説明

電池

オゾン化二酸化マンガンは、オゾン処理プロセスによって調製され、カソード活性物質として利用される。オゾンを含有するガス流が二酸化マンガンと接触し、高効率でオゾン化二酸化マンガンを産生する。調製後、オゾン化二酸化マンガンを一定時間低温で保存し、アルカリ電池のためのカソード活性物質に組み込む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池に関する。
【背景技術】
【0002】
電池は、電気エネルギー源として一般的に使用される。電池は、典型的にはアノードと呼ばれる負電極と、典型的にはカソードと呼ばれる正電極と、を含有する。アノードは酸化され得る活性物質を含有する。カソードは還元され得る活性物質を含有又は消費する。アノード活性物質は、カソード活性物質を還元することができる。電池は、アノード及びカソードに浸透し、これらの2つの電極の間の空間を占有する、イオン伝導性電解質を含有する。電解質には、通常、溶媒及び溶解されたイオン性物質からなる溶液が含まれる。また、電池には、カソードからアノードを電子的に絶縁するが、電解液及びそのイオンに浸透し得る、アノードとカソードとの間に配置されるセパレータ材料が含まれる。
【0003】
電池が装置における電気エネルギー源として用いられるとき、アノード及びカソードに対する電気接点が形成され、それによって電子が装置を貫流することができるとともに、酸化及び還元それぞれの反応を生じさせることで電力が供給される。アノード及びカソードと接触する電解質は、電極間のセパレータを貫流するイオンを含有することで、放電中における電池全体の荷電平衡を維持する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
高出力用途に好適な電池の必要性が高まりつつある。携帯電話、デジタルカメラ及び玩具、フラッシュ装置、リモコン式玩具、カムコーダー、及び高輝度ランプなどの近年の電子機器は、こうした高出力用途の例である。こうした装置は、約0.5〜2アンペア、典型的には約0.5〜1.5アンペアの高い電流ドレイン率を必要とする。それに応じて、それらを約0.5〜2ワットの電力需要で運転することが必要である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
概して、本発明は、電池用の高品質のカソード材料を作り出すための、二酸化マンガンの酸化、例えば、オゾン処理に関する。また、本発明は、オゾン化二酸化マンガンを含むカソード混合物、及びオゾン化二酸化マンガンを含むカソード混合物を含む電気化学電池にも関する。
【0006】
一態様において、本発明は、オゾン化二酸化マンガンを調製する方法に注目する。この方法は、二酸化マンガンを、最大20g/標準立法メートルのオゾン濃度を有するオゾンを含有するガス流と接触させる工程を含む。オゾン濃度は、例えば、5g/標準立法メートル〜15g/標準立法メートルであり得る。
【0007】
別の態様において、本発明は、供給されるオゾンの質に基づいて、少なくとも30%、例えば、少なくとも35%の反応効率で、オゾン化電解二酸化マンガンを調製する方法に注目する。
【0008】
別の態様において、本発明は、カソード混合物を作製する方法に注目する。この方法は、オゾン処理プロセスによって調製されたオゾン化二酸化マンガンを、オゾン処理プロセス後48時間以内、例えば、24時間以内に、炭素及び電解質と混合する工程を含む。
【0009】
別の態様において、本発明は、カソード混合物を作製する方法に注目する。この方法は、オゾン処理プロセスによって調製されたオゾン化二酸化マンガンを、25℃未満、例えば、−10℃〜20℃で保存する工程を含む。また、この方法は、保存後、オゾン化二酸化マンガンを黒鉛及び電解質と混合する工程も含む。
【0010】
別の態様では、本発明は更に、電気化学電池を製造する方法にも注目する。この方法は、オゾン化二酸化マンガンをカソードに組み込む工程と、カソードを電気化学電池に組み込んで、1.65Vを超える開路電圧を作り出す工程と、電気化学電池の開路電圧が1.65V以下に下がるように、電気化学電池を少なくとも30℃、例えば、少なくとも50℃の温度に加熱する工程と、を含む。電気化学電池は、例えば、0.1時間〜168時間の間、加熱することができる。加熱される前に、電気化学電池は、例えば、少なくとも1.70V又は少なくとも1.80Vの開路電圧を有し得る。
【0011】
