説明

電波探知装置および方法

【課題】高分解A/D変換回路を用いることなく、精度を高めたモノパルス式レーダを具現化できるようにする。
【解決手段】例えば、モノパルス式レーダ21の差信号△の系統と和信号Σの系統のそれぞれにおいて個別に、A/D変換部46△,46Σの各前段に、可変利得部45△,45Σがそれぞれ設けられている。演算処理部47は、この可変利得部45△,45Σのゲイン切替の制御を行う。本発明は、モノパルス式レーダに適用可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電波探知装置および方法に関し、特に、精度を高めた電波探知装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自車と他車との衝突を回避すべく、衝突可能性のある他車を探知する電波探知装置(レーダ)として、モノパルス式レーダが自車に搭載されていることがある(例えば特許文献1,2参照)。
【0003】
モノパルス式とは、角度検知を行う一方式をいう。即ち、モノパルス式レーダは、自身の前方中心方向に対する探知対象物の角度を検知する。換言すると、自車の前方部分にモノパルス式レーダが搭載されている場合には、自車の前方他車が探知対象物となり、自車の前方他車の角度がモノパルス式レーダにより検知される。一方、自車の後方部分にモノパルス式レーダが搭載されている場合には、自車の後方他車が探知対象物となり、自車の後方他車の角度がモノパルス式レーダにより検知される。
【0004】
以下、図1と図2を参照して、モノパルス式の概略についてさらに説明する。
【0005】
従来のモノパルス式レーダにおいては、送信アンテナが設けられ、その送信アンテナの近傍に、例えば図1に示されるように、それぞれ受信アンテナ11L,11Rが所定の間隔をあけて設けられている。また、従来のモノパルス式レーダにおいては、信号加工部12も設けられている。
【0006】
送信アンテナからの送信信号が探知対象物において反射し、その反射信号が、受信アンテナ11L,11Rに受信信号としてそれぞれ受信されて、信号加工部12に提供される。信号加工部12は、それら2つの受信信号の差である差信号△と、2つの受信信号の和である和信号Σとを生成し、出力する。差信号△と和信号Σの各強度は、到来角θ、即ち探知対象物との角度θに応じて、図2のような特性となる。
【0007】
そこで、モノパルス式レーダは、和信号Σと差信号△の信号強度の比に基づいて、探知対象物の角度θを算出する。
【特許文献1】特開H09−90026号公報
【特許文献2】特開H06−150195号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、差信号△と和信号Σの信号強度が40dB近く変化するため、A/D変換処理において入力範囲に対して信号振幅の変化が著しく小さい場合、A/D変換後の離散化された値では変化が無いあるいは変化幅が小さくなるため、角度演算に誤差が生じる。また、A/D変換の入力範囲に対して信号振幅がオーバーする場合、A/D変換後の値が上限にて飽和するため、角度演算に誤差が生じる。探知対象物との角度θが変化することによって生じる信号強度の変化分だけを考慮しても7ビット必要であり、さらに距離や反射率に起因する信号強度の変化を考慮すると、それ以上のビットが必要であるからである。
【0009】
そこで、従来のモノパルス式レーダでは、測定精度を高めるために高分解A/D変換回路を採用するものがあった。この高分解A/D変換回路は高分解である分だけコストがかかり、その結果、モノパルス式レーダのコスト増が問題となっていた。
【0010】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、高分解A/D変換回路を用いることなく、精度を高めたモノパルス式レーダを具現化できるようにするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一側面の電波探知装置は、2以上の受信アンテナを有し、探知対象物をモノパルス式により探知する電波探知装置であって、前記2以上の受信アンテナに受信された各受信信号の差信号と和信号とのそれぞれの信号強度を離散的に変化させる可変利得手段と、前記可変利得手段により信号強度がそれぞれ変化した前記差信号または前記和信号に対して、A/D変換処理をそれぞれ施すA/D変換手段と、前記A/D変換手段による前記A/D変換処理後の前記差信号および前記和信号のそれぞれを用いて、前記モノパルス式により角度を演算する角度演算手段と、前記可変利得手段による前記信号強度の変換倍率を、前記差信号と前記和信号とのそれぞれに対して個別に切り換える制御を行う制御手段とを備える。
【0012】
これにより、精度を高めた電波探知装置を具現化できるようになる。
【0013】
例えば、電波探知装置はモノパルス式レーダ等で構成される。
【0014】
例えば、可変利得手段は、PGA(プログラマブル ゲイン アンプ)等で構成することができる。例えば、A/D変換手段は、A/D変換回路等で構成することができる。例えば、角度演算手段は、演算処理を行う回路や、ソフトウエアとしての信号処理を実行するコンピュータ等を含むように構成される。例えば、制御手段は、演算処理を行う回路や、ソフトウエアとしての信号処理を実行するコンピュータ等を含むように構成される。
【0015】
なお、角度演算手段と制御手段とは、ソフトウエアモジュールとして、マイクロコンピュータ等同一の装置に含めるようにすることもできる。
【0016】
前記制御手段は、前記差信号と前記和信号のそれぞれの信号強度と所定の閾値と比較し、その結果に基づいて、前記可変利得手段の変換倍率を切り替える制御を行う。
【0017】
これにより、A/D変換手段の入力範囲に対して差信号や和信号の信号強度の変化度合が適切になるため、A/D変換後の値が飽和したり、小さくなり過ぎることを改善できる。
