説明

電源プラグ

【課題】 プラグ受けの形状によらず、確実にプラグ受けからの脱落を防止できる電源プラグを提供する。
【解決手段】
電源プラグ1は、基部2と、固定電気接続端子31,32と、可動電気接続端子41,42と、スライダー5とを備える。スライダー5の操作により、可動電気接続端子41,42は上下に回動可能である。電源プラグ1は、固定電気接続端子31,32と可動電気接続端子41,42とが重なり合い、可動電気接続端子41,42が固定電気接続端子の外形内に収まるアンロック状態と、当該アンロック状態から可動電気接続端子41,42が上方へ回動し、固定電気接続端子31,32の上方に可動電気接続端子41,42の一部が突出するロック状態との間でその状態を移行することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力供給用のプラグ受けに差し込まれる電源プラグに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、コンセントに差し込まれる一対のプラグ端子と、この一対のプラグ端子と共に設けられた脱落防止部材とを備えるプラグが開示されている。この特許文献1に開示されたプラグは、一対のプラグ端子が取り付けられた第1支持体と、この第1支持体に対して90度回転可能に取り付けられた第2支持体とを備えている。このプラグは、第2支持体を90度回転させることで、脱落防止部材の位置をプラグ端子の外形内に収納された第2位置から、脱落防止部材の係止部がプラグ端子の外形から突出した第1位置へと切り替えられる。第1位置においては、係止部がプラグ端子に対して直角に突出する。このプラグ端子に対して直角をなす係止部が、コンセントの係合部と係合することで、プラグのコンセントからの抜けが防止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−68200号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に開示されているプラグにあっては、第1位置において脱落防止部材の係止部のコンセントの係合部に当接する当接面が、プラグ端子に対して直角をなすため、係止部の前記当接面と第1支持体のコンセントヘの当接面とが互いに平行となり、これらの平行な当接面によってコンセントの係合部が挟まれることとなる。このため、コンセントの係合部の厚さが脱落防止部材の当接面と第1支持体の当接面との間の距離よりも大きい場合には、脱落防止部材の係止部とコンセントの係合部とを係合させることができず、プラグのコンセントからの抜け防止が達成されない。
【0005】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、その主たる目的は、上記課題を解決することができる電源プラグを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために、本発明の一の態様の電源プラグは、基部と、前記基部から突出した状態で前記基部に固定され、互いに平行な平板状をなす一対の固定電気接続端子と、前記一対の固定電気接続端子の面に沿って前記基部から突出した状態で前記基部に取り付けられ、前記固定電気接続端子の長手方向に対して交差する方向へ移動可能とされ、互いに平行な平板状をなす一対の脱落防止部材と、前記基部に操作可能に設けられており、操作によって前記脱落防止部材を前記固定電気接続端子の長手方向に対して交差する方向へ移動させ、前記脱落防止部材が前記固定電気接続端子の長手方向に対して交差する方向の側縁部から突出しない第1状態から、前記固定電気接続端子の前記側縁部から突出する第2状態へ切り替える切替部と、を備え、前記脱落防止部材は、前記第2状態において前記固定電気接続端子の前記側縁部から突出した部分のうち、少なくとも前記固定電気接続端子が挿入されるプラグ受けの穴の端部に対応する位置を含む領域において、前記基部からその先端部に向かって所定の割合で突出量が増大するように構成されている。
【0007】
この態様においては、前記脱落防止部材が、前記一対の固定電気接続端子が並ぶ方向へ延びる回動軸を中心として回動可能であり、前記固定電気接続端子の長手方向に対して交差する方向の前記脱落防止部材の側縁部が前記第1状態において前記固定電気接続端子の長手方向と平行な直線状に形成されており、前記切替部の操作によって前記第1状態から所定角度回動することにより、前記側縁部が前記固定電気接続端子の長手方向に対して前記所定角度傾斜するように構成されていることが好ましい。
【0008】
