説明

電源装置、情報処理装置

【課題】
サージ電圧を抑制することのできる電源装置及び情報処理装置を提供する。
【解決手段】
電源装置は、交流電力が入力される入力端子と、直流電力を出力する正極端子及び負極端子と、入力端子に入力される交流電力を整流する整流回路と、整流回路に接続される昇圧用の第1インダクタと、正極端子と負極端子との間に接続される第1キャパシタと、第1インダクタの出力端子と正極端子との間に接続され、第1インダクタの出力端子から正極端子に向かう整流方向を有する第1整流素子と、第1整流素子の入力端子と負極端子との間に接続されるスイッチング素子と、スイッチング素子に並列に接続される第2整流素子及び第2キャパシタと、第2整流素子及び第2キャパシタの接続部と正極端子との間に接続される第2インダクタとを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源装置、情報処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、交流電源に接続される交流電源端子、昇圧用のインダクタ、ダイオードブリッジ型の整流回路、スイッチング素子、スナバ回路、及び平滑用コンデンサを含み、交流電源から供給される交流電力をインダクタで昇圧し、整流回路で直流電力に変換して負荷回路に供給する電源装置があった。
【0003】
スナバ回路に含まれる複数のコンデンサ、複数の共振用リアクトル、複数のダイオードを有する閉回路に共振電流を流すことにより、複数のコンデンサに蓄えられた電気エネルギを平滑用コンデンサに回生していた。
【0004】
また、昇圧用のインダクタとダイオードブリッジ型の整流回路とを入れ替えた回路構成の電源装置では、交流電源から供給される交流電力を整流回路で直流電力に変換し、インダクタで昇圧して負荷回路に供給していた。
【0005】
この電源装置は、スナバ回路の内部にインダクタとスイッチング素子を設け、スナバ回路内のスイッチング素子をオン/オフすることによってコンデンサに蓄えられた電気エネルギを平滑コンデンサに回生していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−018420号公報
【特許文献2】実用新案登録第2605387号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、コンデンサ、共振用リアクトル、及びダイオードを複数有する閉回路をスナバ回路が含む従来の電源装置では、スナバ回路が含む回路素子の数が多いため、電気エネルギを回生する際の損失が大きいという課題があった。
【0008】
また、複数のコンデンサの充電は、閉回路に含まれるダイオードとは別の複数のダイオードを介して行われるため、電気エネルギの回生効率の低下に繋がっていた。
【0009】
スナバ回路にスイッチング素子を含む従来の電源装置では、スイッチングによる損失の増大とノイズの発生という課題があった。
【0010】
そこで、サージ電圧を抑制することのできる電源装置及び情報処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の実施の形態の電源装置は、交流電力が入力される入力端子と、直流電力を出力する正極端子及び負極端子と、前記入力端子に入力される交流電力を整流する整流回路と、前記整流回路に接続される昇圧用の第1インダクタと、前記正極端子と前記負極端子との間に接続される第1キャパシタと、前記第1インダクタの出力端子と前記正極端子との間に接続され、前記第1インダクタの出力端子から前記正極端子に向かう整流方向を有する第1整流素子と、前記第1整流素子の入力端子と前記負極端子との間に接続されるスイッチング素子と、前記スイッチング素子に並列に接続される第2整流素子及び第2キャパシタと、前記第2整流素子及び前記第2キャパシタの接続部と前記正極端子との間に接続される第2インダクタとを含む。
【発明の効果】
【0012】
サージ電圧を抑制することのできる電源装置及び情報処理装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】(A)、(B)は、比較例1、2の電源装置を示す回路図である。
【図2】(A)、(B)は、比較例1、2の電源装置の整流回路10の入力電圧Vin、入力電流Iinの波形を示す図である。
【図3】比較例1の電源装置内の電圧及び電流の波形を示す図であり、(A)は入力電圧Vin、(B)はスイッチング素子22の電流I、(C)はダイオード23の電流I、(D)はインダクタ21の電流I、(E)は出力電圧Voutの波形を示す図である。
【図4】比較例1の電源装置のPFC回路20及び平滑用キャパシタ30を示す図である。
【図5】比較例1の電源装置のPFC回路20に、スナバ回路60を接続した回路構成を示す図である。
【図6】実施の形態1の電源装置を含む情報処理装置を示すブロック図である。
【図7】A)は、実施の形態1の電源装置200を示す回路図、(B)は、実施の形態1の電源装置200のスイッチング素子22として用いるGaN−HEMTの駆動回路を示す図である。
【図8】実施の形態1の電源装置200のDC−DCコンバータ40を示す図である。
【図9】実施の形態1の電源装置200の動作を表すタイミングチャートである。
【図10】実施の形態1の電源装置200と比較例の電源装置における出力電力に対するサージ電圧を示す特性図である。
【図11】実施の形態1の変形例の電源装置200を示す回路図である。
【図12】実施の形態の電源装置のスイッチング素子22、スナバ回路60、及びインダクタ202の実装状態を示す図であり、(A)は平面図、(B)は(A)のA−A'矢視断面図、(C)は底面図、(D)は変形例の断面図である。
【図13】実施の形態3の電源装置の動作を表すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の電源装置及び情報処理装置を適用した実施の形態について説明する。
【0015】
実施の形態の電源装置及び情報処理装置について説明する前に、まず、図1乃至図5を用いて、比較例の電源装置の問題点について説明する。
【0016】
図1(A)、(B)は、比較例1、2の電源装置を示す回路図である。
【0017】
図1(A)に示す比較例1の電源装置は、整流回路10、PFC(Power Factor Correction:力率改善)回路20、平滑用キャパシタ30、及びDC(Direct Current)−DCコンバータ40を含む。
【0018】
整流回路10は、4つのダイオード11、12、13、14がブリッジ状に接続されたダイオードブリッジである。整流回路10は、交流電源1に接続されており、交流電力を全波整流して出力する。
【0019】
