説明

電源検査装置、電源検査方法、電源装置

【課題】電源装置を停止させることなく、電源装置を検査することが可能な電源検査装置を提供する。
【解決手段】電源検査装置は、入力される三相交流電圧を整流する整流回路と、整流回路の出力を平滑化するコンデンサと、コンデンサからの電流で充電される蓄電池とを備える電源装置の蓄電池の充電電流の交流成分を検出する交流検出部と、交流検出部の検出結果に基づいて、整流回路が三相交流電圧のレベルに応じた所定のタイミングで動作するか、コンデンサの容量値が所定の値であるか、のうち少なくとも何れか一方を判定する判定部と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源検査装置、電源検査方法、電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
入力される交流電圧を整流、平滑化して直流電圧を生成する直流電源装置には蓄電池を含むものがある。このような直流電源装置は、一般に無停電電源装置と呼ばれ、交流電圧が入力されない場合には蓄電池を電源として直流電圧を生成する(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−101571号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述の直流電源装置において、蓄電池や交流電圧を整流する整流回路等が劣化していると、所望の直流電圧が生成されないことがある。このため、蓄電池は、直流電源装置が動作している間に、例えば特許文献1に開示されているような技術で診断される。一方、整流回路等に異常があるか否かの検査は、一般に直流電源装置の動作が停止されている間に実行される。この結果、整流回路等が検査される際には、直流電源装置とともに、直流電源装置の電源が供給される機器等も停止させる必要があった。
【0005】
本発明は上記課題を鑑みてなされたものであり、電源装置を停止させることなく、電源装置を検査することが可能な電源検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の一つの側面に係る電源検査装置は、入力される三相交流電圧を整流する整流回路と、前記整流回路の出力を平滑化するコンデンサと、前記コンデンサからの電流で充電される蓄電池とを備える電源装置の前記蓄電池の充電電流の交流成分を検出する交流検出部と、前記交流検出部の検出結果に基づいて、前記整流回路が前記三相交流電圧のレベルに応じた所定のタイミングで動作するか、前記コンデンサの容量値が所定の値であるか、のうち少なくとも何れか一方を判定する判定部と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、電源装置を停止させることなく、電源装置を検査することが可能な電源検査装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】直流電源装置10と本発明の一実施形態である検査装置11との構成を示す図である。
【図2】整流素子が正常な場合の電源供給装置21の主要な波形を示す図である。
【図3】サイリスタ51が開放故障している際の電源供給装置21の主要な波形を示す図である。
【図4】コンデンサ31の容量値が低下した際の充電電流Ibatの波形を示す図である。
【図5】マイコン82が実現する機能ブロックを示す図である。
【図6】検査装置11が直流電源装置10に異常があるか否かを検査する処理の一例を示すフローチャートである。
【図7】判定処理S106の一例を示すフローチャートである。
【図8】本発明の一実施形態である直流電源装置15の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書および添付図面の記載により、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
図1は、直流電源装置10と本発明の一実施形態である検査装置11の構成を示す図である。直流電源装置10は、例えば電気所(不図示)に設けられ、入力される三相交流電圧から、継電器等の負荷12を動作させるための電源を生成する装置であり、変圧器20、電源供給装置21、電流計22、及び変流器23を含んで構成される。
【0010】
変圧器20は、入力される三相交流電圧Vr,Vs,Vtを変圧し、三相交流電圧Vu,Vv,Vwを出力する。
【0011】
電源供給装置21は、三相交流電圧Vu,Vv,Vwから所望の出力電圧Voutを生成する装置であり、整流回路30、コンデンサ31,32、インダクタ33、蓄電池34、制御装置35、電源線36,37及び配電用遮断器40〜45を含んで構成される。
【0012】