また、上記態様においては、前記一対の固定電気接続端子のそれぞれが、その先端近傍に、当該電源プラグが差し込まれるプラグ受けに設けられた突起に係合するための円形の穴が形成されており、前記脱落防止部材が、前記第1状態において前記固定電気接続端子の前記円形の穴を閉塞しないように、前記固定電気接続端子の前記円形の穴に対応する一部が欠落していることが好ましい。
【0009】
また、上記態様においては、前記脱落防止部材が、前記第2状態において前記固定電気接続端子の前記円形穴の少なくとも一部を閉塞しないように、その一部が欠落していることが好ましい。
【0010】
また、上記態様においては、前記脱落防止部材が、前記固定電気接続端子の前記円形の穴に対応する位置に穴が設けられていることが好ましい。
【0011】
また、上記態様においては、前記一対の脱落防止部材が、前記一対の固定電気接統端子の対向面のそれぞれに沿って設けられていることが好ましい。
【0012】
また、上記態様においては、前記脱落防止部材が、導電性材料により構成されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る電源プラグによれば、プラグ受けの形状によらず、確実に電源プラグのプラグ受けからの脱落が防止される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施の形態に係る電源プラグの全体構成を示す斜視図。
【図2】実施の形態に係る電源プラグの全体構成を示す平面断面図。
【図3】図2のA−A線による断面矢視図。
【図4】図3のB−B線による断面矢視図。
【図5】実施の形態に係る電源プラグが備える基部の内部構造を示す平面断面図。
【図6】図5のC−C線による断面矢視図。
【図7】スライダーが可動ストロークの左端まで移動したときの基部の内部状態を示す電源プラグの断面図。
【図8】コンセントの寸法を説明するための正面図。
【図9】コンセントの構成を示す平面断面図。
【図10】ロック状態における電源プラグの構成を示す側面断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の好ましい実施の形態を、図面を参照しながら説明する。
【0016】
本実施の形態に係る電源プラグは、固定電気接続端子と、可動電気接続端子と、切替部とを備え、切替部を操作することによって可動電気接続端子を固定電気接続端子から突出しないアンロック状態から、固定電気接続端子から突出するロック状態へと切替可能であり、ロック状態において可動電気接続端子が、固定電気接続端子の基端から先端に向かって突出量が増大するように固定電気接続端子の長手方向に対して直線的に傾斜している電源プラグである。
【0017】
図1は本実施の形態に係る電源プラグの全体構成を示す斜視図、図2はその平面断面図、図3は図2のA−A線による断面矢視図、図4は図3のB−B線による断面矢視図である。図1〜4に示すように、本実施の形態に係る電源プラグ1は、基部2と、一対の固定電気接続端子31,32と、一対の可動電気接続端子41,42と、スライダー5とを備えている。
【0018】
基部2は、概ね直方体形状をなしており、絶縁性の合成樹脂によって構成されている。基部2の正面からは一対の固定電気接続端子31,32が前方へ突出している。固定電気接続端子31,32のそれぞれは、前方に長い平板状をなしており、それぞれの平面が互いに対向するように平行に配置されている。固定電気接続端子31,32のそれぞれには、図3に示すように先端に円形の穴33が設けられている。この穴33は、電源プラグ1がプラグ受けに差し込まれたときに、プラグ受け側に設けられた電源プラグの脱落防止用の突起と係合するためのものである。
【0019】
図5は、基部2の内部構造を示す平面断面図であり、図6は、図5のC−C線による断面矢視図である。基部2は、上側半分の第1部分21と、下側半分の第2部分22とを互いに固着して構成される。図5は、第2部分22を上方から見たときの図である。図5に示すように、基部2の内部には、部品(固定電気接続端子31,32、可動電気接続端子41,42、スライダー5)を配置するための第1空間23aが設けられており、この第1空間23aの後方に第2空間23bが設けられている。
【0020】
固定電気接続端子31,32は、基部2の内部にまで直線的に延びている(図2参照)。固定電気接続端子31,32は、基部2の内部において、第1空間23aを通って後方へ延びており、それぞれの後端が第2空間23b内に到達している。固定電気接続端子31,32の後端部分には、導線接続用の穴34が設けられており(図2参照)、第2空間23bの内部において固定電気接続端子31,32が、基部2の外部へと延びる導線(図示せず)と接続される。
【0021】
