説明

電源ユニット及び電気機器

【課題】故障等の事故を未然に防止するための異常検出機能を備えた電気機器において、発煙が情報処理装置の内部であったものかどうかを精度良く判別できるようにする。
【解決手段】電源ユニットは、ユニット内部の空気をユニット外部へ排出するためのファンと、発煙可能性のあるユニット内部の部品よりもファンで発生した気流の上流側に設けられ、煙を検出する第1の煙検出手段と、発煙可能性のあるユニット内部の部品よりもファンで発生した気流の下流側に設けられ、煙を検出する第2の煙検出手段と、第1及び第2の煙検出手段による検出結果に基づいて、ユニット内部での発煙かユニット外部から煙が流入したかを判定する発煙判定手段と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源ユニット及び電気機器に関し、特に、電気機器の故障等の事故を防止するのに資する異常検出に好ましく適用される技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、PC等の情報処理装置が日常生活の中で大量に普及している。情報処理装置は所定の電源により駆動される。このとき、電源回路を構成するFET(Field Effect Transistor)、トランス、コイル等は大電力が加わるため発熱する。これらの発熱部品に異常が発生すると、発煙・発火につながるおそれがある。また、電源回路を構成する電解コンデンサは、異常が発生すると電解液が噴出し、使用者がこれを煙と認識する場合がある。従来、このような情報処理装置では、温度センサや煙センサ、電流検出回路等を内部に設けて異常検出を行い、保護回路等によりこれらの発熱部品を保護している。
【0003】
情報処理装置における異常検出の一例として、例えば特許文献1には、ワークステーション等のコンピュータにおいて故障等の事故を未然に防止し得る異常検出装置が開示されている。当該異常検出装置では、コンピュータの通常使用時及び電源投入時の電源の異常及び冷却ファンの停止あるいは煙の発生を検出した場合、電源を遮断することにより、進行している潜在故障を発見して事故の発生を未然に防止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平4−302315号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1で開示された異常検出装置では、電源投入時における電源異常のほか、煙を検出した場合に電源を遮断するように構成しているが、検出された煙が、情報処理装置の内部(特に発煙の可能性が高い電源ユニット)から発生したものか、ファンにより情報処理装置の外部から吸入したものであるかを判別することはできない。情報処理装置の内部から発煙していない場合にまで電源を遮断することは、ひいてはユーザの生産性低下につながることになり好ましいとはいえない。これは家電等の電気機器について同様のことがいえる。
【0006】
そこで、本発明は、故障等の事故を未然に防止するための異常検出機能を備えた電気機器において、発煙が情報処理装置の内部であったものかどうかを精度良く判別できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面である電源ユニットは、ユニット内部の空気をユニット外部へ排出するためのファンと、発煙可能性のあるユニット内部の部品よりもファンで発生した気流の上流側に設けられ、煙を検出する第1の煙検出手段と、発煙可能性のあるユニット内部の部品よりもファンで発生した気流の下流側に設けられ、煙を検出する第2の煙検出手段と、第1及び第2の煙検出手段による検出結果に基づいて、ユニット内部での発煙かユニット外部から煙が流入したかを判定する発煙判定手段と、を有する。
【0008】
また、上記の電源ユニットにおいて、発煙判定手段が、第1の煙検出手段から煙が検出されず、かつ、第2の煙検出手段から煙が検出された場合に、ユニット内部での発煙と判定するものであってもよい。
【0009】
また、上記の電源ユニットにおいて、発煙可能性のある部品の近傍に設けられ、煙を検出する第3の煙検出手段を有し、発煙判定手段が、第3の煙検出手段による検出結果に基づいて発煙箇所を特定するものであってもよい。
【0010】
また、上記の電源ユニットにおいて、発煙判定手段によりユニット内部での発煙と判定した場合に電源を遮断する異常対応処理手段を有するものであってもよい。
【0011】
本発明の一側面である電気機器は、上述した電源ユニットを備えたものである。
【0012】
また、上記の電気機器において、発煙判定手段によりユニット内部での発煙と判定した場合に該判定結果をユーザに通知する通知手段を有するものであってもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、故障等の事故を未然に防止するための異常検出機能を備えた電気機器において、発煙が情報処理装置の内部であったものかどうかを精度良く判別することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態に係るPCの内部構成を示したブロック図である。
【図2】本発明の実施形態(第1)に係るPSUの内部構成を示したブロック図である。
【図3】本発明の実施形態(第1)に係る発煙判定処理の流れを示したフローチャートである。
【図4】本発明の実施形態(第2)に係るPSUの内部構成を示したブロック図である。
【図5】本発明の実施形態(第2)に係る発煙判定処理の流れを示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0016】
[実施形態1]
