説明

電源装置、画像形成装置

【課題】コスト及び効率の低下の抑制が可能となる電源装置及び画像形成装置を提供することを目的とする。
【解決手段】制御部10は、通常モードでは、通常電源部12により第1電圧値の出力電力を負荷10に供給させる一方で、スリープ電源部11により第2電圧値の出力電力を負荷10に供給させ、通常モードからスリープモードに移行したときに、通常電源部12による出力電力の供給を停止させ、スリープ電源部11による出力電力の電圧値を、第2電圧値から第1電圧値に変更する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源装置及び画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
通常モードとスリープモードとを有する画像形成装置が存在する。そして、この種の画像形成装置が、通常モード及びスリープモードを実行することを可能とするため、例えば、特許文献1記載の電源装置が使用されている。
【0003】
特許文献1記載の電源装置は、高容量のメイン電源と、小容量のサブ電源とを備えており、メイン電源及びサブ電源は、それぞれ、負荷に出力電力を供給する。
【0004】
そして、当該電源装置は、通常モードでは、メイン電源とサブ電源とにより出力電力を負荷に供給し、スリープモードでは、サブ電源のみにより出力電力を負荷に供給する。
【0005】
高容量の電源は、大きな電力出力に合わせて最適化して設計されている。そのため、ある程度以上の大電力を出力した方が、小電力を出力した場合よりも効率が高い。
【0006】
一方、小容量の電源は、小さな電力出力に合わせて最適化して設計されている。そのため、高容量の電源よりも小さな電力を出力した方が、大電力を出力した場合よりも、効率が高い。
【0007】
当該電源装置によれば、以上のように、負荷の消費電力が大きな通常モードでは高容量のメイン電源と小容量のサブ電源とにより出力電力を供給し、負荷の消費電力が通常モードよりも小さなスリープモードでは小電力出力時の効率が高い小容量のサブ電源のみにより出力電力を供給するので、通常モード、スリープモードのいずれにおいても効率が良い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005−151672号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、通常モード時にメイン電源とサブ電源とから電力供給を行い、スリープモード時にサブ電源のみから電力供給を行う場合には、以下のような問題が生ずる。
【0010】
すなわち、通常モード時は、負荷には、メイン電源による出力電力とサブ電源による出力電力とが同時に供給されることになる。
【0011】
このとき、メイン電源は、大きな電力を出力した方が効率が高く、サブ電源は、メイン電源より少ない電力を出力した方が効率が高くなるから、メイン電源の出力電力を、サブ電源の出力電力よりも大きくした方が、メイン電源とサブ電源とを合わせた全体の効率が高くなる。
【0012】
そこで、メイン電源の出力電圧を、サブ電源の出力電圧より高くしておくことで、メイン電源の出力電力をサブ電源の出力電力よりも大きくすることが行われている。
【0013】
ところが、スリープモードで負荷が動作できるように、サブ電源による出力電力の電圧値を、負荷の動作電圧に合わせているため、通常モードでメイン電源による出力電力の供給を行うと、メイン電源による出力電力の電圧値が、負荷の動作電圧を超えてしまう。
【0014】
この場合、通常モードで負荷が動作できるように、メイン電源により供給される出力電力の電圧値を負荷の動作電圧に降圧するコンバータを、負荷側に配置する必要がある。そうすると、電源装置のコストがかさみ、且つ効率が低下してしまう。
【0015】
本発明は、上記の問題を解決するためになされたもので、コスト及び効率の低下の抑制が可能となる電源装置及び画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の一局面に係る電源装置は、負荷の動作電圧である第1電圧値の出力電力を前記負荷に供給する通常電源部と、前記第1電圧値、及び、前記第1電圧値よりも小さな第2電圧値の出力電力のいずれか一方を前記負荷に供給するスリープ電源部と、前記負荷の消費電力を抑制させない通常モードと、前記負荷の消費電力を抑制させるスリープモードとを有し、前記通常電源部と前記スリープ電源部とを制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記通常モードでは、前記通常電源部により前記第1電圧値の出力電力を前記負荷に供給させる一方で、前記スリープ電源部により前記第2電圧値の出力電力を前記負荷に供給させ、前記通常モードから前記スリープモードに移行したときに、前記通常電源部による出力電力の供給を停止させ、前記スリープ電源部による出力電力の電圧値を、前記第2電圧値から前記第1電圧値に変更することを特徴とする。
