電流制御装置および通信システム
【課題】電源落ちが発生した端末器の消費電流分を補完することにより、電流信号による通信の信頼性を向上させる。
【解決手段】センタ装置が伝送線を介して複数台の端末器2の電源回路12に電力を供給することにより、センタ装置から伝送線には基本電流となる電流が流れる。端末器2は、電流制御装置を構成する検知部13および電流補完部14を備えている。検知部13は、伝送線上に電流信号が生じたときに伝送線上で生じる電圧降下により、伝送線に接続されているいずれかの端末器2の電源回路12への供給電力が不足し当該端末器2の動作が停止する電源落ちの発生の有無を検知する。電流補完部14は、電源落ちに伴う基本電流の低下分の少なくとも一部を補うダミー電流を流すダミー負荷を具備し、検知部13で電源落ちの発生が検知された場合に伝送線にダミー負荷を接続する。
【解決手段】センタ装置が伝送線を介して複数台の端末器2の電源回路12に電力を供給することにより、センタ装置から伝送線には基本電流となる電流が流れる。端末器2は、電流制御装置を構成する検知部13および電流補完部14を備えている。検知部13は、伝送線上に電流信号が生じたときに伝送線上で生じる電圧降下により、伝送線に接続されているいずれかの端末器2の電源回路12への供給電力が不足し当該端末器2の動作が停止する電源落ちの発生の有無を検知する。電流補完部14は、電源落ちに伴う基本電流の低下分の少なくとも一部を補うダミー電流を流すダミー負荷を具備し、検知部13で電源落ちの発生が検知された場合に伝送線にダミー負荷を接続する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センタ装置に伝送線を介して複数台の端末器が接続された通信システムに用いられる電流制御装置および通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、センタ装置と、センタ装置に伝送線を介して接続される複数台の端末器とを備え、センタ装置と各端末器との間で通信が行われる通信システムが提供されている。
【0003】
この種の通信システムとしては、センタ装置と複数台の端末器とが2線式の伝送線で接続され、時分割多重伝送方式によってセンタ装置と各端末器との通信を実現するシステム(負荷制御システム)が知られている(たとえば特許文献1参照)。
【0004】
この通信システムでは、センタ装置から各端末器へデータを伝送する際には所定振幅の伝送信号(電圧パルス信号)が使用され、各端末器からセンタ装置へデータを伝送する際には電流の大きさを変化させてなる返信信号(電流パルス信号)が使用される。
【0005】
特許文献1記載の通信システムにおける端末器は、伝送線に対して接続されたダイオードブリッジを含む電源回路を有し、このダイオードブリッジによって伝送線から供給される伝送信号を整流し、マイコンの動作用の電力を生成している。
【0006】
さらに、端末器は、返信トランジスタと抵抗との直列回路を有しており、この直流回路にダイオードブリッジで整流された直流電圧を印加した状態で、返信トランジスタをオンオフさせる。これにより、伝送線から端末器に流れ込む電流の大きさが変化し、端末器は、電流信号からなる返信信号を伝送線上に生じさせて、返信信号をセンタ装置に返信することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−110222号公報(第0014−0018段落)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、上記構成の端末器を用いた通信システムでは、伝送線のインピーダンスに起因して、伝送信号には伝送線を流れる電流の大きさに応じた電圧降下(電圧ドロップ)が生じる。ここで、いずれかの端末器が返信信号を返信する期間には、定常時に比べて、伝送線を流れる電流が返信信号の分だけ大きくなって降下電圧が大きくなるので、伝送信号から十分な動作用の電圧を得られずに端末器が不動作となる電源落ちが発生する場合がある。
【0009】
このような電源落ちが発生した場合、センタ装置から伝送線に接続されている複数台の端末器に供給される電流の合計は、電源落ちが発生していない定常時に比べて、電源落ちが発生した端末器の消費電流分だけ低下する。そのため、センタ装置からすれば、伝送線に送出する総電流が定常時に比べて低下することになり、電流信号からなる返信信号を正常に受信できなくなる可能性がある。
【0010】
本発明は上記事由に鑑みて為されており、電源落ちが発生した端末器の消費電流分を補完することにより、電流信号による通信の信頼性を向上させることができる電流制御装置および通信システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の電流制御装置は、センタ装置に伝送線を介して複数台の端末器が接続されており、センタ装置が伝送線を介して複数台の端末器の電源回路に電力を供給することによりセンタ装置から伝送線に基本電流となる電流が流れ、端末器が伝送線から流れ込む電流の大きさを変化させて基本電流に重畳される電流信号を伝送線上に生じさせることによりセンタ装置にデータを送信する通信システムに用いられ、伝送線上に電流信号が生じたときに伝送線上で生じる電圧降下により、伝送線に接続されているいずれかの端末器の電源回路への供給電力が不足し当該端末器の動作が停止する電源落ちの発生の有無を検知する検知部と、電源落ちに伴う基本電流の低下分の少なくとも一部を補うダミー電流を流すダミー負荷を具備し、検知部で電源落ちの発生が検知された場合に伝送線にダミー負荷を接続する電流補完部とを備えることを特徴とする。
【0012】
この電流制御装置において、それぞれ伝送線に接続される第1の端子と第2の端子とをさらに備え、第1の端子をセンタ装置側に接続することにより上流側とし、第2の端子を下流側とし、検知部は、第1の端子と第2の端子との間に設けられ、第1の端子と第2の端子との間に流れる電流の大きさを検出する送り電流検出部と、第2の端子に伝送線を介して接続されている端末器が電流信号を発生したタイミングで上昇する送り電流検出部の検出値の上昇量が所定の規定値を下回った場合に、第2の端子に伝送線を介して接続されている端末器で電源落ちが発生したと判断する判断部とを有することが望ましい。
【0013】
この電流制御装置において、それぞれ伝送線に接続される第1の端子と第2の端子とをさらに備え、第1の端子をセンタ装置側に接続することにより上流側とし、第2の端子を下流側とし、検知部は、第1の端子と第2の端子との間に設けられ、第1の端子と第2の端子との間に流れる電流の大きさを検出する送り電流検出部と、送り電流検出部の検出値の所定時間における低下量が所定の閾値を超えた場合に、第2の端子に伝送線を介して接続されている端末器で電源落ちが発生したと判断する判断部とを有することがより望ましい。
【0014】
この電流制御装置において、検知部および電流補完部は検知対象となる端末器に組み込まれており、検知部は、伝送線から検知対象となる端末器の電源回路に流れ込む電流の大きさを検出する入力電流検出部と、入力電流検出部の検出値が所定の基準電流値を下回った場合に、検知対象となる端末器で電源落ちが発生したと判断する判断部とを有することがより望ましい。
【0015】
この電流制御装置において、検知部および電流補完部は検知対象となる端末器に組み込まれており、検知部は、検知対象となる端末器の電源回路から出力される電圧の大きさを検出する電源検出部と、電源検出部の検出値が所定の基準電圧値を下回った場合に、検知対象となる端末器で電源落ちが発生したと判断する判断部とを有することがより望ましい。
【0016】
この電流制御装置において、検知部は、伝送線に接続され伝送線から印加される電圧の大きさを検出する印加電圧検出部と、印加電圧検出部の検出値が所定の正常値を下回った場合に、端末器で電源落ちが発生したと判断する判断部とを有することがより望ましい。
【0017】
本発明の通信システムは、電流制御装置と、センタ装置と、伝送線を介してセンタ装置に接続された複数台の端末器とを備え、端末器に接続されている機器の制御と監視との少なくとも一方を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、電流補完部が、検知部で電源落ちの発生が検知された場合に伝送線にダミー負荷を接続しダミー電流を流すので、電源落ちが発生した端末器の消費電流分を補完することにより、電流信号による通信の信頼性を向上させることができるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】実施形態1の電流制御装置が組み込まれた端末器の構成を示すブロック図である。
【図2】同上の端末器が用いられる通信システムのシステム構成図である。
【図3】同上で用いる信号の信号形式を表す説明図である。
【図4】同上の電流補完部の構成を示す概略回路図である。
【図5】同上の送り電流検出部の動作を示す説明図である。
【図6】同上の判断部の構成を示す概略回路図である。
【図7】同上の検知部の動作を示すフローチャートである。
【図8】実施形態2の電流制御装置が組み込まれた端末器の構成を示すブロック図である。
【図9】同上の判断部の構成を示す概略回路図である。
【図10】実施形態3の電流制御装置が組み込まれた端末器の構成を示すブロック図である。
【図11】実施形態4の電流制御装置が組み込まれた端末器の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(実施形態1)
本実施形態では、図2に示すように、センタ装置1と、センタ装置1に対して接続された複数台の端末器201,202,・・・(以下、各々を特に区別しないときには単に「端末器2」という)とを備えた通信システム10に用いる電流制御装置について説明する。つまり、端末器2は、1台のセンタ装置1に対して伝送線3を介して複数台接続され、センタ装置1と共に通信システム10を構成している。
【0021】
この通信システム10では、センタ装置1は、所定の電圧振幅値の電圧信号からなる伝送信号を伝送線3を介して端末器2に送出し、端末器2は、所定の電流振幅値の電流信号からなる返信信号を伝送線3を介してセンタ装置1に送信する。これにより、センタ装置1・端末器2間では双方向に信号の送受信が可能になり、センタ装置1・端末器2間でデータの授受が可能になる。
【0022】
端末器2とセンタ装置1とを接続する伝送線3は、2線式の無極性配線であって、詳しくは後述するがセンタ装置1から端末器2への電力供給を可能にするとともに、時分割多重伝送方式によってセンタ装置1と各端末器2との間での双方向の通信を可能にする。
【0023】
本実施形態では、照明器具や空調設備等の機器(図示せず)の監視・制御を行う機器制御システムを通信システム10の例として説明する。ここで、各端末器201,202,・・・は、それぞれ機器に接続されており、機器の監視を行ってセンタ装置1に通知したり、センタ装置1からの制御信号によって機器を制御したりする機能を有している。
【0024】
この通信システム10においては、端末器2は、スイッチやセンサなどの機器が接続された監視端末器と、照明器具や空調設備等の機器が接続された制御端末器との2種類に分類される。これにより、監視端末器がスイッチやセンサなどから取得する監視情報に応じて、制御端末器に接続された機器を制御することが可能となる。ここで、端末器2にはそれぞれアドレス(識別子)が予め設定され、センタ装置1では端末器(監視端末器、制御端末器)2同士のアドレスが予め対応付けて記憶されている。
【0025】
次に、上記通信システム10の基本的な動作について説明する。
【0026】
センタ装置1は、伝送線3に対して図3(a)に示すような形式の電圧信号からなる伝送信号を送信する。すなわち、伝送信号は、同期信号帯101と、信号送信帯102と、信号返信帯103とを含む複極(±24V)の時分割多重信号であり、パルス列からなるキャリアをパルス幅変調することによってデータを伝送する電圧信号である。同期信号帯101は端末器2からの割込信号を検出するための期間であり、信号送信帯102は端末器2にモード、アドレス、制御情報等のデータを伝送するための期間である。信号返信帯103は端末器2からの返信信号を受信するタイムスロットである。