【0018】
前記制御手段は、前記A/D変換手段より所定期間に出力された前記差信号のピーク値とボトム値とを保持する差信号用ピーク/ボトム保持手段と、前記所定の閾値として、ピーク値用閾値とボトム値用閾値とが設定されており、前記差信号用ピーク/ボトム保持手段に保持された前記ピーク値と前記ピーク値用閾値とを比較し、前記差信号用ピーク/ボトム保持手段に保持された前記ボトム値と前記ボトム値用閾値とを比較し、それらの比較の結果に基づいて、前記可変利得手段の前記差信号に対する変換倍率を決定する差信号用閾値判定手段と、前記A/D変換手段より所定期間に出力された前記和信号のピーク値とボトム値とを保持する和信号用ピーク/ボトム保持手段と、前記所定の閾値として、ピーク値用閾値とボトム値用閾値とが設定されており、前記和信号用ピーク/ボトム保持手段に保持された前記ピーク値と前記ピーク値用閾値とを比較し、前記和信号用ピーク/ボトム保持手段に保持された前記ボトム値と前記ボトム値用閾値とを比較し、それらの比較の結果に基づいて、前記可変利得手段の前記和信号に対する変換倍率を決定する和信号用閾値判定手段とを設けるようにすることができる。
【0019】
例えば、差信号用および和信号用ピーク/ボトム保持手段並びに閾値判定手段は、演算処理を行う回路や、ソフトウエアとしての信号処理を実行するコンピュータ等を含むように構成される。
これにより、前記可変利得手段の変換倍率の切り替えのより一段と適切な制御処理を実行できるようになる。
【0020】
前記閾値判定手段は、A倍と、B倍と(A,Bは相異なる数値)のうちの何れか一方を、前記可変利得手段の前記差信号と前記和信号のそれぞれに対する変換倍率としてそれぞれ決定することができる。
【0021】
前記電波探知装置の状態として、前記可変利得手段の変換倍率がA倍となっている第1の状態と、前記可変利得手段の変換倍率がB倍となっている第2の状態とが、前記和信号と前記差信号のそれぞれについて独立して存在し、前記ピーク値用閾値として、前記可変利得手段の変換倍率がB倍となっている場合に用いられる閾値が+Th_Hとして設定され、A倍となっている場合に用いられる閾値が+Th_Lとして設定されており、前記ボトム値用閾値として、前記可変利得手段の変換倍率がB倍となっている場合に用いられる閾値が-Th_Hとして設定され、A倍となっている場合に用いられる閾値が-Th_Lとして設定されており、前記A/D変換手段のフルスケールレンジをFSRと記述し、前記FSRの中心値を0と記述し、前記0に対してピーク側にある前記FSRの半分の値を+FSR/2と記述し、前記0に対してボトム側にある前記FSRの半分の値を-FSR/2と記述し、前記差信号用閾値判定手段または前記和信号用閾値判定手段は、前記差信号または前記和信号である対象信号について、前記第1の状態において、所定期間の前記対象信号について、そのピーク値が前記+Th_L乃至前記+FSR/2にあるか、またはそのボトム値が前記-Th_L乃至-FSR/2にある場合、前記第1の状態を維持させ、前記第1の状態において、前記所定期間の前記対象信号について、そのピーク値が前記+Th_L乃至前記0にあり、かつ前記ボトム値が前記-Th_L乃至前記0にある場合、前記第2の状態に遷移させ、前記第2の状態において、前記所定期間の前記対象信号について、そのピーク値が前記+Th_H乃至前記0にあり、かつそのボトム値が前記-Th_H乃至前記0にある場合、前記第2の状態を維持させ、前記第2の状態において、前記所定期間の前記対象信号について、そのピーク値が前記+Th_H乃至前記+FSR/2にあるか、またはそのボトム値が前記-Th_H乃至前記-FSR/2にある場合、前記第2の状態を維持させる制御を行うことで、前記可変利得手段の前記対象信号に対する変換倍率を決定する。
【0022】
これにより、可変利得手段は、例えば利得をB倍(より具体的には例えば2n倍)またはA倍(より具体的には例えば1倍)に離散的に切り替え可能なPGA(プログラマブル ゲイン アンプ)等で構成することができるようになる。即ち、可変利得手段として、ゲインの切替が1段階で済む簡易な構成で、かつ、精度の良い利得可変が実現できるPGAを採用できるようになる。
【0023】
本発明の一側面の電波探知方法は、上述した本発明の一側面の電波探知装置に対応する方法である。
【発明の効果】
【0024】
以上のごとく、本発明によれば、モノパルス式を利用して対象物を探知することができる。特に、精度を高めたモノパルス式レーダを具現化できるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。
【0026】
図3は、本発明が適用される電波探知装置としてのモノパルス式レーダ21の機能を示す機能ブロック図を示している。
【0027】
モノパルス式レーダ21のアンテナとして、送信アンテナ31、および、2つの受信アンテナ32L,32Rが設けられている。
【0028】
送信信号生成部41は、送信信号Ssを生成する。この送信信号Ssは、アンテナ31から送信される。なお、送信信号生成部41により生成される送信信号Ssの形態は受信信号から位相差が求まるものであれば特に限定されない。例えば、CW、2周波CW、FMCWなどを採用することができる。
【0029】
この送信信号Ssは探知対象物22において反射し、その反射信号が、受信信号Srlとして受信アンテナ32Lに受信されるとともに、受信信号Srrとして受信アンテナ32Rに受信される。
【0030】
信号加工部42は、受信信号Srlと、受信信号Srrとの差を信号として生成し、ミキシング部43に出力する。ミキシング部43は、信号加工部42の出力信号と、送信信号生成部41により生成される送信信号Ssとをミキシング処理することで、差信号△を生成し、可変利得部45△に提供する。可変利得部45△は、差信号△の信号強度を変倍(1倍含む)して、A/D変換部46△に提供する。ここで、変倍とは、信号強度を所定の倍率に変更すること(現状維持についても、1倍から1倍に変更することとして取り扱う)をいう。なお、可変利得部45△による差信号△の信号強度の変倍手法については、図4以降の図面を参照して後述する。A/D変換部46△は、アナログ信号としての差信号△をデジタル信号に変換して、演算処理部47に提供する。