ここで、交流電源1の出力電圧はVinであるため、整流回路10の入力電圧はVinである。整流回路10は、交流電源1から入力される交流電力を全波整流した電力を出力する。
【0020】
整流回路10には、例えば、電圧が80(V)〜265(V)の交流電力が入力されるため、整流回路10のダイオード11、12、13、14における電圧降下は無視することができる。
【0021】
このため、整流回路10の入力電圧はVinであり、整流回路10の出力電圧はVinであることとして説明を行う。
【0022】
PFC回路20は、T字型に接続された、インダクタ21、スイッチング素子22、ダイオード23、及び制御部24を含み、整流回路10で整流された電流に含まれる高調波等の歪みを低減し、電力の力率を改善するアクティブフィルタ回路である。
【0023】
インダクタ21は、例えば、昇圧用のインダクタであればよい。
【0024】
スイッチング素子22は、例えば、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field-Effect Transistor)であればよい。スイッチング素子22は、制御部24からゲートにパルス状のゲート電圧が印加されることによってオン/オフが行われ、PWM(Pulse Width Modulation:パルス幅変調)駆動される。
【0025】
ダイオード23は、インダクタ21から平滑用キャパシタ30の方向の整流方向を有していればよく、例えば、ファーストリカバリーダイオード、SiCショットキーダイオードを用いればよい。
【0026】
制御部24は、スイッチング素子22のゲートに印加するパルス状のゲート電圧を出力する。制御部24は、整流回路10から出力される全波整流された電力の電圧値Vin、スイッチング素子22に流れる電流の電流値I、平滑キャパシタ30の出力側の電圧値Voutに基づいてゲート電圧のデューティ比を決定し、スイッチング素子22のゲートに印加する。制御部24としては、例えば、電流値I、電圧値Vout、Vinに基づいてデューティ比を演算できるマルチプライヤ回路を用いればよい。
【0027】
平滑用キャパシタ30は、PFC回路20から出力される電圧を平滑化してDC−DCコンバータ40に入力する。DC−DCコンバータ40には、例えば、電圧が385(V)の直流電力が入力される。
【0028】
DC−DCコンバータ40は、直流電力の電圧値を変換して出力する変換回路であり、出力側には負荷回路50が接続される。例えば、図1(A)に示す電源装置を含む情報処理装置がPC(Personal Computer:パーソナルコンピュータ)、又はサーバ等である場合には、負荷回路50は、CPU(Central Processing Unit:中央演算装置)、主記憶装置、又は補助記憶装置等である。
【0029】
ここでは、DC−DCコンバータ40は、例えば、電圧が385(V)の直流電力を電圧が12(V)の直流電力に変換して負荷回路50に出力する。
【0030】
図1(B)に示す比較例2の電源装置は、図1(A)に示す比較例1の電源装置からPFC回路20を取り除いた回路構成を有する。整流回路10の出力側には平滑用キャパシタ30が直接的に接続されている。
【0031】
次に、図2(A)、(B)を用いて、比較例1、2の電源装置の整流回路10の入力電圧Vin、入力電流Iinの波形について説明する。
【0032】
図2(A)、(B)は、比較例1、2の電源装置の整流回路10の入力電圧Vin、入力電流Iinの波形を示す図である。図2(A)、(B)では、入力電圧Vinを実線で示し、入力電流Iinを破線で示す。
【0033】
図2(A)、(B)に実線で示すように、比較例1、2の電源装置の整流回路10には、正弦波状の交流電圧が入力電圧Vinとして入力される。
【0034】
一方、入力電流Iinは、PFC回路20を含む比較例1の電源装置では、図2(A)に示すように正弦波状の交流電流になるが、PFC回路20を含まない比較例2の電源装置では、入力電流Iinは、高調波電流となる。
【0035】
比較例2の電源装置の入力電流Iinが高調波電流になるのは、図1(B)に示す比較例2の電源装置では、入力電流Iinが流れるのは、入力電圧Vinが平滑用キャパシタ30の両端間電圧を上回ったときだけだからである。
【0036】
これに対して、PFC回路20を含む比較例1の電源装置では、PFC回路20内のスイッチング素子22が負荷回路50の入力端子間の電圧値に応じてオン/オフされることにより、入力電流Iinは、図2(A)に示すように、正弦波状の電流となる。
【0037】
ここで、図1(A)に示すインダクタ21からダイオード23に流れる電流をI、インダクタ21からスイッチング素子22に流れる電流をI、インダクタ21に流れる電流をIとして、図3を用いてPFC回路20の動作について詳述する。
【0038】
図3は、比較例1の電源装置内の電圧及び電流の波形を示す図であり、(A)は入力電圧Vin、(B)はスイッチング素子22の電流I、(C)はダイオード23の電流I、(D)はインダクタ21の電流I、(E)は出力電圧Voutの波形を示す図である。
【0039】
なお、比較例1の電源装置の出力電圧Voutは、平滑用キャパシタ30の両端間電圧として出力されてDC−DCコンバータ40に入力する電圧である。
【0040】
図3(A)に示すように、交流電源1(図1(A)参照)から比較例1の電源装置に入力される入力電圧Vinは、正弦波状の交流電圧である。比較例1の電源装置の整流回路10に入力電圧Vinが印加されると、整流回路10の出力電圧は交流電圧を全波整流した波形になる。
【0041】
従って、図3(B)に示すように、スイッチング素子22の電流Iは、スイッチング素子22がオンの間に流れ、オフの間に流れないパルス状の波形になり、パルスの輪郭は正弦波状になる。なお、スイッチング素子22の電流Iの各パルスが右肩上がりになっているのは、スイッチング素子22がオンの間は、時間の経過によってインダクタ21の磁気エネルギが増大するのに伴って電流Iが増大するためである。
【0042】
また、図3(C)に示すように、ダイオード23の電流Iは、スイッチング素子22がオフの間に流れ、オンの間に流れないパルス状の波形になり、パルスの輪郭は正弦波状になる。なお、ダイオード23の電流Iの各パルスが右肩下がりになっているのは、スイッチング素子がオフの間は、時間の経過によってインダクタ21の磁気エネルギが減少するのに伴って電流Iが減少するためである。
【0043】
以上より、図3(B)に示すスイッチング素子22の電流Iと図3(C)に示すダイオード23の電流Iとを合成したインダクタ21の電流Iは、図3(D)に示すように、略正弦波状の電流となる。
【0044】