【0017】
この構成によれば、制御部は、通常モードでは、通常電源部により、負荷の動作電圧である第1電圧値の出力電力を負荷に供給する一方で、スリープ電源部により、第1電圧値よりも小さな電圧値の第2電圧値の出力電力を供給する。
【0018】
そして、制御部は、通常モードからスリープモードに移行したときに、通常電源部による出力電力の供給を停止させ、スリープ電源部による出力電力の電圧値を、第2電圧値から第1電圧値に変更する。
【0019】
これにより、通常モードでは、スリープ電源部による電圧値よりも大きな第1電圧値の出力電力が、通常電源部によって負荷に供給される。
【0020】
そして、通常モードからスリープモードに移行したときには、通常電源部による負荷への出力電力の供給が停止し、スリープ電源部による出力電力の電圧値が、第2電圧値から第1電圧値に変更される。
【0021】
そのため、通常モードでは、通常電源部により負荷の動作電圧の出力電力が負荷に供給され、スリープモードでは、スリープ電源部により負荷の動作電圧の出力電力が負荷に供給される。
【0022】
その結果、負荷の動作電圧よりも大きな電圧値である、通常電源部による出力電力の電圧値を、負荷の動作電圧にまで降圧させるコンバータを負荷側に配置する必要がないから、コスト及び効率低下の抑制が可能となる。
【0023】
上記構成において、前記通常電源部は、商用交流電力の入力を受け付けて前記第1電圧値の出力電力を生成し、前記商用交流電力の入力が遮断されたとき、前記商用交流電力の入力が遮断されてから所定の出力保持時間の間、前記第1電圧値を含む予め定められた電圧範囲内の電圧値である保持電圧値の出力電力を供給し、その後、出力電力の供給を停止し、前記制御部は、前記通常モードから前記スリープモードに移行したときに、前記通常電源部への前記商用交流電力の入力を遮断させ、その後、前記出力保持時間が経過するまでに、前記スリープ電源部による出力電力の電圧値を、前記第1電圧値に変更することが好ましい。
【0024】
ここにおいて、出力保持時間は、通常電源部への商用交流電力の入力が遮断された後、第1電圧値を含む予め定められた電圧範囲内の電圧値の出力電力が供給される時間である。
【0025】
この構成によれば、制御部は、通常モードからスリープモードに移行したときに、通常電源部への商用交流電力の入力を遮断させ、その後、負荷の動作電圧である第1電圧値を含む予め定められた電圧範囲内の電圧値である保持電圧値の出力電力が供給される出力保持時間が経過するまでに、スリープ電源部による出力電力の電圧値を、第1電圧値に変更する。
【0026】
これにより、通常電源部への商用交流電力の入力が遮断されても、通常電源部により保持電圧値の出力電力が負荷に供給されている間に、スリープ電源部による負荷への出力電力の供給が開始される。
【0027】
その結果、負荷が必要とする電圧値の出力電力の負荷への供給を途絶えさせずに、通常モードからスリープモードに移行することが可能となる。
【0028】
また、本発明の他の局面に係る画像形成装置は、先述の電源装置と、原稿の画像データを読み取る画像読取部と、前記画像読取部により読み取られた画像データを記録紙に形成する画像形成部と、を備えることを特徴とする。
【0029】
この構成によれば、先述の電源装置を備えるため、コスト及び効率の低下の抑制が可能となる。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、コスト及び効率の低下の抑制が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の一実施形態に係る画像形成装置の構成の一例を模式的に示した縦断面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る電源装置の機能モジュールの一例を示したブロック図である。
【図3】電源装置の基本動作の概要の一例を示したフローチャートである。
【図4】電源装置の基本動作の概要の一例を示したタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下に、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る画像形成装置の構成の一例を模式的に示した縦断面図である。尚、図1における画像形成装置Aは、本発明の一実施形態に係る電源装置1(図2参照)を備えて構成されている。
【0033】
画像形成装置Aは、画像読取部200と画像形成本体部3とを備える。画像読取部200は、原稿給紙部210と、スキャナ本体220と、CIS231と、スキャナ本体220の前面に露出するように配置されたユーザインタフェース部Iと、後述する反転機構を備えてなる。