【0027】
センタ装置1は、伝送信号を送出することにより、伝送線3を介して複数台の端末器2に動作用の電力を供給する。ここで、センタ装置1から端末器2へ動作用の電力が供給されることによりセンタ装置1から伝送線3に流れる電流、つまり伝送線3上の複数台の端末器2での消費電流の合計を基本電流という。
【0028】
センタ装置1は、常時は伝送信号に含まれるアドレスデータをサイクリックに変化させて端末器2に順次アクセスする常時ポーリングを行う。端末器2は、伝送線3を介して受信した伝送信号の信号送信帯102に含まれるアドレスデータがそれぞれに設定されているアドレスに一致すると、伝送信号から機器を制御するための制御情報を取り込む。
【0029】
また、センタ装置1は、端末器2が監視情報に対応して発生する割込信号を受信すると、割込信号を発生した端末器2を検索し、その端末器2にアクセスして監視情報に呼応した制御情報を返信させる割込ポーリングを行う。
【0030】
すなわち、センタ装置1は、図3(b)に示すように端末器(監視端末器)2で発生した割込信号104を伝送信号の同期信号帯101にて検出すると、モードデータを割込ポーリングモードとした伝送信号を送出する。割込信号104を発生した端末器2は、割込ポーリングモードの伝送信号のアドレスデータの上位ビットが自アドレスの上位ビットに一致していれば、伝送信号の信号返信帯103に同期して、自アドレスの下位ビットを返信データとして返信する。これによりセンタ装置1は割込信号を発生した端末器2のアドレスを取得できる。
【0031】
このとき、端末器2は、図3(b)に示すように、伝送信号の信号返信帯103に同期して電流モードの返信信号(伝送線3を適当な低インピーダンスを介して短絡することにより送出される信号)105により返信データをセンタ装置1に返信する。返信信号105は、所定の電流振幅値(たとえば400mA)のパルス列からなるキャリアをパルス幅変調することによってデータを伝送する電流信号である。つまり、端末器2は、伝送線3から流れ込む電流の大きさを変化させることにより、上述の基本電流に重畳される電流信号(返信信号)を伝送線3上に生じさせる。
【0032】
センタ装置1は、割込信号を発生した端末器2のアドレスを取得すると、この端末器2に対して制御情報の返送を要求する伝送信号を送出し、端末器2は監視情報に対応した制御情報を返信信号105によってセンタ装置1に返信する。
【0033】
制御情報を受け取ったセンタ装置1は、当該制御情報の発信元の端末器(監視端末器)2とアドレスによって予め対応付けられている端末器(制御端末器)2へ送信する制御情報を生成する。さらにセンタ装置1は制御情報を含む伝送信号を伝送線3に送出し、制御情報を受け取った端末器(制御端末器)2は制御情報に従って機器を制御する。
【0034】
ところで、本実施形態の電流制御装置は、端末器2に組み込まれて端末器2と一体化されている。電流制御装置が組み込まれた端末器2は、図1に示すように、伝送線3に接続された端末本体11と、端末本体11の動作用の電力を生成する電源回路12と、検知部13と、電流補完部14と、切替部15と、定電圧回路16とを備えている。この端末器2の構成要素うち、検知部13と電流補完部14と切替部15とが電流制御装置を構成する。
【0035】
上述した通信システム10を構成する端末器2は、全て電流制御装置が組み込まれた端末器2であってもよいし、通信システム10を構成する一部の端末器2のみ電流制御装置が組み込まれた端末器2であってもよい。通信システム10を構成する一部の端末器2のみ電流制御装置が組み込まれている場合、他の端末器2は、図1に示す端末器2から検知部13と電流補完部14と切替部15とが省略された構成とする。
【0036】
端末本体11は、CPU(Central ProcessingUnit)を主構成とする演算処理部111と、伝送信号を受信する受信部112と、返信信号を返信する通信部113と、演算処理部111に接続されたリレー回路114および監視回路115とを有している。
【0037】
受信部112は、伝送線3を介してセンタ装置1から受信した伝送信号を、適切な信号レベルに変換して演算処理部111に出力する。通信部113は、返信トランジスタ(図示せず)と抵抗(図示せず)との直列回路を有しており、この直流回路に後述する整流部121で整流された直流電圧が印加された状態で、返信トランジスタをオンオフさせることにより、返信信号を生成する。演算処理部111は、返信トランジスタのオンオフ制御を行う。
【0038】
リレー回路114は、照明器具や空調設備等の機器が接続される制御出力端子T3に接続され、演算処理部111がセンタ装置1から受け取った制御情報に従ってリレーのオンオフを行うことにより機器を制御する。監視回路115は、スイッチやセンサなどが接続される監視入力端子T4に接続され、スイッチやセンサなどから取得した監視情報を演算処理部111に出力する。つまり、演算処理部111は、センタ装置1からの伝送信号により、必要に応じてリレー回路114を制御して機器に制御出力を行うとともに、監視回路115からの入力により、必要に応じてセンタ装置1へ返信信号を送信する。
【0039】
電源回路12は、伝送線3に対して接続されたダイオードブリッジからなる整流部121と、容量素子を用いて整流部121の出力を平滑化する平滑部122とを有している。すなわち、電源回路12は、伝送線3から供給される伝送信号を整流部121にて全波整流し、さらに平滑部122にて平滑することにより、端末本体11の動作用の電力を生成する。
【0040】
定電圧回路16は、電源回路12の出力に接続されており、電源回路12の出力電圧を定電圧化して端末本体11の演算処理部111や監視回路115等に出力する。これにより、端末本体11は、センタ装置1からの伝送信号によって、動作に必要な電力が供給されることになる。
【0041】
ここにおいて、上記構成の端末器2を用いた通信システム10では、伝送線3のインピーダンスに起因して、伝送信号には伝送線3を流れる電流の大きさに応じた電圧降下(電圧ドロップ)が生じる。特に、伝送信号の信号返信帯103においていずれかの端末器2がセンタ装置1に返信信号を返信したときには、定常時に比べて、伝送線3を流れる電流が大きくなって降下電圧が大きくなる。そのため、信号返信帯103において伝送線3上に返信信号が生じたときには、いずれかの端末器2において電源回路12への供給電力が不足し、端末本体11の動作が少なくとも信号返信帯103の間に亘って停止する電源落ちが発生する場合がある。
【0042】
このような電源落ちが発生した場合、センタ装置1から伝送線3に接続されている複数台の端末器2に供給される電流の合計(基本電流)は、電源落ちが発生していない定常時に比べて、電源落ちが発生した端末器2の消費電流分だけ低下する。そのため、センタ装置1からすれば、伝送線3に送出する総電流が定常時に比べて低下することになり、電流信号からなる返信信号を正常に受信できなくなる可能性がある(図5(b)参照)。
【0043】
そこで、図1の端末器2は、電源落ちに伴う基本電流の低下分(つまり、電源落ちが発生した端末器2の消費電流分)の少なくとも一部を補完するために、電流制御装置としての機能(検知部13および電流補完部14)を備えている。
【0044】
検知部13は、自端末も含めて、通信システム10内の少なくとも1台の端末器2について、上述したような電源落ちの発生の有無を検知する。
【0045】
電流補完部14は、図4に示すように引込トランジスタ141と抵抗142との直列回路を有しており、この直列回路に整流部121の出力電圧が印加された状態で、引込トランジスタ141をオンさせることにより伝送線3から電流を引き込む。つまり、引込トランジスタ141がオンすると、ダミー負荷としての抵抗142が伝送線3に接続され、伝送線3から引き込まれた電流(以下、「ダミー電流」という)が引込トランジスタ141および抵抗142に流れ、消費されることになる。
【0046】
引込トランジスタ141は、制御端子(ベース端子)が検知部13の出力に接続されている。これにより、電流補完部14は、検知部13にて電源落ちの発生が検知された場合に、電源落ちに伴う基本電流の低下分の少なくとも一部を流すダミー負荷を伝送線3に接続して、ダミー電流を流すことにより基本電流の低下分の少なくとも一部を補完する。
【0047】
要するに、検知部13にて電源落ちの発生を検知すると、電流補完部14は、電源落ちが発生した端末器2の消費電流の代わりにダミー電流を流すことにより、センタ装置1から伝送線3上に供給される電流の低下分の少なくとも一部を補完する。ここで、ダミー電流の大きさは、電流補完部14の抵抗142の抵抗値によって調節される。
【0048】
次に、本実施形態の電流制御装置における検知部13の具体的な構成について説明する。
【0049】
本実施形態では、端末本体11は、それぞれ伝送線3に接続され伝送信号に関して上流側になる第1の端子T1と、下流側になる第2の端子T2とを有している。つまり、第1の端子T1は伝送線3を介してセンタ装置1に接続され、第2の端子T2は伝送線3を介して他の端末器2を後段に接続するための送り端子として設けられている。ここで、第1の端子T1と第2の端子T2とは端末器2内で電気的に接続されており、第1の端子T1に接続された伝送線3と第2の端子T2に接続された伝送線3とが電気的に接続される。
【0050】
検知部13は、第1の端子T1と第2の端子T2との間に流れる電流(以下、「送り電流」という)の大きさを検出する送り電流検出部131と、送り電流検出部131の検出値から電源落ちの発生の有無を判断する判断部132とを有している。
【0051】
送り電流検出部131は、第1の端子T1と第2の端子T2との間に設けられ、送り電流の大きさに応じた電圧を出力する電流電圧変換器からなる。ここでは、第1の端子T1と第2の端子T2との間に挿入された抵抗素子が送り電流検出部131として用いられ、抵抗素子の両端電圧が送り電流検出部131の検出値として判断部132に入力される。ただし、送り電流検出部131は、この構成に限らず、たとえばカレントトランス等を用いて構成されていてもよい。
【0052】
判断部132は、第2の端子T2に伝送線3を介して接続されている他の端末器2の端末本体11が返信信号を返信したタイミングで上昇する送り電流検出部131の検出値の上昇量が所定の規定値を下回った場合に、電源落ちが発生したと判断する。
【0053】
すなわち、第2の端子T2に伝送線3を介して接続されている他の端末器2、つまり伝送線3上において自端末よりも下流側の端末器2がセンタ装置1に返信信号を返信すると、図5(a)に示すように送り電流検出部131の検出値は返信信号の分だけ上昇する。なお、図5において、縦軸が検出値、横軸が時間を示し、送り電流検出部131の検出値のうち返信信号に相当する分を除いた部分、つまり基本電流に相当する部分は斜線部分で表されている。
【0054】
このとき、送り電流検出部131の検出値の上昇量は、本来ならば返信信号の電流振幅値(たとえば400mA)に対応する規定値以上となるが、図5(b)に示すようにいずれかの端末器2で電源落ちが発生した場合には規定値を下回ることになる。そのため、判断部132は、自端末よりも下流側の端末器2が返信信号を返信したときの送り電流検出部131の検出値の上昇量に基づいて、電源落ちが発生したか否かを判断することができる。
【0055】
具体的には、判断部132は、図6に示すように、一方の入力端(図中「+」)に送り電流検出部131の検出値が入力される比較器133と、送り電流検出部131の検出値が入力される遅延回路134とを有している。遅延回路134は、サンプルホールド回路から構成されており、送り電流検出部131の検出値を所定時間遅延させて、比較器133の他方の入力端(図中「−」)に入力する。
【0056】