また、基部2の正面からは、一対の可動電気接続端子41,42が前方へ突出している。可動電気接続端子41,42の基部2から突出した部分は、固定電気接続端子31,32の基部2から突出した部分と同程度の大きさの板状をなしている。一方の可動電気接続端子41は、一方の固定電気接続端子31における他方の固定電気接続端子32との対向面に沿って、固定電気接続端子31と重ねられた状態で配置されている。他方の可動電気接続端子41は、固定電気接続端子32の固定電気接続端子31との対向面に沿って、固定電気接続端子32と重ねられた状態で配置されている。つまり、固定電気接続端子31,32の内側に、可動電気接続端子41,42が配置されている。
【0022】
可動電気接続端子41,42のそれぞれの先端には、固定電気接続端子31,32と同様に、円形の穴43が設けられている。穴43は、穴33と同じ大きさ及び形状を有しており、穴33と同軸的に重なるように設けられている。つまり、穴33は、穴33と同一の大きさの穴43が可動電気接続端子41,42に設けられていることにより、可動電気接続端子41,42によってその一部分においても塞がれていない。これにより、固定電気接続端子31,32の穴33がプラグ受け側に設けられた脱落防止用の突起と確実に係合することが可能である。
【0023】
また、可動電気接続端子41,42の先端部分の上端には鋸歯状部44aが、前記先端部分の下端には鋸歯状部44bが設けられている。鋸歯状部44a,44bは、それぞれ三角形状の突状部を複数有しており、これによって鋸歯状に形成されている。可動電気接続端子41,42の前記鋸歯状部44a,44bより基部2側の部分の上下端縁は、直線状に形成された直線部45a,45bとなっている。直線部45aは固定電気接続端子31,32の上端縁の直線と同一高さに設けられており、直線部45bは固定電気接続端子31,32の下端縁の直線と同一高さに設けられている。また、可動電気接続端子41,42の鋸歯状部44aの各突状部の頂点は直線部45aの延長線上に位置し、鋸歯状部44bの各突状部の頂点は直線部45bの延長線上に位置する。つまり、側面視において、鋸歯状部44a,44bの突状部は固定電気接続端子31,32から突出せず、可動電気接続端子41,42の全体が固定電気接続端子31,32の外形の内側に収まっている。
【0024】
さらに、可動電気接続端子41,42は、基部2の内部に延びており、第1空間23a内においてそれぞれの後端部分が互いに近接する方向に90度屈曲している。つまり、可動電気接続端子41の後端部分は、可動電気接続端子42側へ90度屈曲しており、可動電気接続端子42の後端部分は、可動電気接続端子41側へ90度屈曲している。このような可動電気接続端子41,42の後端部分のそれぞれには、スライダー5に係合する係合部46,47が設けられている。係合部46,47のそれぞれは、前後方向へ延びた棒状部46a,47aと、棒状部46a,47aの後端に設けられた球状部46b,47bとを備えている。
【0025】
基部2の前側寄りの部分には、左右方向に延びた回動軸6が配されており、この回動軸6が固定電気接続端子31,32及び可動電気接続端子41,42を貫通している。可動電気接続端子41,42は、回動軸6が貫通するための円形の穴が設けられており、この穴の直径は回動軸6の直径よりも若干大きい。これにより、可動電気接続端子41,42は、回動軸6を中心として、上下方向に回動可能となっている。また、基部2の前面には、固定電気接続端子31及び可動電気接続端子41を配置するための四角形の穴25aと、固定電気接続端子31及び可動電気接続端子41を配置するための四角形の穴25bとが左右に並んで開口している。穴25a,25bは、高さ(上下方向長さ)が固定電気接続端子31の高さよりも大きく、幅(左右方向長さ)が固定電気接続端子31の幅と可動電気接続端子41の幅との合計よりも若干大きい穴であり、図3に示すように基部2の第1空間23aに繋がっている。固定電気接続端子31,32は、当該穴25a,25bと上下方向の中央位置を合わせた状態で配置される。かかる穴25a,25bが設けられていることにより、可動電気接続端子41,42が干渉されずに回動することができるようになっている。具体的には、固定電気接続端子31,32の高さが6.5mm、その幅が0.8mm、基部2の前面からの突出長さが16.8mmであり、固定電気接続端子31,32の対向面間の距離が12.5mm、可動電気接続端子41,42の高さが6.5mm、その幅が0.8mm、基部2の前面からの突出長さが16.8mm、直線部45a,45bの基部2の前面からの長さが9.8mmであり、穴25a,25bの高さが8mm、幅が1.6mmである。
【0026】
