説明

電源モジュールの冷却回路を備える自動車車両

本発明は、電源モジュール(10)によって給電される少なくとも1つの駆動用電気機械と、該電源モジュール(10)から発生する熱気の冷却回路であって、電源モジュール(10)に接続された空気入側ダクト(14)および出側ダクト(15)、出側ダクト(15)の出口で空気循環を加速させる空気脈動装置(16)、ならびに脈動装置(16)から送られてくる空気を車両の後方に排出する抽出ダクト(17)を備える冷却回路とを具備する車両において、排出ダクト(17)の空気出口(171)が車両のフロア(9)下に突き出るように空気排出ダクト(17)が配置されることを特徴とする車両、とりわけ自動車車両に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラグイン式または非プラグイン式の、熱/電気ハイブリッド型または完全電気型などである自動車車両に関する。
【0002】
かかる車両は、電源モジュールによる給電を受ける少なくとも1つの駆動用電気機械と、そのモジュールの冷却回路とを備える。
【背景技術】
【0003】
従来、電源モジュールには抽出ダクトが接続されており、モジュール動作時に発生する熱気をそのダクトによって排出できるようになっている。
【0004】
実際、1つまたは複数のバッテリなど、電源モジュールの良好な動作を確保するためには、電源モジュールから発生する熱気を排出する必要がある。その熱気が効果的に排出されないと、電源モジュールおよびその各構成要素が損傷する危険があり、それによって、いずれは電源モジュールおよびその各構成要素の動作不良へとつながりかねない。
【0005】
さらに、熱気が排出されないと、乗員の温度的な快適性が損なわれる危険がある。
【0006】
そこで、その熱気が車両の外にできるだけ速やかに排出されるようにする必要がある。
【0007】
一方、一般にトランクのフロアにおいて車両後部座席のすぐ背後に配置される電源モジュールは、それ自体大いにかさばるものであることを考えると、冷却回路の大きさを最適化できることは重要である。
【0008】
電源モジュールおよびその冷却回路が場所をとると、トランクの有効空間はそれだけ減ることになる。
【0009】
米国特許公開公報2008/0196957号が教示するように、冷却回路は車両後部座席の背後に配置されて車両後方に延びており、排出ダクトは、トランクと車両後部フェンダの間のトランクの傍らに、または直に車両のトランク内部に開口する。
【0010】
そのため、熱気の排出ダクトは車両の車室後方の車体内に完全に収まったままである。
【0011】
かかる設置には、極めてかさばる上に、熱量を素早く車外に排出することができないという欠点がある。
【0012】
その結果、乗員、とりわけ後部乗員の温度的な快適性が損なわれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】米国特許公開公報第2008/0196957号
【発明の概要】
【0014】
本発明は、コンパクトな解決策を提案しつつこれらの欠点を補強することを目的とし、熱量を電源モジュールの直近で排出することができ、それによって同時に冷却回路の寸法と乗員の温度的快適性を最適化できるようにする。
【0015】
本発明による冷却回路の設置によってもたらされるもう1つの利点は、車両乗員に生じうる聴覚的影響を最小限に抑えながら、熱気の排出を加速する装置を備えることにある。
【0016】
そのため、本発明は、電源モジュールによって給電される少なくとも1つの駆動用電気機械と、該電源モジュールから発生する熱気の冷却回路であって、電源モジュールに接続された空気入側ダクトおよび出側ダクト、出側ダクトの出口で空気循環を加速させる空気脈動装置、ならびに脈動装置から送られてくる空気を車両の後方に排出する抽出ダクトを備える冷却回路とを具備する車両において、空気排出ダクトの空気出口が車両のフロア下に突き出るように空気排出ダクトが配置されることを特徴とする車両、とりわけ自動車車両を提案する。
【0017】
1つの特徴によれば、排出ダクトの空気出口は、車両のホイールハウス直近の車両フロアの下に突き出る。
【0018】
もう1つの特徴によれば、排出ダクトの空気出口は、車両のホイールハウス直近であって、ホイールハウス後方の車両フロアの下に突き出る。
【0019】
もう1つの特徴によれば、脈動装置は、車体の外板とホイールハウスの後方内側パネルの間に配置される。