比較器133は、下流側の端末器2が返信信号を返信した時点での送り電流検出部131の検出値V2と、検出値V2の所定時間前の時点での送り電流検出部131の検出値V1(遅延回路134の出力)とを比較する。ここでは、比較器133は、規定値を決めるオフセット電圧の分だけ検出値V1が底上げされており、送り電流の上昇量に相当する両検出値V2,V1の差分(V2−V1)が規定値を下回った場合に、電源落ちが発生したと判断する(図5(b)参照)。一方、比較器133は、送り電流の上昇量に相当する両検出値V2,V1の差分(V2−V1)が規定値以上であれば、電源落ちが発生していないと判断する(図5(a)参照)。
【0057】
比較器133は、出力端子が検知部13の出力として引込トランジスタ141の制御端子に接続されており、電源落ちが発生したと判断すると、出力をH(ハイ)レベルにすることで引込トランジスタ141をオンする。
【0058】
なお、比較器133は、両検出値V1,V2の差分に基づいて、下流側の端末器2が返信信号を返信したタイミングを判断する。つまり、比較器133は、送り電流検出部131の検出値V2とその所定時間前の検出値V1との差分(V2−V1)が所定値(<規定値)を超えると、下流側の端末器2が返信信号を返信したと判断する。
【0059】
要するに、本実施形態の検知部13は、送り電流の上昇量に基づいて、第2の端子T2に伝送線3を介して接続されている他の端末器2、つまり伝送線3上でセンタ装置1から自端末より離れた端末器2で発生した電源落ちを検知する。言い換えれば、検知部13は、伝送線3上において伝送信号に関して自端末よりも下流側の範囲で生じた端末器2の電源落ちを検知する。
【0060】
また、通信システム10内の複数台の端末器2で同時に電流制御装置(電流補完部14)が動作することがないように、図1の端末器2には、検知部13での電源落ちの検知動作の有効・無効を切り替える切替部15が設けられている。具体的には、判断部132は、図6に示すように、比較器133に定電圧回路16の出力電圧が印加されることにより比較器133の動作用の電力を得ており、この電力供給経路上にスイッチ要素135を有している。切替部15は、検知部13に対して切替信号を出力し、切替信号にてスイッチ要素135をオンオフ制御することにより、検知部13の検知動作の有効・無効を切り替える。なお、切替部15は、検知部13の検知動作の有効・無効をユーザが手動で切り替えられるように、たとえばディップスイッチなどから構成されている。
【0061】
以上説明した本実施形態の検知部13の動作について、図7のフローチャートを参照して説明する。なお、図7に示す動作は、自端末よりも下流側の端末器2が返信信号を返信したと検知部13が判断した場合の動作である。
【0062】
検知部13は、自端末よりも下流側の端末器2が返信信号を返信したことを検知すると、まず、検知動作の有効・無効を確認する(S1)。検知部13の検知動作が有効になっていれば(S1:Y)、比較部133にて両検出値V2,V1を比較する(S2)。
【0063】
このとき、両検出値V2,V1の差分(V2−V1)が規定値を下回っていれば(S2:Y)、検知部13は引込トランジスタ141をオンすることにより(S3)、電流補完部14が作動してダミー電流を流す。これにより、センタ装置1から伝送線3上に供給される電流の低下分の少なくとも一部は補完され、センタ装置1において返信信号の受信が可能になる。
【0064】
一方、両検出値V2,V1の差分(V2−V1)が規定値以上であれば(S2:N)、検知部13は引込トランジスタ141をオフする(S4)。なお、検知部13の検知動作が無効になっている場合にも(S1:N)、引込トランジスタ141はオフされる(S4)。
【0065】
ここにおいて、電流補完部14がダミー電流を流す動作は、返信信号が返信される信号返信帯103の間に亘って継続すればよく、信号返信帯103の終了後にまで継続する必要はない。そこで、検知部13は、引込トランジスタ141を一旦オンすると、信号返信帯103の時間長さに相当する継続時間に亘って引込トランジスタ141をオンし続け、継続時間が経過した時点で引込トランジスタ141をオフするように構成される。継続時間はタイマなどを用いて計時される。なお、信号返信帯103が終了すれば、返信信号の停止に伴い伝送線3を流れる電流が小さくなって降下電圧が小さくなるため、電源落ちにより端末本体11の動作が一旦停止した端末器2も、電源落ちから復旧し端末本体11の動作を再開する。
【0066】
以上説明した本実施形態の構成によれば、端末器2が返信信号を返信することにより電源落ちが発生しても、検知部13が電源落ちの発生を検知して電流補完部14を作動させ、センタ装置1から伝送線3上にダミー電流が流れることになる。このダミー電流は、電源落ちが発生した端末器2の消費電流分の少なくとも一部を補完するので、電源落ちの発生時でもセンタ装置1において返信信号を正しく受信可能になり、電流信号からなる返信信号による通信の信頼性が向上する。
【0067】
さらに、上記構成では、検知部13は第2の端子T2に伝送線3を介して接続されている自端末より下流側の端末器2が返信信号を返信したことに伴い、自端末よりも下流側の端末器2で生じた電源落ちを検知している。要するに、本実施形態の電流制御装置が組み込まれた端末器2は、伝送線3上において伝送信号に関して自端末よりも下流側の範囲を対象として、返信信号の返信に伴う電源落ちの発生を検知する。したがって、通信システム10全体として電源落ちに対する対策を万全にするためには、本実施形態の電流制御装置が組み込まれた端末器2はセンタ装置1に伝送線3にて直接接続され、他の端末器2が全て自端末よりも下流側に位置することが望ましい。
【0068】
また、比較器133を両検出値V2,V1の差分を出力する差動増幅器とし、引込トランジスタ141を差動増幅器の出力に応じたダミー電流を流すトランジスタとして使用することにより、ダミー電流の大きさが変化する構成としてもよい。つまり、検知部13は、電源落ちが発生しているか否かの2値を出力するのではなく、電源落ちが発生している場合には、電源落ちに伴う送り電流の低下量が反映されたアナログ値を出力することにより、ダミー電流の大きさを調節する。この構成では、電源落ちに伴う送り電流の低下量にダミー電流の大きさを合わせることにより、ダミー電流によって、電源落ちが発生した端末器の消費電流分を精度よく補完することができる。
【0069】
ところで、検知部13の判断部132は図6に示すような構成に限らず、たとえば演算処理部111に判断部としての機能が設けられていてもよい。この場合、演算処理部111は、送り電流検出部131の検出値をデジタル値に変換するA/D変換部(図示せず)と、A/D変換部の出力値を一時的に記憶するメモリ部(図示せず)とを有する。判断部は、A/D変換部の出力を受けて、下流側の端末器2が返信信号を返信するより所定時間前の時点での検出値V1をメモリ部に記憶し、下流側の端末器2が返信信号を返信した時点での検出値V2をメモリ部内の検出値V1と比較する。
【0070】
なお、この構成では、切替部15の出力は演算処理部111に入力され、判断部は切替部15からの入力に応じて電源落ちの検知動作の有効・無効が切り替えられる。
【0071】
また、本実施形態の電流制御装置の変形例として、判断部132は、送り電流検出部131の検出値の所定時間における低下量が所定の閾値を超えた場合に、自端末よりも下流側の他の端末器2で電源落ちが発生したと判断してもよい。
【0072】
すなわち、この変形例では、比較器133は、入力(「+」と「−」)の関係を図6の状態とは逆にして、送り電流検出部131の所定時間前の検出値V1(遅延回路134の出力)と、送り電流検出部131の現在の検出値V3とを比較する。この場合、送り電流検出部131で検出される電流値に返信信号の成分が含まれていると、電源落ちの発生を精度よく検知できない可能性があるので、送り電流検出部131には返信信号の成分を除外するフィルタ回路が設けられている。
【0073】
ここでは、比較器133は、閾値を決めるオフセット電圧の分だけ検出値V3が底上げされており、送り電流の所定時間での低下量に相当する両検出値V1,V3の差分(V1−V3)が閾値を超えた場合に、電源落ちが発生したと判断する(図5(b)参照)。一方、比較器133は、送り電流の低下量に相当する両検出値V1,V3の差分(V1−V3)が閾値以下であれば、電源落ちが発生していないと判断する(図5(a)参照)。
【0074】
要するに、本実施形態の検知部13は、送り電流の低下量に基づいて、第2の端子T2に伝送線3を介して接続されている他の端末器2、つまり伝送線3上でセンタ装置1から自端末より離れた端末器2で発生した電源落ちを検知する。言い換えれば、検知部13は、伝送線3上において自端末よりも伝送信号に関して下流側の範囲で生じた端末器2の電源落ちを検知する。
【0075】
なお、両検出値V1,V3の差分と比較される閾値は、端末器2の正常な動作に伴う送り電流検出部131の検出値の変動幅よりも大きく、且つ電源落ちに伴う送り電流検出部131の検出値の変動幅よりも小さく設定されている。これにより、検知部13は、端末器2の正常な動作に伴う端末器2の消費電流の変動によって生じる送り電流の変動を、電源落ちによる送り電流の低下と区別することができる。
【0076】
この変形例では、自端末よりも下流側の端末器2が返信信号を返信するタイミングに関係なく、検知部13は両検出値V1,V3を常時比較し、電源落ちの発生の有無を検知する。
【0077】
また、センタ装置1は、伝送線3を介して複数台の端末器2の電源回路12に電力を供給するとともに、端末器2から電流信号によりデータが送信される構成であればよく、上記実施形態のように伝送信号を送出する構成は必須ではない。すなわち、センタ装置1は電源装置として伝送線3を介して複数台の端末器2の電源回路12に直流電圧を印加する構成であってもよい。
【0078】
(実施形態2)
本実施形態の電流制御装置は、検知部13の構成が実施形態1の電流制御装置とは相違する。なお、実施形態1と共通する構成については実施形態1と同一の符号を付し説明を省略する。
【0079】
本実施形態では、検知部13は、図8に示すように伝送線3から電源回路12に流れ込む電流(以下、「入力電流」という)の大きさを検出する入力電流検出部136と、入力電流検出部136の検出値から電源落ちの発生の有無を判断する判断部137とを有している。
【0080】
入力電流検出部136は、電源回路12における整流部121と平滑部122との間に設けられ、入力電流の大きさに応じた電圧を出力する電流電圧変換器からなる。ここでは、整流部121と平滑部122との間に挿入された抵抗素子が入力電流検出部136として用いられ、抵抗素子の両端電圧が入力電流検出部136の検出値として判断部137に入力される。ただし、入力電流検出部136は、この構成に限らず、たとえばカレントトランス等を用いて構成されていてもよい。
【0081】
判断部137は、入力電流検出部136の検出値が所定の基準電流値を下回った場合に、自端末における端末本体11で電源落ちが発生したと判断する。すなわち、自端末の端末本体11で電源落ちが発生すると、電源回路12での消費電流が低下して、入力電流検出部136で検出される入力電流が低下するので、判断部137は入力電流の低下量に基づいて、電源落ちが発生したか否かを判断することができる。
【0082】
具体的には、判断部137は、図9に示すように、一方の入力端(図中「+」)には基準電流値に相当する第1の基準電圧が印加され、他方の入力端(図中「−」)には入力電流検出部136の検出値が入力される比較器138を有している。第1の基準電圧は、電源落ちが発生していない定常時の入力電流検出部136の検出値よりも小さく、且つ電流制御装置が動作可能な範囲に設定されている。
【0083】
比較器138は、第1の基準電圧と入力電流検出部136の検出値とを比較し、入力電流検出部136の検出値が第1の基準電圧を下回った場合に、電源落ちが発生したと判断する。一方、比較器138は、入力電流検出部136の検出値が第1の基準電圧以上であれば、電源落ちが発生していないと判断する。