【0034】
原稿給紙部210は、ADF(Automatic Document Feeder)を備え、原稿トレイ211、ピックアップローラ212、プラテン213、排紙ローラ214及び排紙トレイ215を有する。
【0035】
原稿トレイ211には、読取対象とされる原稿が載置される。原稿トレイ211に載置された原稿は、1枚ずつピックアップローラ212によって取り込まれ、間隙を介して順次プラテン213へ搬送される。プラテン213を経由した原稿は、排紙ローラ214によって排紙トレイ215へ順次排出される。
【0036】
前記プラテン213の周面に対向する位置のうち、原稿の搬送方向において読取位置Pより手前の予め定められた位置には、用紙を検出する図略のタイミングセンサが設置されており、該タイミングセンサの出力要求に基づき、前記読取位置Pへの原稿の搬送タイミングが図られる。前記タイミングセンサは、例えばフォトインタラプタにより構成される。
【0037】
スキャナ本体220は、原稿の画像データを光学的に読み取って画像データを生成するものである。スキャナ本体220は、ガラス221、光源222、第1ミラー223、第2ミラー224、第3ミラー225、第1キャリッジ226、第2キャリッジ227、結像レンズ228、ラインセンサ229を備える。
【0038】
スキャナ本体220では、光源222から照射された光が、ガラス221上の原稿に反射して反射光となり、この反射光が、第1ミラー223、第2ミラー224、第3ミラー225、第1キャリッジ226、第2キャリッジ227及び結像レンズ228により、ラインセンサ229に導かれる。
【0039】
そして、ラインセンサ229に導かれた光は、ラインセンサ229により、画像データを表す電荷に変換される。
【0040】
ガラス221には、前記原稿給紙部210によらない原稿読取時に、ユーザの手動により原稿が載置される。光源222及び第1ミラー223は第1キャリッジ226によって支持され、第2ミラー224及び第3ミラー225は第2キャリッジ227によって支持されている。
【0041】
画像読取部200の原稿読取方式として、ガラス221上に載置された原稿をスキャナ本体220が読み取るフラットベッド読取モードと、原稿を原稿給紙部210(ADF)によって取り込み、その搬送途中で原稿を読み取るADF読取モードがある。
【0042】
フラットベッド読取モードでは、光源222がガラス221上に載置された原稿を照射し、主走査方向1ライン分の反射光が第1ミラー223、第2ミラー224、第3ミラー225の順に反射して、結像レンズ228に入射する。結像レンズ228に入射した光はラインセンサ229の受光面で結像される。
【0043】
ラインセンサ229は一次元のイメージセンサであり、1ライン分の原稿の画像データを重複して処理する。第1キャリッジ226及び第2キャリッジ227は、主走査方向と直交する方向(副走査方向Y)に移動可能に構成されており、1ライン分の読み取りが終了すると、副走査方向に第1キャリッジ226及び第2キャリッジ227が移動し、次のラインの読み取りが行われる。
【0044】
ADF読取モードでは、原稿給紙部210が原稿トレイ211に載置された原稿をピックアップローラ212によって1枚ずつ取り込む。このとき、第1キャリッジ226及び第2キャリッジ227は、読取窓230の下方に位置する予め定められた読取位置Pに配置される。
【0045】
原稿給紙部210による原稿搬送で、原稿がプラテン213から排紙トレイ215への搬送経路に設けられた読取窓230上を通過するとき、光源222が原稿を照射し、主走査1ライン分の反射光が第1ミラー223、第2ミラー224、第3ミラー225の順に反射して、結像レンズ228に入射する。結像レンズ228に入射した光はラインセンサ229の受光面で結像される。続いて原稿は原稿給紙部210によって搬送され、次のラインが読み取られる。
【0046】
更に、原稿給紙部210は、切換ガイド216、反転ローラ217及び反転搬送路218を備えた反転機構を有する。この反転機構が、1回目のADF読み取りによって表面が読み取られた原稿を表裏反転させて読取窓230に再搬送することで、再度ラインセンサ229によって裏面の読み取りが行われる。
【0047】
この反転機構は、両面読み取り時にのみ動作し、片面読み取り時は動作しない。片面読み取り時及び両面読み取り時において裏面の読み取り後、切換ガイド216は上側に切り替えられ、プラテン213を経た原稿は、排紙ローラ214によって排紙トレイ215に排紙される。
【0048】
両面読み取り時における表面読み取り後、切換ガイド216は下側に切り替えられ、プラテン213を経た原稿は反転ローラ217によって反転搬送路218へ搬送される。その後、切換ガイド216は上側へ切り替わり、反転ローラ217が逆回転して原稿をプラテン213へ再給紙する。以下、反転機構を用いて原稿の両面を読み取らせるモードを両面反転読取モードと表記する。