スライダー5は左右に長い部材であり、その中央位置に直方体形状の係合ブロック51を備えている。図4に示すように、この係合ブロック51の正面には、2つの傾斜した長穴51a,51bが左右に設けられており、これらの長穴51a,51bに前述の可動電気接続端子41,42の係合部46,47の球状部46b,47bが係合している。つまり、長穴51a,51bは、球状部46b,47bの直径よりも若干大きい幅を有しており、かかる長穴51a,51bに球状部46b,47bが挿入されている(図3及び図4参照)。長穴51a,51bは、右に進むにしたがって高くなるように傾斜している。図7は、スライダー5が可動ストロークの左端まで移動したときの基部2の内部の状態を示す電源プラグ1の断面図である。図7に示すように、スライダー5が後述するように左右に移動すると、球状部46b,47bが長穴51a,51b内を移動することにより、球状部46b,47bの位置が上下に変化する。
【0027】
スライダー5は、係合ブロック51の左右両側に断面が円形の棒状部52a,52bを備えており、棒状部52a,52bのそれぞれの先端に操作部53a,53bを備えている。操作部53a,53bは、棒状部52a,52bよりも直径が大きい円盤状をなしており、棒状部52a,52bと同軸的に接続されている。また、固定電気接続端子31,32は、長手方向中間位置において図示しない穴が設けられており、固定電気接続端子31の穴にスライダー5の棒状部52aが貫通しており、固定電気接続端子32の穴にスライダー5の棒状部52bが貫通している。これらの固定電気接続端子31,32の穴は、棒状部52a,52bよりも若干直径が大きい円形をなしている。また、係合ブロック51の左右方向の長さは、固定電気接続端子31及び32の間の距離よりも短く、固定電気接続端子31及び32の間で左右方向に移動可能である。これにより、スライダー5は左右方向に移動可能となっている。
【0028】
スライダー5は、固定電気接続端子31,32の間の距離と係合ブロック51の左右方向長さとの差と同一の長さだけ、即ち係合ブロック51の左右方向の移動ストロークの長さだけ、基部2の左右方向の長さよりも長くなっている。また、図5に示すように、基部が設けられている。穴24a,24bは、操作部53a,53bよりも若干直径が大きくしかも左右方向の長さが若干長い形状を有している。これにより、右側(図中上側)の穴24aには右側の操作部53aの全体が挿入可能であり、操作部53aが穴24aに挿入されたときには、操作部53aが基部2の側面から突出することなく、操作部53aの側端面と基部2の側面とが同一平面を形成する(図4参照)。同様に、左側(図中下側)の穴24bには左側の操作部53bの全体が挿入可能であり、操作部53bが穴24bに挿入されたときには、操作部53bが基部2の側面から突出することなく、操作部53bの側端面と基部2の側面とが同一平面を形成する。かかる構成とすることにより、ユーザは、操作部53a又は53bを押動して穴24a又は24bに押し込むことにより、スライダー5を左右方向へ移動させることができる(図4及び図7参照)。
【0029】
上述したように、可動電気接続端子41,42は、側面視において固定電気接続端子31,32の外形の内側に収まるように配置されている。この状態をアンロック状態という。かかるアンロック状態においては、スライダー5が可動範囲内の左側限界位置に位置している。つまり、アンロック状態においては、スライダー5の右側の操作部53aの全体が基部2の右側の穴24aに挿入され、左側の操作部53bが基部2の左側面から突出した状態となっている。このとき、可動電気接続端子41,42の球状部46b,47bは、長穴51a,51bの右端に位置している。したがって、このとき球状部46b,47bは、上下方向の可動範囲内において、上側限界位置に配置されている。
【0030】
このようなアンロック状態では、上述したように可動電気接続端子41,42が固定電気接続端子31,32の外形の内側に収まっている。かかる電源プラグ1は、コンセント(プラグ受け)に挿入可能である。図8は、コンセントの寸法を説明するための正面図であり、図9は、その平面断面図である。図8に示すように、コンセント7の刃受穴71,72の寸法は、図中右側の(左側の固定電気接続端子32及び可動電気接続端子42が挿入される)刃受穴72の高さが約7mm、幅が約2.2mm、図中左側の(右側の固定電気接続端子31及び可動電気接続端子41が挿入される)刃受穴71(接地側刃受穴)の高さが約8.7mm、幅が約2.2mm、両刃受穴の距離(両刃受穴の左右方向中心間の距離)が約12.7mmである(JIS C 8303参照)。また、図9に示すように、コンセント7の刃受穴71,72の奥側には、一対の磁性金属製の刃受73,74が配置されている。刃受73及び74のそれぞれは、左右一対の当接部材73a,73b及び74a,74bによって構成されている。図9に示すように、両刃受73,74それぞれの外側に配置されている当接部材73a,74aには、突起(ボッチ)75が設けられている。電源プラグ1の固定電気接続端子31,32及び可動電気接続端子41,42は、アンロック状態において、かかるコンセント7の刃受穴71,72に挿入される。このとき、刃受73の当接部材73a,73bに固定電気接続端子31及び可動電気接続端子41が挟まれ、刃受74の当接部材74a,74bに固定電気接続端子32及び可動電気接続端子42が挟まれる。また、当接部材73aの突起75が固定電気接続端子31の穴33に係合し、当接部材74aの突起75が固定電気接続端子32の穴33に係合する。