実施形態は、1以上の次の特徴を含んでよい。二酸化マンガンは、0.035cm/g〜約0.180cm/gの気孔率、及び約20m/g〜約100m/gの表面積を有し得る。オゾン化二酸化マンガンは、例えば、3.98を超える、又は4.00を超える、平均価数値を有し得る。
【0012】
本明細書で言及される全ての刊行物、特許出願、特許、及び参照文献は、参照することによりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0013】
本発明の他の特徴及び利点は、以下の詳細な説明から、また特許請求の範囲から明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】電池の概要図。
【図2】代表的なオゾン処理プロセス。
【0015】
各種の図面における同様の参照符号は、同様の要素を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1を参照すると、電池10は、カソード12、アノード14、セパレータ16、及び円筒状ハウジング18を包含する。電池10はまた、集電体20、シール22、及び電池の負端子として機能する負の金属端部キャップ24も包含する。電池の、負端子とは反対側の端部には、電池の正端子を作り出す正のピップ(pip)26が配置されている。電解液は、電池10全体に分散されている。電池10は、アルカリ電池、例えば、単3、単4、単6、単2、又は単1電池であってよい。
【0017】
カソード12は、1つ以上のカソード活性物質を含む。これは、炭素粒子、バインダー、及び他の添加剤も含み得る。
【0018】
カソード活性物質の例としては、二酸化マンガン、オキシ水酸化ニッケル、二硫化鉄、酸化銀、又は酸化銅が挙げられる。
【0019】
カソード12に使用される二酸化マンガンは、概して、少なくとも約90重量パーセントの純度を有する。電解二酸化マンガン(EMD)は、その高い密度のため及び電解法により高純度のものが好都合に得られるため、電気化学電池用二酸化マンガンの好ましい形態である。化学二酸化マンガン(CMD)は、二酸化マンガンの代替形態である。
【0020】
EMDは、硫酸マンガン及び硫酸の電解槽の直接電気分解により製造することができる。EMDの製造プロセス及びその性質は、Batteries,edited by Karl V.Kordesch,Marcel Dekker,Inc.,New York,Vol.1,(1974),p.433〜488に見られる。CMDは典型的には、MnSOとアルカリ金属塩素酸塩、好ましくはNaClOとの反応混合物を使用することによる電池グレードMnOの製造に関する米国特許第2,956,860号(ウェルシュ(Welsh))により開示されている化学プロセスである「セデマ法(Sedema process)」のような、当該技術分野で既知のプロセスによって作製される。二酸化マンガンの供給元としては、Tronox(Trona D)、Chem−Metals Co.、東ソー、Delta Manganese、三井化学、JMC、及びXiangtanが挙げられる。
【0021】
しかし、二酸化マンガンは実際、より正確にはMn+41−x−yMn+32−4x−y(OH4x+yと書かれる不定比材料であり、式中、Vはカチオン格子の欠落点を表し、OH基は、Mn+3に関連する、アニオン格子中に存在するヒドロキシル欠陥を示す。不定比性は、Mn+4の欠落点(4個のプロトンによって置換される、欠失するMn+4イオン)、及び電気的中性のためにMn+3欠陥をもたらすヒドロキシル基の存在による。幾つかの実施形態において、二酸化マンガンは、約6重量%のMnOOHを含む。これらのMn+4及びMn+3欠陥、並びにそれらに関連するプロトン及びヒドロキシル基の存在により、従来の電池等級の二酸化マンガンの式は、EMD又はCMDの形態にあるかにかかわらず、全体的な式MnO、1.950<x<1.970によってより正確に表される。本明細書で使用される、式MnOは、上記の複雑な式の総合的な表現であると理解される。
【0022】
また、値xは、「過酸化の程度」とも称される。これは、2xと表現することができる、MnO中のマンガンの平均価数に関連する。したがって、全体的な式がMnO1.92である場合、酸素が−2の価数であると仮定すると、マンガンの平均価数は+3.84であり、式がMnO1.96である場合、マンガンの平均価数は+3.92である。本明細書で使用される、平均価数という用語は、単純な算術平均であることが意図され、つまり、二酸化マンガン試料中のそれぞれのマンガン原子の価数の合計を、マンガン原子の総数で割ったものである。
【0023】