整流回路30は、入力される三相交流電圧Vu,Vv,Vwを整流して出力する回路であり、サイリスタ50〜52、ダイオード60〜62を含んで構成される。なお、サイリスタ50〜52、ダイオード60〜62はいわゆるブリッジ回路を構成する。
【0013】
コンデンサ31は、整流回路30で整流された電圧を平滑化する。コンデンサ32及びインダクタ33は、いわゆるLCフィルタを構成する。このため、コンデンサ32からは、コンデンサ31の充電電圧に含まれるノイズ成分が抑制された電圧が出力される。なお、コンデンサ32の充電電圧を出力電圧Voutとし、コンデンサ32から出力される電流を出力電流Ioutとする。また、コンデンサ32の一端は、配電用遮断器40及び電流計22を介して電源線36に接続され、コンデンサ32の他端は、配電用遮断器41を介して電源線37に接続される。
【0014】
蓄電池34は、電源線36,37の間に接続され、例えば、停電等で変圧器20に三相交流電圧Vr,Vs,Vtが入力されない場合に、電源線36,37に接続される負荷に直流電源を供給する。また蓄電池34は、蓄電池34の電池電圧Vbatが出力電圧Voutの直流レベルと一致するように充電される。
【0015】
制御装置35は、出力電圧Voutの直流レベルに基づいて、出力電圧Voutの直流レベルが所定のレベルとなるようにサイリスタ50〜52の点弧角を制御する装置である。詳細は後述するが、例えば出力電圧Voutのレベルを上昇させる場合、制御装置35は、サイリスタ50〜52の点弧角を大きくし、サイリスタ50〜52のオン期間(動作期間)を長くする。一方、出力電圧Voutのレベルを低下させる場合、制御装置35は、サイリスタ50〜52の点弧角を小さくし、サイリスタ50〜52のオン期間を短くする。また、制御装置35は、例えば検査装置11からの指示に基づいて、サイリスタ50〜52を制御する。具体的には、検査装置11から蓄電池34を均等充電させる指示が入力されると、出力電圧Voutの直流レベルが電圧V1から電圧V2へと上昇するようにサイリスタ50〜52の点弧角を大きくする。この結果、蓄電池34の電池電圧Vbatも電圧V1から電圧V2へと上昇するため、蓄電池34は均等充電される。
【0016】
配電用遮断器40,41は、整流回路30、コンデンサ31,32、インダクタ33を過電流から保護するための遮断器である。配電用遮断器42〜45の夫々は、接続される負荷を過電流から保護するための遮断器である。なお、負荷12は、例えば配電用遮断器42,43の間に接続されることにより出力電圧Voutの電源が供給される。
【0017】
電流計22(直流検出部)は、配電用遮断器40と電源線36との間に設けられ、出力電流Ioutを測定する。測定された電流値は、例えばアナログの信号として検査装置11へと出力される。また、電流計22は、測定された電流を表示する表示パネル(不図示)を備えている。なお、コンデンサ31の電流の直流成分は、コンデンサ32へ流れることは無い、このため、コンデンサ31の電流の直流成分は、出力電流Ioutの直流成分と一致する。
【0018】
変流器23(交流検出部)は、蓄電池34の充電電流Ibatの交流成分を検出する。なお、変流器23は、一般的な交流電流を測定する交流変流器である。なお、変流器23も電流計22と同様に、検出された交流成分を表示する表示パネル(不図示)を備えている。
【0019】
検査装置11は、直流電源装置10の異常の有無を検査するための検査装置である。検査装置11は、電流計22、変流器23の検出結果に基づいて、整流回路30、コンデンサ31、制御装置35の異常の有無を検査する。詳細は後述するが、例えば整流回路30やコンデンサ31が故障すると、出力電流Iout、充電電流Ibatの交流成分は大きくなる。このような現象に基づいて、検査装置11は、整流回路30やコンデンサ31の異常の有無を検査する。
【0020】
なお、直流電源装置10が電源装置に相当し、検査装置11、電流計22、及び変流器23が電源検査装置に相当する。
【0021】
==電源供給装置21の動作==
ここで、サイリスタ50〜52の点弧角が180度の際に、整流回路30に含まれる整流素子の全てが正常である場合と、整流素子の何れか一つが例えば開放故障している場合の電源供給装置21の動作を説明する。なお、ここでは電源供給装置21は、負荷12の内部に含まれる抵抗(不図示)に電源を供給することとする。つまり、本実施形態では、配電用遮断器42,43の間には、等価的に抵抗負荷が接続されていることになる。
【0022】
<<整流素子が正常の場合>>
図2は、サイリスタ50〜52の点弧角が180度であり、整流回路30に含まれる整流素子の全てが正常である場合の電源供給装置21の主要な波形を説明するための図である。なお、時刻t0〜t6までの期間は、三相交流電圧Vu,Vv,Vwの夫々の1周期の期間である。
【0023】