そして、平滑用キャパシタ30によって平滑化された出力電圧Voutは、図3(E)に示すように、略一定の電圧となる。ここでは、出力電圧Voutは、一例として、385(V)になる。
【0045】
なお、図3(A)〜(E)には、半周期分の電圧と電流を示したが、図示しない残りの半周期については、図3(A)に示す入力電圧Vinが反転するだけであり、図3(B)〜(E)に示す電流I、電流I、電流I、出力電圧Voutは、同様の波形になる。
【0046】
次に、図4及び図5を用いて、スイッチング素子22のオン/オフに伴って生じるサージ電圧と、サージ電圧を抑制するスナバ回路(Snubber circuit)について説明する。
【0047】
図4は、比較例1の電源装置のPFC回路20及び平滑用キャパシタ30を示す図である。
【0048】
スイッチング素子22には、入力側及び出力側に寄生インダクタがある。このため、図4には、入力側の寄生インダクタをLP1と表し、出力側の寄生インダクタをLP2と表す。
【0049】
また、スイッチング素子22には、電流Iを測定するためのカレントトランス(Current Transformer)の一次巻線CT1が直列に接続される。カレントトランスの一次巻線CT1は、コイルであるためインダクタンスを有する。
【0050】
カレントトランスの一次巻線CT1は、測定用の二次巻線CT2と結合されており、二次巻線CT2が出力する電圧値に基づいてスイッチング素子22に通流する電流Iが測定される。
【0051】
図4に示すように、スイッチング素子22には、寄生インダクタLP1、LP2、及びカレントトランスの一次巻線CT1が接続されているため、スイッチング素子22のオン/オフを行うと、サージ電圧が生じる。サージ電圧は、スイッチング素子22のスイッチング(オン/オフ)を高速で行う程、大きくなる。
【0052】
ここで、寄生インダクタLP1、LP2、及びカレントトランスの一次巻線CT1の合成インダクタンスをLPとすると、スイッチング素子22をオフにする際には、Vs=LP×dI/dtで表されるサージ電圧Vsが発生する。
【0053】
例えば、dI=15(A)、dt=100ns(ナノ秒)、LP=1μHであるとすると、Vs=150(V)となる。このサージ電圧の値は、比較例1の電源装置の出力電圧Vout(=385(V))と比較すると、かなり大きい電圧値である。
【0054】
ここで、サージ電圧を抑制するためには、スイッチング素子22の耐圧を高くすることが考えられるが、耐圧を高くするとスイッチング素子22のオン抵抗が大きくなり、また、スイッチング素子22が大型化するため、好ましくない。
【0055】
そこで、サージ電圧を抑制するために、スナバ回路が用いられている。
【0056】
図5は、比較例1の電源装置のPFC回路20に、スナバ回路60を接続した回路構成を示す図である。なお、図5では、スイッチング素子22の寄生インダクタLP1、LP2を省略する。
【0057】
スナバ回路60は、ダイオード61、キャパシタ62、及び抵抗器63を含み、スイッチング素子22に並列に接続されている。ダイオード61の入力端子は、カレントトランスの一次巻線CT1とスイッチング素子22との接続部に接続されており、ダイオード61の出力端子は、キャパシタ62と抵抗器63に接続されている。キャパシタ62と抵抗器63は、互いに並列に接続されている。
【0058】
スイッチング素子22がオンからオフになる際にカレントトランスの一次巻線CT1で電圧が生じると、一次巻線CT1で生じた電圧による電流は、ダイオード61を介してキャパシタ62に吸収される。そして、キャパシタ62に吸収された電気エネルギは、抵抗器63によって消費される。
【0059】
このため、スイッチング素子22のオン/オフに伴うサージ電圧を抑制することができる。
【0060】
これは、スイッチング素子22のオン/オフに伴ってスイッチング素子22の寄生インダクタで生じる電圧についても同様であり、寄生インダクタで生じた電圧は、ダイオード61を介してキャパシタ62に吸収される。そして、キャパシタ62に吸収された電気エネルギは、抵抗器63によって消費される。
【0061】
上述のように、比較例1の電源装置のスイッチング素子22にスナバ回路60を並列に接続すれば、サージ電圧を抑制することができるが、キャパシタ62に吸収された電気エネルギは抵抗器63で消費されるため、エネルギの損失が発生するという問題点があった。
【0062】
なお、スイッチング素子22の電流値は、カレントトランスの代わりに、抵抗器を用いて測定することもできる。カレントトランスの代わりに抵抗器を用いてスイッチング素子22の電流値を測定する場合は、PFC回路20が一次巻線CT1を有しないことになる。
【0063】
しかし、カレントトランスの代わりに抵抗器を用いてスイッチング素子22の電流値を測定する場合においても、スイッチング素子22の寄生インダクタによってサージ電圧が生じる。
【0064】
このため、スイッチング素子22にスナバ回路60を並列に接続してサージ電圧を抑制すると、キャパシタ62に吸収された電気エネルギは抵抗器63で消費され、エネルギの損失が発生するという問題点は、カレントトランスを用いる場合と同様に生じていた。
【0065】
このため、以下で説明する実施の形態では、上述の問題点を解決した電源装置及び情報処理装置を提供することを目的とする。以下、実施の形態の電源装置及び情報処理装置について説明する。
【0066】
<実施の形態1>
図6は、実施の形態1の電源装置を含む情報処理装置を示すブロック図である。
【0067】
実施の形態1では、一例として、情報処理装置がサーバ100であるものとして説明する。
【0068】
サーバ100は、実施の形態1の電源装置(PSU:Power Supply Unit)200、メインボード110、ハードディスクドライブ120、及びLAN(Local Area Network)用のモデム130を含む。実施の形態1では、説明の便宜上、図6にメインボード110、ハードディスクドライブ120、及びLAN用のモデム130を示すが、サーバ100は、メインボード110、ハードディスクドライブ120、及びLAN用のモデム130以外の構成要素を含んでもよい。
【0069】
メインボード110には、CPU111、RAM(Random Access Memory:ランダムアクセスメモリ)又はROM(Read Only Memory:読み出し専用メモリ)のような主記憶装置112が実装される。
【0070】
サーバ100の内部では、電源装置200は、メインボード110に実装されるCPU111及び主記憶装置112、ハードディスクドライブ120、LAN用のモデム130に電力を供給する。電源装置200には、例えば、電圧が80(V)〜265(V)の交流電力が入力される。電源装置200は、交流電力を直流電力に変換するとともに降圧し、例えば、電圧が12(V)の直流電力を出力する。