【0031】
また、信号加工部42は、受信信号Srrと、受信信号Srlとを加算した信号を生成し、ミキシング部44に出力する。ミキシング部44は、信号加工部42の出力信号と、送信信号生成部41により生成される送信信号Ssとをミキシング処理することで、和信号Σを生成し、可変利得部45Σに提供する。可変利得部45Σは、和信号Σの信号強度を変倍(1倍含む)して、A/D変換部46Σに提供する。なお、可変利得部45Σによる和信号Σの信号強度の変倍手法については、図4以降の図面を参照して後述する。A/D変換部46Σは、アナログ信号としての和信号Σをデジタル信号に変換して、演算処理部47に提供する。
【0032】
演算処理部47は、A/D変換部46Σからの和信号Σと、A/D変換部46△からの差信号△の信号強度の比に基づいて、到来角θ、即ち、探知対象物22の角度θを算出して出力する。また、演算処理部47は、探知対象物22との相対速度Vも算出して出力する。
【0033】
図4は、演算処理部47の機能の詳細を示す機能ブロック図を示している。
【0034】
演算処理部47は、固定小数点演算部51と浮動小数点演算部52とを有している。
【0035】
固定小数点演算部51には、差信号△についての固定小数点による演算処理を行うべく、ピーク/ボトム保持部61△、閾値判定部62△、LPF部63△、および、FFT部64△が設けられており、その順番でそれぞれ接続されている。
【0036】
また、固定小数点演算部51には、和信号Σについての固定小数点による演算処理を行うべく、ピーク/ボトム保持部61Σ、閾値判定部62Σ、LPF部63Σ、および、FFT部64△Σが設けられており、その順番でそれぞれ接続されている。
【0037】
浮動小数点演算部52には、浮動小数点による演算処理を行うべく、角度演算部65と速度演算部66とが設けられている。
【0038】
以下、図3と図4の構成を有するモノパルス式レーダ21の動作について説明する。なお、必要に応じて各機能ブロックの機能の説明も併せて行う。また、差信号△および和信号Σを生成するまでの動作については、図1等の従来のモノパルス式レーダと基本的に同様である。よって、その説明については省略する。即ち、以下、モノパルス式レーダ21のうちの、図4に示されている部分の動作についてのみ説明する。
【0039】
可変利得部45△は、例えばB倍(より具体的には例えば2n倍)またはA倍(より具体的には例えば1倍)に切替可能な可変利得アンプまたは減衰器として構成されている。具体的には例えば本実施の形態では、n=4、即ち、16倍または1倍に切替可能な可変利得アンプとして可変利得部45△は構成されている。
【0040】
即ち、アナログ信号としての差信号△は、可変利得部45△に入力されると、そこで、その信号強度が、ゲインG倍(Gは、例えば本実施の形態では1と16のうちの切り替えられた方の整数値)に変換され、A/D変換部46△においてデジタル信号に変換されて、ピーク/ボトム保持部61△に提供される。
【0041】
可変利得部45△のゲイン切替処理、即ち、ゲインGを1倍または16倍に切り替える処理は、閾値判定部62△からの制御信号αに基づいて行われる。かかるゲイン切替処理の手法については、図5と図6を参照して後述する。
【0042】
ピーク/ボトム保持部61△は、A/D変換部46から順次提供されてくる差信号△の信号強度が、現在保持されているピーク値(信号強度の最大値)またはボトム値(信号強度の最小値)を超えているか否かを判断し、超えていると判断した場合、ピーク値またはボトム値として、その差信号△の信号強度を採用(更新)する。即ち、ピーク/ボトム保持部61△は、所定期間(例えば20msの間)、A/D変換部46△からの差信号△のピーク値とボトム値とを保持する。ピーク/ボトム保持部61△は、その所定期間経過後、その保持結果、即ち、所定期間の差信号△のピーク値とボトム値を閾値判定部62△に提供する。
【0043】
閾値判定部62△においては、差信号△のピーク値と比較される閾値(以下、ピーク値用閾値と称する)と、差信号△のボトム値と比較される閾値(以下、ボトム値用閾値と称する)とが設定されている。さらに、ピーク値用閾値として、可変利得部45△のゲインGが16倍に設定されている場合に用いられるピーク値用閾値(以下、+Th_Hと記述する)と、ゲインGが1倍に設定されている場合に用いられるピーク値用閾値(以下、+Th_Lと記述する)とが設定されている。また、ボトム値用閾値として、ゲインGが16倍に設定されている場合に用いられるボトム値用閾値(以下、-Th_Hと記述する)と、ゲインGが1倍に設定されている場合に用いられるボトム値用閾値(以下、-Th_Lと記述する)とが設定されている。
【0044】
具体的には、+Th_Hは、A/D変換部46△のFSR(フルスケールレンジ)の半分の値より数%程度小さくなる値が設定され、+Th_Lは、その値を16倍した場合にもFSRの半分の値に収まるように設定されている。
【0045】
同様に、-Th_Hは、その絶対値がA/D変換部46△のFSRの半分の値より数%程度小さくなるように設定され、-Th_Lは、その絶対値を16倍した場合にもFSRの半分の値に収まるように設定されている。
【0046】
閾値判定部62△は、所定期間の差信号△のピーク値とピーク値用閾値+Th_H,+Th_Lとの関係、および、所定期間の差信号△のボトム値とボトム値用閾値-Th_H,-TH_Lとの関係を判断し、それらの判断結果に基づいて、制御信号αを生成し、可変利得部45△に提供する。
