説明

電源供給部及びそれを用いた有機電界発光表示装置

【課題】電源を受ける素子に異常電圧が印加されることを防止して損傷しないようにする電源供給部及びそれを用いた有機電界発光表示装置を提供する。
【解決手段】本発明は、入力電源Vinを受ける入力端、出力電源を出力する出力端、及び駆動を制御するイネーブル信号が入力されるイネーブル端を備えるパワーブロックと、前記入力端とイネーブル端とに入力電源Vinを同時に伝達する入力電源部と、前記イネーブル端に伝達される前記入力電源Vinの電圧を調整して前記パワーブロックの駆動時点を決定する制御部と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源供給部及びそれを用いた有機電界発光表示装置に関し、より詳細には、電源供給部から出力される出力電圧を安定化させることにより、素子が損傷することを防止する電源供給部及びそれを用いた有機電界発光表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、陰極線管(Cathode Ray Tube)の短所である重量及び体積を減らすことが可能な各種平板表示装置が開発されている。平板表示装置には、液晶表示装置(Liquid Crystal Display Device)、電界放出表示装置(Field Emission Display Device)、プラズマ表示パネル(Plasma Display Panel)、及び有機電界発光表示装置(Organic Light Emitting Display Device)などがある。
【0003】
平板表示装置のうち、有機電界発光表示装置は、電流の流れに対応して発生する電子と正孔との再結合により光を発生する有機発光ダイオード(Organic Light Emitting Diode:OLED)を用いて画像を表示する。また、有機発光ダイオードは、発光層が有機物で形成されている。
【0004】
前記有機電界発光表示装置は、優れた色再現性や薄い厚さなどの様々な利点により、応用分野において、携帯電話用のほか、PDA、MP3プレーヤーなどに市場が大きく拡大している。
【0005】
このような有機電界発光表示装置は、電源供給部から入力電源を受けて動作する。このとき、電源供給部は、入力電源と、電源供給部の動作を決定するイネーブル信号とを受けて動作するが、入力電源は、駆動初期において、直ちに電源供給部に伝達されるのに対し、イネーブル信号は、タイミングコントローラを介して伝達される。したがって、タイミングコントローラが動作した後にイネーブル信号が電源供給部に伝達されるため、イネーブル信号は、入力電源が伝達された後に時間差をおいて電源供給部に伝達される。
【0006】
前記時間差によって電源供給部が誤動作を起こし、電源供給部で正常動作する前に出力電源の電圧が出力され、出力電源の電圧が急激に上昇する場合が発生する。
【0007】
このように出力電源の電圧が急激に上昇すると、電源供給部を介して電圧が供給される素子が損傷するという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】大韓民国特許出願公開第2008−0010581号明細書
【特許文献2】大韓民国特許出願公開第2006−0080272号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、電源を受ける素子に異常電圧が印加されることを防止して損傷しないようにする電源供給部及びそれを用いた有機電界発光表示装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、本発明の第1態様は、入力電源を受ける入力端、出力電源を出力する出力端、及び駆動を制御するイネーブル信号が入力されるイネーブル端を備えるパワーブロックと、前記入力端とイネーブル端とに入力電源を同時に伝達する入力電源部と、前記イネーブル端に伝達される前記入力電源の電圧を調整して前記パワーブロックの駆動時点を決定する制御部と、を備える電源供給部を提供するものである。
【0011】
上記の目的を達成するために、本発明の第2態様は、データ信号及び走査信号を受信して画像を表示する画素部と、制御信号を生成するタイミング制御部と、前記画素部に前記データ信号を伝達するデータ駆動部と、前記画素部に前記走査信号を伝達する走査駆動部と、前記画素部、前記データ駆動部、及び前記走査駆動部の少なくとも1つに駆動電源を伝達する電源供給部と、を備え、前記電源供給部は、入力電源を受ける入力端、出力電源を出力する出力端、及び駆動時点を決定する信号が入力されるイネーブル端を備えるパワーブロックと、前記入力端とイネーブル端とに入力電源を同時に伝達する入力電源部と、前記制御信号に対応して前記イネーブル端に伝達される前記入力電源の電圧を調整することにより、前記パワーブロックの駆動時点を決定する制御部と、を備える有機電界発光表示装置を提供するものである。