【0084】
なお、比較器138における電流補完部14との接続関係並びに定電圧回路16、スイッチ要素135、切替部15との接続関係に関しては、実施形態1で説明した比較器133と同様である。したがって、本実施形態の検知部13の動作は、図7のフローチャートに示した実施形態1の検知部13の動作とは、ステップS2での比較対象のみが異なることになる。
【0085】
以上説明した本実施形態の構成によれば、検知部13は伝送線3に接続されている全端末器2のいずれかが返信信号を返信したことに伴い、自端末で生じた端末本体11の電源落ちを検知している。要するに、本実施形態の電流制御装置が組み込まれた端末器2は、伝送線3上において自端末より下流側の端末器2に限らずいずれの端末器2が返信信号を返信した場合でも、自端末の電源落ちの発生を検知することができる。
【0086】
その他の構成および機能は実施形態1と同様である。
【0087】
(実施形態3)
本実施形態の電流制御装置は、検知部13の構成が実施形態1の電流制御装置とは相違する。なお、実施形態1と共通する構成については実施形態1と同一の符号を付し説明を省略する。
【0088】
本実施形態では、検知部13は、図10に示すように電源回路12から出力される電圧(以下、「電源電圧」という)の大きさを検出する電源検出部(図示せず)と、電源検出部の検出値から電源落ちの発生の有無を判断する判断部139とを有している。
【0089】
電源検出部は、電源回路12における平滑部122の出力電圧(定電圧回路16の入力電圧)を検出値として判断部139に入力する。
【0090】
判断部139は、電源検出部の検出値が所定の基準電圧値を下回った場合に、自端末における端末本体11で電源落ちが発生したと判断する。すなわち、自端末の端末本体11で電源落ちが発生すると、電源回路12での消費電流が低下して、電源検出部で検出される電源電圧が低下するので、判断部139は電源電圧の低下量に基づいて、電源落ちが発生したか否かを判断することができる。
【0091】
具体的には、判断部139は、実施形態2で説明した図9の構成と同様に比較器138を有している。ただし、比較器138の一方の入力端(図中「+」)には基準電圧値に相当する第2の基準電圧が印加され、他方の入力端(図中「−」)には電源検出部の検出値が入力される。第2の基準電圧は、電源落ちが発生していない定常時に電源回路12が出力する電源電圧よりも小さく、且つ電流制御装置が動作可能な範囲に設定されている。
【0092】
比較器138は、第2の基準電圧と電源検出部の検出値とを比較し、電源検出部の検出値が第2の基準電圧を下回った場合に、電源落ちが発生したと判断する。一方、比較器138は、電源検出部の検出値が第2の基準電圧以上であれば、電源落ちが発生していないと判断する。
【0093】
なお、比較器138における電流補完部14との接続関係並びに定電圧回路16、スイッチ要素135、切替部15との接続関係に関しては、実施形態1で説明した比較器133と同様である。したがって、本実施形態の検知部13の動作は、図7のフローチャートに示した実施形態1の検知部13の動作とは、ステップS2での比較対象のみが異なることになる。
【0094】
以上説明した本実施形態の構成によれば、検知部13は伝送線3に接続されている全端末器2のいずれかが返信信号を返信したことに伴い、自端末で生じた端末本体11の電源落ちを検知している。要するに、本実施形態の電流制御装置が組み込まれた端末器2は、伝送線3上において自端末より下流側の端末器2に限らずいずれの端末器2が返信信号を返信した場合でも、自端末の電源落ちの発生を検知することができる。
【0095】
その他の構成および機能は実施形態1と同様である。
【0096】
(実施形態4)
本実施形態の電流制御装置は、検知部13の構成が実施形態1の電流制御装置とは相違する。なお、実施形態1と共通する構成については実施形態1と同一の符号を付し説明を省略する。
【0097】
本実施形態の検知部13は、図11に示すように伝送線13から電源回路12に入力される電圧(以下、「印加電圧」という)の大きさを検出する印加電圧検出部(図示せず)と、印加電圧検出部の検出値から電源落ちの発生の有無を判断する判断部130とを有している。
【0098】
印加電圧検出部は、第1の端子T1に印加されている電圧、つまり第1の端子T1に接続されている整流部121の入力電圧を検出値として判断部130に入力する。
【0099】
判断部130は、印加電圧検出部の検出値が所定の正常値を下回った場合に、伝送線3に接続されているいずれかの端末器2で電源落ちが発生したと判断する。すなわち、電源落ちが発生するときには、伝送線3上の伝送信号の電圧振幅値は小さくなり、印加電圧検出部で検出される印加電圧が低下するので、判断部130は印加電圧の低下量に基づいて、電源落ちが発生したか否かを判断することができる。
【0100】
具体的には、判断部130は、実施形態2で説明した図9の構成と同様に比較器138を有している。ただし、比較器138の一方の入力端(図中「+」)には正常値に相当する第3の基準電圧が印加され、他方の入力端(図中「−」)には印加電圧検出部の検出値が入力される。第3の基準電圧は、ここでは電源回路12における平滑部122の出力電圧(定電圧回路16の入力電圧)とする。
【0101】
また、伝送信号は複極(±24V)の電圧信号であるから、印加電圧検出部は、整流器および容量素子等を具備し、伝送信号の変動分が除去された印加電圧を検出するように構成されている。
【0102】
比較器138は、第3の基準電圧(電源回路12の出力電圧)と印加電圧検出部の検出値とを比較し、印加電圧検出部の検出値が第3の基準電圧を下回った場合に、電源落ちが発生したと判断する。すなわち、電源回路12は平滑部122を有しているので、その入力電圧(印加電圧)が低下しても出力電圧(第3の基準電圧)がすぐに低下することはなく、入力電圧の低下時には出力電圧>入力電圧という関係になる。一方、比較器138は、印加電圧検出部の検出値が第3の基準電圧以上であれば、電源落ちが発生していないと判断する。
【0103】
なお、比較器138における電流補完部14との接続関係並びに定電圧回路16、スイッチ要素135、切替部15との接続関係に関しては、実施形態1で説明した比較器133と同様である。したがって、本実施形態の検知部13の動作は、図7のフローチャートに示した実施形態1の検知部13の動作とは、ステップS2での比較対象のみが異なることになる。
【0104】
以上説明した本実施形態の構成によれば、検知部13は伝送線3に接続されている全端末器2のいずれかが返信信号を返信したことに伴い、伝送線3に接続されている全端末器2のいずれかで生じる電源落ちを検知している。要するに、本実施形態の電流制御装置が組み込まれた端末器2は、伝送線3上においていずれの端末器2が返信信号を返信した場合でも、伝送線3に接続されている全ての端末器2を対象にして電源落ちの発生を検知することができる。したがって、全ての端末器2を対象に、電源落ちが発生した端末器2の消費電流分を補完することが可能になる。
【0105】
その他の構成および機能は実施形態1と同様である。
【0106】
ところで、上記各実施形態では、電流制御装置が端末器2に組み込まれて端末器2と一体化された例を示したが、電流制御装置は端末器2とは別体であってもよい。端末器2とは別体の電流制御装置は、端末器2と同様に伝送線3に対して接続される。この場合、電流制御装置の動作用の電力は、端末器2と同様に伝送信号にてセンタ装置1から供給されてもよいし、センタ装置1とは別に設けられた電源から供給されてもよい。
【0107】
なお、実施形態2ないし実施形態4のいずれの構成においても、実施形態1で説明したように演算処理部111に判断部としての機能が設けられていてもよい。この場合、演算処理部111は、入力電流検出部、電源検出部、印加電圧検出部の検出値をデジタル値に変換するA/D変換部(図示せず)を有する。判断部は、A/D変換部の出力を受けて、各検出部の検出値をメモリ部内に予め登録されている値と比較する。
【0108】
また、実施形態2ないし実施形態4のいずれの構成においても、実施形態1で説明したように、検知部13は、電源落ちに伴う電流の低下量が反映されたアナログ値を出力することにより、ダミー電流の大きさを調節できる構成であってもよい。
【符号の説明】
【0109】
1 センタ装置
2 端末器
3 伝送線
10 通信システム
12 電源回路
13 検知部
14 電流補完部
130,132,137,139 判断部
131 送り電流検出部
136 入力電流検出部
142 抵抗(ダミー負荷)
T1 第1の端子
T2 第2の端子
【技術分野】
【0001】
本発明は、センタ装置に伝送線を介して複数台の端末器が接続された通信システムに用いられる電流制御装置および通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、センタ装置と、センタ装置に伝送線を介して接続される複数台の端末器とを備え、センタ装置と各端末器との間で通信が行われる通信システムが提供されている。
【0003】
この種の通信システムとしては、センタ装置と複数台の端末器とが2線式の伝送線で接続され、時分割多重伝送方式によってセンタ装置と各端末器との通信を実現するシステム(負荷制御システム)が知られている(たとえば特許文献1参照)。
【0004】
この通信システムでは、センタ装置から各端末器へデータを伝送する際には所定振幅の伝送信号(電圧パルス信号)が使用され、各端末器からセンタ装置へデータを伝送する際には電流の大きさを変化させてなる返信信号(電流パルス信号)が使用される。
【0005】
特許文献1記載の通信システムにおける端末器は、伝送線に対して接続されたダイオードブリッジを含む電源回路を有し、このダイオードブリッジによって伝送線から供給される伝送信号を整流し、マイコンの動作用の電力を生成している。
【0006】
さらに、端末器は、返信トランジスタと抵抗との直列回路を有しており、この直流回路にダイオードブリッジで整流された直流電圧を印加した状態で、返信トランジスタをオンオフさせる。これにより、伝送線から端末器に流れ込む電流の大きさが変化し、端末器は、電流信号からなる返信信号を伝送線上に生じさせて、返信信号をセンタ装置に返信することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−110222号公報(第0014−0018段落)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、上記構成の端末器を用いた通信システムでは、伝送線のインピーダンスに起因して、伝送信号には伝送線を流れる電流の大きさに応じた電圧降下(電圧ドロップ)が生じる。ここで、いずれかの端末器が返信信号を返信する期間には、定常時に比べて、伝送線を流れる電流が返信信号の分だけ大きくなって降下電圧が大きくなるので、伝送信号から十分な動作用の電圧を得られずに端末器が不動作となる電源落ちが発生する場合がある。
【0009】
このような電源落ちが発生した場合、センタ装置から伝送線に接続されている複数台の端末器に供給される電流の合計は、電源落ちが発生していない定常時に比べて、電源落ちが発生した端末器の消費電流分だけ低下する。そのため、センタ装置からすれば、伝送線に送出する総電流が定常時に比べて低下することになり、電流信号からなる返信信号を正常に受信できなくなる可能性がある。
【0010】
本発明は上記事由に鑑みて為されており、電源落ちが発生した端末器の消費電流分を補完することにより、電流信号による通信の信頼性を向上させることができる電流制御装置および通信システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の電流制御装置は、センタ装置に伝送線を介して複数台の端末器が接続されており、センタ装置が伝送線を介して複数台の端末器の電源回路に電力を供給することによりセンタ装置から伝送線に基本電流となる電流が流れ、端末器が伝送線から流れ込む電流の大きさを変化させて基本電流に重畳される電流信号を伝送線上に生じさせることによりセンタ装置にデータを送信する通信システムに用いられ、伝送線上に電流信号が生じたときに伝送線上で生じる電圧降下により、伝送線に接続されているいずれかの端末器の電源回路への供給電力が不足し当該端末器の動作が停止する電源落ちの発生の有無を検知する検知部と、電源落ちに伴う基本電流の低下分の少なくとも一部を補うダミー電流を流すダミー負荷を具備し、検知部で電源落ちの発生が検知された場合に伝送線にダミー負荷を接続する電流補完部とを備えることを特徴とする。
