説明

電波発信装置の個体識別装置

【課題】 無線機、レーダ等の電波発信装置の個体識別を精度よく行うことができる個体識別装置を提供する。
【解決手段】 電波発信装置の個体識別装置において、測定対象信号の立上がり波形をリアルタイムに記録する波形記録部と、受信した信号を検波する検波部と、検波したパルス信号の諸元を検出する諸元検出部と、受信信号の周波数変移及びその他の諸元をライブラリに保存するデータベース部と、波形記録部に記録された波形データを信号立上がり時の周波数変移によってグループ分けし、データベース部に格納されているライブラリデータと照合する統合処理部とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信波、レーダ波等の電波発信装置が発信する電波信号を受信し、その電波信号を分析することにより、電波発信装置の個体識別を行う個体識別装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の個体識別装置として、例えば特許文献1に示す「無線機同定装置」がある。この装置では、無線機の発する電波信号の立上り波形を補足し、その立上り波形の各部を分析し、そのタイムラグを求め、基準タイムラグとの対比結果に基づき電波信号の識別を行うというものである。
【0003】
【特許文献1】特開2002−26826号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
無線機、レーダ等の電波発信装置を特定する技術において、従来は、上記文献等に示されるように、発信された電波信号の周波数、パルス幅、パルス繰返し周波数(PRI)、走査パターン等の諸元を分析することによる識別が行われていた。しかし、多数の電波発信装置において、上記電波信号の諸元が互いに近接している場合、これらのパラメータのみで電波発信装置の個体識別を行うことは難しいという問題があった。
【0005】
この発明は上記に鑑み提案されたものであり、より精度よく電波発信装置の個体識別を行うことができる個体識別装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の電波発信装置の個体識別装置は、測定対象信号の立上がり波形をリアルタイムに記録する波形記録部と、受信した信号を検波する検波部と、検波したパルス信号の諸元を検出する諸元検出部と、受信信号の周波数変移及びその他の諸元をライブラリに保存するデータベース部と、波形記録部に記録された波形データを信号立上がり時の周波数変移によってグループ分けし、データベース部に格納されているライブラリデータと照合する統合処理部とを具備するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、測定対象信号の立上がり波形をリアルタイムに記録し、信号立上がりの周波数変移を計測し、グループ分けして、グループ分けした受信信号を周波数変移のデータベースと比較し、電波発信元の個体識別を行うことができるので、電波発信装置の個体識別を精度よく行うことができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
実施例1.
以下にこの発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明の実施例1に係る個体識別装置の構成図である。1は、無線機、レーダ等の個体識別の対象となる電波発信装置である。2は、個体識別装置の受信部であり、電波線発信装置1から発信され到来した電波信号を受信する。3は、波形記録部であり、受信された電波信号波形の立上り部分における受信機の帯域全体にわたる周波数変移を、リアルタイムに一時記録する機能を有する。
【0009】
一方、受信された電波信号の一部は検波部5で検波される。諸元検出部6は、この検波信号から、受信信号のPRI、パルス幅等のパラメータを検出する。統合処理部4は、波形記録部3に記録された波形データのグループ化と標準波形データの作成を行う。この標準波形データは、諸元検出部6が検出した各種信号諸元と総合され、データベース部9に電波信号のライブラリとして作成・記録される。指示制御部8は、本個体識別装置の操作員が各種の操作や装置に対するパラメータの設定を行うキーボード、マウス、タッチコントロールディスプレイ等である。表示部7には、本個体識別装置による分析結果や各種の設定等の諸情報が表示される。
【0010】
次に、本発明のポイントである統合処理の動作について説明する。まず、識別時の比較基準となる標準周波数変動波形の作成・登録について説明する。統合処理部4は、波形記録部3に記録された受信信号の波形データを、信号立上がり時の周波数変移の差に基づいてグループ分けする。図2は波形記録部3に保存された立上がり波形の周波数変動を示す特性図の一例であり、横軸が時間、縦軸が周波数を示す。この例の場合、統合処理部4は、波形データを、波形データAと波形データBの2グループ(10、11)に分類する。