【0049】
更に、本実施形態の画像読取部200は、ADF読取モード時において、前述したように原稿の搬送途中でラインセンサ229(スキャナ本体220)によって原稿の表面の読み取りを行わせると略重複して(略並行して)、CIS231によって原稿の裏面の読み取りを行わせることが可能である。この場合、原稿トレイ211から原稿給紙部210により搬送された原稿は、読取窓230上を通過するときにラインセンサ229によって表面が読み取られ、更にCIS231の配置箇所を通過する際に裏面が読み取られる。なお、CIS231では、光源としてRGBの3色LED等が用いられる。
【0050】
このようにラインセンサ229とCIS231を用いることで、原稿給紙部210による原稿トレイ211から排紙トレイ215までの一回の原稿搬送操作(ワンパス)によって原稿の表裏両面の読み取りが可能となる。
【0051】
画像形成装置Aは、画像形成本体部3と、画像形成本体部3の左方に配設されたスタックトレイ6とを有している。画像形成本体部3は、複数の給紙カセット461と、給紙カセット461から記録紙を1枚ずつ繰り出して画像形成部40へ搬送する給紙ローラ462と、給紙カセット461から搬送されてきた記録紙に画像データを形成する画像形成部40とを備える。また、画像形成本体部3は、給紙トレイ471と該給紙トレイ471に載置された原稿を1枚ずつ画像形成部40に向けて繰り出す繰り出しローラ472とを備える。
【0052】
画像形成部40は、感光体ドラム43の表面から残留電荷を除電する除電装置421と、除電後の感光体ドラム43の表面を帯電させる帯電装置422と、スキャナ本体220で取得された画像データに基づいてレーザ光を出力して感光体ドラム43の表面を露光し、当該感光体ドラム43の表面に静電潜像を形成する露光装置423と、前記静電潜像に基づいて感光体ドラム43上に、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)及びブラック(K)の各色のトナー像を形成する現像装置44K,44Y,44M,44Cと、感光体ドラム43に形成された各色のトナー画像データが転写されて重ね合わせされる転写ドラム49と、転写ドラム49上のトナー像を用紙に転写させる転写装置41と、トナー像が転写された用紙を加熱してトナー像を用紙に定着させる定着装置45とを備えている。
【0053】
なお、シアン、マゼンタ、イエロー及びブラックの各色の供給は、図略のトナーカートリッジから行われる。また、画像形成部40を通過した記録紙をスタックトレイ6又は排出トレイ48まで搬送する搬送ローラ463,464等が設けられている。
【0054】
記録紙の両面に画像データを形成する場合は、画像形成部40で記録紙の一方の面に画像データを形成した後、この記録紙を排出トレイ48側の搬送ローラ463にニップされた状態とする。この状態で搬送ローラ463を反転させて記録紙をスイッチバックさせ、記録紙を用紙搬送路Lに送って画像形成部40の上流域に再度搬送し、画像形成部40により他方の面に画像データを形成した後、記録紙をスタックトレイ6又は排出トレイ48に排出する。
【0055】
ユーザインタフェース部Iは、図示しない電源スイッチを備えており、電源スイッチがオンのときには、電源装置1により画像形成装置Aの各部への出力電力の供給が開始され、電源スイッチがオフのときには、電源装置1による出力電力の供給が停止する。
【0056】
図2は、本発明の一実施形態に係る電源装置の機能モジュールの一例を示したブロック図である。電源装置1は、スリープ電源部11と通常電源部12とを備えており、スリープ電源部11及び通常電源部12は、それぞれ、制御部(負荷)10に接続されている。
【0057】
制御部10は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)などを備えて構成されており、CPUが所定の制御プログラムを実行することにより実現されている。
【0058】
制御部10は、スリープ電源部11及び通常電源部12の負荷として配置されている。制御部10は、第1電圧値V1を動作用電源電圧(動作電圧)として用いる。そして、制御部10は、スリープ電源部11に配置されたスリープ制御部110と、通常電源部12に配置されたリレー回路RY1,RY2とを制御する。
【0059】
そして、制御部10は、制御部10の消費電力を抑制させるスリープモードと、制御部10の消費電力を抑制させない通常モードとを有している。
【0060】
ここにおいて、スリープモードは、例えば、制御部10内のCPUの動作クロックの周波数が通常モードよりも低いモードであり、通常モードは、例えば、制御部10内のCPUの動作クロックの周波数がスリープモードよりも高いモードである。