MnOの値xは、標準的な滴定法によって決定することができる。例えば、電池等級のMnO中のMn重量パーセント(Mn重量%)及びMnO重量パーセント(MnO重量%)の分析方法は、「Handbook of Manganese Dioxides Battery Grade」,edited by D.Glover,B.Schumm,Jr.and A.Kozawa,and Published by the IBA,Inc.1989,pgs.25〜46に提供される。Mn重量%及びMnO重量%が分かると、MnO中の値xは、以下のように算出することができる。
【0024】
x=1+[MnO重量%]/[(1.5825)(Mn重量%)]
幾つかの実施形態において、MnO試料を分析にかける前に110〜115℃で乾燥させ、物理吸着水を除去する。この乾燥手順は、MnOの分解を促進し、値xを下げることができる。幾つかの実施形態では、試料は予め乾燥させずに分析される。Mn%及びMnO%は、同一条件下で調製及び分析された同一試料を使用して決定される。幾つかの実施形態において、単一の試料を使用して、Mn%及びMnO%を同時に決定することができる。
【0025】
理論に束縛されるものではないが、より高い平均価数、又は「x」値を有する二酸化マンガンを含有する電気化学電池は、より良好な電池性能を有すると考えられる。例えば、かかる電気化学電池は、高い開路電圧(OCV)、並びにMnOのmAh/g又はMnOのmAh/cmとして表現されるより高い放電容量を有し得る。これらの性質のために、電池はより高い平均動作電圧、より長い放電持続時間、及びより優れた高電流ドレイン能力を呈する。「x」値を上昇させるオゾン処理プロセスは、後に詳細に説明する。
【0026】
カソード12に含まれる二酸化マンガンは、高度に多孔質である。特に、EMDは、例えば、約0.035cm/g〜約0.060cm/gの気孔率を有することができ、CMDは、例えば、約0.035cm/g〜約0.180cm/gの気孔率を有することができる。本明細書で使用される気孔率は、1グラムの材料中の総間隙量である。高い気孔率によって、二酸化マンガンは、大きな表面積を有することができる。典型的には、1グラムのEMDは、例えば、約20m/g〜約50m/g、例えば、約35m/gの表面積を有することができ、1グラムのCMDは、例えば、最大約100m/gの表面積を有することができる。
【0027】
カソード12で使用される炭素粒子は、黒鉛粒子、カーボンブラック、又はこれらの組み合わせであり得る。黒鉛は、膨張黒鉛を含む合成黒鉛、膨張天然黒鉛を含む天然黒鉛、又はこれらのブレンドであり得る。好適な天然黒鉛粒子は、例えば、Brazilian Nacional de Grafite(Itapecerica,MG Brazil、NdG MP−0702x等級)、又はSuperior Graphite Co.(Chicago,IL、ABG等級)から入手することができる。好適な膨張黒鉛粒子は、例えば、日本の中越黒鉛(Chuetsu Graphite Works,Ltd.)(Chuetsu等級WH−20A及びWH−20AF)、又はTimcal America(Westlake,OH、BNB等級)から入手することができる。
【0028】
バインダーの例としては、ポリエチレン、ポリアクリル酸、又はPVDF若しくはPTFEなどのフルオロカーボン樹脂が挙げられる。ポリエチレンバインダーの例は、商標名COATHYLENE HA−1681(Hoechst又はDuPontから入手可能)で販売されている。
【0029】
他の添加剤の例は、例えば、米国特許第5,698,315号、同第5,919,598号、及び同第5,997,775号、並びに米国特許出願第10/765,569号に記載されている。
【0030】
電解液は、カソード12全体に分散させることができる。電解質は、水酸化カリウム又は水酸化ナトリウムなどのアルカリ水酸化物の水溶液であることができる。電解質はまた、塩化亜鉛、塩化アンモニウム、過塩素酸マグネシウム、臭化マグネシウム(magnesium brominde)、又はこれらの組み合わせなどの塩類電解質の水溶液であることもできる。
【0031】