図1は、本発明の第1の実施形態に係るPCの内部構成を示したブロック図である。本実施形態のPC1は、CPU2、メモリ3、HDD4、入力装置5、出力装置6、PSU7を備える。
【0017】
CPU2は、メモリ3に格納されたOSやアプリケーションプログラムに従って、情報処理装置の全体動作制御を行ったり、所定の情報処理を行う。メモリ3は、OSやアプリケーションプログラムを格納する記憶領域(ROM)、CPU2の各種処理等で用いる作業用の記憶領域(RAM)を持つ。HDD4は、各種データを保持する外部記憶装置である。
【0018】
入力装置5は、ユーザによる操作情報の入力を行う装置である。出力装置6は、各種データや機器状態の警告の画面表示や音声出力を行う装置である。また、PC1の内部に設けられたファン(後述するPSU7内のファンやその他冷却用のファン)により発生した風を装置外に排出する排気口8が設置されている。
【0019】
図2は、本実施形態に係るPSUの内部構成を示したブロック図である。本実施形態のPSU7は、コントローラ71、電源供給部72、ファン73、煙センサA74、煙センサB75を備える。
【0020】
コントローラ71は、煙センサA74及び煙センサB75の検出結果に基づいて、PSU7の内部で発煙したものかあるいは煙がPSU7の外部から流入したものかを判定し、CPU2を介して出力装置に判定結果を出力させ、またPSU7内部での発煙の場合に電源供給部72に対して異常対応処理(電源の遮断)を行わせる。電源供給部72は、発煙可能性のある部品(部品A721〜部品C723、なおこれらは例示でありこれに限定されない)を含んで構成され、PSU7内部の各部をはじめPC1全体に電源を供給する。
【0021】
ファン73は、PSU7内部の温度上昇を抑制し、特に動作時に高温に達しやすく発煙可能性のある部品(部品A721〜部品C723)を冷却するため、PC1の外気を吸気口(不図示)から吸入して排気口8へ排出する気流を作り出す。煙センサA74は、ファン73の近傍で、かつ、電源供給部72よりも該気流の上流側に配置され、煙の検出を行う。煙センサB75は、排気口8側で、かつ、電源供給部72よりも該気流の下流側に配置され、煙の検出を行う。
【0022】
図3は、本実施形態に係る発煙判定処理の流れを示したフローチャートである。コントローラ71は、所定時間経過後(ステップS101/YES)、煙センサA74及び煙センサB75から検出結果を取得する(S102)。
【0023】
そして、煙センサA74で煙が検出された場合(ステップS103/YES)、コントローラ71は、PSU7の外部から流入した煙と判定し(ステップS104)、CPU2を介して出力装置6に判定結果をユーザに通知させる(ステップS105)。
【0024】
他方、煙センサA74で煙が検出されず(ステップS103/NO)、煙センサB75で煙が検出された場合(ステップS106/YES)、コントローラ71は、PSU7の内部での発煙と判定し(ステップS107)、CPU2を介して出力装置6に判定結果をユーザに通知させる(ステップS108)。また、コントローラ71は、内部発煙に対する異常対応処理として、電源供給部72に電源の遮断を行わせる(ステップS109)。
【0025】
PCの電源が投入され電源ON状態となっている間、所定のタイミングで((ステップS101/YES)以上の動作を繰り返す(ステップS102〜ステップS106)。
【0026】
本実施形態によれば、発煙が情報処理装置の内部であったことを精度良く判別でき、内部発生の場合に電源を遮断することにより、進行している潜在的な故障を発見して事故の発生を未然に防止することが可能である。
【0027】
[実施形態2]
本発明の第2の実施形態は、ファン近傍と排気口側の2箇所以外に煙センサを複数箇所配置し、煙センサの検出結果に基づいて発煙箇所を特定できるように構成したものである。なお、本実施形態のPCの内部構成は実施形態1と同様(図1)であり、またPSUの内部構成も共通する部分が多いため、実施形態1との差異について述べることとする。
【0028】
図2は、本実施形態に係るPSUの内部構成を示したブロック図である。本実施形態のPSU7は、コントローラ71、電源供給部72、ファン73、煙センサA74、煙センサB75、煙センサC76、煙センサD77を備える。電源供給部72、ファン73、煙センサA74、煙センサB75については実施形態1と同様である。
【0029】
コントローラ71は、煙センサA74から煙センサD77の検出結果に基づいて、PSU7の内部で発煙したものかあるいは煙がPSU7の外部から流入したものかのほか、内部で発煙した場合にどの箇所で発煙したかを判定し、CPU2を介して出力装置に判定結果を出力させ、またPSU7内部での発煙の場合に電源供給部72に対して異常対応処理(電源の遮断)を行わせる。
【0030】
煙センサC76は、電源供給部72内の部品A721近傍に設けられ、煙の検出を行う。煙センサC76は、煙センサA74よりもファン73で発生した気流の下流側に配置され、かつ、煙センサB75よりも該気流の上流側に配置され、ファン73が作動している間、部品A721で発生した煙を検出する。つまり、部品A721より該気流の下流側に位置する部品(部品B722、部品C723)で発生した煙は検出できない。
【0031】
煙センサD77は、電源供給部72内の部品B722近傍に設けられ、煙の検出を行う。つまり、煙センサD77は、煙センサC76よりもファン73で発生した気流の下流側に配置され、かつ、煙センサB75よりも該気流の上流側に配置され、ファン73が作動している間、部品A721及び部品B722で発生した煙を検出する。つまり、部品B721より該気流の下流側に位置する部品(部品C723)で発生した煙は検出できない。