【0047】
これにより、例えば、差信号△の値がFSRに比べ小さすぎるよう場合には、可変利得部45△のゲインを大きくする制御信号αが出力されて、信号強度を適切なレベルに変換することができる。一方、例えば、差信号△の値がFSRに比べて大きくなり過ぎる場合には、逆に可変利得部45△のゲインを小さくする制御信号αが出力されて、信号強度を適切なレベルに変換することができる。
【0048】
換言すると、閾値判定部62△が所定期間ごとに信号強度を評価することで、可変利得部45△のゲインを適切に設定することができる。
【0049】
なお、制御信号αは、例えば本実施の形態では、1または16を示す信号であるとする。ここで、1または16を示す信号とは、可変利得部45△および角度演算部65において、1であるのかそれとも16であるのかを識別できる信号であれば足り、その形態は特に限定されない。例えば、制御信号αをフラグとし、フラグが立っている場合には16を示し、フラグが降りている場合には1を示すことを、可変利得部45△および角度演算部65が認識できるようにモノパルス式レーダ21を構成すればよい。なお、以下、説明の便宜上、制御信号αのうち、16を示す信号の方を、制御信号α=16と記述し、1を示す信号の方を、制御信号α=1であると記述する。
【0050】
さらに、図5を参照して、閾値判定部62△の動作の詳細例について説明する。
【0051】
図5は、モノパルス式センサ21のうちの差信号△の系統(可変利得部45△乃至FFT部64△)が取り得る各状態の一例を示している。
【0052】
図5において、各状態は、1つの楕円形状で示されており、その楕円形状に引かれた“S”を含む符号により判別される。1つの状態から1つの状態への状態遷移(同一の状態に留まる場合も含む)は、所定の条件(以下、状態遷移条件と称する)が満たされると実行される。このような状態遷移条件は、図5おいては、1つの状態から1つの状態への遷移を表す矢印に、“C”を含む符号を付して表されている。
【0053】
なお、以下、差信号△を、可変利得部45△に入力される前の段階と、出力された後の段階とで明確に区別する必要がある場合、入力前の差信号△を特に差信号△inと称し、出力後の差信号△を、特に差信号△outと称する。この呼称は、和信号Σについても同様に採用するとする。
【0054】
ここで、状態S1とは、閾値判定部62△から制御信号α=1が出力されている状態を指す。この場合、可変利得部45△では、ゲインGは1倍となる。即ち、差信号△outは、差信号△inの信号強度(1倍)のままでA/D変換部46△に提供される。また、後述する角度演算部65において行われる式(1)の演算において、α=1が代入される。
【0055】
これに対して、状態S16とは、閾値判定部62△から制御信号α=16が出力されている状態を指す。この場合、可変利得部45△では、ゲインGは16倍となる。即ち、差信号△outは、差信号△inに対して16倍の信号強度に増幅されてA/D変換部46△に提供される。また、後述する角度演算部65において行われる式(1)の演算において、α=16が代入される。
【0056】
例えば状態S1において、閾値判定部62△は、所定期間の差信号△outのピーク値が+Th_L〜+FSR/2にあるか、またはボトム値が-Th_L〜-FSR/2にある場合、状態遷移条件C1が満たされたと判定し、状態S1に遷移させる。即ち、状態S1において、所定期間の差信号△outの振幅が一定以上確保できている場合は、その状態S1が維持され、その結果、閾値判定部62△から制御信号α=1が出力される。
【0057】
これに対して、例えば状態S1において、閾値判定部62△は、所定期間の差信号△outのピーク値が+Th_L〜0にあり、かつボトム値が-Th_L〜0にある場合、状態遷移条件C2が満たされたと判定し、状態S16に遷移させる。これにより、閾値判定部62△から制御信号α=16が出力されるようになるので、次の所定期間からは、可変利得部45△では、ゲインGは16倍となる。即ち、差信号△outは、差信号△inに対して16倍の信号強度に増幅されてA/D変換部46△に提供される。また、後述する角度演算部65において行われる式(1)の演算において、α=16が代入される。
【0058】
また例えば状態S16において、閾値判定部62△は、所定期間の差信号△outのピーク値が+Th_H〜0にあり、かつボトム値が-Th_H〜0にある場合、状態遷移条件C3が満たされたと判定し、状態S16に遷移させる。即ち、状態S16において、所定期間の差信号△outの振幅が所定値以下である間は、その状態S16が維持され、その結果、閾値判定部62△から制御信号α=16が出力される。
【0059】
これに対して、例えば状態S16において、閾値判定部62△は、所定期間の差信号△outのピーク値が+Th_H〜+FSR/2にあるか、またはボトム値が-Th_H〜-FSR/2にある場合、状態遷移条件C4が満たされたと判定し、状態S1に遷移させる。これにより、閾値判定部62△から制御信号α=1が出力されるので、次の所定期間からは、可変利得部45△では、ゲインGは1倍となる。即ち、差信号△outは、差信号△inの信号強度そのまま(1倍)でA/D変換部46△に提供される。また、後述する角度演算部65において行われる式(1)の演算において、α=1が代入される。
【0060】
以上の内容をまとめると、次のようになる。即ち、例えば図6に示される波形の差信号△out(和信号Σについては後述する)が可変利得部45△から出力されて、A/D変換部46△においてデジタル信号に変換されて、閾値判定部62△に入力されたとする。
【0061】
なお、図6に示されるように、所定期間内における差信号△outの波形のうちの、+FSR/2側に存在する最高値(例えば同図の点Pの値)がピーク値となり、-FSR/2側に存在する最低値(絶対値としては最高値であって、例えば同図の点Bの値)がボトム値となる。