まず、時刻t0においては、三相交流電圧Vuが最も高く、三相交流電圧Vvが最も低いため、サイリスタ50及びダイオード61がオンする。時刻t0〜時刻t1までの間において、三相交流電圧Vu,Vvの差は増加した後に低下する。このため、コンデンサ31の電圧Vcは、時刻t0から三相交流電圧Vu,Vvの差が最も大きくなる時刻まで上昇し、その後低下する。そして、時刻t1となると、三相交流電圧Vvよりも三相交流電圧Vwが低くなるため、サイリスタ50及びダイオード62がオンする。時刻t1〜t2までの間において、三相交流電圧Vu,Vwの差は増加した後に低下する。このため、電圧Vcは、時刻t1から三相交流電圧Vu,Vwの差が最も大きくなる時刻まで上昇し、その後低下する。
【0024】
時刻t2となると、三相交流電圧Vuよりも三相交流電圧Vvが高くなるため、サイリスタ51及びダイオード62がオンする。また、時刻t2〜t3までの間の電圧Vcは、時刻t0〜t1と同様に変化する。そして、時刻t3となると、三相交流電圧Vwよりも三相交流電圧Vuが低くなるため、サイリスタ51及びダイオード60がオンする。また、時刻t3〜t4までの間の電圧Vcは、時刻t1〜t2と同様に変化する。
【0025】
時刻t4となると、三相交流電圧Vvよりも三相交流電圧Vwが高くなるため、サイリスタ52及びダイオード60がオンする。また、時刻t4〜t5までの間の電圧Vcは、時刻t0〜t1と同様に変化する。時刻t5となると、三相交流電圧Vuよりも三相交流電圧Vvが最も低くなるため、サイリスタ52及びダイオード61がオンする。また、時刻t5〜t6までの間の電圧Vcは、時刻t0〜t1と同様に変化する。そして、時刻t6以降は、時刻t0〜t6までの動作が繰り返される。このように、整流回路30に含まれる整流素子の全てが正常である場合では、電圧Vcは、三相交流電圧Vu,Vv,Vwが全波整流された波形となる。
【0026】
また、コンデンサ32及びインダクタ33で構成されるLCフィルタは、電圧Vcのノイズ成分を抑制し、出力電圧Voutとして出力される。このため、出力電圧Voutの交流成分の大きさは電圧Vcの交流成分と比べると低下するが、出力電圧Voutは電圧Vcと同様に変化する。
【0027】
また、前述のように、負荷12は例えば抵抗負荷であり、蓄電池34は、電源線36,37の間に接続された容量性の負荷として等価的に近似することができる。このため、出力電流Iout、充電電流Ibatの夫々の交流成分は、出力電圧Voutと同様に変化することになる。
【0028】
<<整流素子のうちの何れか1つ(サイリスタ51)が異常の場合>>
図3は、サイリスタ50〜52の点弧角が180度であり、例えば、サイリスタ51が開放故障している場合の電源供給装置21の主要な波形を説明するための図である。なお、サイリスタ50,52は、図2を用いて説明した場合と同様に動作する。つまり、三相交流電圧Vuが最も高くなる時刻t0〜t2までの期間と、三相交流電圧Vwが最も高くなる時刻t4〜t6までの期間とにおける電圧Vcは、図2と同様に変化するため詳細な説明は省略する。
【0029】
サイリスタ51が開放故障している場合、三相交流電圧Vvが最も高くなり、サイリスタ51がオンすべき時刻t2〜t4までの間において、サイリスタ51はオフしたままとなる。つまり、サイリスタ51は、三相交流電圧Vu,Vv,Vwのレベルに応じた所定のタイミングで動作(オン)しなくなる。この結果、時刻t2〜t4の間で電圧Vcは低下し、出力電圧Voutも同様に低下する。したがって、出力電流Iout、充電電流Ibatの交流成分は、整流素子が正常の場合と比較すると増加する。
【0030】
なお、ここでは、サイリスタ51に開放故障する場合について説明したが、他の整流素子(例えば、サイリスタ50やダイオード60等)が開放故障した場合も同様である。また、制御装置35が故障し、サイリスタ51をオンできない場合の出力電流Iout、充電電流Ibatも図3に示した場合と同様に変化する。つまり、整流素子が開放故障するか、制御装置35が故障しサイリスタ50〜52をオンできない場合には、出力電流Iout、充電電流Ibatの交流成分は増加することになる。
【0031】
なお、ここでは、点弧角が180度の場合について説明したが、点弧角が180度でない場合であっても、出力電流Iout、充電電流Ibatの交流成分は増加する。
【0032】
<<コンデンサ31の容量が低下した場合>>
また、図1及び図4を参照しつつ、コンデンサ31の容量値が経年変化等により低下した場合の出力電流Iout、充電電流Ibatの変化について説明する。
【0033】
コンデンサ31の容量値が所定値から経年変化等により低下すると、コンデンサ31のインピーダンスは増加するため、整流回路30で発生するリップル電流は、コンデンサ31に流れにくくなる。したがって、コンデンサ31の容量値が低下すると、結果的に出力電流Iout、充電電流Ibatの交流成分は増加する。なお、出力電流Iout、充電電流Ibatの交流成分の大きさは、コンデンサ31の容量値の低下に応じて増加する。