アノード14は、アノード活性物質、ゲル化剤、及びガス発生防止剤(gassing inhibitor)などの微量の添加剤で形成され得る。更に、上述の電解液の一部がアノード全体にわたって分散される。アノード活性物質の例としては、亜鉛、スズ、鉄、マグネシウム、及びアルミニウムが挙げられる。ゲル化剤の例としては、ポリアクリル酸、グラフト化デンプン材料、ポリアクリル酸の塩、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースの塩(例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム)、又はこれらの組み合わせを挙げることができる。ガス発生防止剤としては、ビスマス、スズ、インジウム、これらの塩、又はこれらのオキシドなどの無機材料を挙げることができる。あるいは、ガス発生防止剤には、リン酸エステル、イオン性界面活性剤若しくは非イオン性界面活性剤、第四級アンモニウム塩、又は高分子第四級アンモニウム化合物などの有機化合物を挙げることができる。
【0032】
セパレータ16は、従来のアルカリ電池セパレータとすることができる。別の実施形態において、セパレータ16は、1層の不織布材料と組み合わされた1層のセロハンを包含できる。セパレータはまた、不繊布材料の追加の層を包含することもできる。ハウジング18は、一次アルカリ電池で通常使用される従来のハウジング、例えばニッケルめっきされた冷延鋼板とすることができる。集電体20は、黄銅のような好適な金属から作製することができる。シール22は、例えば、ナイロンから作製することができる。
【0033】
二酸化マンガンMnO中のマンガンの平均価数を上昇させ、それによって電池性能の改善を達成するために、EMD又はCMDがオゾンを含有するガス流で処理される、オゾン処理プロセスを使用して、オゾン化二酸化マンガンを調製する。
【0034】
図2Aを参照すると、オゾン発生器30は、オゾンを含有するガス流を発生させる。ガス流は、オゾン処理されるMnO粉末を含有する、静的なカラムA、B、及びCを通って導かれる。MnO粉末は、ガス流の通過によって(下から上へ)、又は機械的手段によって攪拌され、粉末の全ての部分のオゾンとの良好な接触を保証する。オゾン処理プロセスは、ガス流中の最も新鮮なオゾンが反応器Aに入って最も完全にオゾン処理されたMnO(例えば、MnO1.995)と衝突し、次に、部分的に消耗したオゾンガス流が部分的にオゾン処理されたMnO(例えば、MnO1.980)と衝突する反応器Bに移動し、最後に、ほとんど消耗したオゾンガス流が、最も新鮮なMnO(例えば、MnO1.965)と衝突する反応器Cへと移動する、向流モードに配置される。反応器Aの内容物が完全にオゾン処理されると(例えば、MnO2.000が得られる)、プロセスは中断され、反応器Aの内容物が排出される。反応器Aを、新鮮な、オゾン処理されていないMnOx(例えば、MnO1.960)で充填する。バルブの適用により、今度は、新鮮なオゾンガス流が常に、最も完全にオゾン処理されたMnO材料と最初に接触し、最も少なくオゾン処理されたMnO材料と最後に接触するように、オゾンガス流が、まず反応器Bを通過し、次に反応器Cを通過し、次いで反応器Aを通過して流れるように導かれる。最後の反応器の中の低いMnOレベル(即ち、新鮮なMnO)、及びこの時点の部分的に消耗したオゾン流により、反応効率は高く、ほとんど全ての残りのオゾンがこの工程で消費される。オゾン発生器30へと再利用されるか、又は好適なオゾン破壊触媒反応器を通じて大気に放出される、ほんのわずかなオゾンが最後の反応器を出る。したがって、高オゾン利用効率が達成される。
【0035】
図2Bを参照すると、回転反応器に基づく代替スキームが示される。回転動作が、2Aに示される静的カラム反応器A、B、及びCに関連して言及した、攪拌スキームと置き換わる。
【0036】
ガス流はまず、反応器36から取られたすでにオゾン処理されたMnO34を含有する、反応器32に導かれる。ガス流は、MnO34の表面部分と接触し、ガス流中のオゾンがMnO34をオゾン処理する。反応器32からの残留するガス流は、更に、新鮮なMnO38を含有する反応器36の中に導かれ、ガス流中のオゾンがMnO38をオゾン処理する。最後に、ガス流は、オゾン発生器30に戻るように導かれて再利用されるか、又は触媒式オゾン破壊反応器(いわゆる「オゾンキラー」)を通って大気へと導かれる。
【0037】
図2A及び2Bに表されるプロセスの間、反応器A、B、及びC、又は反応器32及び36内の温度は、ほぼ室温に保持され、反応器内の圧力は、反応器の入口と出口との間に適切なガスの流れを保証するのに十分な圧力勾配を作り出すように、約1標準気圧(0.10MPa(14.7psia)又はほんのわずか上に保持される。
【0038】
オゾン化反応は、マンガンの価数が+3から+4へと増加する、以下の等式(1)に従う開始EMD又はCMDに含有される、MnOOH(通常6重量%前後)の酸化を伴う。
【0039】