【0061】
このことは、CPUが、制御部10内の図示しないクロック信号出力部からCPUに出力されるクロックの周波数を逓倍或いは分周することにより実現できる。
【0062】
これにより、スリープモードでは、制御部10の消費電力が抑制され、通常モードでは、制御部10の消費電力が抑制されない。
【0063】
そして、制御部10は、通常モードでは、Hレベルの電圧信号を、モード制御信号として、スリープ制御部110とリレー回路RY1,RY2とに出力し、スリープモードに移行したときに、Lレベルの電圧信号を、モード制御信号として、スリープ制御部110とリレー回路RY1,RY2とに出力する。
【0064】
スリープ電源部11及び通常電源部12は、例えば、スイッチング電源回路によって構成されている。
【0065】
スリープ電源部11は、通常電源部12よりも小容量の電源回路であり、通常電源部12よりも小電力の出力電力を制御部10に出力する。当該スリープ電源部11は、商用交流電源ACから電源ラインLを通じて入力された商用交流電力を受け付けて、制御部10の動作電圧である第1電圧値V1の出力電力、及び、第1電圧値V1よりも小さな第2電圧値V2の出力電力のいずれか一方を、制御部10に供給する。
【0066】
一方の通常電源部12は、スリープ電源部11よりも大容量の電源回路であり、スリープ電源部11よりも大電力の出力電力を制御部10に出力する。当該通常電源部12は、商用交流電源ACから電源ラインLを通じて入力された商用交流電力を受け付けて、制御部10の動作電圧である第1電圧値V1の出力電力を制御部10に供給する。
【0067】
ここにおいて、例えば、トランスTR1のサイズとトランスTR2のサイズとの違い、スイッチング素子Q1の定格とスイッチング素子Q2の定格との違い、及び、平滑コンデンサC1の容量と平滑コンデンサC3の容量との違いによって、スリープ電源部11の容量と、通常電源部12の容量との違いが定まる。
【0068】
そして、通常電源部12は、スリープ電源部11よりも大容量であるから、トランスTR2のサイズはトランスTR1のサイズよりも大きく、スイッチング素子Q2の定格はスイッチング素子Q1よりも大きく、平滑コンデンサC3の容量は平滑コンデンサC1の容量よりも大きい。
【0069】
具体的に、スリープ電源部11は、商用交流電源ACから電源ラインLを通じて入力された商用交流電力のノイズを除去するためのノイズフィルタ111、ノイズフィルタ111によってノイズが除去された商用交流電力を整流するダイオードブリッジDB1、ダイオードブリッジDB1によって整流された商用交流電力を平滑する平滑コンデンサC1、平滑コンデンサC1によって平滑された商用交流電力の電圧値を所定の電圧値にまで変圧させるトランスTR1と、平滑コンデンサC1によって平滑された商用交流電力を所定周期でトランスTR1に入力させるためのスイッチング素子Q1と、トランスTR1によって変圧された商用交流電力を整流するダイオードD2、ダイオードD2によって整流された商用交流電力を平滑する平滑コンデンサC2、平滑コンデンサC2によって平滑された商用交流電力を整流するダイオードD3、スリープ電源部11を制御するスリープ制御部110、及び、スリープ制御部110が、スリープ電源部11から供給される出力電力の電圧値をモニタするための抵抗R1,R2、を備える。
【0070】
このような構成のスリープ電源部10において、スリープ制御部110は、CPU、RAM、ROMなどを備えて構成されており、CPUが所定の制御プログラムを実行することにより実現されている。
【0071】
スリープ制御部110は、スイッチング素子Q1を駆動させるための、所定周波数のパルス信号をスイッチング素子Q1に出力する。当該スリープ制御部110は、抵抗R1と抵抗R2との接続部の電圧値を参照して、スリープ電源部11から供給される出力電力の電圧値をモニタし、スリープ電源部11から供給される出力電力の電圧値が、第1電圧値V1或いは第2電圧値V2となるように、スイッチング素子Q1に出力されるパルス信号の周波数を制御する。
【0072】
この構成のスリープ電源部11では、ノイズフィルタ111によって、電源ラインLを通じて供給された商用交流電力からノイズが除去され、ノイズ除去後の商用交流電力がダイオードブリッジDB1によって整流され、整流後の商用交流電力が平滑コンデンサC1により平滑される。これにより、商用交流電力が直流電力に変換される。
【0073】
そして、ダイオードブリッジDB1と平滑コンデンサC1により得られた直流電力は、スイッチング素子Q1がオンするタイミングで、間欠的に、トランスTR1の一次側に出力される。
【0074】