【0012】
この電流制御装置において、それぞれ伝送線に接続される第1の端子と第2の端子とをさらに備え、第1の端子をセンタ装置側に接続することにより上流側とし、第2の端子を下流側とし、検知部は、第1の端子と第2の端子との間に設けられ、第1の端子と第2の端子との間に流れる電流の大きさを検出する送り電流検出部と、第2の端子に伝送線を介して接続されている端末器が電流信号を発生したタイミングで上昇する送り電流検出部の検出値の上昇量が所定の規定値を下回った場合に、第2の端子に伝送線を介して接続されている端末器で電源落ちが発生したと判断する判断部とを有することが望ましい。
【0013】
この電流制御装置において、それぞれ伝送線に接続される第1の端子と第2の端子とをさらに備え、第1の端子をセンタ装置側に接続することにより上流側とし、第2の端子を下流側とし、検知部は、第1の端子と第2の端子との間に設けられ、第1の端子と第2の端子との間に流れる電流の大きさを検出する送り電流検出部と、送り電流検出部の検出値の所定時間における低下量が所定の閾値を超えた場合に、第2の端子に伝送線を介して接続されている端末器で電源落ちが発生したと判断する判断部とを有することがより望ましい。
【0014】
この電流制御装置において、検知部および電流補完部は検知対象となる端末器に組み込まれており、検知部は、伝送線から検知対象となる端末器の電源回路に流れ込む電流の大きさを検出する入力電流検出部と、入力電流検出部の検出値が所定の基準電流値を下回った場合に、検知対象となる端末器で電源落ちが発生したと判断する判断部とを有することがより望ましい。
【0015】
この電流制御装置において、検知部および電流補完部は検知対象となる端末器に組み込まれており、検知部は、検知対象となる端末器の電源回路から出力される電圧の大きさを検出する電源検出部と、電源検出部の検出値が所定の基準電圧値を下回った場合に、検知対象となる端末器で電源落ちが発生したと判断する判断部とを有することがより望ましい。
【0016】
この電流制御装置において、検知部は、伝送線に接続され伝送線から印加される電圧の大きさを検出する印加電圧検出部と、印加電圧検出部の検出値が所定の正常値を下回った場合に、端末器で電源落ちが発生したと判断する判断部とを有することがより望ましい。
【0017】
本発明の通信システムは、電流制御装置と、センタ装置と、伝送線を介してセンタ装置に接続された複数台の端末器とを備え、端末器に接続されている機器の制御と監視との少なくとも一方を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、電流補完部が、検知部で電源落ちの発生が検知された場合に伝送線にダミー負荷を接続しダミー電流を流すので、電源落ちが発生した端末器の消費電流分を補完することにより、電流信号による通信の信頼性を向上させることができるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】実施形態1の電流制御装置が組み込まれた端末器の構成を示すブロック図である。
【図2】同上の端末器が用いられる通信システムのシステム構成図である。
【図3】同上で用いる信号の信号形式を表す説明図である。
【図4】同上の電流補完部の構成を示す概略回路図である。
【図5】同上の送り電流検出部の動作を示す説明図である。
【図6】同上の判断部の構成を示す概略回路図である。
【図7】同上の検知部の動作を示すフローチャートである。
【図8】実施形態2の電流制御装置が組み込まれた端末器の構成を示すブロック図である。
【図9】同上の判断部の構成を示す概略回路図である。
【図10】実施形態3の電流制御装置が組み込まれた端末器の構成を示すブロック図である。
【図11】実施形態4の電流制御装置が組み込まれた端末器の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(実施形態1)
本実施形態では、図2に示すように、センタ装置1と、センタ装置1に対して接続された複数台の端末器201,202,・・・(以下、各々を特に区別しないときには単に「端末器2」という)とを備えた通信システム10に用いる電流制御装置について説明する。つまり、端末器2は、1台のセンタ装置1に対して伝送線3を介して複数台接続され、センタ装置1と共に通信システム10を構成している。
【0021】
この通信システム10では、センタ装置1は、所定の電圧振幅値の電圧信号からなる伝送信号を伝送線3を介して端末器2に送出し、端末器2は、所定の電流振幅値の電流信号からなる返信信号を伝送線3を介してセンタ装置1に送信する。これにより、センタ装置1・端末器2間では双方向に信号の送受信が可能になり、センタ装置1・端末器2間でデータの授受が可能になる。
【0022】
端末器2とセンタ装置1とを接続する伝送線3は、2線式の無極性配線であって、詳しくは後述するがセンタ装置1から端末器2への電力供給を可能にするとともに、時分割多重伝送方式によってセンタ装置1と各端末器2との間での双方向の通信を可能にする。
【0023】
本実施形態では、照明器具や空調設備等の機器(図示せず)の監視・制御を行う機器制御システムを通信システム10の例として説明する。ここで、各端末器201,202,・・・は、それぞれ機器に接続されており、機器の監視を行ってセンタ装置1に通知したり、センタ装置1からの制御信号によって機器を制御したりする機能を有している。
【0024】
この通信システム10においては、端末器2は、スイッチやセンサなどの機器が接続された監視端末器と、照明器具や空調設備等の機器が接続された制御端末器との2種類に分類される。これにより、監視端末器がスイッチやセンサなどから取得する監視情報に応じて、制御端末器に接続された機器を制御することが可能となる。ここで、端末器2にはそれぞれアドレス(識別子)が予め設定され、センタ装置1では端末器(監視端末器、制御端末器)2同士のアドレスが予め対応付けて記憶されている。
【0025】
次に、上記通信システム10の基本的な動作について説明する。
【0026】
センタ装置1は、伝送線3に対して図3(a)に示すような形式の電圧信号からなる伝送信号を送信する。すなわち、伝送信号は、同期信号帯101と、信号送信帯102と、信号返信帯103とを含む複極(±24V)の時分割多重信号であり、パルス列からなるキャリアをパルス幅変調することによってデータを伝送する電圧信号である。同期信号帯101は端末器2からの割込信号を検出するための期間であり、信号送信帯102は端末器2にモード、アドレス、制御情報等のデータを伝送するための期間である。信号返信帯103は端末器2からの返信信号を受信するタイムスロットである。
【0027】
センタ装置1は、伝送信号を送出することにより、伝送線3を介して複数台の端末器2に動作用の電力を供給する。ここで、センタ装置1から端末器2へ動作用の電力が供給されることによりセンタ装置1から伝送線3に流れる電流、つまり伝送線3上の複数台の端末器2での消費電流の合計を基本電流という。
【0028】
センタ装置1は、常時は伝送信号に含まれるアドレスデータをサイクリックに変化させて端末器2に順次アクセスする常時ポーリングを行う。端末器2は、伝送線3を介して受信した伝送信号の信号送信帯102に含まれるアドレスデータがそれぞれに設定されているアドレスに一致すると、伝送信号から機器を制御するための制御情報を取り込む。
【0029】
また、センタ装置1は、端末器2が監視情報に対応して発生する割込信号を受信すると、割込信号を発生した端末器2を検索し、その端末器2にアクセスして監視情報に呼応した制御情報を返信させる割込ポーリングを行う。
【0030】
すなわち、センタ装置1は、図3(b)に示すように端末器(監視端末器)2で発生した割込信号104を伝送信号の同期信号帯101にて検出すると、モードデータを割込ポーリングモードとした伝送信号を送出する。割込信号104を発生した端末器2は、割込ポーリングモードの伝送信号のアドレスデータの上位ビットが自アドレスの上位ビットに一致していれば、伝送信号の信号返信帯103に同期して、自アドレスの下位ビットを返信データとして返信する。これによりセンタ装置1は割込信号を発生した端末器2のアドレスを取得できる。
【0031】
このとき、端末器2は、図3(b)に示すように、伝送信号の信号返信帯103に同期して電流モードの返信信号(伝送線3を適当な低インピーダンスを介して短絡することにより送出される信号)105により返信データをセンタ装置1に返信する。返信信号105は、所定の電流振幅値(たとえば400mA)のパルス列からなるキャリアをパルス幅変調することによってデータを伝送する電流信号である。つまり、端末器2は、伝送線3から流れ込む電流の大きさを変化させることにより、上述の基本電流に重畳される電流信号(返信信号)を伝送線3上に生じさせる。
【0032】
センタ装置1は、割込信号を発生した端末器2のアドレスを取得すると、この端末器2に対して制御情報の返送を要求する伝送信号を送出し、端末器2は監視情報に対応した制御情報を返信信号105によってセンタ装置1に返信する。
【0033】
制御情報を受け取ったセンタ装置1は、当該制御情報の発信元の端末器(監視端末器)2とアドレスによって予め対応付けられている端末器(制御端末器)2へ送信する制御情報を生成する。さらにセンタ装置1は制御情報を含む伝送信号を伝送線3に送出し、制御情報を受け取った端末器(制御端末器)2は制御情報に従って機器を制御する。
【0034】
ところで、本実施形態の電流制御装置は、端末器2に組み込まれて端末器2と一体化されている。電流制御装置が組み込まれた端末器2は、図1に示すように、伝送線3に接続された端末本体11と、端末本体11の動作用の電力を生成する電源回路12と、検知部13と、電流補完部14と、切替部15と、定電圧回路16とを備えている。この端末器2の構成要素うち、検知部13と電流補完部14と切替部15とが電流制御装置を構成する。
【0035】
上述した通信システム10を構成する端末器2は、全て電流制御装置が組み込まれた端末器2であってもよいし、通信システム10を構成する一部の端末器2のみ電流制御装置が組み込まれた端末器2であってもよい。通信システム10を構成する一部の端末器2のみ電流制御装置が組み込まれている場合、他の端末器2は、図1に示す端末器2から検知部13と電流補完部14と切替部15とが省略された構成とする。
【0036】
端末本体11は、CPU(Central ProcessingUnit)を主構成とする演算処理部111と、伝送信号を受信する受信部112と、返信信号を返信する通信部113と、演算処理部111に接続されたリレー回路114および監視回路115とを有している。
【0037】
受信部112は、伝送線3を介してセンタ装置1から受信した伝送信号を、適切な信号レベルに変換して演算処理部111に出力する。通信部113は、返信トランジスタ(図示せず)と抵抗(図示せず)との直列回路を有しており、この直流回路に後述する整流部121で整流された直流電圧が印加された状態で、返信トランジスタをオンオフさせることにより、返信信号を生成する。演算処理部111は、返信トランジスタのオンオフ制御を行う。
【0038】
リレー回路114は、照明器具や空調設備等の機器が接続される制御出力端子T3に接続され、演算処理部111がセンタ装置1から受け取った制御情報に従ってリレーのオンオフを行うことにより機器を制御する。監視回路115は、スイッチやセンサなどが接続される監視入力端子T4に接続され、スイッチやセンサなどから取得した監視情報を演算処理部111に出力する。つまり、演算処理部111は、センタ装置1からの伝送信号により、必要に応じてリレー回路114を制御して機器に制御出力を行うとともに、監視回路115からの入力により、必要に応じてセンタ装置1へ返信信号を送信する。