【0071】
次に、図7(A)、(B)を用いて、実施の形態1の電源装置200について説明する。
【0072】
図7(A)は、実施の形態1の電源装置200を示す回路図である。図7(A)において、比較例1の電源装置(図1(A)及び図5参照)と同一又は同等の構成要素には同一符号を付し、その説明を省略する。
【0073】
電源装置200は、入力端子201A、201B、整流回路10、インダクタ21、スイッチング素子22、ダイオード23、制御部24、カレントトランスの一次巻線CT1、スナバ回路60、インダクタ202、平滑用キャパシタ30、出力端子203A、203B、DC−DCコンバータ40、出力端子204A、204B、及び負荷回路50を含む。
【0074】
入力端子201A、201Bは、交流電源1を接続するための入力端子の一例である。入力端子201A、201Bには、交流電源1から電源装置200に交流電力が入力される。
【0075】
出力端子203Aは、直流電力を出力する正極端子の一例であり、出力端203Bは、直流電力を出力する負極端子の一例である。
【0076】
なお、出力端子204A、204Bは、DC−DCコンバータ40を介して出力端子203A、203Bの出力側に接続されており、出力端子204A、204Bは、直流電力を出力する。このため、正極端子及び負極端子の一例は、それぞれ、出力端子204A、204Bであってもよい。また、入力端子201B、出力端子204Bは、接地電位に保持される。
【0077】
平滑用キャパシタ30は、出力端子203Aと出力端子203Bとの間に接続される第1キャパシタの一例である。
【0078】
整流回路10は、入力端子201A、201Bに入力される交流電力を整流する整流回路の一例である。
【0079】
インダクタ21は、整流回路10に接続される昇圧用の第1インダクタの一例である。
【0080】
ダイオード23は、インダクタ21の出力端子と出力端子203Aとの間に接続され、インダクタ21の出力端子から出力端子203Aに向かう整流方向を有する第1整流素子の一例である。
【0081】
ダイオード23の入力端子と出力端子203Bとの間には、カレントトランスの一次巻線CT1とスイッチング素子22とが接続されている。
【0082】
カレントトランスの一次巻線CT1はカレントトランスのコイルの一例である。
【0083】
スイッチング素子22には、実施の形態1では、GaN−HEMT(High Electron Mobility Transistor:高電子移動度トランジスタ)を用いる。GaN(窒化ガリウム)で作成したHEMTは、シリコン製のMOSFETよりも高速動作が可能で、オン抵抗も小さいという特性を有する。
【0084】
図7(B)は、実施の形態1の電源装置200のスイッチング素子22として用いるGaN−HEMTの駆動回路を示す図である。
【0085】
図7(B)に示すように、GaN−HEMTは、ドレイン、ソース、ゲートを有する三端子トランジスタである。例えば、ソースを接地し、ソース−ドレイン間に所定の正電圧V1を印加し、ソース−ゲート間に印加する電圧V2を閾値以上にすると、ソースードレイン間が導通する(オンになる)。ソース−ゲート間に印加する電圧V2の閾値は、例えば、−10(V)〜+10(V)である。
【0086】
以上のように、GaN−HEMTは、動作を含めてMOSFETと同様に取り扱うことができる。
【0087】
GaN−HEMTのゲートは、図7(A)に示すように制御部24に接続されており、制御部24によってゲート電圧の制御が行われる。
【0088】
スイッチング素子22に並列に接続されるダイオード61及びキャパシタ62は、それぞれ、第2整流素子及び第2キャパシタの一例である。ダイオード61及びキャパシタ62は、スイッチング素子22がオンからオフに切り替えられたときにサージ電圧を抑制するためのスナバ回路60を構築する。スナバ回路60の入力端子となるダイオード61の一端は、カレントトランスの一次巻線CT1とスイッチング素子22との接続部Aに接続されている。なお、ダイオード61には、例えば、ファーストリカバリーダイオード、SICショットキーダイオードを用いればよい。
【0089】
ここで、サージ電圧として許容できる電圧値の最大値をVMAXとする。また、キャパシタ62の静電容量をC、カレントトランスの一次巻線CT1とスイッチング素子22の寄生インダクタとの合計のインダクタンスをL、スイッチング素子22がオンのときにカレントトランスの一次巻線CT1に流れる電流の最大値をIとすると、キャパシタ62の静電容量Cは、次式(1)で表すことができる。
【0090】
C=(1/2)×L×I/VMAX・・・(1)
このため、実施の形態1の電源装置200において、サージ電圧を効果的に抑制するためには、スナバ回路60のキャパシタ62の静電容量を式(1)で表される値以上の静電容量に設定すればよい。
【0091】
なお、式(1)におけるインダクタンスLとしては、カレントトランスの一次巻線CT1のインダクタンスの値だけを用いてもよい。
【0092】
ダイオード61とキャパシタ62との接続部Bには、インダクタ202の一端が接続されている。インダクタ202は、第2インダクタの一例であり、他端は出力端子203Aに接続されている。
【0093】
インダクタ202のインダクタンスは、カレントトランスの一次巻線CT1とスイッチング素子22の寄生インダクタとの合計のインダクタンスよりも大きく設定されることが望ましい。これは、スイッチング素子22をオンからオフに切り替える際に、カレントトランスの一次巻線CT1とスイッチング素子22の寄生インダクタとが自己誘導で放出する電流がインダクタ202を通流するのを防ぎ、キャパシタ62に電気エネルギとして回生するためである。
【0094】
なお、スイッチング素子22の寄生インダクタのインダクタンスは、例えば、有限要素法又は差分時間法等による電磁界解析により、スイッチング素子22を解析することによって求めることができる。また、スイッチング素子22の動作特性に基づいて寄生インダクタのインダクタンスを実測してもよい。
【0095】
負荷回路50は、例えば、図6に示すメインボード110、ハードディスクドライブ120、又はLAN用のモデム130に相当する。
【0096】
DC−DCコンバータ40は、例えば、フォワード型又はフルブリッジ型のDC−DCコンバータを用いればよい。ここでは、図8を用いて、フォワード型のDC−DCコンバータについて説明する。
【0097】
図8は、実施の形態1の電源装置200のDC−DCコンバータ40を示す図である。
【0098】
DC−DCコンバータ40は、1次側のトランス401、スイッチング素子402、キャパシタ403、ダイオード404、入力端子410A、410B、2次側のトランス405、ダイオード406、インダクタ407、ダイオード408、平滑用のキャパシタ409、出力端子420A、420B、制御部430を含む。
