製品の少なくとも一部がFe3C の化学組成を有するものを指す意である。この炭化鉄は、例えば、上記したように、本出願人により出願された特開平9−48604号公報に開示された方法で製造することができるが、含鉄原料を還元および炭化して炭化鉄を得る場合、含鉄原料のすべての部分が炭化鉄に転化したものを必ずしも用いる必要はない。というのは、炭化鉄の中の炭化部分が多くなればなるほど導電性はよくなるが、一方、炭化部分が多い高転化率の炭化鉄製品の製造コストは高くなる。この点で、炭化鉄製品のFe3C組成は、含有鉄分の5原子%以上であれば、負極の粉体活物質としての必要な導電性を確保することができ、しかも、製造コストを比較的低く抑えることができる。
【0245】
正極の粉体活物質としては、二酸化マンガンと炭素の粉体混合物が用いられている。電解質溶液は、負極セル392および正極セル393ともに、水酸化カリウム水溶液が用いられている。
【0246】
セパレーター391は、イオンを通すが、粉体は通過しない膜であり、例えば、素焼き、イオン交換樹脂膜、金属繊維および不織布等を用いることができる。負極セル392、正極セル393の中には、それぞれ、導電体からなる負極集電器396、正極集電器397が設けられており、これら、集電器396、397が負荷手段398と接続されている。集電器396、397は、アルカリ溶液中で腐食しない金属が好ましく、例えば、炭素鋼にニッケルをメッキしたプレートを使用することができる。
【0247】
次に、第四の発明の第1実施形態に係るアルカリ一次電池の放電の詳細を説明する。
【0248】
電池が負荷手段398と接続されると、負極集電器396は外部回路に電子を放出し、放出された電子は負極集電器396から負荷手段398を通り、正極集電器397に到達する。電子は正極集電器397より正極の粉体活物質と直接または粉体活物質を介して移動しつつ反応する。正極の粉体活物質が電子を受容することによって発生した陰イオンは、セパレーター391を通過して負極セル392に入り、ここで、負極の粉体活物質と反応して電子を放出する。この電子は粉体を介して、あるいは、直接負極集電器396に移動して負荷手段398に供給される。以上のようなサイクルが繰り返される。
【0249】
以上の放電反応を、負極側と正極側に分けて化学式で示すと、以下のように表される。
【0250】
(負極) Fe+2OH-→Fe(OH)2+2e-
(正極) MnO2+H2O+e-→MnOOH+OH-
図45はアルカリ一次電池の概略構成を示すためのみのものであり、円筒型や積層形など様々な構造のものを採用することができる。
(第2実施形態)
図46は、第四の発明の第2実施形態に係るアルカリ二次電池の概略構成図である。図45と共通する構成については同一の番号を付して説明を省略する。図45と異なる点は、図46においては、正極の粉体活物質としては、水酸化ニッケルと炭素の粉体混合物が用いられていることと、流動化流体分散手段399、400を有することである。また、負荷手段398に代えて、負荷手段(放電の場合)または発電手段(充電の場合)401が設置されている。
【0251】
負極セル392および正極セル393内の粉体どうしあるいは粉体と集電器396、397との接触効率を高めるために、流動化流体分散手段399、400より各セル392、393内に気体または液体が供給される。流動化流体分散手段399、400の代わりに、あるいは流動化流体分散手段399、400とともに、各セル392、393内に羽状の攪拌機等の攪拌手段を設けて粉体を流動化させることもできる。
【0252】
次に、第四の発明の第2実施形態に係るアルカリ二次電池の充電と放電の中で、放電反応はアルカリ一次電池の場合について説明したのと同じであるから、説明を省略し、充電反応について以下に説明する。
【0253】
電池が発電手段401と接続されると、発電手段401から放出された電子は負極集電器396に到達し、この電子は負極集電器396より負極の粉体活物質と直接または粉体活物質内を移動しつつ反応する。負極の粉体活物質が電子を受容することによって発生した陰イオンは、セパレーター391を通過して正極セル393に入り、正極の粉体活物質と反応して電子を放出する。この電子は粉体を介して、あるいは、直接正極集電器397に移動して発電手段401に供給される。以上のようなサイクルが繰り返される。
【0254】
以上の放電反応と充電反応を、負極側と正極側および電池全体に分けて化学式で示すと、以下のように表される。
【0255】
【化2】

【0256】
上式において、右方向の矢印は放電反応を示し、左方向の矢印は充電反応を示す。
【0257】
図46はアルカリ二次電池の概略構成を示すためのみのものであり、円筒型や積層形など様々な構造のものを採用することができる。
(放電曲線)