ここに、ダイオードブリッジDB1と平滑コンデンサC1により得られた直流電力がトランスTR1の一次側に出力されるタイミングが、スイッチング素子Q1に出力されるパルス信号の周波数により定まる。また、パルス信号の周波数が、スリープ電源部11から供給される出力電力の電圧値が、第1電圧値V1或いは第2電圧値V2となるように、スリープ制御部110によって制御されている。
【0075】
トランスTR1の一次側に間欠的に出力された直流電力は、トランスTR1の一次側の巻数と二次側巻数との巻数比や、スイッチング素子Q1のスイッチング周波数、スイッチングデューティ比等に応じて変圧され、変圧された直流電力が、トランスTR1の二次側から出力される。これにより、変圧された直流電力は、トランスTR1の二次側から間欠的に出力される。
【0076】
そして、トランスTR1の二次側から間欠的に出力された直流電力が、ダイオードD2により整流され、整流後の電力が平滑コンデンサC2により平滑され、平滑後の電力がダイオードD3によりさらに整流され、整流後の電力が、出力電力として制御部10に供給される。
【0077】
そして、出力電力の電圧値は、スリープ制御部110からスイッチング素子Q1へ出力されるパルス信号の周波数或いはデューティ比により決定され、スリープ制御部110は、通常モードに移行した制御部10からHレベルの電圧信号を受け付けたときには、出力電力の電圧値が第2電圧値V2となるように、パルス信号の周波数或いはデューティ比を制御する。
【0078】
一方、スリープ制御部110は、スリープモードに移行した制御部10からLレベルの電圧信号を受け付けたときには、出力電力の電圧値が第2電圧値V2よりも大きな第1電圧値V1となるように、パルス信号の周波数或いはデューティ比を制御する。
【0079】
これにより、スリープ電源部11は、制御部10が通常モードに移行したときには、第2電圧値V2の出力電力を制御部10に供給し、制御部10がスリープモードに移行したときには、第2電圧値V2よりも大きな第1電圧値V1の出力電力を制御部10に供給する。
【0080】
一方の通常電源部12は、具体的には、商用交流電源ACから電源ラインLを通じて入力された商用交流電力のノイズを除去するためのノイズフィルタ121、ノイズフィルタ121と商用交流電源ACとの間に配置されたリレー回路RY1,RY2、ノイズフィルタ121によってノイズが除去された商用交流電力を整流するダイオードブリッジDB2、ダイオードブリッジDB2によって整流された商用交流電力を平滑する平滑コンデンサC3、平滑コンデンサC3によって平滑された商用交流電力の電圧値を所定の電圧値にまで変圧させるトランスTR2と、平滑コンデンサC3によって平滑された商用交流電力を所定周期でトランスTR2に入力させるためのスイッチング素子Q2と、トランスTR2によって変圧された商用交流電力を整流するダイオードD5、ダイオードD5によって整流された商用交流電力を平滑する平滑コンデンサC4、平滑コンデンサC4によって平滑された商用交流電力を整流するダイオードD6、通常電源部12を制御する通常制御部120、及び、通常制御部120が、通常電源部12から供給される出力電力の電圧値をモニタするための抵抗R3,R4、を備える。
【0081】
尚、この通常電源部12において、リレー回路RY1,RY2と、通常制御部120以外については、スリープ電源部11と同様であるため、説明を省略する。
【0082】
リレー回路RY1,RY2は、ノイズフィルタ121への商用交流電力の入力を遮断する回路であり、制御部10からHレベルの電圧信号を受け付けたときにオンし、制御部10からLレベルの電圧信号を受け付けたときにオフする。
【0083】
通常制御部120は、CPU、RAM、ROMなどを備えて構成されており、CPUが所定の制御プログラムを実行することにより実現されている。
【0084】
通常制御部120は、スイッチング素子Q2を駆動させるための、所定周波数のパルス信号をスイッチング素子Q2に出力する。通常制御部120は、抵抗R3と抵抗R4との接続部の電圧値を参照して、通常電源部12から供給される出力電力の電圧値をモニタし、通常電源部12から供給される出力電力の電圧値が、第1電圧値V1となるように、スイッチング素子Q2に出力されるパルス信号の周波数或いはデューティ比を制御する。
【0085】
これにより、通常電源部12は、制御部10が通常モードに移行したときには、リレー回路RY1,RY2がオンするので、第1電圧値V1の出力電力を制御部10に供給し、制御部10がスリープモードに移行したときには、リレー回路RY1,RY2がオフして商用交流電力の入力を遮断するので、所定の出力保持時間を経て、出力電力の供給を停止する。
【0086】
通常電源部12では、通常電源部12が定電圧である第1電圧値V1の出力電力を供給しているときに商用交流電力の入力が遮断されると、平滑コンデンサC4に充電されている電荷が放電される。
【0087】