【0031】
ユーザは、上記のようにアンロック状態の電源プラグ1をコンセント7に挿入した後、スライダー5の操作部53bを基部2に押し込み、スライダー5を移動させる。これにより、スライダー5の係合ブロック51が図4において図中右側に移動し、可動電気接続端子41,42の球状部46b,47bが長穴51a,51bに対して相対的に移動し、図7に示すように球状部46b,47bが長穴51a,51bの左端に位置する。したがって、このとき球状部46b,47bは、上下方向の可動範囲内において、下側限界位置に配置される。つまり、上記の操作によって、球状部46b,47bが下方へ移動し、可動電気接続端子41,42が回動軸6を中心として回動し、可動電気接続端子41,42の基部2から突出した部分が上方へ移動する。このときの回転角度は8°である。このときの電源プラグ1の状態をロック状態という。
【0032】
ここで、電源プラグ1がアンロック状態からロック状態へ移行するときに、可動電気接続端子41,42が回動するが、可動電気接続端子41,42は固定電気接続端子31,32の内側に配置されているため、固定電気接続端子31,32の穴33と刃受73,74の突起75との係合が、可動電気接続端子41,42の移動によって妨げられることがない。
【0033】
図10は、ロック状態における電源プラグ1の構成を示す側面断面図である。図に示すように、ロック状態においては、可動電気接続端子41,42が固定電気接続端子31,32よりも上方に突出する。ロック状態の可動電気接続端子41,42は、アンロック状態のときに対して8°回動している。このため、直線部45a,45bは水平面に対して8°傾斜している。換言すると、ロック状態において、可動電気接続端子41,42の固定電気接続端子31,32から突出した部分のうち、直線部45a,45bの領域においては、基部2から先端に向かって一定の割合で固定電気接続端子31,32からの突出量が増大している。本実施の形態における電源プラグ1においては、ロック状態のときに直線部45a,45bの最も先端側の簡所が固定電気接続端子31,32の上端から約1.4mm突出することとなる。つまり、コンセント7の刃受穴72の下底に固定電気接続端子32の下端が当接した場合、刃受穴72の上端よりもさらに約0.4mmだけ上方に、直線部45bの最も先端側の箇所が位置することとなる。また、このとき、刃受穴71の上端よりもさらに約0.77mmだけ上方に、可動電気接続端子42の鋸歯状部44aの最も先端の箇所が位置することとなる。このように、ロック状態においては、可動電気接続端子41,42が、コンセント7の内部において刃受穴71,72の上端よりも上方まで突出するため、電源プラグ1にコンセント7から離反する方向の力が作用しても、刃受穴71,72の上端に可動電気接続端子41,42の上端面が当接し、電源プラグ1の脱落が防止される。
【0034】
また、コンセント7の前記刃受穴刃受穴71,72が設けられた部材の厚みは例えば10mm程度と十分に小さいため、可動電気接続端子41,42が回動範囲の上限に到達するまでに刃受穴71,72の上端に当接することはない。したがって、このような場合には上述したように可動電気接続端子41,42が水平状態から8°回動してロック状態へと移行し、電源プラグの脱落が防止される。一方,コンセント7の刃受穴71,72が設けられた部材が厚い場合には,可動電気接続端子41,42が回動範囲の上限に到達するまでに刃受穴71,72の上端に当接する場合がある。かかる場合であっても、直線部45a,45bの基部2の前面からの長さが9.8mm設けられているので、前記部材の厚さが9.8mm未満であれば、可動電気接続端子41,42の回動の途中で直線部45bが刃受穴72の上端に当接することになる。事実上、刃受穴71,72が設けられている部材の厚さが9.8mm以上となることはないので、可動電気接続端子42が直線部45bにおいて刃受穴72の上端に確実に当接することになる。このように可動電気接続端子41,42の刃受穴71,72の上端に当接した位置よりも先端側の部分は,刃受穴71,72の上端よりも上方に位置するため,可動電気接続端子41,42が回動範囲の上限に達するまでに刃受穴71,72の上端に当接した場合でも、電源プラグ1にコンセント7から離反する方向の力が作用すれば刃受穴71,72の上端に可動電気接続端子41,42の前記先端側の部分が干渉し、電源プラグ1の脱落が防止される。
