説明

電流測定装置

【課題】従来の磁気検出手段を用いた電流測定装置では、外部磁場の影響を消去しようとすれば電流測定感度が低下し、微小な電流の変化が検出できなかった。
【解決手段】磁気検出手段を用いた電流測定装置において、一定の間隔を持って電流線を挟持して配置された、第1、第2の磁気検出手段と、第1、第2の磁気検出手段により得られる出力電圧値の差分電圧値を得る差分検出手段と、差分電圧値に基づき前記電流線に流れる被測定電流値を得る電流値測定手段とを有する構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被測定電流線から発生する磁界を検出して電流を測定する電流測定装置に関し、特に外部磁界による測定誤差を減じて微小な電流を計測するため電流測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電流の測定方法として、被測定電流線の近傍に発生する磁界を磁気センサによって検出する方法が知られている。この場合、被測定電流線以外に起因する磁界の存在によって測定値に誤差を生ずる問題が有った。このような課題の解決手段として磁気シールド部材を用いる構成が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
その構成と機能について図面に基づいて説明する。図3は、従来の技術における電流測定装置100の構造を示す断面図である。
【0004】
この従来技術における電流測定装置100は、電流導体102と、この電流導体102に離間して近接して設けられた磁気検出素子101と、電流導体102に接続されたリードフレーム105aと、磁気検出素子101に接続されたリードフレーム105bを有している。さらにこの装置は、磁気検出素子101の上部及び下部に磁気シールド部材103,104が配設され、モールド部材106で封止した構成となっている。
【0005】
この従来の電流測定装置100に流れる被測定電流は、リードフレーム105aによって磁気検出素子101下方の電流導体102に導かれて、ここでは図示しない他のリードフレームを介して外部に導出される。このとき電流導体102周囲には図3の矢印で示したような被測定電流量に応じた強さの磁界が発生する。この磁界を磁気検出素子101で検出して、ワイヤー107を介してリードフレーム105bで装置外部に信号を導出することで目的の被測定電流量を知ることができる。
【0006】
また、被測定電流以外の磁界は、磁気検出素子101の上方と下方に配した磁気シールド部材103,104によって装置外部からの外部磁界を遮蔽し、磁気検出素子101ではその影響をできるだけ排除して、他の要因にともなう誤差測定をできるだけ抑える構成としていた。
【0007】
この従来の電流測定装置100は、簡単な構成であるため、装置の小型化が容易であり、大量生産に適した構成といえる。
【0008】
【特許文献1】特開2003−329749号公報(第7頁、第1−2図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、従来の電流測定装置100の構成で、磁気シールド効果を大きくしようとした場合、透磁率の高い磁性体からなる磁気シールド部材103,104を用いる必要がある。この様に構成すると、磁気検出素子101近傍の外部要因の磁束のみならず、被測定電流に起因する磁束も同様に磁気シールド部材103,104に収束されることとなる。
【0010】
したがって、この外部磁場の影響を極力抑えた構成では、磁気検出素子101で検出される被測定電流に起因する磁束が減少してしまい、電流測定装置100の電流検出感度が
低下してしまうこととなる。
この様に、従来の電流測定装置100では、磁気シールド部材103,104に透磁率が大きなものを用いると、大きな電流変動は検出できるものの、微小な電流が計測できなくなってしまい、磁気シールド部材103,104に透磁率が小さなものを用いると、外部磁場の影響を受けやすくなり、これも大きな電流変動は検出できるものの、微小な電流が計測できなくなってしまうという欠点があった。
【0011】
そこで、本発明は上記の課題を解決して、簡単な構成でありながら、微小な電流でも計測が可能な高精度の電流測定装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明の電流測定装置は、基本的に下記記載の構成を採用するものである。
【0013】
本発明の電流測定装置は、磁気検出手段を用いた電流測定装置において、一定の間隔を持って電流線を挟持して配置された第1、第2の磁気検出手段と、第1、第2の磁気検出手段により得られる出力電圧値の差分電圧値を得る差分検出手段と、差分電圧値に基づき電流線に流れる被測定電流値を得る電流値測定手段と、を有することを特徴とするものである。
【0014】
また、本発明の電流測定装置は、前述した第1、第2の磁気検出手段がともに同じ構成の磁気検出素子により構成されていることを特徴とするものである。
【0015】
また、本発明の電流測定装置は、前述した第1、第2の磁気検出素子に、フラックスゲート素子を用いたことを特徴とするものである。
【0016】