これにより、通常電源部12では、通常電源部12による出力電圧の電圧値は、商用交流電力の入力が遮断されたときから出力保持時間の間、第1電圧値V1を含む一定の電圧範囲内の電圧値である保持電圧値V3を維持する。そして、出力保持時間が経過すると、通常電源部12による出力電圧の電圧値は、保持電圧値V3に満たない電圧に低下する。このような特性は、公知の電源回路が通常有する特性である。
【0088】
保持電圧値V3は、第1電圧値V1と当該第1電圧値V1よりもごく小さな電圧値との間の範囲内の電圧値であり、第1電圧値V1を動作電圧とする制御部10が、保持電圧値V3の出力電力を受け付けて動作することができる電圧値である。
【0089】
このような保持電圧値V3の出力電力が供給される出力保持時間は、商用交流電力の電圧値、平滑コンデンサC1の容量、最低レギュレーション電圧、効率、及び、出力電力の電流値により定められる。
【0090】
図3は、電源装置の基本動作の概要の一例を示したフローチャートである。
【0091】
ユーザインタフェース部Iに配置された、図示しない電源スイッチがオンされたときには(ステップS1のYES)、制御部10は、通常モードを実行し(ステップS2)、リレー回路RY1,RY2をオンとする(ステップS3)。
【0092】
そして、制御部10は、通常電源部12により第1電圧値V1の出力電力を制御部10に向けて出力させる一方で、スリープ電源部11により第2電圧値V2の出力電力を制御部10に向けて出力させる。このとき、第1電圧値V1は第2電圧値V2よりも大きいので、通常電源部12による出力電力が、スリープ電源部11に優先して制御部10に供給される。
【0093】
そして、制御部10は、スリープモードに移行すべきタイミングが到来したときには(ステップS5のYES)、ステップS6に進む。尚、スリープモードに移行すべきタイミングとしては、例えば、所定時間の間、ユーザインタフェース部Iの操作部18が操作されなかったときが挙げられる。
【0094】
制御部10は、ステップS6において、スリープモードに移行する。そして、制御部10は、リレー回路RY1,RY2をオフにするとともに(ステップS7)、スリープ制御部110によって、通常電源部12による出力電力の電圧値を第1電圧値V1に変更させる(ステップS8)。
【0095】
ここにおいて、リレー回路RY1,RY2をオフにして、商用交流電力の通常電源部12への入力を遮断した後には、通常電源部12からは、出力保持時間の間、第1電圧値V1を含む保持電圧値V3の出力電力が制御部10に向けて供給される。
【0096】
スリープ制御部110は、このような出力保持時間が経過するまでに、スリープ電源部11による出力電力の電圧値を、第1電圧値V1に変更することが好ましい。スリープ制御部110は、例えば、制御部10からの電圧信号がHレベルからLレベルに切り換わったら即座に、スリープ電源部11による出力電力の電圧値を第1電圧値V1に変更する。
【0097】
出力保持時間が経過するまでに、スリープ電源部11による出力電力の電圧値を第1電圧値V1に変更すれば、制御部10が通常モードからスリープモードへ移行したときに、制御部10には、当該制御部10が必要とする電圧値の出力電力が途切れることなく供給されるという利点がある。
【0098】
そして、通常モードに移行すべきタイミングが到来したときには(ステップS9のYES)、制御部10は、ステップS2に進む。尚、通常モードに移行すべきタイミングとしては、例えば、ユーザインタフェース部Iの操作部18が操作されたときが挙げられる。
【0099】
以上の基本動作をなす電源装置1の効果について、図4を用いて説明する。図4は、電源装置の基本動作の概要の一例を示したタイムチャートである。
【0100】
ここにおいて、保持電圧値V3は、第1電圧値V1と当該第1電圧値V1よりもごく小さな電圧値との間の範囲内の電圧値であり、制御部10が動作可能な電圧値である。そのため、以下、保持電圧値V3を、第1電圧値V1と同じ電圧値として扱う。
【0101】
尚、図4(a)における太線は、通常電源部12による出力電力の電圧値を表し、図4(a)における細線は、スリープ電源部11による出力電力の電圧値を表す。図4(b)における実線は、制御部10により出力されるモード制御信号を表す。そして、図4(a)及び図4(b)において、縦軸は電圧値を表し、横軸は経過時間を表す。
【0102】
そしてまた、図4(c)における実線は、制御部10のモードを表す。そして、図4(c)において、縦軸は制御部10のモードを表し、横軸は経過時間を表す。
【0103】
以下、図4を用いて電源装置の効果を説明する。
【0104】
図4(c)のように、制御部10が通常モードに移行したときには、制御部10は、図4(b)のようにHレベルの電圧信号をスリープ電源部11及び通常電源部12に出力するため、図4(a)のように、スリープ電源部11からは第2電圧値V2の出力電力が制御部10に向けて供給され、通常電源部12からは第1電圧値V1の出力電力が制御部10に向けて供給される。