【0035】
また、電源プラグ1がコンセント7に挿入され、上記のように可動電気接続端子41,42が回動されてロック状態となった場合において、電源プラグ1にコンセント7から離反する方向の力が作用すると、可動電気接続端子41,42が刃受穴71,72の上端と当接し、可動電気接続端子41,42に水平状態へと戻る方向の力が作用する。電源プラグ1にコンセント7から離反する方向の力が十分に強い場合には、可動電気接続端子41,42が水平状態へ戻る方向に回動することとなるが、可動電気接続端子41,42の先端には鋸歯状部44aが設けられているので、鋸歯状部44aの突状部が刃受穴71,72の上端と当接し、より一層電源プラグ1が脱落しにくくなる。
【0036】
なお、たとえ刃受穴71,72が設けられている部材の厚さが9.8mm以上となっても、可動電気接続端子41,42が回動することで、鋸歯状部44aが刃受穴71,72の上端に当接することとなるので、電源プラグ1の脱落防止効果を得ることができる。
【0037】
また、アンロック状態においては、固定電気接続端子31,32の穴33と可動電気接続端子41,42の穴43とが重なっているため、コンセント7の刃受73,74に設けられた突起75が固定電気接続端子31,32の穴33に係合する。ここで、本実施の形態においては、可動電気接続端子41,42が固定電気接続端子31,32の対向面に沿って設けられているため、電源プラグ1がコンセント7に挿入されたときに、固定電気接続端子31,32に設けられた穴33と、前記対向面とは反対側に位置する突起75とが係合する。固定電気接続端子31,32を挟んで突起75の反対側にある可動電気接続端子41,42が回動してもこの係合が妨げられることはない。したがって、ロック状態においても、突起75と穴33とが確実に係合し、電源プラグ1の脱落が防止される。
【0038】
また、ロック状態においては、図10に示すように、可動電気接続端子41,42が回動することにより、穴33と穴43の位置がずれる。しかし、この状態においても穴33と穴43とは一部で重なっており、また可動電気接続端子41,42の外側の空間と穴33とが重なった領域も開放されているので、穴33が可動電気接続端子41,42によって完全に塞がれることはない。したがって、ロック状態において、上述のように穴33と穴43との重複した開放部分、及び可動電気接続端子41,42の外側の空間と穴33とが重なった開放部分が存在するため、突起75の高さが穴33の深さ(固定電気接続端子31,32の厚さ)よりも大きくても、突起75の先端部分が上記の開放部分に収まり、当該先端部分が可動電気接続端子41,42に乗り上げることを防止できる。これにより、固定電気接続端子31,32と当接部材73a,74aとを密着させることができ、また、ロック状態でも穴33と突起75とが確実に係合し、電源プラグ1の脱落防止効果を得ることができる。
【0039】
また、本実施の形態における電源プラグ1は、可動電気接続端子41,42が導電性材料により構成されているため、固定電気接続端子31と可動電気接続端子41とが一体的に一方の電気接続端子として機能し、固定電気接続端子32と可動電気接続端子42とが一体的に他方の電気接続端子として機能する。よって、可動電気接続端子41,42によってコンセント7との電気接続機能が損なわれることがない。さらには、ロック状態においては固定電気接続端子31,32の上方に可動電気接続端子41,42が突出し、固定電気接続端子31(32)と可動電気接続端子41(42)とが先端に向かうにしたがって扇状に広がることとなる。つまり、電源プラグ1の端子における刃受73,74との接触面積を大きく確保することができる。これにより、良好な電気接続性を確保することができる。
【0040】
(その他の実施の形態)
なお、上述した実施の形態においては、可動電気接続端子41,42に直線部45a,45bを設け、その先端側に鋸歯状部44a,44bを設け、可動電気接続端子41,42を回動軸6回りに回動させることにより、直線部45a,45bが固定電気接続端子31,32の上端の直線(水平方向)に対して傾斜する構成について述べたが、これに限定されるものではない。ロック状態において、可動電気接続端子の基部2から突出した部分におけるコンセント7の刃受穴71,72の上端に対応する位置を含む領域が、前記基部からその先端部に向かって所定の割合で突出量が増大する構成であればよい。つまり、可動電気接続端子の基部2から突出した部分において、中間の領域のみ上端が直線状をなし、その中間領域の前後の領域の上端の形状が、鋸歯状部44a,44bの様に屈曲していたり、曲線状に構成されていてもよい。また、可動電気接続端子の基部2から突出した部分を、固定電気接続端子31,32の基部2から突出した部分と同一の形状とするなど、可動電気接続端子の基部2から突出した部分の上端を全体にわたって直線状に構成してもよい。