2MnOOH+O→2MnO+HO+O (1)
この酸化反応は、発熱性である。例えば、1モルのMnOOHがMnOに酸化されると、約40Kcalの熱が放散される(librated)。
【0040】
幾つかの実施形態において、反応器A、B、及びCは、オゾン処理プロセス中にCMD又はEMDを攪拌するためのねじ、パドル、又は振動器を備える。他の実施形態において、反応器A、B、及びCは、CMD又はEMD(MnOx)を瞬間的に攪拌するガスバーストが供給される。更に他の実施形態では、反応器32又は36が回転又は混転して、MnOxを攪拌する。CMD又はEMDの攪拌によって、粉末材料とオゾンとの表面接触を増加させることができ、これにより、CMD又はEMDの酸化を促進することができる。
【0041】
別の変形物では、反応器は、CMD又はEMD粉末が、オゾンを含有するガスが向流(上方への)方向に流れるに従って、通って落下することが可能になる、「静的ミキサー」からなってもよい。「静的ミキサー」は、垂直であるか又は傾斜していてもよい。「静的ミキサー」は、全く静的であってもよく、又は、より大きな流れを誘発するように回転若しくは振動されてもよい。
【0042】
これまでMnO粉末についてのみ言及してきたが、オゾン処理プロセスは、他の物理的形態のMnOに適用され得ることが理解される。例えば、MnOの小塊、特に、2.54センチメートル(1インチ)以下、例えば、0.64センチメートル(1/4インチ)以下の直径を有するEMDの塊である。かかる材料をオゾン処理プロセス後に粉砕して、電気化学電池中での使用に好適なMnO粉末を産生することができる。
【0043】
また、オゾン処理プロセスは、MnOの塊又は粉末の液体懸濁液中で行い得ることが想到される。液体中のMnOの攪拌は、乾燥粉末を攪拌するのに必要とされるエネルギーほどエネルギーを必要としない。また、オゾンとMnOとの接触は、オゾンがMnOの表面へと拡散するか若しくは流れるか、又は更にはMnOの孔に入ることができる、液体培地中のオゾンガスの溶解によって促進される。液体培地は、水性又は非水性であり得る。反応を促進又は触媒するために、他の化学試薬が液体培地中に存在するか、又は溶解されてもよい。例えば、水媒体は、酸性、塩基性、又は中性であり得る。それは、溶解塩を含有してもよい。溶解塩は、シャトル反応によってオゾンの酸化能をMnOに移行することができる酸化種を含有することができる。例えば、4〜6前後の中程度のpHでは、溶解塩は硫酸塩であり得、これは、オゾンによって過硫酸塩に酸化され得る。次いで、過硫酸塩が、MnOをより高い酸化状態に酸化することができ、今度は、MnOによって硫酸塩へと還元される。次いで、この硫酸塩が、継続ループで、オゾンによって過硫酸塩に再び酸化される。別の酸化種は、可溶性硫酸塩を形成する、セリウムであろう。これは、オゾン酸化及びその後のMnOによる還元によって、Ce+2とCe+4との間を循環することができる。MnOは、このプロセスで更に酸化される。
【0044】
また、オゾン処理は、等式(2)による、オゾンが酸素に分解する望ましくない副反応を伴う。
【0045】
2O→3O (2)
【0046】
オゾンの分解速度は、高温で上昇する。例えば、分解速度は、温度が室温、例えば、約21℃から約45℃へと上昇すると、最大約4倍高くなり、温度が室温から約70℃に上昇すると、最大約8倍高くなる。
【0047】
副反応の存在によってオゾンが消費され、等式(1)によって説明される反応を介して実現される、オゾン処理プロセスの効率が低下する。本明細書で使用される効率とは、パーセントとして表現される、二酸化マンガンを処理するために使用されるオゾンの総量によって割られる、等式(1)によって説明されるオゾン化反応に関与する、オゾンの量(例えば、グラム又はモルの単位の)である。オゾン処理プロセスの効率を高めるには、等式(2)によって説明される分解反応を抑制することが望ましい。
【0048】
二酸化マンガンを処理するために、低いオゾン濃度を有するガス流を作り出すことができる。本明細書で使用される、濃度とは、標準条件下(0℃及び0.10MPa(14.7psi))で、1立方メートルのガス流内のオゾンガスの総グラム数である。ガス流には、オゾン並びに酸素及び/又は窒素などの他のガスが含まれる。幾つかの実施形態において、ガス流は、例えば、少なくとも約1g/標準立法メートル、5g/標準立法メートル、若しくは8g/標準立法メートル、及び/又は最大例えば、約12g/標準立法メートル、15g/標準立法メートル、若しくは20g/標準立法メートルのオゾン濃度を有する。特定の実施形態において、ガス流は、約10.5g/標準立法メートルのオゾン濃度を有する。低いオゾン濃度は、ガス流中のオゾン分子、又はMnOの表面に吸着されたオゾン分子間の大きな平均距離を作り出し、それにより、等式(2)によって説明されるオゾン分解の可能性を減少させることができる。