【0062】
ここで、初期状態が例えば状態S1である場合、即ち、閾値判定部62△から制御信号α=1が出力されている場合を想定する。この場合、初期状態では、差信号△inは、可変利得部45△において増幅せず(1倍に増幅されて)、その結果、差信号△outは、差信号△inの信号強度そのまま(1倍)で、A/D変換部46△に提供され、そこでデジタル信号に変換されて、閾値判定部62△に提供される。
【0063】
所定期間の差信号△outの信号強度の振幅が一定以上確保できている限り、状態S1が保持され続ける。よって、差信号△outは、差信号△inの信号強度そのまま(1倍)で、A/D変換部46△に提供され、そこでデジタル信号に変換されて、閾値判定部62△に提供される。
【0064】
その後、所定期間の差信号△outの信号強度の振幅が一定値を下回ると、状態S16に遷移する。よって、次の所定期間の差信号△inの信号強度は、可変利得部45△によって16倍に増幅されて、その結果得られる差信号out、即ち、差信号△inに対して16倍の信号強度を有する差信号outが、A/D変換部46△に提供され、そこでデジタル信号に変換されて、閾値判定部62△に提供される。
【0065】
その後、所定期間の差信号△outの信号強度の振幅が一定値を保っている限り、状態S16が保持され続ける。よって、差信号△inに対して16倍の信号強度を有する差信号△outが、A/D変換部46△に提供され、そこでデジタル信号に変換されて、閾値判定部62△に提供される。
【0066】
その後、所定期間の差信号△outの信号強度の振幅が所定値以上になると、状態S1に再び遷移する。よって、次の所定期間の差信号△outは、差信号△inの信号強度そのまま(1倍)で、A/D変換部46△に提供され、そこでデジタル信号に変換されて、閾値判定部62△に提供される。
【0067】
以上のように可変利得部45△のゲイン切替の制御を行っていくことで、差信号△outの信号強度を、A/D変換部46△の量子化ビット数(FSR:フルスケールレンジ)に基づいて決定された閾値+Th_H〜+Th_Lにピーク値を、閾値-Th_L〜-Th_Hにボトム値を収束させていくことができるようになる。即ち、差信号△outの信号強度の変化度合がA/D変換部46△の入力範囲に対して適切となるため、A/D変換後の値が飽和したり、小さくなり過ぎることを改善できる。
【0068】
図4に戻り、可変利得部45△から順次出力されてA/D変換部46△を介してピーク/ボトム保持部61△に順次入力されてくる差信号△outはまた、閾値判定部62△を介してLPF部63△にも順次提供される。
【0069】
LPF部63△は、差信号△outに対してLPF(Low Pass Filter)処理を施し、その結果得られる信号をFFT部64△に提供する。FFT部64△は、そのLPF処理後の差信号△outに対してFFT(Fast Fourier Transform)解析処理を施し、そのFFT解析結果を角度演算部65に提供する。
【0070】
以上の差信号△に対する可変利得部45△乃至FFT部64△のそれぞれの処理と基本的に同様の処理が、和信号Σに対する可変利得部45Σ乃至FFT部64Σのそれぞれの処理として実行される。即ち、可変利得部45Σ乃至FFT部64Σのそれぞれは、可変利得部45△乃至FFT部64△のそれぞれと基本的に同様の機能と構成を有している。
【0071】
即ち、上述した図5はまた、モノパルス式センサ21のうちの和信号Σの系統(可変利得部45Σ乃至FFT部64Σ)が取り得る各状態の一例も示していることになる。
【0072】
ただし、この場合、状態S1とは、閾値判定部62Σから制御信号β=1が出力されている状態を指す。この場合、可変利得部45Σでは、ゲインGは1倍となる。即ち、和信号Σoutは、和信号Σinのままの信号強度(1倍)でA/D変換部46Σに提供される。また、後述する角度演算部65において行われる式(1)の演算において、β=1が代入される。
【0073】
これに対して、状態S16とは、閾値判定部62Σから制御信号β=16が出力されている状態を指す。この場合、可変利得部45Σでは、ゲインGは16倍となる。即ち、和信号Σoutは、和信号Σinに対して16倍の信号強度に増幅されてA/D変換部46Σに提供される。また、後述する角度演算部65において行われる式(1)の演算において、Σ=16が代入される。
【0074】
角度演算部65は、次の式(1)の演算を行うことで、到来角θ、即ち、探知対象物の角度θを算出して出力する。
【0075】
【数1】

・・・(1)
【0076】
式(1)において、上述したように、制御信号α=1が提供されてきた場合にはα=1が代入され、制御信号α=16が提供されてきた場合にはα=16が代入される。また、制御信号β=1が提供されてきた場合にはβ=1が代入され、制御信号β=16が提供されてきた場合にはβ=16が代入される。
【0077】
また、式(1)において、△Vpは、FFT部64△から提供された差信号△outのFFT結果のうちの、探知対象物22についての信号強度に相当する量を示している。また、ΣVpは、FFT部64Σから提供された和信号ΣoutのFFT結果のうちの、探知対象物22についての信号強度に対応する量を示している。cは光速度を示している。fcは、キャリア周波数を示している。Lは、受信アンテナ32L,32Rの間の間隔を示している。
【0078】
速度演算部66は、次の式(2)の演算を行うことで、探知対象物22との相対速度Vを算出して出力する。
【0079】
【数2】

・・・(2)
【0080】
式(2)において、fdは、FFT部64Σから提供された和信号ΣoutのFFT結果のうちの、探知対象物22についてのドップラ周波数を示している。また、式(2)においても式(1)と同様に、cは光速度を示し、fcはキャリア周波数を示している。
【0081】