次に、第四の発明のアルカリ二次電池(公称容量が3Ahであるもの)の放電曲線の一例を図47に示す。図47の縦軸は端子電圧(V)を示し、横軸は放電容量(Ah)を示す。このアルカリ二次電池は、負極活物質として炭化鉄(含有鉄分の約30原子%が炭化鉄であるもの)の粉体を用い、正極活物質として水酸化ニッケルと炭素の混合物の粉体を用いた。この場合、流動化流体分散手段399、400によりセル内に窒素を導入した。図47に明らかなように、放電電圧の急激な低下傾向は見られず、良好な放電特性を示している。
5.第五の発明の実施の形態
図48は、第五の発明の第1実施形態による地域分散型発電方法を実施する装置の概略構成を示している。図48において、自動車411は、ガソリンエンジン、ディーゼルエンジン、ガスタービンなどのエンジン412とともに、発電機413、電力貯蔵用の移動源電池(バッテリー)414、電動機(モータ)415を備えている。自動車411は、エンジン412を使用して発電機413を作動させ電力を発生させて、この電力を移動源電池414に貯蔵する。自動車411は、本来の目的である走行時には、エンジン412及び電池414からの電力で駆動する電動機415により、また、走行負荷が少ないとき等は電動機415のみによって動くようになっている。
【0258】
上記のような構成の自動車等を停車時に家庭用、事務所用の固定発電システムとして流用するのが、第五の発明の方法及び装置である。なお、エンジンを使用して発電機を作動させ電力を発生させる装置の代わりに、燃料電池により発電を行う装置を搭載した自動車等を用いることもできる。また、自動四輪車だけでなく、同様の機能を備えたものであれば、自動二輪車、自動三輪車、船舶等を利用することも可能である。
【0259】
図48に示すように、自動車411を住居416の車庫などに停車させている時、コネクタ417によって、住居416に設置された固定電池(バッテリー)418と自動車411に搭載された移動源電池414とを接続することにより、エンジン412で発電機413を回して発電した電力を固定電池418に供給し充電することができる。固定電池418からの電力はインバータ419によって交流に変換し電圧を調整して負荷420にて使用することができる。なお、図示していないが、商用電源は、インバータ419から各負荷420に至る間に接続される。また、固定電池418から直流用の負荷に直接接続して使用することも可能である。
【0260】
移動源電池414の電池容量が減少した場合には、エンジン412を稼働させ発電機413を回して充電する。このとき、エンジン排気音を下げるために、自動車411の排気筒に外付け消音器を取り付けても良い。
【0261】
また、図48に示すように、住居416に風力発電設備や太陽光発電設備が設置されている場合、すなわち、風力発電機421や太陽電池422によって発電した電力が固定電池418に供給される場合には、移動源電池414からの電力と併せて負荷420にて使用することができる。風力発電設備、太陽光発電設備を単独で又は組み合わせて住居に設置する場合は、大容量のバッテリー(電池)が必要になり、設備費が高くなっていたが、自動車等に搭載されたバッテリー(電池)から電力を供給することにより、住居に設置するバッテリー(固定電池418)は小型のもので良くなり、設備費が大幅に削減される。
【0262】
また、移動源電池414の電池容量が少なく、かつ、負荷420による電力消費量よりも風力発電機421や太陽電池422による発電量が多い場合は、固定電池418に貯蔵された電力で移動源電池414を充電することができる。
【0263】
本実施の形態では、住居416に風力発電設備や太陽光発電設備を設置した場合を説明したが、風力や太陽光の利用はオプションであり、風力発電機421、太陽電池422及び固定電池418を設けない構成とすることも勿論可熊である。すなわち、最低限、インバータ419を設置すればよく、コネクタ417によってインバータ419と移動源電池414とを接続することにより、自動車の電力を家庭用に使用することができる。
【0264】
また、本実施の形態では、電力の系統のみを説明しているが、自動車等のエアコンやラジエータ等で発生する熱エネルギーを家庭用に使用してコージェネレーションを行うことができる。例えば、自動車等のエアコンやラジエータ等からの温風、冷風などを、ダクトを介して住居に供給し家庭用の空調に利用することができる。なお、コージェネレーションではないが、自動車等のエアコンやラジエータ等で発生する熱エネルギーを、テントや別荘などの外出先で利用することも可能である。
【0265】