【0039】
電源回路12は、伝送線3に対して接続されたダイオードブリッジからなる整流部121と、容量素子を用いて整流部121の出力を平滑化する平滑部122とを有している。すなわち、電源回路12は、伝送線3から供給される伝送信号を整流部121にて全波整流し、さらに平滑部122にて平滑することにより、端末本体11の動作用の電力を生成する。
【0040】
定電圧回路16は、電源回路12の出力に接続されており、電源回路12の出力電圧を定電圧化して端末本体11の演算処理部111や監視回路115等に出力する。これにより、端末本体11は、センタ装置1からの伝送信号によって、動作に必要な電力が供給されることになる。
【0041】
ここにおいて、上記構成の端末器2を用いた通信システム10では、伝送線3のインピーダンスに起因して、伝送信号には伝送線3を流れる電流の大きさに応じた電圧降下(電圧ドロップ)が生じる。特に、伝送信号の信号返信帯103においていずれかの端末器2がセンタ装置1に返信信号を返信したときには、定常時に比べて、伝送線3を流れる電流が大きくなって降下電圧が大きくなる。そのため、信号返信帯103において伝送線3上に返信信号が生じたときには、いずれかの端末器2において電源回路12への供給電力が不足し、端末本体11の動作が少なくとも信号返信帯103の間に亘って停止する電源落ちが発生する場合がある。
【0042】
このような電源落ちが発生した場合、センタ装置1から伝送線3に接続されている複数台の端末器2に供給される電流の合計(基本電流)は、電源落ちが発生していない定常時に比べて、電源落ちが発生した端末器2の消費電流分だけ低下する。そのため、センタ装置1からすれば、伝送線3に送出する総電流が定常時に比べて低下することになり、電流信号からなる返信信号を正常に受信できなくなる可能性がある(図5(b)参照)。
【0043】
そこで、図1の端末器2は、電源落ちに伴う基本電流の低下分(つまり、電源落ちが発生した端末器2の消費電流分)の少なくとも一部を補完するために、電流制御装置としての機能(検知部13および電流補完部14)を備えている。
【0044】
検知部13は、自端末も含めて、通信システム10内の少なくとも1台の端末器2について、上述したような電源落ちの発生の有無を検知する。
【0045】
電流補完部14は、図4に示すように引込トランジスタ141と抵抗142との直列回路を有しており、この直列回路に整流部121の出力電圧が印加された状態で、引込トランジスタ141をオンさせることにより伝送線3から電流を引き込む。つまり、引込トランジスタ141がオンすると、ダミー負荷としての抵抗142が伝送線3に接続され、伝送線3から引き込まれた電流(以下、「ダミー電流」という)が引込トランジスタ141および抵抗142に流れ、消費されることになる。
【0046】
引込トランジスタ141は、制御端子(ベース端子)が検知部13の出力に接続されている。これにより、電流補完部14は、検知部13にて電源落ちの発生が検知された場合に、電源落ちに伴う基本電流の低下分の少なくとも一部を流すダミー負荷を伝送線3に接続して、ダミー電流を流すことにより基本電流の低下分の少なくとも一部を補完する。
【0047】
要するに、検知部13にて電源落ちの発生を検知すると、電流補完部14は、電源落ちが発生した端末器2の消費電流の代わりにダミー電流を流すことにより、センタ装置1から伝送線3上に供給される電流の低下分の少なくとも一部を補完する。ここで、ダミー電流の大きさは、電流補完部14の抵抗142の抵抗値によって調節される。
【0048】
次に、本実施形態の電流制御装置における検知部13の具体的な構成について説明する。
【0049】
本実施形態では、端末本体11は、それぞれ伝送線3に接続され伝送信号に関して上流側になる第1の端子T1と、下流側になる第2の端子T2とを有している。つまり、第1の端子T1は伝送線3を介してセンタ装置1に接続され、第2の端子T2は伝送線3を介して他の端末器2を後段に接続するための送り端子として設けられている。ここで、第1の端子T1と第2の端子T2とは端末器2内で電気的に接続されており、第1の端子T1に接続された伝送線3と第2の端子T2に接続された伝送線3とが電気的に接続される。
【0050】
検知部13は、第1の端子T1と第2の端子T2との間に流れる電流(以下、「送り電流」という)の大きさを検出する送り電流検出部131と、送り電流検出部131の検出値から電源落ちの発生の有無を判断する判断部132とを有している。
【0051】
送り電流検出部131は、第1の端子T1と第2の端子T2との間に設けられ、送り電流の大きさに応じた電圧を出力する電流電圧変換器からなる。ここでは、第1の端子T1と第2の端子T2との間に挿入された抵抗素子が送り電流検出部131として用いられ、抵抗素子の両端電圧が送り電流検出部131の検出値として判断部132に入力される。ただし、送り電流検出部131は、この構成に限らず、たとえばカレントトランス等を用いて構成されていてもよい。
【0052】
判断部132は、第2の端子T2に伝送線3を介して接続されている他の端末器2の端末本体11が返信信号を返信したタイミングで上昇する送り電流検出部131の検出値の上昇量が所定の規定値を下回った場合に、電源落ちが発生したと判断する。
【0053】
すなわち、第2の端子T2に伝送線3を介して接続されている他の端末器2、つまり伝送線3上において自端末よりも下流側の端末器2がセンタ装置1に返信信号を返信すると、図5(a)に示すように送り電流検出部131の検出値は返信信号の分だけ上昇する。なお、図5において、縦軸が検出値、横軸が時間を示し、送り電流検出部131の検出値のうち返信信号に相当する分を除いた部分、つまり基本電流に相当する部分は斜線部分で表されている。
【0054】
このとき、送り電流検出部131の検出値の上昇量は、本来ならば返信信号の電流振幅値(たとえば400mA)に対応する規定値以上となるが、図5(b)に示すようにいずれかの端末器2で電源落ちが発生した場合には規定値を下回ることになる。そのため、判断部132は、自端末よりも下流側の端末器2が返信信号を返信したときの送り電流検出部131の検出値の上昇量に基づいて、電源落ちが発生したか否かを判断することができる。
【0055】
具体的には、判断部132は、図6に示すように、一方の入力端(図中「+」)に送り電流検出部131の検出値が入力される比較器133と、送り電流検出部131の検出値が入力される遅延回路134とを有している。遅延回路134は、サンプルホールド回路から構成されており、送り電流検出部131の検出値を所定時間遅延させて、比較器133の他方の入力端(図中「−」)に入力する。
【0056】
比較器133は、下流側の端末器2が返信信号を返信した時点での送り電流検出部131の検出値V2と、検出値V2の所定時間前の時点での送り電流検出部131の検出値V1(遅延回路134の出力)とを比較する。ここでは、比較器133は、規定値を決めるオフセット電圧の分だけ検出値V1が底上げされており、送り電流の上昇量に相当する両検出値V2,V1の差分(V2−V1)が規定値を下回った場合に、電源落ちが発生したと判断する(図5(b)参照)。一方、比較器133は、送り電流の上昇量に相当する両検出値V2,V1の差分(V2−V1)が規定値以上であれば、電源落ちが発生していないと判断する(図5(a)参照)。
【0057】
比較器133は、出力端子が検知部13の出力として引込トランジスタ141の制御端子に接続されており、電源落ちが発生したと判断すると、出力をH(ハイ)レベルにすることで引込トランジスタ141をオンする。
【0058】
なお、比較器133は、両検出値V1,V2の差分に基づいて、下流側の端末器2が返信信号を返信したタイミングを判断する。つまり、比較器133は、送り電流検出部131の検出値V2とその所定時間前の検出値V1との差分(V2−V1)が所定値(<規定値)を超えると、下流側の端末器2が返信信号を返信したと判断する。
【0059】
要するに、本実施形態の検知部13は、送り電流の上昇量に基づいて、第2の端子T2に伝送線3を介して接続されている他の端末器2、つまり伝送線3上でセンタ装置1から自端末より離れた端末器2で発生した電源落ちを検知する。言い換えれば、検知部13は、伝送線3上において伝送信号に関して自端末よりも下流側の範囲で生じた端末器2の電源落ちを検知する。
【0060】
また、通信システム10内の複数台の端末器2で同時に電流制御装置(電流補完部14)が動作することがないように、図1の端末器2には、検知部13での電源落ちの検知動作の有効・無効を切り替える切替部15が設けられている。具体的には、判断部132は、図6に示すように、比較器133に定電圧回路16の出力電圧が印加されることにより比較器133の動作用の電力を得ており、この電力供給経路上にスイッチ要素135を有している。切替部15は、検知部13に対して切替信号を出力し、切替信号にてスイッチ要素135をオンオフ制御することにより、検知部13の検知動作の有効・無効を切り替える。なお、切替部15は、検知部13の検知動作の有効・無効をユーザが手動で切り替えられるように、たとえばディップスイッチなどから構成されている。
【0061】
以上説明した本実施形態の検知部13の動作について、図7のフローチャートを参照して説明する。なお、図7に示す動作は、自端末よりも下流側の端末器2が返信信号を返信したと検知部13が判断した場合の動作である。
【0062】
検知部13は、自端末よりも下流側の端末器2が返信信号を返信したことを検知すると、まず、検知動作の有効・無効を確認する(S1)。検知部13の検知動作が有効になっていれば(S1:Y)、比較部133にて両検出値V2,V1を比較する(S2)。
【0063】
このとき、両検出値V2,V1の差分(V2−V1)が規定値を下回っていれば(S2:Y)、検知部13は引込トランジスタ141をオンすることにより(S3)、電流補完部14が作動してダミー電流を流す。これにより、センタ装置1から伝送線3上に供給される電流の低下分の少なくとも一部は補完され、センタ装置1において返信信号の受信が可能になる。
【0064】
一方、両検出値V2,V1の差分(V2−V1)が規定値以上であれば(S2:N)、検知部13は引込トランジスタ141をオフする(S4)。なお、検知部13の検知動作が無効になっている場合にも(S1:N)、引込トランジスタ141はオフされる(S4)。
【0065】
ここにおいて、電流補完部14がダミー電流を流す動作は、返信信号が返信される信号返信帯103の間に亘って継続すればよく、信号返信帯103の終了後にまで継続する必要はない。そこで、検知部13は、引込トランジスタ141を一旦オンすると、信号返信帯103の時間長さに相当する継続時間に亘って引込トランジスタ141をオンし続け、継続時間が経過した時点で引込トランジスタ141をオフするように構成される。継続時間はタイマなどを用いて計時される。なお、信号返信帯103が終了すれば、返信信号の停止に伴い伝送線3を流れる電流が小さくなって降下電圧が小さくなるため、電源落ちにより端末本体11の動作が一旦停止した端末器2も、電源落ちから復旧し端末本体11の動作を再開する。
【0066】
以上説明した本実施形態の構成によれば、端末器2が返信信号を返信することにより電源落ちが発生しても、検知部13が電源落ちの発生を検知して電流補完部14を作動させ、センタ装置1から伝送線3上にダミー電流が流れることになる。このダミー電流は、電源落ちが発生した端末器2の消費電流分の少なくとも一部を補完するので、電源落ちの発生時でもセンタ装置1において返信信号を正しく受信可能になり、電流信号からなる返信信号による通信の信頼性が向上する。
【0067】