【0105】
そして、図4(c)のように、制御部10が、通常モードからスリープモードに移行したときには、制御部10は、図4(b)のようにLレベルの電圧信号をスリープ電源部11及び通常電源部12に出力する。
【0106】
そして、通常電源部12では、通常電源部12がLレベルの電圧信号を受け付けたらリレー回路RY1,RY2がオフとなるので、即座に商用交流電力の入力が遮断される。
【0107】
そして、通常電源部12は、商用交流電力の入力が遮断された後、出力保持時間の間、第1電圧値V1である保持電圧値の出力電力を制御部10に向けて出力し、出力保持時間の経過後に、出力電力の電圧値を0にまで低下させる。
【0108】
スリープ制御部110は、通常電源部12への商用交流電力の入力が遮断されてから、出力保持時間が経過するまでに、スリープ電源部11による出力電力の電圧値を第1電圧値V1に変更する。
【0109】
以上のように、電源装置1では、制御部10が通常モードからスリープモードに移行したとき、通常電源部12から制御部10が動作可能な保持電圧値の出力電力が制御部10に供給されている出力保持時間の間に、スリープ電源部11による出力電力の電圧値が、制御部10の動作電圧である第1電圧値V1に変更される。
【0110】
これにより、通常モードからスリープモードに移行したときに、制御部10には、制御部10の動作電圧である第1電圧値V1の出力電力が途切れることなく供給される。そのため、通常モードからスリープモードに移行したときに、制御部10が安定して動作することが可能となる。
【0111】
また、通常モード、スリープモードのいずれにおいても、制御部10には制御部10の動作電圧である第1電圧値V1の出力電力が供給されるから、制御部10の動作電圧よりも大きな電圧値である、通常電源部12による出力電力の電圧値を、制御部10の動作電圧にまで降圧させるコンバータを制御部10側に配置する必要がないから、コスト及び効率低下の抑制が可能となる。
【符号の説明】
【0112】
A 画像形成装置
1 電源装置
10 制御部
11 スリープ電源部
12 通常電源部
40 画像形成部
200 画像読取部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
負荷の動作電圧である第1電圧値の出力電力を前記負荷に供給する通常電源部と、
前記第1電圧値、及び、前記第1電圧値よりも小さな第2電圧値の出力電力のいずれか一方を前記負荷に供給するスリープ電源部と、
前記負荷の消費電力を抑制させない通常モードと、前記負荷の消費電力を抑制させるスリープモードとを有し、前記通常電源部と前記スリープ電源部とを制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記通常モードでは、前記通常電源部により前記第1電圧値の出力電力を前記負荷に供給させる一方で、前記スリープ電源部により前記第2電圧値の出力電力を前記負荷に供給させ、前記通常モードから前記スリープモードに移行したときに、前記通常電源部による出力電力の供給を停止させ、前記スリープ電源部による出力電力の電圧値を、前記第2電圧値から前記第1電圧値に変更する
ことを特徴とする電源装置。
【請求項2】
前記通常電源部は、商用交流電力の入力を受け付けて前記第1電圧値の出力電力を生成し、前記商用交流電力の入力が遮断されたとき、前記商用交流電力の入力が遮断されてから所定の出力保持時間の間、前記第1電圧値を含む予め定められた電圧範囲内の電圧値である保持電圧値の出力電力を供給し、その後、出力電力の供給を停止し、
前記制御部は、
前記通常モードから前記スリープモードに移行したときに、前記通常電源部への前記商用交流電力の入力を遮断させ、その後、前記出力保持時間が経過するまでに、前記スリープ電源部による出力電力の電圧値を、前記第1電圧値に変更する
ことを特徴とする請求項1に記載の電源装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の電源装置と、
原稿の画像データを読み取る画像読取部と、
前記画像読取部により読み取られた画像データを記録紙に形成する画像形成部と、
を備えることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−139049(P2012−139049A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−290262(P2010−290262)
【出願日】平成22年12月27日(2010.12.27)
【出願人】(000006150)京セラドキュメントソリューションズ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】