【0099】
1次側のトランス401及びスイッチング素子402は、入力端子410A、410Bの間に直列に接続されている。キャパシタ403及びダイオード404は、1次側のトランス401に並列に接続されている。ダイオード404は、逆流を防止するために、入力端子410Bから入力端子410Aに向く方向の整流方向を有するように接続されている。なお、入力端子410A、410Bは、それぞれ、電源装置200の出力端子203A、203B(図7参照)に接続される。
【0100】
2次側のトランス405、ダイオード406、インダクタ407は、出力端子420A、420Bの間に直列に接続されている。ダイオード408は、逆流を防止するために、出力端子420Bから出力端子420Aに向く方向の整流方向を有するように、2次側のトランス405及びダイオード406に並列に接続されている。キャパシタ409は、出力端子420A、420Bの間に接続されている。
【0101】
このようなDC−DCコンバータ40において、スイッチング素子402のゲートに接続された制御部430でゲート電圧を制御してスイッチング素子402のオン/オフを繰り返すと、1次側のトランス401で生じる磁束が2次側のトランス405を通る。
【0102】
これにより、入力端子410A、410Bに入力される直流電力の電圧が所定の電圧に変換され、出力端子420A、420Bから出力される。
【0103】
実施の形態1では、例えば、入力端子410A、410Bに入力される385(V)の直流電力は、12(V)の直流電力に変換され、出力端子420A、420Bから出力される。電圧の変圧比は、1次側のトランス401のコイルの巻数と2次側のトランス405のコイルの巻数の比で決まる。
【0104】
次に、図9を用いて、実施の形態1の電源装置200の動作について説明する。
【0105】
図9は、実施の形態1の電源装置200の動作を表すタイミングチャートである。
【0106】
ここで、カレントトランスの一次巻線CT1に流れる電流をI1、スイッチング素子22に流れる電流をI2、ダイオード23に流れる電流をI3、ダイオード61からキャパシタ62に流れる電流をI4、キャパシタ62からインダクタ202に流れる電流をI5とする。
【0107】
図9に示すように、時刻t1でスイッチング素子22がオンにされると、インダクタ21からカレントトランスの一次巻線CT1を経てスイッチング素子22に電流が流れるため、電流I1、I2が流れることになる。
【0108】
スイッチング素子22がオンの間は、カレントトランスの一次巻線CT1に流れる電流は、ダイオード61には流入せず、すべてスイッチング素子22に流れる。これは、ダイオード61の出力側にはキャパシタ62とインダクタ202が接続されているため、オン状態にあるスイッチング素子22の方が低抵抗で電流が流れやすいからである。
【0109】
このため、スイッチング素子22がオンの間は、カレントトランスの一次巻線CT1とスイッチング素子22に流れる電流値は等しくなる。
【0110】
時刻t2でスイッチング素子22がオフにされると、スイッチング素子22を流れる電流I2は0(A)になる。
【0111】
また、このとき、カレントトランスの一次巻線CT1は、自己誘導により電流を出力するため、カレントトランスの一次巻線CT1からダイオード61を経てキャパシタ62に電流が流れる。このため、時刻t2の直後に、電流I1、I4が流れ、自己誘導による磁気エネルギがカレントトランスの一次巻線CT1から放出されるに従って、電流I1、I4の値は0(A)に近づいて行く。
【0112】
電流I4によってキャパシタ62に蓄えられた電気エネルギは、インダクタ202を介して電流として放出され、平滑用キャパシタ30に電気エネルギとして回生される。
【0113】
このため、インダクタ202を流れる電流I5は、スイッチング素子22をオフにした時刻t2の後に流れることになる。
【0114】
なお、ダイオード23に流れる電流I3は、スイッチング素子22がオフとなる時刻t2以後に流れるため、図7に示すように、電流I4とは逆の傾きで立ち上がった後に、インダクタ21の磁気エネルギの減少に伴って緩やかに減少するように流れる。ダイオード23に流れる電流I3は、カレントトランスの一次巻線CT1に流れる電流I1を反転させたような波形となる。
【0115】
以上のように、実施の形態1の電源装置200によれば、スイッチング素子22をオンからオフに切り替えた後に、カレントトランスの一次巻線CT1に残存する磁気エネルギをスナバ回路60内のキャパシタ62に電気エネルギとして蓄える。
【0116】
そして、その後に、キャパシタ62の電気エネルギをインダクタ202を介して平滑用キャパシタ30に回生することができる。
【0117】
また、上述のようなサージ電圧の抑制及びエネルギの回生は、カレントトランスの一次巻線CT1に蓄えられる磁気エネルギだけではなく、スイッチング素子22の寄生インダクタに蓄えられる磁気エネルギについても、同様に実現することができる。
【0118】
すなわち、スイッチング素子22がオンからオフに切り替えられると、スイッチング素子22内の寄生インダクタに磁気エネルギが残存する。スイッチング素子22内の寄生インダクタの磁気エネルギは、電流として放出され、スナバ回路60のダイオード61を経てキャパシタ62に電気エネルギとして蓄えられる。そして、その後に、キャパシタ62の電気エネルギは、インダクタ202を介して、平滑用キャパシタ30に回生される。
【0119】
このため、実施の形態1の電源装置200によれば、スイッチング素子22内の寄生インダクタの蓄えられる磁気エネルギについても、カレントトランスの一次巻線CT1に蓄えられる磁気エネルギと同様に、サージ電圧の抑制と、高効率なエネルギ回生とを実現することができる。
【0120】
ここで、図10を用いて、実施の形態1の電源装置200におけるサージ電圧の抑制効果について説明する。
【0121】
図10は、実施の形態1の電源装置200と比較例1の電源装置における出力電力に対するサージ電圧を示す特性図である。なお、出力電力は、出力端子203A、203Bにおける出力電圧に、出力端子203Aにおける電流値を乗じて得る電力値を表す。
【0122】
図10に示す特性は、実施の形態1の電源装置200の特性と、比較例1の電源装置の特性である。
【0123】
実施の形態1の電源装置200の特性については、キャパシタ62の静電容量が異なる3種類の電源装置200の特性を測定した。キャパシタ62の静電容量は、940pF、2200pF、4400pFの3種類である。
【0124】