【0020】
もう1つの特徴によれば、入側および出側ダクトは、電源モジュールの同じ側面に接続され、相補的な形状をなす。
【0021】
ダクトの1つの特徴によれば、出側ダクトは、電源モジュール出口に接続された第1の区間と、第1の区間の出口と脈動装置の入口の間に接続された第2の区間とを備え、第1と第2の区間の間は、連結ベローズ によって連結され、同時に、第1と第2の区間の柔軟な機械的結合を確保し、車両の車室への振動が再び高まるのを防ぐ。
【0022】
1つの特徴によれば、空気排出ダクトはフロア下につながれた直線部を有しており、その自由端は車両外側に向かって肘形に曲がる。
【0023】
排出ダクトのもう1つの特徴によれば、肘形屈曲部は車両後方に向けて顕著に突き抜けている。
【0024】
排出ダクトのもう1つの特徴によれば、排出ダクトの空気出口は、冷却回路を出る気流が通るときには開き、気流がないときには閉じて排出ダクトを塞ぐことができる可動弁によって閉ざされる。
【0025】
もう1つの特徴によれば、電源モジュールは車両のトランクのスペース内に配置される。
【0026】
本発明のその他の特徴および利点は、添付の図面を参照しながら例として示す以下の説明を通して明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】電源モジュールおよび本発明によるその冷却回路が設置された自動車車両後部の斜視図である。
【図2】リアホイールハウスおよび本発明による冷却回路が見えるようにした車両後部の側面図である。
【図3】図2と類似した図であって、リアバンパーを取り外した場合の車体の外に露わになる冷却回路の可視部分のみの図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
各図で、同じ要素には同じ参照番号が与えられている。
【0029】
図1に、電源モジュール10によって給電される電気モーター(図示せず)を備える車両の構造1の部分を示す。
【0030】
周知のように、構造1は、車両の車室の下部を画定するフロアであって、車内を構成するための要素を支えるフロアを少なくとも1つ備える。図1には、フロアの後部2だけが示されている。
【0031】
フロアは、プレス成形され、溶接によって互いに結合された鋼板の組立てにより、従来方法で実施される。さらに、フロアは、フロア表面を形成する鋼板、とりわけ、車両のトランク6の領域にあって耐荷重フロアを形成する鋼板9を支えるサイドレールやクロスメンバ(いずれも図示せず)などの構造要素を備える。
【0032】
図2および3に示すように、車両の垂直方向にほぼ沿って延びるホイールハウス5は、耐荷重フロア9(トランクのフロア)およびその近くに配置されたサイドレール(図示せず)などに溶接される。ホイールハウス5は、構造部品(図示せず)を介して上部が車両の外板(図示せず)に固定され、車輪上部が収まるくぼみを画定する。
【0033】
電源モジュール10は、車両の後部座席(図示せず)背後の車両のトランク6の領域の耐荷重フロア9上に固定される。固定は、近くに配置されたサイドレールおよび/またはクロスメンバ上で実施される。
【0034】
電源モジュール10は、エネルギーおよび/または動力を貯蔵し、電気モーターに供給するためのあらゆる装置を含むことができる。この装置は、例えば、プリズム形、円筒形、フレキシブルバッグ式などの形態をなし、互いの間を電気回路でつながれた鉛蓄電池、Liイオン電池などの単体要素を備えることができる。電源モジュール10は、電源モジュールを収容し保護するように堅牢で密閉性のある収容箱を形成するカバーによって、閉められるコンテナに収められる。図1に示した例では、電源モジュール10はバッテリであり、説明を簡単にするため、「バッテリ」という語は、バッテリとバッテリを収める容器を同時に示すものとして用いる。
【0035】
冷却回路は、その入側から出側に向かって、車室からバッテリ10へ新鮮な空気を供給する入側ダクト14と、バッテリによって熱せられた空気を回収する出側ダクト15であって、ベローズ153によって連結される2つの区間151および152を備える出側ダクト15と、車両の外への熱気の排出を加速するための脈動装置16と、出口で肘形になり車両のフロア下方で熱気を排出することができる排出ダクト17とを備える。
【0036】