【0034】
このように、直流電源装置10では、例えば、コンデンサ31に開放故障が発生した場合や、整流素子に開放故障が発生した場合において、出力電流Iout、充電電流Ibatの交流成分の大きさが増加する。
【0035】
==検査装置11の詳細==
ここで、図1に示す検査装置11の詳細について説明する。検査装置11は、出力電流Iout、充電電流Ibatに基づいて、整流回路30、コンデンサ31、制御装置35の異常の有無を検査する。
【0036】
検査装置11は、ADコンバータ(ADC)80、記憶装置81、マイコン82、インターフェース回路(IF)83、表示器84、及び入力装置85を含んで構成される。
【0037】
ADコンバータ80は、電流計22で測定されるアナログの出力電流Ioutと、変流器23で検出されるアナログの充電電流Ibatの交流成分とをデジタル値に変換する。記憶装置81は、マイコン82が実行するプログラムデータや、各種データを記憶する。
【0038】
マイコン82は、記憶装置81に記憶されたプログラムデータを実行することにより、各種機能を実現する。具体的には、マイコン82は図5に示すような、算出部90、判定部91、及び処理部92の機能を実現する。
【0039】
算出部90は、デジタル化された出力電流Iout及び充電電流Ibatに基づいて所定の計算を実行する。具体的には、算出部90は、出力電流Ioutの直流成分と、充電電流Ibatの交流成分との比を算出する。なお、ここで、直流成分と交流成分との比は、例えば、三相交流電圧Vuの1周期あたりの期間における出力電流Ioutの平均値と、三相交流電圧Vuの1周期あたりの期間における充電電流Ibatのリップル成分の実効値との比である。そして、算出部90は、充電電流Ibatの交流成分を出力電流Ioutの直流成分で割ることにより、両者の比を算出する。したがって、交流成分の大きさのみが増加した場合、比(交流成分/直流成分)は増加することになる。
【0040】
判定部91は、算出部90が算出した比に基づいて、整流回路30、コンデンサ31、制御装置35の異常の有無を判定する。ところで、充電電流Ibatの交流成分の大きさは、例えば、図3、4に示すように故障箇所によって異なる。本実施形態では、予めコンデンサ31のみが開放故障した場合、整流回路30の整流素子の何れか1つが開放故障した場合の夫々において実験的に得られる比が、例えば記憶装置81に記憶されていることとする。そして、判定部91は、記憶装置81に記憶されている実験的に得られた比と、算出部90が算出した比とを比較することにより整流回路30等の異常を判別する。なお、ここでは、コンデンサ31のみが開放故障した場合に得られる比は例えば“0.1”(10%)であり、整流回路30の整流素子の何れか1つが開放故障した場合に得られる比は、例えば“0.6”(60%)であることとする。このため、算出部90が算出した比が、例えば“0.1”(所定の値)よりも高い場合、コンデンサ31の容量が所定の値でなく所定の値より低下していること、または、整流回路30が所定のタイミングで動作していないことが特定できる。このため、判定部91は、コンデンサ31、整流回路30、制御装置35の少なくとも何れかに異常があると判定する。また、算出部90が算出した比が、例えば“0.6”よりも高い場合、整流回路30の整流素子が三相交流電圧Vu,Vv,Vwに応じた所定のタイミングで動作していないことが特定できる。このような場合、判定部91は、整流回路30が所定のタイミングで動作しておらず、整流回路30または制御装置35に異常があると判定する。
【0041】
処理部92(信号出力部)は、出力電流Ioutの測定結果を取得し、出力電流Ioutの直流成分のレベルが所定より低い場合には、蓄電池34の均等充電を開始させるための均等充電指示を、インターフェース回路83を介して制御装置35に出力する。なお、蓄電池34の均等充電が開始されると、前述のようにサイリスタ50〜52の点弧角は大きくなるため、出力電流Ioutの直流成分は増加する。また、処理部92は、出力電流Ioutの波形、充電電流Ibatの交流成分の波形や、算出部90が計算した比を表示器84に表示させる。処理部92は、判定部91が整流回路30等に異常が有ることを判定すると、出力電流Iout等の波形や、算出部90が計算した比、判定した時刻等を記憶装置81に記録し、表示器84に直流電源装置10に異常があることを示す情報を表示させる。さらに、処理部92は、判定部91が整流回路30等に異常が有ることを判定すると、異常があったことを示す警報を、インターフェース回路83に出力する。
【0042】