また、本発明の電流測定装置は、前述した第1、第2の磁気検出素子を、電流線に対して、ほぼ直交する方向にコア材を配置させたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明の電流測定装置によれば、従来の電流測定装置では達成できなかった、微小な電流や電流変化の測定が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下図面を参照しながら本発明の最適な実施の形態における傾斜角センサの構造と傾斜角検出作用および傾斜角検出方法について詳細に説明する。
[実施の形態の構成]
まず、本発明における電流測定装置の構成について説明する。
図1(a)は、本発明の電流測定装置20を上面から見た構造平面図であり、図1(b)は図1(a)におけるA−A断面図である。
【0019】
図1(a),(b)に示すように、本発明の電流測定装置20は、絶縁基板1に基板内電流線3を設けて被測定電流線12の電流を装置内に導くようになっている。さらに、この絶縁基板1の上面と下面には、絶縁膜2を介して基板内電流線3を挟むように磁気検出素子4a,4bを設けており、この検出回路素子6a,6bは、例えば磁気検出素子4a,4bから得られる磁気情報を含んだ電気的出力を、適度な増幅値の直流電圧に変換する機能を有する。
【0020】
なお、この磁気検出素子4a,4bには、種々のフラックスゲート素子、ホール素子、磁気抵抗素子、または磁気インピーダンス素子等の磁気検出素子を用いることができる。
このなかで特に望ましいのは、原理的に磁界の極性すなわちSとNの判定が可能なフラックスゲート素子とホール素子である。さらに望ましくは、検出感度の高いフラックスゲート素子である。
【0021】
前述のように、磁気検出素子4a,4bにフラックスゲート素子を用いる場合には、コア材に透磁率の高い軟磁性材料を用いることが望ましい。そして、棒状の形状を有するコア材を、その長手を基板内電流線3に対してほぼ直角になるように配置すれば、被測定電流によって発生する基板内電流線3に垂直な方向の磁束のみを効率よく収束することが可能となる。なお、この磁気検出素子4a,4bは、必ずしも前述した基板内電流線3に対してほぼ直角になるように配置される必要はなく、同じ方向を向いて同じ環境下において同じ出力値を出すことができれば、斜めに配置しても構わない。また、同じ環境下において同じ出力値を出すことができれば、異なる形態の磁気検出素子を組み合わせても構わない。
【0022】
また、図1(a)、図1(b)に示す様に、絶縁基板1上面と下面の磁気検出素子4a,4bは、素子駆動信号線5a,5bを介してそれぞれ検出回路素子6a,6bと電気的に接続されている。さらに、絶縁基板1上面の検出回路素子6aは、検出信号線7aを介して差分検出手段9に電気的に接続され、下面の検出回路素子6bは、検出信号線7bとスルーホール11を介して差分検出手段9に電気的に接続されている。そのうえ、絶縁基板1には共通電源線8を設けて検出回路素子6aに接続している。この差分検出手段9は、例えば検出回路素子6aと検出回路素子6bとの間の直流電圧値の差分を出力する機能を有する。
【0023】
さらに、この差分検出手段9には、出力信号線10を介して電流値測定手段13が電気的に接続され、この電流値測定手段13には、外部出力端子14が設けられている。
なお、この電流値測定手段13は、例えば、差分検出手段9からの電圧出力を被測定電流値に読み替えるための演算回路のことを指す。
【0024】
また、前述の磁気検出素子4a,4bと、検出回路素子6a,6bと、差分検出手段9と、電流値測定手段13の駆動電源は、共通電源線8から供給する様にした。また、検出回路素子6a,6bと、差分検出手段9、並びに電流値測定手段13は、1個の半導体集積回路チップとすることもできる。
【0025】
[電流測定作用]
以下図面を参照しながら、本発明の電流測定装置20における電流測定作用について説明する。図2(a)は本発明の電流測定装置20を上面から見た構造平面図であり、図2(b)は図2(a)におけるB−B断面図である。
【0026】
図2(a)に示すように、基板内電流線3上の矢印は、被測定電流の流れる方向を表し、この被測定電流は、図の上方から下方に向かって流れているものとする。この場合、図2(b)に示すように、基板内電流線3の周囲には基板内電流線3を中心軸とする右回りの磁界が発生する。したがって、絶縁基板1上面の磁気検出素子4aと下面の磁気検出素子4bには逆方向の磁界が印可されることとなる。
【0027】
そして、本発明の電流測定装置20は、上述した様に磁界の極性が判定可能な磁気検出素子4a,4bと、磁気情報を含んだ電気的出力を直流電圧に変換する検出回路素子6a,6bと、検出回路素子6aと検出回路素子6b間の直流電圧値の差分を出力する差分検出手段9とを有している。したがって、検出回路素子6a,6bからは、絶対値が等しく、かつ符号のみが異なる直流電圧出力を得ることができる(|V6aout|=|V6bout|=V6out)。ここで、検出回路素子6aの出力電圧をV6aout、検出回路素子6bの
出力電圧をV6boutとすると、差分検出手段9からは次式(1)に示す出力電圧V9outを得ることができる。
V9out=V6aout−(−V6bout)=2V6out (1)
【0028】
このように、上記式(1)に基づき、差分検出手段9からは、一個の磁気検出素子から得られる出力電圧の2倍の電圧が出力されることとなる。
【0029】