上述したように、従来の家庭用コージェネレーション設備はコストが高く、長時間使用しないと採算が取れず、太陽光発電においては、設備費の半額を国家負担として補肋することにしたが、それでも経済的に成立せず、多額の予算が余るという結果になった。そこで、従来のコージェネレーション設備を単独で設置するのを止めて、本来は移動、輸送手段として成立している自動車等から発生する電力エネルギーを家庭用に使用することによって、家庭用設備費を大幅に削減し、分散型発電を進めることができる。
【0266】
エンジンを使用して発電機を作動させ電力を発生させる装置、又は燃料電池により発電を行う装置とともに、電力貯蔵用の電池を搭載した自動車等においては、電池での電力量が数十kWhrであり、丁度一件の家で消費する電力を賄うことができる。また、外出には自動車を使うことが多く、移動用と固定用の使い分け、つまり、移動時と停車中の電力供給とは時間的にすみ分けが可能である。
【0267】
例えば、300万円の自家発電設備を購入するのは、電力の購買価格との差から経済的に成立しないが、300万円の自動車であれば、発電設備としてだけではなく、本来の目的である移動、輸送手段として使用できるので経済的に成立することになる。
【0268】
移動源電池414と固定電池418は、例えば、図1〜図12に示すように、正極側および負極側の活物質を粉体とする三次元構造の電池とすることができる。このように、三次元構造の電池であれば、劣化した活物質粉体の一部または全部を廃棄して、例えば、第一の発明の第7実施形態による図10の再生機27で劣化した粉体を再生し且つ廃棄された粉体分に相当する量の新しい粉体を容器に供給すれば、直ちに充電を開始することができるという効果があるので好ましい。
【0269】
なお、本実施の形態は、家庭用について説明したが、事務所用の場合も同様である。
【産業上の利用可能性】
【0270】
本発明は以上説明したように構成されているので、活物質を粉体にして構成した大電力の貯蔵が可能な三次元構造の電池及びその電池を構造の一部として有する機器または装置並びに放電電圧が低下しにくい長寿命のアルカリ一次電池およびアルカリ二次電池、ならびに自動二輪車、自動三輪車、自動四輪車、船舶等の移動・輸送手段の動力を利用した地域分散型発電装置として適している。
【図面の簡単な説明】
【0271】
【図1】図1(a)は、第一の発明の第1実施形態による電池を示す概略断面構成図であり、図1(b)は第一の発明の電池の放電曲線の一例を示す図である。
【図2】第一の発明の第2実施形態による電池を示す概略断面構成図である。
【図3】第一の発明の第3実施形態による電池の一例を示す概略断面構成図である。
【図4】第一の発明の第3実施形態による電池の他の例を示す概略断面構成図である。
【0272】

【図5】第一の発明の第4実施形態による電池の一例を示す概略断面構成図である。
【図6】第一の発明の第4実施形態による電池の他の例を示す概略断面構成図である。
【0273】

【図7】第一の発明の第5実施形態による電池を示す概略断面構成図である。
【図8】第一の発明の第6実施形態による電池の一例を示す概略断面構成図である。
【図9】第一の発明の第6実施形態による電池の他の例を示す概略断面構成図である。
【0274】

【図10】第一の発明の第7実施形態による電池の一例を示す概略断面構成図である。
【図11】第一の発明の第7実施形態による電池の他の例を示す概略断面構成図である。
【図12】第一の発明の第8実施形態による電池を示す概略断面構成図である。
【図13】図13(a)は第二の発明の積層型三次元電池の実証試験器の一例を示す斜視図、図13(b)は同電池を概念的に示す中央縦断面図である。
【図14】図13の積層型三次元電池の実証試験器の組立前(分解状態)の主要部品の一部を示す斜視図である。
【図15】第二の発明の第2実施形態に係る積層型三次元電池を概念的に示す中央縦断面図である。
【図16】第二の発明の第3実施形態に係る積層型三次元電池を概念的に示す中央縦断面図である。
【図17】第二の発明の第4実施形態に係る積層型三次元電池を概念的に示す中央縦断面図である。
【図18】第二の発明の第5実施形態に係る積層型三次元電池を概念的に示す中央縦断面図である。
【図19】第二の発明の第6実施形態に係る積層型三次元電池を概念的に示す中央縦断面図である。
【図20】内部空間に充放電の可能な三次元電池を有するドアの縦断面図である。
【図21】内部空間に充放電の可能な三次元電池を有する橋脚の縦断面図である。
【図22】内部空間に充放電の可能な三次元電池を有するダムの斜視図である。
【図23】電力貯蔵器としてのラジエーターの概略構成図である。
【図24】天井部分に充放電の可能な三次元電池を有する家屋の縦断面図である。
【図25】内面側に充放電の可能な三次元電池を有するボンネットの一部を示す断面図である。
【図26】充放電の可能な三次元電池を形成する地表面付近の断面図である。
【図27】側部に充放電の可能な三次元電池を有する食器の縦断面図である。