以上説明したように、図3と図4の構成を有するモノパルス式レーダ21においては、例えば2n倍の可変利得アンプまたは減衰器として構成される可変利得部45△,45Σ、具体的には例えば本実施の形態では、n=4(16倍)の可変利得アンプとして構成される可変利得部45△,45Σが、A/D変換部46△,46Σのそれぞれの前段に設けられている。
【0082】
また、ピーク/ボトムホールド機能を有するピーク/ボトム保持部61△,61Σと、閾値判定機能を有する閾値判定部62△,62Σとの各組が、A/D変換部46△,46Σのそれぞれの後段に設けられている。
【0083】
そして、ピーク/ボトムホールド機能を有するピーク/ボトム保持部61△,61Σと、閾値判定機能を有する閾値判定部62△,62Σとの各組が、所定期間ごとのピーク値/ボトム値と閾値+Th_H/+Th_L/-Th_L/-Th_Hとの比較結果に基づいて、図5の状態遷移図に従った状態遷移処理を実行する。そして、その状態遷移処理の結果に基づいて、可変利得部45△,45ΣのゲインGの切替制御が行われる。
【0084】
さらに、状態遷移処理の結果に基づいて可変利得部45△,45ΣのゲインGが2n倍(本実施の形態では16倍)に変化された場合には、その変化分をキャンセルすべく、角度演算部65における角度演算時に、各信号強度を(1/2n倍)にするのと等価な処理が実行される。ここに、各信号強度を(1/2n倍)にするのと等価な処理とは、例えば式(1)においては、(△Vp/α)の演算処理や、(ΣVp/β)の演算処理が相当する。
【0085】
以上のことにより、固定小数点演算部51における固定小数演算精度は従来と比較しても落ちることは無くなる。さらに、可変利得部45△,45Σにおいて、差信号△や和信号Σの信号強度(ゲインG)が適切に切り換えられるので、A/D変換後の値が飽和したり、小さくなり過ぎることを改善できる。これにより、A/D変換部45△,45Σとして、従来に比較して安価な低分解A/D変換回路を採用できるようになる。即ち、例えば図4の構成のモノパルス式センサ21を具現化すれば、精度を高めたモノパルス式レーダの実現が可能になる。
【0086】
本発明が適用されるモノパルス式レーダの実施の形態は、図4の実施の形態に限定されないことはいうまでもない。
【0087】
例えば、ゲインの切り替えは2段階以上であっても良い。閾値判定部62△,62Σにおける判定をより細かく行うことによって、2段階以上のゲインを設定する構成にしても良い。
【0088】
例えば、ピーク/ボトムホールド機能を有するピーク/ボトム保持部61△,61Σと、閾値判定機能を有する閾値判定部62△,62Σとは、本発明にとって必須な構成ではない。
【0089】
即ち、例えば図示はしないが、ピーク/ボトム保持部61△,61Σおよび閾値判定部62△,62Σの代わりに、次のような機能ブロックを採用することもできる。即ち、差信号△out,和信号Σoutの信号強度を、A/D変換部46△,46Σの量子化ビット数に基づいて決定された二つのピーク値用閾値の間(例えば上述の例では閾値Th_HとTh_Lとの間)と二つのボトム値用閾値の間(例えば上述の例では閾値-Th_Lと-Th_hとの間)に収束させるように、可変利得部45△,45Σのゲイン切替の制御を行う機能を有する機能ブロックを採用することもできる。
【0090】
また例えば図示はしないが、ピーク/ボトム保持部61△,61Σおよび閾値判定部62△,62Σの代わりに、次のような機能ブロックを採用することもできる。即ち、差信号△out,和信号Σoutの信号強度の差を監視し、その差に基づく可変利得部45△,45Σのゲイン切替の制御、例えばその差が所定の閾値以上開いたとき等を条件として可変利得部45△,45Σのゲイン切替の制御を行う機能を有する機能ブロックを採用することもできる。
【0091】
また例えば図示はしないが、ピーク/ボトム保持部61△,61Σおよび閾値判定部62△,62Σの代わりに、次のような機能ブロックを採用することもできる。即ち、差信号△out,和信号Σoutの信号強度の比を監視し、その強度比に基づく可変利得部45△,45Σのゲイン切替の制御、例えばその強度比が所定の閾値以上開いたとき等を条件として可変利得部45△,45Σのゲイン切替の制御を行う機能を有する機能ブロックを採用することもできる。
【0092】
また、可変利得部45Σ,45△の代わりに、AGC(オート ゲイン コントロール)を採用することもできる。ただし、AGCは、制御入力に対してリニアな利得変化特性が必要となるため、回路構成が複雑で、周囲環境変化にも弱い、という特徴を有している。これに対して、PGAは、離散的なゲイン切替なので、スイッチとアンプのみの簡易な構成で精度の良い利得可変が実現できる、という特徴を有している。即ち、本発明の目的のひとつである精度を高めたモノパルス式レーダの具現化を考慮すると、離散的なゲイン切替を行うことができる可変利得部45Σ,45△を採用した方が好適である。
【0093】
また、本実施の形態では、差信号△用の閾値判定部62△と、和信号Σ用の閾値判定部62Σとが設けられているが、即ち、差信号△と和信号Σの両者の信号強度の監視が行われているが、これに限定されず、何れか一方の監視を行うようにしてもよい。ただし、何れか一方の監視では、距離減衰や反射率変化に起因する信号強度の変動によって、誤検知のおそれがある点留意すべきである。即ち、かかる点を考慮するならば、本実施の形態のように、差信号△と和信号Σの両者の信号強度の監視を行う方が好適である。
【0094】
また、例えば図示しないが、演算処理部内の各ブロックそれぞれについて、固定小数点演算と浮動小数点演算のいずれか任意の演算方式を選択することもできる。
【0095】
ところで、上述した一連の処理(或いはそのうちの一部分の処理)、例えば上述した図5の状態遷移図に従った処理は、ハードウエアにより実行させることもできるし、ソフトウエアにより実行させることもできる。