本発明によれば、入側ダクト14は、ダクト14の入口18とその出口の間が最小限の容積となるように90度の急な角度で肘形に曲がっている。入側ダクト14の入口18はほぼフロア9の高さに配置されており、入側ダクト14は、そこからバッテリ10上部まで急激に立ち上がることによって、その出口が、平行六面体の全体形状をなすボックス10の小口面の1つにボックス10のカバーのところで密封接続されるようにする。
【0037】
その同じ小口面に、出側ダクト15の第1の区間151の入口が密封接続され、ボックス10の下部から、同じく90度の急な角度で肘形に、ただし入側ダクト14とは反対方向に延びる。
【0038】
入側ダクト14と出側ダクト15の第1の区間151とは、ホイールハウス5とバッテリ10の間の最小限のスペースを占めるように、またバッテリ10の高さを超えないように成形される。
【0039】
特に図1および2を見ると、入側ダクト14と出側ダクト15の第1の区間151のそれぞれの外形が完全に合致し、バッテリ10の小口面から実際上はみ出していないことがわかる。
【0040】
ボックス10の空気出口は入側ダクト14の入口18とほぼ同じ高さである。
【0041】
出側ダクト15の第2の区間152は、連結ベローズ153によって第1の区間151の出口に密封接続される。
【0042】
第2の区間152は、ベローズ153から、第2の区間152が密封接続される脈動装置16の入口までの間で、ほぼ90度でねじられる。
【0043】
脈動装置16はほぼ垂直な面に沿って設けられたタービンを備え、脈動装置16の入口に入ってくる空気はそのタービン軸にほぼ沿って入る。
【0044】
連結ベローズ153は、第1の機能として、出側ダクト15の第1の区間151と第2の区間152との柔軟な機械的結合を果たして、出側ダクト15の方向転換を容易にするとともに、第2の機能として、脈動装置16から発して、出側ダクト15の第2の区間152によって伝達されてバッテリ10の方に、つまり車室に向かって侵入してくる振動を緩和する働きをする。
【0045】
脈動装置16の出口12は、空気を下向きにほぼ垂直に送り出す方向、つまりトランクのフロア9と直角の方向に向けられている。
【0046】
脈動装置の出口12は、ホイールハウス5とトランクのフロア9の縁部の間で車両のフロア9に設けられた穴3のところで開口する。脈動装置16の出口12の固定は、出口12と一体をなす台座13によって行われる。穴3と台座13は、穴3への台座13の固定が密閉性をもって行われるように相補的な形状を有する。図示した実施形態によれば、穴3と台座13はほぼ三角形の形状を有する。
【0047】
この構成では、脈動装置はホイールハウス後部直近に配置され、説明例では、車両後輪のホイールハウス後方に配置される。
【0048】
脈動装置を特にこのように配置した場合、脈動装置16が車体の外板とホイールハウス5の後方内側パネル51の間に配置されるため、車室に対して脈動装置16の騒音を隠すことができるという利点がある。
【0049】
排出ダクト17は、フロア9外側で密閉台座13に対して密封接続される。
【0050】
排出ダクト17は、自由端171が車両外側に向かって肘形に曲がった直線部171を有する。
【0051】
排出ダクト17は、最初はほぼ垂直方向に延びた後、数度のねじりを与えられながら、車両後方に向けてほぼ90度で肘形に曲がる。ここに示した例では、直線部の長さは約140mmであり、肘形部に与えられるねじり角は約7.1°である。
【0052】
濡れた路面または埃っぽい路面など、厳しい条件のもとで行った車両走行テストの結果、フロア9の領域での排出の密閉度は、水や埃が冷却回路内部に侵入するのを防ぐには十分でないことが明らかになった。
【0053】
排出ダクトの直線部が、肘形部の一部から延長されることによって、フロア下方に向かって跳ね上がる水の侵入を防ぐことができる。
【0054】
また、排出回路17をホイールハウス5後部のできるだけ近くに設置することにより、跳ね上がる水や埃に対してホイールハウス5がもつデフレクタ効果が与えられる。
【0055】
直線部の長さおよび肘形部の向きは、跳ね上がる液体または固体の侵入を防ぐ一方で、熱気の排出に有利となるように最適化する。
【0056】
肘形部の出口に弁19を備えて、埃その他の固形物が排出ダクト内に侵入するのを防ぐこともできる。
【0057】
弁19は、周知のように、その上部を回転可能に取り付けられる。弁は、肘形端の開口部を重力によって自然に閉ざし、ダクト17から気流が出るときには開く。
【0058】