【図28】充放電の可能な三次元電池を有する住宅の床の断面図である。
【図29】充放電の可能な三次元電池を搭載したトレーラーの側面図である。
【図30】図30(a)はケーシングに充放電の可能な三次元電池を組み込んだ電動機の縦断面図であり、図30(b)は台座に充放電の可能な三次元電池を組み込んだ電動機の縦断面図である。
【図31】ケーシングに充放電の可能な三次元電池を組み込んだターボエンジンの縦断面図である。
【図32】充放電の可能な三次元電池を組み込んだ二重構造船の一部を示す斜視図である。
【図33】充放電の可能な三次元電池を組み込んだ船の長手方向の一部の縦断面図である。
【図34】充放電の可能な三次元電池を組み込んだ飛行機の翼の断面図である。
【図35】充放電の可能な三次元電池を組み込んだロードローラーのタイヤの断面図である。
【図36】電車の車体底部に設置する充放電の可能な三次元電池の概略構成図である。
【図37】図37(a)は充放電の可能な三次元電池を有する電気機関車の断面図であり、図37(b)はターボエンジンに適用した場合において、発電器から充放電の可能な三次元電池を介して電動機を駆動する機構の一実施例の概略構成図である。
【図38】図38(a)は電源車を牽引する電気機関車の断面図であり、図38(b)はターボエンジンに適用した場合において、発電器から充放電の可能な三次元電池に至る電力貯蔵システムの一実施例の概略構成図である。
【図39】充放電の可能な三次元電池を有する低騒音電車の断面図である。
【図40】図40(a)は現状の送電線の断面図、図40(b)は充放電の可能な三次元電池を組み込んだ送電線の断面図、図40(c)は充放電の可能な三次元電池を組み込んだ送電線から末端機器に電力を供給する一実施例の概略フロー図である。
【図41】充放電の可能な三次元電池を組み込んだ電柱の断面図である。
【図42】充放電の可能な三次元電池を組み込んだ電池の断面図である。
【図43】充放電の可能な三次元電池を組み込んだ懐中電灯の断面図である。
【図44】図44(a)は地表面付近に形成した充放電の可能な三次元電池の縦断面図、図44(b)はレールガンによる金属弾丸発射装置の一実施例の概略構成図である。
【図45】第四の発明の第1実施形態に係るアルカリ一次電池の概略構成図である。
【図46】第四の発明の第2実施形態に係るアルカリ二次電池の概略構成図である。
【図47】第四の発明のアルカリ二次電池の放電曲線の一例を示す図である。
【図48】第五の発明の第1実施形態による地域分散型発電方法を実施する装置を示す系統的概略構成説明図である。
【図49】従来の一般的な膜構造の電池を概念的に示す中央縦断面図である。
【図50】従来の一般的な膜構造の長尺タイプの電池を概念的に示す中央縦断面図である。
【図51】従来の一般的な膜構造の電池を並列的に接続した状態を概念的に示す中央縦断面図である。
【図52】従来の一般的な膜構造の電池を直列に接続した状態を概念的に示す中央縦断面図である。
【符号の説明】
【0275】
1、43、96、104、114、123、135、143、155、163、175、205、211、225、232、244、254、264、274、326、345、353、365、375、391 イオン透過性セパレーター
2、55、392 負極セル
3、54、393 正極セル
4、98、106、116、125、139、145、157、165、177、208、214、228、235、246、256,266、276、328、347、355、367、377、394 負極の粉体活物質および電解質溶液
5、97、105、115、124、137、144、156、164、176、207、213、227、234、245、255,265、275、327、346、354、366、376、395 正極の粉体活物質および電解質溶液
6、396 負極集電器
7、397 正極集電器
8 負荷手段又は発電手段
9、399、400 流動化流体分散手段
10 電解液界面
11 板状負極集電器
12 板状正極集電器
13 管状負極集電器
14 管状正極集電器
15 負極集電器兼分散器
16 正極集電器兼分散器
17 負極集電器兼撹拌機
18 正極集電器兼撹拌機
19 流動化流体分散器
20 水素吸蔵合金粉及び電解質溶液
21 水酸化ニッケル粉及び電解質溶液
22 負極集電器兼伝熱管
23 正極集電器兼伝熱管
24 負極集電器兼伝熱板
25 正極集電器兼伝熱板
26 分離機
27 再生機
28 混合機
29 メークアップ用粉体ホッパー
30 反応器
31 燃料供給管
41、41−1〜41−5 積層型三次元電池
42 セル部材
45、94、103、113、134、142、154、156、174、243、253、263、273、325、344、374 集電部材
46、111、126、136、152、204、210、224、231、241、251、261、271、323、351、363 正極集電体