【0012】
上記の目的を達成するために、本発明の第3態様は、入力電源を入力端とイネーブル端とに同時に伝達し、前記イネーブル端に伝達される前記入力電源の電圧によってパワーブロックが駆動停止するステップと、制御信号を伝達し、前記イネーブル端に入力される電圧を調整して前記パワーブロックが駆動するステップと、前記パワーブロックから出力される出力電圧を用いて駆動開始するステップと、を含む有機電界発光表示装置の駆動方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る電源供給部及びそれを用いた有機電界発光表示装置によれば、電源供給部から出力電源の電圧を安定的に出力することにより、有機電界発光表示装置において、出力電源を受けて駆動する素子が損傷することを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る有機電界発光表示装置の構造を示す構造図である。
【図2】図1における電源供給部を示す構造図である。
【図3】図2における電源供給部の動作を示すタイミング図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を添付図面を参照して説明する。
図1は、本発明に係る有機電界発光表示装置の構造を示す構造図である。同図に示すように、有機電界発光表示装置は、画素部100と、データ駆動部200と、走査駆動部300と、タイミング制御部400と、電源供給部500と、を備える。
【0016】
画素部100には、複数の画素101が配列され、各画素101は、電流の流れに対応して光を発光する有機発光ダイオード(図示せず)を備える。そして、画素部100は、行方向に形成され、かつ、走査信号を伝達するn本の走査線S1,S2,…,Sn−1,Snと、列方向に形成され、かつ、データ信号を伝達するm本のデータ線D1,D2,…,Dm−1,Dmとが配列される。
【0017】
また、画素部100は、電源供給部500から第1電源ELVDD及び第2電源ELVSS(図示せず)を受けて駆動する。したがって、画素部100は、走査信号、データ信号、第1電源ELVDD及び第2電源ELVSSにより有機発光ダイオードに電流が流れて発光し、これにより、映像が表示される。
【0018】
データ駆動部200は、データ信号を生成する手段であり、赤色、青色、緑色の成分を有する映像信号を用いてデータ信号を生成する。また、データ駆動部200は、画素部100のデータ線D1,D2,…,Dm−1,Dmに接続され、生成されたデータ信号を画素部100に入力する。さらに、データ駆動部200は、電源供給部500から駆動電圧を受けて動作する。
【0019】
走査駆動部300は、走査信号を生成する手段であり、走査線S1,S2,…,Sn−1,Snに接続され、走査信号を画素部100の特定の行に伝達する。走査信号が伝達された画素101には、データ駆動部200から出力されたデータ信号が伝達され、データ信号に対応する電圧が画素101に伝達されるようになる。走査駆動部300は、電源供給部500から駆動電圧を受けて動作する。
【0020】
タイミング制御部400は、データ駆動部200、走査駆動部300、及び電源供給部500の駆動を制御する。特に、タイミング制御部400は、電源供給部500にイネーブル信号enableを伝達し、電源供給部500で出力電源を出力する時点を決定する。
【0021】
電源供給部500は、画素部100、データ駆動部200、走査駆動部300、及びタイミング制御部400に出力電源を駆動電源として伝達して駆動できるようにする。電源供給部500は、タイミング制御部400から伝達されるイネーブル信号enableと、入力電源Vinの電圧とによって駆動されるが、駆動初期においては、入力電源によって駆動停止し、所定時間経過後には、イネーブル信号enableによって動作が決定される。したがって、電源供給部500は、駆動初期において、タイミング制御部400から出力されるイネーブル信号enableが電源供給部500に到達する前に、入力電源によって動作が制御される。
【0022】
図2は、図1における電源供給部を示す構造図である。同図に示すように、電源供給部500は、入力電源Vinを受けて出力電源を生成するパワーブロック510と、パワーブロック510に入力電源Vinを伝達する入力電源部520と、入力電源部520を制御する制御部530とを備える。