図10に示すように、サージ電圧は、出力電力の増大とともに増加する傾向を示し、比較例1の電源装置のサージ電圧が最大であった。比較例1の電源装置では、出力電力が250(W)でサージ電圧が約35(V)であり、1000(W)で約100(V)であった。
【0125】
これに対して、キャパシタ62の静電容量が940pFの電源装置200では、出力電力が250(W)でサージ電圧が約10(V)であり、1000(W)で約47(V)であった。また、キャパシタ62の静電容量が2200pFの電源装置200では、出力電力が250(W)でサージ電圧が約15(V)であり、1000(W)で約23(V)であった。また、キャパシタ62の静電容量が4400pFの電源装置200では、出力電力が250(W)でサージ電圧が約8(V)であり、1000(W)で約23(V)であった。
【0126】
以上のように、インダクタ202を含む実施の形態1の電源装置200は、比較例1の電源装置に比べて、大幅にサージ電圧を抑制できることが分かった。
【0127】
また、キャパシタ62の静電容量を大きくすると、サージ電圧が抑制される傾向にあることが分かった。
【0128】
また、実施の形態1の電源装置200では、インダクタ202のインダクタンスをカレントトランスの一次巻線CT1とスイッチング素子22の寄生インダクタとの合計のインダクタンスよりも大きく設定することにより、一次巻線CT1に残存する磁気エネルギをキャパシタ62に電気エネルギとして効率的に回生できる。
【0129】
インダクタ202のインダクタンスがカレントトランスの一次巻線CT1とスイッチング素子22の寄生インダクタとの合計のインダクタンス以下の場合は、スイッチング素子22をオフに切り替えたときに、一次巻線CT1からインダクタ202に電流が流れる可能性がある。このような電流が流れると、電源装置200の出力電圧にノイズが生じる場合があり、また、カレントトランスの一次巻線CT1、スイッチング素子22の寄生インダクタ、キャパシタ62、及びインダクタ202で共振が生じる場合がある。
【0130】
インダクタ202のインダクタンスをカレントトランスの一次巻線CT1とスイッチング素子22の寄生インダクタとの合計のインダクタンスよりも大きく設定すれば、上述のようなノイズ又は共振を抑制することができる。また、カレントトランスの一次巻線CT1とスイッチング素子22の寄生インダクタとの合計の磁気エネルギをキャパシタ62及びインダクタ202を介して効率よく回生することができる。
【0131】
以上のように、実施の形態1の電源装置200によれば、スイッチング素子22をオンからオフに切り替えた際に、カレントトランスの一次巻線CT1及びスイッチング素子22の寄生インダクタにおけるサージ電圧を抑制できるとともに、スナバ回路60内のキャパシタ62に蓄えられる電気エネルギを効率よく回生できる。
【0132】
また、実施の形態1の電源装置200では、接続部Aとキャパシタ62との間には1つのダイオード61が接続されているだけである。また、接続部Bと平滑用キャパシタ30の出力端子203A側の端子との間には、ダイオードは接続されていない。
【0133】
従って、カレントトランスの一次巻線CT1の磁気エネルギをエネルギ損失の非常に少ない状態でキャパシタ62に電気エネルギとして蓄えることができる。
【0134】
また、キャパシタ62の電気エネルギをエネルギ損失の非常に少ない状態で平滑用キャパシタ30に回生することができる。
【0135】
このため、実施の形態1の電源装置200によれば、サージ電圧を抑制できるとともに、簡易な回路構成で、スナバ回路60内のキャパシタ62に蓄えられる電気エネルギを効率的に回生することのできる電源装置及び情報処理装置を提供することができる。
【0136】
なお、実施の形態1の電源装置200では、上述のようにサージ電圧を抑制できるため、サージ電圧を抑制するためにスイッチング素子22の耐圧を上げる必要はない。このため、スイッチング素子22のオン抵抗を低減することができるとともに、スイッチング素子22の大型化を回避することができる。
【0137】
なお、以上では、スイッチング素子22の電流値を測定するためにカレントトランスの一次巻線CT1をスイッチング素子22に接続する形態について説明したが、スイッチング素子22の電流値は、カレントトランスの代わりに抵抗器を用いて測定してもよい。
【0138】
図11は、実施の形態1の変形例の電源装置200を示す回路図である。
【0139】
実施の形態1の変形例の電源装置200は、カレントトランスの一次巻線CT1の代わりに、電流検出用の抵抗器25を含む。
【0140】
このように、カレントトランスの一次巻線CT1の代わりに、電流検出用の抵抗器25を用いても、スイッチング素子22の寄生インダクタにより、スイッチングに伴ってサージ電圧が生じる。
【0141】
このため、図11に示すようにインダクタ202を用いることにより、サージ電圧を抑制できるとともに、簡易な回路構成で、スナバ回路60内のキャパシタ62に蓄えられる電気エネルギを効率的に回生することのできる電源装置を提供することができる。
【0142】
<実施の形態2>
実施の形態2の電源装置は、スイッチング素子22、スナバ回路60、及びインダクタ202を同一基板上にモジュール化したことが実施の形態1の電源装置200と異なる。その他の点は、実施の形態1の電源装置200と同様であるため、同一又は同様の構成要素には同一符号を付し、その説明を省略する。
【0143】
図12は、実施の形態の電源装置のスイッチング素子22、スナバ回路60、及びインダクタ202の実装状態を示す図であり、(A)は平面図、(B)は(A)のA−A'矢視断面図、(C)は底面図、(D)は変形例の断面図である。
【0144】
図12(A)〜(C)に示す基板300は、例えば、FR4(Flame Retardant Type 4)製の基材に銅箔を貼り付けたガラスエポキシ基板を用いることができる。
【0145】
図12(A)に示すように、基板300は、銅箔パターン301、302、303、304を有する。
【0146】
スイッチング素子22、スナバ回路60に含まれるダイオード61とキャパシタ62、及びインダクタ202は、例えば、金ボール製のバンプ305(図12(B)参照)によって銅箔パターン301、302、303、304に固定されている。
【0147】
実施の形態2におけるスイッチング素子22、スナバ回路60、及びインダクタ202のモジュール化とは、上述のように、同一基板(基板300)に形成された配線(銅箔パターン)に、バンプ等を用いて、スイッチング素子22、スナバ回路60、及びインダクタ202を実装することである。
【0148】
なお、図12(A)では、スイッチング素子22、ダイオード61、キャパシタ62、及びインダクタ202の間を接続する配線を省略するが、配線は、例えば、フリップチップ又はボンディングワイヤによって、図7(A)に示すように接続すればよい。