【0032】
図5は、本実施形態に係る発煙判定処理の流れを示したフローチャートである。コントローラ71は、所定時間経過後(ステップS201/YES)、煙センサA74、煙センサB75、煙センサC76、煙センサD77から検出結果を取得する(S202)。
【0033】
煙センサA74で煙が検出された場合(ステップS203/YES)、コントローラ71は、PSU7の外部から流入した煙と判定し(ステップS204)、CPU2を介して出力装置6に判定結果をユーザに通知させる(ステップS205)。
【0034】
煙センサA74で煙が検出されず(ステップS203/NO)、煙センサC76で煙が検出された場合(ステップS206/YES)、コントローラ71は、部品A721での発煙と判定し(ステップS207)、CPU2を介して出力装置6に判定結果をユーザに通知させる(ステップS212)。
【0035】
煙センサC76で煙が検出されず(ステップS206/NO)、煙センサD77で煙が検出された場合(ステップS208/YES)、コントローラ71は、部品B722での発煙と判定し(ステップS209)、CPU2を介して出力装置6に判定結果をユーザに通知させる(ステップS212)。
【0036】
煙センサD77で煙が検出されず(ステップS208/NO)、煙センサB75で煙が検出された場合(ステップS210/YES)、コントローラ71は、部品C723での発煙と判定し(ステップS207)、CPU2を介して出力装置6に判定結果をユーザに通知させる(ステップS212)。
【0037】
PSU7内部での発煙として、部品A721、部品B722、部品723のいずれかから煙が発生したとの判定結果を通知した後(ステップS212)、コントローラ71は、内部発煙に対する異常対応処理として、電源供給部72に電源の遮断を行わせる(ステップS213)。
【0038】
PCの電源が投入され電源ON状態となっている間、所定のタイミングで((ステップS201/YES)以上の動作を繰り返す(ステップS202〜ステップS205、ステップS206、ステップS208、ステップS210)。
【0039】
本実施形態によれば、発煙が情報処理装置の内部であったものかどうかに加えて、発煙可能性の高い部品の配置領域において発煙箇所を精度良く特定することが可能である。
【0040】
なお、上述する実施形態は、本発明の好適な実施形態であり、上記実施形態のみに本発明の範囲を限定するものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更を施した形態での実施が可能である。例えば、上記の実施形態では、ファンを排気口から離れた位置に(ファンで発生する気流の上流側に)設けたが、排気口近傍(該気流の上流側)にファンを配置するように構成してもよく、この場合でも同様の発煙判定処理となる。また、本発明は、機器内部の冷却機構(ファン)を備えた電気機器に適用することができ、このような電気機器としては、サーバ等の情報処理装置、ビデオレコーダ等の映像再生記録装置、またテレビ受信装置等が挙げられる。
【符号の説明】
【0041】
1 PC
2 CPU
3 メモリ
4 HDD
5 入力装置
6 出力装置
7 PSU
8 排気口
71 コントローラ
72 電源供給部
73 ファン
74 煙センサA
75 煙センサB
76 煙センサC
77 煙センサD
721 部品A
722 部品B
723 部品C

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユニット内部の空気をユニット外部へ排出するためのファンと、
発煙可能性のあるユニット内部の部品よりも前記ファンで発生した気流の上流側に設けられ、煙を検出する第1の煙検出手段と、
発煙可能性のあるユニット内部の部品よりも前記ファンで発生した気流の下流側に設けられ、煙を検出する第2の煙検出手段と、
前記第1及び第2の煙検出手段による検出結果に基づいて、ユニット内部での発煙かユニット外部から煙が流入したかを判定する発煙判定手段と、
を有することを特徴とする電源ユニット。
【請求項2】
前記発煙判定手段は、前記第1の煙検出手段から煙が検出されず、かつ、前記第2の煙検出手段から煙が検出された場合に、ユニット内部での発煙と判定することを特徴とする請求項1に記載の電源ユニット。
【請求項3】
発煙可能性のある部品の近傍に設けられ、煙を検出する第3の煙検出手段を有し、
前記発煙判定手段は、前記第3の煙検出手段による検出結果に基づいて発煙箇所を特定することを特徴とする請求項1又は2に記載の電源ユニット。
【請求項4】
前記発煙判定手段によりユニット内部での発煙と判定した場合に電源を遮断する異常対応処理手段を有することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の電源ユニット。
【請求項5】
前記請求項1から4のいずれか1項に記載の電源ユニットを備えることを特徴とする電気機器。
【請求項6】
前記発煙判定手段によりユニット内部での発煙と判定した場合に前記判定結果をユーザに通知する通知手段を有することを特徴とする請求項5に記載の電気機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−216012(P2012−216012A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−80067(P2011−80067)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(311012169)NECパーソナルコンピュータ株式会社 (116)
【Fターム(参考)】