インターフェース回路83は、マイコン82と、表示器84及び入力装置85との間で各種データをやりとりする。また、インターフェース回路83は、処理部92からの指示に基づいて、均等充電指示を制御装置35に出力し、外部に警報を出力する。
【0043】
表示器84は、出力電流Ioutの波形や、算出部90が計算した比、直流電源装置10が正常でないことを示す警報情報を表示する表示パネルである。このため、例えば、利用者は、表示器84のパネルの出力電流Iout波形や、警報情報を確認することにより、直流電源装置10の異常の有無を判定するができる。
【0044】
入力装置85は、例えば、利用者が電流計22に表示された測定結果や、変流器23に表示された検出結果等を検出装置11に設定するためのキーボードである。なお、入力装置85を介して設定される検出結果等は、インターフェース回路83を介してマイコン82へと送信される。このため、例えば、電流計22や変流器23から出力される信号がない場合であっても、マイコン82に電流計22の測定結果等を取得させることが可能となる。
【0045】
==検査装置11の処理の一例==
ここで、図6を参照しつつ、検査装置11が直流電源装置10に異常があるか否かを検査する処理の一例を説明する。検査装置11は、例えば所定周期ごとに図6に示した処理を実行することとする。また、図6に示すフローチャートの処理の主体はマイコン82が実現する各機能ブロックである。
【0046】
まず、処理部92は、出力電流Ioutの測定結果を取得する(S100)。そして、処理部92は、出力電流Ioutの直流成分のレベルが所定以上であるか否かを判定する(S101)。なお、直流成分のレベルとは、例えば、前述した三相交流電圧Vuの1周期あたりの期間における出力電流Ioutの平均値に相当する。直流成分のレベルが所定以上である場合(S101:YES)、算出部90は、ADコンバータ80から出力される出力電流Ioutの直流成分と、充電電流Ibatの交流成分との比を算出する。(S104)。
【0047】
一方、出力電流Ioutの直流成分のレベルが所定以上でない場合(S101:NO)、処理部92は、蓄電池34の均等充電を開始させるべく均等充電指示を出力する(S102)。処理S102が実行されると、蓄電池34の均等充電が開始されるため、出力電流Iout、充電電流Ibatは増加し始める。そして、処理部92は、出力電流Ioutが十分増加するのに要する一定時間(例えば、5〜10秒)が経過すると(S103:YES)、算出部90に、出力電流Ioutの直流成分と、充電電流Ibatの交流成分との比を計算させる(S104)。
【0048】
そして、処理S104が実行されると、処理部92は、出力電流Iout、充電電流Ibatの波形や、算出部90が算出した、直流成分と交流成分との比を表示器84に表示させる(S105)。そして、判定部91は、算出部90が算出した比に基づいて、整流回路30、コンデンサ31、制御装置35に異常があるか否かの判定処理を実行する(S106)。
【0049】
ここで、判定処理S106は例えば、図7に示すような処理である。以下、判定処理の詳細を説明する。まず、判定部91は、算出部90が算出した比が、コンデンサ31のみが開放故障した場合の比である“0.1”より高いかを否かを判定する(S200)。算出された比が“0.1”より低い場合(S200:NO)、判定部91は、直流電源装置10には異常が無いと判定する(S201)。一方、算出された比が“0.1”より高い場合(S200:YES)、判定部91は、算出された比が、整流素子の何れか1つが開放故障した場合の比である“0.6”より高いか否かを判定する(S202)。そして、算出された比が“0.6”よりも高い場合(S202:YES)、判定部91は、整流回路30または制御装置35に異常があると判定する(S203)。このように、直流電源装置10において、異常がある箇所の特定が可能となる。一方、算出された比が“0.6”よりも低い場合(S202:NO)、判定部91は、コンデンサ31に異常があると判定する(S204)。
【0050】
そして、図6に示すように、判定部91が異常ありと判定した場合(S107:YES)、処理部92は、出力電流Ioutや充電電流Ibatの波形や、判定した時刻、算出した比等を記憶装置81に記録する。さらに、処理部92は、異常があったことを示す警報を表示器84に表示させるとともに警報を出力する(S108)。一方、判定部91が異常なしと判定した場合(S107:NO)、処理は終了される。
【0051】
==直流電源装置15について==