【0149】
図12(C)に示すように、基板300は、底面にも銅箔パターン311、312、313、314を有する。銅箔パターン311、312、313、314は、例えば、スイッチング素子22、ダイオード61、キャパシタ62、及びインダクタ202を電源装置の周囲の回路素子と接続するための電極として用いることができる。
【0150】
図12(A)に示す上面側の銅箔パターン301、302、303、304と、図12(C)に示す底面側の銅箔パターン311、312、313、314との接続は、例えば、図12(B)に示すように、基板300の側面に形成した銅箔パターン321、322を用いて行えばよい。
【0151】
また、図12(A)に示す上面側の銅箔パターン301、302、303、304と、図12(C)に示す底面側の銅箔パターン311、312、313、314との接続は、例えば、図12(D)に示すように、ビア331、332を用いて行ってもよい。
【0152】
以上、実施の形態2の電源装置200によれば、スイッチング素子22、ダイオード61、キャパシタ62、及びインダクタ202をモジュール化した。モジュール化により、スイッチング素子22、ダイオード61、キャパシタ62、及びインダクタ202を銅箔パターン301〜304に接続するための接続部の長さをバンプ305で合わせることができる。このため、接続部(バンプ305)における寄生インダクタンスを低減することができる。
【0153】
また、スイッチング素子22、ダイオード61、キャパシタ62、及びインダクタ202をモジュール化によって寄生インダクタンスを低減できれば、キャパシタ62の静電容量とインダクタ202のインダクタンスを小さくできるので、電源装置200をさらに小型化することができる。
【0154】
なお、銅箔パターン301〜304、311〜314の厚さについては、表皮効果を考慮して、次のように設定することができる。
【0155】
表皮効果の生じる厚さdは、次式(2)で求めることができる。
【0156】
d={2/(ω×μ×ρ)}1/2 ・・・(2)
ここで、ωは角周波数、μは導体(銅)の透磁率、ρは導体(銅)の導電率である。
【0157】
例えば、スイッチング素子22のスイッチングを10MHzで行う場合に、ω=2π×10×10(rad/s)、μ=μ×0.999991、ρ=5.76×10(S/m)であるとすると、d≒21(μm)と求まる。ただし、μは真空の透磁率であり、4π×10である。
【0158】
従って、例えば、スイッチング素子22のスイッチングを10MHzで行う場合には、銅箔パターン301〜304、311〜314の厚さを21(μm)以上にすると、銅箔パターン301〜304、311〜314の抵抗を低減することができる。
【0159】
銅箔パターン301〜304、311〜314の抵抗を下げることができれば、スイッチング素子22、ダイオード61、キャパシタ62、及びインダクタ202の間の抵抗を低減でき、スイッチング素子22のスイッチングの際に、スイッチング素子22、ダイオード61、キャパシタ62、及びインダクタ202の間での電力損失を低減できる。
【0160】
また、実施の形態2の電源装置では、スイッチング素子22、ダイオード61、及びキャパシタ62の等価直列インダクタンスLESL(ESL: Equivalent Series Inductance)を以下のように設定してもよい。
【0161】
スイッチング素子22、ダイオード61、及びキャパシタ62の等価直列インダクタンスLESLは、次式(3)で表される。
【0162】
ESL=Vinp/(Pout×fsw) ・・・(3)
ここで、Vinpは整流回路10の入力電圧のピーク値、Poutは出力端子203A、203Bから出力される出力、fswはスイッチング素子22のスイッチング周波数である。
【0163】
一例として、スイッチング素子22としてGaN−HEMTを用いる場合の等価直列インダクタンスLESLを求める。
【0164】
整流回路10の入力電圧Vinが100(V)、出力端子203A、203Bから出力される出力Poutが1(kW)、スイッチング周波数が10MHzであるとする。
【0165】
整流回路10の入力電圧Vinが100(V)、出力端子203A、203Bから出力される出力Poutが1(kW)であるため、スイッチング素子22の電流のピーク値は14.4A、電圧ピーク値Vinpは144Vとなる。
【0166】
このときのスイッチング素子22、ダイオード61、及びキャパシタ62には最大14.4Aの電流を流す必要があるため、等価直列インダクタンスLESLを十分に小さくする必要がある。
【0167】
式(3)を用いると、等価直列インダクタンスLESLの値は次のように求まる。
【0168】
ESL=(144V)/(144V×14.4A×10MHz)=1μHとなる。
【0169】
以上のように等価直列インダクタンスLESLを設定すれば、スイッチング素子22としてGaN−HEMTを用いることによって実現される10MHzオーダの高速スイッチングにおいて、寄生成分の影響を軽減することができる。
【0170】
<実施の形態3>
実施の形態3の電源装置は、インダクタ202に過飽和インダクタを用いる点が実施の形態1の電源装置200と異なる。その他の構成要素は、実施の形態1の電源装置200と同様であるため、同一又は同等の構成要素には同一符号を付し、その説明を省略する。
【0171】
例えば、負荷回路50の抵抗値が比較的大きいような場合には、インダクタ202から平滑用キャパシタ30に回生した電気エネルギが、負荷回路50で消費されずに戻ってくる可能性がある。
【0172】
このような場合には、例えば、インダクタ21、キャパシタ62、インダクタ202のLC回路で共振が生じる可能性がある。
【0173】
このようは共振が生じた場合に、共振を早期に減衰させるために、実施の形態3の電源装置は、インダクタ202に過飽和インダクタを用いる。
【0174】
過飽和インダクタの飽和電流値は、例えば、次のようにして求めることができる。
【0175】
まず、インダクタ202における電流のピーク値(ピーク電流値)を求める。
【0176】
インダクタ202のインダクタンスをL、キャパシタ62の両端間電圧をVC2、平滑用キャパシタ30の両端電圧をVC1とする。
【0177】
このときインダクタ202に流れるピーク電流値IPは、次式(4)で表される。
【0178】
IP=(1/L)×(VC2−Vout)×T×Duty ・・・(4)
ここで、Tはスイッチング素子22のスイッチングを行う周期である。VC2は、サージ電圧として許容できる電圧値の最大値VMAXに、出力電圧Voutを加えた電圧である。Dutyは、スイッチング素子22のスイッチング(オン/オフ)を行う際のデューティ比である。