【0096】
一連の処理(或いはそのうちの一部分の処理)をハードウエアにより実行させる場合には、モノパルス式レーダ21の少なくとも一部、例えば演算処理部47等は、例えば図7に示されるようなコンピュータで構成することができる。
【0097】
図7において、CPU(Central Processing Unit)101は、ROM(Read Only Memory)102に記録されているプログラム、または記憶部108からRAM(Random Access Memory)103にロードされたプログラムに従って各種の処理を実行する。RAM103にはまた、CPU101が各種の処理を実行する上において必要なデータなども適宜記憶される。
【0098】
CPU101、ROM102、およびRAM103は、バス104を介して相互に接続されている。このバス104にはまた、入出力インタフェース105も接続されている。
【0099】
入出力インタフェース105には、キーボード、マウスなどよりなる入力部106、ディスプレイなどよりなる出力部107、ハードディスクなどより構成される記憶部108、および、モデム、ターミナルアダプタなどより構成される通信部109が接続されている。通信部109は、インターネットを含むネットワークを介して他の装置との通信処理を行う。さらにまた、通信部109は、図7では図示せぬ送信アンテナ(図3の例では送信アンテナ31)から送信信号を送信させたり、その送信信号に対する受信信号を、図7では図示せぬ受信アンテナ(図3お例では受信アンテナ32L,32R)に受信させるための送受信処理も行う。
【0100】
入出力インタフェース105にはまた、必要に応じてドライブ110が接続され、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、或いは半導体メモリなどよりなるリムーバブルメディア111が適宜装着され、それらから読み出されたコンピュータプログラムが、必要に応じて記憶部108にインストールされる。
【0101】
一連の処理をソフトウエアにより実行させる場合には、そのソフトウエアを構成するプログラムが、専用のハードウエアに組み込まれているコンピュータ、または、各種のプログラムをインストールすることで、各種の機能を実行することが可能な、例えば汎用のパーソナルコンピュータなどに、ネットワークや記録媒体からインストールされる。
【0102】
このようなプログラムを含む記録媒体は、図7に示されるように、装置本体とは別に、ユーザにプログラムを提供するために配布される、プログラムが記録されている磁気ディスク(フロッピディスクを含む)、光ディスク(CD−ROM(Compact Disk-Read Only Memory),DVD(Digital Versatile Disk)を含む)、光磁気ディスク(MD(Mini-Disk)を含む)、もしくは半導体メモリなどよりなるリムーバブルメディア(パッケージメディア)111により構成されるだけでなく、装置本体に予め組み込まれた状態でユーザに提供される、プログラムが記録されているROM102や、記憶部108に含まれるハードディスクなどで構成される。
【0103】
なお、本明細書において、記録媒体に記録されるプログラムを記述するステップは、その順序に沿って時系列的に行われる処理はもちろん、必ずしも時系列的に処理されなくとも、並列的あるいは個別に実行される処理をも含むものである。
【0104】
また、本発明は、上述したモノパルス式レーダ21のみならず、様々な構成の装置やシステムに適用可能である。なお、ここに、システムとは、複数の処理装置や処理部により構成される装置全体を表すものである。
【図面の簡単な説明】
【0105】
【図1】モノパルス式を説明する図である。
【図2】モノパルス式の和信号、差信号の特性を表す図である。
【図3】本発明が適用されるモノパルス式レーダの機能的構成例を示す機能ブロック図である。
【図4】図3のモノパルス式レーダのうちの演算処理部の詳細な機能的構成例を示す機能ブロック図である。
【図5】図3のモノパルス式レーダの状態の各例を示す状態遷移図である。
【図6】図5の状態遷移図に従った演算処理部の処理例を説明する図である。
【図7】本発明が適用されるモノパルス式レーダの全部または一部分のハードウエア構成例を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0106】
11L 受信アンテナ
11R 受信アンテナ
12 信号加工部
21 モノパルス式レーダ
22 探知対象物
31 送信アンテナ
32L 受信アンテナ
32R 受信アンテナ
41 送信信号生成部
42 信号加工部
43 ミキシング部
44 ミキシング部
45△ 可変利得部
45Σ 可変利得部
46△ A/D変換部
46Σ A/D変換部
47 演算処理部
51 固定小数点演算部
52 浮動小数点演算部
61△ ピーク/ボトム保持部
61Σ ピーク/ボトム保持部
62△ 閾値判定部
62Σ 閾値判定部
63△ LPF部
64Σ LPF部
65 角度演算部
66 速度演算部
101 CPU
102 ROM
103 RAM
104 バス
105 入出力インタフェース
106 入力部
107 出力部
108 記憶部
109 通信部
110 ドライブ
111 リムーバブルメディア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2以上の受信アンテナを有し、探知対象物をモノパルス式により探知する電波探知装置において、
前記2以上の受信アンテナに受信された各受信信号の差信号と和信号とのそれぞれの信号強度を離散的に変化させる可変利得手段と、
前記可変利得手段により信号強度がそれぞれ変化した前記差信号または前記和信号に対して、A/D変換処理をそれぞれ施すA/D変換手段と、
前記A/D変換手段による前記A/D変換処理後の前記差信号および前記和信号のそれぞれを用いて、前記モノパルス式により角度を演算する角度演算手段と、