【0049】
幾つかの実施形態において、プロセスには、1つの反応器のみ、例えば、反応器32が含まれる。かかる実施形態では、反応器32を通過後、ガス流は、オゾン発生器30に直接戻るように導かれるか、「オゾンキラー」を通って直接大気に放出される。幾つかの実施形態において、2つを超える、例えば、3つ又は4つ以上の反応器が、ガス流中のオゾンガスが、オゾン発生器へと再利用される前又は大気に放出される前に、完全に利用されるように、直列に接続される。後の反応器に入るガス流は、より低いオゾン濃度を有し、オゾン分解速度を更に低下させることができ、したがって、その特定の反応器内でのオゾン処理の効率が高まる。
【0050】
幾つかの実施形態において、ガス流は高流量を有する。本明細書で使用される流量とは、標準条件下で、反応器内の二酸化マンガン1キログラムにつき、1時間以内に同一反応器に流れ込むガス流の総容積である。例えば、ガス流の流量は、例えば、1KgのEMDにつき約1.0標準立法メートル/時間、1KgのEMDにつき2.0標準立法メートル/時間、若しくは1KgのEMDにつき4.0標準立法メートル/時間、並びに/又は1KgのEMDにつき最大約10.0標準立法メートル/時間である。高流量は、EMDをオゾン処理するために必要とされる大量のオゾンを作り出すことができ、オゾンの大きな表面積のEMDとの直接接触を迅速かつ均一に可能にする。また、高流量は、高速のガスの流れで放散された(librated)熱を運び去ることにより、反応器内の温度の低下を促進することができ、したがって、等式(2)によって説明されるような、オゾンの分解速度を低下させる。
【0051】
幾つかの典型的な実施形態において、1キログラムのEMDは、上記のオゾン濃度及びガス流の流量で、約3.0時間で処理される。オゾン濃度及びガス流の流量の選択は、比較的短時間のうちに、比較的低い反応温度、例えば、ほぼ室温で、大量のEMDのオゾン処理を可能にするように均衡をとる。
【0052】
反応器は、オゾンの分解を防ぐように、冷却した液体若しくはガスの外浴によって冷却することができる。特定の実施形態において、反応器A、B、及びC、又は反応器32及び34は、ジャケット内を循環する冷却流体で被覆される。
【0053】
オゾン処理プロセスは、例えば、少なくとも30%、若しくは40%、並びに/又は最大例えば、50%、60%、70%、80%、若しくは90%の高効率を有する。
【0054】
オゾン処理は、MnOの値xが少なくとも1.995に達すると、「完了」と見なされる。典型的には、上述の条件によって、2.000の「x」値を達成することができる。
【0055】
OEMDを炭素及び電解質と混合して、カソード12を作り出すことができる。幾つかの実施形態では、炭素及び電解質と混合する前に、OEMDは、例えば、25℃、20℃、15℃、10℃、5℃、又は0℃未満の温度で保存される。低温での保存は、OEMDのEMDへの分解を防ぐか、又はその分解速度を低下させることができる。幾つかの実施形態において、OEMDは、48時間以内、例えば、36時間、24時間、又は12時間以内に、炭素及び電解質と混合される。幾つかの実施形態において、OEMDは、炭素及び電解質と0.25時間後に混合される。また、OEMDを短時間内に炭素及び電解質と混合することは、OEMDのEMDへの分解を防ぐこと、又はその分解速度を低下させることを補助することができる。幾つかの実施形態において、OEMDは、ブレンダー内で炭素及び電解質と混合され、電解質は、熱が消散するのを可能にするように、長時間にわたってゆっくりとした速度で添加される。更に、電解液は、ブレンダーに添加される前に予冷されてもよい。幾つかの実施形態において、ブレンダーは、ブレンダーを冷却するためのジャケットを含む。
【0056】
混合されたOEMD、炭素、及び電解質は、電池10に組み込むことができる。幾つかの実施形態において、OEMDを含む新しく作製された電池10は、例えば、1.65V、1.70V、1.75V、1.80V、1.85V、又は1.90Vより大きいOCVを有する。
【0057】