さらに、上記構成では、検知部13は第2の端子T2に伝送線3を介して接続されている自端末より下流側の端末器2が返信信号を返信したことに伴い、自端末よりも下流側の端末器2で生じた電源落ちを検知している。要するに、本実施形態の電流制御装置が組み込まれた端末器2は、伝送線3上において伝送信号に関して自端末よりも下流側の範囲を対象として、返信信号の返信に伴う電源落ちの発生を検知する。したがって、通信システム10全体として電源落ちに対する対策を万全にするためには、本実施形態の電流制御装置が組み込まれた端末器2はセンタ装置1に伝送線3にて直接接続され、他の端末器2が全て自端末よりも下流側に位置することが望ましい。
【0068】
また、比較器133を両検出値V2,V1の差分を出力する差動増幅器とし、引込トランジスタ141を差動増幅器の出力に応じたダミー電流を流すトランジスタとして使用することにより、ダミー電流の大きさが変化する構成としてもよい。つまり、検知部13は、電源落ちが発生しているか否かの2値を出力するのではなく、電源落ちが発生している場合には、電源落ちに伴う送り電流の低下量が反映されたアナログ値を出力することにより、ダミー電流の大きさを調節する。この構成では、電源落ちに伴う送り電流の低下量にダミー電流の大きさを合わせることにより、ダミー電流によって、電源落ちが発生した端末器の消費電流分を精度よく補完することができる。
【0069】
ところで、検知部13の判断部132は図6に示すような構成に限らず、たとえば演算処理部111に判断部としての機能が設けられていてもよい。この場合、演算処理部111は、送り電流検出部131の検出値をデジタル値に変換するA/D変換部(図示せず)と、A/D変換部の出力値を一時的に記憶するメモリ部(図示せず)とを有する。判断部は、A/D変換部の出力を受けて、下流側の端末器2が返信信号を返信するより所定時間前の時点での検出値V1をメモリ部に記憶し、下流側の端末器2が返信信号を返信した時点での検出値V2をメモリ部内の検出値V1と比較する。
【0070】
なお、この構成では、切替部15の出力は演算処理部111に入力され、判断部は切替部15からの入力に応じて電源落ちの検知動作の有効・無効が切り替えられる。
【0071】
また、本実施形態の電流制御装置の変形例として、判断部132は、送り電流検出部131の検出値の所定時間における低下量が所定の閾値を超えた場合に、自端末よりも下流側の他の端末器2で電源落ちが発生したと判断してもよい。
【0072】
すなわち、この変形例では、比較器133は、入力(「+」と「−」)の関係を図6の状態とは逆にして、送り電流検出部131の所定時間前の検出値V1(遅延回路134の出力)と、送り電流検出部131の現在の検出値V3とを比較する。この場合、送り電流検出部131で検出される電流値に返信信号の成分が含まれていると、電源落ちの発生を精度よく検知できない可能性があるので、送り電流検出部131には返信信号の成分を除外するフィルタ回路が設けられている。
【0073】
ここでは、比較器133は、閾値を決めるオフセット電圧の分だけ検出値V3が底上げされており、送り電流の所定時間での低下量に相当する両検出値V1,V3の差分(V1−V3)が閾値を超えた場合に、電源落ちが発生したと判断する(図5(b)参照)。一方、比較器133は、送り電流の低下量に相当する両検出値V1,V3の差分(V1−V3)が閾値以下であれば、電源落ちが発生していないと判断する(図5(a)参照)。
【0074】
要するに、本実施形態の検知部13は、送り電流の低下量に基づいて、第2の端子T2に伝送線3を介して接続されている他の端末器2、つまり伝送線3上でセンタ装置1から自端末より離れた端末器2で発生した電源落ちを検知する。言い換えれば、検知部13は、伝送線3上において自端末よりも伝送信号に関して下流側の範囲で生じた端末器2の電源落ちを検知する。
【0075】
なお、両検出値V1,V3の差分と比較される閾値は、端末器2の正常な動作に伴う送り電流検出部131の検出値の変動幅よりも大きく、且つ電源落ちに伴う送り電流検出部131の検出値の変動幅よりも小さく設定されている。これにより、検知部13は、端末器2の正常な動作に伴う端末器2の消費電流の変動によって生じる送り電流の変動を、電源落ちによる送り電流の低下と区別することができる。
【0076】
この変形例では、自端末よりも下流側の端末器2が返信信号を返信するタイミングに関係なく、検知部13は両検出値V1,V3を常時比較し、電源落ちの発生の有無を検知する。
【0077】
また、センタ装置1は、伝送線3を介して複数台の端末器2の電源回路12に電力を供給するとともに、端末器2から電流信号によりデータが送信される構成であればよく、上記実施形態のように伝送信号を送出する構成は必須ではない。すなわち、センタ装置1は電源装置として伝送線3を介して複数台の端末器2の電源回路12に直流電圧を印加する構成であってもよい。
【0078】
(実施形態2)
本実施形態の電流制御装置は、検知部13の構成が実施形態1の電流制御装置とは相違する。なお、実施形態1と共通する構成については実施形態1と同一の符号を付し説明を省略する。
【0079】
本実施形態では、検知部13は、図8に示すように伝送線3から電源回路12に流れ込む電流(以下、「入力電流」という)の大きさを検出する入力電流検出部136と、入力電流検出部136の検出値から電源落ちの発生の有無を判断する判断部137とを有している。
【0080】
入力電流検出部136は、電源回路12における整流部121と平滑部122との間に設けられ、入力電流の大きさに応じた電圧を出力する電流電圧変換器からなる。ここでは、整流部121と平滑部122との間に挿入された抵抗素子が入力電流検出部136として用いられ、抵抗素子の両端電圧が入力電流検出部136の検出値として判断部137に入力される。ただし、入力電流検出部136は、この構成に限らず、たとえばカレントトランス等を用いて構成されていてもよい。
【0081】
判断部137は、入力電流検出部136の検出値が所定の基準電流値を下回った場合に、自端末における端末本体11で電源落ちが発生したと判断する。すなわち、自端末の端末本体11で電源落ちが発生すると、電源回路12での消費電流が低下して、入力電流検出部136で検出される入力電流が低下するので、判断部137は入力電流の低下量に基づいて、電源落ちが発生したか否かを判断することができる。
【0082】
具体的には、判断部137は、図9に示すように、一方の入力端(図中「+」)には基準電流値に相当する第1の基準電圧が印加され、他方の入力端(図中「−」)には入力電流検出部136の検出値が入力される比較器138を有している。第1の基準電圧は、電源落ちが発生していない定常時の入力電流検出部136の検出値よりも小さく、且つ電流制御装置が動作可能な範囲に設定されている。
【0083】
比較器138は、第1の基準電圧と入力電流検出部136の検出値とを比較し、入力電流検出部136の検出値が第1の基準電圧を下回った場合に、電源落ちが発生したと判断する。一方、比較器138は、入力電流検出部136の検出値が第1の基準電圧以上であれば、電源落ちが発生していないと判断する。
【0084】
なお、比較器138における電流補完部14との接続関係並びに定電圧回路16、スイッチ要素135、切替部15との接続関係に関しては、実施形態1で説明した比較器133と同様である。したがって、本実施形態の検知部13の動作は、図7のフローチャートに示した実施形態1の検知部13の動作とは、ステップS2での比較対象のみが異なることになる。
【0085】
以上説明した本実施形態の構成によれば、検知部13は伝送線3に接続されている全端末器2のいずれかが返信信号を返信したことに伴い、自端末で生じた端末本体11の電源落ちを検知している。要するに、本実施形態の電流制御装置が組み込まれた端末器2は、伝送線3上において自端末より下流側の端末器2に限らずいずれの端末器2が返信信号を返信した場合でも、自端末の電源落ちの発生を検知することができる。
【0086】
その他の構成および機能は実施形態1と同様である。
【0087】
(実施形態3)
本実施形態の電流制御装置は、検知部13の構成が実施形態1の電流制御装置とは相違する。なお、実施形態1と共通する構成については実施形態1と同一の符号を付し説明を省略する。
【0088】
本実施形態では、検知部13は、図10に示すように電源回路12から出力される電圧(以下、「電源電圧」という)の大きさを検出する電源検出部(図示せず)と、電源検出部の検出値から電源落ちの発生の有無を判断する判断部139とを有している。
【0089】
電源検出部は、電源回路12における平滑部122の出力電圧(定電圧回路16の入力電圧)を検出値として判断部139に入力する。
【0090】
判断部139は、電源検出部の検出値が所定の基準電圧値を下回った場合に、自端末における端末本体11で電源落ちが発生したと判断する。すなわち、自端末の端末本体11で電源落ちが発生すると、電源回路12での消費電流が低下して、電源検出部で検出される電源電圧が低下するので、判断部139は電源電圧の低下量に基づいて、電源落ちが発生したか否かを判断することができる。
【0091】
具体的には、判断部139は、実施形態2で説明した図9の構成と同様に比較器138を有している。ただし、比較器138の一方の入力端(図中「+」)には基準電圧値に相当する第2の基準電圧が印加され、他方の入力端(図中「−」)には電源検出部の検出値が入力される。第2の基準電圧は、電源落ちが発生していない定常時に電源回路12が出力する電源電圧よりも小さく、且つ電流制御装置が動作可能な範囲に設定されている。
【0092】
比較器138は、第2の基準電圧と電源検出部の検出値とを比較し、電源検出部の検出値が第2の基準電圧を下回った場合に、電源落ちが発生したと判断する。一方、比較器138は、電源検出部の検出値が第2の基準電圧以上であれば、電源落ちが発生していないと判断する。
【0093】
なお、比較器138における電流補完部14との接続関係並びに定電圧回路16、スイッチ要素135、切替部15との接続関係に関しては、実施形態1で説明した比較器133と同様である。したがって、本実施形態の検知部13の動作は、図7のフローチャートに示した実施形態1の検知部13の動作とは、ステップS2での比較対象のみが異なることになる。
【0094】
以上説明した本実施形態の構成によれば、検知部13は伝送線3に接続されている全端末器2のいずれかが返信信号を返信したことに伴い、自端末で生じた端末本体11の電源落ちを検知している。要するに、本実施形態の電流制御装置が組み込まれた端末器2は、伝送線3上において自端末より下流側の端末器2に限らずいずれの端末器2が返信信号を返信した場合でも、自端末の電源落ちの発生を検知することができる。
【0095】
その他の構成および機能は実施形態1と同様である。
【0096】
(実施形態4)
本実施形態の電流制御装置は、検知部13の構成が実施形態1の電流制御装置とは相違する。なお、実施形態1と共通する構成については実施形態1と同一の符号を付し説明を省略する。
【0097】
本実施形態の検知部13は、図11に示すように伝送線13から電源回路12に入力される電圧(以下、「印加電圧」という)の大きさを検出する印加電圧検出部(図示せず)と、印加電圧検出部の検出値から電源落ちの発生の有無を判断する判断部130とを有している。
【0098】
印加電圧検出部は、第1の端子T1に印加されている電圧、つまり第1の端子T1に接続されている整流部121の入力電圧を検出値として判断部130に入力する。
【0099】
判断部130は、印加電圧検出部の検出値が所定の正常値を下回った場合に、伝送線3に接続されているいずれかの端末器2で電源落ちが発生したと判断する。すなわち、電源落ちが発生するときには、伝送線3上の伝送信号の電圧振幅値は小さくなり、印加電圧検出部で検出される印加電圧が低下するので、判断部130は印加電圧の低下量に基づいて、電源落ちが発生したか否かを判断することができる。
【0100】
具体的には、判断部130は、実施形態2で説明した図9の構成と同様に比較器138を有している。ただし、比較器138の一方の入力端(図中「+」)には正常値に相当する第3の基準電圧が印加され、他方の入力端(図中「−」)には印加電圧検出部の検出値が入力される。第3の基準電圧は、ここでは電源回路12における平滑部122の出力電圧(定電圧回路16の入力電圧)とする。