ここで、図8を参照しつつ、本発明の一実施形態である直流電源装置15について説明する。直流電源装置15は、例えば電気所(不図示)に設けられ、入力される三相交流電圧から、継電器等の負荷12を動作させるための電源を生成する装置であり、変圧器20、電源供給装置21、変流器100、及び検査装置110を含んで構成される。なお、直流電源装置15と、図1に示す直流電源装置10とで同じ符号が付されているブロックは同じである。直流電源装置15においては、直流電源装置10に含まれる電流計22、変流器23の代わりに変流器100が設けられている。さらに直流電源装置15は、検査装置110を内部に設けている。ここでは、変流器100及び検査装置110について説明する。
【0052】
変流器100は、充電電流Ibatの直流成分、及び交流成分を検出するいわゆる直流変流器である。なお、変流器100は、交流検出部及び直流検出部に相当する。
【0053】
検査装置110は、変流器100の検出結果に基づいて、電源供給装置21の異常の有無を検査する装置である。検査装置110に含まれる各ブロックは、検査装置11に含まれる各ブロックと同様である。このため検査装置110のマイコン82は、充電電流Ibatの直流成分、及び交流成分に基づいて、図6、図7に示すよう処理を実行する。なお、この際には、出力電流Ioutの直流成分の代わりに充電電流Ibatの直流成分が用いられる。この結果、検査装置110を直流電源装置15の内部に設けるような構成とした場合であっても、検査装置110は、整流回路30、コンデンサ31等の異常の有無を判定することが可能となる。
【0054】
以上、本実施形態の検査装置11,110について説明した。本実施形態では、例えば、出力電流Iout直流成分と充電電流Ibatの交流成分との比に基づいて、整流回路30等に異常があるか否かが判定された。しかしながら、例えば、図3に示すように、整流回路30が三相交流電圧Vr,Vs,Vtに応じた所定のタイミングで動作しない場合には、充電電流Ibatの交流成分(リップル成分)は増加する。また、図4に示すように、コンデンサ31の容量値が所定の値(例えば、出荷時の値)から低下すると、充電電流Ibatの交流成分は増加する。このため、例えば、検査装置11は、充電電流Ibatの交流成分の大きさのみに基づいて異常の有無を判定しても良い。具体的には、このため、充電電流Ibatの交流成分の大きさが、整流回路30等が正常の際の所定の値より高くなると、整流回路30等が所定のタイミングで動作していないことを判定することができる。このように、本実施形態では直流電源装置10を停止させること無く、直流電源装置10の異常の検出が可能となる。また、異常が検出されると、利用者は直流電源装置10を停止させ、故障した素子等を交換できる。このように、故障した状態で直流電源装置10を動作させることを防ぐことができるため、直流電源装置10に対する負担を軽減できる。さらに、故障した素子が交換されると、出力電流Ioutにおけるリップル電流は小さくなる。このため、直流電源装置10が駆動する負荷への影響も小さくなる。
【0055】
一般に、直流電源装置10の負荷が小さい場合、充電電流Ibatの交流成分の変化は小さくなる。このため、充電電流Ibatの交流成分のみに基づいて整流回路30等の異常を検出することが難しい場合がある。本実施形態の算出部90は、出力電流Ioutの直流成分と充電電流Ibatの交流成分との比に基づいて、整流回路30等の異常を判定している(例えば、処理S200)。したがって、例えば、充電電流Ibatの交流成分のみに基づいて異常の判定する場合と比べ、精度良く判定ができる。
【0056】
また、充電電流Ibatの交流成分は、コンデンサ31の開放故障、または整流回路30の整流素子の開放故障により増加する。さらに、充電電流Ibatの交流成分は、コンデンサ31が開放故障した場合よりも、整流素子が開放故障した場合の方が大きくなる。
【0057】
このような現象に基づいて、判定部91は、算出部90が算出した比が、コンデンサ31が開放故障した際の比である“0.1”よりも高い場合には、コンデンサ31の容量値が低下しているか、整流回路30が所定のタイミングで動作していないことを判定する(例えば、S200:YES)。
【0058】
また、算出部90は、蓄電池34が均等充電されて電圧V1から電圧V2へと上昇している間に、出力電流Ioutの直流成分と、充電電流Ibatの交流成分との比を算出する(例えば、処理S102〜S104)。このため、本実施形態では、例えば、直流電源装置10が駆動する負荷によらず、出力電流Ioutを増加させることができる。そして、判定部91は、出力電流Ioutが増加した際の出力電流Iout及び充電電流Ibatに基づいて整流回路30等の異常を判定する。このため、本実施形態では、例えば、均等充電しない場合と比べ、判定精度を向上させることができる。
【0059】
例えば、蓄電池34が充電されている状態では、充電電流Ibatの直流成分は、出力電流Ioutと同様に変化する。このため、検査装置110は、例えば、充電電流Ibatの直流成分と交流成分との比に基づいて、整流回路30等の異常の有無を判定することも可能である。