OCVは、電池の老化に伴いゆっくりとした速度で下がる。乾電池に対する米国規格協会(American National Standards Institute)の要件は、アルカリマンガン乾電池の最大OCVは、1.65V未満であると規定している。この基準を満たすため、電池10の製造は、例えば、少なくとも30℃、40℃、50℃、60℃、80℃、又は100℃の温度での電池10の加熱を更に含む。幾つかの実施形態において、電池10は、乾燥器内で加熱することができる。他の実施形態において、電池10は、誘導加熱、熱風、又はガスで加熱することができる。幾つかの実施形態において、電池10は、少なくとも約0.1時間、1時間、10時間、若しくは100時間、並びに/又は最大例えば、約168時間加熱される。幾つかの実施形態において、電池10は、より高い加熱温度が適用される場合、より短時間で加熱される。電池10は、電池性能を顕著に犠牲にすることなく、管理された時間内で、1.65未満のOCVを得ることができる。
【0058】
幾つかの実施形態において、オゾンに加えて他の強力な酸化剤を用いて、二酸化マンガン中のマンガンの平均価数を増加させることができる。酸化剤の例は、KO、KO、KMnO、種々の過硫酸塩、例えば、K及びNa、ペルオキシ二硫酸H、並びにペルオキシ一硫酸HSO及びその塩、例えば、KSO及びNaSOである。
【0059】
MnOを酸化するためにこれらの酸化剤を使用するように、EMD粉末を水中でスラリーにし、高温で攪拌しながらこれに酸化剤を添加する。幾つかの実施形態において、酸化剤に過硫酸塩が含まれる場合、排出された酸化剤は、例えば、オゾンを使用して、再利用することができる。
【0060】
幾つかの実施形態において、補助的な電解酸化を用いて、二酸化マンガン中のマンガンの平均価数を増加(MnO中の値xを増加)させることができる。商業用のEMDめっきは通常、数週間の期間にわたって、2V〜3VでのMnSO4+H2SO4の混合浴中で行われる。次いで、管理された様態で、めっきされたEMDを外し、破砕し、洗浄し、中和し、粉砕し、乾燥させる。典型的には、最終MnOx指標は、1.96〜1.97である。
【0061】
より高い「x」値を達成するには、補助的な電解酸化プロセスを用いる。商業用のEMD粉末を、水酸化カリウム若しくはナトリウム浴などの不活性アルカリ電解質の攪拌浴中に懸濁する。例えば、白金及び/又はルテニウム化白金(ruthenized platinum)から作製された2つの電極を浴中に浸し、多孔質隔膜によって分離し、2つの区画を作る。懸濁されたEMDが、アノード区画に収容される。もう一方の区画は、電解質及びカソード電極のみを収容する。従来のEMDの産生において用いられるもの(2V〜3V)より高い電圧、例えば、約4V〜5Vを適用して、アノード(正電極)でEMD粉末を更に酸化し、一方水素ガスがカソード(負電極)で産生される。水素ガスが2つの電極のうちのもう一方で産生されると、従来のEMDの産生において用いられるもの(2V〜3V)より高い電圧、例えば、約4V〜5Vを適用して、2つの電極のうちの1つでEMD粉末を更に酸化する。酸化されたEMD粉末を迅速に除去し、表面的にすすいで乾燥させる。次いで、これを炭素及びKOH電解質と上記のように混合してカソードを作り出し、電池内で使用する。アルカリ浴中で作用させ、酸化工程からすすぎ、乾燥、及びブレンド工程へと迅速に進むことにより、オゾン化EMDの場合と同様、高いx値を維持することができる。洗浄及び乾燥は、産物の加熱を回避し、値「x」を減少させるのを回避するように、表面的かつ不十分であってもよい。
【実施例】
【0062】
例示的な本実施例では、OEMDを含む単3電池を作製し、種々の保存条件下で試験する。試験結果を、通常のEMDを含む従来の単3電池のものと比較する。
【0063】
750グラムのEMD粉末を、反応器を回転するモータに接続される反応器内に定置する。オゾン発生器は、0.10MPa(14.7psia)及び室温で、約10.5g/標準立法メートルのオゾン濃度及び約1.0標準立法メートル/時間の流量を有する、酸素及びオゾンを含有するガス流を生成する。ガス流を約180分間、反応器に供給する。それによってOEMDが産生され、黒鉛及び水酸化カリウムとブレンドされ、カソード材料混合物を作り出す。カソード材料混合物は、例えば、単3電池に組み込まれ、良好に機能する。電池の電池平衡、間隙量、及び構築手順は、商業用アルカリ電池のものと同様である。
【0064】
単3電池を標準的な装置試験で試験する。
【0065】
本試験では、新しく調製された単3電池を、0.8Vの閉路電圧に下がるまで、1時間/日、3.9オームの負荷で、ANSI玩具試験に従って放電する。単3電池は、2.796ワット時を生み出す。
【0066】