【0023】
パワーブロック510は、ICチップの形態で構成され、入力端VCCを介して入力電源Vinを受け、出力端outを介して出力電源を出力する動作を行う。また、パワーブロック510は、イネーブル端ENを介して入力される信号によってパワーブロック510の動作の可否が決定される。パワーブロック510は、イネーブル端ENを介して伝達される信号がハイ状態であれば動作を行い、ロー状態であれば駆動を停止する。
【0024】
パワーブロック510の入力端VCCとイネーブル端ENとは、入力電源部520に接続される。より具体的には、パワーブロック510の入力端VCCは第1ノードN1に接続され、イネーブル端ENは第2ノードN2に接続される。
【0025】
入力電源部520は、第1抵抗R1と、キャパシタCとを備え、第1ノードN1に、入力電源Vinと、キャパシタCの第1電極及び第1抵抗R1の一端とが接続される。第2ノードN2には、第1抵抗R1の他端が接続される。
【0026】
制御部530は、トランジスタQ1と、第2抵抗R2とを備え、トランジスタQ1の第1電極が第2ノードN2に接続される。また、トランジスタQ1は、第2電極が第2抵抗R2の一端に接続され、ゲートにはタイミング制御部400からの制御信号が伝達される。トランジスタQ1の第1電極及び第2電極は、ソースまたはドレインと称することができる。また、一端がトランジスタQ1の第2電極に接続されている第2抵抗R2は、他端が接地に接続される。
【0027】
図3は、図2における電源供給部の動作を示すタイミング図である。同図に示すように、上記のように構成された電源供給部500の動作を説明すると、駆動開始期間T1では、イネーブル信号enableが伝達されない。これにより、NMOSタイプのトランジスタQ1がオフ状態になる。また、入力電源Vinは、キャパシタCにより所定の電圧を維持し続けるようになり、入力端VCCには、入力電源Vinの電圧が伝達される。また、イネーブル端ENは、第1抵抗R1を介して入力電源Vinが伝達される。このとき、イネーブル端ENを介して伝達される入力電源Vinは、パワーブロック510内の内部抵抗と第1抵抗R1との電圧分配により、第2ノードN2がパワーブロック510の動作を停止させるようにする低電圧を有する。
【0028】
すなわち、イネーブル端ENは、入力端VCCに入力電源Vinが伝達されるのと同じ時点でロー状態の信号を受信する。したがって、タイミング制御部400からイネーブル信号enableが出力される前にも、パワーブロック510を制御できるようになる。結果として、出力端outから出力される電圧の急激な変化を防止することができる。
【0029】
また、タイミング制御部400が電源を受けることによって動作を開始して電源供給部500にロー状態の信号を伝達する期間T2では、イネーブル信号enableがロー状態を維持するため、トランジスタQ1はオフ状態になる。したがって、T1期間と同じ動作を行い、出力端outからは出力電源が出力されなくなる。
【0030】
その後、電源供給部500の出力端outから出力電圧を出力する時点では、タイミング制御部400は、電源供給部500が駆動するように、ハイ状態のイネーブル信号enableを出力する。このとき、トランジスタQ1はオン状態になる。トランジスタQ1がオン状態になると、入力電源Vinと接地との間に、第1抵抗R1と第2抵抗R2とが直列に接続された状態になり、これにより、第2ノードN2には、第1抵抗R1と第2抵抗R2とによって分配された電圧が伝達される。また、第1抵抗R1と第2抵抗R2との電圧比により、第2ノードN2にハイ状態の電圧が形成される。すなわち、イネーブル端ENにハイ状態の信号が伝達される。
【0031】
イネーブル端ENにハイ状態の信号が伝達されると、出力端outを介して正常な出力電圧が出力され、電源供給部500が予め定められた出力電圧を出力する。
【0032】
以上説明したように、本発明の最も好ましい実施形態について説明したが、本発明は、上記記載に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載され、又は明細書に開示された発明の要旨に基づき、当業者において様々な変形や変更が可能なのはもちろんであり、斯かる変形や変更が、本発明の範囲に含まれることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0033】
100・・・画素部
101・・・画素
200・・・データ駆動部
300・・・走査駆動部