【0101】
また、伝送信号は複極(±24V)の電圧信号であるから、印加電圧検出部は、整流器および容量素子等を具備し、伝送信号の変動分が除去された印加電圧を検出するように構成されている。
【0102】
比較器138は、第3の基準電圧(電源回路12の出力電圧)と印加電圧検出部の検出値とを比較し、印加電圧検出部の検出値が第3の基準電圧を下回った場合に、電源落ちが発生したと判断する。すなわち、電源回路12は平滑部122を有しているので、その入力電圧(印加電圧)が低下しても出力電圧(第3の基準電圧)がすぐに低下することはなく、入力電圧の低下時には出力電圧>入力電圧という関係になる。一方、比較器138は、印加電圧検出部の検出値が第3の基準電圧以上であれば、電源落ちが発生していないと判断する。
【0103】
なお、比較器138における電流補完部14との接続関係並びに定電圧回路16、スイッチ要素135、切替部15との接続関係に関しては、実施形態1で説明した比較器133と同様である。したがって、本実施形態の検知部13の動作は、図7のフローチャートに示した実施形態1の検知部13の動作とは、ステップS2での比較対象のみが異なることになる。
【0104】
以上説明した本実施形態の構成によれば、検知部13は伝送線3に接続されている全端末器2のいずれかが返信信号を返信したことに伴い、伝送線3に接続されている全端末器2のいずれかで生じる電源落ちを検知している。要するに、本実施形態の電流制御装置が組み込まれた端末器2は、伝送線3上においていずれの端末器2が返信信号を返信した場合でも、伝送線3に接続されている全ての端末器2を対象にして電源落ちの発生を検知することができる。したがって、全ての端末器2を対象に、電源落ちが発生した端末器2の消費電流分を補完することが可能になる。
【0105】
その他の構成および機能は実施形態1と同様である。
【0106】
ところで、上記各実施形態では、電流制御装置が端末器2に組み込まれて端末器2と一体化された例を示したが、電流制御装置は端末器2とは別体であってもよい。端末器2とは別体の電流制御装置は、端末器2と同様に伝送線3に対して接続される。この場合、電流制御装置の動作用の電力は、端末器2と同様に伝送信号にてセンタ装置1から供給されてもよいし、センタ装置1とは別に設けられた電源から供給されてもよい。
【0107】
なお、実施形態2ないし実施形態4のいずれの構成においても、実施形態1で説明したように演算処理部111に判断部としての機能が設けられていてもよい。この場合、演算処理部111は、入力電流検出部、電源検出部、印加電圧検出部の検出値をデジタル値に変換するA/D変換部(図示せず)を有する。判断部は、A/D変換部の出力を受けて、各検出部の検出値をメモリ部内に予め登録されている値と比較する。
【0108】
また、実施形態2ないし実施形態4のいずれの構成においても、実施形態1で説明したように、検知部13は、電源落ちに伴う電流の低下量が反映されたアナログ値を出力することにより、ダミー電流の大きさを調節できる構成であってもよい。
【符号の説明】
【0109】
1 センタ装置
2 端末器
3 伝送線
10 通信システム
12 電源回路
13 検知部
14 電流補完部
130,132,137,139 判断部
131 送り電流検出部
136 入力電流検出部
142 抵抗(ダミー負荷)
T1 第1の端子
T2 第2の端子
【特許請求の範囲】
【請求項1】
センタ装置に伝送線を介して複数台の端末器が接続されており、前記センタ装置が前記伝送線を介して複数台の前記端末器の電源回路に電力を供給することにより前記センタ装置から前記伝送線に基本電流となる電流が流れ、前記端末器が前記伝送線から流れ込む電流の大きさを変化させて前記基本電流に重畳される電流信号を前記伝送線上に生じさせることにより前記センタ装置にデータを送信する通信システムに用いられ、
前記伝送線上に前記電流信号が生じたときに前記伝送線上で生じる電圧降下により、前記伝送線に接続されているいずれかの前記端末器の前記電源回路への供給電力が不足し当該端末器の動作が停止する電源落ちの発生の有無を検知する検知部と、
前記電源落ちに伴う前記基本電流の低下分の少なくとも一部を補うダミー電流を流すダミー負荷を具備し、前記検知部で前記電源落ちの発生が検知された場合に前記伝送線に前記ダミー負荷を接続する電流補完部とを備えることを特徴とする電流制御装置。
【請求項2】
それぞれ前記伝送線に接続される第1の端子と第2の端子とをさらに備え、前記第1の端子を前記センタ装置側に接続することにより上流側とし、前記第2の端子を下流側とし、前記検知部は、前記第1の端子と前記第2の端子との間に設けられ、前記第1の端子と前記第2の端子との間に流れる電流の大きさを検出する送り電流検出部と、前記第2の端子に前記伝送線を介して接続されている前記端末器が前記電流信号を発生したタイミングで上昇する前記送り電流検出部の検出値の上昇量が所定の規定値を下回った場合に、前記第2の端子に前記伝送線を介して接続されている前記端末器で前記電源落ちが発生したと判断する判断部とを有することを特徴とする請求項1記載の電流制御装置。
【請求項3】
それぞれ前記伝送線に接続される第1の端子と第2の端子とをさらに備え、前記第1の端子を前記センタ装置側に接続することにより上流側とし、前記第2の端子を下流側とし、前記検知部は、前記第1の端子と前記第2の端子との間に設けられ、前記第1の端子と前記第2の端子との間に流れる電流の大きさを検出する送り電流検出部と、前記送り電流検出部の検出値の所定時間における低下量が所定の閾値を超えた場合に、前記第2の端子に前記伝送線を介して接続されている前記端末器で前記電源落ちが発生したと判断する判断部とを有することを特徴とする請求項1記載の電流制御装置。
【請求項4】
前記検知部および前記電流補完部は検知対象となる前記端末器に組み込まれており、前記検知部は、前記伝送線から検知対象となる前記端末器の前記電源回路に流れ込む電流の大きさを検出する入力電流検出部と、前記入力電流検出部の検出値が所定の基準電流値を下回った場合に、検知対象となる前記端末器で前記電源落ちが発生したと判断する判断部とを有することを特徴とする請求項1記載の電流制御装置。
【請求項5】
前記検知部および前記電流補完部は検知対象となる前記端末器に組み込まれており、前記検知部は、検知対象となる前記端末器の前記電源回路から出力される電圧の大きさを検出する電源検出部と、前記電源検出部の検出値が所定の基準電圧値を下回った場合に、検知対象となる前記端末器で前記電源落ちが発生したと判断する判断部とを有することを特徴とする請求項1記載の電流制御装置。
【請求項6】
前記検知部は、前記伝送線に接続され前記伝送線から印加される電圧の大きさを検出する印加電圧検出部と、前記印加電圧検出部の検出値が所定の正常値を下回った場合に、前記端末器で前記電源落ちが発生したと判断する判断部とを有することを特徴とする請求項1記載の電流制御装置。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の電流制御装置と、前記センタ装置と、前記伝送線を介して前記センタ装置に接続された複数台の前記端末器とを備え、前記端末器に接続されている機器の制御と監視との少なくとも一方を行うことを特徴とする通信システム。
【請求項1】
センタ装置に伝送線を介して複数台の端末器が接続されており、前記センタ装置が前記伝送線を介して複数台の前記端末器の電源回路に電力を供給することにより前記センタ装置から前記伝送線に基本電流となる電流が流れ、前記端末器が前記伝送線から流れ込む電流の大きさを変化させて前記基本電流に重畳される電流信号を前記伝送線上に生じさせることにより前記センタ装置にデータを送信する通信システムに用いられ、
前記伝送線上に前記電流信号が生じたときに前記伝送線上で生じる電圧降下により、前記伝送線に接続されているいずれかの前記端末器の前記電源回路への供給電力が不足し当該端末器の動作が停止する電源落ちの発生の有無を検知する検知部と、
前記電源落ちに伴う前記基本電流の低下分の少なくとも一部を補うダミー電流を流すダミー負荷を具備し、前記検知部で前記電源落ちの発生が検知された場合に前記伝送線に前記ダミー負荷を接続する電流補完部とを備えることを特徴とする電流制御装置。
【請求項2】
それぞれ前記伝送線に接続される第1の端子と第2の端子とをさらに備え、前記第1の端子を前記センタ装置側に接続することにより上流側とし、前記第2の端子を下流側とし、前記検知部は、前記第1の端子と前記第2の端子との間に設けられ、前記第1の端子と前記第2の端子との間に流れる電流の大きさを検出する送り電流検出部と、前記第2の端子に前記伝送線を介して接続されている前記端末器が前記電流信号を発生したタイミングで上昇する前記送り電流検出部の検出値の上昇量が所定の規定値を下回った場合に、前記第2の端子に前記伝送線を介して接続されている前記端末器で前記電源落ちが発生したと判断する判断部とを有することを特徴とする請求項1記載の電流制御装置。
【請求項3】
それぞれ前記伝送線に接続される第1の端子と第2の端子とをさらに備え、前記第1の端子を前記センタ装置側に接続することにより上流側とし、前記第2の端子を下流側とし、前記検知部は、前記第1の端子と前記第2の端子との間に設けられ、前記第1の端子と前記第2の端子との間に流れる電流の大きさを検出する送り電流検出部と、前記送り電流検出部の検出値の所定時間における低下量が所定の閾値を超えた場合に、前記第2の端子に前記伝送線を介して接続されている前記端末器で前記電源落ちが発生したと判断する判断部とを有することを特徴とする請求項1記載の電流制御装置。
【請求項4】
前記検知部および前記電流補完部は検知対象となる前記端末器に組み込まれており、前記検知部は、前記伝送線から検知対象となる前記端末器の前記電源回路に流れ込む電流の大きさを検出する入力電流検出部と、前記入力電流検出部の検出値が所定の基準電流値を下回った場合に、検知対象となる前記端末器で前記電源落ちが発生したと判断する判断部とを有することを特徴とする請求項1記載の電流制御装置。
【請求項5】
前記検知部および前記電流補完部は検知対象となる前記端末器に組み込まれており、前記検知部は、検知対象となる前記端末器の前記電源回路から出力される電圧の大きさを検出する電源検出部と、前記電源検出部の検出値が所定の基準電圧値を下回った場合に、検知対象となる前記端末器で前記電源落ちが発生したと判断する判断部とを有することを特徴とする請求項1記載の電流制御装置。
【請求項6】
前記検知部は、前記伝送線に接続され前記伝送線から印加される電圧の大きさを検出する印加電圧検出部と、前記印加電圧検出部の検出値が所定の正常値を下回った場合に、前記端末器で前記電源落ちが発生したと判断する判断部とを有することを特徴とする請求項1記載の電流制御装置。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の電流制御装置と、前記センタ装置と、前記伝送線を介して前記センタ装置に接続された複数台の前記端末器とを備え、前記端末器に接続されている機器の制御と監視との少なくとも一方を行うことを特徴とする通信システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−49638(P2012−49638A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−187545(P2010−187545)
【出願日】平成22年8月24日(2010.8.24)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年8月24日(2010.8.24)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】
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