更にANSI玩具試験を参照して、調製後、単3電池を1週間60℃で保存し、その後玩具試験で放電する。0.8Vの閉路電圧に達する前に、単3電池は2.666ワット時を生み出す。
【0067】
他の実施形態は、以下の特許請求の範囲内である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オゾン化二酸化マンガンを調製する方法であって、
二酸化マンガンを、最大20g/標準立法メートルのオゾン濃度を有するオゾンを含有するガス流と接触させて、オゾン化二酸化マンガンを作り出す工程を含む、方法。
【請求項2】
前記ガス流が、少なくとも1g/標準立法メートルのオゾン濃度を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記オゾン化二酸化マンガン中のマンガンが、3.98を超える平均価数値を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記オゾン化二酸化マンガンが、カソードに組み込まれる、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記カソードが、電気化学電池に組み込まれる、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記オゾン化二酸化マンガンが、炭素及び電解質と組み合わされて前記カソードが作り出される、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記炭素が、黒鉛、カーボンブラック、及びこれらの組み合わせからなる群から選択され、前記電解質が、塩類電解質及びアルカリ電解質からなる群から選択される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記二酸化マンガンが、電解二酸化マンガンを含み、前記オゾン化二酸化マンガンが、オゾン化電解二酸化マンガンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
少なくとも30%の効率でオゾン化電解二酸化マンガンを調製する工程を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記二酸化マンガンが、化学二酸化マンガンを含み、前記オゾン化二酸化マンガンが、オゾン化化学二酸化マンガンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記二酸化マンガンが、約20〜100m/gの表面積を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記二酸化マンガンが、約0.035cm/g〜約0.180cm/gの気孔率を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記ガス流が、1kgの二酸化マンガンにつき約1.24標準立法メートル/時間の流量を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
カソード混合物を作製する方法であって、
オゾン処理プロセスによって調製されたオゾン化二酸化マンガンを、25℃未満で保存する工程と、
保存後、前記オゾン化二酸化マンガンを黒鉛及び電解質と混合する工程と、を含む、方法。
【請求項15】
電気化学電池を作製する方法であって、
カソードにオゾン化二酸化マンガンを組み込む工程と、
前記カソードを電気化学電池に組み込む工程であって、前記電気化学電池が、1.65Vを超える開路電圧を有する、工程と、
前記電気化学電池の前記開路電圧が1.65V以下に下がるように、前記電気化学電池を少なくとも30℃の温度に加熱する工程と、を含む、方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2011−518746(P2011−518746A)
【公表日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−503156(P2011−503156)
【出願日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際出願番号】PCT/US2009/039233
【国際公開番号】WO2009/124161
【国際公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【出願人】(593093249)ザ ジレット カンパニー (349)
【Fターム(参考)】