【0179】
デューティ比Dutyは、次式(5)で表される。
【0180】
Duty=1−Vin/Vout ・・・(5)
キャパシタ62、インダクタ202、平滑用キャパシタ30の共振エネルギは、ピーク電流IPに比例して大きくなる。
【0181】
ここで、インダクタ202の飽和電流値をピーク電流IPより小さくすると、共振を低減できる効果が生じる。
【0182】
例えば、飽和電流値がピーク電流値IPの1/4になる過飽和インダクタをインダクタ202に用いると、共振エネルギは1/4になる。これは、6dB/octの一般的なノイズフィルタ(ノイズを1/4にする効果を有するフィルタ)を一段接続するのに等しいノイズ削減効果があることになる。
【0183】
また、共振が生じる経路の内部抵抗によって生じる電力損失は電流値の二乗に比例するため、飽和電流値がピーク電流値IPの1/4になる過飽和インダクタをインダクタ202に用いると、内部抵抗による電力損失を1/16に低減することができる。
【0184】
このため、インダクタ202に過飽和インダクタを用いると、共振低減、出力電圧Voutに含まれるノイズの低減、内部抵抗における電力損失の低減を図ることができる。
【0185】
次に、図13を用いて、実施の形態3の電源装置の動作について説明する。
【0186】
図13は、実施の形態3の電源装置の動作を表すタイミングチャートである。
【0187】
図13に示すゲート電圧及び電流I1〜I4は、図9に示す実施の形態1の電源装置200の動作を表すタイミングチャートの特性と同様である。
【0188】
図13に実線で示す電流I5は、インダクタ202に過飽和インダクタを用いずに、キャパシタ62、インダクタ202、及び平滑用キャパシタ30に共振が生じた場合に、インダクタ202に通流する電流を示す。
【0189】
図13に破線で示す特性は、インダクタ202に過飽和インダクタを用いた実施の形態3の電源装置において、インダクタ202に流れる電流I5を示す。
【0190】
図13に示すように、インダクタ202に過飽和インダクタを用いることにより、インダクタ202に流れる電流I5(破線)は、過飽和インダクタを用いていない場合の電流I5(実線)よりも早期に減衰していることが分かる。
【0191】
以上のように、実施の形態3によれば、過飽和インダクタをインダクタ202に用いることにより、共振を早期に減衰させることができ、共振低減、ノイズ低減、内部抵抗における電力損失の低減を図った電源装置を提供することができる。
【0192】
以上、本発明の例示的な実施の形態1乃至3の電源装置及び情報処理装置について説明したが、本発明は、具体的に開示された実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲から逸脱することなく、種々の変形や変更が可能である。
【符号の説明】
【0193】
20 整流回路
21 インダクタ
22 スイッチング素子
23 ダイオード
24 制御部
CT1 カレントトランスの一次巻線
CT2 カレントトランスの二次巻線
30 平滑用キャパシタ
40 DC−DCコンバータ
50 負荷回路
60 スナバ回路
61 ダイオード
62 キャパシタ
100 サーバ
111 CPU
112 主記憶装置
110 メインボード
120 ハードディスクドライブ
130 LAN用のモデム
200 電源装置
201A、201B 入力端子
202 インダクタ
203A、203B 出力端子
204A、204B 出力端子
300 基板
301、302、303、304、311、312、313、314、321、322 銅箔パターン
305 バンプ
331、332 ビア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電力が入力される入力端子と、
直流電力を出力する正極端子及び負極端子と、
前記入力端子に入力される交流電力を整流する整流回路と、
前記整流回路に接続される昇圧用の第1インダクタと、
前記正極端子と前記負極端子との間に接続される第1キャパシタと、
前記第1インダクタの出力端子と前記正極端子との間に接続され、前記第1インダクタの出力端子から前記正極端子に向かう整流方向を有する第1整流素子と、
前記第1整流素子の入力端子と前記負極端子との間に接続されるスイッチング素子と、
前記スイッチング素子に並列に接続される第2整流素子及び第2キャパシタと、
前記第2整流素子及び前記第2キャパシタの接続部と前記正極端子との間に接続される第2インダクタと
を含む、電源装置。
【請求項2】
前記第2整流素子の入力端子と前記スイッチング素子との間に接続されるカレントトランスのコイルをさらに含む、請求項1に記載の電源装置。
【請求項3】
前記第2キャパシタの静電容量をC、前記カレントトランスのコイルのインダクタンス又は前記カレントトランスのコイルと前記スイッチング素子の寄生インダクタとの合計のインダクタンスをL、前記スイッチング素子がオンのときに前記スイッチング素子に流れる電流の最大値をI、サージ電圧として許容できる電圧値の最大値をVとすると、
前記第2キャパシタの静電容量Cは、(1/2)×L×I/V以上に設定される、請求項2記載の電源装置。
【請求項4】
前記第2インダクタのインダクタンスは、前記カレントトランスのコイルのインダクタンス又は前記カレントトランスのコイルと前記スイッチング素子の寄生インダクタとの合計のインダクタンスよりも大きい、請求項2又は3記載の電源装置。
【請求項5】
前記スイッチング素子、前記第2整流素子、前記第2キャパシタ、及び前記第2インダクタは、モジュール化されている、請求項1乃至4のいずれか一項記載の電源装置。
【請求項6】
前記スイッチング素子、前記第2整流素子、前記第2キャパシタの等価直列インダクタンスが1μH以下である、請求項5記載の電源装置。
【請求項7】
前記第1インダクタは、過飽和インダクタである、請求項1乃至6のいずれか一項記載の電源装置。
【請求項8】
前記正極端子及び前記負極端子に接続されるDC−DCコンバータをさらに含む、請求項1乃至7のいずれか一項記載の電源装置。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか一項記載の電源装置から直流電力が供給される、演算処理装置、主記憶装置、又は補助記憶装置を含む、情報処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−138996(P2012−138996A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−288360(P2010−288360)
【出願日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】