前記可変利得手段による前記信号強度の変換倍率を、前記差信号と前記和信号とのそれぞれに対して個別に切り換える制御を行う制御手段と
を備える電波探知装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記差信号と前記和信号のそれぞれの信号強度と所定の閾値と比較し、その結果に基づいて、前記可変利得手段の変換倍率を切り替える制御を行う
請求項1に記載の電波探知装置。
【請求項3】
前記制御手段は、
前記A/D変換手段より所定期間に出力された前記差信号のピーク値とボトム値とを保持する差信号用ピーク/ボトム保持手段と、
前記所定の閾値として、ピーク値用閾値とボトム値用閾値とが設定されており、前記差信号用ピーク/ボトム保持手段に保持された前記ピーク値と前記ピーク値用閾値とを比較し、前記差信号用ピーク/ボトム保持手段に保持された前記ボトム値と前記ボトム値用閾値とを比較し、それらの比較の結果に基づいて、前記可変利得手段の前記差信号に対する変換倍率を決定する差信号用閾値判定手段と、
前記A/D変換手段より所定期間に出力された前記和信号のピーク値とボトム値とを保持する和信号用ピーク/ボトム保持手段と、
前記所定の閾値として、ピーク値用閾値とボトム値用閾値とが設定されており、前記和信号用ピーク/ボトム保持手段に保持された前記ピーク値と前記ピーク値用閾値とを比較し、前記和信号用ピーク/ボトム保持手段に保持された前記ボトム値と前記ボトム値用閾値とを比較し、それらの比較の結果に基づいて、前記可変利得手段の前記和信号に対する変換倍率を決定する和信号用閾値判定手段と
を有する請求項2に記載の電波探知装置。
【請求項4】
前記閾値判定手段は、A倍と、B倍と(A,Bは相異なる数値)のうちの何れか一方を、前記可変利得手段の前記差信号と前記和信号のそれぞれに対する変換倍率としてそれぞれ決定する
請求項3に記載の電波探知装置。
【請求項5】
前記電波探知装置の状態として、前記可変利得手段の変換倍率がA倍となっている第1の状態と、前記可変利得手段の変換倍率がB倍となっている第2の状態とが、前記和信号と前記差信号のそれぞれについて独立して存在し、
前記ピーク値用閾値として、前記可変利得手段の変換倍率がB倍となっている場合に用いられる閾値が+Th_Hとして設定され、A倍となっている場合に用いられる閾値が+Th_Lとして設定されており、
前記ボトム値用閾値として、前記可変利得手段の変換倍率がB倍となっている場合に用いられる閾値が-Th_Hとして設定され、A倍となっている場合に用いられる閾値が-Th_Lとして設定されており、
前記A/D変換手段のフルスケールレンジをFSRと記述し、前記FSRの中心値を0と記述し、前記0に対してピーク側にある前記FSRの半分の値を+FSR/2と記述し、前記0に対してボトム側にある前記FSRの半分の値を-FSR/2と記述し、
前記差信号用閾値判定手段または前記和信号用閾値判定手段は、
前記差信号または前記和信号である対象信号について、
前記第1の状態において、所定期間の前記対象信号について、そのピーク値が前記+Th_L乃至前記+FSR/2にあるか、またはそのボトム値が前記-Th_L乃至-FSR/2にある場合、前記第1の状態を維持させ、
前記第1の状態において、前記所定期間の前記対象信号について、そのピーク値が前記+Th_L乃至前記0にあり、かつ前記ボトム値が前記-Th_L乃至前記0にある場合、前記第2の状態に遷移させ、
前記第2の状態において、前記所定期間の前記対象信号について、そのピーク値が前記+Th_H乃至前記0にあり、かつそのボトム値が前記-Th_H乃至前記0にある場合、前記第2の状態を維持させ、
前記第2の状態において、前記所定期間の前記対象信号について、そのピーク値が前記+Th_H乃至前記+FSR/2にあるか、またはそのボトム値が前記-Th_H乃至前記-FSR/2にある場合、前記第2の状態を維持させる
制御を行うことで、
前記可変利得手段の前記対象信号に対する変換倍率を決定する
請求項4に記載の電波探知装置。
【請求項6】
前記角度演算手段は、
前記可変利得手段の前記対象信号に対する変換倍率がA倍となっている場合、前記A/D変換処理後の前記対象信号の信号強度に対応する量を(1/A)用いて、前記角度を演算し、
前記可変利得手段の前記対象信号に対する変換倍率がB倍となっている場合、前記A/D変換処理後の前記対象信号の信号強度に対応する量を(1/B)倍した量を用いて、前記角度を演算する
請求項4に記載の電波探知装置。
【請求項7】
2以上の受信アンテナを有し、探知対象物をモノパルス式により探知する電波探知装置の電波探知方法において、
前記電波探知装置が、
前記2以上の受信アンテナに受信された各受信信号の差信号と和信号とのそれぞれの信号強度を離散的に変化させる可変利得手段と、
前記可変利得手段により信号強度がそれぞれ変化した前記差信号または前記和信号に対して、A/D変換処理をそれぞれ施すA/D変換手段と、
前記A/D変換手段による前記A/D変換処理後の前記差信号および前記和信号のそれぞれを用いて、前記モノパルス式により角度を演算する角度演算手段と
を備えている場合、
前記可変利得手段による前記信号強度の変換倍率を、前記差信号と前記和信号とのそれぞれに対して個別に切り換える制御を行う
ステップを含む電波探知方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−198363(P2009−198363A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−41226(P2008−41226)
【出願日】平成20年2月22日(2008.2.22)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
【Fターム(参考)】