【0011】
また、統合処理部4は、同じグループ内の信号に対し平均化処理または積分処理を行い、グループの標準波形データを作成する。この処理によって微小な周波数変動が除去され、立上がり波形の周波数変移の特徴点を強調することができる。図3は波形記録部3に記録された立上がり波形を、統合処理部4で類似するグループA、Bに分類後、それぞれのグループの信号を平均化した標準周波数変動波形の特性図である。また、統合処理部4は、作成された各グループの標準波形データ、対応する同グループの個別波形データ、及び諸元検出部6で検出した信号諸元(周波数、PRI、パルス幅、走査パターン等)をデータベース部9のライブラリに保存する。
【0012】
次に識別時の動作について説明する。統合処理部4は、識別動作時に受信された受信信号から作成された波形データとあらかじめ作成・登録されたライブラリ内の標準波形データとを比較する。時間対周波数変移のデータパターン及びその他の信号諸元を総合して比較し、2つのデータが同一の電波発信装置からの発信信号か否かを判定する。図4は、測定した波形とライブラリに保存された基準となる既知の標準波形との比較を説明する特性図である。12は、あらかじめ作成・登録されたライブラリ内のグループAの標準波形データ、13は、あらかじめ作成・登録されたライブラリ内のグループBの標準波形データである。14、15は、それぞれ識別動作時に受信された受信信号から作成された2つのグループC、Dの波形データである。14のグループCの波形データと12のライブラリ内のグループAの標準波形データとは波形が類似しており、同一の装置から送信された電波と判定される。同様に、15のグループDの波形データと13のライブラリ内のグループCの標準波形データとは波形が類似しており、同一の装置から送信された電波と判定される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施例1による個体識別装置の構成図である。
【図2】波形記録部に記録された立上がり波形の周波数変動の特性図である。
【図3】波形記録部に記録された立上がり波形を類似するグループ毎に平均化した標準周波数変動波形の特性図である。
【図4】測定した波形とあらかじめライブラリに保存された既知の標準波形とを比較することを説明する特性図である。
【符号の説明】
【0014】
1 個体識別対象である電波発信装置、
2 受信部、
3 波形記録部、
4 統合処理部
5 検波部、
6 諸元検出部、
7 表示部、
8 指示制御部、
9 データベース部、
10 電波発信装置から到来するグループAの電波信号、
11 電波発信装置から到来するグループBの電波信号、
12 グループAの標準周波数変動波形、
13 グループBの標準周波数変動波形、
14 識別時に測定されたグループCの周波数変動波形、
15 識別時に測定されたグループDの周波数変動波形。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
受信した電波信号を用いてその発信元を識別する電波発信装置の個体識別装置において、受信した電波信号の立上がり波形をリアルタイムに記録する波形記録部と、受信した信号を検波する検波部と、検波したパルス信号の諸元を検出する諸元検出部と、受信信号の周波数変移及びその他の諸元をライブラリに保存するデータベース部と、上記波形記録部に記録された波形データを信号立上がり時の周波数変移によってグループ分けするとともに、上記データベース部に格納されているライブラリデータと照合する統合処理部とを備えたことを特徴とする電波発信装置の個体識別装置。
【請求項2】
上記統合処理部は、信号立ち上がりの周波数変移を計測しグループ分けする機能を持つ請求項1に記載の電波発信装置の個体識別装置。
【請求項3】
上記統合処理部は、グループ分けした受信信号を、周波数変移のデータベースと比較し、個体識別のパラメータの一つとする請求項2に記載の電波発信装置の個体識別装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−258737(P2008−258737A)
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−96374(P2007−96374)
【出願日】平成19年4月2日(2007.4.2)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】