そのため、本発明による冷却回路により、車外への熱気の放出はバッテリの近くで、従って、より迅速に行われ、それによって車両乗員の熱的快適性が向上する。
【0059】
一方、冷却回路の容積は最大限最適化され、それによって、ホイールハウス後方の、ホイールハウスとバッテリ小口面の間の限られたスペースに収まる全体的にコンパクトなシステムを提供する。
【0060】
当然のことながら、本発明は上述した実施形態に限定されるものではない。そのため、本発明の範囲から逸脱することなく、熱気抽出ダクトの端部を右後輪後方に出すことも、入側および出側ダクトに他の形状を与えることもできる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源モジュール(10)によって給電される少なくとも1つの駆動用電気機械と、前記電源モジュール(10)から発生する熱気の冷却回路であって、前記電源モジュール(10)に接続された空気入側ダクト(14)および出側ダクト(15)、前記出側ダクト(15)の出口で空気循環を加速させる空気脈動装置(16)、ならびに前記脈動装置(16)から送られてくる空気を車両の後方に排出する空気抽出ダクト(17)を備える冷却回路とを具備する車両において、前記排出ダクト(17)の空気出口(171)が車両のフロア(9)下に突き出るように前記空気排出ダクト(17)が配置されることを特徴とする車両、とりわけ自動車車両。
【請求項2】
前記排出ダクト(17)の前記空気出口(171)が、車両のホイールハウス(5)直近の車両フロア(9)の下に突き出ることを特徴とする、請求項1に記載の車両。
【請求項3】
前記排出ダクト(17)の前記空気出口(171)が、車両のホイールハウス(5)直近であって、前記ホイールハウス(5)後方の車両フロア(9)の下に突き出ることを特徴とする、請求項2に記載の車両。
【請求項4】
前記脈動装置(16)が、車体の外板と前記ホイールハウス(5)の後方内側パネルの間に配置されることを特徴とする、請求項3に記載の車両。
【請求項5】
前記入側ダクト(14)および前記出側ダクト(15)が、前記電源モジュール(10)の同じ側面に接続され、相補的な形状をなすことを特徴とする、請求項1ないし4のいずれか一項に記載の車両。
【請求項6】
前記出側ダクト(15)が、前記電源モジュール(10)出口に接続された第1の区間(151)と、前記第1の区間(151)の出口と前記脈動装置(16)の入口の間に接続された第2の区間(152)とを備え、前記第1と第2の区間(151、152)の間は、前記第1と第2の区間(151、152)の柔軟な機械的結合を果たすとともに、車両の車室に振動が侵入するのを防ぐ働きをする連結ベローズ(153)によって連結されることを特徴とする、請求項1ないし5のいずれか一項に記載の車両。
【請求項7】
前記空気排出ダクト(17)がフロア(9)下面に接続された直線部を有していること、およびその自由端(171)が車両外側に向かって肘形に曲がっていることを特徴とする、請求項1ないし6のいずれか一項に記載の車両。
【請求項8】
前記肘形部(171)が車両後方に向けて顕著なねじりを与えられていることを特徴とする、請求項7に記載の車両。
【請求項9】
前記排出ダクト(17)の前記空気出口(171)が、前記冷却回路を出る気流が通るときには開き、気流がないときには閉じて前記排出ダクト(17)を塞ぐことができる可動弁(19)によって閉ざされることを特徴とする、請求項1ないし8のいずれか一項に記載の車両。
【請求項10】
前記電源モジュール(10)が車両のトランク(6)のスペース内に配置されることを特徴とする、請求項1ないし9のいずれか一項に記載の車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2013−503073(P2013−503073A)
【公表日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−526095(P2012−526095)
【出願日】平成22年7月27日(2010.7.27)
【国際出願番号】PCT/FR2010/051590
【国際公開番号】WO2011/023875
【国際公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【出願人】(507274799)プジョー シトロエン オートモビル エス アー (72)
【Fターム(参考)】