400・・・タイミング制御部
500・・・電源供給部
510・・・パワーブロック
520・・・入力電源部
530・・・制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力電源を受ける入力端、出力電源を出力する出力端、及び駆動を制御するイネーブル信号が入力されるイネーブル端を備えるパワーブロックと、
前記入力端とイネーブル端とに入力電源を同時に伝達する入力電源部と、
前記イネーブル端に伝達される前記入力電源の電圧を調整して前記パワーブロックの駆動時点を決定する制御部と、
を備えることを特徴とする電源供給部。
【請求項2】
前記入力電源部は、
前記入力端と前記イネーブル端との間に接続される第1抵抗と、
前記第1抵抗と前記入力端とに第1電極が接続され、基底電源に第2電極が接続されるキャパシタと、
を備えることを特徴とする請求項1に記載の電源供給部。
【請求項3】
前記制御部は、
第1電極が前記イネーブル端に接続され、第2電極が第2抵抗に接続され、ゲートに制御信号が伝達されるトランジスタを備え、前記第2抵抗は、前記トランジスタの第2電極と基底電源との間に接続されることを特徴とする請求項1に記載の電源供給部。
【請求項4】
前記入力電源部は、前記入力端と前記イネーブル端とに前記入力電源を伝達し、前記イネーブル端には、前記入力電源の電圧を低くして入力することを特徴とする請求項1に記載の電源供給部。
【請求項5】
前記制御部は、前記イネーブル端に入力された前記入力電源の電圧を調整して前記パワーブロックの駆動時点を決定することを特徴とする請求項4に記載の電源供給部。
【請求項6】
データ信号及び走査信号を受信して画像を表示する画素部と、
制御信号を生成するタイミング制御部と、
前記画素部に前記データ信号を伝達するデータ駆動部と、
前記画素部に前記走査信号を伝達する走査駆動部と、
前記画素部、前記データ駆動部、及び前記走査駆動部の少なくとも1つに駆動電源を伝達する電源供給部と、を備え、
前記電源供給部は、
入力電源を受ける入力端、出力電源を出力する出力端、及び駆動時点を決定する信号が入力されるイネーブル端を備えるパワーブロックと、
前記入力端とイネーブル端とに入力電源を同時に伝達する入力電源部と、
前記制御信号に対応して前記イネーブル端に伝達される前記入力電源の電圧を調整することにより、前記パワーブロックの駆動時点を決定する制御部と、
を備えることを特徴とする有機電界発光表示装置。
【請求項7】
前記入力電源部は、
前記入力端と前記イネーブル端との間に接続される第1抵抗と、
前記第1抵抗と前記入力端とに第1電極が接続され、基底電源に第2電極が接続されるキャパシタと、
を備えることを特徴とする請求項6に記載の有機電界発光表示装置。
【請求項8】
前記制御部は、
第1電極が前記イネーブル端に接続され、第2電極が第2抵抗に接続され、ゲートに制御信号が伝達されるトランジスタを備え、前記第2抵抗は、前記トランジスタの第2電極と基底電源との間に接続されることを特徴とする請求項6に記載の有機電界発光表示装置。
【請求項9】
前記入力電源部は、前記入力端と前記イネーブル端とに前記入力電源を伝達し、前記イネーブル端には、前記入力電源の電圧を低くして入力することを特徴とする請求項6に記載の有機電界発光表示装置。
【請求項10】
前記制御部は、前記イネーブル端に入力された前記入力電源の電圧を調整して前記パワーブロックの駆動時点を決定することを特徴とする請求項9に記載の有機電界発光表示装置。
【請求項11】
入力電源を入力端とイネーブル端とに同時に伝達し、前記イネーブル端に伝達される前記入力電源の電圧によってパワーブロックが駆動停止するステップと、
制御信号を伝達し、前記イネーブル端に入力される電圧を調整して前記パワーブロックが駆動するステップと、
前記パワーブロックから出力される出力電圧を用いて駆動開始するステップと、
を含むことを特徴とする有機電界発光表示装置の駆動方法。
【請求項12】
前記イネーブル端に入力される電圧は、スイッチング動作によって電圧を分配して調整されることを特徴とする請求項11に記載の有機電界発光表示装置の駆動方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−205244(P2010−205244A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−103022(P2009−103022)
【出願日】平成21年4月21日(2009.4.21)
【出願人】(308040351)三星モバイルディスプレイ株式會社 (764)
【Fターム(参考)】