47、112、127、138、153、206、212、226、233、242、252、262、272、324、352、364 負極集電体
48 パッキン
49 ボルト
56 単位電池
57、398 負荷手段
58 充電器
59、60、61 撹拌手段
n、h、A、B 粉体(活物質)
k、r 電解質溶液
71、72 ブロワー
81、82、83 スタッド
91 ドアハウジング
92 正極端子
93 負極端子
101 橋脚ブロック
121 ラジエーター本体
131 屋根
141 ボンネット
151 アスファルト舗装
162 食器本体
166 発熱素子(または冷却素子)
171 床
172、342、372、380 正極
173、343、373、381 負極
182 正極セル内熱交換器
185 負極セル内熱交換器
192 トレーラー
282 エンジン発電器
283、293、378 三次元電池
284、295 電動機
292 発電器
301 電気機関車
302 電源車
311 パンタグラフ
321、322 送電線
332 三次元電池を内蔵した送電線
341 地表面
356 フィラメント
357 フィラメント端子
358 電池正極端子
361 電球
379 金属弾丸
398 負荷手段
401 発電手段
411 自動車
412 エンジン
413 発電機
414 移動源電池
415 電動機
416 住居
417 コネクタ
418 固定電池
419 インバータ
420 負荷
421 風力発電機
422 太陽電池

【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極集電体、正極の活物質と電解質溶液、イオンは通過するが電子を通過させないセパレーター、負極の活物質と電解質溶液、および負極集電体を、この順で配置したアルカリ一次電池において、負極活物質として、炭化金属または炭化金属とこの金属の混合物を用いることを特徴とするアルカリ一次電池。
【請求項2】
正極集電体、正極の活物質と電解質溶液、イオンは通過するが電子を通過させないセパレーター、負極の活物質と電解質溶液、および負極集電体を、この順で配置したアルカリ二次電池において、負極活物質として、炭化金属または炭化金属とこの金属の混合物を用いることを特徴とするアルカリ二次電池。
【請求項3】
正極の活物質と負極の活物質が、ともに粉体である請求項1記載のアルカリ一次電池。
【請求項4】
正極の活物質と負極の活物質が、ともに粉体である請求項2記載のアルカリ二次電池。
【請求項5】
金属が鉄であり、炭化金属が炭化鉄である請求項1又は3記載のアルカリ一次電池。
【請求項6】
金属が鉄であり、炭化金属が炭化鉄である請求項2又は4記載のアルカリ二次電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【図43】
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【図44】
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【図45】
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【図46】
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【図47】
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【図48】
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【図49】
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【図50】
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【図51】
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【図52】
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【公開番号】特開2006−54194(P2006−54194A)
【公開日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−270818(P2005−270818)
【出願日】平成17年9月16日(2005.9.16)
【分割の表示】特願2000−608463(P2000−608463)の分割
【原出願日】平成12年3月27日(2000.3.27)
【出願人】(000000974)川崎重工業株式会社 (1,710)
【Fターム(参考)】