この様に、前述の差分検出手段9で式(1)に基づき導出される出力電圧V9outは、被測定電流線12に流れる電流値により得られる、被測定電流線12近傍に生じた磁界の強さに比例して増幅させた値とすることが出来る。そして、例えば電流値測定手段13に、予め本発明の電流測定装置20に固有の比例常数を記憶させておき、差分検出手段9により出力電圧V9outに対する電流値を演算する簡単な演算処理を行うことにより、出力電圧V9outを目的の被測定電流値に読み替えて出力することができる。
【0030】
さらに、本発明の電流測定装置20の構成においては、磁気検出素子4a,4bに例えばフラックスゲート素子を採用し、透磁率の良好な軟磁性材料で棒状の形状を有するコア材を設ければ、このコア材の長手に対してほぼ平行な磁束のみを収束し、この方向の磁界にのみ感度を持つ磁気検出素子4a,4bとすることができる。このため、地磁気あるいは永久磁石等の存在により、発生する外部磁界Hoが磁気検出素子4a,4bの棒状コアの長手に対して平行以外の方向から印可されても、差分検出手段9の出力電圧V9outに外部磁界Hoの影響は出ない。
【0031】
一方、図2(b)に示したように、外部磁界Hoなる被測定電流以外に起因する外部磁界が、磁気検出素子4a,4bの棒状コアの長手に対してほぼ平行方向から印可された場合は、検出回路素子6a,6bの出力電圧には、絶対値と符号の等しいオフセット電圧が加わることとなる。検出回路素子6aの出力電圧をV6aout、検出回路素子6b出力電圧をV6bout、オフセット電圧をVoffとすると、差分検出手段9からは次式のように出力電圧V9outを得る。
V9out=V6aout+Voff−(−V6bout+Voff)=2V6out (2)
【0032】
上記式(2)から明らかな様に、被測定電流以外の原因により、磁気検出素子4a,4bの棒状コアの長手方向から印可される磁界の効果は消去されて、目的の被測定電流線12に流れる被測定電流値のみを検出することが出来る。
【0033】
また、上述した作用を受けるため、本発明の電流測定装置20は、従来の構成の様にシールド部材を配置する必要がない。
【0034】
以上の説明で明らかなように、本発明の電流測定装置20によれば、被測定電流により発生する磁界以外の、あらゆる方向から装置に掛かる外部磁界Hoの影響を消去して、目的の被測定電流のみを正確に測定することが可能となる。したがって、本発明の電流測定装置20は、例え外部磁界の影響があったとしても、電流検出感度が低下することがなく、微小な電流測定が可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明の電流測定装置によれば、被測定電流を損失せしめることなく、かつ正確に電流を測定することが可能になる。したがって電流のモニターが必要とされる多くの機器、設備類に応用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1(a)】本発明の電流測定装置の構造を示す平面図である。
【図1(b)】本発明の電流測定装置の構造を示す断面図である。
【図2(a)】本発明の電流測定装置の作用を示す平面図である。
【図2(b)】本発明の電流測定装置の電流測定作用を示す断面図である。
【図3】従来技術の電流測定装置の構造を示す断面図である。
【符号の説明】
【0037】
1 絶縁基板
2 絶縁膜
3 基板内電流線
4a,4b 磁気検出素子
5a,5b 素子駆動信号線
6a,6b 検出回路素子
7a,7b 検出信号線
8 共通電源線
9 差分検出手段
10 出力信号線
11 スルーホール
12 被測定電流線
13 電流値測定手段
14 外部出力端子
20 電流測定装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気検出手段を用いた電流測定装置において、
一定の間隔を持って電流線を挟持して配置された、第1、第2の磁気検出手段と、
前記第1、第2の磁気検出手段により得られる出力電圧値の差分電圧値を得る差分検出手段と、
前記差分電圧値に基づき前記電流線に流れる被測定電流値を得る電流値測定手段と、
を有することを特徴とする電流測定装置。
【請求項2】
前記第1、第2の磁気検出手段は、ともに同じ構成の磁気検出素子により構成されていることを特徴とする請求項1に記載の電流測定装置。
【請求項3】
前記第1、第2の磁気検出手段は、フラックスゲート素子により構成されていることを特徴とする請求項2に記載の電流測定装置。
【請求項4】
前記第1、第2の磁気検出手段を、前記電流線に対して、ほぼ直交する方向に前記フラックスゲート素子のコア材を配置させたことを特徴とする請求項3に記載の電流測定装置。

【図1(a)】
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【図1(b)】
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【図2(a)】
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【図2(b)】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−258447(P2006−258447A)
【公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−72575(P2005−72575)
【出願日】平成17年3月15日(2005.3.15)
【出願人】(000001960)シチズン時計株式会社 (1,939)
【Fターム(参考)】