【0060】
また、検査装置110の判定部91は、充電電流Ibatの直流成分と交流成分との比を、例えば、前述の“0.1”や“0.6”と比較することにより、直流電源装置15における故障箇所を特定することが可能となる。
【0061】
また、充電電流Ibatの直流成分は、蓄電池34が充電されていない期間においては非常に小さい場合がある。しかしながら、検査装置110の算出部90は、蓄電池34が均等充電されている間の充電電流Ibatの比を算出する。このため、検査装置110の判定部91は、精度良く整流回路30等の異常の有無を判定することができる。
【0062】
また、処理部92は、判定部91が整流回路30等に異常があることを判定すると、直流電源装置10が正常でないことを示す警報を出力する。また、表示器84は、判定部91が整流回路30等に異常があることを判定すると、直流電源装置10が正常でないことを示す警報情報を表示する。このため、利用者は、直流電源装置10が異常であることを直ちに知ることができる。
【0063】
また、検査装置11では、電流計22等からの結果がADコンバータ80に入力されることとしたがこれに限られない。例えば、利用者が変流器23の値を読み取り、充電電流Ibatの交流成分の結果に基づいて、整流回路30が所定のタイミングで動作しているか、または、コンデンサ31の容量値が所定の値であるかを判定しても良い。
【0064】
また、検査装置11はいわゆる携帯用の検査装置であるが、例えば、図8に示すように、直流電源装置15のように、直流電源装置15の内部に設ける構成としても良い。
【0065】
前述した実施の形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく変更、改良されるとともに、本発明にはその等価物も含まれる。
【0066】
例えば、整流回路30は、全てダイオードで構成されても良いし、全てサイリスタで構成されても良い。また、整流回路30は、半波整流回路であっても良い。
【0067】
また、本実施形態では、算出部90は、均等充電の開始から所定時間経過後(例えば、5〜10後)の直流成分及び交流成分の比を算出しているがこれに限られない。例えば、均等充電した際の充電電流Ibatが所定の電流を超えたら、算出部90が比を算出することとしても良い。また、均等充電されると充電電流Ibatは、上昇した後に低下する。このため、算出部90は、例えば充電電流Ibatのデータを記憶装置81に格納し、充電電流Ibatが低下し始める前の電流値を取得して比を算出しても良い。
【0068】
また、例えば、手動により均等充電を開始させことが可能な制御装置35が用いられている場合は、利用者が適宜均等充電を開始させた後に、処理S104〜S106に対応する処理を実行しても良い。
【0069】
また、本実施形態では、コンデンサ31が開放故障した際の比である“0.1”等の値は、実験的に得られた値であることとしたが、例えば、シミュレーション等で算出しても良い。
【0070】
また、処理部92には、例えば、コンデンサ31に異常があると判定された場合(S204)と、整流回路30等に異常があると判定された場合(S203)とで、異なる警報を出力させても良い。
【符号の説明】
【0071】
10,15 直流電源装置
11,110 検査装置
12 負荷
20 変圧器
21 電源供給装置
22 電流計
23,100 変流器
30 整流回路
31,32 コンデンサ
33 インダクタ
34 蓄電池
35 制御装置
36,37 電源線
40〜45 配電用遮断器
50〜52 サイリスタ
60〜62 ダイオード
80 ADコンバータ
81 記憶装置
82 マイコン
83 インターフェース回路
84 表示器
85 入力装置
90 算出部
91 判定部
92 処理部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力される三相交流電圧を整流する整流回路と、前記整流回路の出力を平滑化するコンデンサと、前記コンデンサからの電流で充電される蓄電池とを備える電源装置の前記蓄電池の充電電流の交流成分を検出する交流検出部と、
前記交流検出部の検出結果に基づいて、前記整流回路が前記三相交流電圧のレベルに応じた所定のタイミングで動作するか、前記コンデンサの容量値が所定の値であるか、のうち少なくとも何れか一方を判定する判定部と、
を備えることを特徴とする電源検査装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電源検査装置であって、
前記コンデンサからの電流の直流成分を検出する直流検出部と、
前記直流検出部で検出された前記充電電流の直流成分と、前記交流検出部で検出された前記充電電流の交流成分との比を算出する算出部と、
を更に備え、
前記判定部は、