【0041】
また、上述した実施の形態においては、可動電気接続端子41,42が回動軸6を中心として回動する角度を8°としたが、これに限定されるものではない。可動電気接続端子の先端が、刃受穴71,72の上端よりも上方に位置する角度であれば、どのような角度とすることも可能であるが、脱落防止機能を確実に発揮できるためには、4〜20°程度の範囲内とすることが好ましい。
【0042】
さらに、可動電気接続端子が上下方向に直線移動することにより、アンロック状態からロック状態に移行する構成としてもよい。この場合、可動電気接続端子の上端の一部を基部2から先端部へ向かうにしたがって高くなるように傾斜させ、この傾斜部を含めて可動電気接続端子の全体が側面視において固定電気接続端子31,32の外形内に収まるようにし、このアンロック状態から可動電気接続端子が上方へ移動することにより、前記傾斜部が固定電気接続端子31,32の上方に突出し、当該電源プラグにコンセント7から離反する方向の力が作用したときに、この傾斜部がコンセント7の刃受穴71,72の上端に当接することによって電源プラグ1の脱落が防止できるようにしてもよい。
【0043】
また、上述した実施の形態においては、ロック状態において、可動電気接続端子41,42が固定電気接続端子31,32の上方に突出する構成について述べたが、これに限定されるものではない。ロック状態において、可動電気接続端子41,42が固定電気接続端子31,32の下方に突出する構成としてもよい。さらに、ロック状態において、一方の可動電気接続端子41と、可動電気接続端子42とが、それぞれ反対の方向に突出する構成(例えば、可動電気接続端子41が固定電気接続端子31の上方に突出し、可動電気接続端子42が固定電気接続端子32の下方に突出する構成)としてもよい。ここで、可動電気接続端子41,42が同一方向に突出する構成では2つの可動電気接続端子41,42と2つの固定電気接続端子31,32とが刃受穴71,72の上端及び下端に係合する。これに対して可動電気接続端子41,42が互いに反対の方向に突出する構成では、上方に突出した可動電気接続端子がその挿入されている刃受穴の上端に係合し、下方に突出した可動電気接続端子がその挿入されている刃受穴の下端に係合するため、固定電気接続端子31,32が刃受穴71,72の上下端に係合することがない。このため、可動電気接続端子41,42が同一方向に突出する構成の方が、可動電気接続端子41,42が互いに反対方向に突出する構成よりも脱落機能に優れ、好ましい。
【0044】
また、上述した実施の形態においては、ロック状態において、可動電気接続端子41,42が、固定電気接続端子31,32の上端から突出した部分のうち直線部45a,45bが、基部2からその先端部に向かって所定の割合で突出量が増大する構成とした。ここでいう所定の割合とは、上記のように直線的に突出量が増大する構成だけでなく、可動電気接続端子の前記直線部45a,45bに相当する部分に、僅かな凹凸が存在したり、僅かに湾曲していることで高さが非線形に変化する(固定電気接続端子31,32の高さの5%以下の変化量)場合も含む概念である。
【0045】
また、上述した実施の形態においては、アンロック状態において固定電気接続端子31,32に設けられた穴33の全体と、可動電気接続端子41,42に設けられた穴の全体とが重なり、穴33が閉塞されない構成について述べたが、これに限定されるものではない。可動電気接続端子41,42に、上方又は下方に切り欠かれた切り欠き部を設け、この切り欠き部によってアンロック状態における固定電気接続端子31,32の穴33を閉塞しない構成としてもよい。また、この場合において、ロック状態でも切り欠き部が穴33の全体と重なり、穴33の全体を閉塞しない構成とすることもできる。これにより、コンセット7の刃受73,74の突起75と穴33との係合をより一層確実にし、当接部材73a,74aと固定電気接続端子31,32との密着をより一層確実にすることができる。
【0046】
なお、穴43の形状は、円形だけでなく、楕円でもよい。当該穴の形状を、可動電気接続端子41,42の回動方向に長い楕円とすることにより、ロック状態において可動電気接続端子の当該穴と固定電気接続端子31,32の穴33との重複する部分をより大きくすることができ、これにより、当接部材73a,74aと固定電気接続端子31,32との密着をより一層確実にすることができる。また、穴43の形状は、四角、六角等その他の形状であってもよい。
【0047】
また、上述した実施の形態においては、可動電気接続端子41,42が固定電気接続端子31,32の対向面に沿って設けられた構成について述べたが、これに限定されるものではない。可動電気接続端子が固定電気接続端子の対向面の反対側の面に沿って設けられていてもよい。
【0048】
また、上述した実施の形態においては、導電性材料により構成された可動電気接続端子41,42を備える構成について述べたが、これに限定されるものではない。可動電気接続端子41,42に代えて、可動電気接続端子41,42と同一形状の絶縁材料により構成された脱落防止部材を備える構成としてもよい。この場合、当該脱落防止部材は、電気接続端子としての機能を有しない。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明の電源プラグは、電力供給用のプラグ受けに差し込まれる電源プラグとして有用である。
【符号の説明】
【0050】
1 電源プラグ
2 基部
21 第1部分
22 第2部分
23a 第1空間
23b 第2空間
24a,24b 穴
25a,25b 穴
31,32 固定電気接続端子
33 穴
34 穴
41,42 可動電気接続端子
43 穴
44a,44b 鋸歯状部
45a,45b 直線部
46,47 係合部
46a,47a 棒状部
46b,47b 球状部
5 スライダー
51 係合ブロック
51a,51b 長穴
52a,52b 棒状部
53a,53b 操作部
6 回動軸
7 コンセント
71,72 刃受穴
73,74 刃受
73a,73b,74a,74b 当接部材
75 突起

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基部と、
前記基部から突出した状態で前記基部に固定され、互いに平行な平板状をなす一対の固定電気接続端子と、
前記一対の固定電気接続端子の面に沿って前記基部から突出した状態で前記基部に取り付けられ、前記固定電気接統端子の長手方向に対して交差する方向へ移動可能とされ、互いに平行な平板状をなす一対の脱落防止部材と、
前記基部に操作可能に設けられており、操作によって前記脱落防止部材を前記固定電気接続端子の長手方向に対して交差する方向へ移動させ、前記脱落防止部材が前記固定電気接続端子の長手方向に対して交差する方向の側縁部から突出しない第1状態から、前記固定電気接続端子の前記側縁部から突出する第2状態へ切り替える切替部と、
を備え、
前記脱落防止部材は、前記第2状態において前記固定電気接続端子の前記側縁部から突出した部分のうち、少なくとも前記固定電気接続端子が挿入されるプラグ受けの穴の端部に対応する位置を含む領域において、前記基部からその先端部に向かって所定の割合で突出量が増大するように構成されている、電源プラグ。
【請求項2】
前記脱落防止部材は、前記一対の固定電気接続端子が並ぶ方向へ延びる回動軸を中心として回動可能であり、前記固定電気接続端子の長手方向に対して交差する方向の前記脱落防止部材の側縁部が前記第1状態において前記固定電気接続端子の長手方向と平行な直線状に形成されており、前記切替部の操作によって前記第1状態から所定角度回動することにより、前記側縁部が前記固定電気接続端子の長手方向に対して前記所定角度傾斜するように構成されている、請求項1に記載の電源プラグ。
【請求項3】
前記一対の固定電気接続端子のそれぞれは、その先端近傍に、当該電源プラグが差し込まれるプラグ受けに設けられた突起に係合するための円形の穴が形成されており、
前記脱落防止部材は、前記第1状態において前記固定電気接続端子の前記円形の穴を閉塞しないように、前記固定電気接続端子の前記円形の穴に対応する一部が欠落している、請求項1又は2に記載の電源プラグ。
【請求項4】
前記脱落防止部材は、前記第2状態において前記固定電気接続端子の前記円形穴の少なくとも一部を閉塞しないように、その一部が欠落している、請求項3に記載の電源プラグ。
【請求項5】
前記脱落防止部材は、前記固定電気接続端子の前記円形の穴に対応する位置に穴が設けられている、請求項3又は4に記載の電源プラグ。
【請求項6】
前記一対の脱落防止部材は、前記一対の固定電気接続端子の対向面のそれぞれに沿って設けられている、請求項1乃至5のいずれかに記載の電源プラグ。
【請求項7】
前記脱落防止部材は、導電性材料により構成されている、請求項1乃至6のいずれかに記載の電源プラグ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−14463(P2011−14463A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−159219(P2009−159219)
【出願日】平成21年7月3日(2009.7.3)
【出願人】(508357729)株式会社シィファクトリィ (1)
【Fターム(参考)】