前記算出部の算出結果に基づいて、前記整流回路が前記三相交流電圧のレベルに応じた所定のタイミングで動作するか、前記コンデンサの容量値が所定の値であるか、のうち少なくとも何れか一方を判定すること、
を特徴とする電源検査装置。
【請求項3】
請求項2に記載の電源検査装置であって、
前記算出部は、
前記交流成分の大きさが大きくなると高くなる比を算出し、
前記判定部は、
前記算出部で算出される比が所定の値より高くなると、前記整流回路が前記三相交流電圧のレベルに応じた所定のタイミングで動作していないか、前記コンデンサの容量値が所定の値でないか、のうち少なくとも何れか一方であると判定すること、
を特徴とする電源検査装置。
【請求項4】
請求項2または請求項3に記載の電源検査装置であって、
前記算出部は、
前記蓄電池の充電電圧が第1レベルから第2レベルへと上昇している間の前記充電電流の直流成分及び前記充電電流の交流成分の比を算出すること、
を特徴とする電源検査装置。
【請求項5】
請求項1に記載の電源検査装置であって、
前記充電電流の直流成分を検出する直流検出部と、
前記直流検出部で検出された前記充電電流の直流成分と、前記交流検出部で検出された前記充電電流の交流成分との比を算出する算出部と、
を更に備え、
前記判定部は、
前記算出部の算出結果に基づいて、前記整流回路が前記三相交流電圧のレベルに応じた所定のタイミングで動作するか、前記コンデンサの容量値が所定の値であるか、のうち少なくとも何れか一方を判定すること、
を特徴とする電源検査装置。
【請求項6】
請求項5に記載の電源検査装置であって、
前記算出部は、
前記交流成分の大きさが大きくなると高くなる比を算出し、
前記判定部は、
前記算出部で算出される比が所定の値より高くなると、前記整流回路が前記三相交流電圧のレベルに応じた所定のタイミングで動作していないか、前記コンデンサの容量値が所定の値でないか、のうち少なくとも何れか一方であると判定すること、
を特徴とする電源検査装置。
【請求項7】
請求項5または請求項6に記載の電源検査装置であって、
前記算出部は、
前記蓄電池の充電電圧が第1レベルから第2レベルへと上昇している間の前記充電電流の直流成分及び前記充電電流の交流成分の比を算出すること、
を特徴とする電源検査装置。
【請求項8】
請求項1〜7の何れか一項に記載の電源検査装置であって、
前記判定部が、前記整流回路が前記三相交流電圧のレベルに応じた所定のタイミングで動作していないか、前記コンデンサの容量値が所定の値でないか、のうち少なくとも何れか一方であると判定すると、前記電源装置が正常でないことを示す信号を出力する信号出力部を更に備えること、
を特徴とする電源検査装置。
【請求項9】
請求項1〜8に記載の電源検査装置であって、
前記判定部が、前記整流回路が前記三相交流電圧のレベルに応じた所定のタイミングで動作していないか、前記コンデンサの容量値が所定の値でないか、のうち少なくとも何れか一方であると判定すると、前記電源装置が正常でないことを示す情報を表示する表示装置を更に備えること、
を特徴とする電源検査装置。
【請求項10】
入力される三相交流電圧を整流する整流回路と、前記整流回路の出力を平滑化するコンデンサと、前記コンデンサからの電流で充電される蓄電池とを備える電源装置の前記蓄電池の充電電流の交流成分を検出し、
前記交流検出部の検出結果に基づいて、前記整流回路が前記三相交流電圧のレベルに応じた所定のタイミングで動作するか、前記コンデンサの容量値が所定の値であるか、のうち少なくとも何れか一方を判定すること、
を特徴とする電源検査方法。
【請求項11】
入力される三相交流電圧を整流する整流回路と、
前記整流回路の出力を平滑化するコンデンサと、
前記コンデンサからの電流で充電される蓄電池と、
前記蓄電池の充電電流に基づいて、前記整流回路が前記三相交流電圧のレベルに応じた所定のタイミングで動作するか、前記コンデンサの容量値が所定の値であるか、のうち少なくとも何れか一方を判定する検査装置と、
を備え、
前記検査装置は、
前記充電電流の交流成分を検出する交流検出部と、
前記交流検出部の検出結果に基づいて、前記整流回路が前記三相交流電圧のレベルに応じた所定のタイミングで動作するか、前記コンデンサの容量値が所定の値であるか、のうち少なくとも何れか一方を判定する判定部と、
を含むことを特徴とする電源装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−39791(P2012−39791A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−178823(P2010−178823)
【出願日】平成22年8月9日(2010.8.9)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】